JP3975456B2 - 重金属成分回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物を焼却した焼却炉底灰、焼却炉飛灰および焼却炉飛灰の熔融固化の際に生じた熔融飛灰ならびに廃棄物の熱分解ガスからの集塵ダストなどの灰類に含有されている重金属成分を回収する方法に関し、さらに詳細には、これらの灰類に含有されている重金属成分を塩酸酸性無機塩化物水溶液を重金属成分溶出液として溶出、回収する廃棄物焼却灰類中または熔融飛灰類中の重金属成分回収方法に係わる。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近時、大量に発生する各種の廃棄物は焼却処理および/または熱分解されている。廃棄物の増加に伴って、焼却で生ずる焼却炉炉底灰および焼却炉飛灰(両者を一括して以下 焼却灰 と記すこともある。)ならびに熱分解で生ずる分解ガスからの集塵ダストなども、年々、増加の一途を辿っている。この焼却灰および集塵ダストなどは、その殆どが最終処分地に廃棄され埋め立て処理されている。しかしながら、焼却炉飛灰は有害物質である重金属成分を特に多量に含有しているため、特別管理一般廃棄物に指定されており、最終処分地での廃棄に先立って、熔融固化処理、酸による抽出処理、セメント固化処理およびキレート化合物などの金属封止剤による固定化処理のいずれかで処理することが義務付けられている。
【0003】
熔融固化処理においては、毒性が大きく蒸気圧の高い亜鉛、鉛、銅、錫、クロームおよびカドミウムなどの重金属の塩化物および/または酸化物を高濃度で含有する熔融炉飛灰が生ずるので、このような熔融炉飛灰に含有されている重金属成分を回収乃至は無毒化する必要がある。
また、焼却炉灰および熱分解ガスからの集塵ダストなどにも多量の重金属成分が含有されている場合が多く、このような場合にも公害防止の見地上、これらから重金属成分を除去、回収することが必要とされる。
【0004】
廃棄物中には、一般に、ポリ塩化ビニルのような塩素化ポリマーが多量に含まれており、このような廃棄物の焼却に際して塩化水素などの低分子塩素化合物(以下単に 塩素化合物 と記す)が大量に発生し排ガス中に含有されている。排ガス中の塩化水素などの塩素化合物を除去して廃ガス中の塩素化合物の濃度を低下せしめる方法には、焼却前に予め廃棄物と消石灰とを混合する方法および/または焼却炉排ガスと消石灰液とを接触せしめる方法などがある。これらの方法において焼却前の廃棄物および排ガスのそれぞれに含有されている塩化水素など塩素化合物の全部または一部が消石灰と反応して塩化カルシウムに変化することにより、塩素化合物が除去される。しかしながら、このために使用される消石灰の量は、通常は、化学量論量に対して大過剰が必要とされるために著量となり、省資源の見地から好ましいことではない。
【0005】
さらに、この場合には、大過剰の消石灰の使用に起因して余分の消石灰が焼却炉飛灰および熔融飛灰(熔融炉飛灰 以下同様)ならびに熱分解ガスの集塵ダストなどの灰類に含有されることになり、これらの灰類を水に分散せしめるとアルカリ性となり、これを中和するための多量の酸乃至酸性物質が必要とされる。また、焼却灰などには、焼却において廃棄物に含有されていた塩素から生成せしめられた塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどのアルカリ金属塩化物ならびに塩化カルシウムなどのアルカリ土金属塩化物などが含有されている。
【0006】
硫酸および塩酸などの鉱酸のそれぞれを用いて焼却灰および熔融飛灰などのそれぞれから、水溶性が比較的小さい鉛化合物を、シリカ・アルミナなどの成分を主とした被溶出物と共に不溶解分として第一段で分離した後の液分を中和・硫化処理することによって亜鉛および銅を分別回収する方法が知られている(たとえば、特開平8−141539号公報、特開平8−117724号公報および特開平8−309313号公報)。
【0007】
また、熔融飛灰の懸濁液をアルカリ性となして、亜鉛、鉛、カドミウムおよび銅などの重金属を水酸化物に変化せしめて分離する方法が知られている(たとえば、特開平7−109533号公報)。
さらにまた、焼却灰を塩酸溶液で重金属を溶出せしめて後、硫化ソーダ等を添加するとともにpHを調整することにより重金属を硫化物として分離回収する方法も知られている(たとえば、特開平9−3558号公報)。
しかして、このようにして分離回収された重金属は、その亜鉛および鉛のそれぞれの含有率が高く、他の重金属類の含有量が許容値内であれば、亜鉛と鉛とを同時に精練する方式のISP精練所に山元還元することで、重金属回収工程におけるシステムおよび設備の簡略化を図ることができ、かつ、運転管理も容易になる。
【0008】
しかしながら、前記の諸方法においては、分離回収された重金属は、亜鉛および鉛以外にシリカ・アルミナなどの不溶解分が多量に含有されており、品位が低下して山元還元には適せず、山元還元するためには亜鉛および鉛を予め分離回収しなければならない。さらに、焼却灰の水懸濁液を塩酸によってpHを調整するだけでは焼却灰の種類および性状によっては鉛の回収率が低くなることがある。
【0009】
本発明者らは、重金属成分、特に、亜鉛成分および鉛成分のそれぞれの回収率が共に大きく、回収された重金属において、特に、亜鉛および鉛のそれぞれの含有率が共に高くて品位が高く、さらに同一プラント内で生成せしめられた塩化水素および無機塩化物を活用し省資源が可能な廃棄物からの重金属成分回収方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、重金属成分溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液によって廃棄物焼却灰類中または熔融飛灰類中(廃棄物焼却灰類および熔融飛灰の両者を総称して以下 被処理灰類 と記すこともある)の重金属成分を回収する方法において、同一プラント内で生成した塩化水素および無機塩化物のそれぞれを利用して調製された塩酸酸性無機塩化物水溶液を重金属成分溶出液に使用することを特徴とする廃棄物焼却灰類中の重金属回収方法である。
【0011】
すなわち、
(1)炉排ガスに含有された塩化水素を水に吸収させた塩酸を前記の重金属成分溶出液に使用する。
(2)前記の重金属成分溶出液によって回収された重金属成分回収液から該重金属成分を不溶化し、不溶化重金属成分除去た無機塩化物を前記の重金属成分溶出液に使用する。
(3)熔融炉への供給前または最終処分前の廃棄物焼却灰類を水洗脱塩し、重金属成分を含有する固形物を除去して得られた無機塩化物水溶液を前記の重金属成分溶出液に使用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の重金属成分回収方法が適用される被処理灰類は、少なくともポリ塩化ビニルのような塩素化ポリマーおよび重金属成分を含有している廃棄物の焼却および熱分解ならびに熔融などのそれぞれにより発生し、少なくとも塩化水素および重金属成分を含有している廃棄物焼却灰類および熔融飛灰類などであればよく、特に制限はない。廃棄物焼却灰類の好適な代表例として焼却炉炉底灰、焼却炉飛灰および熱分解炉分解ガスからの集塵ダストなどがある。また、熔融飛灰類の好適な代表例として焼却灰および熱分解炉分解ガスからの集塵ダストなどのそれぞれの熔融固化の際に生ずる熔融飛灰などがある。
【0013】
本発明において重金属成分溶出液(以下 溶出液 と記すこともある)とされる塩酸酸性無機塩化物水溶液は、少なくとも塩化水素および無機塩化物が溶存せしめられている水溶液である。
ここで無機塩化物水溶液とは、少なくとも主成分として塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどのようなアルカリ金属塩化物ならびに塩化カルシウムなどのようなアルカリ土金属塩化物を溶存せしめており、さらに、亜鉛および銅などの重金属の塩化物を少量溶存せしめていてもよい。
【0014】
本発明において使用される塩酸酸性無機塩化物水溶液の特性は、被処理灰類を溶出液に懸濁せしめたスラリーの状態で、pは4程度以下、好ましくは1〜3程度、塩素イオン濃度は約1〜7モル/リットル、好ましくは約1〜4モル/リットルであり、処理される被処理灰類の種類によって異なる。
【0015】
また、溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液の使用量は、処理される被処理灰類の種類および組成ならびに溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液のpHおよび塩素イオン濃度などの特性によって異なり、一概に特定し得ないが、処理される被処理灰類の重量に対して、通常は、3〜30倍程度が好ましく、5〜20倍程度が特に好ましい。
【0016】
塩酸酸性無機塩化物水溶液は、そのpHおよび塩素イオン濃度などの特性のそれぞれが前記の範囲外となった場合には、重金属成分、特に鉛成分および亜鉛成分のそれぞれの溶出率が低下する危険性が増大する。
同一プラント内で生成せしめられた塩酸および無機塩化物水溶液のそれぞれを利用して溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液が調整されるが、通常は、同一プラント内で生成せしめられた塩酸および無機塩化物水溶液のそれぞれの量および特性は、所定の量ならびにpHおよび塩素イオン濃度などのそれぞれが所定の値の塩酸酸性無機塩化物水溶液を調製するに充分で、自給自足が可能である。
【0017】
しかしながら、このようにして調製された塩酸酸性無機塩化物水溶液の量ならびにpHおよび塩素イオン濃度などの特性のそれぞれが所定の値を満足しない場合には、塩酸および無機塩化物を補充して溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液の特性を所定の値に到達せしめなければならない。このような場合に補充される塩酸、無機塩化物および/またはアルカリ土類塩化物などの無機塩化物として市販品をそのまま使用することができる。
【0018】
本発明における溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液に利用される同一プラント内からの塩酸および無機塩化物水溶液のそれぞれは、たとえば、次のようにして生成せしめられる。
すなわち、(1)焼却灰類を溶出液と混合して得られた混合物は、シリカおよびアルミナを主成分とし重金属成分を実質的に含有しない残渣と重金属成分溶存している液分とに分離される。この残渣は焼却灰熔融炉で熔融固化れ、他方、液分は消石灰および苛性ソーダなどのそれぞれによってそのpHが中性乃至弱アルカリ性とされ、さらに、水硫化ナトリウム、硫化水素および硫化ナトリウムなどのような硫化剤と混合され溶存していた重金属成分、特に鉛および亜鉛は不溶化され、前記液分は懸濁液とされる。
【0019】
この懸濁液は、不溶化された重金属成分を含有するケーキと、アルカリ金属塩化物および/またはアルカリ土金属塩化物を含有し、重金属塩化物を実質的に含有しない液分とに分離される。前記のケーキはISP精練所へ山元還元される。他方、前記の液分の一部は溶出液として利用され、残部は廃水とされる。
しかして、前記のケーキは、被処理灰類中の重金属成分の含有率によって大きく異なり、一概に特定し得ないが、通常の被処理灰類の場合には、乾物中に約5〜20重量%の鉛成分および約15〜50重量%の亜鉛成分を含有している。また、溶出に利用され、また、廃水とされる液分は、被処理灰類中の重金属成分の含有率によって大きく異なり一概に特定し得ないが、通常の被処理灰類の場合には、塩素イオン濃度は約1〜4モル/リットルである。
【0020】
(2)廃棄物を焼却炉において焼却して焼却炉炉底灰を得る。他方、焼却炉排ガスはその廃熱が回収された後に飛灰が集塵ダストとして除去され、次いで水洗されて廃ガスとされる。この水洗からの洗浄液は塩酸であり、溶出液に利用される。廃ガス中の塩化水素および/または塩素のそれぞれの濃度を低下せしめるために排ガスを消石灰のような塩化水素吸収剤または塩素吸収剤に接触せしめ該排ガス中の塩化水素および/または塩素を捕集することができる。このようにして廃ガス中の塩化水素および/または塩素の濃度を低下ることができるが、この際に消石灰などのような塩化水素吸収剤または塩素吸収剤の量を調節することにより水洗からの洗浄液である塩酸の塩化水素濃度を任意に制御することができる。
【0021】
前記の焼却炉炉底灰および飛灰は水洗脱塩されて、無機塩化物を含有する液分と重金属成分を含有する固形物とに分離される。該液分はそのままで、または水分の一部を蒸発せしめた濃縮液となして重金属回収処理における溶出液に利用される。さらに、前記の濃縮液から水分の実質的な全部を蒸発乾凅せしめて得られた残渣溶出液の無機塩化物成分として使用することができる。他方、固形物は焼却灰として、たとえば、熔融炉で熔融処理されるか、または、前記(1)と同様に処理されて最終的に重金属成分を含有するケーキおよび主成分としてアルカリ金属塩化物および/またはアルカリ土金属塩化物を含有し、重金属塩化物を実質的に含有しない液分とが得られる。
前記の焼却炉炉底灰および飛灰のそれぞれの水洗脱塩からの無機塩化物を含有する液分および前記の炉排ガスの水洗から排出された塩酸である洗浄液はそれぞれ前記の焼却灰からの重金属成分溶出液に利用される。
【0022】
しかして、前記の焼却炉炉底灰および飛灰のそれぞれを水洗脱塩して得られた液分は無機塩化物を約15〜30重量%含有しており、また、塩素イオン濃度は約2〜5モル/リットルである。また、焼却炉排ガスの水洗から排出された洗浄液は塩化水素濃度約1〜12%の塩酸である。
【0023】
(3)焼却灰を熔融炉において熔融して熔融固化せしめ、他方、熔融炉排ガスはその廃熱が回収された後に熔融飛灰が集塵ダストとして除去され、次いで水洗されて廃ガスとされる。この水洗で排出された洗浄液は塩酸であり、溶出液に利用される。廃ガス中の塩化水素および/または塩素の濃度を低下せしめるために排ガスを消石灰のような塩化水素吸収剤または塩素吸収剤に接触せしめ該排ガス中の塩化水素および/または塩素を捕集することができる。このようにして廃ガス中の塩化水素および/または塩素の濃度を低下せしめることができるが、この際に消石灰などのような塩化水素吸収剤または塩素吸収剤の量を調節することにより水洗からの洗浄液である塩酸の塩化水素濃度を任意に制御することができる。
【0024】
他方、前記の熔融飛灰は、たとえば、前記(1)と同様に処理されて最終的に重金属成分を含有するケーキならびにアルカリ金属塩化物および/またはアルカリ土金属塩化物を含有し、重金属塩化物を実質的に含有しない液分とが得られる。なお、前記の熔融炉排ガスを水洗した際の洗浄液は塩化水素濃度約1〜12%の塩酸である。
【0025】
(4)廃棄物を熱分解炉において熱分解して、水素、メタンおよび一酸化炭素など含有する可燃性ガスである分解ガスと、灰分および炭素分とを含有する固形物とが生成せしめられ、該固形物は分解ガスに同伴せしめられる。この分解ガスに同伴されている固形物を集塵ダストとして除去する。この固形物を水洗脱塩し、この水洗脱塩から排出された洗浄液は無機塩化物水溶液である。他方、この水洗脱塩での残渣を前記の分解ガスを熱源とし熔融して熔融固化せしめる。この熔融固化からの排ガス中に熔融飛灰が含有されている。
【0026】
この熔融飛灰は、たとえば、前記(1)と同様に処理されて最終的に重金属成分を含有するケーキならびにアルカリ金属塩化物および/またはアルカリ土金属塩化物を含有し、重金属塩化物を実質的に含有しない液分とが得られる。前記の水洗から排出された洗浄液はそのままで、または水分の一部を蒸発せしめた濃縮液もしくは水分の実質的な全部を蒸発乾凅せしめた残渣として、溶出液に利用される。
なお、前記の水洗から排出された洗浄液の無機塩化物の濃度は約15〜30重量%で、塩素イオン濃度は約2〜5モル/リットルである。
【0027】
被処理灰類中の重金属成分回収方法のための工程は、たとえば、前記(2)〜(4)などにおける廃棄物を焼却および熱分解した際の灰ならびに飛灰などの熔融などについての一連の工程の付帯設備として、通常は、これらとともに同一のプラント内に併設されている。なお、これらの工程が互いに近接したプラントにそれぞれ設けられている場合も「同一プラント内に併設されている」ものと看做す。
【0028】
本発明の被処理灰類中の重金属成分回収方法において、同一のプラント内で生成される塩酸および無機塩化物水溶液、その濃縮物もしくは蒸発残渣を重金属成分溶出液に使用する工程以外の各工程はそれ自体公知の方法に基づくものであり、また、それ自体公知の方法と本質的に異なる処はない。
たとえば、重金属成分である鉛成分の溶出は、塩素イオン濃度が約0.5モル/リットルの塩化物水溶液中では、難溶解性である塩化鉛PbCl2の塩素イオン共通効果で鉛成分の溶解度が小さいが、塩素イオン濃度を高くすると塩化鉛からPbCl3 -・PbCl4 2-の塩化錯体が形成せしめられ、この塩化錯体によって鉛成分の溶解度が高められるものである。本発明ではこの現象を利用して被処理灰類から塩酸酸性無機塩化物水溶液を溶出液とすることによって鉛成分が効率よく溶出せしめられるのである。
【0029】
本発明の無機塩化物水溶液を溶出液とするために酸性とするには鉱酸として塩酸を使用しなければならないが、塩酸に代えて、たとえば、塩酸以外の酸を使用した場合には前記の課題を解決することができなくなる。すなわち、塩酸に代えて塩酸以外の鉱酸を使用した場合には、同一プラント内で生成された物質を有効に利用することができなくなり、同一プラント以外から供給しなければならないので省資源にも公害防止にもならない。
【0030】
無機塩化物水溶液を酸性にするために、塩酸に代えて塩酸以外の鉱酸を使用した場合には、被処理灰類からの重金属成分溶出率、特に鉛溶出率が塩酸を使用した場合に比して低くなる。
すなわち、被処理灰類を水に懸濁せしめた場合には、この懸濁液のpHは処理される被処理灰類の種類に応じて7〜13程度の範囲内に変動する。この懸濁液のpHが12〜13程度の範囲内にある場合には、この懸濁液には、通常は、亜鉛成分が亜鉛として約1〜8ppm、鉛成分が鉛として約100〜200ppmが溶存している。しかしながら、被処理灰類から亜鉛成分および鉛成分のみを効率よく溶出せしめるには、これらの濃度は過小であるので、鉱酸を加えて懸濁液を酸性にして亜鉛成分および鉛成分のそれぞれの溶解度をさらに上昇せしめなければならない。
【0031】
他方、亜鉛成分および銅成分はそれぞれpH3以下の強酸性液中では、添加される鉱酸の種類とは無関係に被処理灰類に含有されている亜鉛成分および銅成分の80%以上が溶出せしめられるが、鉛成分は効率よく溶出せしめられない。しかしながら鉱酸を適宜選択することによって鉛成分を効率よく溶出せしめることが可能となる。
【0032】
鉱酸として硫酸を使用した場合には鉛成分から溶解度が低い硫酸鉛が形成されるので効率よく溶出せしめることはできない。また、鉱酸として硝酸を使用した場合には、鉛成分から溶解度が高い硝酸鉛が形成されて80%以上の高い溶出率で溶出せしめることが可能となるが、反面、固液分離性が悪い物質が生成されることに起因して懸濁液からの分離が困難となり、また、硝酸鉛を分離した液分を廃水として廃棄する前にこの液分に含有された硝酸態窒素を除去しなければならなくなる。
【0033】
鉱酸として塩酸を使用した場合には、被処理灰類の性状によっては、鉛成分の溶出率は80%以上と高くなることもあるが、50%未満と低くなることもある。塩酸と無機塩化物水溶液との混合物に相当する塩酸酸性無機塩化物水溶液を重金属成分溶出液として使用した場合には、通常の廃棄物焼却灰類および熔融飛灰類の全てについて、鉛成分の溶出率は80%以上とすることができる。
【0034】
【実施例】
本発明を実施例および参考例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、処理量、使用量および取得量などの量は、1時間当りの平均量として記載されている。
【0035】
実施例1
焼却炉炉底灰70重量部と焼却炉飛灰30重量部との混合物(以下 混合灰 と記すこともある)100重量部を溶出液2000重量部に分散せしめた懸濁液を、シリカおよびアルミナを主成分とし重金属成分を実質的に含有しない残渣(液含有率30重量%)9.2重量部と重金属成分を溶存している液分2315量部とに分離した。この残渣を焼却灰熔融炉で熔融固化せしめ、他方、液分を消石灰2.8重量部によってそのpHを約6〜7の範囲に保持し、さらに硫化剤として水硫化ナトリウム1.5重量部と混合し溶存していた重金属成分、特に鉛成分および亜鉛成分を不溶化し、前記液分を懸濁液2330重量部とした。
【0036】
この懸濁液を、不溶化された重金属成分を含有するケーキ(液含有率60重量%)12重量部と無機塩化物を含有する液分2318重量部とに分離した。前記のケーキはその組成からISP精練所へ山元還元することが可能である。他方、前記の液分のうち1430重量部を重金属成分回収処理における溶出液に利用し、残部を廃水とした。
溶出に利用しおよび廃水とする液分はその塩素イオン濃度は約2.5〜3モル/リットルであった。
混合灰の組成ならびにケーキの鉛含有率および亜鉛含有率のそれぞれを表1および表2に示す。なお、鉛回収率および亜鉛回収率はそれぞれ89%および95%であった。
【0037】
【表1】
Figure 0003975456
【0038】
【表2】
Figure 0003975456
【0039】
実施例2
焼却炉炉底灰700重量部と焼却炉飛灰300重量部との混合灰1000重量部を熔融して熔融固化せしめ、他方、熔融炉排ガスをその廃熱を回収した後に熔融飛灰60重量部を集塵ダストとして除去し、次いで水洗して廃ガスとした。熔融炉排ガスの水洗から排出された洗浄液80重量部は約10%塩酸であった。他方、得られた熔融飛灰60重量部を、実施例1と同様に処理して最終的に重金属成分を含有するケーキおよび無機塩化物を含有する液分とを得た。前記の熔融炉排ガスの水洗から排出された洗浄液を重金属成分回収処理における溶出液に利用した。また、前記の無機塩化物を含有する液分も同様に溶出液に利用し得た。
混合灰の組成ならびに山元還元し得る重金属成分を含有するケーキの鉛含有率および亜鉛含有率を表3および表4のそれぞれに示す。なお、鉛回収率および亜鉛回収率はそれぞれ95%および96%であった。
【0040】
【表3】
Figure 0003975456
【0041】
【表4】
Figure 0003975456
【0042】
実施例3
廃棄物を熱分解し、飛灰を含有する分解ガスから集塵ダストとして飛灰100重量部を除去し、この飛灰の全量を水500重量部で水洗脱塩した。この水洗脱塩から排出された洗浄液520重量部は無機塩化物水溶液であった。
他方、前記の分解ガスを熱源としてこの水洗脱塩での残渣を熔融固化せしめ熔融固化物15重量部を得た。この熔融固化からの排ガス中の熔融飛灰3重量部を集塵ダストとした。この集塵ダストを、実施例1と同様に処理して最終的に重金属成分を含有するケーキおよび無機塩化物を含有する液分とを得た。前記の水洗から排出された洗浄液は、重金属成分回収処理における溶出液に利用された。
なお、前記の水洗から排出された洗浄液の無機塩化物の濃度は約15〜26重量%で、塩素イオン濃度は約2.5〜4.5モル/リットルであった。
熔融飛灰の組成ならびに山元還元された重金属成分を含有するケーキの鉛含有率および亜鉛含有率を表5および表6のそれぞれに示す。なお、鉛回収率および亜鉛回収率はそれぞれ97%および96%であった。
【0043】
【表5】
Figure 0003975456
【0044】
【表6】
Figure 0003975456
【0045】
なお、前記の各実施例における熔融固化物、廃水および廃ガスなどの廃棄物はいずれも規制値を満足していた。
【0046】
参考例1
2種の飛灰から、塩酸および前記の実施例1で得られた無機塩化物を含有する液分のそれぞれを使用して調製され、pH1、塩素イオン濃度2.5モル/リットルとされた塩酸酸性無機塩化物水溶液を溶出液として、重金属成分を溶出せしめ、塩酸を溶出液とした場合と比較した。なお、溶出液の使用量はいずれの場合も飛灰の重量に対して10倍とした。
その結果などを表7に示す。
【0047】
【表7】
Figure 0003975456
【0048】
表7で示された結果から、塩酸を溶出液とした場合には亜鉛成分の溶出率は高いが鉛成分の溶出率は低いことを示している。他方、塩酸酸性無機塩化物水溶液を溶出液とした場合には、亜鉛成分の溶出率のみならず鉛成分の溶出率も共に高くなったことを示している。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、重金属成分、特に、亜鉛成分および鉛成分の回収率が大きく、回収された重金属はISP精練所への山元還元が可能である程に亜鉛成分および鉛成分の含有率が高くて品位が高く、さらに、同一プラント内で生成せしめられた塩酸および無機塩化物を有効に活用することができるので省資源が可能である。

Claims (3)

  1. 重金属成分溶出液である塩酸酸性無機塩化物水溶液によって廃棄物焼却灰類中または熔融飛灰類中の重金属成分を回収する方法において、炉排ガスに含有された塩化水素を水に吸収せしめた塩酸により、同一プラントにおいて廃棄物焼却灰類または熔融飛灰類を洗浄し、固形物を分離・除去して回収された液である無機塩化物水溶液が塩酸酸性とされ、廃棄物焼却灰類または熔融飛灰類を懸濁せしめたスラリーの状態でpHが4以下で、かつ、塩素イオン濃度が1〜7モル/リットルとされた塩酸酸性無機塩化物水溶液を前記重金属成分溶出液に使用することを特徴とする廃棄物焼却灰類中または熔融飛灰類中の重金属成分回収方法。
  2. 無機塩化物水溶液が、重金属成分溶出液によって廃棄物焼却灰類または熔融飛灰類を洗浄し、固形物を分離・除去して回収された重金属成分回収液から該重金属成分を不溶化せしめ、不溶化された重金属成分が除去された無機塩化物水溶液である請求項1記載の方法。
  3. 無機塩化物水溶液が、熔融炉への供給前または最終処分前の廃棄物焼却灰類を水洗脱塩し、重金属成分を含有する固形物を分離・除去して得られた無機塩化物水溶液である請求項1記載の方法。
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