JP3970022B2 - ガスバリア性透明フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性透明フィルムに関し、さらに詳しくは液晶表示素子、光導電性感光体、面発光体、無機ならびに有機EL素子、電気泳動、フィールドエミッション素子、プラズマ素子、面発熱体などの透明基板として利用した際に高温高湿下に長時間放置しても信頼性に優れたフラットパネルディスプレイあるいは電子ペーパーを与えるガスバリア性透明フィルム関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示素子や有機EL表示素子等のフラットパネルディスプレイ分野において、耐破損性の向上、軽量化、薄型化の要望から、透明高分子からなるプラスチックフィルムを従来のガラス基板に置き換える検討が続けられている。しかしながら、プラスチックは、一般に成型時の歪みに起因する光学異方性を有しており、しかもガスや水蒸気を透過しやすい。
【0003】
液晶表示素子用のプラスチックフィルムには、液晶パネルの製造工程で使用される各種薬品に対する耐性、配向膜やシール剤の焼成、駆動回路の接続工程で要求される耐熱性が要求される。このため、光学等方性に優れるプラスチック成形体を基材とし、ガスバリア層、耐薬品性層、透明導電層を積層したものが用いられている。さらに、近年では、液晶ディスプレイの表示品位を向上させるために、高精細高容量化ならびに多諧調カラー表示化の検討がなされている。前者については、高プレチルト角を得るための高温焼成の配向膜、ファインピッチでかつ良好な接続信頼性が得られる高温圧着の異方導電性膜の使用、後者については画素電極ならびにカラーフィルターの微細加工が要素技術のひとつになっている。従って、基材のプラスチックフィルムには、前述の要求特性に加えて、いっそうの高耐熱性と寸法安定性、特に高温加熱後の寸法変化を極力小さくすることが求められている。
【0004】
また、有機EL表示素子用のプラスチックフィルムには、EL層を形成する表面に極めて優れた平滑性と、優れたガスバリア性が必要とされ、特に水蒸気バリア性については液晶表示素子の場合よりも桁違いに優れた性能が要求されている。また、パネルの製造工程で使用される各種薬品に対する耐性、陰極隔壁やシールの焼成、駆動回路の接続工程で要求される耐熱性が要求される。
【0005】
これに対し、特開昭59−158015号公報には、複屈折が小さいポリエーテルサルフォンフィルムにインジウム酸化物膜を積層したディスプレイ用の透明導電性フィルムの記載があるが、該フィルムは耐熱性に優れるものの、熱収縮率が大きく、吸水による寸法変化が著しく、加熱溶融押し出し成型でフィルムを作製しているため、フィルム表面にダイライン、ゲル化物、フィッシュアイ等の欠点が多く、該フィルムでは表示品位に優れるディスプレイを実現するのは難しい。また、特開平7−246661号公報には、位相差を10〜2000nmの範囲で調整した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカンならびにその置換体からなるポリカーボネートあるいは、ポリエステルカーボネートをディスプレイ用基板に用いるという記載があるが、該フィルムは耐熱性には優れるものの、高温加熱後の寸法変化量が大きく、水蒸気バリア性に乏しいため、該フィルムで表示品位に優れるディスプレイを得るのは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる現状に鑑みなされたもので、高精細、高容量、多諧調、カラー表示といった表示品位に優れた(フラット)パネルディスプレイを実現する、優れた光学等方性、耐熱性、及び寸法安定性をあわせもち、特に表面平滑性と水蒸気バリア性に優れ、高温加熱後の寸法変化が極めて少なく、ヒートシールコネクターや異方導電性フィルム等の導電粒子を含む接続材料を用いてプリント配線板を接続した場合に優れた信頼性が得られるディスプレイ用として好適な透明フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために液晶等のディスプレイ用の高分子材料を鋭意検討した結果、透明高分子基板として特定の分子構造を有する高分子材料を用いて高精度な成膜技術により三次元屈折率を制御することで、極めて優れた耐熱性、光学等方性、寸法安定性、特に高温加熱後の寸法変化が極めて少なく、表面平滑性が極めて良好なフィルムを見い出し、このフィルムの少なくとも一方の面上に金属酸化物等を主成分とする無機薄膜層を積層すると高温高湿環境下においても極めて優れたガスバリア性を有する透明フィルムが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、つぎのとおりのものである。
1. 透明高分子基板(S)の少なくとも片面に無機薄膜からなるガスバリア層(B)を有するフィルムであって、透明高分子基板(S)が溶液流延製膜法により得られ、下記式(1)
【0009】
【化3】
【0010】
[上記式(1)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる少なくとも一種である。]
で表される繰り返し単位と、下記式(2)
【0011】
【化4】
【0012】
[上記式(2)において、R9〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれ、Xは炭素数1〜15の炭化水素基である。]
で表される繰り返し単位とからなるポリカーボネートから主としてなり、上記式(1)で表される繰り返し単位が全体の30〜80モル%であり、ガスバリア層(B)形成面の表面平滑性がSRaで10nm以下で、残留溶媒が0.5重量%以下、かつ150℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.01%以下であることを特徴とするガスバリア性透明フィルム。
【0013】
2. ガスバリア層(B)がSi、Al、Ti、MgおよびZrから選ばれた少なくとも1種の金属あるいは2種以上の金属混合物の酸化物、フッ化物、窒化物あるいは酸窒化物の無機材料である上記1のガスバリア性透明フィルム。
【0014】
3. ガスバリア層(B)が珪素と酸素を主成分とする酸化珪素薄膜からなり、珪素原子に対する酸素原子の割合は1.5以上2未満であり、かつ膜厚が1nm〜1μmの範囲である上記1〜2のガスバリア性透明フィルム。
【0015】
4. 透明高分子基板(S)は、全光線透過率が85%以上であり、かつ三次元屈折率が下記式(A)及び(B)を同時に満足する上記1〜3のガスバリア性透明フィルム。
|R(550)|≦20(nm) (A)
K=|[nz−(nx+ny)/2]×d|≦100(nm) (B)
[上記式(A)において、R(550)は波長550nmの光に対する透明高分子基板(S)の面内位相差であり、上記式(B)において、nx、ny、nzは透明高分子基板(S)の厚み方向をz軸としたx軸、y軸、z軸方向の波長550nmの光に対する三次元屈折率であり、dは透明高分子基板(S)の厚さである。]
【0016】
5. 透明高分子基板(S)は、波長450nmの光に対する面内位相差をR(450)、波長550nmの光に対する面内位相差をR(550)としたとき、R(450)/R(550)≦1.06である上記1〜4のガスバリア性透明フィルム。
【0017】
6. 透明高分子基板(S)は、180℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.1%以下である上記1〜5のガスバリア性透明フィルム。
【0018】
7. 相対湿度0%における酸素透過度P1が下記式(I)を満足し、かつ相対湿度100%における水蒸気透過度P2が下記式(II)を満足する上記1〜6のガスバリア性透明フィルム。
P1<1×107exp(−5000/T)[cc/m2/24hr/atm](I)
P2<5×1011exp(−8000/T)[g/m2/24hr] (II)
[上記式(I)、(II)において、Tは絶対温度(K)で表した酸素透過度ならびに水蒸気透過度の測定温度である]
【0019】
8. ガスバリア性透明フィルムは、架橋構造を有する少なくとも一層のコーティング層(C)を有する上記1〜7のガスバリア性透明フィルム。
【0020】
9. ガスバリア性透明フィルムは、少なくとも片面に透明導電層(E)を有する上記1〜8のガスバリア性透明フィルム。
【0021】
10. 超微小硬度計で計測したとき、硬さが18以上であり、かつ塑性変形率が50%以下である上記1〜9のガスバリア性透明フィルム。
【0022】
11. 上記1〜10のガスバリア性透明フィルムを具備する液晶表示素子または有機EL表示素子。
【0023】
本発明は、表示品位が極めて高い理想的な液晶ディスプレイを与える透明高分子基板としてプラスチックフィルム基材を探求する過程で、高いガラス転移温度、低吸水性、水蒸気バリア性及び優れた光学等方性を兼備するだけでなく、表面平滑性に極めて優れ、このフィルムの少なくとも一方の面上に金属酸化物を主成分とする薄膜層を積層することにより高温高湿環境下においても極めて優れたガスバリア性を有するフィルムが得られ、さらには高温加熱後の寸法変化が極めて少なく表面硬度が高く、駆動回路との接続信頼性に優れるガスバリア性透明フィルムを提供するに至ったものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のガスバリア性透明フィルムを構成する透明高分子基板としては、下記式で表されるポリカーボネートから主としてなるフィルムである。すなわち、下記式(1)
【0025】
【化5】
【0026】
で表されるフルオレン骨格を有する繰り返し単位を(共重合)成分とするポリカーボネートが、特に上記特性が良好である。上記式において、R1〜R8としては水素原子、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基等炭素数1〜6の炭化水素基が挙げられる。
【0027】
ここで、上記式の(共重合)成分を該高分子中に導入するために用いるモノマーの具体的な例として、フルオレン−9,9−ジ(4−フェノール)、フルオレン−9,9−ジ(3−メチル−4−フェノール)が挙げられる。上記式で表される共重合成分は、繰り返し単位全体の30〜80モル%である。30モル%よりも少ない場合は、後述の十分な優れた等方性、耐熱性が得られず、高温加熱前後の寸法変化も大きくなり、80モル%よりも多いと光線透過率が低下しフィルムが脆くなる。
【0028】
さらに、本発明の透明フィルムを構成する透明高分子基板として、上記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)
【0029】
【化6】
【0030】
で表される繰り返し単位を共重合成分とし、上記式(1)で表される繰り返し単位が全体の30〜80モル%であるポリカーボネートが好ましい。上記式(2)において、R9〜R16はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれ、Xは炭素数1〜15の炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、上記式(1)で説明したものを挙げることができる。Xの具体例としては、例えば、メチレン、1,1−エチレン、2,2−プロピレン、2,2−ブチレン、2,2−(4−メチル)ペンチレン、1,1−シクロへキシレン、1,1−(3,3,5−トリメチル)シクロへキシレン、ノルボルナン−2,2−ジイル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,8’−ジイル、フェニルメチレン、ジフェニルメチレン、1,1−(1−フェニル)エチレン、2,2−ヘキサフルオロプロピレン、2,2−(1,1,3,3−テトラフルオロ−1,3−ジクロロ)プロピレン等が挙げられる。
【0031】
本発明におけるポリカーボネートとしては、全体として上記式(I)及び(II)で表される繰り返し単位を30〜80モル%含有すればよく、共重合体でも、二種以上の共重合体又はホモポリカーボネートのブレンドであってもよい。特に好ましいポリカーボネートとしては、フルオレン−9,9−ジ(3−メチル−4−フェノール)から誘導された上記式(1)で表される繰り返し単位(上記式(1)において、R1〜R8は水素原子(ただし、R2とR3の一方がメチル基であり、R5とR8の一方がメチル基)であるものに対応)と、Xが2,2−プロピレンであり、かつR9〜R16がすべて水素原子である上記式(2)で表される繰り返し単位とを共重合成分とするポリカーボネートである。ここで、上記式(1)で表される繰り返し単位は全体の30〜80モル%であり、好ましくは35〜70モル%であり、さらに好ましくは40〜60モル%であるが好ましい。上記式(1)で表される繰り返し単位を30モル%以上にすることで、ガラス転移温度が170℃以上となり優れた耐熱性が得られ、吸水率ならびに水蒸気透過度が小さい。また、表面硬度も格段に向上し、塑性変形しにくく、特に高温加熱後の寸法変化が極めて少なくなるためディスプレイ用透明高分子基板として好ましい特性を示すようになる。また、各種液晶に対する耐性も良好となるので、液晶ディスプレイ用途で特に有用である。さらに、上記式(1)で表される繰り返し単位が多くなるにつれて、透明高分子基板の光学等方性が高くなり、30モル%よりも大きいポリカーボネートを用いた場合、波長450nmの光に対する面内位相差R(450)と波長550nmの光に対する面内位相差R(550)の夫々の値を小さくすることが可能になり、さらにはR(450)/R(550)≦1.06、さらにはR(450)/R(550)≦1.00となるため、光学等方性に極めて優れるフィルムとなる。特に、上記式(1)で表される繰り返し単位を30モル%以上含むポリカーボネートを用いて透明高分子基板を成形した場合、後述する溶液流延法により成形すると、上記式(A)ならびに(B)を同時に満足することができ、さらに180℃2時間熱処理した後の寸法変化率が極めて少なく、SRaが10nm以下の表面平滑性が極めて良好なディスプレイ用透明高分子基板としてのポリカーボネートフィルムが得られる。
【0032】
更に、上記式(1)で表される繰り返し単位を多くするにつれて、R(450)/R(550)の値が小さくなり、約55モル%以上になるとR(450)/R(550)<1の特性を示すようになる。この特性は、特に本発明のディスプレイ用透明フィルムを液晶表示体に用いる場合、液晶表示体の視野角特性や旋光分散を補償する上で非常に有益である。
【0033】
上記のポリカーボネートの分子量としては、数平均分子量で30,000〜300,000が好ましく、35,000〜100,000がより好ましい。分子量が大きなポリマーほど機械特性ならびに耐熱性が向上するが、大きすぎると成形が難しくなる。
【0034】
本発明における上記ポリカーボネートは、光学的に透明性と等方性に優れており、光学等方性等の良好な光学特性の透明高分子基板及びガスバリア性透明フィルムを与える。ここで優れた光学等方性とは、下記式(A)及び(B)
|R(550)|≦20(nm) (A)
K=|[nz−(nx+ny)/2]×d|≦100(nm) (B)
を満たすことをいう。上記式(A)において、R(550)は波長550nmの光に対する透明高分子基板の面内位相差であり、上記式(B)において、Kは三次元的な光学等方性を表し、nx、ny、nzは透明高分子基板の厚み方向をz軸としたx軸、y軸、z軸方向の波長550nmの光に対する三次元屈折率であり、dは透明高分子基板の厚さである。
【0035】
かかる光学等方性は、好ましくは、下記式(A’)及び(B’)
|R(550)|≦15(nm) (A’)
K=|[nz−(nx+ny)/2]×d|≦50(nm) (B’)
であり、より好ましくは、下記式(A”)及び(B”)
|R(550)|≦13(nm) (A”)
K=|[nz−(nx+ny)/2]×d|≦30(nm) (B”)
である。
【0036】
また、透明高分子基板の面内位相差は、光が厚さdの透明高分子基板を透過したとき透明高分子基板の配向方向とそれに垂直な方向の屈折率の差△nと透明高分子基板の厚さdの積△n・d(nm)で表される。なお、この位相差は角度でも表現でき、角度で表現した位相差R1とnmを単位とした位相差R2の換算式はR1(度)=(R2(nm)/λ)×360で表される(λは位相差の測定波長)。
【0037】
上記ポリカーボネートフィルムからなる透明高分子基板は、非常に高い耐熱性を有し、高温加熱後の寸法変化が極めて少なく、150℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.01%以下であり、表示品位に優れるディスプレイを提供するものである。寸法変化率は、180℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.1%以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明に用いる上記ポリカーボネートフィルムからなる透明高分子基板は、耐熱性に優れ、170℃以上、好ましくは190℃以上のガラス転移温度を持ち、光学特性が良好である。
【0039】
本発明に用いる透明高分子基板としての上記ポリカーボネートフィルムの成形方法としては、溶融押出し製膜法と溶液流延製膜法が挙げられるが、詳しく後述する溶液製膜により製造するのが、上記式(A)及び(B)を満足するような光学等方性に優れており好適である。特に溶液製膜により、SRaが10nm以下の表面平滑性が良好なディスプレイ用透明高分子フィルムが得られる。ここで、SRaは三次元中心面平均粗さで、粗さ表面からその中心面上に、面積Smの部分を抜き取り、その抜き取り部分の中心面に直交する軸をZ軸で表し、次の式で得られた値をμm単位で表す。
【0040】
【数1】
(ただし、Lx×Ly=Sm)
【0041】
本発明における透明高分子基板としてのポリカーボネートフィルムは、吸水率が低く、非常に高度な品質が求められるディスプレイ用に重要である。かかる吸水率が、ASTM D570に準拠した方法で測定した水中24時間後の吸水率で0.4%以下、好ましくは0.2%以下であるものを選択する。
【0042】
また本発明における透明高分子基板としてのポリカーボネートフィルムは、水蒸気バリア性に優れていることが重要である。40℃90%RHにおける水蒸気透過係数が50g・100μm/m2/day以下、好ましくは35g・100μm/m2/day以下であるようなものを選択することが重要である。このような高い水蒸気バリア性を有することにより、液晶パネルや有機ELパネル等の基板として用いた際に水の影響による素子の劣化を抑制することができる。なお、有機ELパネルには、発光層に低分子系の材料と高分子系の材料を用いるものがあり、各々の系で基板上に透明導電膜、ホール輸送層、RGB発光層、電子輸送層、メタルカソードの順で膜を形成するボトムエミッションと呼ばれる方式と、基板上にメタルアノード、ホール輸送層、RGB発光層、電子輸送層、カソードの順で膜を形成するトップエミッションと呼ばれる方式が提案されているが、上記透明高分子基板を用いた本発明のガスバリア性透明フィルムはこれら全ての方式に有用で、さらには各々の方式において発光層を形成した基板と発光層を挟み込むようにして用いる封止用のフィルムとしても有用である。
【0043】
本発明における透明高分子基板としてのポリカーボネートフィルムの成形方法には、溶融押出し製膜法と溶液流延製膜法が挙げられるが、前記したように溶液流延法が好適である。溶液流延法は生産性においては溶融押出し法に劣るが、ダイライン、ゲル化物、フィッシュアイ等の欠点が少なく表面平滑性も溶融押出し法に比較し遥かに優れている。また、溶液流延法では溶融押出しでは溶融粘度が高すぎたり着色しやすかったり成形が不可能な高分子量の樹脂でも、用いる溶媒に可溶であれば成形が可能であることから、機械特性ならびに耐熱性に優れたフィルムが得られる。また、溶液流延法では、ダイの特性、キャスティングベルトの状況、乾燥条件およびフィルム張力と搬送条件等を調整することにより、フィルムの三次元屈折率を制御できる。上記式(A)ならびに(B)を満足させるためには、成形工程内のフィルムが含有する溶媒量と乾燥温度ならびにフィルムに加わる張力の調整が特に重要である。フィルムが含有する溶媒量によりフィルムの見かけ上のTgが決まるが、乾燥温度は見かけ上のTg以下に設定することが好ましい。また、フィルムに加わる張力は、例えばロール巻き取り方式により成形を行う場合は、フィルム搬送方向の張力が大きくなる傾向があるが、フィルム搬送方向と垂直方向にも張力を加えることができる装置を用い、両張力に出来るだけ差が生じない条件でかつ張力を出来る限り抑えて成形することも有効である。
【0044】
溶液流延法では、フィルム中に製膜に使用した溶媒が残存する場合がある。残留溶媒はフィルムを可塑化させ、ガラス転移温度の低下および機械特性の低下などをもたらす。このため残留溶媒は完全に除去することが好ましく、1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下にすることが好ましい。なお、フィルムに可塑化剤または界面活性剤等を添加する場合は、これらの残存量は溶媒残存量に含めない。
【0045】
ところで残留溶媒量を低減させる方法は、主に加熱処理であるが、効果と経済性を考慮した場合にはジクロロメタン等の低沸点溶媒を、溶液流延法の主溶媒にするのが好ましい。なお低沸点溶媒に限らず、ジオキソラン等の溶媒を用いることも可能である。
【0046】
本発明における透明高分子基板としてのポリカーボネートフィルムの厚さは、各種ディスプレイに加工された時の表示品位と、基板を成形する工程での取り扱いやすさと、ディスプレイ組立て工程での取り扱いやすさ、さらには溶液流延製膜時の製膜効率の観点から、20〜500μm、好ましくは50〜400μm、さらには好ましくは70〜200μmである。また、かかるポリカーボネートフィルムを用いた本発明の透明フィルムに透明導電層からなる電極を設けて液晶ディスプレイ用電極として使用する場合、液晶セルのギャップ斑が表示品位を劣化させるため、かかるポリカーボネートフィルムの厚み斑を±5%以下にすることが好ましく、さらには±2%以下にするのが好ましい。
【0047】
本発明のガスバリア性透明フィルムは、前述のSRaが10nmより小さい、より好ましくは5nmより小さい表面平滑性に優れる透明高分子基板の少なくとも一方の表面上に、無機薄膜から実質的になるガスバリア層が積層されている。
【0048】
ガスバリア層の例としては、Si、Al、Ti、MgおよびZr等から選ばれた少なくとも1種の金属あるいは2種以上の金属混合物の酸化物、フッ化物、窒化物あるいは酸窒化物の無機材料が挙げられる。なかでも、Siの酸化物、窒化物、酸窒化物を主成分とする無機材料が透明性、ガスバリア性、表面平滑性、前述の透明高分子基板との密着性に優れ好ましい。特に珪素と酸素が主成分である酸化珪素が好ましい。または珪素と酸素が主成分であり、少なくともフッ素、マグネシウムを含有し、かつ珪素とフッ素が化学結合している薄膜が、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、膜応力が少ないという点で好ましい。ここで、珪素原子に対する酸素原子の割合は1.5以上2未満が好ましい。この割合により薄膜の透明性とガスバリア性が二律背反性の関係で変化し、1.5未満ではディスプレイ用途で要求される透明性が得られないことがある。さらに、フッ素原子は珪素ならびにマグネシウムと化学結合しており、フッ素原子と珪素原子の結合(A)とフッ素原子とマグネシウムの結合(B)の割合が(A)>(B)であることが好ましく、かつガスバリア層中に含まれるマグネシウムの比率は、共存する珪素に対し元素比で2.5〜20atom%の範囲が好ましい。このような割合にすることで、良好なガスバリア性、透明性は勿論のこと、特に膜応力を小さくできると推定され、したがって、ガスバリア層の膜厚を厚くしてもディスプレイ用透明フィルムの変形が少なくできる。ガスバリア膜中に存在するフッ素元素の化学結合状態は、例えばX線光電子分光法により分析、決定される。X線光電子分光法において、X線源にAlのKα線を用い、中性炭素C1sの284.6eVで横軸を補正した際、フッ素の化学結合状態は、687eV近傍に観測されるフッ素と珪素の結合に由来するF1sピーク(A)とこれより約1.5eV低結合エネルギー側に観測されるフッ素とマグネシウムの結合に由来するF1sピーク(B)の存在ならびに、これらの強度比により決定される。
【0049】
ガスバリア層(B)の作成方法としては、例えばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法が挙げられる。これらのガスバリア層は単独あるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。ガスバリア層の膜厚は、1nm〜1μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2nm〜200nmの範囲が好ましい。ガスバリア層の厚みが1nm未満では均一に膜を形成することは困難であり、膜が形成されない部分が発生するため気体透過度が大きくなる。一方、1μmよりも厚くなると透明性を欠くだけでなく、基板を屈曲させた際に、ガスバリア層にクラックが発生して気体透過度が上昇する。
【0050】
本発明によれば、特に、前述の透明高分子基板上に、前述の珪素の酸化物、窒化物あるいは酸窒化物を主成分とするガスバリア層(B)を形成すると、かかるガスバリア層(B)形成面、すなわち該ガスバリア層(B)の表面における表面平滑性がSRaで10nm以下であり、下記式(I)及び(II)式を満足する高温さらには高湿環境下においても優れたガスバリア性を有するガスバリア性透明フィルムが得られる。
P1<1×107exp(−5000/T)[cc/m2/24hr/atm](I)
P2<5×1011exp(−8000/T)[g/m2/24hr] (II)
上記式(I)、(II)において、P1は該基板の相対湿度0%における酸素透過度、P2は相対湿度100%における水蒸気透過度であり、Tは酸素透過度ならびに水蒸気透過度の測定温度を絶対温度(K)で表したものである。
【0051】
本発明のガスバリア性透明フィルムには、必要に応じて、該透明フィルムの少なくとも片面に、例えば、ガスバリア層(B)の面側に直接または中間層を介して、あるいはガスバリア層(B)の形成させていない側の透明高分子基板面上に、直接または中間層を介して架橋構造を有する有機または無機化合物からなる中間層、例えばハードコート層等の耐薬品層、透明導電層等を形成することができる。
【0052】
ここで耐薬品層としては、ポリシロキサン系樹脂の架橋構造体、アクリル系樹脂の架橋構造体、エポキシ系樹脂の架橋構造体等を公知の塗工法および硬化法を用いることにより形成できる。ここで耐薬品性はパネル組立て時の溶剤や化学薬品に対する耐久性を付与することが目的であり、耐アルカリ性、耐酸性、およびN−メチルピロリドン等の有機溶剤に対する安定性を十分に確保できる材料と硬化条件を選定する事が好ましい。ガスバリア層および耐薬品層を相互に積層させる場合には、各層間の接着性を向上させる目的で適宜プライマー層を設ける事ができる。プライマー層としてはシランカップリング剤等を含むシリコン系材料、アクリル系材料、アクリル−ウレタン系材料あるいはアルコキシチタン等を含む材料を用いることができる。耐薬品層の膜厚は、概して0.01〜20μmの範囲から適宜選択することができる。また、本発明のガスバリア性透明フィルムを液晶表示素子あるいは有機EL表示素子に用いる場合は、基板の液晶層あるいはEL層側に積層する耐薬品層の表面は、前述の透明フィルムの表面平滑性と同等なSRaが得られるようにコーティング液の調整および塗工方法の条件を選択することが好ましい。
【0053】
本発明のガスバリア性透明フィルムは、その用途に応じて透明導電層を形成し、例えば電極とすることができる。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。なかでも、インジウム酸化物を主成分とし、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の酸化物を含むことを特徴とし、酸化錫が2〜20重量%及び/または酸化亜鉛が2〜20重量%含有する透明導電層が透明性、導電性が優れており好ましく用いられる。また、本発明のフィルムを有機ELに用いる場合、透明導電層の仕事関数を制御して発光効率を向上させる目的で、インジウム酸化物を主成分とし、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種以上の酸化物を含む膜に、さらに錫、亜鉛以外の元素を添加してもよい。
【0054】
透明導電層を形成する方法は、主にスパッタリング法が使用され、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが適用できる。透明導電層の膜厚は、十分な導電性を得るために、10〜1000nmであることが好ましい。本発明のディスプレイ用透明高分子フィルムは、可視光領域に対する全光線透過率が80%以上であることが好ましく、さらには85%以上が好ましい。80%未満では、視認性の低下を招く等の問題が生じることがある。
【0055】
本発明のガスバリア性透明フィルムの硬さおよび塑性変形率は、例えば市販の(株)エリオニクス、(株)島津製作所、(株)アカシ、日本電気(株)等の微小硬度計にて測定される。例えば(株)エリオニクス社製のENT−1100においては、測定条件は最大荷重50mgf、データ取り込みステップ0.2mgf、データ取り込み間隔40msec、最大荷重到達時荷重保持時間1sec、使用圧子は先端素材がダイヤモンドである三角錐(115°)、各荷重につき5回連続測定を行なった時の平均であり、サンプルは金属の試料台に東亜合成(株)社製瞬間接着剤、アロンアルファ(201)で固定し、25℃の雰囲気下で24時間放置した後、測定を行なうものである。上記以外の測定条件によっても、硬さや塑性変形率を測定することはできるが、使用する圧子の磨耗状況などによっては硬さにばらつきが生じる可能性がある。従って、硬さや塑性変形率を測定する前にはあらかじめ一定の硬さを示すもの、例えば単結晶のシリコンウエハーなどを用いて、測定値が常に一定であることを確認する必要がある。特に、測定荷重を上記以外で行った場合、圧子の先端形状の違いにより同一サンプルでも測定値にバラツキが見られるため、測定に際しては可能な限り上記測定方法に準拠した方法で測定、比較することが好ましい。
【0056】
なお硬さは、下記式[III]で与えられる値である。また、塑性変形率は、下記式[IV]で与えられる値である。
硬さ=3.7926×10-2×最大荷重/(最大変位量)2 [III]
(硬さ:kg/mm2、最大荷重:mg、最大変位量:μm)
塑性変形率=除荷後変位量/最大変位量×100 [IV]
(塑性変形率:%、除荷後変位量:μm、最大変位量:μm)
硬さが18以上で、かつ塑性変形率が50%以下の範囲を満たす本発明の透明フィルムは、例えばHSC(ヒートシールコネクター)やACF(異方導電性フィルム)を用いてプリント配線基板と接続した際に、極めて良好な接続信頼性を確保することができる。また、特に本発明のディスプレイ用透明フィルムを液晶ディスプレイに応用した際には、液晶セル内部に配したスペーサーに基板が変形する量がすくなくなり、斑の少ない均一な表示特性の液晶パネルを得ることが可能となる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、フルオレン骨格を有するポリカーボネートフィルムを用いることにより、3次元屈折率が極めて小さく光学等方性が非常に良好であり、また耐熱性に優れ、高温加熱後の寸法変化が極めて少なく、更には表面平滑性に極めて優れた透明高分子基板が得られる。この透明高分子基板の少なくとも一方の面上に金属酸化物を主成分とする無機薄膜層を有することにより高温高湿環境下においても格別に優れたガスバリア性を付与することができ、ヒートシールコネクターや異方導電性フィルム等の導電粒子を含む接続材料を用いてプリント配線板を接続した場合においても特に高い信頼性に優れたディスプレイ用に好適なガスバリア性透明フィルムを提供することができる。
【0058】
かかる透明フィルムは、例えば液晶表示素子、光導電性感光体、面発光体、無機ならびに有機EL素子、電気泳動、フィールドエミッション素子、プラズマ素子、面発熱体などの透明基板として利用した際に高温高湿下に長時間放置しても高信頼性のフラットパネルディスプレイあるいは電子ペーパーを与えるガスバリア性透明フィルムとして特に有用である。
【0059】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中における各種の測定は、下記のとおり行った。
【0060】
(1)全光線透過率
日本電色工業社製COH−300Aを用いて測定した。
【0061】
(2)酸素透過度
MOCON社製オキシトラン2/20MLを用いて、20〜80℃(293〜353K)の温度範囲で相対湿度0%における酸素透過度を測定した。なお、本試験は透明導電層が形成される前のガスバリア性透明フィルムに対して行った。
【0062】
(3)水蒸気透過度
MOCON社製、パーマトランW1Aを用いて、20〜50℃(293〜323K)の温度範囲で相対湿度100%における水蒸気透過度を測定した。なお、本試験は透明導電層が形成される前のガスバリア性透明フィルムに対して行った。
【0063】
(4)リターデーション値、三次元屈折率
透明高分子基板(S)の複屈折△nと膜厚dの積である位相差および三次元屈折率の値は、分光エリプソメ−ターである日本分光(株)製の商品名「M150」により測定した。リターデーション値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、三次元屈折率は波長550nmの入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッティングすることにより三次元屈折率であるnx、ny、nzを求め、|(nz−(nx+ny)/2)×2|を算出した。
【0064】
(5)寸法変化率
透明高分子基板に用いる、幅10mm、長さ100mmのサイズのフィルムサンプルを、夫々フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)に沿って切り出し、電子マイクロメーターで長さを精密に測定した後、150℃2時間ならびに180℃2時間で加熱処理し、25℃50%RHの環境下で1時間以上放置した後の長さを精密に測定し、加熱前後の長さの差を加熱前の長さで割った値を%で算出した。
【0065】
(6)残留溶媒量
透明高分子基板として用いるポリカーボネートフィルムのガラス転移温度よりも5℃低い温度で、測定サンプルの重量減少がなくなるまで加熱し、初期のサンプル重量との差を初期のサンプル重量で割った値を%で算出した。
【0066】
(7)ポリマー分子量
GPCでテトラヒドロフランを移動相に、カラム温度40℃で測定を行い、較正曲線試料としてポリスチレンを用い、数平均分子量を算出した。
【0067】
(8)フィルム膜厚
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0068】
(9)ガラス転移温度:透明高分子基板について、TA Instruments社製「DSC2920 modulated DSC」を用いて測定した。
【0069】
(10)吸水率: 透明高分子基板について、ASTM D570に準拠した方法により、フィルムを25℃の水中に24時間浸漬した後の重量変化から見積った。
【0070】
(11)硬さ測定
透明高分子基板について、(株)エリオニクス社製の超微小硬度測定装置、ENT−1100を用いて薄膜の硬さを測定した。測定条件は最大荷重50mgfデータ取り込みステップ0.2mgf、データ取り込み間隔40msec、最大荷重到達時荷重保持時間1sec、使用圧子は先端部がダイヤモンドからなる三角錐(115°)、各荷重につき5回連続測定を行なった時の平均であり、サンプルは金属の試料台に東亜合成(株)社製瞬間接着剤、アロンアルファ(201)で固定し、25℃の雰囲気下で24時間放置した後、測定を行なうものである。硬さは、下記式[I]で与えられる値である。
硬さ=3.7926×10-2×最大荷重/(最大変位量)2 [I]
(硬さ:kg/mm2、最大荷重:mg、最大変位量:μm)
塑性変形率測定:塑性変形率は上記硬さ測定と同一、同様の測定によって得られる除荷後変位量と、最大変位量から下記式[II]で与えられる値である。
塑性変形率=除荷後変位量/最大変位量×100 [II]
(塑性変形率:%、除荷後変位量:μm、最大変位量:μm)
【0071】
(12)表面平滑性の評価
表面平滑性は、小坂研究所社製の増幅支持装置SE3CK、解析装置SPA−11(株)用いて測定し、カットオフ0.08mm、走査ピッチ2μm、記録ピッチ2mm、測定長1mm、走査本数80本の条件で測定しSRaを算出した。ここで、SRaは三次元中心面平均粗さで、粗さ表面からその中心面上に、面積Smの部分を抜き取り、その抜き取り部分の中心面に直交する軸をZ軸で表し、次の式で得られた値をμm単位で表す。
【0072】
【数2】
(ただし、Lx×Ly=Sm)
【0073】
(13)液晶パネル信頼性
寸法が縦70mm×横50mmである基板の透明導電層にフォトリソグラフィー法により160×100ドット用の表示電極を形成し、該電極面に1000オングストロームの配向膜を形成し、ツイスト各が220°となるようにラビング処理を施した。次いで6.5μmのプラスチックビーズをギャップ剤として電極面のうち面に分散密度150個/mm2となるように分散し、エポキシ接着剤により電極面を内側にして2枚の透明導電性基板を貼り合せてセルを作製した。次いで、このセルにカイラルネマチック液晶を含有するネマチック液晶を注入口より注入した後、加圧法によりセルギャップを均一化し、注入口を封入した。次にセルの両側に偏光板を貼り液晶パネルを得た。こうして得られた液晶パネルを50℃90%RH環境下に250hr放置し、液晶セルの比抵抗変化の有無を調べた。
【0074】
(14)有機EL素子の作成
透明導電層が形成された本発明のディスプレイ用透明フィルムの透明導電層をフォトリソグラフィー法により、表示電極を形成した。次に透明電極上に真空蒸着法により、正孔輸送層としてトリフェニルアミン誘導体であるTPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)を50nm積層し、次に発光層としてAlq3(トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)を50nmの厚さに蒸着させた。さらにマグネシウムと銀をこの上に200nmの厚さに蒸着させ金属電極とし有機EL層を形成した。続いて、透明導電層が形成する前の、上記のEL層を形成したディスプレイ用フィルムと同じフィルムを用い、透明導電層を形成する側の面上に紫外線硬化型のシール剤を塗布した後、有機EL層を形成した前述のフィルムの有機EL面を内側にして両基板を貼り合わせ、紫外線照射により有機EL層を封止した。本有機EL素子に電圧を印加し発光の有無を確認した。
【0075】
なお、後掲の化合物名は以下の略号を用いた。
BisA:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BCF:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン
IP:3,3,5−トリメチル−1,1−ジ(4−フェノール)シクロヘキシリデン
ITO:インジウム−スズ酸化物
ECHETMOS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
APTMOS:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
EVOH:エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ製「エバール」)
DCPA:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDCP−A」)
UA:ウレタンアクリレート(新中村化学製「NKオリゴU−15HA」)
【0076】
[実施例1]
ビスフェノール成分がBisA/BCF=70/30(モル比)からなる平均分子量37,000でTgが193℃のポリカーボネート樹脂をメチレンクロライドに20重量%になるように溶解した。そしてこの溶液をダイコーティング法により厚さ175μmのポリエステルフィルム上に流延した。次いで、乾燥炉で残留溶媒濃度が13重量%になるまで乾燥し、ポリエステルフィルムから剥離した。そして、得られたポリカーボネートフィルムを温度180℃の乾燥炉で縦横の張力にできるだけ差が生じないように、かつフィルムを保持しうる最小限の張力でバランスさせながら、該フィルム中の残留溶媒濃度が0.3重量%になるまで乾燥させ、表面平滑性がSRaで2nmで厚さ100μmの透明フィルムを得た。
【0077】
こうして得られたフィルムの片面上に、ポリシロキサン系樹脂層を与えるコーティング組成物をコーティングし、130℃3分熱処理を行い、厚みが0.05μmのポリシロキサン系樹脂層を形成した。なお、ポリシロキサン系樹脂を与えるコーティング組成物は、水720重量部、2−プロパノール1080重量部の混合溶媒に、酢酸88重量部を加えた後、ECHETMOS640重量部とAPTMOS154重量部を順次加えて3時間攪拌して得た。次いで、ポリシロキサン樹脂層上に、スパッタリング法により、厚さ40nmの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層した。該ガスバリア層表面の平滑性はSRaで4nmであった。また酸素透過度、水蒸気透過度、表面硬度(硬さ)は表1のようであった。
【0078】
さらに、架橋構造を有するコーティング層を形成するコーティング組成物を以下のように調整した。
【0079】
EVOH100部を、水720部、n−プロパノール1080部の混合溶媒に加熱溶解させ、均一溶液を得た。この溶液にレベリング剤(東レダウコーニング社製「SH30PA」を0.1部、酢酸39部加えた後、ECHETMOS211部を加え10分間撹拌した。更にこの溶液にAPTMOS77部を加えて3時間撹拌しコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を、ポリカーボネートフィルムの、ポリシロキサン系樹脂層と酸化珪素薄膜からなるガスバリア層が積層されたフィルムの両面上にコーティングし、130℃3分熱処理を行い、厚みが2μmのコーティング層を形成した。ついで、該フィルムの酸化珪素薄膜が積層された面と反対側の面に、ITOをスパッタリング法により、厚さ120nmで形成することにより透明フィルムを得た。得られたガスバリア性透明フィルムの評価結果は表1に示すように良好であった。
【0080】
[実施例2]
BisA/BCF=50/50(モル比)でTgが211℃のポリカーボネート共重合体からなる厚み120μm、表面平滑性がSRaで1nmのフィルムを透明高分子基板として用い、厚さ25nmの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムの評価結果は表1に示すように良好であった。
【0081】
[実施例3]
実施例1と同様にしてBisA/BCF=50/50(モル比)でTgが211℃のポリカーボネート共重合体からなる厚み120μmで表面平滑性がSRaで2nmのフィルムを得た。次いで、該フィルムの片面上に、スパッタリング法により、厚さ40nmの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層した。
【0082】
該ガスバリア層表面の平滑性はSRaで2nmであった。次に、該ガスバリア層上にポリシロキサン系樹脂層を与えるコーティング組成物をコーティングし、130℃3分熱処理を行い、厚みが2μmのポリシロキサン系樹脂層を形成した。なお、ポリシロキサン系樹脂を与えるコーティング組成物は、水720重量部、2−プロパノール1080重量部の混合溶媒に、酢酸88重量部を加えた後、ECHETMOS640重量部とAPTMOS154重量部を順次加えて3時間攪拌して得た。さらに、ガスバリア層が形成さらた面とは反対側の面上に、以下のような方法にて厚み4μmで架橋性を有するコーティング層を形成し、ついで、該フィルムの酸化珪素薄膜が積層された面と反対側の面に、ITOをスパッタリング法により、厚さ120nmで形成することにより透明フィルムを得た。
【0083】
DCPAを20重量部、UAを10重量部、1−メトキシ−2−プロパノールを30重量部、開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを2重量部を混合しコーティング組成物を得た。この組成物をコーティングし、60℃1分間加熱した後、高圧水銀灯を用い積算光量700mJ/m2で光硬化を行い耐薬品層として硬化樹脂層を形成した。
得られたガスバリア性透明フィルムの評価結果は表1に示すように良好であった。
【0084】
【表1】
【0085】
[実施例4]
実施例3に記載の透明フィルムの片面に、スパッタリング法により厚さ50nmの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層した。該ガスバリア層を形成した面の表面平滑性はSRaで3nmであった。さらに該ガスバリア層上に、ITOをスパッタリング法により、厚さ120nmで形成することによりガスバリア性透明フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果は表2に示すように良好であった。
【0086】
[実施例5]
実施例3に記載の透明フィルムの両面に実施例4と同様な条件で、スパッタリング法により、厚さ50nmの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層し、さらに該ガスバリア層の一方の面上に、実施例4と同様な条件でITOをスパッタリング法により、厚さ120nmで形成することによりフィルムを得た。得られたガスバリア性透明フィルムの評価結果は表2に示すように良好であった。
【0087】
[実施例6]
ITOを形成する前に、スパッタリング法により厚さ500Åの酸化珪素薄膜からなるガスバリア層を積層した以外は、実施例3と同様にフィルムを得た。得られたガスバリア性透明フィルムの評価結果は表2に示すように良好であった。
【0088】
【表2】
【0089】
[比較例1]
BisAのみからなるTgが155℃のポリカーボネートを用い、乾燥炉の温度を145℃にした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は表3に示すように、透明性は良好であるが、耐熱性、光学等方性に劣り、水蒸気透過係数も大きく、なによりも加熱後の寸法変化が大きい結果となった。
【0090】
[比較例2]
BisA/IP=40/60からなるTgが205℃のポリカーボネート共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして透明フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は表3に示すように、耐熱性や透明性は良好であるが、光学等方性に劣り、水蒸気透過係数も大きく、加熱後の寸法変化が大きい結果となった。
【0091】
[比較例3]
BisAのみからなるTgが155℃のポリカーボネートを用い、乾燥炉の温度を145℃にした以外は、実施例3と同様にして透明フィルムを得た。得られた透明導電性基板の評価結果は表3に示すように透明性は良好であったが、有機EL素子点灯試験においては、初期の発光は認められるものの、室温24時間放置後に点灯不良が生じた。
【0092】
【表3】
Claims (11)
- 透明高分子基板(S)の少なくとも片面に無機薄膜からなるガスバリア層(B)を有するフィルムであって、透明高分子基板(S)が溶液流延製膜法により得られ、下記式(1)
で表される繰り返し単位と、下記式(2)
で表される繰り返し単位とからなるポリカーボネートから主としてなり、上記式(1)で表される繰り返し単位が全体の30〜80モル%であり、ガスバリア層(B)形成面の表面平滑性がSRaで10nm以下で、残留溶媒が0.5重量%以下、かつ150℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.01%以下であることを特徴とするガスバリア性透明フィルム。 - ガスバリア層(B)がSi、Al、Ti、MgおよびZrから選ばれた少なくとも1種の金属あるいは2種以上の金属混合物の酸化物、フッ化物、窒化物あるいは酸窒化物の無機材料である請求項1記載のガスバリア性透明フィルム。
- ガスバリア層(B)が珪素と酸素を主成分とする酸化珪素薄膜からなり、珪素原子に対する酸素原子の割合は1.5以上2未満であり、かつ膜厚が1nm〜1μmの範囲である請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- 透明高分子基板(S)は、全光線透過率が85%以上であり、かつ三次元屈折率が下記式(A)及び(B)を同時に満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
|R(550)|≦20(nm) (A)
K=|[nz−(nx+ny)/2]×d|≦100(nm) (B)
[上記式(A)において、R(550)は波長550nmの光に対する透明高分子基板(S)の面内位相差であり、上記式(B)において、nx、ny、nzは透明高分子基板(S)の厚み方向をz軸としたx軸、y軸、z軸方向の波長550nmの光に対する三次元屈折率であり、dは透明高分子基板(S)の厚さである。] - 透明高分子基板(S)は、波長450nmの光に対する面内位相差をR(450)、波長550nmの光に対する面内位相差をR(550)としたとき、R(450)/R(550)≦1.06である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- 透明高分子基板(S)は、180℃2時間熱処理した後の寸法変化率が0.1%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- 相対湿度0%における酸素透過度P1が下記式(I)を満足し、かつ相対湿度100%における水蒸気透過度P2が下記式(II)を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
P1<1×107exp(−5000/T)[cc/m2/24hr/atm](I)
P2<5×1011exp(−8000/T)[g/m2/24hr] (II)
[上記式(I)、(II)において、Tは絶対温度(K)で表した酸素透過度ならびに水蒸気透過度の測定温度である] - ガスバリア性透明フィルムは、架橋構造を有する少なくとも一層のコーティング層(C)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- ガスバリア性透明フィルムは、少なくとも片面に透明導電層(E)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- 超微小硬度計で計測したとき、硬さが18以上であり、かつ塑性変形率が50%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルム。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性透明フィルムを具備する液晶表示素子または有機EL表示素子。
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