JP3977917B2 - 混合脱泡装置における揺動機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば半田ペースト、歯科用印象材料、油脂、樹脂、染料、顔料等のような流動性を有する材料(以下、混合材料という)を攪拌、混練し、同時に脱泡を行うことができる公転自転方式の混合脱泡装置における揺動機構に関する。
【0002】
従来、混合材料を収容した容器を公転させながら自転させ、さらに、容器の自転中、容器を揺動機構により揺動させるようにした混合脱泡装置が、本願と同一発明者により提案されている(実開平7−34929号、特開平9−29086号)。
【0003】
前記揺動機構は、容器とその容器を支持する各支持アームなどの周辺の機構の回転中心下部に、駆動モータなどの駆動部の駆動軸を設けており、この駆動軸からスイング駆動杆、クランク機構などの動力伝達機構を介して前記容器を揺動する構成としている。
【0004】
したがって、前記揺動機構から駆動伝達機構を介して伝達される駆動力は、容器の公転および自転を行う周辺機構の下部側に揺動運動の中心軸を配置する構成となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の揺動機構では、以下のような問題点が存在していた。
▲1▼ 容器の公転中、強大な遠心力が容器とその周辺機構および混合すべき混合材料に作用しているので、この強大な遠心力に逆らって、下部側に配置された揺動運動の中心軸から駆動力を容器に伝達して揺動させると、遠心力が作動しない通常の環境下における駆動力とくらべ、公転中に揺動させる駆動力はその数百倍のパワーが必要となった。
【0006】
そのため、振動による騒音の発生や、不要な振動により気泡が混合材料に発生する場合もあった。なお、振動が大きくなることに伴って、装置全体の重量を増加させることも必要になった。
【0007】
▲2▼ 揺動機構により揺動する容器は、その揺動した軌跡が円弧であり、また、揺動機構により揺動する混合材料も上下方向に大きく移動する。そのため、容器の公転および自転を行う周辺機構の下部側から揺動運動の駆動力を伝達する構成であると、容器やその容器内の混合材料などの重心移動が複雑に絡んだ状態の回転バランスの補正が大変困難であった。
【0008】
この発明は、上記の問題点に鑑み創案されたものであり、低振動で容器の公転自転および揺動の運転ができ、揺動機構の駆動力も小さくて済み、また、振動に起因する気泡の発生を未然に防ぐことができ、さらに、揺動機構の振動に伴う重量増加などを必要とすることなく容器を揺動させ混合材料の混合脱泡を行うことができる混合脱泡装置における揺動機構を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、混合材料を収容する容器を、公転軸の軸線回りに回転させながら自転及び揺動させ、混合材料の混合脱泡を行う装置において、前記公転軸の軸線上の一点を支点として、水平面に対して上下方向に回動自在に設けた基体と、この基体の一端側に自転可能に設けた前記容器と、前記基体の他端側に設けた前記容器側に対するバランスウエイトと、前記基体に設けた前記容器またはバランスウエイトの少なくとも一方を水平面に対し上下方向に移動させる動的バランス変動機構とを備えたことを特徴とする混合脱泡装置における揺動機構として構成した。
【0010】
前記動的バランス変動機構は、駆動源部と、この駆動源部からの駆動力を伝達する揺動伝達手段と、この揺動伝達手段により前記支点を中心として水平面に対して上下方向に揺動する揺動アームとから構成され、前記バランスウエイトを前記揺動アームの自由端に設けた構成とすると都合が良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1は、混合脱泡装置の要部を示す切断正面図、図2は、混合脱泡装置の要部を示す斜視図、図3は、混合脱泡装置の要部を示す平面図、図4は、図1の混合脱泡装置のII−II線における要部の断面図、図5(a)(b)(c)および図6(a)(b)は、動的バランス変動機構の作動状態を示す原理図である。
【0012】
図1ないし図4で示すように、混合脱泡装置1は、ケーシング20の内部に設置される公転機構2と、この公転機構2の公転軸2aの軸線Z上の一点を支点として水平面に対して上下方向に回動自在に設けた基体4と、この基体4の一端側に設けた混合材料を収納する容器10と、この容器10を自転させる自転機構3と、前記基体4の他端側に設けた動的バランス変動機構5と、この動的バランス変動機構5の揺動伝達手段であるリンク機構6と、揺動アーム7と、前記揺動アーム7に設けたバランスウエイト8などから構成されている。
【0013】
図1および図2で示すように、前記公転機構2は、防振ゴム台2c上に設けた公転駆動モータ2bと、この公転駆動モータ2bからの減速した駆動力を伝達する回転軸である公転軸2aと、この公転軸2aの上端側に取り付けた断面コ字形の取付支持部2dとから構成されている。
【0014】
そして、前記公転軸2aの中段位置には、軸受9aを介して円盤状のベース体9が設けられており、前記ベース体9の周縁部分には弾性部材であるスプリング9bを介在させて前記ケーシング20の内壁側に支持されている。
【0015】
前記基体4は、断面コ字形に形成され、その側面中央位置に支点としての支点軸4aを介して前記公転軸2aの軸線Z上で、上下方向に回動するように構成されている。そして、支点軸4aは、前記取付支持部2dに回動自在に支持されている。
【0016】
図1および図2で示すように、容器10の自転機構3は、自転駆動モータ3aと、この自転駆動モータ3aの減速した回転駆動を伝達する自転軸3bと、この自転軸3bの上端に設けた容器載置台3cとから構成されている。なお、容器載置台3cは容器10が載置されると、その容器10が自転や公転あるいは揺動されても保持されるように構成されている。
【0017】
図1および図2で示すように、動的バランス変動機構5は、前記基体4に設けた駆動源部としての揺動用モータ5aと、この揺動用モータ5aから減速された回転駆動力を出力する出力軸5bと、この出力軸5bの一端側に設けたリンク機構6と、このリンク機構6により揺動する揺動アーム7とから構成されている。
【0018】
前記リンク機構6は、前記出力軸5bに設けたウオームギア6aと、このウオームギア6aに噛合して回転するウオームホイール6bと、このウオームホイール6bにより回動するクランク軸6cと、このクランク軸6c所定位置に折り曲げられて突出するピン部6dと、このピン部6dに回動自在に、その一端部を設けたリンク6eとから構成されている。そして、前記リンク6eの他端部は、揺動アーム7の所定位置に回動自在に取り付けられている。
【0019】
前記揺動アーム7は、図2および図3で示すように、コ字形に形成され、その一端を支点としての前記支点軸4aに回動自在に支持している。そして、その揺動アーム7の所定位置に、前記リンク機構6のリンク6eの一端が回動自在に支持している。さらに、前記揺動アーム7の自由端には、前記容器10および自転機構3側の荷重と釣り合って前記基体4の両側の端が他の部分に接触せずにバランスが保たれるような荷重を備えるバランスウエイト8が取り付けられている。
【0020】
なお、前記基体4は、水平状態で釣り合いがとられている必要は無く、所定角度に傾斜した状態で釣り合いがとられていても良い。そして、基体4の釣り合った状態の動的バランス変動機構5側の質量M1 と、容器10および自転機構3側の質量M2 との公転軸2aを中心としてM1 ×r1 =M2 ×r2 の関係を維持できるように設定されている。なお、r1 ,r2 は、公転軸2aの中心から動的バランス変動機構5と、容器10および自転機構3の重心までの距離を示す。
【0021】
そのため、公転機構2により基体4を回転させると、動的バランス変動機構5に作用する遠心力C1 は、(M1 ÷g)・ω2 ・r1 となる。また、容器10および自転機構3に作用する遠心力C2 は、(M2 ÷g)・ω2 ・r2 となり両遠心力C1 、C2 はバランスしている。なお、gは重力の加速度、ωは公転運動の角速度である。
【0022】
つぎに、図5および図6を参照して動的バランス変動機構5の作動を説明する。なお、図中G1 、G2 は、動的バランス変動機構5と、容器10および自転機構3側の質量の重心を表している。
【0023】
はじめに、容器10の内部に混合材料を投入し、ケーシング20の蓋体21を開放し、その容器10を自転機構3の容器載置台3cの上に載置してその容器載置台3cに保持させる。そして、公転機構2を作動させると共に、自転機構3を作動させ、さらに動的バランス変動機構5を作動させる。
【0024】
図5(a)で示すように、水平状態にある基体4が公転機構2の作動により公転軸2aと同期し回転しはじめると、容器10および自転機構3側と、動的バランス変動機構5側とに遠心力C1 、C2 がそれぞれ作用する。このとき容器10は自転機構3により自転しながら公転軸2aの同期し公転することになる。
【0025】
つぎに、動的バランス変動機構5の動作が加わると、つぎのようになる。すなわち、図5(b)で示すように、リンク機構6の作動によりリンク6eが揺動アーム7を持ち上げバランスウエイト8を所定角度θ1 傾動させると、遠心力C1 、C2 が偶力を形成する。そのため、容器10および自転機構3側の重心G2 が上昇し、バランスを保持しようとするため、図5(c)で示すように、容器10は基体4の傾斜角度θ2 だけ傾斜する。そして、基体4が支点軸4aを介して所定角度傾斜することで、偶力の値が減少して遠心力C1 ,C2 は、釣り合いバランスが維持される。
【0026】
さらに、基体4が傾斜してバランスが保たれると、今度はリンク機構6の作動によりリンク6eが揺動アーム7を図5(b)の実線の位置から仮想線の位置に降下させることで、動的バランス変動機構5側の重心G1 を下方に移動する。そのため、図5(c)で示すように、傾斜していた揺動アーム7は水平な位置となり、遠心力C1 、C2 のバランスが崩れ、再び偶力が働き傾斜している容器10および自転機構3側の重心G2 が実線の位置から仮想線の位置に移動するため、基体4が支点軸4aを介して水平な状態となり、偶力は徐々に減少して遠心力C1 、C2 のバランスは保たれる。
【0027】
そして、図6(a)で示すように、さらにリンク機構6の作動によりリンク6eが揺動アーム7を水平位置から下方に傾動させ、動的バランス変動機構5側の重心G1 の位置を降下させると、遠心力C1 、C2 のバランスが崩れて偶力が働く。そのため、遠心力C1 、C2 のバランスを保とうとして容器10および自転機構3側の重心G2 が仮想線で示すように降下して基体4が、支点軸4aを介して傾動する。そのため、図6(b)で示すように容器10は、基体4の傾斜角度θ2 と同じ傾斜角度θ2 傾斜する。
【0028】
図6(b)で示すように、リンク機構6により最下端位置まで降下したバランスウエイト8は、再びリンク機構6の作動によりリンク6eが揺動アーム7を水平位置に移動させることで、動的バランス変動機構5側の重心G1 の位置を水平位置に移動すると、遠心力のC1 、C2 のバランスが崩れ偶力が発生して容器10および自転機構3側の重心G2 を上昇させ、基体4を支点軸4aを介して回動させ水平状態に移動させる。そして、図5(a)で説明したように、さらにリンク機構6を作動させ、それら図5(a)(b)(c)図6(a)(b)で説明した動作を連続的に行うことで、自転しながら公転している容器10を揺動させることができる。
【0029】
なお、前記混合脱泡装置における揺動機構では、容器を基体に一か所設ける構成としているが、基体の一端側に設ける容器およびその容器を自転させる自転機構の数は2基あるいは3基以上など複数を設置し、その重量に対応するようにバランスウエイトを設ける構成としても良い(自転機構は容器が複数のときでも一基として伝達手段を介して各容器を自転させる構成としても良い)。このように容器を複数設けることで混合材料の処理量を増やすことが可能となる。
【0030】
また、前記基体に設けた動的バランス変動機構の揺動伝達手段としてリンク機構により揺動アームを揺動させているが、送りネジ機構を使用して揺動モータを所定タイミングで正逆方向に作動させることで揺動アームを上下に揺動する構成とすることや、シリンダ機構を使用して揺動アームを上下に揺動する構成しても良い。
【0031】
さらに、前記公転軸の軸線上に支点軸を設ける構成としているが、公転軸の軸線からズレた位置で前記取付支持部に支点軸を設ける構成としても、容器側の重心とバランスウエイト側の重心とのバランスを調整することで釣り合いをとる構成としても良い。
【0032】
そして、動的バランス変動機構は、揺動アームの自由端に設けたバランスウエイトの位置に容器を設置し、水平面に対して上下方向に揺動させ、基体の一端に設けた容器の位置にバランスウエイトを配置するような構成としても構わない。また、前記バランスウエイトには、基体の一端側に設けた前記容器に対応する他の容器を設置することも含まれる。したがって、前記基体の両端に容器が配置され、その内一方を動的バランス変動機構により水平面に対して上下方向に移動させる構成とすることも可能である。
【0033】
【発明の効果】
この発明は、上記のように構成したので以下に示す優れた効果を奏する。
▲1▼ 混合脱泡装置は、動的バランス変動機構により、バランスウエイトを傾動させ、公転している基体の遠心力のバランスを変動させることで偶力を発生させて、基体をバランスウエイトの傾動に追随させて傾動させることができるため、容器を揺動させる際の駆動力を大幅に低減することができる。
【0034】
▲2▼ 混合脱泡装置は、動的バランス変動機構を作動させることで遠心力の不釣り合いの状態が一時的に発生することで、基体を傾動させて容器を揺動しているが、遠心力の不釣り合いから起こる偶力は、基体が傾動することで直ちに解消される。したがって、運転中は、遠心力がバランスすることとなり、装置の振動を抑制することが可能となる。
【0035】
▲3▼ 混合脱泡装置は、その動的バランス変動機構の構成が簡素であるため、装置自体の重量を重くすることもなく、メンテナンスが容易となると共に、設備費および保守費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の揺動機構を備えた混合脱泡装置の要部を示す切断正面図である。
【図2】この発明の揺動機構を備えた混合脱泡装置の要部を示す斜視図である。
【図3】この発明の揺動機構を備えた混合脱泡装置の要部を示す平面図である。
【図4】図1の混合脱泡装置のII−II線における要部の断面図である。
【図5】(a)(b)(c)は、動的バランス変動機構の作動状態を示す原理図である。
【図6】(a)(b)は、動的バランス変動機構の作動状態を示す原理図である。
【符号の説明】
1 混合脱泡装置
2 公転機構
2a 公転軸
2b 公転駆動モータ
2c 防振ゴム台
2d 取付支持部
3 自転機構
3a 自転駆動モータ
3b 自転軸
3c 容器載置台
4 基体
4a 支点軸
5 動的バランス変動機構
5a 揺動用モータ(駆動源部)
5b 出力軸
6 リンク機構(揺動伝達手段)
6a ウオームギア
6b ウオームホイール
6c クランク軸
6d ピン部
6e リンク
7 揺動アーム
8 バランスウエイト
9 ベース体
9a 軸受
9b スプリング(弾性部材)
10 容器
20 ケーシング
21 蓋体
Claims (2)
- 混合材料を収容する容器を、公転軸の軸線回りに回転させながら自転及び揺動させ、混合材料の混合脱泡を行う装置において、
前記公転軸の軸線上の一点を支点として、水平面に対して上下方向に回動自在に設けた基体と、この基体の一端側に自転可能に設けた前記容器と、前記基体の他端側に設けた前記容器側に対するバランスウエイトと、前記基体に設けた前記容器またはバランスウエイトの少なくとも一方を水平面に対し上下方向に移動させる動的バランス変動機構とを備えたことを特徴とする混合脱泡装置における揺動機構。 - 前記動的バランス変動機構は、駆動源部と、この駆動源部からの駆動力を伝達する揺動伝達手段と、この揺動伝達手段により前記支点を中心として水平面に対して上下方向に揺動する揺動アームとから構成され、前記バランスウエイトを前記揺動アームの自由端に設けたことを特徴とする請求項1に記載の混合脱泡装置における揺動機構。
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