JP3979724B2 - 吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、紙オムツ(使い捨てオムツ)や生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料に好適に用いられる吸水性樹脂に関するものである。さらに、詳しくは、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して得られる、高い造粒強度および、高い加圧下吸収倍率を示す、吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的とする吸水性樹脂が幅広く利用されている。
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、及びカチオン性モノマーの架橋体等が知られている。
【0003】
上記の吸水性樹脂が備えるべき特性としては、体液等の水性液体に接した際の優れた吸収量や吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。しかしながら、これらの諸特性間の関係は必ずしも正の相関関係を示さず、例えば、吸収倍率の高いものほど通液性、ゲル強度及び吸収速度等の物性は低下してしまう。
【0004】
このような、吸水性樹脂の吸水諸特性をバランス良く改良する方法として吸水性樹脂の表面近傍を架橋する技術が知られており、これまでに様々な方法が開示されている。
例えば、架橋剤として、多価アルコールを用いる方法、多価グリシジル化合物、多価アジリジン化合物、多価アミン化合物、多価イソシアネート化合物を用いる方法、グリオキシサールを用いる方法、多価金属を用いる方法、シランカップリング剤を用いる方法、アルキレンカーボネートを用いる方法等が知られている。また、架橋反応時に、不活性無機粉末を存在させる方法、二価アルコールを存在させる方法、水とエーテル化合物とを存在させる方法、一価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、有機酸塩、ラクタム等を存在させる方法も知られている。
【0005】
一方、一般的に、吸水性樹脂は、150μm以下の粒径を有する粉末(微粉末)の含有量が少ない程好ましい。かかる微粉末は、おむつなどの吸収物品中でも目づまりによって通液性が低下する要因となる。また、取り扱い時の粉塵としてのロスに加え、該微粉末に前記した表面架橋を施したとしても、加圧下の吸収倍率等の諸物性が向上し難いという問題を有している。このため、微粉末の少ない吸水性樹脂が切望されている。
【0006】
従来、微粉末の少ない吸水性樹脂の製造方法としては、▲1▼重合や粉砕の度合いを最適化して粒度を調整する方法、および、▲2▼発生した微粉末を、篩や気流等により分級、除去する方法が知られている。
しかしながら、上記▲1▼の方法でも、製造工程中に、10数%〜数10%といった多量の微粉末が発生する。▲2▼の方法で発生した微粉末を廃棄することは、収率を大きく低下させると共に、廃棄コストの面からも不利となる。
【0007】
そこで、吸水性樹脂の製造工程で必然的に発生してしまう微粉末を造粒ないし再生することで上記の問題を解決しようとする提案が種々なされている。
例えば、造粒以外の手段として、例えば欧州特許463388A号、米国特許4970267号、欧州特許417761A号、および欧州特許496594Aでは、微粉末と水や含水ゲルとを混合することにより上記微粉末をゲル化した後、得られたゲル化物を粉砕後、乾燥させることで大きな粒子に再生する方法が提案されている。また、欧州特許644224号公報では、不溶性無機微粉末の存在下、吸水性樹脂に水溶性ないし水分散性高分子化合物を含む水溶液を、得られる造粒物の含水率が30重量%〜70重量%となるように添加する造粒方法が提案されている。さらに、米国特許5002986号、欧州特許318989B号、および米国特許4734478号公報では、約150μm〜数10μmの微粉末を、これら単独ないし、より大きな粒子との混合物として、これら粉末に対して数%〜20数%程度の水性液などをバインダーとして用いて粉末造粒することにより、上記微粉末の平均粒径を数100μmにまで大きくする方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、吸水性樹脂の微粉末は、その表面積が大きいため、吸収速度が速く、水性液を均一に添加することが困難であった。また、混合助剤としての不溶性無機微粉末や、造粒用バインダーなどの使用は、一般に、コストの問題のみならず、不溶性無機微粉末による粉塵の発生や、得られる吸水性樹脂の吸収特性を低下させるという問題を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らによって、従来の造粒機や造粒方法を使用して、吸水性樹脂粉末の造粒を行っても、吸水性樹脂の搬送工程や最終製品(例えば紙おむつなど)への加工工程で造粒粒子が破壊されてしまうためか、最終製品中において期待通りの優れた吸収特性を維持できていないという問題点が見いだされた。
【0010】
さらに、該造粒破壊による微粉末の再生によって、吸収速度の低下や、不純物である水可溶分が増加したり、加圧下の吸収倍率が低下するなどの物性低下が見られる場合があることも見いだされた。一方、造粒破壊を避けるため、バインダーである水性液の量を増加させることで造粒強度を向上させた際に、吸水性樹脂本来の物性が低下することも見いだされた。
【0011】
従来、造粒に用いられてきた、流動床、あるいは高速攪拌型ミキサー等混合機の機械的手段による方法では、吸水性樹脂粉末への水性液の添加量は、数%からせいぜい30%が限度であり、該添加量が30%を越えると、安定的な造粒が極めて困難であった。
さらに、従来の造粒方法では、水性液の添加量が30%を越えると、水性液と吸水性樹脂粉末との混合が極端に不均一になり、このために吸水性樹脂としての物性低下や、不十分な造粒強度のために粒子破壊が行っていた。すなわち、造粒強度向上のために必要な、水性液の添加量の増量に限界があった。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、なされたものであって、その目的は、前記した吸水性樹脂の微粉末に起因する種々の問題を解決し、高い造粒強度を有する上、造粒による物性低下もない上、むしろ、造粒によって加圧下吸収倍率を改善した、吸水性樹脂造粒物の乾燥体を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、吸水性樹脂の微粉末に由来する上記問題を解決すべく、吸水性樹脂の造粒強度向上や、造粒時の物性低下をなくす上、さらに、積極的に微粉末を利用して、従来より物性を向上すべく鋭意検討した結果、吸水性樹脂と水性液とを混合して、吸水性樹脂造粒物を得る方法において、以下の構成を満たすとき、常に、優れた特性を発揮する吸水性樹脂造粒物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明にかかる吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法は、上記の課題を解決するために、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して、吸水性樹脂粉末の粒子状凝集物からなる吸水性樹脂造粒物を得る方法であって、混合前の水性液を40℃以上沸点以下の温度に加熱しておく工程と、該加熱した水性液と吸水性樹脂粉末とを混合機で高速混合して粒子状凝集物とする工程と、得られた粒子状凝集物からなる吸水性樹脂造粒物を100〜250℃で加熱乾燥する工程とを含むことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明に使用される吸水性樹脂粉末の製造方法について述べる。
本発明の吸水性樹脂造粒物の製造に際して使用される吸水性樹脂粉末は、公知の吸水性樹脂が広く使用され、その中でも、カルボキシル基を有するものが好ましく使用され、典型的にはアクリル酸及び/又はその塩を主成分とする親水性単量体を重合、架橋することにより得られ、水中において50倍から3000倍という多量の水を吸収し、ヒドロゲルを形成する従来公知の吸水性樹脂樹脂の粉末である。また、上記吸水性樹脂としては、該吸水性樹脂中の水可溶成分が25重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下のものが用いられる。
【0016】
上記アクリル酸塩としては、アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等を例示することができる。上記吸水性樹脂は、その構成単位としてアクリル酸10〜40モル%、アクリル酸塩60〜90モル%(但し、両者の合計量は100モル%とする)の範囲にあるものが好ましい。アクリル酸ないしその重合体の中和は、単量体で行ってもよいし、重合途中あるいは重合後に行ってもよい。
【0017】
アクリル酸及び/又はその塩を主成分とする親水性単量体を重合して吸水性樹脂を得るに際しては、必要に応じて、これらアクリル酸又はその塩に併用して、アクリル酸以外の単量体を含有していてもよい。
アクリル酸以外の単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種以上を混合してもよい。
【0018】
本発明において、アクリル酸以外の単量体を用いる場合には、該アクリル酸以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩との合計量に対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下で用いることが好ましい。
また、本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述のアクリル酸又はその塩を主成分とする親水性単量体を重合するに際し、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、上記親水性単量体を水溶液とすることによる水溶液重合又は逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0019】
尚、上記親水性単量体を水溶液とする場合の該水溶液の(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、特に限定されるものではないが、10重量%〜70重量%の範囲内が好ましく、20〜40重量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合または逆相懸濁重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられ溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0020】
上記の重合を開始させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤を用いることができる。
さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)、亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0021】
これら重合開始剤の使用量は、単量体に対して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.05モル%である。これら重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなり、従って、得られる吸水性樹脂中の残存単量体量が増加するので好ましくない。一方、これら重合開始剤の使用量が2モル%を越える場合には、得られる吸水性樹脂中の水可溶成分が増加するので好ましくない。
【0022】
また、重合開始剤を用いる代わりに、反応系に放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行ってもよい。尚、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものでないが、20〜90℃の範囲内が好ましい。また、反応時間も特に限定されるものではなく、親水性単量体や重合開始剤の種類、反応温度などに応じて適宜決定すればよい。
【0023】
本発明に用いられる吸水性樹脂は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、一分子内に、2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合又は反応させたものが好ましい。
これら内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0024】
また、これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、得られる吸水性樹脂の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を必須に用いることが好ましく、その使用量としては、前記の単量体成分に対して、0.005〜2モル%とするのが好ましく、より好ましくは0.01〜1モル%である。上記内部架橋剤の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%よりも多い場合には、所望の吸収特性を備えた吸水性樹脂が得られないおそれがある。
【0025】
なお、重合に際しては、反応系に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒などの各種発泡剤;澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0026】
上記重合反応により得られた重合体がゲル状である場合には、該ゲル状重合体は、乾燥され、必要により粉砕することで、本発明に用いられる吸水性樹脂粉末が得られる。
本発明に用いられる吸水性樹脂粉末としては、吸水性樹脂の微粉末(例えば、粒径150μm以下)のみでもよいし、微粉末と大きな粒子(例えば、粒径150μm以上)との混合物(例えば、150μm以下を含む850μm以下の粒子)でもよいし、微粉末を除いた吸水性樹脂(例えば、150μm以上で850μm以下の粒子)でもよい。さらに、微粉末は製造工程で混合物から分級し除去したものでもよいし、高吸収速度などを目的とする場合、意図的に粉砕ないし重合条件を調製して微粉末のみを得たものを用いてもよい。また本発明の造粒に用いられる吸水性樹脂粉末は、表面架橋が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。
【0027】
これらの吸水性樹脂粉末の中でも、吸水性樹脂の微粉末を用いることが好ましく、該微粉末の平均粒子径は150μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、実質150μm以下の粒径を有する粒子を、70重量%以上、さらには、90重量%以上含んでいることが好ましい。また、微粉末の形状としては、造粒強度の面から、逆相懸濁重合で得られた球形よりも、水溶液重合で得られた不定形のものが好ましい。また、表面架橋が施される前の微粉末がより好ましい。
【0028】
以上の様にして得られた吸水性樹脂粉末に対して、本発明では、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して、複数の吸水性樹脂粉末よりなる吸水性樹脂造粒物を得るに際して、混合前の水性液を加熱しておくこと、および、該水性液と吸水性樹脂粉末とを高速混合することを必須とする。
本発明における水性液の加熱は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、上限は水性液の沸点以下であり、沸点は塩類や他の溶媒の添加、圧力(減圧,加圧)などを変化させて種々調整してよいが、温度が100℃を越えても大きな変化ないため、通常、100℃以下で行われる。
【0029】
混合前の水性液が予め加熱されていない場合、本発明の特徴である、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して、複数の粉末よりなる吸水性樹脂造粒物を得ることが困難になり、得られる吸水性樹脂造粒物の粒径が制御できないばかりか、水性液の添加量が多い場合、一体化した巨大なゲル状物となり、造粒物として単離し扱うことができない。しかも、混合に巨大な力が必要なったり、ゲル状の塊が混練状態となったりするため、主鎖の切断や絡まりなどによって、吸水性樹脂自身が劣化するとするという問題がある。
【0030】
それに対して、混合前の水性液を予め加熱するという簡便な方法で、特殊な混合機や、一体化したゲル状物を別途粉砕する粉砕機の必要もなく、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して、複数の吸水性樹脂粉末よりなる吸水性樹脂造粒物が得られる。なお、本発明における吸水性樹脂造粒物とは、複数の吸水性樹脂粉末よりなり、且つ造粒物の粒子径が20mm以下、好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.3〜5mmのものを言う。なお、本発明において、吸水性樹脂造粒物とは、造粒物全体に対する含水率が10%以上のものをいい、該吸水性樹脂造粒物を、乾燥して、含水率10%以下の吸水性樹脂造粒物乾燥体としてもよい。
【0031】
本発明の目的を達成する為には、予め水性液を加熱することに加え、さらに、吸水性樹脂粉末も加熱されていることが好ましい。本発明における吸水性樹脂粉末の加熱も、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、100℃を越えても大きな変化ないため、通常、100℃以下で行われる。
本発明において、吸水性樹脂粉末と混合する水性液としては、特に限定されないが、例えば、水や、水溶性塩類あるいは親水性有機溶剤を含んだ水性液などが挙げられる。物性や造粒強度の面から、90重量%以上、好ましくは99重量%以上、より好ましくは99〜100重量%の範囲内が水であることが好ましく、水のみからなることが特に好ましい。
【0032】
水性液の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対し、80〜280重量部とすることが好ましい。水性液の使用量が280重量部を越えると、造粒物として扱うことが困難となる上、乾燥コスト等の面で不利である。一方、水性液の使用量が80重量部よりも少ない場合、造粒強度が不十分になり、最終製品において優れた特性を発揮することができなくなるおそれがある。また、混合が不均一になり造粒物が得られないことがある。
【0033】
本発明において、加熱された水性液と吸水性樹脂粉末とは高速混合することが必須である。高速混合とは、水性液と吸水性樹脂粉末との混合が完了し、吸水性樹脂造粒物が生成する時間が短時間であることである。水性液と吸水性樹脂粉末との接触時点から吸水性樹脂造粒物が生成するまでの時間、即ち混合時間が短時間である。該混合時間は、好ましくは3分以下、より好ましくは1分以下であり、1秒から60秒が最も好ましい。
【0034】
混合時間が長い場合には、水性液と吸水性樹脂粉末との均一な混合が困難となり巨大な凝集物となり、本発明の目的とする吸水性樹脂造粒物を得ることが出来ない。また、混合完了後に、混合を長時間続けると、吸水性樹脂の水可溶分の増加や加圧下吸水倍率の低下など、吸水性樹脂の劣化を生じる場合がある。
高速混合を達成するための必要条件として、加熱された水性液を攪拌中の吸水性樹脂粉末に一気に投入することが挙げられる。すなわち、該水性液を、例えば噴霧する等の方法で徐々に添加する場合には、本発明の目的とする吸水性樹脂造粒物を得ることが出来ない。水性液を徐々に添加する場合には、途中で吸水性樹脂粉末が大きな凝集塊となったり、混練されたりして、吸水性樹脂の劣化を生じる。加熱された水性液の投入時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることが最も好ましい。
【0035】
上記とは逆に、吸水性樹脂粉末を、攪拌中の加熱された水性液に投入する方法でも本発明の目的を達成するための高速混合ができる。この場合は、吸水性樹脂粉末の投入時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることがもっとも好ましい。
また、吸水性樹脂粉末と、加熱された水性液とを同時に一気に混合する方法でも本発明の目的を達成するための高速混合ができる。この場合は、両原料の投入時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることがもっとも好ましい。また、両原料が、連続的に同時に投入され、高速混合され、連続的に本発明の吸水性樹脂造粒物が製造される場合もある。
【0036】
上記の高速混合が達成できるのであれば、用いる混合機は特に限定されないが、容器固定型混合機、中でも、機械攪拌型混合機が好ましい。該混合機としては、例えば、タービューライザー(ホソカワミクロン社製)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製)、およびモルタルミキサー(西日本試験機社製)などが挙げられる。バッチ式混合機および連続式混合機のいずれでもよい。安定した性能が達成できる点でバッチ式混合機が好ましい場合もある。
【0037】
造粒以外の手段として、吸水性樹脂と水性液とを混合し、混練して非晶質ゲルとした後、該ゲルをさらに粉砕する方法も提案されている。しかしながら、その強い混練のため、吸水性樹脂が劣化するという問題を有していた。
従って、造粒強度や諸物性を向上させるには、吸水性樹脂粉末と水性液とを混合し、短時間で造粒することによって、吸水性樹脂造粒物を直接得ることが重要である。
【0038】
なお、吸水性樹脂造粒物を直接得るとは、混練などによって一体化したゲル塊を得た後、該巨大なゲル塊を粉砕ないし細分化する方法ではなく、複数の吸水性樹脂粉末を凝集させて特定粒度の粒子状吸水性樹脂造粒物を得ることである。
本発明では加熱した水性液を用いることにより、吸水性樹脂粉末と水性液とを、混練することなく、しかも、物性の低下を引き起こす混合助剤を用いずに、均一に混合することが可能である。しかも、加熱された水性液を用いることにより個々の吸水性樹脂粒子が凝集した適当なサイズの粒子状凝集物、すなわち本発明の吸水性樹脂造粒物が得られる。
【0039】
造粒物であることは光学顕微鏡によって個々の粒子が形状を保ったまま複数集まり凝集している事実や、吸液時に複数の不連続粒子として膨潤する事実で確認できる。
本発明において、水性液としては、例えば、水や、後述の親水性有機溶媒を含有する水溶液、また、少量の架橋剤を含む加熱された水などが挙げられる。この場合、架橋剤としては、後述する種類や使用量の表面架橋剤を用いることができる。水性液に架橋剤を併用することで、水可溶成分の低減や、造粒強度のさらなる向上を図ることができる場合もある。
【0040】
本発明の吸水性樹脂造粒物は、さらに乾燥して造粒強度を向上させることができる。吸水性樹脂造粒物を乾燥することで、微粉末はより強固に一体化され、一次粒子並みの強度に再生される。
上記の様にして得られた、吸水性樹脂造粒物乾燥体を必要により粉砕し、適当なサイズに分級した後、該造粒物乾燥体の表面近傍を架橋することにより加圧下吸収倍率に優れた吸収剤を得ることができる。
【0041】
乾燥方法は特に限定されず、通常の乾燥機又は加熱炉が広く用いられるが、好ましくは、比較的高温で、具体的には100〜250℃の範囲、さらには120〜200℃の範囲、よりさらには150〜180℃の範囲で乾燥すると、吸水性樹脂造粒物が乾燥時に収縮して、その結果、強固な造粒物乾燥体となるので好ましい。乾燥時間としては、物性面から一定時間以上行うことが好ましくは5分〜10時間の範囲であり、乾燥後の固形分としては90重量%以上である。なお、乾燥は、本発明で得られた吸水性樹脂造粒物のみで行ってもよいし、前述の水溶液重合ないし逆相懸濁重合で得られた乾燥前の重合ゲルと一緒に乾燥してもよい。
【0042】
こうして得られた吸水性樹脂造粒物乾燥体は、乾燥によって収縮して強固な造粒物となっているが、必要に応じて粉砕して粒度調整すればよい。粉砕後の吸水性樹脂造粒物乾燥体の平均粒径は200〜800μmであることが好ましい。本発明では、150μm以下(平均粒径としては、例えば100μm以下)の吸水性樹脂粉末を、平均粒径200〜800μmに造粒して複合化することが好ましい。
【0043】
上記のようにして得られる吸水性樹脂造粒物乾燥体の粉砕分級物に、後述の表面近傍の架橋を行うことが好ましい。すなわち、吸水性樹脂の微粉末を上記した本発明の造粒方法によって吸水性樹脂造粒物とし、さらに平均粒子径200〜800μmの造粒物乾燥体とすることで、微粉含有量の少ない吸水性樹脂とし、これに表面架橋を行い吸収剤とすることが好ましい。
【0044】
以下、表面架橋についてさらに説明する。
本発明に用いられる表面架橋剤としては、当業界において該用途に用いられている公知の表面架橋剤が好適に用いられる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物やそれらの無機塩ないし有機塩(アジチジウム塩など);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。これら表面架橋剤は、単独で用いてもよく、また、反応性を考慮して2種類以上を混合して用いてもよい。これらの表面架橋剤の中でも、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物やそれらの塩、アルキレンカーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好適である。
【0045】
上記表面架橋において、吸水性樹脂造粒物がカルボキシル基を有するときに、特開平6−184320号公報(米国特許第5422405号公報)にて提案されているように、カルボキシル基と反応し得る表面架橋剤が、溶解度パラメータ(SP値)の互いに異なる第一表面架橋剤及び第二表面架橋剤を組み合わせてなる場合には、加圧下吸収倍率がさらに一層優れた吸収剤を得ることができる。上記の溶解度パラメータとは、化合物の極性を表すファクターとして一般に用いられる値である。本発明において、上記の溶解度パラメータは、ポリマーハンドブック第3版(WILEY INTERSCIENCE社発行)527頁〜539頁に記載されている溶媒の溶解度パラメータδ(cal/cm3)1/2の値を適用することとする。また、上記の頁に記載されていない溶媒の溶解度パラメータに関しては、該ポリマーハンドブックの524頁に記載されているSmallの式に、同525頁に記載されているHoyの凝集エネルギー定数を代入して導かれる値を適用することとする。
【0046】
上記の第一表面架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm3)1/2以上の化合物が好ましく、13.0(cal/cm3)1/2以上の化合物がより好ましい。
上記の第二表面架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm3)1/2未満の化合物が好ましく、9.5(cal/cm3)1/2〜12.0(cal/cm3)1/2の範囲内の化合物がより好ましい。
【0047】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂造粒物乾燥体の固形分100重量部に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましい。
上記の表面架橋剤を用いることにより、吸水性樹脂造粒物乾燥体の表面近傍の架橋密度を内部よりも高くすることができる。表面架橋剤の使用量が10重量部を越える場合には、不経済となるばかりか、吸収剤における最適な架橋構造を形成する上で、架橋剤の量が過剰となるため、好ましくない。表面架橋剤の使用量が0.001重量部未満の場合には、吸収剤における加圧下吸収倍率等の性能を向上させる上で、その改良効果が得られ難いため、好ましくない。
【0048】
本発明において、吸水性樹脂造粒物乾燥体と表面架橋剤とを混合する際には、溶媒として水を用いることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂造粒物乾燥体の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂造粒物乾燥体の固形分100重量部に対して、0を越え、20重量部以下が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0049】
吸水性樹脂造粒物乾燥体と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、親水性有機溶媒(水性液体)を併用してもよい。上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂造粒物乾燥体の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂造粒物乾燥体の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0050】
上記吸水性樹脂造粒物乾燥体と表面架橋剤とを混合した後、さらに、加熱処理を行い、吸水性樹脂造粒物乾燥体の表面近傍を架橋させる。
すなわち、吸水性樹脂造粒物乾燥体の表面近傍で架橋剤を反応させるには、架橋剤の反応性、製造装置の簡易性、生産性を考慮すると加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理の処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、80℃以上が好ましい。処理温度が80℃未満の場合には、加熱処理に時間がかかるので、生産性の低下を引き起こすのみならず、均一な表面架橋が達成されず、加圧下の吸収特性の低下、表面架橋剤の残存を招き易い。
【0051】
上記の加熱処理は、通常の乾燥機又は加熱炉を用いて行うことができる。乾燥機としては、例えば、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、デスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、及び赤外線乾燥機等が挙げられる。
以上、本発明の最も好ましい吸水性樹脂造粒物の製造方法は、平均粒径10μm〜150μmの吸水性樹脂粉末100重量部と、加熱した水性液80〜280重量部とを高速混合し、粒径0.3〜10mmの吸水性樹脂造粒物を得ることを特徴とする吸水性樹脂造粒物の製造方法である。また、該吸水性樹脂造粒物を、100〜250℃で乾燥し、次いで粉砕して得られる平均粒径200〜800μmの吸水性樹脂造粒物乾燥体をさらに表面架橋することを特徴とする吸収剤の製造方法である。
【0052】
上記の吸水性樹脂造粒物、吸水性樹脂造粒物乾燥体や吸収剤に、消毒剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類等を添加し、これにより、種々の機能を付与させることもできる。本発明の吸水性樹脂造粒物、吸水性樹脂造粒物乾燥体や吸収剤は、従来公知の各種吸水性樹脂の用途に適用できるが、微粉が少なく粒度分布もシャープな上、加圧下の吸収特性や吸収速度に優れているため、これらの性能を重視される紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の吸収体を含む衛生材料等の吸収性物品に好適に使用できる。
【0053】
【実施例】
吸水倍率
吸水性樹脂粉末ないしその造粒物乾燥体の約0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後に袋を引上げ、遠心分離機を用いて250Gにて3分間水切りを行った後、袋の重量W1 (g)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、その時の重量W0 (g)を測定した。W1 およびW0 から、次式に従って、吸水倍率(g/g)を算出した。
吸水倍率(g/g)=(重量W1 (g)−重量W0 (g))/吸水性樹脂の重量(g)
[水可溶分]
吸水性樹脂粉末ないしその造粒物乾燥体0.50gを1,000mlの脱イオン水に分散し、16時間攪拌後、ろ紙(TOYO 、No.6) でろ過し、ろ液の固形分を測定し、下記の式にしたがって水可溶分を求めた。
水可溶分( 重量%) =液の重量(g)×ろ液の固形分( 重量%) /0.5(g)加圧下吸収倍率
加圧下の吸収倍率の測定に用いた測定装置について、図1に基づいて説明する。
【0054】
図1に示すように、測定装置は、天秤21と、この天秤21上に載置された所定容量の容器22と、外気吸入パイプ23と、導管24と、ガラスフィルタ26と、このガラスフィルタ26上に載置された測定部25とからなってる。
上記の容器22は、その頂部に開口部22aを、その側面部に開口部22bをそれぞれ有している。容器22の開口部22aには外気吸入パイプ23が嵌入される一方、開口部22bには導管24が取り付けられている。
【0055】
また、容器22には、所定量の生理食塩水32が入っている。外気吸入パイプ23の下端部は、生理食塩水32中に没している。外気吸入パイプ23は、容器22内の圧力をほぼ大気圧に保つために設けられている。上記のガラスフィルタ26は、直径55mmに形成されている。そして、容器22及びガラスフィルタ26は、シリコーン樹脂からなる導管24によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ26は、容器22に対する位置及び高さが固定されている。
【0056】
上記の測定部25は、濾紙27と、支持円筒28と、この支持円筒28の底部に貼着された金網29と、おもり30とを有している。そして、測定部25は、ガラスフィルタ26上に濾紙27、底部に金網29を有する支持円筒28がこの順に載置されると共に、支持円筒28内部、つまり金網29上におもり30が載置されてなっている。金網29は、ステンレスからなり、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。また、金網29の上面、つまり金網29と吸収剤31との接触面の高さは、外気吸入パイプ23の下端面23aの高さと等しくなるように設定されている。そして、金網29上に、所定量及び所定粒径の吸収剤が均一に散布されるようになっている。おもり30は、金網29上の吸収剤31に対して、50g/cm2 の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0057】
上記構成の測定装置を用いて、加圧下吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
まず、容器22に所定量の生理食塩水32を入れ、外気吸入パイプ23を嵌入する等の所定の準備動作を行う。次に、ガラスフィルタ26上に濾紙27を載置すると共に、この載置動作に並行して、支持円筒28内部、つまり金網29上に、吸収剤0.9gを均一に散布し、この吸収剤31上におもり30を載置する。
【0058】
次いで、濾紙27上に、吸収剤31及びおもり30を載置した上記支持円筒28の金網29を、その中心部がガラスフィルタ26の中心部に一致するように載する。
そして、濾紙27上に支持円筒28を載置した時点から、60分にわたって経時的に、該吸収剤31が吸水した生理食塩水32の重量を天秤21の測定値から求める。
【0059】
同様の操作を吸収剤31を用いないで行い、吸収剤31以外の例えば濾紙27等が吸水した生理食塩水32の重量を、天秤21の測定値から求め、ブランク値とした。次いで、ブランク値を差し引く補正を行って、吸収剤31が実際に吸水した生理食塩水32の重量を、吸収剤31の重量(0.9g)で除して、加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
(吸水性樹脂粉末の製造例)
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5500g(単量体濃度33%)に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%溶解させ窒素ガスで30分脱気後、内容積10Lでシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋をつけた反応器に該水溶液を供給し、20℃の温度に保ちながら反応系の窒素置換を続けた。次いで、羽根を回転させながら過硫酸ナトリウム2.9gとL −アスコルビン酸0.16gをそれぞれ10重量%水溶液として添加したところ1分後に重合が開始し、16分後に反応系は、83℃のピーク温度に達した。その際生成した含水ゲル重合体は約5mmのサイズに細粒化されていた。その後更に攪拌を続け、重合を開始して60分後に含水ゲル重合体を取り出した。
【0060】
得られた含水ゲル状重合体の細粒化物を目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。乾燥物を卓上両用型粉砕機FDS型(株式会社みやこ物産製)で、1mmのスクリーンを用いて粉砕し、更に850μmメッシュで分級し、平均粒子径300μmでかつ150μm未満の粒子径を有する樹脂の割合が15重量%、含水率6重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(A)を得た。
【0061】
次いで、この吸水性樹脂粉末(A)を、目開き150μmの篩を用いて、850〜150μmの吸水性樹脂粉末(A1 )および、150μm未満の吸水性樹脂粉末(A2 )に分級した。吸水性樹脂粉末(A)は、吸水倍率42g/g、水可溶分10%であった。
(実施例1)
製造例で得られた、粒径150μm未満の吸水性樹脂粉末(A2 )200gを西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー(5L容器は70℃のバスで保温)に入れ、該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、90℃に加熱した水300gを一気に投入した。
【0062】
吸水性樹脂粉末(A2 )と水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒径約3〜10mmのゲル状の吸水性樹脂造粒物となった。モルタルミキサー中で、該吸水性樹脂造粒物はバラバラの状態で、攪拌羽根の混合によって混練される様子はなかった。
3分間モルタルミキサー中で高速攪拌した後、得られたバラバラの吸水性樹脂造粒物を取り出し、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せ、熱風循環式乾燥機に入れ150℃で2時間乾燥した。
【0063】
次いで、この乾燥物を製造例と同様の条件の卓上両用型粉砕機で粉砕し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分10%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)を得た。粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)の割合は83%であった。すなわち、吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)は、元の吸水性樹脂(製造例でえられた含水ゲル状重合体の乾燥物)と同等の粒子強度を有しているとみなすことができる。
【0064】
吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)を数粒取り出し、それぞれに生理食塩水を滴下して吸液挙動を観察したところ、膨潤するにしたがって細かい微粒子に崩壊していった。
(実施例2)
上記製造例で得られた、粒径150μm未満の吸水性樹脂粉末(A2 )400gを5LレーディゲミキサーM−5(商標;レーディゲ社製)に入れ、60Hz/100Vで高速回転させながら、90℃に加熱した水600gをロートより一気に注入した。
【0065】
吸水性樹脂粉末(A2 )と水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒径約1〜5mmのゲル状の吸水性樹脂造粒物となった。レーディゲミキサー中で、該吸水性樹脂造粒物はバラバラの状態で、攪拌羽根の混合によって混練される様子はなかった。
1分間レーディゲミキサー中で高速攪拌した後、得られた吸水性樹脂造粒物を取り出し、以下、実施例1と同様に乾燥した所、均一かつ十分に乾燥された。
【0066】
次いで、この乾燥物を製造例と同様の条件のロールミルで粉砕し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分10%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)を得た。粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体の割合は82%であった。すなわち、吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)は、元の吸水性樹脂(製造例で得られた含水ゲル状重合体の乾燥物)と同等の粒子強度を有しているとみなすことができる。
【0067】
吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)を数粒取り出し、それぞれに生理食塩水を滴下して吸液挙動を観察したところ、膨潤するにしたがって細かい微粒子に崩壊していった。
(実施例3)
実施例1で得られた、吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)100重量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部、プロピレングリコール1.0重量部、水3重量部、およびイソプロパノール0.9重量部からなる表面架橋剤水性液を混合し、得られた混合物を195℃で30分間加熱処理することで、吸水倍率33g/gで加圧下吸収倍率28g/gの吸収剤(3)を得た。一方、製造例で得られた吸水性樹脂粉末(A1 )に対し、同様の操作を繰り返したところ、吸水倍率33g/gで加圧下吸収倍率27g/gの吸収剤を得た。
(実施例4)
実施例1において、加熱した水の量を200gとするほかは、実施例1と同様の操作を繰り返し、実施例1と同様な状態のバラバラの吸水性樹脂造粒物を得た。以後も実施例1と同様の操作を繰り返し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分11%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(4)を得た。ロールミルによる粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体(4)の割合は80%であった。
(実施例5)
実施例1において、加熱した水の量を450gとするほかは、実施例1と同様の操作を繰り返し、実施例1と同様な状態のバラバラの吸水性樹脂造粒物を得た。以後も実施例1と同様の操作を繰り返し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分10%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(5)を得た。卓上両用型粉砕機による粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体(5)の割合は84%であった。
(実施例6)
実施例1において、加熱した水の温度を70℃とするほかは、実施例1と同様の操作を繰り返し、実施例1と同様な状態のバラバラの吸水性樹脂造粒物を得た。以後も実施例1と同様の操作を繰り返し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分10%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(6)を得た。卓上両用型粉砕機による粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体(6)の割合は84%であった。
(実施例7)
80℃の水300gを西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー(5L容器は80℃のバスで保温)に入れ、該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、製造例で得られた、粒径150μm未満の吸水性樹脂粉末(A2 )200gを一気に投入した。
【0068】
吸水性樹脂粉末(A2 )と水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒径約3〜10mmのゲル状の吸水性樹脂造粒物となった。モルタルミキサー中で、該吸水性樹脂造粒物はバラバラの状態で、攪拌羽根の混合によって混練される様子はなかった。
3分間モルタルミキサー中で高速攪拌した後、得られたバラバラの吸水性樹脂造粒物を取り出し、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せ、熱風循環式乾燥機に入れ150℃で2時間乾燥した。
【0069】
次いで、この乾燥物を製造例と同様の条件の卓上両用型粉砕機で粉砕し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分10%の吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)を得た。粉砕物のうち850〜150μmの範囲の吸水性樹脂造粒物乾燥体(1)の割合は84%であった。
(比較例1)
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2 )200gに添加する水300gを加熱しない(温度20℃)以外は実施例1と同様にして、西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー中で、吸水性樹脂粉末(A2 )に高速攪拌下、水を添加した。
【0070】
吸水性樹脂粉末(A2 )と水との混合に40秒程度を要し、巨大な一体化した塊状のゲルとなり、バラバラの吸水性樹脂造粒物にならなかった。
さらに3分間モルタルミキサー中で高速攪拌を続けた後、得られたゲル状塊を取り出し、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せて、熱風循環式乾燥機に入れ150℃で2時間乾燥した。この結果、上記ゲル状塊は乾燥できなかった。
(比較例2)
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2 )200gに添加する水をスプレーを用いて徐々に添加した、即ち、300gの水を添加するのに30分要した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。
【0071】
水の添加とともに、吸水性樹脂粉末(A2 )は、20〜50mmの巨大な塊を形成し、ついには、全体が塊となり、混練された。
得られた塊の含水ゲル凝集物を取り出し、カッターで10mm以下のサイズに切断し目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せて、熱風循環式乾燥機に入れ150℃で2時間乾燥した。
【0072】
次いで、この乾燥物を実施例1と同様の卓上両用型粉砕機で粉砕し、850〜150μmに分級する事で吸水倍率42g/g、水可溶分14%の比較吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)を得た。
比較吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)を数粒取り出し、それぞれに生理食塩水を滴下して吸液挙動を観察したところ、粒子は崩壊することなくゆっくりと膨張していった。
(比較例3)
上記製造例で得られた、吸水性樹脂粉末(A)に対し、実施例3と同様の操作を繰り返し、吸水倍率33g/g、加圧下吸収倍率20g/gの比較吸収剤(3)を得た。
(比較例4)
比較例2で得られた比較吸水性樹脂造粒物乾燥体(2)に対し、実施例3と同様の操作を繰り返し、吸水倍率31g/g、加圧下吸収倍率21g/gの比較吸収剤(4)を得た。
【0073】
【発明の効果】
本発明にかかる吸水性樹脂造粒物の製造方法では、微粉を吸水性樹脂造粒物として強固に複合化しておくことが出来るため、微粉を廃棄する必要がなく、しかも、吸水性樹脂の高物性が達成できる。すなわち、本発明の方法で得られた吸水性樹脂造粒物は、製造プラントにおける搬送や最終製品の加工の際にも造粒物が破壊されないため、その使用方法を選ばず、微粉末が少ないことに由来する優れた特性を常に発揮できるのである。
【0074】
本発明にかかる吸水性樹脂造粒物の製造方法は、表面架橋と併用するとき、従来の表面架橋吸水性樹脂造粒物の製造方法よりも、より一層高い物性を示す表面架橋吸水性樹脂造粒物を得させる。すなわち、本発明の方法で得られた表面架橋吸水性樹脂造粒物は、従来の表面架橋した後に造粒する方法や造粒と表面架橋とを同時に行う方法で得られた表面架橋吸水性樹脂造粒物に比べて、高粒子強度,高吸収速度で、高い加圧下吸収倍率を発揮するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用した加圧下吸水倍率の測定装置を示す側断面図。
Claims (11)
- 吸水性樹脂粉末と水性液とを混合して、吸水性樹脂粉末の粒子状凝集物からなる吸水性樹脂造粒物の乾燥体を得る方法であって、
混合前の水性液を40℃以上沸点以下の温度に加熱しておく工程と、該加熱した水性液と吸水性樹脂粉末とを混合機で高速混合して粒子状凝集物とする工程と、得られた粒子状凝集物からなる吸水性樹脂造粒物を100〜250℃で加熱乾燥する工程とを含むことを特徴とする、
吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。 - 吸水性樹脂粉末と水性液とを混合した後の前記粒子状凝集物からなる吸水性樹脂造粒物が、粒子径20mm以下で含水率10%以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 前記高速混合は、吸水性樹脂粉末と水性液との混合時間が、多くとも3分である、請求項1または2に記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 吸水性樹脂粉末100重量部と水性液80〜280重量部とをバッチ式混合機または連続式混合機で混合する、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 吸水性樹脂粉末が、150μm以下の粒径を有する粒子を70重量%以上含む、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 乾燥後の吸水性樹脂造粒物の乾燥体をさらに表面架橋する工程を含む、請求項1から5までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 表面架橋が、吸水性樹脂造粒物の乾燥体に対し、その固形分100重量部に対する割合で、表面架橋剤0.001〜10重量部、水20重量部以下、親水性有機溶媒0〜20重量部を混合した後に加熱処理することである、請求項6に記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 混合前の吸水性樹脂粉末も予め40℃以上に加熱しておく、請求項1から7までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 水性液の90重量%以上が水である、請求項1から8までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 混合によって得られた粒子状凝集物のゲル塊を粉砕ないし細分化せずに乾燥する、請求項1から9までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
- 吸水性樹脂の水可溶成分が25重量%以下である、請求項1から10までのいずれかに記載の吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15506998A JP3979724B2 (ja) | 1997-06-18 | 1998-06-03 | 吸水性樹脂造粒物の乾燥体の製造方法 |
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