JP3982281B2 - ポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法 - Google Patents

ポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気、電子、光学デバイス等に使用される金属酸化物薄膜の照射法によるポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法、及び該ポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を用いて作製された凹形状膜、並びにポジ型金属酸化物パターン薄膜形成用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体の各種デバイスに用いられる金属酸化物のパターン薄膜を形成する方法としては、CVD法、スパッタリング法等を用いて基板上に金属酸化膜を形成し、ホトレジストを用いて所望の形状をパターニングした後に、強酸等を用いて金属酸化物膜をエッチングすることによりレジスト膜のパターンを転写し、次いでレジストを除去することによりパターンを形成する方法が知られている。
【0003】
一方、加水分解性金属アルコキシドを主成分として、必要に応じて各種添加剤を加えたゾルゲル溶液の感光性を利用した感光性ゾルゲル法(例えば、特開平1−313329号公報)は、基板上に上記の感光性ゾルゲル溶液を塗布し、紫外線や電子線等をフォトマスクを通して照射することにより所望の形状を直接的にパターニングし、その後に溶剤を用いてエッチングし、さらに焼成を行ってパターン化された金属酸化膜を得る方法である。
【0004】
上記感光性ゾルゲルを用いた金属酸化物のパターン薄膜形成法は、ホトレジストを用いる方法に比べて工程数が少ないため経済的である。このように、前記感光性ゾルゲル法によって形成されるパターン薄膜形成法として、非照射部がエッチング溶液に溶解し、照射部が基板上の残るネガパターン薄膜形成法は、従来より種々知られている。
【0005】
これに対して、照射部がエッチング溶液によって除去されるポジ型金属酸化物膜のパターン薄膜形成法については、従来ほとんど知られていない。これまでに、金属アルコキシドを用いたゾルゲル法でポジ型として知られているのは、紫外線照射によって、キレート安定化剤を発生する添加剤を金属アルコキシドと共に含有させ、金属アルコキシドとキレート安定化剤が錯体を形成する反応を利用し、アルコール系溶媒にてパターニングを行う方法(例えば、特開平9−34113号公報)のみである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ネガ型におけるパターニングの問題点としては、感光性ゾルゲル組成物自体がホトレジストに比べ光に対して反応性が低いことが挙げられる。このことによって、フォトマスクを通して光照射を行ってもゾルゲル膜の照射部と非照射部とのエッチング溶液に対する溶解性の差を大きくすることが困難である。
【0007】
そのため、ゾルゲル膜に対して光照射を行う際、膜中の感光部位を十分に反応させ、十分に溶解度の差をつけることが必要であること、また基板からの剥離を防ぐために、高い照射エネルギーや長時間の光照射を必要とする。
【0008】
この点において、ポジ型感光性ゾルゲルによるパターン薄膜形成法は、ゾルゲル膜の非照射部が基板に密着し、照射部がエッチング溶液に溶解するために、塗布膜の基板からの剥離の心配がなく有利である。さらに、照射量を調整することにより膜のエッチング量をコントロールできるため、被覆膜の凹凸形状のコントロールがネガ型に比べて容易である。
【0009】
しかしながら、上記ポジ型パターン薄膜形成法では、金属アルコキシドに対して特定の添加剤を加えることが必要であること、また、水分等で容易に重合する不安定なゾル溶液を基板上に塗布することが必要であり、応用性や実用性に欠ける。さらに、エッチング溶液としてアルコール系有機溶媒を用いることが必要であり、廃液処理についての問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、感光性ゾル溶液の安定性に優れると共に成膜性においても優れ、光照射後のエッチング時に照射部の膜を完全に除去することができ、さらにパターン精度に優れたポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法、及び該ポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を用いて作製された凹形状膜、並びにポジ型金属酸化物パターン薄膜形成用組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の形成方法は、金属アルコキシド及びキレート安定化剤を含む組成物を基板上に塗布し、塗布膜に光照射すると共に、この塗布膜における非照射部の化学反応を進行させた後、エッチング溶液で照射部を溶解、除去するポジ型酸化物パターン薄膜の形成方法において、前記エッチング溶液としてアルカリ水溶液を用い、前記キレート安定化剤は、β−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類であり、疎水性置換基を有する化合物であることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の形成方法によれば、照射部がエッチング溶液に溶解するポジ型パターンを形成することができ、またエッチング溶液としてアルカリ水溶液を用いるため、解像度の高いパターン薄膜を形成することができると共に、コスト的、また廃液処理に有利なポジ型金属酸化物パターン薄膜形成方法を提供することができる。
また、キレート安定化剤が水分に対して不安定な加水分解性金属アルコキシドを安定化し、溶液の保存、基板上への塗布時に有利であるのみならず、これらが金属アルコキシドと錯体化し、疎水表面をより有利に形成することによってアルカリ水溶液に対する溶解性を低下させるため、より解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
さらに、加水分解性金属アルコキシドとキレート安定化剤が錯化し、感光性ゾルゲル膜を形成させた際に、非照射部がより疎水性表面を形成し易くなるので、より解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0013】
請求項2記載の形成方法は、請求項1記載の形成方法において、前記キレート安定化剤の疎水性置換基は、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物であることを特徴とする。
【0014】
請求項記載の形成方法によれば、上記置換基を有するキレート安定化剤を用いることにより、感光性ゾルゲル膜の非照射部がいっそう疎水表面を形成し易くなるため、より解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0015】
請求項3記載の形成方法は、請求項1に記載の形成方法において、
前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチルである。
【0016】
請求項3記載の形成方法によれば、上記キレート安定化剤を具体的に特定することにより、感光性ゾルゲル膜の非照射部がいっそう疎水表面を形成し易くなるため、より解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0017】
請求項記載の形成方法は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の形成方法において、前記アルカリ水溶液は、水酸化四級アンモニウム塩水溶液、水酸化アルカリ金属塩水溶液、水酸化アルカリ土類金属塩水溶液、アミン類及び水溶性ルイス塩基からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液であることを特徴とする。
【0018】
請求項記載の形成方法によれば、感光性ゾルゲル膜の照射部が容易にアルカリ水溶液に溶解することから、より高い溶解度のパターン薄膜を形成することができる。
【0019】
請求項記載の形成方法は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の形成方法において、前記アルカリ水溶液は、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルビニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルヘキサデシルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチル水溶液、水酸化ヒドラジン水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ルビジウム水溶液、水酸化ベリリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ストロンチウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化インジウム水溶液、水酸化アルミニウム水溶液、水酸化クロム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化銅水溶液、水酸化鉛水溶液、水酸化ニッケル水溶液、トリエタノールアミン水溶液、ジエタノールアミン水溶液、モノエタノールアミン水溶液、アンモニウム水溶液、トリメチルアミン水溶液、トリエチルアミン水溶液、トリプロピルアミン水溶液、水酸化ヒドラジン水溶液、ヒドラジン水溶液、及びピリジン水溶液からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液であることを特徴とする。
【0020】
請求項記載の形成方法によれば、上記アルカリ水溶液をエッチング溶液として用いるため、感光性ゾルゲル膜の照射部の溶解性が高く、より高い解像度のパターン薄膜を形成することができる。
【0021】
請求項記載の凹形状膜は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を用いて作製されたことを特徴とする。
【0022】
請求項記載の凹形状膜によれば、金属酸化物のパターン薄膜形成のみならず、基板上に微細な凹凸構造を有する膜を作製することができ、基板上の微小凹凸を利用する光学部品等として使用することができる。
【0023】
請求項記載の組成物は、金属アルコキシドとキレート安定化剤を主成分とし、前記キレート安定化剤が、β−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類であり、疎水性置換基を有する化合物であることを特徴とする。
【0024】
請求項記載の組成物によれば、照射部がエッチング溶液に溶解するポジ型パターン薄膜を形成することができ、またエッチング溶液としてアルカリ水溶液を用いるため、解像度の高いパターン薄膜を形成することができると共に、コスト的、また廃液処理に有利なポジ型金属酸化物パターン薄膜を形成することができる。
また、不安定な加水分解性金属アルコキシドの安定性を増加させるのみならず、アルカリ水溶液に対する溶解性の低い疎水表面を形成することが容易となるために、パターン薄膜の解像度を大きくすることができる。
さらに、アルカリ水溶液に対する溶解性の低い疎水表面を形成することが容易となるために、さらに高い解像度を有するパターン薄膜を形成することができる。
【0025】
請求項記載の組成物は、請求項に記載の組成物において、前記キレート安定化剤の疎水性置換基は、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物であることを特徴とする。
【0026】
請求項記載の組成物によれば、感光性ゾルゲル膜の非照射部が疎水表面を形成し易くなるために、さらに高い解像度のパターン薄膜を形成することができる。
【0027】
請求項記載の組成物は、請求項に記載の組成物において、 前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチルである。
【0028】
請求項9記載の組成物によれば、感光性ゾルゲル膜の非照射部が疎水表面を形成し易くなるために、さらに高い解像度のパターン薄膜を形成することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を、順を追って説明する。
【0030】
図1は、本発明のパターン薄膜形成の概念を示す模式図である。図1において、12は基板、10及び11は前記基板12上に形成されたポジ型金属酸化物パターン膜であって、このうち10はアルカリ水溶液に対して溶解性の低い膜、11は反応によりアルカリ水溶液に対して溶解性の高くなった膜を示す。
【0031】
図2(a)は、本発明のパターン形成における光照射前、同図(b)は光照射中の膜構造の模式図を示したものである。照射前に形成されたアルカリ水溶液に対して溶解性の低い膜10は、光透過部22と光非透過部23とを有するフォトマスク24を通して光21が照射されることによって、部分的にアルカリ水溶液に対して溶解性の高い膜11となる。
【0032】
本発明に用いられる金属アルコキシドとしては特に制限はなく、一種で用いても良いし、二種以上の金属アルコキシドを複数混合して用いても構わない。
【0033】
また、ここでの金属としては特に制限はなく、例えばLi,Be,B,Na,Mg,Al,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Gd,Tb,Ho,Yb,Lu,Hf,Ta,W,Os,Ir,Pt,Tl,Pb,Bi,Th等が挙げられる。
【0034】
金属アルコキシドの入手の容易性、価格、安定性などを考慮すると、チタンのアルコキシド、例えば、テトラブトキシチタン、テトライソプロキシチタンや、ジルコニウムのアルコキシド、例えばテトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウムや、アルミニウムのアルコキシド例えばトリプロポキシアルミニウムなどを好ましく用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、金属アルコキシドは、その一部が加水分解をしていても良いし、重合体を形成していても良い。さらに、金属アルコキシドに代えて、金属アルコキシドと同様に加水分解反応を示す金属ハロゲン化物、金属アセチルアセトナート錯体、金属カルボン酸塩等も用いることができ、これらを二種以上混合して用いてもよい。
【0036】
この反応の必須の化合物であるキレート安定化剤としては、β−ジケトン類やエタノールアミン類、カルボン酸類、β−ケトエステル類等を用いることができ、疎水表面を形成することが容易となる疎水性置換基を有するキレート安定化剤が好ましい。また、より好ましい疎水性置換基として、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物を用いることができる。
【0037】
具体的なキレート安定化剤として、β−ジケトン類としては、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンなど、エタノールアミン類としては、N−フェニルジエタノールアミンなど、カルボン酸類としては、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸など、β−ケトエステル類としては、3−オキソブタン酸エチルなどを例示できる。
【0038】
キレート安定化剤の含有量としては、金属アルコキシドに対して0.1〜4モル当量の範囲で用いることができ、好ましくは1〜2モル当量である。キレート安定化剤が少なすぎると容易に加水分解、及び重合反応が進行し、感光性が悪化する。またキレート安定化剤が多すぎると感光性の低下、成膜状態が悪化し良好なパターン薄膜が得られない。
【0039】
溶媒の種類としては特に制限はないが、上記組成物の溶解性を考慮すると、メタノール、エタノール等のアルコール類や、ジメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、またはジメチルホルムアミド等のアミド類が適当である。また、溶媒量の含有量は、作成する膜厚や流動性を考慮すると、金属アルコキシドの重量に対して、3〜50倍程度が好ましい。
【0040】
また、上記組成に加え本発明の効果を失わない範囲で、特開平5−116454号公報に示される酸発生剤や、特開平7−187669号公報に示される水発生剤、特開平6−166501号公報に示される金属アルコキシドの吸収波長を変化させる錯化剤、または特許第3120700号公報等に示さるような光反応性の高い錯化剤を加えてもよい。
【0041】
さらに、成膜性、耐久性、厚膜化を考慮し、金属微粒子、増粘剤、レベリング剤等を添加しても良い。
【0042】
以上説明した組成物の溶液を、所定形状の基板の上に、0.1μm〜1.0μmのウェット厚みに塗布する。前記基板の種類に特に制限はなく、例えば石英、ソーダライムガラス等のガラス基板、または金、白金等の金属基板を用いることができる。また、平板状、曲板状等、任意の形状のものを用いることができる。
【0043】
塗布方法についても特に制限はなく、所望する膜厚や形状に応じて、スピンコート法やディップコート法、グラビアコート法等から適切な方法を選択することができる。
【0044】
基板上に組成物の溶液を塗布後、通常、流動性がなくなる程度に乾燥させる。これは、基板上の塗布膜に流動性があると、照射時にパターン薄膜の解像度が低下するためである。通常、室温ないし100℃で30秒から10分程度で乾燥させることにより調製される。
【0045】
その後、塗布膜の上に所定形状の光透過領域と光遮蔽領域のパターンを有するフォトマスクを配置し、そのフォトマスクを介して光を、照射される位置での光強度が例えば2500mW/cm2の範囲になるように、100秒程度、塗布膜に照射する。この照射光としては特に制限はなく、金属アルコキシドやその錯体の吸収波長に応じて選択することができる。一般的には高圧水銀灯や、超高圧水銀灯等の紫外光を用いることができる。また、レーザ光を用いて塗布膜へ直接的に所望のパターンを描写しても良い。
【0046】
この光照射により、フォトマスクの光透過領域に対応する塗布膜の照射部は反応して、金属から疎水性置換基が外れ、−O−M−O−の結合を有するアルカリ水溶液に対して溶解性の高い膜11となる。一方、非照射部は、キレート安定化剤によって有機成分や疎水性部位が多く存在し、アルカリ水溶液に対して溶解性の低いR−M−R(Rは、キレート安定化剤)疎水構造膜10となる(図2(b)参照)。その結果、塗布膜における照射部と非照射部とのアルカリ水溶液に対する溶解性が大幅に異なることから、ポジ型パターン薄膜の形成が可能となる。
【0047】
光照射の後、前記塗布膜付き基板を必要に応じて、例えば50〜120℃の温度で1分〜10分程度加熱しても良い。この加熱工程により、照射部と非照射部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差をさらに大きくすることができ、解像度をより上昇させることが可能である。
【0048】
その後、前記塗布膜付き基板をエッチング溶液に浸漬し、前記塗布膜の照射部のエッチングを行う。その際、エッチング溶液としてはアルカリ水溶液を用いる。ここでのアルカリ水溶液とは、(A)水中で電離して水酸化物イオンOH - を生じている水溶液、または(B)水と反応し水酸化物イオンを生じる水溶液とする。
【0049】
前記(A)としては、アルカリ金属水酸化物塩、アルカリ土類金属水酸化物塩、水酸化四級アンモニウム塩、遷移金属水酸化物塩等が挙げられ、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルビニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルヘキサデシルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチル水溶液、ヒドラジン水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ルビジウム水溶液、水酸化ベリリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ストロンチウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化インジウム水溶液、水酸化アルミニウム水溶液、水酸化クロム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化銅水溶液、水酸化鉛水溶液、または水酸化ニッケル水溶液等が例示できる。
【0050】
また(B)としては、水溶性ルイス塩基が挙げられ、トリエタノールアミン水溶液、ジエタノールアミン水溶液、モノエタノールアミン水溶液、アンモニウム水溶液、トリメチルアミン水溶液、トリエチルアミン水溶液、トリプロピルアミン水溶液、水酸化ヒドラジン水溶液、ヒドラジン水溶液、またはピリジン水溶液等が例示できる。
【0051】
アルカリ水溶液としては、0.1重量%〜30重量%の濃度の水溶液を用いることが好ましい。さらに好ましい範囲は1重量%〜10重量%であり、とりわけ2重量%〜5重量%が望ましい。
【0052】
光照射後の塗布膜付き基板を上記アルカリ水溶液でエッチングすることにより、照射部はアルカリ水溶液に溶解し、非照射部はアルカリ水溶液に溶解しないポジ型のパターン薄膜が形成される。
【0053】
エッチング工程の終了後、基板をアルカリ水溶液から取り出し、リンスして基板上に残るアルカリ水溶液を除去する。その際に用いるリンス溶液としては、水(特に純水)が好適に用いられる。
【0054】
以上のようにして形成されたパターン薄膜は、必要に応じてマッフル炉、遠赤外線炉等で、例えば400〜500℃で10〜30分程度加熱することにより硬化され、厚み0.01〜0.30μm程度を有する金属酸化物パターン薄膜が得られる。
【0055】
また、上記エッチング工程においてエッチング時間を短くしたり、上記光照射工程において照射部に照射エネルギーを十分与えない等の方法を用いて、照射部が完全に除去されないように制御した場合、基板上には非照射部と共に照射部も残存することとなる。この性質を利用することにより、基板上に微細な凹状膜を作製することができる。
【0056】
例えば、光透過部が円形状で規則正しく二次元的に並んだフォトマスクを介して塗布膜に光照射を行い、その後エッチングすることによって、基板上には規則正しく並んだ半球状の凹状膜が形成され、例えばマイクロレンズアレイとして使用可能である。
【0057】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0058】
(実施例1)
脱水メタノール6gに、ベンゾイルアセトン1g、及びチタニウムテトラブトキシド2gを加えて溶かし、1時間攪拌して感光性組成物の溶液を調整した。
【0059】
この溶液を、ガラス基板(厚み0.5mmで10cm×10cm)の上に滴下し、スピンコート法(33.3回転/秒(2000r.p.m)により、均一なゾル膜(膜厚0.4μm)を形成した。これを90℃で1分間加熱して乾燥させた後、膜面上にフォトマスク(長さ2cmで幅10μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状)を配置し、フォトマスクを介して20cmの上方から主波長254nmでエネルギー量5J/cm2の紫外線を照射した。
【0060】
この光照射により、膜面の照射部は反応により金属から疎水性置換基が外れ、−O−M−O−の結合を有するアルカリ水溶液に対して溶解性の高い膜となる。一方、非照射部は、キレート安定化剤によって有機成分や疎水性部位が多く存在し、アルカリ水溶液に対して溶解性の低いR−M−R(Rは、キレート安定化剤)疎水構造膜となる。
【0061】
紫外線照射後、ガラス基板をテトラメチルアンモニウムハライド水溶液中に浸漬して30秒間エッチングを行ったところ、照射部の膜は除去され、ガラス基板上に幅10μm、深さ0.2μmのパターン膜が得られた。このガラス基板を、マッフル炉を用いて500℃、60分間加熱、乾燥することにより、有機物が除去されたTiO2薄膜が得られた。
【0062】
(実施例2)
上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅20μm、深さ0.2μmのパターン膜を得た。
【0063】
(実施例3)
上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅30μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅40μm、深さ0.3μmのパターン膜を得た。
【0064】
(実施例4)
上記実施例1の感光性組成物の調製において用いたチタニウムテトラブトキシドに代えてジルコニウムテトラブトキシドを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、上記実施例1と膜厚、凹凸形状共に同等のパターン膜を得た。
【0065】
(実施例5)
上記実施例1で用いたテトラメチルアンモニウムハライド水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を用いると共に、上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅20μm、深さ0.2μmのパターン膜を得た。
【0066】
(実施例6)
上記実施例1で用いたテトラメチルアンモニウムハライド水溶液の代わりにトリエチルアミン水溶液を用いると共に、上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅20μm、深さ0.2μmのパターン膜を得た。
【0067】
(実施例7)
実施例1のアルカリ水溶液において、テトラメチルアンモニウムハライド水溶液をトリエタノールアミン水溶液に変更し、20μm幅の光透過部と光非透過部とが交互に並んだフォトマスクを用いた以外は、実施例1と同様のプロセスにてパターン膜を作製したところ、幅20μm、深さ0.1μmの凹凸が交互に並んだパターン膜が得られた。このパターン膜は、照射部位の膜を完全にエッチングできておらず、良好なパターン性を示さなかった。
【0068】
(実施例8)
上記実施例1の感光性組成物の調製において用いたベンゾイルアセトンに代えてトリフルオロアセチルアセトンを用いると共に、上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅20μm、深さ0.2μmのパターン膜を得た。
【0069】
(実施例9)
上記実施例1の感光性組成物の調製において用いたベンゾイルアセトンに代えてアセト酢酸ベンジルを用いると共に、上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状のフォトマスクを用いた他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、幅20μm、深さ0.15μmのパターン膜を得た。
【0070】
(実施例10)
脱水メタノール4g及びジメチルホルムアミド6gに、ジルコニウムテトラブトキシド5g及びジベンゾイルメタン3gを加えて溶かし、1時間攪拌して感光性組成物の溶液を調製した。
【0071】
この溶液を、ガラス基板(厚み0.5mmで10cm×10cm)上に滴下し、スピンコート法(25回転/秒(1500r.p.m)により均一なゾル膜(膜厚0.4μm)を形成した。これを90℃で1分間加熱して乾燥させた後、膜面上にフォトマスク(長さ2cmで幅20μmの光透過部と光非透過部が交互に並んだストライプ状)を配置し、フォトマスクを介して20cmの上方から主波長254nmのエネルギー量2.5J/cm2の紫外線を膜面に照射した。
【0072】
この光照射により、膜面の照射部は反応により金属から疎水性置換基が外れ、−O−M−O−の結合を有するアルカリ水溶液に対して溶解性の高い膜となる。一方、非照射部は、キレート安定化剤によって有機成分や疎水性部位が多く存在し、アルカリ水溶液に対して溶解性の低いR−M−R(Rは、キレート安定化剤)疎水構造膜となる。
【0073】
紫外線照射後、ガラス基板をトリエタノールアミン水溶液中に浸漬して60秒間エッチングを行ったところ、膜の照射部は除去され、ガラス基板上に幅10μm、深さ0.1μmのパターン膜が得られた。このガラス基板を、マッフル炉を用いて500℃、60分間加熱、乾燥することにより、有機物が除去されたZrO2薄膜が得られた。
【0074】
(実施例11)
上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、直径3μmの円形状の光透過部と非透過部が二次元に並んだストライプ状のフォトマスクを用いると共に、照射部エッチング時間を15秒間とした他は、上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行って、直径3μm、深さ0.15μmの凹レンズ状のパターン膜を得た。
【0075】
(比較例1)
上記実施例1の感光性組成物の調製において用いたベンゾイルアセトンに代えてアセト酢酸エチルを用いると共に、上記実施例1で用いたフォトマスクの代わりに、長さ2cmで幅20μmの細長い光透過部と光非透過部とが交互に並んだフォトマスクを用いた他は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射を行った。紫外線照射が終わった塗布膜をテトラメチルアンモニウムハライド水溶液でエッチングしたところ、照射部のみならず非照射部も溶解してしまい、パターン薄膜が形成されなかった。これは、非照射部が疎水性の高い膜を形成することができなかったためである。
【0076】
(比較例2)
上記実施例1の感光性組成物の調製において、キレート配位子を加えなかったこと以外は上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行った。しかし、感光性組成物が不安定となり、ポジ型パターン薄膜は形成されなかった。
【0077】
(比較例3)
上記実施例1で用いたテトラメチルアンモニウムハライド水溶液に代えて1N塩酸水溶液を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして、ガラス基板上に塗布、乾燥、紫外線照射、照射部のエッチング除去、加熱乾燥を行った。その結果、ネガ型パターン膜が得られ、ポジ型パターン薄膜は形成されなかった。
【0078】
実施例1〜11及び比較例1〜3の結果を表1に示す。実施例及び比較例において、パターン性の良好なサンプルは○、パターン性の劣るサンプルは△、パターンを示さないものは×で評価した。これらの結果から、本発明のアルカリ水溶液によるエッチングの効果、及びキレート安定化剤の有効性が認められた。
【0079】
【表1】
Figure 0003982281
【0080】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、請求項1記載の形成方法によれば、エッチング溶液としてアルカリ水溶液を用いることで、照射部がエッチング溶液に溶解するポジ型パターンを形成することができ、またエッチング溶液として有機ホトレジストエッチングにおいて常用されているアルカリ水溶液を用いるため、コスト的、また廃液処理に有利なポジ型金属酸化物パターン薄膜を得ることができる。
また、前記キレート安定化剤としてβ−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類を用いるため、膜の安定性が高くなり、よりパターン薄膜の解像度を向上させることができる。
さらに、キレート安定化剤は疎水性置換基を有する化合物であるため、感光性ゾルゲル膜を形成させた際に、非照射部がより疎水性表面を形成し易くなるので、解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0081】
請求項記載の形成方法によれば、キレート安定化剤の疎水性置換基として、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物を用いるため、感光性ゾルゲル膜の非照射部がいっそう疎水表面を形成し易くなり、請求項1に記載の発明によって叶えられる効果に加えて、より高い解像度パターン薄膜を形成させることができる。
【0082】
請求項3記載の形成方法によれば、前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチルであるので、感光性ゾルゲル膜の非照射部がいっそう疎水表面を形成し易くなるため、より解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0083】
請求項記載の形成方法によれば、アルカリ水溶液として、アルキル化四級アンモニウム水酸化物水溶液、水酸化アルカリ金属塩水溶液、水酸化アルカリ土類金属塩水溶液、アミン類、及び水溶性ルイス塩基からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液を用いるため、感光性ゾルゲル膜の照射部が容易にアルカリ水溶液に溶解し、請求項1ないしに記載の発明によって叶えられる効果に加えて、解像度の高いポジ型金属酸化物パターン薄膜を形成できる。
【0084】
請求項記載の形成方法によれば、アルカリ水溶液として、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルビニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルヘキサデシルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチル水溶液、ヒドラジン水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ルビジウム水溶液、水酸化ベリリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ストロンチウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化インジウム水溶液、水酸化アルミニウム水溶液、水酸化クロム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化銅水溶液、水酸化鉛水溶液、水酸化ニッケル水溶液、トリエタノールアミン水溶液、ジエタノールアミン水溶液、モノエタノールアミン水溶液、アンモニウム水溶液、トリメチルアミン水溶液、トリエチルアミン水溶液、トリプロピルアミン水溶液、水酸化ヒドラジン水溶液、ヒドラジン水溶液、及びピリジン水溶液からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液を用いるため、請求項1ないしに記載の発明によって叶えられる効果に加えて、解像度の高いポジ型金属酸化物パターン薄膜を形成することができる。
【0085】
請求項記載の凹形状膜によれば、請求項1ないしのいずれか1項に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を用いて作製されているので、金属酸化物のパターン薄膜形成のみならず、基板上に微細な凹凸構造を有する膜を作製することができるため、凹状レンズ、散乱板等の光学デバイスの作製が可能となる。
【0086】
請求項記載の組成物によれば、金属アルコキシドとキレート安定化剤を主成分とするため、照射部がエッチング溶液に溶解するポジ型金属酸化物パターン薄膜を形成することができる。
また、前記キレート安定化剤としてβ−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類を用いるため、膜の安定性が高くなり、更にパターン薄膜の解像度を向上させることができる。
さらに、キレート安定化剤として疎水性置換基を有する化合物であるため、非照射部がより疎水性表面を形成し易くなるので、解像度の高いパターン薄膜を形成することができる。
【0087】
請求項記載の組成物によれば、キレート安定化剤の疎水性置換基として、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物を用いるので、請求項に記載の発明によって叶えられる効果に加えて、高い解像度パターン薄膜を形成させることができる。
【0088】
請求項9記載の組成物によれば、前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチル、であるので、請求項7に記載の発明によって叶えられる効果に加えて、感光性ゾルゲル膜の非照射部が疎水表面を形成し易くなるために、さらに高い解像度のパターン薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のパターン薄膜形成の概念を示す模式図である。
【図2】 (a)は光照射前の膜構造を示す模式図、(b)は光照射中の膜構造を示す模式図である。
【符号の説明】
10 アルカリ水溶液に対して溶解性の低い膜
11 反応によりアルカリ水溶液に対して溶解性の高くなった膜
12 基板
21 光
22 光透過部
23 光非透過部
24 フォトマスク

Claims (9)

  1. 金属アルコキシド及びキレート安定化剤を含む組成物を基板上に塗布し、塗布膜に光照射すると共に、この塗布膜における非照射部の化学反応を進行させた後、エッチング溶液で照射部を溶解、除去するポジ型酸化物パターン薄膜の形成方法において、
    前記エッチング溶液としてアルカリ水溶液を用い
    前記キレート安定化剤は、β−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類であり、疎水性置換基を有する化合物であることを特徴とするポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法。
  2. 前記キレート安定化剤の疎水性置換基は、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物である請求項1に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法。
  3. 前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
    前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
    前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
    前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチルである請求項1に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法。
  4. 前記アルカリ水溶液は、水酸化四級アンモニウム塩水溶液、水酸化アルカリ金属塩水溶液、水酸化アルカリ土類金属塩水溶液、アミン類水溶液、及び水溶性ルイス塩基水溶液からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液である請求項1ないしのいずれか1項に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法。
  5. 前記アルカリ水溶液は、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルビニルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチルヘキサデシルアンモニウム水溶液、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチル水溶液、ヒドラジン水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ルビジウム水溶液、水酸化ベリリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ストロンチウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化インジウム水溶液、水酸化アルミニウム水溶液、水酸化クロム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化銅水溶液、水酸化鉛水溶液、水酸化ニッケル水溶液、トリエタノールアミン水溶液、ジエタノールアミン水溶液、モノエタノールアミン水溶液、アンモニウム水溶液、トリメチルアミン水溶液、トリエチルアミン水溶液、トリプロピルアミン水溶液、水酸化ヒドラジン水溶液、ヒドラジン水溶液、及びピリジン水溶液からなる群より選択された少なくとも一種の水溶液である請求項1ないしのいずれか1項に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のポジ型金属酸化物型金属酸化物パターン薄膜の形成方法を用いて作製された凹形状膜。
  7. 金属アルコキシドとキレート安定化剤を主成分とし、前記キレート安定化剤が、β−ジケトン類、エタノールアミン類、カルボン酸類、またはβ−ケトエステル類であり、疎水性置換基を有する化合物であるポジ型金属酸化物パターン薄膜形成用組成物。
  8. 前記キレート安定化剤の疎水性置換基は、フェニル基、アルキル基、環状アルキル基、アリル基、鎖状アルキル基、フッ素置換アルキル基、及びシリル基からなる群より選択された少なくとも一種の化合物である請求項に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜形成用組成物。
  9. 前記β−ジケトン類は、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンのいずれかであり、
    前記エタノールアミン類は、N−フェニルジエタノールアミンであり、
    前記カルボン酸類は、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸のいずれかであり、
    前記β−ケトエステル類は、3−オキソブタン酸エチルである請求項7に記載のポジ型金属酸化物パターン薄膜形成用組成物。
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