JP3969071B2 - 重合体の回収方法および回収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる重合体の回収方法と、その装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、乳化重合で得られた重合体のラテックスから重合体を回収するには、まず凝固タンク内の重合体のラテックスに、たとえば酸あるいは無機塩の水溶液などの凝固剤を加え、撹拌しながらラテックスを凝固させ、次いでこの凝固操作で得られた重合体クラムを、たとえば遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、たとえばバンド乾燥機、気流乾燥機または押出乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥することにより行われている。なお、乾燥装置の下流側には、通常ペレタイザーが接続してあり、乾燥後の重合体は最終的にはペレット状に加工されて製品化されることが多い。
【0003】
しかしながら、重合体のラテックスから重合体を回収するために、これらの脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程が多くなるほか、凝固タンクおよび付帯設備の装置コストが高くなり、しかも設置スペースが増大することからも問題が多い。
【0004】
この問題を改良すべく、ゴム系ラテックスと凝固剤を直接、スクリュー押出機の内部に供給し、該押出機の内部で凝固・脱水・乾燥を行うことも試みられている(特開昭57−1742号公報など)。しかしながら、この公報記載の方法では、凝固がスクリューの溝中で行われるため凝固される重合体の形状が小さく、脱水スリットから水と共に流出してしまい、重合体の回収率が著しく低下してしまうという欠点があった。
【0005】
この欠点を補うために、スクリュー押出機の内部に形成された凝固ゾーンにトルエンなどの沸点60〜200℃の有機溶媒を添加して、凝固した重合体を肥大化させることが検討されている(特開昭62−1703号公報)。この公報記載の技術では、確かに上述した特開昭57−1742号公報に記載された技術での問題点を解消できると考えられる。しかしながら、この公報記載の技術では最終製品中に残留する有機溶剤の量が増加するという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる重合体の回収方法および回収装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、押出機のバレル内部に形成される凝固ゾーンのピッチ指数とスクリュー形状を改良することにより、具体的には所定割合のニーディングディスク(kneading disk)を設けることにより、凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明に係る重合体の回収方法は、
少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置してある押出機を用いて、重合体のラテックスから重合体を回収する方法であって、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有し、該凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷の数をn(個)とし、前記スクリューの外径をD(mm)としたときに、L1/(D×n)で求められる前記凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが0.5以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る重合体の回収装置は、
重合体のラテックスから重合体を回収する装置であって、
少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルと、該バレルの内部に回転駆動自在に配置されたスクリューとを有する押出機で構成してあり、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有し、該凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷の数をn(個)とし、前記スクリューの外径をD(mm)としたときに、L1/(D×n)で求められる前記凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが0.5以下であることを特徴とする。
【0010】
凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1とスクリューの外径Dとの比(L1/D)が12以下であるスクリューを用いることが好ましい。
【0011】
スクリューの軸方向の長さをL(mm)としたときに、該長さLと外径Dとの比(L/D)が60以下であるスクリューを用いることが好ましい。一般に、スクリュー押出機においては、スクリューの軸方向の全長をLとし、スクリューの外径をDとしたときのL/Dの値が大きいほど、設置スペースが増大し、かつ大型のモーターが必要とされるほか、消費電力が増大する傾向がある。本発明では、このL/Dを60以下とすることにより、脱水・乾燥の各性能を維持しながら凝固機能を付加しても、押出機の設置スペースを増大させることなく、しかも省エネルギーの要請を満足することができる。
【0012】
凝固用スクリューブロックの10〜60%がニーディングディスクで構成されているスクリューを用いることが好ましい。
【0013】
バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーンが設けてあることが好ましい。該排水ゾーンの下流側には、洗浄ゾーン、脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが順次設けてあることが好ましい。この場合、凝固ゾーンと、脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンとは、離間して配置された複数のバレル(複数の装置)の内部にそれぞれ形成してあり、複数のバレル同士がたとえばコンベアなどを介して接続してあってもよい。しかしながら、設置スペースを削減する観点からは、凝固ゾーン、脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが単一のバレル(単一の装置)の内部に形成してあることが好ましい。なお、バレルは、通常、複数のバレルブロックで構成される。
【0014】
二軸噛合型で同方向回転型のスクリューを用いることが好ましい。
【0015】
本発明に適用できる重合体のラテックスとしては、特に限定されず、たとえば、ブタジエン重合体やイソプレン重合体などの共役ジエンのみで構成される単独重合体;エチルアクリレート重合体などのアクリレートのみで構成される単独重合体;などの各種単独重合体のラテックスの他、ブタジエン−イソプレン共重合体などの共役ジエンのみで構成される共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−イソプレン共重合体などの不飽和ニトリルと共役ジエンで構成される共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などの芳香族ビニルと共役ジエンで構成される共重合体;エチルアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体、エチルアクリレート−n−ブチルアクリレート−2−メトキシエチルアクリレート共重合体などのアクリレートのみで構成される共重合体;などの各種共重合体のラテックスが例示される。
【0016】
中でも、不飽和ニトリルと共役ジエンで構成される共重合体や、アクリレートのみで構成される単独または共重合体の各重合体ラテックスが好ましく、さらに不飽和ニトリルと共役ジエンで構成される共重合体のラテックスが好ましく、ブタジエンとアクリロニトリルで構成される共重合体のラテックスが特に好ましい。
【0017】
本発明に適用できる重合体のラテックスの固形分濃度は、通常5〜50重量%程度、好ましくは10〜40重量%程度である。
【0018】
本発明に適用できる重合体のラテックスは、たとえば乳化重合や微細懸濁重合などで得ることができるが、特に乳化重合で得られる乳化重合体のラテックスが好適なものとして挙げられる。乳化重合で得られる重合体粒子の粒径や、乳化剤の種類および使用量は、特に限定されない。
【0019】
【発明の作用および効果】
本発明に係る回収装置を用いた重合体の回収方法では、押出機の内部に配置されるスクリューの凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.5以下にする。しかも凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1とスクリューの外径Dとの比(L1/D)が12以下であるスクリューを用いることが好ましい。これらにより、スクリューの軸方向の長さをL(mm)としたときの該長さLと外径Dとの比(L/D)を60以下と小さくしても、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる。
【0020】
特に、前記凝固用スクリューブロックにニーディングディスクを所定割合で含ませることにより、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量をより一層少なくすることが可能である。
【0021】
また、バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側であって、洗浄ゾーンの前に、排水ゾーンを設けることにより、凝固ゾーンで得られた高濃度の凝固剤(残留凝固剤)を含むクラムスラリーから、前記凝固剤の大部分を効率的に除去できる。その結果、その後の洗浄ゾーンで残留する低濃度の凝固剤を確実に除去でき、ひいては脱水ゾーン、乾燥ゾーンを経て最終的に回収される重合体に含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができる。
【0022】
さらに、スクリューを二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることで、セルフクリーニング性を付与でき、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る重合体の回収装置としての押出機を示す概略図、図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図、図3は図1のIII−III線と図2のIII−III線に沿う断面図、図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【0024】
本実施形態では、本発明に係る重合体の回収装置として図1に示す単一の押出機2を例示し、まずはその構成を説明した後、この押出機2を用いて重合体のラテックスから重合体を回収する方法について説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る重合体の回収装置としての押出機2は、分割された12個のバレルブロック41〜52で構成される単一のバレル4を有する。バレル4の内部には、本実施形態では凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106、および乾燥ゾーン108が、バレル4の上流側から下流側にかけて順次形成されている。
【0026】
凝固ゾーン100は、重合体ラテックスと凝固剤を接触させて重合体を凝固させ、クラム状の重合体のスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、重合体の凝固後に生じる液体(セラム水)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄ゾーン104は、前記含水状態のクラムを洗浄する領域である。脱水ゾーン106は、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン108は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0027】
本実施形態では、バレルブロック41,42の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック43の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック44〜47の内部が洗浄ゾーン104に対応し、バレルブロック48,49の内部が脱水ゾーン106に対応し、バレルブロック50〜52の内部が乾燥ゾーン108に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱う重合体の性状等に応じて最適な数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0028】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック41には、重合体ラテックスと凝固剤を受け入れるフィード口412が形成されている。排水ゾーン102を構成するバレルブロック43には凝固後の重合体の水スラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット432が形成されている。洗浄ゾーン104の一部を構成するバレルブロック44には、洗浄水を受け入れる洗浄水フィード口442が形成されており、バレルブロック47には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット472が形成されている。脱水ゾーン106の一部を構成するバレルブロック49には洗浄後のクラムから除かれた脱水排水を外部へ排出する脱水スリット492が形成されている。乾燥ゾーン108の一部を構成するバレルブロック51には、脱気のためのベント口512が形成されている。
【0029】
バレル4の内部には、図2に示すようなスクリュー7が配置されている。スクリュー7の基端には、これを駆動するモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー7は回転駆動自在に保持される。スクリュー7の形状は、本発明では特に限定されないが、好ましくは多種のスクリュ構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組合わせて構成することができる。
【0030】
本実施形態では、スクリュー7は、バレル4の内部に形成された上述した各ゾーン100〜108に対応する領域に形成される各スクリューブロックを有する。各スクリューブロックの構成は次の通りである。
【0031】
図2および図3に示すように、本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷7B(図4参照)の数をn(個)とし、スクリュー7の外径をD(mm)としたときに、L1/(D×n)で求められる凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが0.5以下、好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.35以下である。凝固用スクリューブロックの谷の数は、該凝固用スクリューブロックを上から見てカウントしていけばよい。ニーディングディスク8(詳細は後述する)の谷の数をカウントする際には、位相をずらした板同士の間もカウントすることとする(図4参照)。
【0032】
凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1とスクリュー7の外径Dとの比(L1/D)は、12以下が好ましく、より好ましくは8以下である。
【0033】
なお、スクリュー7の軸方向の長さをL(mm)としたときに、該長さLと外径Dとの比(L/D)は60以下が好ましく、より好ましくは48以下である。
【0034】
本実施形態では、凝固ゾーン100に対応する領域に形成される凝固用スクリューブロックには、特に凝固を促進させる観点からニーディングディスク8を含めてある。
【0035】
ニーディングディスク8は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と(図3では擬似楕円形)、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度(図3では30度)づつずらしながら、複数枚(図3では6枚)積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。ここで擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル4の内壁面4aに各該ディスクの端部が所定(1〜5mm程度の)のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形又は切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形又は三角糸巻形としても良い。
【0036】
本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1に対するニーディングディスク8の占める割合は、好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜50%、特に好ましくは30〜40%であり、該ディスク枚数は3〜9枚程度が好適である。凝固用スクリューブロックでのニーディングディスク8の割合が多すぎると、送り量が不足し、少なすぎると凝固が不十分となる。なお、ニーディングディスクの代わりに、3条以上のピッチ間隔の狭いスクリューを用いても本発明は実施できるが、一般に条数が増加すると、製作が困難になり制作費も高くなるので、ニーディングディスク8を使用することが好適である。
【0037】
排水ゾーン102から乾燥ゾーン108までに対応する領域に形成される排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリュブロック、乾燥用スクリューブロックは、たとえば通常の正送りスクリューで構成すればよい。なお、必要に応じて逆送りスクリューやニーディングディスクを含ませても良い。
【0038】
図3に示すように、本実施形態ではこのようなスクリュ7を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。すなわち、2本のスクリュー7,7では、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせ、一方のスクリュー7の谷部7Bを他方のスクリュー7の山部7Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。しかしながら本発明では、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。ただし凝固ゾーン100の混合性の面からは、本実施形態の如き二軸噛合型とすることが好ましい。2本のスクリュー7の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック52の下流側には、バレル4内で凝固・脱水・乾燥処理された重合体が所定形状に押し出されて製品化されるダイ6が接続されている。ダイ6には、カッティング機構(図示省略)が取り付けてあり、ダイから押し出されるストランド状の重合体を、適当な大きさに切断し、所定状のペレットとする。カッティング機構としては、押し出されたストランドをホットカット装置により直ちに切断するか、あるいは冷却槽で冷却してカッターで切断する等の機構を採用すればよい。
【0040】
次に、本実施形態の押出機2を用いた重合体の回収方法を説明する。
まず、重合体ラテックスを凝固剤とともにフィード口412から凝固ゾーン100に導入する。導入される凝固剤としては、本発明では特に限定されず、例えば無機酸類(硫酸、塩酸など)、有機酸類(酢酸など)、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなど)、およびこれらの混合物などが挙げられるが、凝固剤の使用量とともに重合体ラテックスに使用されている乳化剤の種類および量などにより適宜決定すればよい。中でも、凝固剤としては、無機塩類が好ましく、より好ましくは塩化カルシウムである。
【0041】
凝固剤は、必ずしもフィード口412から凝固ゾーン100に直接供給される必要はなく、重合体ラテックスと予め混合した後に供給しても良い。
【0042】
凝固ゾーン100に導入された重合体ラテックスと凝固剤は、スクリュー7の回転により接触させられ、重合体は凝固されて直径約5〜30mm程度のクラムとなって水中に懸濁し、クラム濃度が20重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)を形成する。このクラムスラリーには、凝固剤(残留凝固剤)が0.4重量%程度以上の高濃度で含有される。
【0043】
凝固ゾーン100で形成されたクラムスラリーは、スクリュー7の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック43に設けられたスリット432から前記クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、凝固剤濃度が0.15重量%程度以下に低減され、6〜31重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0044】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー7の回転により洗浄ゾーン104に送られる。洗浄ゾーン104では、バレルブロック44に設けられた洗浄水フィード口442から内部に洗浄水が導入され、上記クラムは洗浄され、洗浄済みの排水はバレルブロック47に設けられたスリット472から排出される。そして、凝固剤濃度が0.05重量%程度以下にさらに低減され、5〜30重量%程度の水分を含有するクラムが得られる。
【0045】
洗浄ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー7の回転により脱水ゾーン106に送られる。脱水ゾーン106では、バレルブロック49に形成されたスリット492より水分を排出して、水分量が2〜9重量%程度に調整されたクラムが得られる。
【0046】
脱水ゾーン106で得られたクラムは、スクリュー7の回転により乾燥ゾーン108に送られる。乾燥ゾーン108に送られたクラムは、スクリュー7の回転により可塑化混練されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。前記融体がバレルブロック51に設けられたベント口512に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン108内部の温度は120〜180℃程度であり、その圧力は1000〜5000KPa程度である。
【0047】
乾燥ゾーン108を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー7により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量は0.5重量%以下)でダイ6に導入され、ここで、たとえばストランド状で排出された後、ペレタイザー(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品(ペレット)化される。
【0048】
本実施形態に係る重合体の回収装置としての押出機2では、該押出機2の内部に配置されるスクリュー7,7の凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.5以下にし、しかも凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1と外径Dとの比(L1/D)を好ましくは12以下とする。このため、スクリュー7の軸方向の長さをL(mm)としたときの該長さLと外径Dとの比(L/D)を60以下と小さくしても、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる。特に、凝固用スクリューブロックにニーディングディスク8を所定割合で含ませることにより、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量をより一層少なくすることが可能である。
【0049】
本実施形態では、バレル4の内部に形成された凝固ゾーン100の下流側であって、洗浄ゾーン104の前に排水ゾーン102を設けることにより、凝固ゾーン100で得られた高濃度の凝固剤(残留凝固剤)を含むクラムスラリーから、前記凝固剤の大部分を効率的に除去できる。その結果、その後の洗浄ゾーン104で残留する低濃度の凝固剤を確実に除去でき、ひいては脱水ゾーン106、乾燥ゾーン108を経て最終的に回収される重合体に含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができる。
【0050】
本実施形態では、スクリュー7,7を二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることで、セルフクリーニング性を付与でき、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することもできる。
【0051】
本実施形態では、凝固ゾーン100、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108を単一のバレル4内に形成してあるので、省スペース・省コストの面からも有利である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0053】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。
【0054】
実施例1
本実施例では、図1に示すように、バレル4内に2本のスクリュー(全長L=2400mm、外径D=50mm、L/D=48)7,7を平行に設け、これらのスクリュー7,7を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせ、一方のスクリュー7の谷部7Bを他方のスクリュー7の山部7Aに噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機2を用いた。
【0055】
スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された凝固ゾーン100に対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有しており、本実施例ではこの凝固用スクリューブロックを、4枚のニーディングディスク8と2条のフルフライトを組み合わせて構成した。凝固用スクリューブロックの36%はニーディングディスク8で構成されていた。凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1は400mm、その外径Dは50mm、その谷の数nは27個であった。したがって、凝固用スクリューブロックのピッチ指数H(L1/(D×n))は0.29であり、(L1/D)は8であった。
【0056】
また、スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108にそれぞれ対応する領域に形成された排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロックおよび乾燥用スクリューブロックを、いずれも2条のフルフライトおよびニーディングディスクで構成した。
【0057】
このような構成の押出機2のフィード口412に、乳化重合により得られたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)のラテックス(固形分20重量%、アクリロニトリル:ブタジエン=1:1(重量比))を400kg/hrのレートで供給した。その際、凝固剤としての5重量%の塩化カルシウム水溶液を50kg/hrのレートで供給した。そして、洗浄ゾーン104に洗浄水を250kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数350rpmで重合体の回収を行った。
【0058】
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が78kg/hrのレートで回収された(回収率97.5%)。回収された重合体の含水率は0.2重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は100ppmであり、製品として満足できる性状であった。なお、残留する凝固剤の量は、電位差滴定により測定した。
【0059】
実施例2
凝固用スクリューブロックのニーティングディスク以外の部分のピッチを広げ、谷の数nを20個とした。すなわち凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.4とした。また、NBRのラテックスの供給量を500kg/hrに変更した。これら以外は、実施例1と同様にして重合体の回収を行った。
【0060】
その結果、バレル4に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が95kg/hrのレートで回収された(回収率95%)。回収した重合体の含水率は0.3重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は300ppmであり、製品として満足できる性状であった。
【0061】
比較例1
凝固用スクリューブロックにニーティングディスク8を使用せず、2条のフルフライトのピッチを広げ、谷の数nを8個とした。すなわち凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを1.0とした。これ以外は、実施例1と同様にして重合体の回収を行った。
【0062】
その結果、バレル4の凝固ゾーン100で重合体の十分な凝固が行われず、凝固ゾーン100に隣接する排水ゾーン102の排水スリット432から、微細な凝固粒子および未凝固のラテックスが流出し、ダイ6からはシート状の乾燥した重合体が20kg/hrのレートでしか回収できなかった(回収率25%)。重合体の凝固が不十分であったため、凝固粒子の性状が悪く、洗浄、乾燥ともに不完全な結果となった。回収された重合体の含水率は1重量%、凝固剤残留量は5000ppmであり、製品として使用できるものではなかった。
【0063】
比較例2
凝固用スクリューブロックにニーティングディスク8を使用せず、2条のフルフライトのピッチを広げ、谷の数nを13個とした。すなわち凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.62とした。これ以外は、実施例1と同様にして重合体の回収を行った。
【0064】
その結果、ダイ6からはシート状の乾燥した重合体が65kg/hrのレートで回収できた(回収率81%)。比較例1と比較して、凝固ゾーン100に隣接する排水ゾーン102の排水スリット432からの未凝固ラテックスの流出はかなり抑えられたが、凝固粒子の性状が悪く、洗浄、乾燥ともに不完全な結果となった。回収された重合体の含水率は0.7重量%、凝固剤残留量は2000ppmであり、製品として使用できるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る重合体の回収装置としての押出機を示す概略図である。
【図2】 図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【図3】 図3は図1のIII−III線と図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】 図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【符号の説明】
2… 押出機(重合体の回収装置)
4… バレル
4a… 内壁面
41〜52… バレルブロック
432,472… 排水スリット
492… 脱水スリット
512… ベント口
6… ダイ
7… スクリュー
7A… 山部
7B… 谷部
8…ニーディングデスク
Claims (6)
- 少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置してある押出機を用いて、重合体のラテックスから重合体を回収する方法であって、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有し、
該凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷の数をn(個)とし、前記スクリューの外径をD(mm)としたときに、L1/(D×n)で求められる前記凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが0.35以下であり、
前記凝固用スクリューブロックには、前記長さL1に対して、20〜50%の割合でニーディングディスクが含まれており、かつ、
前記凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーン、洗浄ゾーン、脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが順次設けてあることを特徴とする重合体の回収方法。 - 凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1とスクリューの外径Dとの比(L1/D)が12以下であるスクリューを用いる請求項1に記載の重合体の回収方法。
- スクリューの軸方向の長さをL(mm)としたときに、該長さLと外径Dとの比(L/D)が60以下であるスクリューを用いる請求項1または2に記載の重合体の回収方法。
- 二軸噛合型で同方向回転型のスクリューを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の重合体の回収方法。
- 重合体のラテックスが乳化重合により得られた不飽和ニトリル−共役ジエン共重合体のラテックスである請求項1〜4のいずれかに記載の重合体の回収方法。
- 重合体のラテックスから重合体を回収する装置であって、
少なくとも凝固ゾーンが形成されたバレルと、該バレルの内部に回転駆動自在に配置されたスクリューとを有する押出機で構成してあり、
前記スクリューが、前記凝固ゾーンに対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有し、
該凝固用スクリューブロックの長さをL1(mm)とし、その谷の数をn(個)とし、その外径をD(mm)としたときに、L1/(D×n)で求められる前記凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが0.35以下であり、
前記凝固用スクリューブロックには、前記長さL1に対して、20〜50%の割合でニーディングディスクが含まれており、かつ、
前記凝固ゾーンの下流側に、排水ゾーン、洗浄ゾーン、脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンを順次有していることを特徴とする重合体の回収装置。
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