JP2004010852A - ポリマーアロイの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一分散性に優れたポリマーアロイを効率良く生産する方法及びそのための装置を提供する。
【解決手段】α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン重合体(A)の水性分散液及びアクリル酸エステル重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことによりポリマーアロイを効率よく製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン重合体(A)の水性分散液及びアクリル酸エステル重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことによりポリマーアロイを効率よく製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを効率良く製造する方法及びそれによって得られたポリマーアロイに関する。
【0002】
【従来の技術】
2種以上のポリマーを混合して、それぞれを単独で用いる場合よりも優れた性能を示す高分子材料を得ることが行なわれており、ポリマーアロイとして各種用途に使用されている。例えば、ニトリルゴム(以下、NBRと略す)に塩化ビニル樹脂(以下、PVCと略す)を混合することによってNBRの耐オゾン性、耐屈曲亀裂性などを改良することがなされており、ポリブレンドNBRとして広く知られている。この場合、PVCとNBRとの混合は、双方のラテックスのブレンドにより製造するラテックスブレンド方式と、双方の固体同士をロールや密閉式混合機でブレンドするドライブレンド方式があるが、一般にラテックスブレンド方式の方がPVCが均一に分散し、NBRの耐オゾン性の改良効果に優れる。
【0003】
ラテックスブレンド方式により、ポリブレンドNBRを生産するには、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体のラテックスと塩化ビニル重合体のラテックスとの混合物を、無機塩の水溶液などの凝固剤を入れた凝固タンクに移送して凝固させる。次いでこの凝固操作で得られたクラムを、たとえば遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、さらにバンド乾燥機または押し出し乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥する方法が採用されている。
【0004】
ところで、近年、前記PVCに代えて、塩素を含有しないオレフィン系樹脂やビニル系樹脂を、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体に混合する技術が提案されている。例えば、特開2001−226527号公報には、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体とアクリレート重合体とを含有する耐油性ゴム組成物が開示されており、これらのラテックス同士を混合して凝固、乾燥した後、バンバリーミキサやニーダー等の混練機を用いて混練することにより得られることが記載されている。
【0005】
しかしながら、重合体ラテックス混合物から重合体を回収するために、上記脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程数が多くなるほか、凝固タンク及び付帯設備の装置コストが高くなり、しかも設置スペースが増大する問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を解決し、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを短時間且つ高収率で効率良く製造する方法及び凝固剤残存量が低減された該ポリマーアロイを製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体と(メタ)アクリル酸エステル系重合体とを混合してポリマーアロイを製造するにあたり、それぞれのラテックスを、特定の構造を有する押出機に供給して特定の操作をその内部で連続して行うことにより前記目的が達成できることを見出し、これらの知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、
1. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成るポリマーアロイの製造方法であって、
前記重合体(A)の水性分散液及び前記重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことを特徴とするポリマーアロイの製造方法、
2. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)の水性分散液及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の水性分散液がいずれも乳濁液である上記1記載のポリマーアロイの製造方法、
3. 押出機のバレルの、スクリューの基端側に水性分散液及び凝固剤を供給してクラムスラリーを生成させる凝固工程;前記クラムスラリーをスクリュー先端側に移送しつつセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する脱水工程;回収されたクラムをさらにスクリュー先端側に移送して乾燥する乾燥工程;をこの順に含む上記1又は2記載のポリマーアロイの製造方法、
4. 脱水工程において、バレルに設けられたスリット状の排出口を通してセラム水をバレル外部に排出する上記1乃至3記載のポリマーアロイの製造方法、
5. 凝固工程と脱水工程の間に、洗浄水をバレル内部に供給してクラムを洗浄する洗浄工程を含む上記1乃至4記載のポリマーアロイの製造方法、
6. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成り、凝固剤含有量が700ppm以下であるポリマーアロイ、
がそれぞれ提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)(以降、重合体(A)と略記する場合がある。)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)(以降、重合体(B)と略記する場合がある。)を含有して成るポリマーアロイを製造するための方法であって、重合体(A)の水性分散液及び重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体(A)及び重合体(B)とを含む重合体混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことを特徴とする。
【0010】
本発明に用いるα,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体である。重合体(A)中の、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜50重量%であり、共役ジエン単量体単位の含有量は好ましくは20〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。また、上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.3〜7.0、より好ましくは2.7〜6であり、ムーニー粘度は好ましくは10〜150、好ましくは20〜120である。
【0011】
重合に用いられるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。共役ジエン単量体としては、1,3―ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0012】
重合体(A)は、本発明の効果が損なわれない範囲で、上記単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を必要に応じて共重合してもよい。共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどのビニル系単量体;ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン系単量体;(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの不飽和カルボン酸エステル系単量体;さらにポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどの単量体が挙げられる。重合体(A)中のこれらの単量体単位の含有量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲である。
【0013】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステル単量体(以降、(メタ)アクリル酸エステル単量体と略記する場合がある)単位を主単位とする重合体であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が通常は50重量%以上のものを用いるのが好ましく、70重量%のものがより好ましく、90重量%以上のものが最も好ましい。
【0014】
このような重合体(B)としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体でも共重合体でも、また、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体でもよい。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステルが通常用いられる。そのような単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどが挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、共重合できるものであれば特に限定されない。例えば、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸ビニルエステル以外のビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体及び(メタ)アクリル酸などが挙げられる。芳香族ビニル単量体として、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。ビニルエステル単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエーテル単量体として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
また、共重合可能な単量体は、ハロゲンを実質的に含有しないものが好ましい。重合体(B)のハロゲン含有量は、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
また、重合体(B)の架橋性官能基含有量は、重合体100g当たり0.01当量以下であることが好ましく、0.005当量以下であることがより好ましく、架橋性官能基を含有しないものが最も好ましい。架橋性官能基は、加熱により、樹脂の重合体分子間に架橋を生じる基である。具体例として、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
【0019】
架橋性官能基含有量が上記範囲にあると、重合体(B)が重合体(A)中により細かい粒子となって分散するため、耐オゾン性に優れる架橋物が得られる。
【0020】
重合体(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにおけるポリスチレン換算値で、好ましくは50,000〜4,000,000、より好ましくは100,000〜2,000,000、特に好ましくは200,000〜1,000,000である。重量平均分子量が小さすぎると、耐オゾン性が低下する場合がある。また、重量平均分子量が高すぎると、成形加工性が劣る場合がある。
【0021】
重合体(A)及び重合体(B)は、いずれも、従来公知の方法により得ることができる。
重合体(A)は、上記の、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を、ラジカル重合やアニオン重合することにより得られる。重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を、主にラジカル重合することにより得ることができる。重合形態としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合及び塊状重合など公知の重合法を用いることができる。
ラジカル重合の場合は、重合体(A)の重合には乳化重合法が一般的に用いられ、重合体(B)の重合には乳化重合法または溶液重合法が一般的に用いられる。重合体(A)をアニオン重合する場合には、有機溶媒を用いた溶液重合法が一般的に用いられる。本発明においては、重合反応後の液をそのまま使用できるため、重合体(A)及び重合体(B)いずれも乳化重合法により得るのが好ましい。
【0022】
乳化重合法による重合の場合には、通常の方法を用いればよい。例えば、水と乳化剤の存在下に、重合開始剤により、単量体混合物を重合し、所定の重合転化率で重合停止剤を添加して重合反応を停止する。乳化剤は一般的に用いられる従来公知のものを使用できる。
【0023】
重合開始剤は、特に限定されないが、具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩;などが挙げられる。
【0025】
乳化重合に際して、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0026】
分子量調整剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、ジベンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のスルフィド類、α−メチルスチレン2量体、四塩化炭素等が挙げられる。
【0027】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでも良いが回分式が好ましい。回分式の乳化重合としては、たとえば攪拌機を備えた乳化重合槽に脱イオン水、単量体混合物、乳化剤を投入して混合し、次いで重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて乳化重合を行なう。重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。乳化剤も従来公知の乳化剤を用いることができ、その使用量は特に限定されないが、通常は、単量体100重量部当たり、0.05〜10重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0028】
本発明の方法は、上記重合体(A)の水性分散液と、重合体(B)の水性分散液とを、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体(A)及び重合体(B)とを含有する混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行うことを特徴とする。
【0029】
本発明で得られる重合体(A)及び重合体(B)とを含む重合体混合物は、重合体(A)のマトリックス中に重合体(B)が粒子状で分散しているものが好ましい。この場合に、重合体(B)は、平均粒子径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.02〜5μm、最も好ましくは0.03〜1μm程度で分散していると、耐オゾン性に優れる。本発明によれば、水分散体に乳濁液を用いると重合体(B)の平均粒子径を0.1μm以下とすることができる。また、重合体混合物中の重合体(B)からなる粒子の含有量は10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%である。重合体(B)の含有量が多すぎるとゴム弾性が失われ、逆に少なすぎると耐オゾン性が劣る。
【0030】
本発明に用いる水性分散液は、重合体(A)又は重合体(B)が1mm以下の粒子となって水中に分散しているものをいう。具体的には、乳濁液や懸濁液などが挙げられる。
乳濁液は、重合体粒子が水中に分散して乳化状態になっているものであり、重合体の平均粒子径が数十μm以下、好ましくは1μm以下のものも使用できる。乳濁液は乳化重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液、溶液重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の溶液を転相法により水性分散液としたものなどを用いることができる。本発明に用いる乳濁液は、乳化剤を含有しているのが好ましい。乳化剤としては従来公知のものが使用可能であり、特に制限されない。例えば、アニオン型(高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族カルボン酸エステルのスルホン酸塩など)、ノニオン型(ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型など)および両性型界面活性剤(アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩を、又カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩を構成する)などが使用できる。懸濁液は、重合体(A)又は重合体(B)の粒子が水中に機械的に分散しているものである。懸濁液は、懸濁重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液、固体状の重合体(A)又は重合体(B)を粉砕して水に分散させたものなどを用いることができる。
【0031】
本発明においては、重合反応後に、直接凝固、脱水及び乾燥が行えることから、乳化重合により得られた乳濁液又は懸濁重合により得られた懸濁液を用いるのが最も好ましい。
【0032】
本発明においては、重合体(A)及び重合体(B)の平均粒子径が、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の分散液を用いる。平均粒子径が大きすぎると重合体混合物の耐オゾン性が低下する。重合体(A)及び重合体(B)は、上記のように乳化重合や懸濁重合する場合には、重合条件によってその粒子径を制御できる。また、固体状態の重合体(A)及び重合体(B)を粉砕して用いる場合には、ジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機、ロールミル、ハンマーミル、インペラーブレーカーなどの粉砕装置により粉砕し、得られた粉砕物を風力分級装置、ふるい分級装置などの分級装置に導入して分級することにより、粒子径を制御できる。
【0033】
本発明の方法は、
(1)押出機のバレルの、スクリューの基端側に上記水性分散液及び凝固剤を供給してクラムスラリーを生成させる凝固工程;
(2)前記クラムスラリーをスクリュー先端側に移送しつつセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する脱水工程;
(3)回収されたクラムをさらにスクリュー先端側に移送して乾燥する乾燥工程;
をこの順で含み、これらの工程における操作を全てバレル内部で行う。
【0034】
本発明に用いる押出機は、内部にスクリューが回転駆動自在に設置されたバレルを有するものである。スクリューはバレル全長に亘り設置されているのが好ましい。
【0035】
凝固工程においては、重合体(A)の水性分散液と重合体(B)の水性分散液とを上記押出機バレルのスクリュー基端側に供給する。水性分散液は、それぞれを押出機のバレル内部に別々に供給しても良く、ラインミキサーや、別途設置した混合タンクで予め混合してから供給しても良い。押出機に供給する重合体の固形分濃度は、通常5〜50重量%程度、好ましくは10〜40重量%程度である。
次いでこの混合液に、凝固剤を接触させて、平均粒子径が数ミリ以上のクラムが凝固剤を含む水中に分散したクラムスラリーを生成させる。凝固剤は、ラテックスの凝固剤として一般的に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、無機酸類(硫酸、塩酸など)、有機酸類(酢酸など)、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなど)、およびこれらの混合物などが挙げられる。用いる凝固剤の種類及び量は、水性分散体に使用されている乳化剤の種類および量などにより適宜決定すればよい。中でも、凝固剤としては、無機塩類が好ましく、より好ましくは塩化カルシウムである。上記凝固剤は、通常は、これらの化合物の水溶液を用いる。
凝固剤は、重合体(A)の水性分散液と重合体(B)の水性分散液とがバレル内部で均一に混合された後にバレル内部に配管等を通して一括供給または一定時間をかけて連続供給するか、前記のいずれかの水性分散液と予め均一に混合させてからバレル内部に供給することができる。
【0036】
凝固は、前記水性分散液混合液と凝固剤とをスクリューの回転により接触、攪拌させて行うため、攪拌効率に優れるスクリューを用いるのが好ましい。具体的には、スクリューのフライト先端間の距離が比較的短いものが好ましい。より詳細には、スクリューの軸方向の長さをL1(mm)とし、スクリュー軸を含む平面に投影されたフライト間に形成される谷の数をn(個)とし、前記スクリューの外形をD(mm)とした時に、H=L1/(D×n)で求められる前記スクリューのピッチ指数Hが比較的小さいものを用いるのが好ましく、0.8以下であるものがより好ましく、0.5以下であるものがさらに好ましい。本発明においては、バレル内部の凝固を行う領域に対応するスクリューの部分が上記のようなスクリューのブロックからなるものであればよい。
【0037】
さらに本発明においては、凝固時の攪拌効率を上げるために、凝固を行う領域に対応するスクリューブロック長さの10〜80%がニーディングディスクで構成されているスクリューを用いることが、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量を低減出来るため、好ましい。
【0038】
本発明においては、凝固工程で生成したクラムに含まれる凝固剤の残留量を低減させる目的で、クラムスラリー中の、凝固剤を含む水(セラム水という)をバレルに設けられた排出口からバレル外部に排出するセラム水排出工程、及び、セラム水排工程後に、バレル内部に洗浄水を供給し、クラムを洗浄する洗浄工程を、凝固工程と脱水工程の間に含むのが好ましい。
【0039】
セラム水排出工程において、クラムスラリーからセラム水をバレル外部に強制的に排出する方法としては、凝固領域と脱水領域の間のバレル部分にスリット等を設けて水排出口とし、スクリューの回転による遠心力等により水をスリットを通してバレル外部に排出する方法などを用いるのが好ましい。これにより、クラムスラリーから、凝固剤の大部分を効率的に除去できる。
【0040】
洗浄工程において、バレル内部に洗浄水を供給する方法としては、バレルの、凝固領域と脱水領域の間で前記スリット形成領域よりも脱水領域側に、洗浄水の供給配管を導入して洗浄水をバレル内部に注入する方法などを用いるのが好ましい。洗浄工程により、クラムに含まれる凝固剤が洗浄水中に移行し、凝固剤含有量が低減されたクラムを含むクラムスラリーが得られる。洗浄水は凝固剤を溶解してセラム水となる。
その結果、最終的に回収される重合体混合物に含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができる。本発明の方法によれば一般に凝固剤残留量は1000ppm以下、好ましくは700ppm以下に低減できる。回収された重合体に1000ppmを越える凝固剤が残留していると、これを用いた架橋物の物性が低下したり、接触物を腐食し易くなる。本発明においては、スクリューの回転数、洗浄水量等の条件を変化させることにより、重合体に残留する凝固剤の量を所望の値にコントロールすることも可能である。
【0041】
本発明においては、スクリューを二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることが好ましい。このようなスクリューを用いることにより、上記の凝固、排水、洗浄工程を経る間に、スクリュー自体も効率よく洗浄できるため、凝固タンクにより重合体の凝固を行う従来の凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することも出来る。
【0042】
脱水工程は、クラムスラリーをスクリュー先端に移送しつつ、バレルに設けられた排出口からセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する工程である。脱水工程の前に上記セラム水排出工程及び洗浄工程を含む場合には、脱水工程でバレル外部に排出されるセラム水は、洗浄により凝固剤濃度が低減されたものである。セラム水は、バレルに設けられたスリットを通してスクリューの遠心力によりバレル外部に強制排出されるのが好ましい。この場合、バレルには、上記排出工程で高濃度の凝固剤を含むセラム水を排出するスリットと、脱水工程で凝固剤濃度が低減されたセラム水を排出するスリットとが別々に設けられているのが好ましい。
【0043】
乾燥工程は、脱水工程で回収された含水状態のクラムを、さらにスクリュー先端側に移送して乾燥する工程である。乾燥は、クラムの水分を除去する操作であり、クラムを加熱する方法、バレル内部を減圧状態にする方法及びこれらを組み合わせた方法などにより行うことができる。
【0044】
尚、本発明の方法においては、ポリマーアロイに、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を配合することができる。添加剤をポリマーアロイ中に均一に分散させるためには、水性分散液や水溶液などにして、重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液に予め混合し、これらとともにバレル内部に供給するのが好ましい。また、凝固工程や乾燥工程中に添加することもできる。
【0045】
以下、本発明の方法を、一実施態様を例にあげて具体的に説明する。
【0046】
図1は本発明で使用する押出機の一実施形態を示す概略図、図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図、図3は図1のIII―III線と図2のIII―III線に沿う断面図、図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【0047】
図1に示すように、本発明で使用する押出機2は、12個のバレルブロック41〜52で構成されるバレル4を有する。バレルの内部には、本実施形態では凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106、および乾燥ゾーン108が、バレル4のスクリュー基端側(上流側)からスクリュー先端側(下流側)にかけて順次形成されている。また、以下の説明において、ラテックス混合物とは、重合体(A)のラテックスと、重合体(B)のラテックスとの混合物をいう。なお、重合体(A)のラテックスと、重合体(B)のラテックスは、予め混合したものを押出機2に供給してもよく、別々に押出機2に供給して凝固ゾーンで混合しても良い。
【0048】
凝固ゾーン100は、ラテックス混合物と凝固剤とを接触させて重合体を凝固させ、クラム状の重合体のスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、重合体の凝固後に生じる液体(セラム水という)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄ゾーン104は、前記含水状態のクラムを洗浄する領域である。脱水ゾーン106は、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン108は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0049】
本実施形態では、バレルブロック41、42の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック43の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック44〜47の内部が洗浄ゾーン104に対応し、バレルブロック48、49の内部が脱水ゾーン106に対応し、バレルブロック50〜52の内部が乾燥ゾーン108に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0050】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック41には、重合体(A)のラテックス、重合体(B)のラテックスまたはスラリーと凝固剤を受け入れるフィード口412が形成されている。排水ゾーン102を構成するバレルブロック43には凝固後の重合体のクラムスラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット432が形成されている。洗浄ゾーン104の一部を構成するバレルブロック44には、洗浄水を受け入れる洗浄水フィード口442が形成されており、バレルブロック47には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット472が形成されている。脱水ゾーン106の一部を構成するバレルブロック49には洗浄後のクラムから除かれた脱水排水を外部へ排出する脱水スリット492が形成されている。乾燥ゾーン108の一部を構成するバレルブロック51には、脱気のためのベント口512が形成されている。
【0051】
バレル4の内部には、図2に示すようなスクリュー7が配置されている。スクリュー7の基端には、これを駆動するモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー7は回転駆動自在に保持される。スクリュー7の形状は、特に限定されないが、好ましくは多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組み合わせて構成することが出来る。
【0052】
本実施形態では、スクリュー7は、バレル4の内部に形成された上述した各ゾーン100〜108に対応する領域に形成される各スクリューブロックを有する。各スクリューブロックの構成は次の通りである。
【0053】
図2および図3に示すように、本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷7B(図4参照)の数をn(個)とし、スクリュー7の外径をD(mm)としたときに、H=L1/(D×n)で求められる凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下である。
【0054】
凝固用スクリューブロックの谷の数は、該凝固用スクリューブロックを上から見てカウントしていけばよい。ニーディングディスク8(詳細は後述する)の谷の数をカウントする際には、位相をずらした板同士の間もカウントすることとする(図4参照)。
【0055】
本実施形態では、凝固ゾーン100に対応する領域に形成される凝固用スクリューブロックには、特に凝固を促進させる観点からニーディングディスク8を含めてある。
【0056】
ニーディングディスク8は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と(図3では擬似楕円形)、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度(図3では30度)づつずらしながら、複数枚(図3では6枚)積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。ここで擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル4の内壁面4aに各該ディスクの端部が所定(1〜5mm程度の)のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形又は切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形又は三角糸巻形としても良い。
【0057】
本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1に対するニーディングディスク8の占める長さの割合は、好ましくは10〜90%、より好ましくは20〜80%、特に好ましくは30〜60%である。
【0058】
排水ゾーン102から乾燥ゾーン108までに対応する領域に形成される排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロック、乾燥用スクリューブロックは、例えば通常の正送りスクリューで構成すればよい。なお、必要に応じて逆送りスクリューやニーディングディスクを含ませても良い。
【0059】
図3に示すように、本実施形態ではこのようなスクリュー7を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。すなわち、2本のスクリュー7,7では、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせ、一方のスクリュー7の谷部7Bを他方のスクリュー7の山部7Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。なお、押出機のスクリュー構成は二軸に限定されず、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。ただし凝固ゾーン100の混合性の観点からは、本実施形態の如き二軸噛合型とすることが好ましい。2本のスクリュー7の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0060】
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック52の下流側には、バレル4内で凝固・脱水・乾燥処理された重合体が所定形状に押し出されるダイ6が接続されている。ダイ6には、カッティング機構(図示省略)が取り付けてあり、ダイから押し出されるストランド状の重合体を、適当な大きさに切断し、所定状のペレットとする。カッティング機構としては、押し出されたストランドをホットカット装置により直ちに切断するか、あるいは冷却槽で冷却してカッターで切断する等の機構を採用すればよい。
【0061】
次に、押出機2を用いたポリマーアロイの製造方法を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
ブタジエン、アクリロニトリルを乳化重合した後、残留単量体を除去してアクリロニトリル単位含有量10〜80重量%のNBRのラテックスを得る。また、メタアクリル酸メチルを乳化重合した後、残留単量体を除去してメチルメタアクリレート重合体(以降PMMAと略記する場合がある)ラテックスを得る。上記NBRラテックス、PMMAラテックス及び塩化カルシウム(凝固剤)水溶液を、それぞれのフィード流量比を3:1:0.5にて、フィード口412から凝固ゾーン100に導入する。
【0062】
NBRのラテックス、PMMAラテックス及び凝固剤水溶液は、予め混合してからフィード口412に供給してもよく、それぞれ別々にフィード口412に供給しても良い。
【0063】
凝固剤は、必ずしもフィード口412から凝固ゾーン100に直接供給される必要はなく、NBRのラテックスまたはPMMAラテックスと予め混合した後に供給しても良い。
【0064】
凝固ゾーン100に導入されたNBRのラテックス、PMMAラテックス及び凝固剤は、スクリュー7の回転により接触させられ、NBR及びPMMAは凝固するとともに均一に混合されて直径約1〜30mm程度のクラムとなって水中に分散し、クラム濃度が20重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)を形成する。この凝固ゾーンにおいて、スクリューの回転により激しく混合されるため、従来の凝固タンク方式に比べて、NBRとPMMAとがより均一に分散したNBR/PMMAアロイのクラムスラリーが得られる。このクラムスラリーには、凝固剤(残留凝固剤)が0.5重量%程度以上の高濃度で含有される。
【0065】
凝固ゾーン100で形成されたクラムスラリーは、スクリュー7の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック43に設けられたスリット432から前記クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、凝固剤濃度が0.2重量%程度以下に低減され、4〜40重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0066】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー7の回転により洗浄ゾーン104に送られる。洗浄ゾーン104では、バレルブロック44に設けられた洗浄水フィード口442から内部に洗浄水が導入され、上記クラムは洗浄され、洗浄済みの排水はバレルブロック47に設けられたスリット472から排出される。そして、凝固剤濃度が0.07重量%程度以下にさらに低減され、3〜35重量%程度の水分を含有するクラムが得られる。
【0067】
洗浄ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー7の回転により脱水ゾーン106に送られる。脱水ゾーン106では、バレルブロック49に形成されたスリット492より水分を排出して、水分量が1〜10重量%程度に調整されたクラムが得られる。
【0068】
脱水ゾーン106で得られたクラムは、スクリュー7の回転により乾燥ゾーン108に送られる。乾燥ゾーン108に送られたクラムは、スクリュー7の回転により可塑化混錬されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。前記融体がバレルブロック51に設けられたベント口512に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン108内部の温度は120〜180℃程度であり、その圧力は1000〜5000KPa程度である。
【0069】
乾燥ゾーン108を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー7により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量は0.5重量%以下)でダイ6に導入され、ここで、たとえばストランド状で排出された後、ペレタイザー(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品(ペレット)化される。
【0070】
本実施形態に係る押出機2では、該押出機2の内部に配置されるスクリュー7,7の凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.5以下にし、しかも凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1と外径Dとの比(L1/D)を好ましくは12以下とする。このため、スクリュー7の軸方向の長さをL(mm)としたときの該長さLと外径Dとの比(L/D)を60以下と小さくしても、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる。特に、凝固用スクリューブロックにニーディングディスク8を所定割合で含ませることにより、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量をより一層少なくすることが可能である。
【0071】
本実施形態では、スクリュー7,7を二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることで、セルフクリーニング性を付与でき、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することも出来る。本実施形態では、凝固ゾーン100、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108を単一のバレル4内に形成してあるので、省スペース・省コストの面からも有利である。
【0072】
従来の凝固タンクを用いる方法においては、凝固、脱水及び乾燥後においてもバンバリー等で熱処理を行なわないと、耐オゾン性、耐油性の十分な向上効果は望めない。これに対し本発明によれば、押出機による処理中の温度・滞留時間をコントロールすることにより、前記熱処理工程を省略することも可能である。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得る。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。また、特に記載しない限り、部および%は、重量基準のものである。
【0075】
なお、各測定値は下記のように測定した。
(1) ムーニー粘度
JIS K6383に従い、重合体約40グラムを用いて100℃で測定した。
(2) ニトリル基含有量
JIS K6384に従い、ケルダール法によって共重合体中の窒素含量を測定し、計算によりニトリル基含有量を求めた(単位:%)。
(3) クラム中の凝固剤残留量
電位差滴定法により測定した。
【0076】
(重合例1)
重合反応槽に脱イオン水270部、アクリロニトリル45部、ブタジエン55部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、硫酸鉄0.1部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を入れ、さらに分子量調節剤としてドデシルメルカプタン0.57部を加えて均一になるように十分攪拌しながら、10℃に維持し、約8時間後、重合転化率が90%になった時点で、硫酸ヒドロキシルアミン0.1部と水酸化ナトリウム0.1部とを加えて反応を停止させた。次に、水蒸気を吹き込むことにより残留単量体を除去し、NBR(ムーニー粘度=80、アクリロニトリル含有量=42%)のラテックスを得た。得られたラテックスを水で希釈して固形分濃度22%とした。
【0077】
(重合例2)
重合反応槽にイオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)0.1部、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.3部、メタクリル酸メチル100部を入れ、攪拌しながら、温度80℃で12時間反応させて重合を停止した。得られた重合反応液の一部をサンプリングして、固形分量を測定した結果、重合転化率は98.3%であり、固形分濃度は約39%であった。この重合反応液に水蒸気を吹き込むことにより残留単量体を加熱、除去し、PMMAのラテックスを得た。このPMMAラテックスを水で希釈して固形分濃度29%とした。
【0078】
(可塑剤乳濁液調製例)
攪拌槽にイオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)0.1部、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート50部を入れ、10分間、強く攪拌し、可塑剤濃度50%の乳濁液を得た。
【0079】
(実施例1)
本実施例では、図1に示すように、バレル4内に2本のスクリュー(全長1920mm、外径D=40mm、L/D=48)7,7を平行に設け、これらのスクリュー7,7を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機2を用いた。
【0080】
スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された凝固ゾーン100に対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有しており、本実施例ではこの凝固用スクリューブロックを、4枚のニーディングディスク8と2条のフルフライトとを組み合わせて構成した。凝固用スクリューブロックの長さの30%はニーディングディスク8で構成されていた。凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1は320mm、その外径Dは40mm、その谷の数は28個であった。したがって、凝固用スクリューブロックのピッチ指数H=L1/(D×n)は0.28であり、(L1/D)は8であった。
【0081】
また、スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108にそれぞれ対応する領域に形成された排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロックおよび乾燥用スクリューブロックを、いずれも2条のフルフライトおよびニーディングディスクで構成した。
【0082】
また、スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108にそれぞれ対応する領域に形成された排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロックおよび乾燥用スクリューブロックを、いずれも2条のフルフライトおよびニーディングディスクで構成した。
【0083】
このような構成の押出機2のフィード口412に、重合例1により得られたNBRのラテックス(固形分22重量%)を300kg/hrのレートで、重合例2により得られたPMMAのラテックス(固形分29重量%)を100kg/hrのレートで供給した。その際、凝固剤としての3重量%の塩化カルシウム水溶液を50kg/hrのレートで供給した。そして、洗浄ゾーン104に洗浄水を400kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数280rpmで重合体の回収を行なった。
【0084】
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が93.5kg/hrのレートで回収された(回収率98.4%)。回収された重合体の含水率は0.2重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は330ppmであり、製品として満足できる性状であった。また、製品を100kg得るのに要した時間は65分であり、従来の凝固タンクを用いた方法よりも短時間に高回収率で重合体混合物を得ることができた。
【0085】
(実施例2)
攪拌機を備えた予備混合槽に重合例1により得られたNBRのラテックスを300kg/hrのレートで、上記の可塑剤乳濁液(可塑剤濃度50重量%)を54kg/hrのレートで供給しNBRラテックスに可塑剤を連続的に混合した。実施例1で用いた押出し機2のフィード口のこの混合液を354kg/hrのレートで、重合例2により得られたPMMAラテックスを100kg/hrのレートで供給した。その際、凝固剤として5重量%の塩化カルシウム水溶液を50kg/hrのレートで供給した。そして、洗浄ゾーン104に洗浄水を450kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数300rpmで重合体の回収を行なった。
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が121kg/hrのレートで回収された(回収率99.2%)。回収された重合体の含水率は0.2重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は450ppmであり、製品として満足できる性状であった。また、製品を100kg得るのに要した時間は55分であり、実施例1同様に短時間に高収率で重合体混合物を得ることができた。
【0086】
(比較例1)
攪拌機を備えた凝固タンクに、凝固剤としての5重量%の塩化カルシウム水溶液を50部入れ、攪拌状態にした。次いで、重合例1により得られたNBRのラテックス330部と重合例2により得られたPMMAラテックス115部を別途設置した攪拌機付きタンクで混合し、混合物を凝固タンクへ445kg/hrの速度で全量供給し、凝固操作を行なった。所要時間は65分であった。
【0087】
凝固終了後、生成したクラムを抜き出し、振動スクリーンで水切り及び洗浄を行い、含水率55重量%のクラム183部を得た。所要時間は40分であった。この含水クラムを、押出式の脱水・乾燥機に183kg/hrのレート供給し、乾燥した重合体100部を得た。所要時間は65分であり、重合体の回収率は95.2%であった。
【0088】
得られた重合体の含水率は0.4重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は800ppmであった。製品を100部得るのに要した時間は、合計180分と長時間を要し、かつ、回収率も実施例1及び2よりも低かった。
さらに、この方法は、凝固タンク、混合タンク、振動スクリーン、押出式の脱水・乾燥機といった多数の機器の設置が必要であり、その設置のために広大な敷地面積を要した。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを短時間且つ高収率で効率良く製造する方法及び凝固剤残存量が低減された該ポリマーアロイを製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に使用する押出機を示す概略図である。
【図2】図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【図3】図3は図1のIII―III線と図2のIII―III線に沿う断面図である。
【図4】図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【符号の説明】
2… 押出機
4… バレル
4a… 内壁面
41〜52… バレルブロック
432,472… 排水スリット
492… 脱水スリット
512… ベント口
6… ダイ
7… スクリュー
7A… 山部
7B… 谷部
8… ニーディングディスク
【発明の属する技術分野】
本発明は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを効率良く製造する方法及びそれによって得られたポリマーアロイに関する。
【0002】
【従来の技術】
2種以上のポリマーを混合して、それぞれを単独で用いる場合よりも優れた性能を示す高分子材料を得ることが行なわれており、ポリマーアロイとして各種用途に使用されている。例えば、ニトリルゴム(以下、NBRと略す)に塩化ビニル樹脂(以下、PVCと略す)を混合することによってNBRの耐オゾン性、耐屈曲亀裂性などを改良することがなされており、ポリブレンドNBRとして広く知られている。この場合、PVCとNBRとの混合は、双方のラテックスのブレンドにより製造するラテックスブレンド方式と、双方の固体同士をロールや密閉式混合機でブレンドするドライブレンド方式があるが、一般にラテックスブレンド方式の方がPVCが均一に分散し、NBRの耐オゾン性の改良効果に優れる。
【0003】
ラテックスブレンド方式により、ポリブレンドNBRを生産するには、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体のラテックスと塩化ビニル重合体のラテックスとの混合物を、無機塩の水溶液などの凝固剤を入れた凝固タンクに移送して凝固させる。次いでこの凝固操作で得られたクラムを、たとえば遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、さらにバンド乾燥機または押し出し乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥する方法が採用されている。
【0004】
ところで、近年、前記PVCに代えて、塩素を含有しないオレフィン系樹脂やビニル系樹脂を、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体に混合する技術が提案されている。例えば、特開2001−226527号公報には、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体とアクリレート重合体とを含有する耐油性ゴム組成物が開示されており、これらのラテックス同士を混合して凝固、乾燥した後、バンバリーミキサやニーダー等の混練機を用いて混練することにより得られることが記載されている。
【0005】
しかしながら、重合体ラテックス混合物から重合体を回収するために、上記脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程数が多くなるほか、凝固タンク及び付帯設備の装置コストが高くなり、しかも設置スペースが増大する問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を解決し、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを短時間且つ高収率で効率良く製造する方法及び凝固剤残存量が低減された該ポリマーアロイを製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体と(メタ)アクリル酸エステル系重合体とを混合してポリマーアロイを製造するにあたり、それぞれのラテックスを、特定の構造を有する押出機に供給して特定の操作をその内部で連続して行うことにより前記目的が達成できることを見出し、これらの知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、
1. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成るポリマーアロイの製造方法であって、
前記重合体(A)の水性分散液及び前記重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことを特徴とするポリマーアロイの製造方法、
2. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)の水性分散液及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の水性分散液がいずれも乳濁液である上記1記載のポリマーアロイの製造方法、
3. 押出機のバレルの、スクリューの基端側に水性分散液及び凝固剤を供給してクラムスラリーを生成させる凝固工程;前記クラムスラリーをスクリュー先端側に移送しつつセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する脱水工程;回収されたクラムをさらにスクリュー先端側に移送して乾燥する乾燥工程;をこの順に含む上記1又は2記載のポリマーアロイの製造方法、
4. 脱水工程において、バレルに設けられたスリット状の排出口を通してセラム水をバレル外部に排出する上記1乃至3記載のポリマーアロイの製造方法、
5. 凝固工程と脱水工程の間に、洗浄水をバレル内部に供給してクラムを洗浄する洗浄工程を含む上記1乃至4記載のポリマーアロイの製造方法、
6. α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成り、凝固剤含有量が700ppm以下であるポリマーアロイ、
がそれぞれ提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)(以降、重合体(A)と略記する場合がある。)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)(以降、重合体(B)と略記する場合がある。)を含有して成るポリマーアロイを製造するための方法であって、重合体(A)の水性分散液及び重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体(A)及び重合体(B)とを含む重合体混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことを特徴とする。
【0010】
本発明に用いるα,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体である。重合体(A)中の、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜50重量%であり、共役ジエン単量体単位の含有量は好ましくは20〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。また、上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.3〜7.0、より好ましくは2.7〜6であり、ムーニー粘度は好ましくは10〜150、好ましくは20〜120である。
【0011】
重合に用いられるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。共役ジエン単量体としては、1,3―ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0012】
重合体(A)は、本発明の効果が損なわれない範囲で、上記単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を必要に応じて共重合してもよい。共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどのビニル系単量体;ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン系単量体;(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの不飽和カルボン酸エステル系単量体;さらにポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどの単量体が挙げられる。重合体(A)中のこれらの単量体単位の含有量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲である。
【0013】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステル単量体(以降、(メタ)アクリル酸エステル単量体と略記する場合がある)単位を主単位とする重合体であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が通常は50重量%以上のものを用いるのが好ましく、70重量%のものがより好ましく、90重量%以上のものが最も好ましい。
【0014】
このような重合体(B)としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体でも共重合体でも、また、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体でもよい。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステルが通常用いられる。そのような単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどが挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、共重合できるものであれば特に限定されない。例えば、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸ビニルエステル以外のビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体及び(メタ)アクリル酸などが挙げられる。芳香族ビニル単量体として、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。ビニルエステル単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエーテル単量体として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
また、共重合可能な単量体は、ハロゲンを実質的に含有しないものが好ましい。重合体(B)のハロゲン含有量は、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
また、重合体(B)の架橋性官能基含有量は、重合体100g当たり0.01当量以下であることが好ましく、0.005当量以下であることがより好ましく、架橋性官能基を含有しないものが最も好ましい。架橋性官能基は、加熱により、樹脂の重合体分子間に架橋を生じる基である。具体例として、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
【0019】
架橋性官能基含有量が上記範囲にあると、重合体(B)が重合体(A)中により細かい粒子となって分散するため、耐オゾン性に優れる架橋物が得られる。
【0020】
重合体(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにおけるポリスチレン換算値で、好ましくは50,000〜4,000,000、より好ましくは100,000〜2,000,000、特に好ましくは200,000〜1,000,000である。重量平均分子量が小さすぎると、耐オゾン性が低下する場合がある。また、重量平均分子量が高すぎると、成形加工性が劣る場合がある。
【0021】
重合体(A)及び重合体(B)は、いずれも、従来公知の方法により得ることができる。
重合体(A)は、上記の、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を、ラジカル重合やアニオン重合することにより得られる。重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を、主にラジカル重合することにより得ることができる。重合形態としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合及び塊状重合など公知の重合法を用いることができる。
ラジカル重合の場合は、重合体(A)の重合には乳化重合法が一般的に用いられ、重合体(B)の重合には乳化重合法または溶液重合法が一般的に用いられる。重合体(A)をアニオン重合する場合には、有機溶媒を用いた溶液重合法が一般的に用いられる。本発明においては、重合反応後の液をそのまま使用できるため、重合体(A)及び重合体(B)いずれも乳化重合法により得るのが好ましい。
【0022】
乳化重合法による重合の場合には、通常の方法を用いればよい。例えば、水と乳化剤の存在下に、重合開始剤により、単量体混合物を重合し、所定の重合転化率で重合停止剤を添加して重合反応を停止する。乳化剤は一般的に用いられる従来公知のものを使用できる。
【0023】
重合開始剤は、特に限定されないが、具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩;などが挙げられる。
【0025】
乳化重合に際して、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0026】
分子量調整剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、ジベンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のスルフィド類、α−メチルスチレン2量体、四塩化炭素等が挙げられる。
【0027】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでも良いが回分式が好ましい。回分式の乳化重合としては、たとえば攪拌機を備えた乳化重合槽に脱イオン水、単量体混合物、乳化剤を投入して混合し、次いで重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて乳化重合を行なう。重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。乳化剤も従来公知の乳化剤を用いることができ、その使用量は特に限定されないが、通常は、単量体100重量部当たり、0.05〜10重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0028】
本発明の方法は、上記重合体(A)の水性分散液と、重合体(B)の水性分散液とを、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体(A)及び重合体(B)とを含有する混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行うことを特徴とする。
【0029】
本発明で得られる重合体(A)及び重合体(B)とを含む重合体混合物は、重合体(A)のマトリックス中に重合体(B)が粒子状で分散しているものが好ましい。この場合に、重合体(B)は、平均粒子径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.02〜5μm、最も好ましくは0.03〜1μm程度で分散していると、耐オゾン性に優れる。本発明によれば、水分散体に乳濁液を用いると重合体(B)の平均粒子径を0.1μm以下とすることができる。また、重合体混合物中の重合体(B)からなる粒子の含有量は10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%である。重合体(B)の含有量が多すぎるとゴム弾性が失われ、逆に少なすぎると耐オゾン性が劣る。
【0030】
本発明に用いる水性分散液は、重合体(A)又は重合体(B)が1mm以下の粒子となって水中に分散しているものをいう。具体的には、乳濁液や懸濁液などが挙げられる。
乳濁液は、重合体粒子が水中に分散して乳化状態になっているものであり、重合体の平均粒子径が数十μm以下、好ましくは1μm以下のものも使用できる。乳濁液は乳化重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液、溶液重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の溶液を転相法により水性分散液としたものなどを用いることができる。本発明に用いる乳濁液は、乳化剤を含有しているのが好ましい。乳化剤としては従来公知のものが使用可能であり、特に制限されない。例えば、アニオン型(高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族カルボン酸エステルのスルホン酸塩など)、ノニオン型(ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型など)および両性型界面活性剤(アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩を、又カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩を構成する)などが使用できる。懸濁液は、重合体(A)又は重合体(B)の粒子が水中に機械的に分散しているものである。懸濁液は、懸濁重合により得られる重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液、固体状の重合体(A)又は重合体(B)を粉砕して水に分散させたものなどを用いることができる。
【0031】
本発明においては、重合反応後に、直接凝固、脱水及び乾燥が行えることから、乳化重合により得られた乳濁液又は懸濁重合により得られた懸濁液を用いるのが最も好ましい。
【0032】
本発明においては、重合体(A)及び重合体(B)の平均粒子径が、好ましくは10μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の分散液を用いる。平均粒子径が大きすぎると重合体混合物の耐オゾン性が低下する。重合体(A)及び重合体(B)は、上記のように乳化重合や懸濁重合する場合には、重合条件によってその粒子径を制御できる。また、固体状態の重合体(A)及び重合体(B)を粉砕して用いる場合には、ジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機、ロールミル、ハンマーミル、インペラーブレーカーなどの粉砕装置により粉砕し、得られた粉砕物を風力分級装置、ふるい分級装置などの分級装置に導入して分級することにより、粒子径を制御できる。
【0033】
本発明の方法は、
(1)押出機のバレルの、スクリューの基端側に上記水性分散液及び凝固剤を供給してクラムスラリーを生成させる凝固工程;
(2)前記クラムスラリーをスクリュー先端側に移送しつつセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する脱水工程;
(3)回収されたクラムをさらにスクリュー先端側に移送して乾燥する乾燥工程;
をこの順で含み、これらの工程における操作を全てバレル内部で行う。
【0034】
本発明に用いる押出機は、内部にスクリューが回転駆動自在に設置されたバレルを有するものである。スクリューはバレル全長に亘り設置されているのが好ましい。
【0035】
凝固工程においては、重合体(A)の水性分散液と重合体(B)の水性分散液とを上記押出機バレルのスクリュー基端側に供給する。水性分散液は、それぞれを押出機のバレル内部に別々に供給しても良く、ラインミキサーや、別途設置した混合タンクで予め混合してから供給しても良い。押出機に供給する重合体の固形分濃度は、通常5〜50重量%程度、好ましくは10〜40重量%程度である。
次いでこの混合液に、凝固剤を接触させて、平均粒子径が数ミリ以上のクラムが凝固剤を含む水中に分散したクラムスラリーを生成させる。凝固剤は、ラテックスの凝固剤として一般的に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、無機酸類(硫酸、塩酸など)、有機酸類(酢酸など)、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなど)、およびこれらの混合物などが挙げられる。用いる凝固剤の種類及び量は、水性分散体に使用されている乳化剤の種類および量などにより適宜決定すればよい。中でも、凝固剤としては、無機塩類が好ましく、より好ましくは塩化カルシウムである。上記凝固剤は、通常は、これらの化合物の水溶液を用いる。
凝固剤は、重合体(A)の水性分散液と重合体(B)の水性分散液とがバレル内部で均一に混合された後にバレル内部に配管等を通して一括供給または一定時間をかけて連続供給するか、前記のいずれかの水性分散液と予め均一に混合させてからバレル内部に供給することができる。
【0036】
凝固は、前記水性分散液混合液と凝固剤とをスクリューの回転により接触、攪拌させて行うため、攪拌効率に優れるスクリューを用いるのが好ましい。具体的には、スクリューのフライト先端間の距離が比較的短いものが好ましい。より詳細には、スクリューの軸方向の長さをL1(mm)とし、スクリュー軸を含む平面に投影されたフライト間に形成される谷の数をn(個)とし、前記スクリューの外形をD(mm)とした時に、H=L1/(D×n)で求められる前記スクリューのピッチ指数Hが比較的小さいものを用いるのが好ましく、0.8以下であるものがより好ましく、0.5以下であるものがさらに好ましい。本発明においては、バレル内部の凝固を行う領域に対応するスクリューの部分が上記のようなスクリューのブロックからなるものであればよい。
【0037】
さらに本発明においては、凝固時の攪拌効率を上げるために、凝固を行う領域に対応するスクリューブロック長さの10〜80%がニーディングディスクで構成されているスクリューを用いることが、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量を低減出来るため、好ましい。
【0038】
本発明においては、凝固工程で生成したクラムに含まれる凝固剤の残留量を低減させる目的で、クラムスラリー中の、凝固剤を含む水(セラム水という)をバレルに設けられた排出口からバレル外部に排出するセラム水排出工程、及び、セラム水排工程後に、バレル内部に洗浄水を供給し、クラムを洗浄する洗浄工程を、凝固工程と脱水工程の間に含むのが好ましい。
【0039】
セラム水排出工程において、クラムスラリーからセラム水をバレル外部に強制的に排出する方法としては、凝固領域と脱水領域の間のバレル部分にスリット等を設けて水排出口とし、スクリューの回転による遠心力等により水をスリットを通してバレル外部に排出する方法などを用いるのが好ましい。これにより、クラムスラリーから、凝固剤の大部分を効率的に除去できる。
【0040】
洗浄工程において、バレル内部に洗浄水を供給する方法としては、バレルの、凝固領域と脱水領域の間で前記スリット形成領域よりも脱水領域側に、洗浄水の供給配管を導入して洗浄水をバレル内部に注入する方法などを用いるのが好ましい。洗浄工程により、クラムに含まれる凝固剤が洗浄水中に移行し、凝固剤含有量が低減されたクラムを含むクラムスラリーが得られる。洗浄水は凝固剤を溶解してセラム水となる。
その結果、最終的に回収される重合体混合物に含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができる。本発明の方法によれば一般に凝固剤残留量は1000ppm以下、好ましくは700ppm以下に低減できる。回収された重合体に1000ppmを越える凝固剤が残留していると、これを用いた架橋物の物性が低下したり、接触物を腐食し易くなる。本発明においては、スクリューの回転数、洗浄水量等の条件を変化させることにより、重合体に残留する凝固剤の量を所望の値にコントロールすることも可能である。
【0041】
本発明においては、スクリューを二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることが好ましい。このようなスクリューを用いることにより、上記の凝固、排水、洗浄工程を経る間に、スクリュー自体も効率よく洗浄できるため、凝固タンクにより重合体の凝固を行う従来の凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することも出来る。
【0042】
脱水工程は、クラムスラリーをスクリュー先端に移送しつつ、バレルに設けられた排出口からセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する工程である。脱水工程の前に上記セラム水排出工程及び洗浄工程を含む場合には、脱水工程でバレル外部に排出されるセラム水は、洗浄により凝固剤濃度が低減されたものである。セラム水は、バレルに設けられたスリットを通してスクリューの遠心力によりバレル外部に強制排出されるのが好ましい。この場合、バレルには、上記排出工程で高濃度の凝固剤を含むセラム水を排出するスリットと、脱水工程で凝固剤濃度が低減されたセラム水を排出するスリットとが別々に設けられているのが好ましい。
【0043】
乾燥工程は、脱水工程で回収された含水状態のクラムを、さらにスクリュー先端側に移送して乾燥する工程である。乾燥は、クラムの水分を除去する操作であり、クラムを加熱する方法、バレル内部を減圧状態にする方法及びこれらを組み合わせた方法などにより行うことができる。
【0044】
尚、本発明の方法においては、ポリマーアロイに、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を配合することができる。添加剤をポリマーアロイ中に均一に分散させるためには、水性分散液や水溶液などにして、重合体(A)又は重合体(B)の水性分散液に予め混合し、これらとともにバレル内部に供給するのが好ましい。また、凝固工程や乾燥工程中に添加することもできる。
【0045】
以下、本発明の方法を、一実施態様を例にあげて具体的に説明する。
【0046】
図1は本発明で使用する押出機の一実施形態を示す概略図、図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図、図3は図1のIII―III線と図2のIII―III線に沿う断面図、図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【0047】
図1に示すように、本発明で使用する押出機2は、12個のバレルブロック41〜52で構成されるバレル4を有する。バレルの内部には、本実施形態では凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106、および乾燥ゾーン108が、バレル4のスクリュー基端側(上流側)からスクリュー先端側(下流側)にかけて順次形成されている。また、以下の説明において、ラテックス混合物とは、重合体(A)のラテックスと、重合体(B)のラテックスとの混合物をいう。なお、重合体(A)のラテックスと、重合体(B)のラテックスは、予め混合したものを押出機2に供給してもよく、別々に押出機2に供給して凝固ゾーンで混合しても良い。
【0048】
凝固ゾーン100は、ラテックス混合物と凝固剤とを接触させて重合体を凝固させ、クラム状の重合体のスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、重合体の凝固後に生じる液体(セラム水という)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄ゾーン104は、前記含水状態のクラムを洗浄する領域である。脱水ゾーン106は、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン108は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0049】
本実施形態では、バレルブロック41、42の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック43の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック44〜47の内部が洗浄ゾーン104に対応し、バレルブロック48、49の内部が脱水ゾーン106に対応し、バレルブロック50〜52の内部が乾燥ゾーン108に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0050】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック41には、重合体(A)のラテックス、重合体(B)のラテックスまたはスラリーと凝固剤を受け入れるフィード口412が形成されている。排水ゾーン102を構成するバレルブロック43には凝固後の重合体のクラムスラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット432が形成されている。洗浄ゾーン104の一部を構成するバレルブロック44には、洗浄水を受け入れる洗浄水フィード口442が形成されており、バレルブロック47には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット472が形成されている。脱水ゾーン106の一部を構成するバレルブロック49には洗浄後のクラムから除かれた脱水排水を外部へ排出する脱水スリット492が形成されている。乾燥ゾーン108の一部を構成するバレルブロック51には、脱気のためのベント口512が形成されている。
【0051】
バレル4の内部には、図2に示すようなスクリュー7が配置されている。スクリュー7の基端には、これを駆動するモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー7は回転駆動自在に保持される。スクリュー7の形状は、特に限定されないが、好ましくは多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組み合わせて構成することが出来る。
【0052】
本実施形態では、スクリュー7は、バレル4の内部に形成された上述した各ゾーン100〜108に対応する領域に形成される各スクリューブロックを有する。各スクリューブロックの構成は次の通りである。
【0053】
図2および図3に示すように、本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さをL1(mm)とし、その谷7B(図4参照)の数をn(個)とし、スクリュー7の外径をD(mm)としたときに、H=L1/(D×n)で求められる凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hが、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下である。
【0054】
凝固用スクリューブロックの谷の数は、該凝固用スクリューブロックを上から見てカウントしていけばよい。ニーディングディスク8(詳細は後述する)の谷の数をカウントする際には、位相をずらした板同士の間もカウントすることとする(図4参照)。
【0055】
本実施形態では、凝固ゾーン100に対応する領域に形成される凝固用スクリューブロックには、特に凝固を促進させる観点からニーディングディスク8を含めてある。
【0056】
ニーディングディスク8は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と(図3では擬似楕円形)、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度(図3では30度)づつずらしながら、複数枚(図3では6枚)積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。ここで擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル4の内壁面4aに各該ディスクの端部が所定(1〜5mm程度の)のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形又は切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形又は三角糸巻形としても良い。
【0057】
本実施形態では、凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1に対するニーディングディスク8の占める長さの割合は、好ましくは10〜90%、より好ましくは20〜80%、特に好ましくは30〜60%である。
【0058】
排水ゾーン102から乾燥ゾーン108までに対応する領域に形成される排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロック、乾燥用スクリューブロックは、例えば通常の正送りスクリューで構成すればよい。なお、必要に応じて逆送りスクリューやニーディングディスクを含ませても良い。
【0059】
図3に示すように、本実施形態ではこのようなスクリュー7を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。すなわち、2本のスクリュー7,7では、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせ、一方のスクリュー7の谷部7Bを他方のスクリュー7の山部7Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。なお、押出機のスクリュー構成は二軸に限定されず、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。ただし凝固ゾーン100の混合性の観点からは、本実施形態の如き二軸噛合型とすることが好ましい。2本のスクリュー7の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0060】
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック52の下流側には、バレル4内で凝固・脱水・乾燥処理された重合体が所定形状に押し出されるダイ6が接続されている。ダイ6には、カッティング機構(図示省略)が取り付けてあり、ダイから押し出されるストランド状の重合体を、適当な大きさに切断し、所定状のペレットとする。カッティング機構としては、押し出されたストランドをホットカット装置により直ちに切断するか、あるいは冷却槽で冷却してカッターで切断する等の機構を採用すればよい。
【0061】
次に、押出機2を用いたポリマーアロイの製造方法を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
ブタジエン、アクリロニトリルを乳化重合した後、残留単量体を除去してアクリロニトリル単位含有量10〜80重量%のNBRのラテックスを得る。また、メタアクリル酸メチルを乳化重合した後、残留単量体を除去してメチルメタアクリレート重合体(以降PMMAと略記する場合がある)ラテックスを得る。上記NBRラテックス、PMMAラテックス及び塩化カルシウム(凝固剤)水溶液を、それぞれのフィード流量比を3:1:0.5にて、フィード口412から凝固ゾーン100に導入する。
【0062】
NBRのラテックス、PMMAラテックス及び凝固剤水溶液は、予め混合してからフィード口412に供給してもよく、それぞれ別々にフィード口412に供給しても良い。
【0063】
凝固剤は、必ずしもフィード口412から凝固ゾーン100に直接供給される必要はなく、NBRのラテックスまたはPMMAラテックスと予め混合した後に供給しても良い。
【0064】
凝固ゾーン100に導入されたNBRのラテックス、PMMAラテックス及び凝固剤は、スクリュー7の回転により接触させられ、NBR及びPMMAは凝固するとともに均一に混合されて直径約1〜30mm程度のクラムとなって水中に分散し、クラム濃度が20重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)を形成する。この凝固ゾーンにおいて、スクリューの回転により激しく混合されるため、従来の凝固タンク方式に比べて、NBRとPMMAとがより均一に分散したNBR/PMMAアロイのクラムスラリーが得られる。このクラムスラリーには、凝固剤(残留凝固剤)が0.5重量%程度以上の高濃度で含有される。
【0065】
凝固ゾーン100で形成されたクラムスラリーは、スクリュー7の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック43に設けられたスリット432から前記クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、凝固剤濃度が0.2重量%程度以下に低減され、4〜40重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0066】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー7の回転により洗浄ゾーン104に送られる。洗浄ゾーン104では、バレルブロック44に設けられた洗浄水フィード口442から内部に洗浄水が導入され、上記クラムは洗浄され、洗浄済みの排水はバレルブロック47に設けられたスリット472から排出される。そして、凝固剤濃度が0.07重量%程度以下にさらに低減され、3〜35重量%程度の水分を含有するクラムが得られる。
【0067】
洗浄ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー7の回転により脱水ゾーン106に送られる。脱水ゾーン106では、バレルブロック49に形成されたスリット492より水分を排出して、水分量が1〜10重量%程度に調整されたクラムが得られる。
【0068】
脱水ゾーン106で得られたクラムは、スクリュー7の回転により乾燥ゾーン108に送られる。乾燥ゾーン108に送られたクラムは、スクリュー7の回転により可塑化混錬されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。前記融体がバレルブロック51に設けられたベント口512に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン108内部の温度は120〜180℃程度であり、その圧力は1000〜5000KPa程度である。
【0069】
乾燥ゾーン108を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー7により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量は0.5重量%以下)でダイ6に導入され、ここで、たとえばストランド状で排出された後、ペレタイザー(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品(ペレット)化される。
【0070】
本実施形態に係る押出機2では、該押出機2の内部に配置されるスクリュー7,7の凝固用スクリューブロックのピッチ指数Hを0.5以下にし、しかも凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1と外径Dとの比(L1/D)を好ましくは12以下とする。このため、スクリュー7の軸方向の長さをL(mm)としたときの該長さLと外径Dとの比(L/D)を60以下と小さくしても、重合体のラテックスから凝固剤残留量の少ない重合体を高収率で回収することができる。特に、凝固用スクリューブロックにニーディングディスク8を所定割合で含ませることにより、重合体の凝固をより促進でき、回収された重合体に含まれる凝固剤残留量をより一層少なくすることが可能である。
【0071】
本実施形態では、スクリュー7,7を二軸噛合型とし、しかも同方向回転型とすることで、セルフクリーニング性を付与でき、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することも出来る。本実施形態では、凝固ゾーン100、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108を単一のバレル4内に形成してあるので、省スペース・省コストの面からも有利である。
【0072】
従来の凝固タンクを用いる方法においては、凝固、脱水及び乾燥後においてもバンバリー等で熱処理を行なわないと、耐オゾン性、耐油性の十分な向上効果は望めない。これに対し本発明によれば、押出機による処理中の温度・滞留時間をコントロールすることにより、前記熱処理工程を省略することも可能である。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得る。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。また、特に記載しない限り、部および%は、重量基準のものである。
【0075】
なお、各測定値は下記のように測定した。
(1) ムーニー粘度
JIS K6383に従い、重合体約40グラムを用いて100℃で測定した。
(2) ニトリル基含有量
JIS K6384に従い、ケルダール法によって共重合体中の窒素含量を測定し、計算によりニトリル基含有量を求めた(単位:%)。
(3) クラム中の凝固剤残留量
電位差滴定法により測定した。
【0076】
(重合例1)
重合反応槽に脱イオン水270部、アクリロニトリル45部、ブタジエン55部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、硫酸鉄0.1部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を入れ、さらに分子量調節剤としてドデシルメルカプタン0.57部を加えて均一になるように十分攪拌しながら、10℃に維持し、約8時間後、重合転化率が90%になった時点で、硫酸ヒドロキシルアミン0.1部と水酸化ナトリウム0.1部とを加えて反応を停止させた。次に、水蒸気を吹き込むことにより残留単量体を除去し、NBR(ムーニー粘度=80、アクリロニトリル含有量=42%)のラテックスを得た。得られたラテックスを水で希釈して固形分濃度22%とした。
【0077】
(重合例2)
重合反応槽にイオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)0.1部、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.3部、メタクリル酸メチル100部を入れ、攪拌しながら、温度80℃で12時間反応させて重合を停止した。得られた重合反応液の一部をサンプリングして、固形分量を測定した結果、重合転化率は98.3%であり、固形分濃度は約39%であった。この重合反応液に水蒸気を吹き込むことにより残留単量体を加熱、除去し、PMMAのラテックスを得た。このPMMAラテックスを水で希釈して固形分濃度29%とした。
【0078】
(可塑剤乳濁液調製例)
攪拌槽にイオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)0.1部、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート50部を入れ、10分間、強く攪拌し、可塑剤濃度50%の乳濁液を得た。
【0079】
(実施例1)
本実施例では、図1に示すように、バレル4内に2本のスクリュー(全長1920mm、外径D=40mm、L/D=48)7,7を平行に設け、これらのスクリュー7,7を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリュー7の山部7A(図4参照)を他方のスクリュー7の谷部7B(図4参照)に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機2を用いた。
【0080】
スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された凝固ゾーン100に対応する領域に形成された凝固用スクリューブロックを有しており、本実施例ではこの凝固用スクリューブロックを、4枚のニーディングディスク8と2条のフルフライトとを組み合わせて構成した。凝固用スクリューブロックの長さの30%はニーディングディスク8で構成されていた。凝固用スクリューブロックの軸方向の長さL1は320mm、その外径Dは40mm、その谷の数は28個であった。したがって、凝固用スクリューブロックのピッチ指数H=L1/(D×n)は0.28であり、(L1/D)は8であった。
【0081】
また、スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108にそれぞれ対応する領域に形成された排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロックおよび乾燥用スクリューブロックを、いずれも2条のフルフライトおよびニーディングディスクで構成した。
【0082】
また、スクリュー7は、単一のバレル4の内部に形成された排水ゾーン102、洗浄ゾーン104、脱水ゾーン106および乾燥ゾーン108にそれぞれ対応する領域に形成された排水用スクリューブロック、洗浄用スクリューブロック、脱水用スクリューブロックおよび乾燥用スクリューブロックを、いずれも2条のフルフライトおよびニーディングディスクで構成した。
【0083】
このような構成の押出機2のフィード口412に、重合例1により得られたNBRのラテックス(固形分22重量%)を300kg/hrのレートで、重合例2により得られたPMMAのラテックス(固形分29重量%)を100kg/hrのレートで供給した。その際、凝固剤としての3重量%の塩化カルシウム水溶液を50kg/hrのレートで供給した。そして、洗浄ゾーン104に洗浄水を400kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数280rpmで重合体の回収を行なった。
【0084】
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が93.5kg/hrのレートで回収された(回収率98.4%)。回収された重合体の含水率は0.2重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は330ppmであり、製品として満足できる性状であった。また、製品を100kg得るのに要した時間は65分であり、従来の凝固タンクを用いた方法よりも短時間に高回収率で重合体混合物を得ることができた。
【0085】
(実施例2)
攪拌機を備えた予備混合槽に重合例1により得られたNBRのラテックスを300kg/hrのレートで、上記の可塑剤乳濁液(可塑剤濃度50重量%)を54kg/hrのレートで供給しNBRラテックスに可塑剤を連続的に混合した。実施例1で用いた押出し機2のフィード口のこの混合液を354kg/hrのレートで、重合例2により得られたPMMAラテックスを100kg/hrのレートで供給した。その際、凝固剤として5重量%の塩化カルシウム水溶液を50kg/hrのレートで供給した。そして、洗浄ゾーン104に洗浄水を450kg/hrのレートで供給しながら、スクリュー回転数300rpmで重合体の回収を行なった。
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ6から、シート状の乾燥した重合体が121kg/hrのレートで回収された(回収率99.2%)。回収された重合体の含水率は0.2重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は450ppmであり、製品として満足できる性状であった。また、製品を100kg得るのに要した時間は55分であり、実施例1同様に短時間に高収率で重合体混合物を得ることができた。
【0086】
(比較例1)
攪拌機を備えた凝固タンクに、凝固剤としての5重量%の塩化カルシウム水溶液を50部入れ、攪拌状態にした。次いで、重合例1により得られたNBRのラテックス330部と重合例2により得られたPMMAラテックス115部を別途設置した攪拌機付きタンクで混合し、混合物を凝固タンクへ445kg/hrの速度で全量供給し、凝固操作を行なった。所要時間は65分であった。
【0087】
凝固終了後、生成したクラムを抜き出し、振動スクリーンで水切り及び洗浄を行い、含水率55重量%のクラム183部を得た。所要時間は40分であった。この含水クラムを、押出式の脱水・乾燥機に183kg/hrのレート供給し、乾燥した重合体100部を得た。所要時間は65分であり、重合体の回収率は95.2%であった。
【0088】
得られた重合体の含水率は0.4重量%、残留する凝固剤(無機塩)の量は800ppmであった。製品を100部得るのに要した時間は、合計180分と長時間を要し、かつ、回収率も実施例1及び2よりも低かった。
さらに、この方法は、凝固タンク、混合タンク、振動スクリーン、押出式の脱水・乾燥機といった多数の機器の設置が必要であり、その設置のために広大な敷地面積を要した。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有するポリマーアロイを短時間且つ高収率で効率良く製造する方法及び凝固剤残存量が低減された該ポリマーアロイを製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に使用する押出機を示す概略図である。
【図2】図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【図3】図3は図1のIII―III線と図2のIII―III線に沿う断面図である。
【図4】図4は図2のスクリューの凝固用スクリューブロックを説明するための一部破断概略図である。
【符号の説明】
2… 押出機
4… バレル
4a… 内壁面
41〜52… バレルブロック
432,472… 排水スリット
492… 脱水スリット
512… ベント口
6… ダイ
7… スクリュー
7A… 山部
7B… 谷部
8… ニーディングディスク
Claims (6)
- α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成るポリマーアロイの製造方法であって、
前記重合体(A)の水性分散液及び前記重合体(B)の水性分散液を、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、該バレル内部で、重合体混合物の凝固、脱水及び乾燥を連続的に行なうことを特徴とするポリマーアロイの製造方法。 - α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)の水性分散液及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の水性分散液がいずれも乳濁液である請求項1記載のポリマーアロイの製造方法。
- 押出機のバレルの、スクリューの基端側に水性分散液及び凝固剤を供給してクラムスラリーを生成させる凝固工程;前記クラムスラリーをスクリュー先端側に移送しつつセラム水をバレル外部に排出して含水状態のクラムを回収する脱水工程;回収されたクラムをさらにスクリュー先端側に移送して乾燥する乾燥工程;をこの順に含む請求項1又は2記載のポリマーアロイの製造方法。
- 脱水工程において、バレルに設けられたスリット状の排出口を通してセラム水をバレル外部に排出する請求項1乃至3記載のポリマーアロイの製造方法。
- 凝固工程と脱水工程の間に、洗浄水をバレル内部に供給してクラムを洗浄する洗浄工程を含む請求項1乃至4記載のポリマーアロイの製造方法。
- α,β−エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系重合体(A)及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有して成り、凝固剤含有量が700ppm以下であるポリマーアロイ。
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