JP3977712B2 - 整流子の製造方法、整流子の製造装置、整流子形成用板材の製造方法、整流子形成用板材の製造装置、整流子形成用板材、及び整流子 - Google Patents

整流子の製造方法、整流子の製造装置、整流子形成用板材の製造方法、整流子形成用板材の製造装置、整流子形成用板材、及び整流子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、整流子の製造方法、整流子の製造装置、整流子形成用板材の製造方法、整流子形成用板材の製造装置、整流子形成用板材、及び整流子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、整流子(コンミテータ)は、樹脂からなる略円筒形状の絶縁体と、その絶縁体の外周に配設される整流子片(整流子セグメント)とを備える。この整流子は、整流子形成用板材を円筒体に形成し、その内周側に液体状態の樹脂を流し込み、樹脂が硬化後、円筒体を等角度間隔に分割することによって形成され、その分割された一つを整流子片とし、硬化した樹脂を絶縁体としている。
【0003】
この整流子形成用板材は、平板状の板材の表面に平行に延びる複数(整流子片の数と対応した数であって、例えば整流子片が1個につき1個)の凸部が並設され、該各凸部にはその並設される方向に突出する突出部が形成されている。この突出部は、整流子形成用板材が円筒体とされるとき、その内周側に配置され、硬化した樹脂と係合するため、分割後に各整流子片が絶縁体から剥落するのを防ぐ。尚、このような整流子としては、例えば、特許文献1に開示されたもの等がある。
【0004】
ところで、上記のような整流子形成用板材(整流子)の製造方法としては、例えば、図13に示すように、まず整流子片の数(例えば8個)と同数の凸部51が平行に延びるように並設され、該凸部51の長手方向(平行に延びる方向であって、図13中、紙面直交方向)の長さが整流子の軸線方向長さを多数含むような長さの板材52を用意する。そして、板材52に前記突出部を形成する等、種々の加工を施して1つの整流子(8つの整流子片)に対応した整流子形成用板材を複数製造する。ここで、前記種々の加工には、図13に示すように、下金型53上に板材52を配置し、パンチ54を前記凸部51の凸設方向に反して移動(下動)させることで、図14に示すように、板材52の一部(前記凸部51の並設方向に長い一部)52aを打ち抜き除去する打ち抜き除去工程が含まれる。よって、1枚の板材52が複数の整流子形成用板材と対応した大きさに分割される。このような製造方法では、長い板材52から複数の整流子形成用板材を得るため、その中間工程(分割される前段階)での取り扱いや部品管理等が容易となるとともに、1度に複数の整流子形成用板材と対応した分の加工を行うことが容易となり、整流子形成用板材の製造コストを低減することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−245456号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような整流子形成用板材(整流子)の製造方法において、パンチ54の形状をフラット形状(図13及び図14参照)とした場合、その打ち抜き除去工程時、図15に示すように、板材52の打ち抜かれた端面52b側の凸部51が前記並設方向(幅方向)に潰れる(膨らむ)とともに、バリ55やダレ56が発生するという問題がある。尚、前記バリ55は、後の他の加工時に板材52と金型との間に入り込むことで最終的に整流子片の表面に打痕を発生させる原因となり、ひいてはブラシとの接触不良や、騒音の原因となる。又、前記ダレ56は、板材52(凸部51)の板厚を減少させ、後の他の加工時の加工不良(例えば、突出部の形成不良)の原因となり、ひいては整流子の外形不良や、整流子片が絶縁体から剥離する原因となる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、バリやダレの発生を抑制することができる整流子の製造方法、整流子の製造装置、整流子形成用板材の製造方法、整流子形成用板材の製造装置、整流子形成用板材、及び整流子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向と逆方向に第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含み、前記板材を、前記凸部が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にして、その板材の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填し、その樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材を所定角度間隔に分割することにより整流子片を形成する整流子の製造方法であって、前記打ち抜き除去工程は、下金型上に前記板材を位置決め配置する位置決め工程と、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された前記第1のパンチにて前記下金型上の前記板材を打ち抜く打ち抜き工程とを有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向と逆方向に第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子の製造方法であって、前記打ち抜き除去工程は、下金型上に前記板材を位置決め配置する位置決め工程と、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された前記第1のパンチにて前記下金型上の前記板材を打ち抜く打ち抜き工程とを有し、前記板材を、前記凸部が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にする丸め工程と、前記円筒形状の板材の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填する充填工程と、前記樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材を所定角度間隔に分割することにより整流子片を形成する整流子形成工程とを有する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の整流子の製造方法において、前記打ち抜き工程にて前記板材をその並設方向に長く打ち抜き除去するとともに、前記各凸部間を所定量打ち抜くことで、肉逃がし用の孔及び前記肉逃がし用の孔間に整流子ライザ用凸部を形成し、少なくとも前記打ち抜き除去工程の後であって、少なくとも前記丸め工程の前に、前記凸部の凸設方向と逆方向に第2のパンチを移動させることで、前記整流子ライザ用凸部の板厚を整流子ライザの板厚とする板厚変更工程を有する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の整流子の製造方法において、少なくとも前記丸め工程の前に、前記凸部の凸設方向と逆方向に第3のパンチを移動させることで、前記凸部の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝を形成するとともに、同時に前記凸部が並設される方向に突出する突出部を前記凸部に形成する突出部形成工程を有する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向と逆方向に第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を行い、前記板材を、前記凸部が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にして、その板材の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填し、その樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材を所定角度間隔に分割することにより整流子片を形成する整流子の製造装置であって、前記第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向と逆方向に第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子形成用板材の製造方法であって、前記打ち抜き除去工程は、下金型上に前記板材を位置決め配置する位置決め工程と、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された前記第1のパンチにて前記下金型上の前記板材を打ち抜く打ち抜き工程とを有する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向に反して第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子形成用板材の製造方法であって、前記第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置には、該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の整流子形成用板材の製造方法において、前記凸部は、該凸部が並設される方向に突出し整流子を構成する略円筒形状の絶縁体と径方向に係合するための突出部が形成されるものであって、前記突出部を、前記凸部の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝を形成する時に同時に突出形成する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の整流子形成用板材の製造方法において、前記凸部の凸設方向の中間位置から基端側に、該凸部の並設方向に広がる拡幅部を形成した。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、前記凹部の底部を、前記凸部の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部とした。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、前記凹部を略V字形状とし、該略V字形状の傾斜面を前記縮幅部とするとともに、該略V字形状の底部を底に向かうほどその幅が小さくなる曲面とした。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、前記凹部の底部を、その底の幅が前記凸部の幅より小さく、開口側の幅が前記凸部の幅と略同じの略台形形状である台形部とした。
【0020】
請求項13に記載の発明は、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向に反して第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を行う整流子形成用板材の製造装置であって、前記第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置には、該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。
【0021】
請求項14に記載の発明は、板上に複数の凸部が平行に延びるように並設され、その各凸部に該凸部の並設方向に突出する突出部が形成され、前記凸部の並設方向に複数に分割されて整流子片を構成し、前記各突出部が略円筒形状の絶縁体と径方向に係合されることで該絶縁体に固定されて整流子を構成する整流子形成用板材において、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて打ち抜き除去された切断部を有する。
【0022】
請求項15に記載の発明は、略円筒形状の絶縁体と、板上に複数の凸部が平行に延びるように並設され、その各凸部に該凸部の並設方向に突出する突出部が形成された整流子形成用板材から、前記凸部の並設方向に複数に分割されてなる複数の整流子片とを備え、前記突出部が前記絶縁体と径方向に係合されることで該整流子片が該絶縁体に固定されてなる整流子において、前記整流子片は、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて打ち抜き除去された切断部を有する。
【0023】
(作用)
請求項1及び2に記載の発明によれば、打ち抜き除去工程における位置決め工程にて、下金型上に平行に複数並設された凸部を有する板材が位置決め配置される。そして、打ち抜き除去工程における打ち抜き工程では、凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて下金型上の板材が打ち抜かれる。このようにすると、凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。そして、後に板材は、凸部が内周側に配置されるように丸められて円筒形状にされ、その板材の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂が充填され、その樹脂の硬化後、円筒形状の板材が所定角度間隔に分割されることにより整流子片が形成されて整流子が製造される。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、前記打ち抜き工程にて板材がその並設方向に長く打ち抜き除去されるとともに、各凸部間が所定量打ち抜かれることで、肉逃がし用の孔及び肉逃がし用の孔間に整流子ライザ用凸部が形成される。そして、少なくとも前記打ち抜き除去工程の後であって、少なくとも前記丸め工程の前に行われる板厚変更工程では、凸部の凸設方向と逆方向に第2のパンチが移動されることで、整流子ライザ用凸部の板厚が整流子ライザの板厚とされる。このようにすると、板厚変更工程時において整流子ライザ用凸部が潰されるとき、その余肉が肉逃がし用の孔に逃げることになる。よって、打ち抜き工程にて板材をその並設方向に長く打ち抜き除去するとともに肉逃がし用の孔を形成することで工程数の増加を抑制しながら、板厚変更工程にて良好に整流子ライザ用凸部の板厚を変更することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、少なくとも丸め工程の前に行われる突出部形成工程では、凸部の凸設方向と逆方向に第3のパンチが移動されることで、凸部の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝が形成されるとともに、同時に凸部が並設される方向に突出する突出部が凸部に形成される。このように溝の形成時に分けられる凸部の鋭角な部分は、体積が小さく容易に変形されるため、小さな加圧力で凸部から突出する突出部を形成することができる。又、溝を凸部の辺に対して傾斜して形成すれば突出部が形成されるため、その溝を形成する際の位置決めを高精度に行わなくてもよい。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置には、該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。よって、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向と逆方向に第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程時、凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。そして、後に板材は、凸部が内周側に配置されるように丸められて円筒形状にされ、その板材の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂が充填され、その樹脂の硬化後、円筒形状の板材が所定角度間隔に分割されることにより整流子片が形成されて整流子が製造される。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、打ち抜き除去工程における位置決め工程にて、下金型上に平行に複数並設された凸部を有する板材が位置決め配置される。そして、打ち抜き除去工程における打ち抜き工程では、凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて下金型上の板材が打ち抜かれる。このようにすると、凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置には、該凹部の中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。よって、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向に反して第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程時、凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、突出部は、前記凸部の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝を形成する時に同時に突出形成される。このように溝の形成時に分けられる凸部の鋭角な部分は、体積が小さく容易に変形されるため、小さな加圧力で凸部から突出する突出部を形成することができる。又、溝を凸部の辺に対して傾斜して形成すれば突出部が形成されるため、その溝を形成する際の位置決めを高精度に行わなくてもよい。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、凸部の凸設方向の中間位置から基端側には、該凸部の並設方向に広がる拡幅部が形成されるため、凸部から突出する突出部の起点を略前記中間位置とすることができる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、凹部の底部は、前記凸部の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部とされる。よって、凹部の底部(半円部)はその幅方向中央まで且つ底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部が並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、凹部は略V字形状とされ、該略V字形状の傾斜面が前記縮幅部とされるとともに、該略V字形状の底部が底に向かうほどその幅が小さくなる曲面とされる。よって、凹部はその幅方向中央まで且つ底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部が並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、凹部の底部は、その底の幅が前記凸部の幅より小さく、その開口側の幅が前記凸部の幅と略同じの略台形形状である台形部とされる。よって、台形部の開口部からその底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部が並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、第1のパンチには、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに、該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置には、該凹部の中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成される。よって、平行に複数並設された凸部を有する板材を、前記凸部の凸設方向に反して第1のパンチを移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程時、凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0035】
請求項14に記載の発明によれば、整流子形成用板材は、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて打ち抜き除去された切断部を有する。よって、第1のパンチにて打ち抜き除去する打ち抜き除去工程時、切断部の凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0036】
請求項15に記載の発明によれば、整流子片は、前記凸部に対応して凹部が形成されるとともに該凹部における前記凸部の両角部と対応した位置に該凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成された第1のパンチにて打ち抜き除去された切断部を有する。よって、第1のパンチにて打ち抜き除去する打ち抜き除去工程時、切断部の凸部(その角)が縮幅部により並設方向に広がることが抑制され、バリやダレの発生が抑制される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図10に従って説明する。
図1は、モータの要部断面図である。モータのモータハウジング1には、回転軸2が回転可能に支持され、その回転軸2には整流子(コンミテータ)3及び巻線4aが巻着された電機子コア4が固定されている。又、モータハウジング1には、電機子コア4と対向するようにマグネット5が固定され、整流子3と押圧接触される給電用のブラシ6が保持されている。
【0038】
図2に示すように、整流子3は、樹脂からなる略円筒形状の絶縁体7と、その絶縁体7の外周に配設される複数の整流子片8とを備える。尚、本実施の形態の整流子片8は、絶縁体7の外周に等角度間隔に8個配設されている。
【0039】
各整流子片8は、略円筒形状を所定角度で一部分切り取った形状に形成されている。又、整流子片8の軸線方向の一端には、先端側に向かうほどその周方向の幅が小さく(狭く)なる幅狭部8aが形成されている。又、整流子片8の絶縁体7に固定される側の面(以下、内周面という)には、絶縁体7に埋設される凸部9が凸設されている。又、整流子片8の幅狭部8aの先端には、径方向外側に折り返された整流子ライザ(結線爪)8bが形成されている。この整流子ライザ8bの基端部には、先端側に向かうほどその断面積が小さくなる縮小部8cが形成されている。詳しくは、縮小部8cは、その先端側に向かうほどその周方向の幅が小さく(狭く)なるように、且つ、その先端側に向かうほどその板厚(径方向の幅)が小さくなるように(図10参照)形成されている。又、この整流子ライザ8bには、前記巻線4aが係止される(からげられる)。
【0040】
前記凸部9は、整流子片8の周方向の中心位置に形成されている。凸部9は、整流子片8の軸線方向の一端から他端まで、軸線方向に延びるように形成されている。
【0041】
凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、周方向(整流子3及び絶縁体7の周方向であって、凸部9の短手方向)に広がる拡幅部9aが形成されている。詳しくは、凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置に向かうほど周方向に広がる拡幅部9aが形成されている。
【0042】
凸部9の頂面には、図9に示すように、該凸部9の長手方向に延びる辺に対して傾斜した溝10a,10bが形成されている。尚、図9は、後に分割されて整流子片8を構成する板材であるが、該板材に形成された凸部9が整流子片8のそれと同等であるため、ここでは図9を用いて凸部9について説明する。又、ここで記載する凸部9の長手方向に延びる辺とは、溝10a,10bが形成される前の状態の凸部9の頂面が形成する4角形の辺の内、長手方向(図9中、左右方向)に延びる2つの辺のことである。又、ここで記載する傾斜とは、直角(90°)を含まない。又、本実施の形態では、説明の便宜上、溝10a,10bが形成される前の状態も、溝10a,10bが形成された後と同様に凸部9と記載する。
【0043】
溝10a,10bは、V字溝であり、直線状に延びて複数形成されている。溝10a,10bは、凸部9を分割するように凸部9の短手方向(図9中、上下方向)一端側から同他端側まで形成され、凸部9の前記2つの辺に対してそれぞれ(本実施の形態では60度)傾斜して形成されている。溝10aと、溝10bとは、凸部9の長手方向に交互に連続して形成されている。即ち、溝10a,10bは、ジグザグ形状に形成されている。
【0044】
そして、凸部9には、上記溝10a,10bが形成される時に同時に、凸部9の凸設方向と略直角方向(整流子3及び絶縁体7の周方向であって、凸部9の短手方向)に突出する突出部11a,11b(図2参照)が形成されている。
【0045】
詳述すると、溝10a,10bにて分けられる凸部9の鋭角な部分は、体積が小さく容易に変形されるため、凸部9の短手方向の外側に移動されて突出し、突出部11a,11bとされている。1つの溝10a(10b)は、凸部9の短手方向一端側から同他端側まで形成され、凸部9の2つの辺に対してそれぞれ傾斜しているため、突出部11a(11b)は、1つの溝10a(10b)により凸部9の短手方向両端側にそれぞれ形成されている。又、凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置に向かうほど凸部9の短手方向(絶縁体7の周方向)に広がる拡幅部9aが形成されていることから、突出部11a,11bの突出する(倒れる)起点は、略該中間位置(拡幅部9aの頂部)とされている。言い換えると、突出部11a,11bは、溝10a,10bの形成時に、凸部9の短手方向(絶縁体7の周方向)に広がる拡幅部9aの頂部が起点となって突出し、形成されている。そして、突出部11a,11bは、凸部9とともに絶縁体7に埋設され、該絶縁体7と径方向に係合することから、整流子片8が絶縁体7から剥離することは防止される。
【0046】
次に、上記のように構成された整流子3の製造方法を図3〜図10に従って説明するとともに、該整流子3の一部を構成するための整流子形成用板材(板材12)と、その製造方法及び製造装置について説明する。
【0047】
まず、図3に示すように、一平面上に複数(本実施の形態では、8個)の凸部9が平行に延びるように並設された導電性の板材12を用意する。この各凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置に向かうほど凸部9の短手方向(凸部9の並設方向)に広がる拡幅部9aが形成されている。この板材12において凸部9の長手方向(平行に延びる方向)の長さは、前記整流子3の軸線方向の長さ、詳しくは整流子ライザ8bが折り曲げられる前の整流子片8の長さを多数含むような長さに設定されている。又、この板材12において凸部9の短手方向(並設方向)の長さは、整流子3の外周面の長さより両端のフレーム部12a分だけ大きく設定されている。又、凸部9の間隔は、整流子片8と対応した所定の間隔に設定されている。
【0048】
次に、図示しないパンチにより、前記両フレーム部12aに板材12の位置決めに用いるための位置決め孔12b(図3、図6及び図9参照)を所定間隔毎に形成する。これにより、後段の各工程では、位置決め孔12bにより板材12の位置決めが行われる。
【0049】
次に、図4及び図5に示すように、打ち抜き除去工程では、下金型13及び第1のパンチ14にて板材12の一部(凸部9の並設方向に長い一部)12cを打ち抜き除去する。尚、本実施の形態では、下金型13及び第1のパンチ14が整流子の製造装置及び整流子形成用板材の製造装置の一部を構成している。詳述すると、下金型13には、両フレーム部12a間の内側と対応するように中央孔13aが形成されている。一方、第1のパンチ14には、前記凸部9に対応して凹部15が形成されている。この凹部15における前記凸部9の両角部と対応した位置には、図4の部分拡大図に示すように、該凹部15の幅方向(図4中、左右方向)中央に向かうほど底が深くなる縮幅部16が形成されている。本実施の形態の凹部15は、その開口部が前記凸部9の拡幅部9aに略沿ったテーパ部15aとされている。又、凹部15は、その底部が前記凸部9の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部15bとされている。そして、半円部15bの開口部は、テーパ部15aと滑らかに連結され、その連結部分付近が縮幅部16とされている。そして、まず図4に示すように、打ち抜き除去工程における位置決め工程では、下金型13上に板材12を位置決め配置する。そして、次に図5に示すように、打ち抜き除去工程における打ち抜き工程では、第1のパンチ14を前記凸部9の凸設方向に反して(逆方向に)移動(下動)させることで、板材12の一部(凸部9の並設方向に長い一部)12cを打ち抜き除去する。尚、本実施の形態では、第1のパンチ14に図示しない櫛歯部を形成することで、図6に示すように、前記凸部9間をも所定量打ち抜き、板材12に櫛歯状の肉逃がし用の孔12dを形成するとともに、板材12に整流子ライザ用凸部12eを形成する。
【0050】
次に、図7に示すように、板厚変更工程では、プレスの第2のパンチ17を下動させ、整流子ライザ用凸部12eを加圧し、該部分の板厚を整流子ライザ8bの板厚に形成する。尚、この第2のパンチ17には、前記整流子ライザ8bの縮小部8cの板厚に対応した傾斜部17aが形成され、整流子ライザ用凸部12eの基端側は縮小部8cの板厚に対応した厚さとなる。又、この加工時、整流子ライザ用凸部12eが潰されることで、図9に示すように、その余肉12fが肉逃がし用の孔12dに逃げることになる。
【0051】
次に、図8に示すように、突出部形成工程では、プレスの第3のパンチ18により溝10a及び突出部11a(図9参照)を形成する。詳述すると、第3のパンチ18は、複数のプレス凸部18aを備え、そのプレス凸部18aは、前記溝10aを形成すべく凸部9の長手方向に延びる辺に対して傾斜し、その先端に向かうほど幅が狭くなっている。そして、第3のパンチ18を凸部9の上方から下動させ加圧する。すると、図9に示すように、溝10aが形成されるとともに、溝10aにて分けられる凸部9の鋭角な部分が、凸部9の短手方向(凸部9が並設される方向であって、図中、上下方向)の外側に移動されて突出し、突出部11aが形成される。尚、このとき、凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置(前記内周面8a)に向かうほど凸部9の短手方向(凸部9の並設方向)に広がる拡幅部9aが形成されていることから、突出部11aの突出する(倒れる)起点は、略該中間位置(拡幅部9aの頂部)となる。又、第3のパンチ18のプレス凸部18aと逆方向に傾斜したプレス凸部を有する図示しないパンチにより溝10b及び突出部11bを同様の方法で形成する。又、本実施の形態では、説明の便宜上、この状態、即ち溝10a,10b及び突出部11a,11bが形成された状態の板材12も、形成前と同様に板材12として記載する。
【0052】
次に、図9に示す板材12の前記両フレーム部12aや前記余肉12f等を打ち抜き除去し、図10に示すように、板材12を凸部9短手方向に所定の長さとするとともに、折り曲げられる前の整流子ライザ8bを形成する。尚、この所定の長さとは、整流子3の外周の長さである。又、本実施の形態では、この板材12が整流子形成用板材を構成している。
【0053】
次に、丸め工程では、板材12を、凸部9が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にする。
次に、充填工程では、図示しない型に円筒形状の板材12を配置し、円筒形状の板材12の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填する。
【0054】
次に、その樹脂の硬化後、整流子ライザ8bを径方向外側に折り曲げる(図2参照)。
次に、図2に示すように、整流子形成工程では、円筒形状の板材12を等角度間隔に8分割することにより整流子片8を形成する。詳述すると、硬化した樹脂を含む円筒形状の板材12の外周側から板材12を貫通し樹脂まで達するように、切削加工により分割溝19を軸線方向一端部から他端部まで形成する。すると、整流子片8及び絶縁体7が形成される。これにより整流子3の製造が完了する。
【0055】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)打ち抜き除去工程時における第1のパンチ14には、凸部9に対応して凹部15が形成されている。そして、凹部15における凸部9の両角部と対応した位置には、図4の部分拡大図に示すように、該凹部15の幅方向の中央に向かうほど底が深くなる縮幅部16が形成される。よって、打ち抜き除去工程時、凸部9(その角)が縮幅部16により内側(凸部9の幅方向中央側)に向かう力を受け、並設方向(図4及び図5中、左右方向)に広がることが抑制される。これにより、切断部12g(図6参照)のバリやダレの発生が抑制される。その結果、バリが後の他の加工時に板材12と金型との間に入り込むことが低減され、整流子片8の表面の打痕を低減することができ、ひいてはブラシ6との接触不良や、騒音を低減することができる。又、板材12(凸部9)の板厚を維持させることができ、後の他の加工時の加工不良(例えば、突出部11a,11bの形成不良)を防止でき、ひいては整流子3の外形不良や、整流子片8の絶縁体7からの剥離を低減することができる。
【0056】
(2)第1のパンチ14の凹部15の底部は、凸部9の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部15bとされている。よって、凹部15の底部(半円部15b)はその幅方向中央まで且つ底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部9が並設方向に広がることが抑制される。よって、切断部12gのバリやダレの発生が更に抑制される。
【0057】
(3)突出部11a,11bは、凸部9の長手方向に延びる辺に対して傾斜した溝10a,10bを形成する時に同時に突出形成される。このように溝10a,10bの形成時に分けられる凸部9の鋭角な部分は、体積が小さく容易に変形されるため、小さな加圧力で凸部9から突出する突出部11a,11bを形成することができる。これにより、整流子片8の絶縁体7からの剥離を防止する突出部11a,11bを小型のプレスで形成することができる。又、溝10a,10bを凸部9の辺に対して傾斜して形成すれば突出部11a,11bが形成されるため、その溝10a,10bを形成する際の位置決めを高精度に行わなくてもよい。
【0058】
(4)凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置に向かうほど凸部9の並設方向(短手方向)に広がる拡幅部9aが形成されているため、突出部11a,11bの突出する(倒れる)起点は、略中間位置(拡幅部9aの頂部)となる。よって、突出部11a,11bの起点が凸部9の基端部とならず、突出部11a,11bの前記凸設方向に対する傾斜角度(エッジ)が大きくなる。又、突出部11a,11bが抱え込む絶縁体7の量を十分に確保することができる。よって、整流子片8の絶縁体7からの剥離を更に低減することができる。
【0059】
(5)溝10a,10bは、V字形状に形成されている。これにより、凸部9の上方ほど大きく変形し、大きく突出した突出部11a,11bが形成される。
(6)整流子ライザ8bの基端部には、先端側に向かうほどその断面積が小さくなる縮小部8cが形成されている。よって、整流子ライザ8bの先端側を細くしながら(必要以上に太くすることなく)、折り返された整流子ライザ8bの割れ等を防止することができ、その強度を確保することができる。
【0060】
(7)打ち抜き工程時(打ち抜き除去工程時)、板材12の一部(凸部9の並設方向に長い一部)12cを打ち抜き除去するとともに、各凸部9間を所定量打ち抜くことで肉逃がし用の孔12d及び整流子ライザ用凸部12eが形成される。そして、板厚変更工程時において整流子ライザ用凸部12eが潰されるとき、その余肉12fが肉逃がし用の孔12dに逃げることになる。よって、打ち抜き工程にて板材12の一部(凸部9の並設方向に長い一部)12cを打ち抜き除去するとともに肉逃がし用の孔12dを形成する(肉逃がし用の孔12dの形成に別工程を要しない)ことで工程数の増加を抑制しながら、板厚変更工程で良好に整流子ライザ用凸部23eの板厚を変更することができる。
【0061】
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、凹部15は、その開口部が前記凸部9の拡幅部9aに略沿ったテーパ部15aとされ、その底部が前記凸部9の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部15bとされ、半円部15bの開口部とテーパ部15aとが滑らかに連結されているとしたが、凹部における前記凸部9の両角部と対応した位置に凹部の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部が形成されていれば、凹部を他の形状に変更して実施してもよい。
【0062】
例えば、図11に示す第1のパンチ21に変更してもよい。第1のパンチ21には、前記凸部9に対応して凹部22が形成されている。この凹部22における前記凸部9の両角部と対応した位置には、図11の部分拡大図に示すように、該凹部22の幅方向(図中、左右方向)中央に向かうほど底が深くなる縮幅部23が形成されている。即ち、この凹部22は、略V字形状とされ、その傾斜面における前記凸部9の両角部と対応した部分が縮幅部23とされている。又、この凹部22の底部は、底に向かうほどその幅が小さくなる曲面24とされている。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(3)〜(7)と同様の効果を得ることができる。又、凹部22の底部(曲面24)は、底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部9が並設方向に広がることが抑制される。よって、切断部12gのバリやダレの発生が更に抑制される。
【0063】
又、例えば、図12に示す第1のパンチ31に変更してもよい。第1のパンチ31には、前記凸部9に対応して凹部32が形成されている。この凹部32における前記凸部9の両角部と対応した位置には、図12の部分拡大図に示すように、該凹部32の幅方向(図中、左右方向)中央に向かうほど底が深くなる縮幅部33が形成されている。詳しくは、凹部32の底部は、その底の幅が前記凸部9の幅より小さく、その開口側の幅が前記凸部9の幅と略同じの略台形形状である台形部34とされている。又、凹部32の開口部は前記凸部9の拡幅部9aに略沿ったテーパ部35とされ、台形部34の開口部とテーパ部35とが滑らかに連結され、その連結部分付近が縮幅部33とされている。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(3)〜(7)と同様の効果を得ることができる。又、凹部32の底部(台形部34)は、底まで徐々に縮幅となり、打ち抜き除去工程時の最後まで、凸部9が並設方向に広がることが抑制される。よって、切断部12gのバリやダレの発生が更に抑制される。
【0064】
・上記実施の形態では、突出部11a,11bを、凸部9の長手方向に延びる辺に対して傾斜した溝10a,10bを形成する時に同時に突出形成したが、絶縁体7と径方向に係合することができれば、他の方法で形成してもよい。例えば、凸部9の短手方向(幅方向)中央に該凸部9の上部を分割するように長手方向に延びる(長手方向に延びる辺に対して傾斜していない)V字溝を形成し、突出部を凸部9の短手方向の両方に突出させて形成してもよい。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(2)、(4)、(6)、(7)と同様の効果を得ることができる。
【0065】
・上記実施の形態では、凸部9の凸設方向の中間位置から基端側には、該中間位置から基端位置に向かうほど凸部9の並設方向(短手方向)に広がる拡幅部9aが形成されているとしたが、拡幅部9aが形成されていない凸部に変更してもよい。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(3)、(5)〜(7)と同様の効果を得ることができる。
【0066】
・上記実施の形態では、整流子ライザ8bの基端部には、先端側に向かうほどその断面積が小さくなる縮小部8cが形成されているとしたが、縮小部8cを形成しなくても(断面積を均一としても)よい。このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(5)と同様の効果を得ることができる。
【0067】
・上記実施の形態では、整流子片8が絶縁体7の外周に等角度間隔に8個配設される整流子3としたが、他の数の整流子片が配設された整流子に変更してもよい。又、1つの整流子片8には、1つの凸部9が形成されているとしたが、1つの整流子片に複数(例えば2つ)の凸部が形成されているものに変更してもよい。尚、この場合、板材12の形状(凸部の数及び配置)も適宜変更する必要がある。このようにしても、上記実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0068】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子の製造方法を提供することができる。
【0069】
請求項5に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子の製造装置を提供することができる。
請求項6〜12に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子形成用板材の製造方法を提供することができる。
【0070】
請求項13に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子形成用板材の製造装置を提供することができる。
請求項14に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子形成用板材を提供することができる。
【0071】
請求項15に記載の発明によれば、バリやダレの発生を抑制することができる整流子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のモータの要部断面図。
【図2】本実施の形態の整流子の斜視図。
【図3】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図4】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図5】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図6】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図7】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図8】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図9】本実施の形態の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図10】本実施の形態の整流子形成用板材の斜視図。
【図11】別例の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図12】別例の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図13】従来技術の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図14】従来技術の整流子の製造方法を説明するための説明図。
【図15】従来技術の整流子形成用板材の斜視図。
【符号の説明】
3…整流子、7…絶縁体、8…整流子片、9…凸部、12…板材(整流子形成用板材)、13…下金型、14,21,31…第1のパンチ、15,22,32…凹部、16,23,33…縮幅部、17…第2のパンチ、18…第3のパンチ、10a,10b…溝、11a,11b…突出部、12d…肉逃がし用の孔、12e…整流子ライザ用凸部、12g…切断部、24…曲面、34…台形部。

Claims (15)

  1. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含み、
    前記板材(12)を、前記凸部(9)が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にして、その板材(12)の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填し、その樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材(12)を所定角度間隔に分割することにより整流子片(8)を形成する整流子の製造方法であって、
    前記打ち抜き除去工程は、
    下金型(13)上に前記板材(12)を位置決め配置する位置決め工程と、
    前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成された前記第1のパンチ(14,21,31)にて前記下金型(13)上の前記板材(12)を打ち抜く打ち抜き工程と
    を有することを特徴とする整流子の製造方法。
  2. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子の製造方法であって、
    前記打ち抜き除去工程は、下金型(13)上に前記板材(12)を位置決め配置する位置決め工程と、前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成された前記第1のパンチ(14,21,31)にて前記下金型(13)上の前記板材(12)を打ち抜く打ち抜き工程とを有し、
    前記板材(12)を、前記凸部(9)が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にする丸め工程と、
    前記円筒形状の板材(12)の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填する充填工程と、
    前記樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材(12)を所定角度間隔に分割することにより整流子片(8)を形成する整流子形成工程と
    を有することを特徴とする整流子の製造方法。
  3. 請求項2に記載の整流子の製造方法において、
    前記打ち抜き工程にて前記板材(12)をその並設方向に長く打ち抜き除去するとともに、前記各凸部(9)間を所定量打ち抜くことで、肉逃がし用の孔(12d)及び前記肉逃がし用の孔(12d)間に整流子ライザ用凸部(12e)を形成し、
    少なくとも前記打ち抜き除去工程の後であって、少なくとも前記丸め工程の前に、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第2のパンチ(17)を移動させることで、前記整流子ライザ用凸部(12e)の板厚を整流子ライザ(8b)の板厚とする板厚変更工程を有することを特徴とする整流子の製造方法。
  4. 請求項2又は3に記載の整流子の製造方法において、
    少なくとも前記丸め工程の前に、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第3のパンチ(18)を移動させることで、前記凸部(9)の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝(10a,10b)を形成するとともに、同時に前記凸部(9)が並設される方向に突出する突出部を前記凸部(9)に形成する突出部形成工程を有することを特徴とする整流子の製造方法。
  5. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を行い、
    前記板材(12)を、前記凸部(9)が内周側に配置されるように丸めて円筒形状にして、その板材(12)の内周側に絶縁材料としての液体状の樹脂を充填し、その樹脂の硬化後、前記円筒形状の板材(12)を所定角度間隔に分割することにより整流子片(8)を形成する整流子の製造装置であって、
    前記第1のパンチ(14,21,31)には、前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成されたことを特徴とする整流子の製造装置。
  6. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向と逆方向に第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子形成用板材の製造方法であって、
    前記打ち抜き除去工程は、
    下金型(13)上に前記板材(12)を位置決め配置する位置決め工程と、
    前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成された前記第1のパンチ(14,21,31)にて前記下金型(13)上の前記板材(12)を打ち抜く打ち抜き工程と
    を有することを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  7. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向に反して第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を含む整流子形成用板材の製造方法であって、
    前記第1のパンチ(14,21,31)には、前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置には、該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成されたことを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  8. 請求項7に記載の整流子形成用板材の製造方法において、
    前記凸部(9)は、該凸部(9)が並設される方向に突出し整流子(3)を構成する略円筒形状の絶縁体(7)と径方向に係合するための突出部(11a,11b)が形成されるものであって、
    前記突出部(11a,11b)を、前記凸部(9)の長手方向に延びる少なくとも1つの辺に対して傾斜した溝(10a,10b)を形成する時に同時に突出形成することを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  9. 請求項8に記載の整流子形成用板材の製造方法において、
    前記凸部(9)の凸設方向の中間位置から基端側に、該凸部(9)の並設方向に広がる拡幅部(9a)を形成したことを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  10. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、
    前記凹部(15)の底部を、前記凸部(9)の頂面の幅を直径とする略半円形状の半円部(15b)としたことを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  11. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、
    前記凹部(22)を略V字形状とし、該略V字形状の傾斜面を前記縮幅部(23)とするとともに、該略V字形状の底部を底に向かうほどその幅が小さくなる曲面(24)としたことを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  12. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の整流子形成用板材の製造方法において、
    前記凹部(32)の底部を、その底の幅が前記凸部(9)の幅より小さく、開口側の幅が前記凸部(9)の幅と略同じの略台形形状である台形部(34)としたことを特徴とする整流子形成用板材の製造方法。
  13. 平行に複数並設された凸部(9)を有する板材(12)を、前記凸部(9)の凸設方向に反して第1のパンチ(14,21,31)を移動させることで前記並設方向に長く打ち抜き除去する打ち抜き除去工程を行う整流子形成用板材の製造装置であって、
    前記第1のパンチ(14,21,31)には、前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに、該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置には、該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成されたことを特徴とする整流子形成用板材の製造装置。
  14. 板上に複数の凸部(9)が平行に延びるように並設され、その各凸部(9)に該凸部(9)の並設方向に突出する突出部(11a,11b)が形成され、前記凸部(9)の並設方向に複数に分割されて整流子片(8)を構成し、前記各突出部(11a,11b)が略円筒形状の絶縁体(7)と径方向に係合されることで該絶縁体(7)に固定されて整流子(3)を構成する整流子形成用板材において、
    前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成された第1のパンチ(14,21,31)にて打ち抜き除去された切断部(12g)を有する整流子形成用板材。
  15. 略円筒形状の絶縁体(7)と、
    板上に複数の凸部(9)が平行に延びるように並設され、その各凸部(9)に該凸部(9)の並設方向に突出する突出部(11a,11b)が形成された整流子形成用板材(12)から、前記凸部(9)の並設方向に複数に分割されてなる複数の整流子片(8)とを備え、
    前記突出部(11a,11b)が前記絶縁体(7)と径方向に係合されることで該整流子片(8)が該絶縁体(7)に固定されてなる整流子において、
    前記整流子片(8)は、前記凸部(9)に対応して凹部(15,22,32)が形成されるとともに該凹部(15,22,32)における前記凸部(9)の両角部と対応した位置に該凹部(15,22,32)の幅方向中央に向かうほど底が深くなる縮幅部(16,23,33)が形成された第1のパンチ(14,21,31)にて打ち抜き除去された切断部(12g)を有する整流子。
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