以下に、本発明のポリアリレート、光学部品、光学フィルム、プラスチックフィルム基板及びフラットパネルディスプレイについて説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
[ポリアリレート]
まず、下記一般式(1)で表される繰返し単位から構成されるポリアリレートについて説明する。
一般式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R5、R6はそれぞれ独立に置換基を表し、m、nは0〜3の整数である。また一般式(1)中のXは、下記一般式(2)〜(4)で表わされる2価の連結基から選ばれる少なくとも一種である。
R1〜R4は水素原子、アルキル基又はアリール基を表すが、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基など)、又は炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基など)である。
R5、R6はそれぞれ独立に置換基を表す。好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基又は2−エチルヘキシル基など)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基であり、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基など)、ビシクロアルキル基(好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、すなわち炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基など)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基など)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、すなわち炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基など)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基であり、好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、すなわち二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基など)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル基、プロパルギル基などである。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基など)、
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基など)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、又は炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアニリノ基であり、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、又はジフェニルアミノ基など)、アシルアミノ基(好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、又は炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基である。)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基など)である。
上記置換基は、特にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基及びアシルアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
一般式(1)中、m、nは、それぞれ独立に0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。m及びnが2以上である場合、R5及び/又はR6は同一であっても異なっていてもよい。さらにR5どうし及び/又はR6どうしは互いに共同して環を形成していてもよく、好ましくは4〜7員環であり、さらに好ましくは5〜6員環である。
一般式(1)中、Xは下記一般式(2)〜(4)で表される2価の連結基から選ばれる少なくとも一種である。
一般式(2)〜(4)中、R7〜R10は置換基を表す。ここで、R7〜R10の好ましい例はR5、R6で記載した置換基と同一のものを挙げることができ、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはハロゲン原子、アルキル基、又はアシルアミノ基である。
一般式(2)〜(4)中のpは1〜4のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。また、q1、q2はそれぞれ独立に0〜4のいずれかの整数であり、より好ましくは0〜2のいずれかの整数である。また、rは0〜6のいずれかの整数であり、好ましくは0〜2のいずれかの整数である。p、q1、q2及びrが2以上である場合、R7、R8、R9及びR10は同一であっても異なっていてもよい。さらにR7、R8、R9及び/又はR10は、同一の芳香族環上で共同して環を形成していてもよく、好ましい環員数は4〜7員環であり、さらに好ましくは5〜6員環である。またR8、R9は、互いに共同して環を形成してもよく、好ましい環員数としては5〜7員環である。
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアリレートは1種の繰り返し単位で形成されていてもよいし、異なる繰り返し単位で形成されていてもよい。
本発明において、ポリアリレート中における一般式(1)で表される繰り返し構造単位のモル百分率をiとした場合、50≦i≦100モル%であり、60≦i≦100モル%であることがより好ましく、80≦i≦100モル%であることがさらに好ましい。
次に一般式(5)で表される繰返し単位を有するポリアリレートについて説明する。
一般式(5)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表わす。ここで、R1〜R4で表されるアルキル基又はアリール基の好ましい例は、一般式(1)で説明した置換基と同一のものを挙げることができる。また、R11〜R16は、水素原子又は置換基を表し、好ましい置換基の例は一般式(1)のR5、R6で説明した置換基と同一のものを挙げることができる。より好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基又はアシルアミノ基である。また、R12、R13及び/又はR14、R15は互いに結合して5〜7員の環、より好ましくは5〜6員環を形成してもよい。
但し、R11、R16が水素原子である場合には、耐候性の観点からR12、R15は水素原子及びメチル基以外の置換基である。
一般式(5)中のYは2価の芳香族基を表す。芳香族基の例としては、例えば、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,7−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニル基、3,3’−ビフェニル基、下記一般式(7)で表わされる2価の芳香族基などが挙げられる。中でもm−フェニレン基、p−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、又は4,4’−ビフェニル基等がより好ましい。
さらにYは下記一般式(7)で表わされる2価の芳香族基であってもよい。
一般式(7)中、Tは2価の連結基を表し、好ましくは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基など)、フェニレン基(例えば、m−フェニレン基、p−フェニレン基など)、カルボニル基、及びスルホニル基から選ばれる少なくとも一種である。
Yは、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、一般式(1)のR5、R6で説明したものと同一のものが挙げられ、さらに好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基又はアシルアミノ基である。
また、より好ましいYの例としては、上記一般式(2)〜(4)で表される2価の連結基から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
本発明において、ポリアリレート中における一般式(5)で表される繰り返し構造単位のモル百分率をjとした場合、50≦j≦100モル%であり、60≦j≦100モル%であることがより好ましく、80≦j≦100であることがさらに好ましい。
次いで、下記一般式(6)で表される繰返し単位を含有するポリアリレートについて説明する。
一般式(6)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R17、R20はそれぞれ独立に置換基を表す。R1〜R4で表されるアルキル基又はアリール基の好ましい例としては、前記一般式(1)で記載した置換基の例と同一のものが挙げられる。また、R17、R20で表される置換基の好ましい例としては、一般式(1)におけるR5、R6で記載したものと同一のものが挙げられ、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、又はアシルアミノ基である。また、R18、R19は、それぞれ独立にハロゲン原子を表し、好ましくは水素原子又は塩素原子である。また、Yは、2価の芳香族を表わし、Yの好ましい例としては、上記一般式(5)で記載したものと同一のものが挙げられる。
本発明のポリアリレートは下記一般式(8)で表される繰り返し構造単位をさらに有する共重合ポリアリレートであってもよい。
一般式(8)中、Yは前記一般式(5)で表される2価の芳香族基と同一であり、Zは2価の有機基を表す。一般式(8)で表される繰り返し構造単位は、公知のポリアリレートが好ましい例として使用できる。Zの例としては、好ましくは炭素数40以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、飽和複素環基又は不飽和複素環基が挙げられ、これらは一般式(1)のR17、R20で記載した置換基を有していてもよい。
本発明において、ポリアリレート中における一般式(8)で表される繰り返し構造単位のモル百分率をkとした場合、0≦k≦50モル%であり、0≦k≦40モル%であることがより好ましく、0≦k≦20モル%であることがさらに好ましい。
本発明のポリアリレートのTgは、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。Tgが200℃以上であれば、フィルム基板にした場合に優れた耐熱性を得ることができる。
本発明のポリアリレートの好ましい分子量は、重量平均分子量で10,000〜500,000、より好ましくは20,000〜300,000、特に好ましくは30,000〜200,000である。ポリアリレートの分子量が10,000以上であれば、フィルム成形が可能であり、良好な力学特性が得られる。一方、ポリアリレートの分子量が500,000以下であれば、合成上分子量がコントロールでき、また適度な粘度を有する溶液が得られ、取り扱いが容易である。なお、分子量は対応する粘度を目安にすることもできる。
本発明のポリアリレートのカルボキシル価は、300μmol/g以下であることが好ましく、100μmol/g以下であることがより好ましく、30μmol/g以下であることがさら好ましく、10μmol/g以下であることが特に好ましい。カルボキシル価が300μ/mol以下であれば、良好な耐アーク放電性や誘電率など電気特性が得られ、溶剤に溶解して調製したポリマー溶液も保存安定性に優れ、かつ溶液キャスト法により得られるキャストフィルムの表面特性も良好である。ポリアリレートのカルボキシル価は、電位差滴定装置を利用した中和滴定など公知の方法で測定できる。
本発明のポリアリレート中の残留アルカリ金属量及びハロゲン量は、50ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。残留アルカリ金属量及びハロゲン量が50ppm以下であれば、電気特性が低下することなく、さらにはフィルムの良好な表面特性が得られ、また導電膜、半導体膜等を形成した機能性フィルムを作製した場合に良好な性能が得られる。本発明のポリアリレート中の残留アルカリ金属量及びハロゲン量は、イオンクロマトグラフ分析法、原子吸光法、プラズマ発光分光分析法など公知の方法を利用して定量できる。
本発明のポリアリレート中に残留する第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などの触媒の量は、200ppm未満であることが好ましく、100ppm未満であることがさらに好ましい。残留する触媒量が200ppm以下であれば、上述した良好な電気特性、フィルムの表面特性が得られ、また導電膜、半導体膜等を形成した機能性フィルムを作製した場合に良好な性能が得られる。本発明のポリアリレート中に残留する第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などの触媒はHPLC、ガスクロマトグラフ法などを利用して定量できる。
本発明のポリアリレート中に残留するフェノールモノマー及びジカルボン酸量は3000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、100ppmであることがさらに好ましい。残留するフェノールモノマー及びカルボン酸量が3000ppm以下であれば、上述した良好な電気特性、フィルムの表面特性が得られ、また導電膜、半導体膜等を形成した機能性フィルムを作製した場合に良好な性能が得られる。より具体的には、例えば、フィルム上に透明導電膜を形成する際に、成膜時の加熱やプラズマの影響等が原因で、残留するフェノールモノマーやカルボン酸成分等のガスを発生させたり、熱分解等が生じることにより、透明導電膜中に結晶粒塊が生じたり、また「抜け」と呼ばれるようなコーティングされない部分が生じ、透明導電膜の低抵抗化が阻害されるなどの悪影響を及ぼすが、本発明では残留するフェノールモノマー及びジカルボン酸量を3000ppm以下にするため、そのような欠点がない。
ポリアリレート及びそのフィルム中に残留するフェノールモノマー及びジカルボン酸量は、HPLCや核磁気共鳴法など公知の方法で分析できる。
以下に本発明のポリアリレートの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に、本発明のポリアリレートの製造方法について説明する。
本発明のポリアリレートは、対応するビスフェノール化合物とジカルボン酸を重縮合させて製造することができる。重縮合方法としては、脱酢酸による溶融重縮合法、脱フェノールによる溶融重縮合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとして有機塩基を用いポリマーが可溶となる有機溶媒系で行う脱塩酸均一重合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとしてアルカリ水溶液と水非混和性有機溶媒の2相系で行う界面重縮合法などいずれの公知の方法を用いることができる。しかし、本発明のポリアリレートがTg300℃以上となる場合、溶融重縮合は困難となるが、特開平7−188405号公報に記載されているように高沸点可塑剤を併用することにより反応温度が300℃程度で重合することができる。
本発明のポリアリレートを合成する場合、特に界面重縮合法で合成すると比較的簡便に合成できるため好ましい。典型的な公知の界面重縮合方法を用いる場合、ビスフェノールAとテレフタル酸、イソフタル酸を用いる方法に代表されるように、ビスフェノール化合物をアルカリ水溶液に可溶化したものと、ジカルボン酸クロライドを水非混和性有機溶媒(代表的にはジクロロメタンなど)に可溶化したものを短時間で混合する方法が採られる。一方、ビスフェノール化合物のアルカリ水溶液に対する溶解度が低い場合や、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドが水非混和性有機溶媒に対する溶解度が低いため、公知の方法では高分子量の本発明のポリアリレートを合成できない場合がある。このような場合には、予め水、水非混和性有機溶媒、ビスフェノール化合物、ジカルボン酸クロライドをスラリー状混合撹拌しておき、高濃度のアルカリ水溶液を徐々に添加していく方法が高分子量化に有効である。
本発明のポリアリレートの分子量は、重合時に一官能の物質(分子量調整剤)を添加して調整することができる。分子量調整剤としは、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノールなどの一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価酸クロライド類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの一価のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸などの一価のカルボン酸などが挙げられる。
本発明のポリアリレートに含まれるスピロビクロマン骨格を有するモノマーの基本骨格は、公知の方法により製造することができる。例えばJournal of Chemical Society、111巻、4953頁(1989年)、特開昭62−130735号公報などに記載の方法で製造できる。
さらに本発明で使用されるモノマーは前記した文献と同様の方法により誘導が可能であり、さらには得られたモノマーへの官能基導入反応(例えば、ハロゲン化やt−ブチル化など)により誘導が可能である。
本発明のポリアリレートは、他の相溶可能な樹脂を併用できる。また、必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤、及び潤滑剤などの各種添加剤(樹脂改質剤)を添加することもできる。
本発明のポリアリレートには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の相溶可能な樹脂を混合することができる。混合可能な樹脂材料は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、ガラス転移点温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂のうち、好ましい例としては(括弧内はTgを示す)、ポリカーボネート樹脂(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン樹脂(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃、JSR(株)製 アートン:170℃)、ポリアリレート樹脂(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES:220℃)、ポリスルホン樹脂(PSF:190℃)、ポリエステル樹脂(例えば鐘紡(株)製 O−PET:125℃、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の実施例1の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例−5の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物:300℃以上)のものを挙げることができる。
また、下記一般式(9)で表わされるビスフェノールをビスフェノール成分とするポリカーボネート樹脂も好ましい例として挙げられる。
ここで、R51、R52、R53及びR54は、同一又は異なる水素原子、アルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又はアルキル基である。またAは、単なる結合又は2価の連結基を表し、好ましくは単なる結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、炭素数5〜10のシクロアルキレン基、炭素数7〜15のアラアルキレン基及び炭素数1〜5のハロアルキレン基から選ばれる少なくとも一種である。
Aの具体例は、シクロアルキレン基として1,1−シクロペンチレン、1,1−シクロヘキシレン、1,1−(3,3,5−トリメチル)シクロヘキシレン、ノルボルナン−2,2−ジイル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8、8’−ジイルが挙げられ、特に1,1−シクロヘキシレン、1,1−(3,3,5−トリメチル)シクロヘキシレンが好適に用いられる。また、アラアルキレン基としては、フェニルメチレン、ジフェニルメチレン、1,1−(1−フェニル)エチレン、9,9−フルオレニレンが挙げられる。また、ロアルキレン基として、2,2−ヘキサフルオロプロピレン、2,2−(1,1,3,3−テトラフルオロ−1,3−ジシクロ)プロピレン等が好適に用いられる。
本発明のポリアリレートに混合可能な樹脂は、耐溶剤性、耐熱性などの観点から架橋樹脂も好ましく用いることができる。架橋樹脂は、熱硬化性樹脂及び放射線硬化樹脂のいずれも種々の公知のものを特に制限なく用いることができる。
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。その他、架橋方法としては、共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができ、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物を用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。但し、このような系は製膜前のポットライフが問題になる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いられる。一方、1液型として用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤として、三井武田ケミカル(株)製B−882N、日本ポリウレタン工業(株)製コロネート2513(以上ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製サイメル303(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることのできるポリカルボン酸を保護した下記B−1のようなブロック化カルボン酸も知られている。
放射線硬化樹脂の例としては、ラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂が挙げられる。ラジカル硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のラジカル重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な例として分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に複数個のアクリル酸エステル基を有する化合物が用いられる。ラジカル硬化性樹脂の代表的な硬化方法として、電子線を照射する方法、紫外線を照射する方法が挙げられる。通常、紫外線を照射する方法においては紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤を添加する。なお、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤を添加すれば、熱硬化性樹脂として用いることもできる。
カチオン硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のカチオン重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な硬化方法として紫外線の照射により酸を発生する光酸発生剤を添加し、紫外線を照射して硬化する方法が挙げられる。カチオン重合性化合物の例としては、エポキシ基などの開環重合性基を含む化合物やビニルエーテル基を含む化合物を挙げることができる。
本発明のポリアリレートは、上記の熱硬化性樹脂又は放射線硬化樹脂の複数種混合して用いてもよく、また熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂を併用してもよい。
さらに本発明のポリアリレートに架橋性樹脂を混合して用いた場合には、得られたプラスチックの耐溶剤性、耐熱性、光学特性及び強靭性がいずれも優れているため好ましい。また、本発明のポリアリレートに架橋性基を導入することも可能であり、ポリマー主鎖末端、ポリマー側鎖、ポリマー主鎖中のいずれの部位に架橋性基を有していてもよい。この場合、上記で挙げた汎用の架橋性樹脂を併用しなくてよい。
本発明のポリアリレートは、金属の酸化物及び/又は金属の複合酸化物、及びゾルゲル反応により得た金属酸化物を含有することができる。
本発明のポリアリレートに含有可能な金属酸化物の好ましい例としては、Al2O3 、SiO2、ZrO2 、Fe2O3、TiO2、B2O3、WO3などが挙げられる。また、本発明のポリアリレートに含有可能な金属の複合酸化物は、異種元素が酸素で結合された構造(例えば、Al2O3Siなど)で表される結合を主構成成分として有する。本発明においては、このような複合酸化物をExOy/FmOn(式中、Eは2元複合酸化物に含まれる二種類の金属の一方を示し、Fはもう一方を示す。また、x、y、m、nは該複合酸化物において好ましい価数となる組み合わせを表す数である)、例えばAl?O?Siで表される結合を主構成成分とする複合酸化物をAl2O3/SiO2と表す。
このような複合酸化物としては、SiO2/ZrO2 、SiO2/Fe2O3、TiO2/Fe2O3、Al2O3/SiO2、Al2O3/TiO2、Al2O3/ZrO2、Al2O3/Fe2O3などの2元複合酸化物、Al2O3/SiO2/Fe2O3、Al2O3/SiO2/TiO2、Al2O3/TiO2/ZrO2、Al2O3/SiO2/ZrO2などの3元複合酸化物、およびそれ以上の多元系の複合酸化物が挙げられる。
本発明のポリアリレートに含有可能な金属酸化物又は金属の複合酸化物の平均一次粒子径は、0.001μm以上0.1μm未満であることが好ましく、0.001μm以上0.03μm未満であることがさらに好ましい。
本発明のポリアリレートに含有可能な金属酸化物又は金属の複合酸化物は、その表面が各種の表面処理剤により変性されていてもよい。凝集をできるだけ抑制する目的または樹脂との親和性を向上させる目的で使用される表面処理剤としては、リン酸およびその誘導体(例えば、リン酸エステル、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアンモニウム塩など)、ポリアクリル酸のアンモニウム塩、ポリメタクリル酸のアンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。上記の表面処理剤は、一般に、金属酸化物又は金属の複合酸化物の質量に対して5質量%以下の量で使用される。
本発明のポリアリレートに併用可能なゾルゲル反応により得た金属酸化物は、金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から誘導される。以下、好ましい金属アルコキシドを例に取り説明する。
本発明において、金属アルコキシド化合物は、あらゆるタイプのものも用いることができる。その中でも好ましいものは、下記一般式(10)で表される化合物である。
一般式(10)中、Gは炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基であり、MはSi、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、TaおよびW等からなる群、好ましくはSi、TiおよびZrからなる群から選ばれる金属元素であり、dは2〜6、好ましくは3〜4の整数を示す。
一般式(10)の化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム類およびジメトキシ銅、ジエトキシバリウム、トリメトキシホウ素、トリエトキシガリウム、トリブトキシアルミニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシ鉛、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ヘキサエトキシタングステン等の金属アルコキシド類が挙げられる。
本発明において、使用可能なゾルゲル反応により得られる金属酸化物のさらに好ましい例としては一般式(11)で表される金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から誘導されたものが挙げられる。
一般式(15)中、Z'は、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Mは金属原子、T'は単結合又は2価の連結基、Rは有機基、Arは芳香族基をそれぞれ表す。a、bは1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表す。但し、a+b+cは金属原子Mの価数である。Z'がアルコキシ基を表す場合、Z'はR60O−で表されるアルコキシ基であることが好ましい。
ここで、R60は直鎖又は分岐状の有機基である。有機基は、アルキル基、アラルキル基等を主骨格とし、ゾル−ゲル反応系に影響を与えない限り、その内部に不飽和結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ペプチド結合、又はカルボキシル基、アミノ基、ケトン基等を含んでいてもよい。有機基を構成する炭素数は、1〜10、好ましくは1〜5である。Z'がハロゲン原子である場合、塩素又は臭素であることが特に好ましい。
Mは、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム又はスズであることが好ましい。a、b、cの組み合わせとしては、Mが4価の金属である場合、下記表1に挙げる組み合わせが好ましい。
また、Mが3価の金属である場合、下記表2に挙げる組み合わせが好ましい。
4価の金属原子を有する金属アルコキシドの具体例としては、(CH3O)3MPh、(C2H5O)3M(CH2Ph)、(C2H3O)3M(C2H4OPh)、(C3H8NO)3MPh、(C4H9O)3M(C3H4Ph)、(CH4NO)2MPh2、(C2H5O)2M(CH3NPh)2、(C3H5O)2M(C4H8Ph)2、(C4H10NO)2M(C2H2O2Ph)2、(CH3O)2M(C4H9NPh)(C4H9)、(C2H5O)2M(C4H6O2Ph)(C3H5)、(C2H3O)2M(C2H4Ph)(C2H5O)、(C3H8NO)2M(CH2Ph)(CH4N)、(C4H9O)2MPh(CH3)、(CH4NO)2MPh(C2H5)、(C2H5O)2M(CH2Ph)(C3H7O)、(C3H5O)2M(C2H2Ph)(C5H9O2)、(C4H10NO)2MPh(C4H10N)、(CH3O)2M(CH2OPh)(C3H7)、(C2H5O)2M(C5H8O2Ph)(C4H9)、(C2H3O)2MPh(C3H8N)、(C3H8NO)2M(C2H4Ph)(C2H5)、(C4H9O)2MPh(C2H3O2)、(CH4NO)2MPh(C3H7)、(C2H5O)2M(CH3NPh)(C3H5O2)、(C3H5O)2M(C4H8Ph)(C2H3)、(C4H10NO)2M(C2H2O2Ph)(CH3)が挙げられる。好ましくは、(CH3O)3MPh、(C2H5O)3MPh、(C3H7O)3MPh、(C4H9O)3MPh、(CH3O)2MPh2、(C2H5O)2MPh2、(C3H7O)2MPh2、(C4H9O)2MPh2である。
ここで、Mはケイ素、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウムおよびスズである。
3価の金属原子を有する金属アルコキシド(アルミニウムアルコキシド)の具体例としては、(CH3O)2AlPh、(C2H5O)2Al(CH2Ph)、(C2H3O)2Al(C2H4OPh)、(C3H8NO)2AlPh、(C4H9O)2Al(C3H4Ph)、(CH4NO)AlPh2、(C2H5O)Al(CH3NPh)2、(C3H5O)Al(C4H8Ph)2、(C4H10NO)Al(C2H2O2Ph)2、(CH3O)Al(C4H9NPh)(C4H9)、(C2H5O)Al(C4H6O2Ph)(C3H5)、(C2H3O)Al(C2H4Ph)(C2H5O)、(C3H8NO)Al(CH2Ph)(CH4N)、(C4H9O)AlPh(CH3)、(CH4NO)AlPh(C2H5)、(C2H5O)Al(CH2Ph)(C3H7O)、(C3H5O)Al(C2H2Ph)(C5H9O2)、(C4H100NO)AlPh(C4H10N)、(CH3O)Al(CH2OPh)(C3H7)、(C2H5O)Al(C5H8O2Ph)(C4H9)、(C2H3O)AlPh(C3H8N)、(C3H8NO)Al(C2H4Ph)(C2H5)、(C4H9O)AlPh(C2H3O2)、(CH4NO)AlPh(C3H7)、(C2H5O)Al(CH3NPh)(C3H5O2)、(C3H5O)Al(C4H8Ph)(C2H3)、(C4H10NO)Al(C2H2O2Ph)(CH3)が挙げられる。 好ましくは、(CH3O)2AlPh、(C2H5O)2AlPh、(C3H7O)2AlPh、(C4H9O)2AlPh、(CH3O)AlPh2、(C2H5O)AlPh2、(C3H7O)AlPh2、(C4H9O)AlPh2が挙げられる。
また、金属ハロゲン化物の具体例としては、F2MPh2、F2M(CH2Ph)2、F3MPh、F3M(C2H4OPh)、Cl2MPh2、Cl3M(CH2Ph)、Cl3MPh、Cl3M(C2H4OPh)、Br2MPh2、Br2M(CH2Ph)2、Br3MPh、Br3M(C2H4OPh)、I2MPh2、I2M(CH2Ph)2、I3MPh、I3M(C2H4OPh)、F2AlPh、F2Al(CH2Ph)、F2Al(C2H4OPh)、Cl2AlPh、Cl2Al(CH2Ph)、Cl2Al(C2H4OPh)、Br2AlPh、Br2Al(CH2Ph)、Br2Al(C2H4OPh)、I2AlPh、I2Al(CH2Ph)、I2Al(C2H4OPh)が挙げられる。好ましくは、F2MPh2、Cl2MPh2、Br2MPh2、I2MPh2、F3MPh、Cl3MPh、Br3MPh、I3MPhが挙げられる。ここでMはSi、Ti、Zr、GeおよびSnを意味する。
上記の金属アルコキシドの中で、特に好ましいものは、PhSi(OMe)3、PhSi(OEt)3、(C2H5O)3Si(CH2Ph)、Ph2GeCl2である。
また、上記の金属アルコキシド及び金属ハライドの部分加水分解物、並びにその2量体、3量体程度の初期縮合物も本発明で用いることができる。これらの金属アルコキシドおよび金属ハライドは1種類だけでもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物に含有可能な金属アルコキシド及び金属ハライドの含有量は、本発明の目的を損なわない程度であれば規定されないが、5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%である。
本発明のポリアリレートは、さらに無機層状化合物を含有させることもできる。本発明のポリアリレートに無機層状化合物を添加することにより、熱変形温度が2〜100℃改善することができる。また、本発明の無機層状化合物を含有したポリアリレートをプラスチックフィルム基板として使用した場合には、ガスバリア性フィルムとして利用可能である。含有可能な無機層状化合物は、特に限定されるものではないが、膨潤性及び/又は劈開性を有する粘土鉱物やハイドロタルサイト類化合物、並びにその類似化合物を好適に用いることができる。
これら粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石などを挙げることができる。
上記無機層状化合物は、天然物であっても合成物であってもよい。また、これらの層状珪酸塩は、単独で用いることができ、また複数を併用することもできる。
上記無機層状化合物の形状は、特に限定されるものではないが、無機層状化合物の厚さは、可能な限り1層における厚み(約1nm)であることが好ましい。また、平均長さは0.01〜50μm、好ましくは0.05〜10μm、アスペクト比は20〜500、好ましくは50〜200であるものを好適に用いることができる。
上記無機層状化合物は、その層間(最上又は最下の無機層状化合物の表面も含まれる)にイオン交換可能な無機カチオンを有する。イオン交換可能な無機カチオンとは、無機層状化合物(例えば層状珪酸塩)の結晶表面上に存在するナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンのことである。これらのイオンは、カチオン性物質とのイオン交換性を有し、イオン交換反応によりカチオン性を有する種々の物質を上記無機層状化合物の層間にインターカレートできる。
上記無機層状化合物の層間に存在する無機カチオンを有機カチオンでイオン交換する場合、長鎖のアルキル基を含むアルキルアンモニウムイオンを有機カチオンとして好適に用いることができる。長鎖のアルキル基を含むアルキルアンモニウムイオンは、例えば、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルジメチルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ヘキサトリメチルアンモニウムイオン、オクタトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、ドコセニルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムイオン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムイオン、ジオレイルジメチルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムイオンなどを用いることができる。
上記無機層状化合物のカチオン交換容量(CEC)は、特に限定されるものではないが、例えば25〜200meq/100gであることが好ましく、50〜150meq/100gであることがより好ましく、90〜130meq/100gであることがさらに好ましい。無機層状化合物のカチオン交換容量が25meq/100g未満であると、イオン交換により無機層状化合物の層間に挿入(インターカレート)されるカチオン性物質の量が少なくなるために、層間が十分に親有機化されないことがある。一方、カチオン交換容量が200meq/100gを超えると、無機層状化合物の層間の結合力が強固になりすぎて、結晶薄片が剥離しにくくなり、分散性が悪くなることがある。
上記無機層状化合物の具体例としては、例えば、クニミネ工業のスメクトンSA、クニミネ工業のクニピアF、コープケミカル社のソマシフME−100、コープケミカル社のルーセンタイトSWNなどの商品を挙げることができる。
上記無機層状化合物の層間に存在する無機カチオンを有機カチオンでイオン交換(親有機化)する方法としては、一般に、湿式法を挙げることができる。湿式法は、無機層状化合物を水やアルコール等で十分溶媒和させた後、有機カチオンを加えて撹拌し、無機層状化合物の層間に存在する金属イオンを有機カチオンに置換させ、その後、未置換の有機カチオンを十分に洗浄し、ろ過、乾燥する方法である。その他、有機溶剤中で無機層状化合物と有機カチオンを直接反応させたり、樹脂などの存在下、無機層状化合物と有機カチオンとを押出機中で加熱混練して反応させたりすることもできる。
前記無機層状化合物の本発明のポリアリレート中における含有比率は、質量比で1/100〜100/20であることが好ましく、5/100〜100/50であることがさらに好ましい。無機層状化合物の含有量が本発明のポリアリレートの100質量部に対して1質量部以上であれば、充分な耐熱性及びガスバリア性が得られる。一方、無機層状化合物の含有量が本発明のポリアリレートの20質量部に対して100質量部以下であれば、良好な脆性等を維持できる。
本発明のポリアリレートに無機層状化合物を含有させる場合、先ず無機層状化合物と本発明のポリアリレートとを溶融混練又は溶液中で混合することにより、無機層状化合物を劈開した状態でポリマー中に分散したポリアリレートを作製することが好ましい。製造プロセスやコストを考慮すると、溶融混練法により混合することが好ましい。
上記溶融混練法で使用可能な溶融混練機としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている混練機を挙げることができる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いることができる。
[プラスチックフィルム基板、光学フィルム]
本発明のポリアリレートは、耐熱性、光学特性、及び力学特性等に優れ、透明導電フィルム基板、TFT基板、液晶表示用基板、有機EL素子表示用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、光ディスク基板、光導波路、光ファイバー、レンズ、タッチパネルなどの各種の光学部品に好適に用いることができる。
また、本発明のポリアリレートは、特にプラスチックフィルム基板や光学フィルムとして好適に用いることができる。本発明のポリアリレートをフィルム状又はシート状に成形する方法としては公知の方法が採用できるが、溶液流延法、押出成形法(溶融成型法)が好ましい方法として挙げられる。溶液流延法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、米国特許2367603号、米国特許2492078号、米国特許2492977号、米国特許2492978号、米国特許2607704号、米国特許2739069号、米国特許2739070号、英国特許640731号、英国特許736892号の各明細書、特公昭45−4554号、特公昭49−5614号、特開昭60−176834号、特開昭60−203430号、特開昭62−115035号の各公報に記載がある。樹脂溶液は、表面温度が30℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。
溶液流延法で製造する場合に用いられる製造装置の例としては、例えば、特開2002−189126号公報の段落[0061]〜[0068]に記載の製造装置、図1及び図2などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
溶液流延法では、本発明のポリアリレートを溶媒に溶解する。使用する溶媒は、本発明のポリアリレートを溶解できるものであればいずれの溶媒を用いてもよい。特に25℃において固形分濃度10質量%以上で溶解可能な溶媒を使用することが好ましい。また、使用する溶媒の沸点は200℃以下であるものが好ましく、150℃以下であるのものがより好ましい。沸点が200℃以下であれば、溶媒を充分乾燥でき、フィルム中おける溶媒の残存率を低くできる。
このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、アセトン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。
混合溶媒の例としては、塩化メチレンに炭素数1〜5のアルコールを1種ないし数種混合した溶媒が挙げられる。この場合、アルコールの含有量は、溶媒全体に対して5〜20質量%であることが好ましい。さらに、炭素数3〜12のエーテル、ケトン及びエステルの適宣混合した溶媒が好ましい例として挙げられ、この際、炭素数1〜5のアルコールを1種ないし数種混合してもよい。
また、発明協会公開技報2001−1745号、段落6に記載の有機溶媒の例なども好ましい例として挙げられる。
溶液流延で用いる溶液中のポリアリレート濃度は、5〜60質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。ポリアリレートの濃度が5〜60質量%であれば、適度な粘度が得られ、フィルムの厚みの調整が容易であり、かつ製膜性が良好であるため、ムラを小さくすることができる。
溶液流延する方法は特に限定されないが、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターブレード、ロールコート、ダイコート等を用いて平板又はロール上に流延できる。
溶媒を乾燥する温度は、使用する溶媒の沸点によって異なるが、2段階に分けて乾燥することが好ましい。第一段階としては30〜100℃で溶媒の質量濃度が10%以下になる、より好ましくは5%以下になるまで乾燥する。次いで、第二段階として平板又はロールからフィルムを剥がし、60℃以上、樹脂のガラス転移温度以下の範囲で乾燥する。
平板又はロールからフィルムを剥がす際、第一段階の乾燥終了直後に剥がしても、一旦冷却してから剥がしてもよい。
本発明のフィルムは、加熱乾燥が不足すれば残留溶媒量が多く、また極度に加熱しすぎるとポリアリレートの熱分解を引き起こし、残留するフェノールモノマー量が多くなる。さらに急激な加熱乾燥は含有溶媒の急速な気化を生じ、フィルムに気泡等の欠陥を生じさせる。
そこで、本発明のフィルムは、残留する溶媒量を2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下とする。残留する溶媒量が2000ppm以下であれば、良好なフィルム表面特性が得られるため、表面処理等がスムーズに行え、また導電膜や半導体膜等を形成する場合には、機能性フィルムとして良好な性能を示す。本発明のポリアリレートフィルム中に残留する溶媒量は、ガスクロマトグラフ法など公知の方法を利用して定量できる。
本発明のフィルムの製造は、回転ドラム又はバンド上への溶液流延、剥ぎ取り及び乾燥を連続的に行い、ロール状に巻取ることにより行なう方法が好ましい。この際、フィルムを機械的に搬送するときに、フィルムの力学強度が高いことが好ましい。好ましい力学強度は、搬送装置によって異なるため一概に言えないが、目安としてフィルムの引張試験から得られる破断応力と破断伸度とを用いることができる。好ましい破断応力は、50MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。破断伸度は、サンプル作製条件等によっても変動するため、破断応力よりは信頼性がやや低いが、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。
押出成型法の条件は、一般的な光学樹脂に用いられる条件と同様であり、溶融温度としては、通常180〜350℃の範囲の温度が使用され、特に200〜300℃が好ましく使用される。
本発明のフィルムは延伸されていてもよい。延伸により耐折強度など機械的強度が改善され、取扱性が向上する利点がある。特に延伸方向のオリエンテーションリリースストレス(ASTMD1504、以下ORSと略記する)が0.3〜3GPaであるものは機械的強度が改善され好ましい。ORSは、延伸フィルム又は延伸シートに内在する延伸により生じた内部応力である。
延伸は、公知の方法が使用でき、例えば、ポリアリレートのガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度から、50℃高い温度の間の温度、好ましくは10〜40℃で、ロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法により延伸できる。延伸倍率は1.1〜3.5倍、好ましくは1.1〜2.0倍が用いられる。
本発明のフィルム基板の厚みは特に規定されないが、30〜700μmであることが好ましく、40〜200μmであることがより好ましく、50〜150μmであることがさらに好ましい。また、いずれの場合もヘイズは3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、本発明のフィルムの全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明のフィルム基板の表面には用途に応じて他の層、あるいは部品との密着性を高めるためにフィルム基板表面上にケン化、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等の処理を行うことができる。さらに、フィルム表面にアンカー層を設けてもよい。
本発明のプラスチックフィルム基板及び光学フィルムは、基板上に透明導電層を積層してもよい。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の観点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズから主としてなり、酸化亜鉛を2〜15重量%含有した酸化インジウム(ITO)の薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。
これら透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でもよいが、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適しており、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号の各公報に記載の方法で成膜することができる。中でも、特に優れた導電性と透明性が得られるスパッタリング法が好ましい。
スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Paであり、より好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。このような透明導電層を設ける前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、コロナ処理のようにフィルムの表面処理を行うことが好ましい。また透明導電層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
このようにして得た透明導電層の膜厚は、20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。また、透明導電層の25℃60%RH(relative humidity)で測定した表面電気抵抗は、0.1〜200Ω/□であることが好ましく、0.1〜100Ω/□であることがより好ましく、0.5〜60Ω/□であることがさらに好ましい。また、透明で導電層の光透過性は80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
本発明のプラスチックフィルム基板又は光学フィルムは、ガス透過性を抑制するために、少なくとも片面にガスバリア層を積層することができる。好ましいガスバリア層としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウム、タンタルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属を主成分とする金属酸化物膜、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物膜又はこれらの混合物からなる膜を挙げることができる。この中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物膜が良好である。これら無機ガスバリア層は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製できる。中でも、特に優れたガスバリア性が得られるという観点からは、スパッタリング法を用いることが好ましい。また透明導電層を形成している間に50〜200℃に昇温してもよい。
このようにして得た無機ガスバリア層の膜厚は、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。またガスバリア層は、透明導電層と同じ側及び反対側いずれに形成してもよい。
得られたプラスチックフィルム基板及び光学フィルムのガスバリア性能は、40℃90%RHで測定した水蒸気透過度が0.01〜5g/m2・dayであることが好ましく、0.03〜3g/m2・dayであることがより好ましく、0.05〜2g/m2・dayであることがさらに好ましい。また、40℃90%RHで測定した酸素透過度は、0.01〜1ml/m2・day・atmであることが好ましく、0.01〜0.7ml/m2・day・atmであることがより好ましく、0.01〜0.5ml/m2・day・atmであることがさらに好ましい。ガスバリア性能が上記範囲内であれば、例えば有機ELやLCDに用いた場合、水蒸気及び酸素によるEL素子の劣化を実質的になくすことができるため好ましい。
ガスバリア性能を向上させる目的で、ガスバリア層と隣接して欠陥補償層を形成することが好ましい。欠陥補償層としては、例えば、(1)米国特許第6171663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層、(2)米国特許第6413645号明細書、第64163645号明細書に記載の有機物層を用いることができる。これらの欠陥補償層は、真空下で蒸着後、紫外線又は電子線で硬化させる方法、または塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させることにより作製することができる。欠陥補償層を塗布方式で作製する場合には、従来の種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
本発明のプラスチックフィルム基板及び光学フィルムは、薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法は、例えば、特表平10−512104号公報に記載された方法等を用いることができる。さらに、これらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターは、いかなる方法を用いて作製してもよいが、フォトリソグラフィー手法を用いて作製することが好ましい。
本発明のプラスチックフィルム基板及び光学フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で剥離フィルムを形成でき、粘着剤を使用することができる。
[フラットパネルディスプレイ]
以上説明した本発明のポリアリレート、及びそれを用いたプラスチックフィルム基板、光学フィルムは、画像表示装置に用いることができる。ここで、画像表示装置は特に限定されず、従来知られているものを挙げることができる。また、本発明のプラスチックフィルム基板や光学フィルムを基板として用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製できる。フラットパネルディスプレイとしては液晶、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代わる基板として用いることができる。さらに、本発明のポリアリレート、プラスチックフィルム基板及び光学フィルムは、フラットパネルディスプレイ以外にも太陽電池、タッチパネルなどの用途にも応用が可能である。タッチパネルは、例えば、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用することができる。
本発明のフィルムを基板として液晶表示用途などで使用する場合、光学的均一性を達成するため、本発明のポリアリレートは非晶性ポリマーであることが好ましい。さらに、レタデーション(Re)、及びその波長分散を制御する目的で、固有複屈折の符号が異なる樹脂を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂を組み合わせたりすることができる。
レターデーション(Re)の制御し、ガス透過性や力学特性を改善する観点からは、本発明のフィルムに異種の樹脂を組み合わせて積層等することが好ましい。異種の樹脂の好ましい組み合わせは特に制限はなく、前記したいずれの樹脂も使用可能である。
本発明のフィルムを反射型液晶表示装置に用いる場合は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、及び偏光膜の構成を有することが好ましい。このうち本発明のフィルムは、透明電極及び/又は上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、又は上配向膜と透明電極との間に形成することが好ましい。
本発明のフィルムを透過型液晶表示装置に用いる場合は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板、及び偏光膜の構成を有することが好ましい。このうち本発明のフィルムは上透明電極及び/又は上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、又は上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
液晶セルは特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-P1ane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crysta1)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optica1ly Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムは、表示モードの液晶表示装置に用いることも有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置に用いても有効である。
液晶セル及び液晶表示装置は、特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845)、SID99, Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206)、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc.of the-18th-Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383)、Para-A(LCD/PDP International 99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(Asia Display 98, Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開W098/48320号公報、特許第3022477号公報、及び国際公開WO00/65384号公報等に記載されている。
本発明のフィルムは、有機EL表示用途に使用できる。有機EL表示素子としての具体的な層構成としては、陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極等が挙げられる。
本発明のフィルムが使用できる有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2〜40V)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。これら発光素子の駆動については、例えば、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号等の各公報、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、日本特許第2784615号公報、等に記載の方法を利用することができる。