JP3980707B2 - 自動車の車体構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車における車体構造、特に前席乗員の足元付近の車体構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車において、車体の、前席乗員が足を載せる足元部分(即ちダッシュボード下部のトーボードと呼ばれる傾斜部分や、これに連なるフロアパネル前部)にフロアカーペットを一面に敷いたり或いはフロアマットを置くことは、従来より広く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動車の衝突により車体に前方からの大きな衝突荷重が作用した場合には、前部車体(例えばサイドフレーム)の変形や後退変位に因りダッシュボード下部やフロアパネル前端部が変形して、そこに載せた乗員の足に衝撃が加わることがあるが、この衝撃は、比較的柔軟な前記フロアカーペットやフロアマットの緩衝作用により一応緩和できるようになっている。
【0004】
ところで上記衝撃を十分に緩和して衝突時における乗員の足の負担を軽減するために、例えば車体足元部分に厚いパッド材を設けることが考えられるが、この場合には、厚いパッド材が車室側に少なからず突き出して、それだけ足元空間を狭くする不都合がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑み提案されたものであって、前記不都合を回避しながら、衝突時における足への衝撃を効果的に吸収緩和して足の負担を軽減できるようにした、自動車の車体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車体の一部をなし車室とエンジンルームとを区画するダッシュボードが、略鉛直な鉛直部と、その鉛直部の下端に連なり且つ後下がりに傾斜したトーボード部とを備え、そのトーボード部の下端縁が車体のフロアパネルの前端部に結合され、ダッシュボードの前面には、車室前側の車体の左右一対のサイドフレームの後端部が鉛直部及びトーボード部に跨がって結合されてなる自動車の車体構造において、車体の、前席乗員が足を載せる足元部分が、ダッシュボードのトーボード部と フロアパネル前端部とに跨がって二重パネル構造とされ、この二重パネル構造は、車体の前記足元部分にトーボード部及びフロアパネル前端部に跨がって形成される開口を下側から塞ぐと共にトーボード部とフロアパネルとに沿うように車両側面視でV字状に屈曲した扁平皿状の金属板製ロアパネルと、多数の小孔を有して前記開口を塞ぐパンチメタルとで構成されることを特徴としており、この特徴によれば、前席乗員が足を乗せる車体足元部分の剛性向上が図られると共にパンチメタル部において衝撃吸収性能が発揮されるから、自動車の衝突時に車体足元部分に衝撃が作用しても、その衝撃を吸収緩和しつつ車体足元部分の変形が効果的に抑えられる。また上記のように車体足元部分を二重パネル構造としても、特にその上面がパンチメタルでフラットであり且つ下面のロアパネルを扁平皿状として下側に膨らませるようにしたことで、車体足元部分が車室側に張出すことが抑えられ、足元空間の減少が回避される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した参考例及び本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0008】
添付図面において、図1〜図3は、参考例を示すもので、特に図1は車室助手席側足元の一部省略斜視図、図2は図1の2−2線矢視断面図、図3は車両衝突時の変形状態を示す、図2と同様の断面図である。また図4〜図6は本発明の施例を示すもので、特に図4は車室助手席側足元の一部省略斜視図、図5は図4の5−5線矢視断面図、図6は車両衝突時の変形状態を示す、図5と同様の断面図である。
【0009】
先ず、参考例を示す図1,図2において自動車Vの車体Fは、鋼板パネルの溶接組立によるモノコック構造になっており、車室Cより前側の車体Fは、その左右両側部において前後方向に各々延びる左右一対のサイドフレームSを一体に有している。この左右のサイドフレームSは、各々閉断面構造に形成されて前部車体の骨格をなしており、またその両サイドフレームS間には、エンジン支持用のサブフレーム(図示せず)の左右両側部が複数箇所で結合支持される。
【0010】
また車体Fの一部をなし車室Cの前端壁を構成するダッシュボードDが、車室Cとエンジンルームとを区画するように概ね鉛直に配置されている。そのダッシュボードDの下部は後下がりに傾斜していて、前席乗員の足に対応するトーボード部Dtを構成しており、その下端縁は、車体FのフロアパネルFpの前端部と一体的に結合されている。ダッシュボードDの下端寄りの前面には、前記左右のサイドフレームSの各後端部が該ボードDの略鉛直な鉛直部Dvと傾斜した下端部(トーボード部Dt)とに跨がって、且つ相互に間隔をおいて一体的に結合される。以上は、従来普通の車体構造である。
【0011】
また助手席側においては、車体Fの、前席乗員が足を載せる足元部分には、ダッシュボードDのトーボード部DtとフロアパネルFp前端部とに跨がって、車室側に開口した方形状の浅い凹部1が形成されており、その凹部1には、自動車の衝突により車体Fから足に加わる衝撃を吸収緩和するためのエネルギ吸収体2が収納設置される。このエネルギ吸収体2は、複数の小室3を有して前記凹部1内面に一体的に結合される合成樹脂成形体より構成される。このような合成樹脂成形体として、本参考例では、縦横に格子状に並ぶ多数の壁体相互を一体化(従ってそれらの壁体相互に形成される多数の小空間が前記小室3に相当)した井桁構造のポリプロピレン製箱体が選定される。
【0012】
前記エネルギ吸収体2は、車体足元部分の前記凹部1がトーボード部DtとフロアパネルFpとに沿うようく字状に屈曲しているのに対応して、同様にく字状に屈曲形成されており、このエネルギ吸収体2の傾斜した前半部上面は、乗員の足裏を臨ませるトーボード面とされ、またその水平な後半部上面は、乗員の踵部6を載せるヒール載せ面とされる。尚、エネルギ吸収体2は、その全体を一体に成形してもよく、また複数の構成要素(例えばトーボード部Dtに対応する前半部分と、フロアパネルFpに対応する後半部分)に分割して成形してもよい。
【0013】
前記凹部1の底面には、車室側に隆起して該凹部1を横切る複数の取付ボス1aが相互に間隔をおいて一体に形成されており、これらボス1aに対応して前記エネルギ吸収体2の下面には凹溝2aが形成される。そしてエネルギ吸収体2の取付けに当たっては、前記ボス1aに凹溝2aを嵌め込み、該吸収体2の下面を凹部1底面に接着等の結合手段を以て結合する。このようにボス1aに凹溝2aを係合させることによって、エネルギ吸収体2の凹部1底面に対する前後方向相対移動が効果的に規制され、該吸収体2の取付強度を高めることができる。
【0014】
ダッシュボードDの後面およびフロアパネルFpの上面には、フロアカーペット5が一面に敷きつめられており、従って前記エネルギ吸収体2の上面もこのフロアカーペット5により覆われる。
【0015】
次に前記参考例の作用を説明する。自動車Vの通常の使用状態で、エネルギ吸収体2は車体足元部分の凹部1に収容されていて車室C側に突き出すことはないから、該吸収体2を特設しても前席乗員の足元空間が減ぜられることはなく、即ち通常の自動車と同様の足元空間が確保される。
【0016】
また自動車の衝突時には、前部車体(例えばサイドフレームS)の急激な変形や後退変位に因り、前席乗員が足を乗せる車体足元部分に衝撃が作用することがあるが、その衝撃は、該車体足元部分に位置するエネルギ吸収体2により効果的に吸収緩和されるため、それだけ足の負担が軽減される。
【0017】
またこの自動車の衝突の際に前部車体(例えばサイドフレームS)の後退変位等に伴い、図3に示すようにダッシュボードD下部の足先対応部分が後方へ迫り出すように変形する場合がある。この場合、エネルギ吸収体2は、複数の小室3を有して凹部1の内面に一体的に結合される合成樹脂材より構成されていて、車体足元部分の剛性を、大幅な重量増を伴うことなく高めることができるため、該吸収体2により車体足元部分の変形を極力抑えることができ、これにより、衝突時における乗員の足の荷重負担が一層軽減され、更にその足首角度(脛部と足先部とのなす角度)の減少も極力抑えることができて足首に加わる曲げ荷重が軽減される。
【0018】
また図4〜図6には本発明の施例が示される。この実施例では、車体Fの、前席乗員が足を載せる足元部分が、ダッシュボードDのトーボード部Dtとこれに連なるフロアパネルFp前端部とに跨がって二重パネル構造Wとされ、その二重パネル構造部の上面、多数の小孔7aを有するパンチメタル7(即ち多孔金属板)より構成されている。
【0019】
即ち、この二重パネル構造部分においては、車体足元部分、即ちトーボード部Dt及びフロアパネルFp前端部には方形状の開口8が形成されており、その開口8を下側から塞ぐ扁平皿状の金属板製ロアパネル9と、同開口8を上側から塞ぐパンチメタル7とがその開口8の縁部に溶接等に結合手段により一体的に結合される。前記ロアパネル9は、車室Cと反対側へ膨らんだ皿状に形成されており、しかもトーボード部DtとフロアパネルFpとに沿うようにV字状に屈曲している。
【0020】
而してこの施例によれば、前席乗員が足を乗せる車体足元部分は、これを二重パネル構造Wとしたことで剛性が高められると共に、その上面のパンチメタル部7において衝撃吸収性能が発揮されるから、参考例と同様の作用効果が期待でき、即ち、自動車の衝突時に車体足元部分に前記衝撃が作用しても、その衝撃を吸収緩和しつつ車体足元部分の変形が効果的に抑えられる。尚、この実施例では、車体足元部分を二重パネル構造Wとしても、特にその上面(パンチメタル7)をフラットとし且つ下面(ロアパネル9)を下側に膨らませるようにしたことで、車体足元部分が車室側に張出すことが抑えられ、足元空間の減少が回避される。
【0021】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。例えば、前記実施例では、助手席側の車体足元部分を二重パネル構造Wとしたものを示したが、本発においては、運転席側の車体足元部分を二重パネル構造としてもよい。
【0022】
【発明の効果】
発明によれば、車体の、前席乗員が足を載せる足元部分が、ダッシュボードのトーボード部とフロアパネル前端部とに跨がって二重パネル構造とされ、この二重パネル構造は、車体の前記足元部分にトーボード部及びフロアパネル前端部に跨がって形成される開口を下側から塞ぐと共にトーボード部とフロアパネルとに沿うように車両側面視でV字状に屈曲した扁平皿状の金属板製ロアパネルと、多数の小孔を有して前記開口を塞ぐパンチメタルとで構成されるので、上記二重パネル構造により車体足元部分の剛性を高めることができ、更にその上面パンチメタルとして衝撃吸収性能が発揮されるようにしたことで、自動車の衝突時に車体足元部分に前記衝撃が作用しても、その衝撃を効果的に吸収緩和しつつ車体足元部分の変形を効果的に抑えることができ、従って足の負担を一層軽減することができる。また上記のように車体足元部分を二重パネル構造としても、特にその上面がパンチメタルでフラットであり且つ下面のロアパネルを扁平皿状として下側に膨らませるようにしたことで、車体足元部分が車室側に張出すことが抑えられ、足元空間の減少が回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例を示す車室助手席側足元の一部省略斜視図
【図2】 図1の2−2線矢視断面図
【図3】 車両衝突時の変形状態を示す、図2と同様の断面図
【図4】 本発明の施例を示す車室助手席側足元の一部省略斜視図
【図5】 図4の5−5線矢視断面図
【図6】 車両衝突時の変形状態を示す、図5と同様の断面図
【符号の説明】
C・・・車室
D・・・ダッシュボード
Dt・・トーボード部
Dv・・鉛直部
F・・・車体
Fp・・フロアパネル
S・・・サイドフレーム
W・・・二重パネル構造
1・・・凹部
2・・・エネルギ吸収体
3・・・小室
7・・・パンチメタル

Claims (1)

  1. 車体(F)の一部をなし車室(C)とエンジンルームとを区画するダッシュボード(D)が、略鉛直な鉛直部(Dv)と、その鉛直部(Dv)の下端に連なり且つ後下がりに傾斜したトーボード部(Dt)とを備え、そのトーボード部(Dt)の下端縁が車体(F)のフロアパネル(Fp)の前端部に結合され、ダッシュボード(D)の前面には、車室(C)前側の車体(F)の左右一対のサイドフレーム(S)の後端部が鉛直部(Dv)及びトーボード部(Dt)に跨がって結合されてなる自動車の車体構造において、
    車体(F)の、前席乗員が足を載せる足元部分が、ダッシュボード(D)のトーボード部(Dt)とフロアパネル(Fp)前端部とに跨がって二重パネル構造(W)とされ、
    この二重パネル構造(W)は、車体(F)の前記足元部分にトーボード部(Dt)及びフロアパネル(Fp)前端部に跨がって形成される開口(8)を下側から塞ぐと共にトーボード部(Dt)とフロアパネル(Fp)とに沿うように車両側面視でV字状に屈曲した扁平皿状の金属板製ロアパネル(9)と、多数の小孔(7a)を有して前記開口(8)を塞ぐパンチメタル(7)とで構成されることを特徴とする、自動車の車体構造。
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