JP3979855B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂とその製造方法に関する。さらに詳しくは、透明性と耐熱性、機械的強度に優れ、かつ成形性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂とその効果的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、機械的強度などの性質に優れていることから、いわゆるエンジニアリングプラスチックとして様々な産業分野において広く用いられている。この芳香族ポリカーボネート樹脂としては、一般に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕に、ホスゲンやジフェニルカーボネートなどの炭酸エステル形成性化合物を反応させて製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられている。このビスフェルールAを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や機械的強度と成形性とのバランスが良好であることから、電気・電子機器や光学機器などの素材として多用されている。近年、これら機器類に対する小型化・軽量化の要請が増大しており、このような要請に対応するためには、芳香族ポリカーボネート樹脂が有する基本的な特性を低下させることなく、さらに透明性や耐熱性、機械的強度などの特性をより向上させた芳香族ポリカーボネート樹脂の開発が要請されている。
【0003】
そこで、このような要請に応えるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料である二価フェノールとして、様々な化学構造を有する化合物を用いることによって、透明性や耐熱性、機械的強度などの特性をより向上させた芳香族ポリカーボネート樹脂を得る試みがなされている。例えば、この二価フェノールとして、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンや9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどを単独あるいはビスフェルールAと併用してこれを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂が提案されている。しかしながら、これら二価フェノールの残基を含有する構成単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェルールAを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂よりも高い耐熱性を有しているが、電気・電子機器部品などの製造工程ではさら高い耐熱性が要求されている。このように、電気・電子機器や光学機器部品の素材として用いる場合、更なる耐熱性や機械的強度を有し、かつ成形性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂の開発が要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明性と耐熱性、機械的強度に優れ、かつ成形性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アダマンタン骨格を有しかつ置換基を持ったフェニル基により構成された特定の二価フェノール類を、炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂によれば、上記目的が達成できることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1) 下記一般式〔1〕
【0007】
【化9】
【0008】
〔式〔1〕中、R1 はハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、mは1〜4の整数を示す。〕で表される繰返し単位からなり、かつ塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上である芳香族ポリカーボネート樹脂。
(2) 一般式〔1〕におけるR1 が炭素数1〜6のアルキル基である前記(1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
(3) 下記一般式〔2〕
【0009】
【化10】
【0010】
〔式〔2〕中、R2 はハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕で表される繰返し単位(1)と、下記一般式〔3〕
【0011】
【化11】
【0012】
〔式〔3〕中、R3 はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、Xは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換もしくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン基、または−C(CH3 )2 −ph−C(CH3 )2 −(ただし、phはフェニレン基を示す)を示し、pは0〜4の整数を示す。〕で表される繰返し単位(2)からなり、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上である芳香族ポリカーボネート樹脂。
(4) 繰返し単位(2)が、下記一般式〔4〕
【0013】
【化12】
【0014】
〔式〔4〕中、R3 、Xおよびpは、一般式〔3〕におけるR3 、Xおよびpと同一の意味を有する。〕で表されるものである前記(3)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
(5) 一般式〔2〕におけるR2 が、炭素数1〜6のアルキル基である前記(3)または(4)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
(6) 一般式〔3〕におけるXが、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基または9,9’−フルオレニリデン基である前記(3)〜(5)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
(7) 下記一般式〔5〕
【0015】
【化13】
【0016】
〔式〔5〕中、R1 はハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、mは1〜4の整数を示す。〕で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物に、炭酸エステル形成性化合物を反応させることを特徴とする前記(1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(8) 1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物として、一般式〔5〕におけるR1 が炭素数1〜6のアルキル基であるものを用いる前記(7)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(9) 下記一般式〔6〕
【0017】
【化14】
【0018】
〔式〔6〕中、R2 はハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物と、下記一般式〔7〕
【0019】
【化15】
【0020】
〔式〔7〕中、R3 はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基および炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を示し、Xは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換もしくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン基、または−C(CH3 )2 −ph−C(CH3 )2 −(ただし、phはフェニレン基を示す)を示し、pは0〜4の整数を示す。〕で表される二価フェノールに、炭酸エステル形成性化合物を反応させることを特徴とする前記(3)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(10) 1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物として、一般式〔6〕におけるR2 が炭素数1〜6のアルキル基であるものを用いる前記(9)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(11) 二価フェノールとして、下記一般式〔8〕
【0021】
【化16】
【0022】
〔式〔8〕中、R3 、Xおよびpは一般式〔7〕におけるR3 、Xおよびpと同一の意味を有する。〕で表されるものを用いる前記(9)または(10)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(12) 二価フェノールとして、一般式〔7〕におけるXが−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基または9,9’−フルオレニリデン基であるものを用いる前記(9)〜(11)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記一般式〔1〕で表される繰返し単位からなり、かつ塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上の芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0024】
そして、この芳香族ポリカーボネート樹脂において、前記一般式〔1〕におけるR1 が表わすハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子が挙げられる。また、同式におけるR1 が表わす炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基が挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。さらに、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。さらに、この一般式〔1〕におけるmは、1〜4であるものを用いることができるが、1〜2であるものがより好ましい。また、mが2以上である場合、それぞれのR1 は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
そして、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、この一般式〔1〕におけるR1 が炭素数1〜6のアルキル基であるものが、耐熱性に優れることから特に好ましい。
また、本発明の共重合型の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記一般式〔2〕で表される繰返し単位(1)と前記一般式〔3〕で表される繰返し単位(2)からなり、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上である芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0026】
そして、この芳香族ポリカーボネート樹脂において、一般式〔2〕のR2 が表わすハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基、フルオロアルキル基としては、それぞれ上記一般式〔1〕でR1 が表わすものと同様なものが挙げられる。また、一般式〔2〕におけるnは、1〜4のものが用いられるが、1〜2であるものがより好ましい。さらに、この一般式〔2〕におけるR2 として、炭素数1〜6のアルキル基を有する繰返し単位(1)を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂が、耐熱性に優れていることから好ましい。
【0027】
また、一般式〔3〕においてR3 が表わすハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子が挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。さらに、炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。これら各種の置換基の中でも、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、トリフルオロメチル基が好ましいものとして挙げられる。さらに、一般式〔3〕におけるpは、0すなわち水素原子のみであってもよいし、1〜4のいずれの数の置換基を有するものでもよい。
【0028】
また、この一般式〔3〕におけるXとしては単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換もしくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン基、または−C(CH3 )2 −ph−C(CH3 )2 −(ただし、phはフェニレン基を示す)であるものが挙げられるが、これらの中でも、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基であるものが、耐熱性に優れることから好ましい。
【0029】
ここで、上記Xが表わす−C(R4 R5 )−について、これらR4 、R5 が表わす炭素数1〜6のアルキル基は、上記R1 が表わす炭素数1〜6のアルキル基と同様なものが挙げられる。また、このXが表わす炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基などが挙げられ、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)基、1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)基が挙げられる。
【0030】
さらに、この芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する繰返し単位(2)は、一般式〔4〕で表されるp−フェニレン基を含む構造であるものが、耐熱性や機械的強度に優れることから好ましい。
つぎに、この共重合型の芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する繰返し単位(1)と繰返し単位(2)との含有割合については、特に制約はないが、この繰返し単位(1)の全繰返し単位に対する含有割合〔(1)/((1)+(2))〕が、モル比において0.05〜0.99の範囲内にあるものが好ましい。それは、この繰返し単位(1)のモル比が0.05よりも低い場合には、成形性は良好であるが耐熱性の向上の度合いが小さく、また、このモル比が0.99よりも高いものでは、優れた耐熱性を示すが、溶媒に対する溶解性が低く成形性が低下するからである。この繰返し単位(1)の全繰返し単位に対するモル比は、さらに、0.05〜0.95であるものが、耐熱性や機械的強度と成形性のバランスが良好であることから好ましい。
【0031】
そして、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上であるものである。それは、この還元粘度が0.1デシリットル/g未満であると、その芳香族ポリカーボネート樹脂の耐熱性や機械的強度が充分に得られないからである。この還元粘度は、さらに0.3〜3.0デシリットル/gであるものが、電気・電子機器や光学機器などの成形素材として特に好適である。
【0032】
つぎに、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記一般式〔5〕で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物に、炭酸エステル形成性化合物を反応させる方法により製造することができる。また、共重合型の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記一般式〔6〕で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物と、一般式〔7〕で表される二価フェノール類に、炭酸エステル形成性化合物を反応させる方法によって製造することができる。これら反応を行うに際しては、重合溶媒や酸受容体、末端停止剤、触媒の存在下に界面重合法により行う方法あるいは減圧下にエステル交換反応を行う方法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0033】
そして、一般式〔5〕および〔6〕においてR1 〜R6 が表わすハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基、フルオロアルキル基としては、それぞれ前記一般式〔1〕におけるR1 が表わすこれら原子や基と同様のものが挙げられる。ここで、これら一般式〔5〕、〔6〕で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物としては、例えば、1,3−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−i−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−n−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−i−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−n−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−n−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−ベンジル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−ナフチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−テトラフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,5−ジエトキシ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
【0034】
また、前記一般式〔7〕においてXやR3 が表わすハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基、フルオロアルキル基については、それぞれ上記一般式〔3〕でXやR3 が表わすこれら原子や基と同様のものが挙げられる。この一般式〔7〕で表される二価フェノール類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの4,4’−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4メチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフルオロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ペンチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニルなどのジヒドロキシ−p−ターフェニル類;4,4’’’−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルなどのジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類;2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,6−ジメチルピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジエチルピラジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類;1,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、2,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メンタンなどのビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類;1,4−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼンなどのビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類などが挙げられる。
【0035】
そして、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に用いる二価フェノールとしては、上記一般式〔8〕で表されるものが好適に用いられる。さらに、この二価フェノールとしては、上記一般式〔7〕および〔8〕におけるXが、−C(R4 R5 )−(ただし、R4 、R5 は各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基であるものを用いると、芳香族ポリカーボネート樹脂として耐熱性や機械的強度などに優れたものが得られることから好ましい。このような化学構造を有する二価フェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが好適なものとして挙げられる。
【0036】
また、上記炭酸エステル形成性化合物としては、ホスゲンなどの各種ジハロゲン化カルボニルや、クロロホーメートなどのハロホーメート、炭酸エステル化合物などを用いることができる。ホスゲンなどのガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
そして、この反応において用いる溶媒としては、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に使用されているものが用いられる。例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1.1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、アセトフェノンなどが好適なものとして挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いてもよい。
【0037】
また、酸受容体としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、ピリジンなどの有機塩基、あるいはこれらの混合物を用いることができる。そして、これら酸受容体の使用割合は、この反応の化学量論比(当量)を考慮して、原料の二価フェノールの水酸基1モル当たり、1当量もしくはそれより若干過剰量、好ましくは1〜5当量の酸受容体を使用すればよい。
【0038】
さらに、末端停止剤としては、一価のフェノール類を用いることができる。例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(P−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカンなどが好適に用いられる。
【0039】
そして、触媒としては、トリエチルアミンなどの第三級アミン類や第四級アンモニウム塩が好適に用いられる。さらに、この反応系には、亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加して反応を行う方法を採用してもよい。
つぎに、界面重合法による場合の反応条件としては、反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃であり、反応圧力は減圧、常圧、加圧のいずれでもよいが、常圧もしくは反応系の自圧程度の加圧下に行うのが好ましい。反応時間については、反応温度により左右されるが、0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。また、この反応は、連続法、半連続法、回分法のいずれの反応方式で実施してもよい。
【0040】
また、エステル交換反応による場合には、減圧下に、120〜350℃において反応させる。この場合、減圧度を反応の進行に従って段階的に強化し、最終的には1torr以下まで減圧して、生成するフェノール類を反応系外に抜き出すようにする。反応時間は、1〜4時間とすればよく、必要に応じて触媒や酸化防止剤を添加してもよい。
【0041】
このようにして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、公知のビスフェノールAを原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂と同様の手法により成形加工することができる。また、成形加工に際して用いる各種の添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などを適量配合することができる。そして、このようにして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、機械的強度に優れることから、電気・電子機器類や光学機器類、例えば、ヘッドランプレンズなどのレンズ類、プリズム、光ファイバー、光ディスク、表示機器用パネルなどの成形用素材として有用性の高いものである。
【0042】
【実施例】
つぎに、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン170gを2規定濃度の水酸化カリウム水溶液1,530ミリリットルに溶解した溶液に、溶媒の塩化メチレン900ミリリットルを加えて攪拌しながら、冷却下に、この液中にホスゲンガスを950ミリリットル/分の割合で30分間吹き込んだ。ついで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
【0043】
そして、得られた塩化メチレン溶液110ミリリットルに塩化メチレンを加えて全量を150ミリリットルとした後、これに、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン5.5gを2規定濃度の水酸化カリウム水溶液50ミリリットルに溶解した溶液を加え、さらに分子量調節剤としてp−tert−ブチルフェノール0.2gを加えた。ついで、この混合液を激しく攪拌しながら、触媒として7%濃度のトリエチルアミン水溶液1.0ミリリットルを加え、攪拌下に、25℃で1.5時間反応させた。
【0044】
反応終了後、得られた反応生成物を塩化メチレン0.5リットルによって希釈し、水0.5リットルで2回洗浄した。ついで、0.01規定濃度の塩酸0.5リットルで洗浄した後、さらに水0.5リットルで2回洗浄した。そして、得られた有機相をメタノール中に投入して再沈精製することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
【0045】
ここで得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃における還元粘度〔ηSP/c〕が0.4デシリットル/gであった。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂について 1H−NMRスペクトル分析による構造確認の結果、その化学構造は下記の繰返し単位からなるものであると認められた。
【0046】
【化17】
【0047】
また、この芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を測定したところ、189℃であり、極めて高い耐熱性を有するものであることが確認された。さらに、この芳香族ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を用いてキャスト製膜したフィルムは、無色で透明性の高いものであった。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1において用いた原料の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンに代えて、1,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン6gを用いた他は、実施例1と同様にした。
ここで得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃における還元粘度〔ηSP/c〕が0.5デシリットル/gであった。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂について 1H−NMRスペクトル分析による構造確認の結果、その化学構造は下記の繰返し単位からなるものであると認められた。
【0049】
【化18】
【0050】
また、この芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を測定したところ、196℃であり、極めて高い耐熱性を有するものであることが確認された。さらに、この芳香族ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を用いてキャスト製膜したフィルムは、無色で透明性の高いものであった。
【0051】
〔実施例3〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン170gを2規定濃度の水酸化カリウム水溶液1,530ミリリットルに溶解した溶液に、溶媒の塩化メチレン900ミリリットルを加えて攪拌しながら、冷却下に、この液中にホスゲンガスを950ミリリットル/分の割合で30分間吹き込んだ。ついで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
そして、得られた塩化メチレン溶液110ミリリットルに塩化メチレンを加えて全量を150ミリリットルとした後、これに、1,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン5.5gを2規定濃度の水酸化カリウム水溶液50ミリリットルに溶解した溶液を加え、さらに分子量調節剤としてp−tert−ブチルフェノール0.2gを加えた。ついで、この混合液を激しく攪拌しながら、触媒として7%濃度のトリエチルアミン水溶液1.0ミリリットルを加え、攪拌下に、25℃で1.5時間反応させた。
【0052】
反応終了後、得られた反応生成物を塩化メチレン0.5リットルによって希釈し、水0.5リットルで2回洗浄した。ついで、0.01規定濃度の塩酸0.5リットルで洗浄した後、さらに水0.5リットルで2回洗浄した。そして、得られた有機相をメタノール中に投入して再沈精製することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
【0053】
ここで得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃における還元粘度〔ηSP/c〕が0.4デシリットル/gであった。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂について 1H−NMRスペクトル分析による構造確認の結果、その化学構造は下記の繰返し単位からなるものであると認められた。
【0054】
【化19】
【0055】
また、この芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を測定したところ、170℃であり、高い耐熱性を有するものであることが確認された。さらに、この芳香族ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を用いてキャスト製膜したフィルムは、無色で透明性の高いものであった。
〔比較例1〕
原料の二価フェノールとして、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのみを用いて、公知の界面重合法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造した。
【0056】
ここで得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃における還元粘度〔ηSP/c〕が0.4デシリットル/gであった。この芳香族ポリカーボネート樹脂の化学構造は下記の繰返し単位からなるものであると認められた。
【0057】
【化20】
【0058】
また、この芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を測定したところ、170℃であった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、透明性と耐熱性および機械的強度に優れ、かつ成形性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂と、その効果的な製造法を提供することができる。
Claims (8)
- 下記一般式〔2〕
で表される繰返し単位(1)と、下記一般式〔3〕
で表される繰返し単位(2)からなり、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、0.1デシリットル/g以上である芳香族ポリカーボネート樹脂。 - 一般式〔2〕におけるR2が、炭素数1〜6のアルキル基である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
- 一般式〔3〕におけるXが、−C(R4R5)−(ただし、R4、R5は各々独立に、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す))、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基または9,9'−フルオレニリデン基である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
- 下記一般式〔6〕
で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物と、下記一般式〔7〕
で表される二価フェノールに、炭酸エステル形成性化合物を反応させることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン化合物として、一般式〔6〕におけるR2が炭素数1〜6のアルキル基であるものを用いる請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 二価フェノールとして、一般式〔7〕におけるXが−C(R4R5)−(ただし、R4、R5は各々独立に、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示す))、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基または9,9'−フルオレニリデン基であるものを用いる請求項5〜7のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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