JP3966245B2 - ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バキュームブースタを備えた車両用のブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用のブレーキ装置の一形式として、ブレーキ操作部材と、加圧ピストンの作動により液圧を発生させるマスタシリンダとの間にバキュームブースタが設けられた形式が既に存在する。バキュームブースタは、ブレーキ操作部材と加圧ピストンとの相対移動に基づいて変圧室が負圧源に接続された負圧室(一般に定圧室と称される。)と大気とに選択的に連通させられることにより変圧室と負圧室との間に生じる圧力差によってパワーピストンが作動することによって、ブレーキ操作部材の操作力を助勢する装置である。
【0003】
この形式のブレーキ装置の一従来例が特許文献1に記載されている。このブレーキ装置は、ブレーキ操作部材の操作力を助勢する装置としてバキュームブースタを備えるとともに、さらに、液圧ブースタを第2の助勢装置として備えており、その液圧ブースタは、バキュームブースタの変圧室の圧力が大気圧まで増加してバキュームブースタが助勢限界に達した後に作動させられる。
一方、ブレーキシリンダの液圧を制御することにより、車輪のロックを防止するアンチロック制御装置において、減圧時にブレーキシリンダから流出させられた作動液がリザーバに収容され、増圧時にリザーバの作動液がポンプによって汲み上げられてブレーキシリンダに供給されるアンチロック制御装置が知られている。
【特許文献1】
特開昭55−76744号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
発明者は、バキュームブースタの助勢限界後にポンプを利用してブレーキシリンダの液圧を増圧することを考えた。これを、アンチロック制御中にブレーキシリンダから流出させられた作動液が収容されるリザーバからポンプにより作動液を汲み上げて加圧してブレーキシリンダに供給するブレーキ装置に適用した場合、アンチロック制御が行われないとリザーバに作動液が存在せず、バキュームブースタの助勢限界後にブレーキシリンダ液圧を増圧できない場合がある。そこで、本発明の課題は、リザーバに作動液が存在しないことにより、ブレーキシリンダの液圧が増圧不能になることを回避することである。この課題は、ブレーキ装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。
【0005】
この課題は、請求項1に記載の発明によれば、ブレーキ装置を、(a)車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるブレーキシリンダと、(b)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(c)そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、(d)負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によってブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、(e)ポンプを含み、そのバキュームブースタが助勢限界に達した後に、マスタシリンダの作動液を加圧してブレーキシリンダに供給することにより、ブレーキシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧より高くする増圧装置と、(f)ブレーキシリンダの液圧を制御することにより、車輪がロックすることを防止するアンチロック制御を行う装置と、(g)その装置によるアンチロック制御中に、ブレーキシリンダから流出させられた作動液を収容するとともに、ポンプの吸入側に接続されたリザーバと、(h)ポンプとマスタシリンダとを接続する補給通路に設けられた流入制御弁と、(i)リザーバにポンプにより汲み上げるべき作動液が存在するか否かの存否判定を行う手段によって、リザーバに汲み上げるべき作動液が存在すると判定した場合に流入制御弁を閉状態とし、リザーバに汲み上げるべき作動液が存在しないと判定した場合に流入制御弁を開状態とする流入制御弁制御手段であって、前記ブレーキシリンダの液圧が前記増圧装置によって前記マスタシリンダの液圧より高くされ、かつ、アンチロック制御中でない場合に、前記流入制御弁を開状態とし、アンチロック制御中であって、前記リザーバに存在する作動液量が0より多い場合に前記流入制御弁を閉状態とし、0以下である場合に開状態とするものとを含むものとすることによって解決される。
本項に記載のブレーキ装置においては、バキュームブースタが助勢限界に達した後に、ポンプにより、マスタシリンダの液圧が加圧されてブレーキシリンダに供給される。ブレーキシリンダの液圧はマスタシリンダの液圧より高くなる。アンチロック制御中においては、減圧時にブレーキシリンダの作動液が流出させられてリザーバに収容され、増圧時にそのリザーバに収容された作動液がポンプにより加圧されてブレーキシリンダに供給される。ポンプの吸入側には、リザーバが接続されるとともにマスタシリンダが接続され、マスタシリンダとを接続する補給通路には流入制御弁が設けられる。流入制御弁が開状態にされると、ポンプによってマスタシリンダから作動液が汲み上げられて加圧されてブレーキシリンダに供給され、閉状態にされると、リザーバから汲み上げられて加圧されてブレーキシリンダに供給される。
本項に記載のブレーキ装置においては、リザーバに汲み上げられるべき作動液が存在していると判定された場合に流入制御弁が閉状態にされ、存在しないと判定された場合に開状態にされる。リザーバに汲み上げられるべき作動液が存在しない場合に流入制御弁が開状態にされるため、ポンプによってマスタシリンダから作動液が汲み上げられてブレーキシリンダに供給される。したがって、リザーバに作動液が存在しなくてもブレーキシリンダ液圧を増圧することができるのである。
また、流入制御弁は、ブレーキシリンダが増圧装置によってマスタシリンダの液圧より高くされた状態にあり、かつ、アンチロック制御中でない場合には開状態とされるが、アンチロック制御中であって、リザーバに存在する作動液量が0より多い場合に閉状態とされ、0以下である場合に開状態とされる。
請求項に記載のブレーキ装置において、ブレーキ装置が、リザーバに存在する作動液量を、アンチロック制御中におけるブレーキシリンダの液圧の減圧時間と増圧時間とに基づいて推定する手段を含むものとされる。
リザーバに存在する作動液量が、アンチロック制御中におけるブレーキシリンダの液圧の減圧時間と増圧時間とに基づいて推定され得る。
請求項に記載のブレーキ装置において、ブレーキ装置が、リザーバとポンプとを接続するポンプ通路の、補給通路との接続点よりリザーバ側の部分に、補給通路からリザーバに向かう作動液の流れを阻止し、リザーバからポンプに向かう作動液の流れを許容する逆止弁を含むものとされる。
流入制御弁が閉状態にある場合には、ポンプによってリザーバから作動液が汲み上げられるが、流入制御弁が開状態にある場合には、逆止弁により、マスタシリンダの作動液はリザーバに収容されることなく、ポンプによって汲み上げられる。
請求項に記載のブレーキ装置においては、増圧装置が、ブレーキシリンダの液圧を、バキュームブースタが助勢限界に達した後に、ブレーキ操作部材の操作力が助勢限界に達する以前と同じ倍力率で倍力された場合に得られる高さまで増加させるものとされる。
ブレーキシリンダの液圧は、バキュームブースタの助勢限界の前後においてブレーキ操作力に対して同じ勾配で増加させられることになる。
請求項に記載のブレーキ装置においては、増圧装置が、(a) マスタシリンダとブレーキシリンダとを互いに接続する主通路に補助通路により接続された液圧源と、(b) 運転者によるブレーキ操作中であって、マスタシリンダの液圧より高い液圧をブレーキシリンダに発生させることが必要である場合に、液圧源から作動液を供給させる液圧源制御装置と、(c) 主通路のうち補助通路との接続点とマスタシリンダとの間の部分に設けられ、その主通路におけるブレーキシリンダ側の第2液圧をマスタシリンダ側の第1液圧に対して相対的に制御する圧力制御装置であって、液圧源から作動液が供給されている状態では、第2液圧が第1液圧より高いがその差が目標値以下であれば、液圧源からマスタシリンダへ向かう作動液の流れを阻止し、第2液圧が第1液圧より高くかつその差が目標値より大きくなろうとすれば、液圧源からマスタシリンダへ向かう作動液の流れを許容することにより、第2液圧を第1液圧より高くかつその差が目標値となるように制御する圧力制御装置とを含むものとされる。
ブレーキシリンダの液圧が目標値となるように圧力制御装置の制御により制御される。
【0008】
【付記】
以下、本発明に関連する技術的事項について説明する。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。
(1) 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するブースタ圧力関連量検出手段と、
少なくともそのブースタ圧力関連量検出手段の出力信号に基づき、前記変圧室の圧力が大気圧まで増加して前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する判定装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
バキュームブースタの助勢限界への到達は、変圧室の圧力を監視したり、変圧室の圧力とマスタシリンダ液圧との双方を監視したり、負圧室の圧力とマスタシリンダ液圧との双方を監視することにより検出可能である。すなわち、バキュームブースタの助勢限界への到達は、少なくとも負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連するブースタ圧力関連量に基づいて検出可能なのである。そして、そのブースタ圧力関連量はセンサ,スイッチ等により電気的に検出可能である。
また、バキュームブースタの助勢限界への到達を変圧室の圧力を監視することにより検出する場合には、助勢限界に達したことを検出した時期が負圧室の圧力の高さに応じて早まったり遅れたりし、また、バキュームブースタの助勢限界への到達を変圧室の圧力とマスタシリンダ液圧との双方を監視したり、負圧室の圧力とマスタシリンダ液圧との双方を監視することにより検出する場合には、助勢限界に達したことを検出したときにおけるマスタシリンダ液圧の高さが負圧室の高さに応じて低くなったり高くなったりする。すなわち、バキュームブースタの助勢限界への到達を少なくともブースタ圧力関連量に基づいて検出すれば、その検出結果に負圧室の実際の圧力の変動が反映されることになるのである。
したがって、このブレーキ装置によれば、バキュームブースタの助勢限界への到達が電気的に検出されるから、その検出結果を、ブレーキシリンダ液圧不足防止装置や警告器としての電気的作動装置において簡単に利用可能となるとともに、負圧室の圧力の変動を考慮してバキュームブースタの助勢限界への到達が検出されるから、助勢限界の検出精度が向上するという効果が得られる。
このブレーキ装置は、マスタシリンダ液圧の高さに応じて連続的に変化するマスタシリンダ液圧関連量が変圧室または負圧室のブースタ圧力関連量に基づく助勢限界値に達したときにバキュームブースタが助勢限界に達したと判定する形態や、変圧室の圧力の高さに応じて連続的に変化するブースタ圧力関連量が大気圧に対応する値まで増加したときにバキュームブースタが助勢限界に達したと判定する形態で実施可能であり、いずれの形態においても、判定の基礎となる量は連続的に変化する量である。したがって、バキュームブースタの作動状態の変化をきめ細かく判定可能となり、バキュームブースタが助勢限界に達した状態のみならず、例えば、助勢限界に達する前であるがまもなく助勢限界に達すると予想される状態(限界間際の状態)も判定可能となる。一方、バキュームブースタを備えたブレーキ装置においては、バキュームブースタが助勢限界に達した状態のみならず、助勢限界に達する間際である状態も検出し、バキュームブースタが助勢限界に達する時期より先行して、運転者に警告したり、作動遅れを伴うブレーキシリンダ液圧不足防止装置を作動させることが要望される場合がある。
したがって、このブレーキ装置によれば、さらに、運転者への警告開始時期やブレーキシリンダ液圧不足防止装置の作動開始時期をバキュームブースタが助勢限界に達する時期より先行させたいという要望を容易に満たすことが可能となるという効果も得られる。
このブレーキ装置において「バキュームブースタ」は、ハウジング内の空間が、パワーピストンであって、マスタシリンダの加圧ピストンと機械的に連携させられるとともにブレーキ操作部材と機械的に連携させられたバルブオペレーティングロッドと相対移動させられるものにより、マスタシリンダ側の負圧室とブレーキ操作部材側の変圧室とに仕切られ、変圧室を負圧源に接続された負圧室と大気とに選択的に連通させる弁機構(例えば、後述のエアバルブ,コントロールバルブ,バキュームバルブ,バルブコントロールスプリング)が前記パワーピストンとバルブオペレーティングロッドとの相対移動に基づいて制御されることにより、負圧と大気圧との圧力差を利用してブレーキ操作部材の操作力を助勢するものとされる。
また、このブレーキ装置において「ブースタ圧力関連量検出手段」は例えば、圧力を受けて作動するとともに、その圧力の高さを規定する信号を出力する圧力検出手段とすることができる。ここに「圧力検出手段」は、バキュームブースタに専用のものでもよいが、他の装置の圧力検出手段を流用してもよい。例えば、車両の電子エンジン制御装置には、エンジン吸気管の圧力(負圧)を検出する吸気管圧力センサ(吸気管負圧センサ)を備えた形式が存在する。一方、負圧室が負圧源としてのエンジン吸気管に接続されたバキュームブースタにおいては、エンジン吸気管の圧力を負圧室の圧力の近似値として使用可能である。したがって、「ブースタ圧力関連量検出手段」が、エンジン吸気管に接続された負圧室の圧力を検出する形式である場合には、その吸気管圧力センサを流用して負圧室の圧力を検出する形態とすることができる。この形態とすれば、バキュームブースタに専用の圧力検出手段を設けずに済み、本発明を安価に実施可能となる。すなわち、この例においては、エンジン吸気管の圧力が「ブースタ圧力関連量」の一例なのである。
また、このブレーキ装置において「ブースタ圧力関連量検出手段」は、圧力ではない物理量を電気的に検出し、その結果に基づいて圧力を演算する間接検出方式とすることもできる。例えば、上記電子エンジン制御装置には、エンジン吸気管に設けられたスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサと、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサとを備えた形式が存在する。一方、スロットル開度とエンジン回転数とに基づいてエンジン吸気管の圧力を演算可能である。また、上記のように、エンジン吸気管の圧力を負圧室の圧力の近似値として使用可能である。したがって、「ブースタ圧力関連量検出手段」が、エンジン吸気管に接続された負圧室の圧力を検出する形式である場合には、スロットル開度センサとエンジン回転数センサとの出力信号に基づいて負圧室の圧力を間接に検出する形態とすることができる。この形態とした場合にも、バキュームブースタに専用の圧力検出手段を設けずに済み、本発明を安価に実施可能となる。すなわち、この例においては、スロットル開度とエンジン回転数とが「ブースタ圧力関連量」の一例なのである。
また、このブレーキ装置は、負圧室または変圧室に関するブースタ圧力関連量を検出する手段と、マスタシリンダ液圧関連量を検出する手段との少なくとも一方を含み、変圧室に関するブースタ圧力関連量と、変圧室に関するブースタ圧力関連量とマスタシリンダ液圧関連量との双方と、負圧室に関するブースタ圧力関連量とマスタシリンダ液圧関連量との双方とのいずれかに基づいて前記バキュームブースタが助勢限界に到達したか否かを判定する態様とすることができる。
(2) さらに、前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段を含み、前記判定装置が、そのマスタシリンダ液圧関連量検出手段と前記ブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する手段を含む(1) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置において「マスタシリンダ液圧関連量検出手段」は例えば、マスタシリンダ液圧そのものを検出する圧力センサとすることができるのはもちろんであるが、ブレーキ操作部材の操作力を検出する力センサとしたり、ブレーキ操作部材の操作ストロークを検出するストロークセンサとしたり、ブレーキ操作時に車両に発生する減速度を検出する車両減速度検出手段とすることができる。操作力も操作ストロークも車両減速度もマスタシリンダ液圧に関連する物理量であるからである。なお、車両減速度検出手段は、車両減速度を直接に検出する方式としたり、複数の車輪の車輪速を検出し、検出された複数の車輪速に基づいて車速を推定し、その推定車速の時間微分値として車両減速度を間接に検出する方式とすることもできる。
(3) 前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記変圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する変圧室圧力関連量検出手段を含み、当該ブレーキ装置が、さらに、前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段を含み、前記判定装置が、それら変圧室圧力関連量検出手段とマスタシリンダ液圧関連量検出手段との出力信号に基づき、前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する第1判定手段を含む(1) または(2) 項に記載のブレーキ装置。
バキュームブースタにおいては、負圧室の圧力が変化しない期間には、変圧室の圧力の増加量とマスタシリンダ液圧の増加量との間に一定の関係が成立し、変圧室の圧力の増加量からマスタシリンダ液圧の増加量を予測可能である。一方、ある回の一連のブレーキ操作と別の回の一連のブレーキ操作との間では負圧室の圧力が異なるが、同じ回の一連のブレーキ操作中には負圧室の圧力はほとんど変化しないと仮定することができる。したがって、各回の一連のブレーキ装置において、バキュームブースタが助勢限界に達する前のある時期において変圧室の圧力が分かれば、その変圧室の圧力が大気圧まで増加してバキュームブースタが助勢限界に達したときにおけるマスタシリンダ液圧を予測可能となる。
かかる知見に基づき、この(3) 項に記載のブレーキ装置は、前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記変圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する変圧室圧力関連量検出手段を含み、当該ブレーキ装置が、さらに、前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段を含み、前記判定装置が、それら変圧室圧力関連量検出手段とマスタシリンダ液圧関連量検出手段との出力信号に基づき、前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する第1判定手段を含む態様とされている。
(4) 前記第1判定手段が、前記マスタシリンダの液圧の、前記変圧室の圧力が基準値に達したときからの実際の増加量が、変圧室の圧力がその基準値から大気圧まで増加するまでに増加すると予想される量と等しくなったときに、前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定する手段を含む(3) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置における「手段」の一態様は、変圧室の実際の圧力が基準値に達したときに、そのときから変圧室の圧力がその基準値から大気圧まで増加するまでにマスタシリンダ液圧関連量が増加すると予想される量を決定し(マスタシリンダ液圧関連量増加量決定部)、その決定された増加量と、変圧室の圧力が基準値に達したときにおけるマスタシリンダ液圧関連量との和を、バキュームブースタが助勢限界に達したときにおけるマスタシリンダ液圧関連量である助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量とし(助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量決定部)、実際のマスタシリンダ液圧関連量が助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量まで増加したときにバキュームブースタが助勢限界に達したと判定する(判定部)ものである。
(5) 前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記変圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する変圧室圧力関連量検出手段を含み、前記判定装置が、その変圧室圧力関連量検出手段の出力信号に基づき、前記変圧室の圧力が大気圧まで増加したときに前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定する第2判定手段を含む(1) 項に記載のブレーキ装置。
バキュームブースタが助勢限界に達したときには、変圧室の圧力が大気圧まで増加しているから、変圧室の圧力が大気圧まで増加したことを検出することによって助勢限界を検出することができる。
かかる知見に基づき、このブレーキ装置は、前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記変圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する変圧室圧力関連量検出手段を含み、前記判定装置が、その変圧室圧力関連量検出手段の出力信号に基づき、前記変圧室の圧力が大気圧まで増加したときに前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定する第2判定手段を含む態様とされている。
したがって、このブレーキ装置によれば、同じ回の一連のブレーキ操作中に負圧室の圧力が変化しないという仮定を採用することが不可欠ではなくなり、同じ回の一連のブレーキ操作中における負圧室の圧力の変動をも考慮して助勢限界を判定可能となるという効果が得られる。
さらに、このブレーキ装置によれば、バキュームブースタの助勢限界判定のためにマスタシリンダ液圧関連量検出手段を設けることが不可欠ではなくなるという効果も得られる。
(6) 前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記負圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する負圧室圧力関連量検出手段を含み、当該ブレーキ装置が、さらに、前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段を含み、前記判定装置が、それら負圧室圧力関連量検出手段とマスタシリンダ液圧関連量検出手段との出力信号に基づき、前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する第3判定手段を含む(1) または(2) 項に記載のブレーキ装置。
バキュームブースタの負圧室の圧力と、バキュームブースタが助勢限界に達したときにおけるマスタシリンダ液圧との間には一定の関係があり、負圧室から、バキュームブースタが助勢限界に達したときにおけるマスタシリンダ液圧を予測可能であるから、バキュームブースタが助勢限界に達する前のある時期において負圧室の圧力が分かれば、バキュームブースタが助勢限界に達したときのマスタシリンダ液圧を予測可能となる。
かかる知見に基づき、この(6) 項に記載のブレーキ装置は、前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記負圧室の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力する負圧室圧力関連量検出手段を含み、当該ブレーキ装置が、さらに、前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出するマスタシリンダ液圧関連量検出手段を含み、前記判定装置が、それら負圧室圧力関連量検出手段とマスタシリンダ液圧関連量検出手段との出力信号に基づき、前記バキュームブースタが助勢限界に達したか否かを判定する第3判定手段を含む態様とされている。
したがって、このブレーキ装置によれば、同じ回の一連のブレーキ操作中に負圧室の圧力が変化しないという仮定を採用することが不可欠ではなくなり、同じ回の一連のブレーキ操作中における負圧室の圧力の変動をも考慮して助勢限界を判定可能となるという効果が得られる。
(7) 前記第3判定手段が、前記マスタシリンダの実際の液圧が、前記負圧室の実際の圧力の下で前記変圧室の圧力が大気圧まで増加したときにとることが予想される高さに増加したときに、前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定する手段を含む(6) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置における「手段」の一態様は、負圧室の実際の圧力に基づき、かつ、バキュームブースタが助勢限界に達したときにおける、負圧室の圧力とマスタシリンダ液圧関連量との間の予め定められた関係に従い、負圧室の実際の圧力に対応する助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量を決定し(助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量決定部)、実際のマスタシリンダ液圧関連量が助勢限界時マスタシリンダ液圧関連量まで増加したときにバキュームブースタが助勢限界に達したと判定する(判定部)ものである。
(8) 前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力を受けて作動するとともに、その圧力が設定値より高いときとそうでないときとで異なる2つの信号を出力する圧力スイッチを含む(1) ないし(7) 項のいずれかに記載のブレーキ装置。
前述のように、バキュームブースタの助勢限界を検出するために、検出すべき圧力が連続的に変化するのに応じて圧力を連続的に検出することまでは要求されず、圧力が一つの設定値に達したことさえ検出すれば足りる場合がある。この場合には、「ブースタ圧力関連量検出手段」を、検出すべき圧力が設定値より高いか否かによって異なる2つの信号を出力する圧力スイッチを含むものとすればよい。一方、このような圧力スイッチは、検出すべき圧力が連続的に変化するのに応じて連続的に変化する信号を出力する圧力センサより安価に製造可能であるとともに、圧力検出手段の出力信号を処理する信号処理装置としての前記判定装置の構造を簡単にすることができる。
かかる知見に基づき、この(8) 項に記載のブレーキ装置は、前記ブースタ圧力関連量検出手段が、前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力を受けて作動するとともに、その圧力が設定値より高いときとそうでないときとで異なる2つの信号を出力する圧力スイッチを含む態様とされている。
したがって、このブレーキ装置によれば、ブースタ圧力関連量を簡単かつ安価に検出することができるという効果が得られる。
(9) 前記判定装置が、それの判定結果を規定する信号を出力するものであり、当該ブレーキ装置が、さらに、その判定装置が出力した信号に基づき、少なくとも前記バキュームブースタが助勢限界に達した後に、前記ブレーキシリンダの液圧を増圧する増圧装置を含む(1) ないし(8) 項のいずれかに記載のブレーキ装置。
したがって、このブレーキ装置によれば、バキュームブースタが助勢限界に達した後には、増圧装置により、ブレーキシリンダ液圧が増圧されて車輪制動力が増加され、それにより、車両の制動能力が向上するという効果が得られる。
このブレーキ装置において「増圧装置」は、ブレーキ操作部材から、車輪の回転を抑制するブレーキまでの力伝達系のいかなる位置にも設けることができる。例えば、ブレーキ操作部材の操作機構,ブレーキ操作部材とマスタシリンダとの間,マスタシリンダ,マスタシリンダとブレーキシリンダとの間,ブレーキシリンダ,ブレーキシリンダと、車輪と共に回転する回転体に押し付けられてその回転を抑制するブレーキ摩擦材との間に設けることができるのである。
具体的には、ブレーキ操作部材とマスタシリンダとの間には例えば、電気的に作動する液圧ブースタ(第2の助勢装置)として設けることができる。また、マスタシリンダとブレーキシリンダとの間には例えば、ブレーキシリンダの液圧をポンプによってマスタシリンダの液圧より増圧する装置として設けることができる。
(10)前記増圧装置が、(a) 前記マスタシリンダとブレーキシリンダとを互いに接続する主通路に補助通路により接続された液圧源と、(b) 運転者によるブレーキ操作中であって、前記マスタシリンダの液圧より高い液圧を前記ブレーキシリンダに発生させることが必要である場合に、前記液圧源から作動液を供給させる液圧源制御装置と、(c) 前記主通路のうち前記補助通路との接続点と前記マスタシリンダとの間の部分に設けられ、その主通路におけるブレーキシリンダ側の第2液圧をマスタシリンダ側の第1液圧に対して相対的に制御する圧力制御装置であって、前記液圧源から作動液が供給されている状態では、第2液圧が第1液圧より高いがその差が目標値以下であれば、前記液圧源から前記マスタシリンダへ向かう作動液の流れを阻止し、第2液圧が第1液圧より高くかつその差が前記目標値より大きくなろうとすれば、液圧源からマスタシリンダへ向かう作動液の流れを許容することにより、第2液圧を第1液圧より高くかつその差が前記目標値となるように制御する圧力制御装置とを含む(9) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置において「液圧源」は例えば、ブレーキ用の液圧源としたり、ブレーキ以外の用途を有する液圧源、例えば、パワーステアリング用の液圧源とすることができる。
また、「液圧源」は例えば、常時高圧の作動液を蓄える形式の液圧源、例えば、アキュムレータとしたり、必要に応じて高圧の作動液を発生させる形式の液圧源、例えば、ポンプとすることができる。
ここに「ポンプ」は、作動液を吸入側から吸入して吐出側に吐出するポンプであって、その吐出側が前記補助通路により前記主通路に接続されているものとすることができる。液圧源をポンプとし、それから吐出される作動液を直接に圧力制御装置に供給することとすれば、ポンプは、それの吐出圧の高さが吐出先の液圧の高さに依存し、吐出先の液圧の高さの変化に追従して変化するという性質を有することから、液圧源をアキュムレータとする場合に比較して、ポンプの吐出圧をマスタシリンダ液圧の変化に追従させることが容易となる。
また、「目標値」は例えば、一定値としたり、マスタシリンダ液圧の実際値の、助勢限界値(ブースタが助勢限界に達したときのマスタシリンダ液圧)からの増加量の増加に応じて増加する可変値とすることができる。
(11)前記マスタシリンダ液圧関連量検出手段が、車体減速度を前記マスタシリンダの液圧に関連する量として検出し、その量を規定する信号を出力する車体減速度検出手段を含む(2) ,(3) ,(4) ,(6) または(7) 項に記載のブレーキ装置。
前記(2) ,(3) ,(4) ,(6) または(7) 項に記載のブレーキ装置を実施する際、「マスタシリンダ液圧関連量検出手段」として例えば、マスタシリンダ液圧センサ,ブレーキ操作力センサ,ブレーキ操作ストロークセンサ等、マスタシリンダ液圧そのものまたはそれに直接に関連する量(以下、それらを「マスタシリンダ液圧直接関連量」と総称する。)を検出するマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段を使用することが考えられる。しかし、そのマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段を使用する場合には、その検出手段が必要となるとともに、その検出手段が故障した場合には、助勢限界を判定することができない。
一方、ブレーキ装置を備えた車両においては一般に、ブレーキ操作力の大きさがマスタシリンダ液圧の高さに反映され、マスタシリンダ液圧の高さがブレーキシリンダ液圧の高さに反映され、ブレーキシリンダ液圧の高さが車両制動力の大きさに反映され、車両制動力の大きさが車体減速度の高さに反映される。すなわち、車体減速度は、マスタシリンダ液圧に間接に関連する量なのである。したがって、(2) ,(3) ,(4) ,(6) または(7) 項に記載のブレーキ装置を実施する際、マスタシリンダ液圧直接関連量を検出することができない場合であっても、車体減速度さえ取得することができれば、助勢限界を判定することができる。
かかる知見に基づき、この(11)項に記載のブレーキ装置においては、前記マスタシリンダ液圧関連量検出手段が、車体減速度を前記マスタシリンダ液圧関連量として検出し、その量を規定する信号を出力する車体減速度検出手段を含む態様とされている。
したがって、このブレーキ装置によれば、マスタシリンダ液圧直接関連量を検出することができない場合であっても、助勢限界を判定することができるという効果が得られる。
このブレーキ装置において「車体減速度検出手段」は、車体減速度を直接に検出する形式とすることは可能であるが、車両においては普通、車速を検出する車速センサが設けられており、しかも、車速を時間に関して微分すれば車体減速度を取得することができるという事実に着目し、車速を時間に関して微分することによって車体減速度を間接に検出する形式とすることも可能である。
ところで、車速センサには、ドップラセンサ等、車速を直接に検出する形式があるが、車輪の回転速度である車輪速に基づいて間接に検出する形式もある。後者の形式の一例は、アンチロック制御装置において採用されている。アンチロック制御装置は、よく知られているように、(a) 複数個の車輪の各々の車輪速を検出する複数個の車輪速センサと、(b) 各輪のブレーキシリンダ液圧を制御する電磁液圧制御弁と、(c) それら複数個の車輪速センサにより検出された車輪速に基づき、車両制動時に各輪のロック傾向が過大にならないように、前記電磁液圧制御弁を制御するコントローラとを含むように構成される。ここに、コントローラは一般に、複数個の車輪速センサにより検出された複数個の車輪速に基づいて車速を推定し、その推定車速と各輪の車輪速との関係に基づいて電磁液圧制御弁を制御するように設計される。
したがって、この(11)項に記載のブレーキ装置において「車体減速度検出手段」を、車速センサにより検出された車速を時間に関して微分することによって車体減速度を間接に検出する形式とした場合には、ハードウェアを追加することなくソフトウェアのみを追加することによって「車体減速度検出手段」が構成されることとなり、「車体減速度検出手段」の構造簡単化,軽量化およびコストダウンが図られるという効果が得られる。
なお、このブレーキ装置は、前記(8) ないし(10)項のいずれかに記載のブレーキ装置と共に実施することが可能である。
(12)前記マスタシリンダ液圧関連量検出手段が、(a) 車体減速度を前記マスタシリンダの液圧に関連する量として検出し、その量を規定する信号を出力する車体減速度検出手段と、(b) 前記マスタシリンダの液圧に関連する量であって前記車体減速度より直接にマスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段とを含み、前記判定装置が、そのマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段が正常である場合に、そのマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段と前記ブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づいて前記助勢限界の判定を行う一方、マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段が異常である場合に、前記車体減速度検出手段と前記ブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づいて前記助勢限界の判定を行うものである(2) ,(3) ,(4) ,(6) または(7) 項に記載のブレーキ装置。
したがって、このブレーキ装置によれば、マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段の異常時にも、助勢限界を判定可能となるという効果が得られる。
また、このブレーキ装置を、前記(9) または(10)項に記載のブレーキ装置と共に実施する場合には、マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段の異常時にも、バキュームブースタの助勢限界後にブレーキシリンダ液圧を増圧可能となるという効果が得られる。
このブレーキ装置において「マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段」は例えば、マスタシリンダ液圧センサ,ブレーキ操作力センサおよびブレーキ操作ストロークセンサの少なくとも一つを含むように構成される。
(13)前記マスタシリンダ液圧関連量検出手段が、(a) 車体減速度を前記マスタシリンダの液圧に関連する量として検出し、その量を規定する信号を出力する車体減速度検出手段と、(b) 前記マスタシリンダの液圧に関連する量であって前記車体減速度より直接にマスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段とを含み、前記第1判定手段が、そのマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段が正常である場合に、そのマスタシリンダ液圧直接関連量検出手段と前記変圧室圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、前記マスタシリンダの液圧の、前記変圧室の圧力が基準値に達したときからの実際の増加量が、変圧室の圧力がその基準値から大気圧まで増加するまでに増加すると予想される量と等しくなったときに、前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定する一方、マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段が異常である場合に、前記車体減速度検出手段と前記変圧室圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、前記車体減速度の、前記変圧室の圧力が基準値に達したときからの実際の増加量が、変圧室の圧力がその基準値から大気圧まで増加するまでに増加すると予想される量と等しくなったときに、前記バキュームブースタが助勢限界に達したと判定するものである(3) または(4) 項に記載のブレーキ装置。
(14)さらに、車体減速度を検出し、その車体減速度を規定する信号を出力する車体減速度検出手段を含み、前記判定装置が、前記ブースタ圧力関連量検出手段が異常である場合に、少なくとも前記車体減速度検出手段の出力信号に基づいて前記助勢限界の判定を行うものである(1) ないし(13)項のいずれかに記載のブレーキ装置。
したがって、このブレーキ装置によれば、ブースタ圧力関連量検出手段の異常時にも、助勢限界を判定可能となるという効果が得られる。
また、このブレーキ装置を、前記(9) または(10)項に記載のブレーキ装置と共に実施する場合には、ブースタ圧力関連量検出手段の異常時にも、バキュームブースタの助勢限界後にブレーキシリンダ液圧を増圧可能となるという効果が得られる。
(15)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するブースタ圧力関連量検出手段と、
少なくともそのブースタ圧力関連量検出手段の出力信号に基づき、前記変圧室の圧力が大気圧まで増加して前記バキュームブースタが助勢限界に達した後に、前記ブレーキシリンダの液圧を増圧する増圧装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
したがって、このブレーキ装置によれば、負圧室の圧力の変動を考慮してバキュームブースタの助勢限界への到達が検出されて増圧装置によりブレーキシリンダ液圧が増圧されるから、増圧装置による増圧開始時期が負圧室の圧力の高さとの関係において適正化され、その結果、負圧室の圧力変動にかかわらず、ブレーキ操作力とブレーキシリンダ液圧との関係が適正に維持されるという効果が得られる。
(16)さらに、(a) 前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段と、(b) そのマスタシリンダ液圧関連量検出手段と前記ブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、当該ブレーキ装置が正常であるか異常であるかを判定するブレーキ装置正常/異常判定装置とを含む(1) ないし(15)項のいずれかに記載のブレーキ装置。
マスタシリンダ液圧関連量検出手段による検出値とブースタ圧力関連量検出手段による検出値との関係は、ブレーキ装置が正常であるか、またはマスタシリンダ,マスタシリンダ液圧関連量検出手段,バキュームブースタ,ブースタ圧力関連量検出手段等のいずれかに異常があるかによって変化する。また、それら2つの検出値の関係と、ブレーキ装置が正常であるか異常であるかというブレーキ装置の状態との間には、一定の関係が成立する。
かかる知見に基づき、この(16)項に記載のブレーキ装置は、マスタシリンダ液圧関連量検出手段とブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、当該ブレーキ装置が正常であるか異常であるかを判定するブレーキ装置正常/異常判定装置を含む態様とされている。
したがって、このブレーキ装置によれば、助勢限界判定のためのブースタ圧力関連量検出手段が少なくとも利用されることにより、当該ブレーキ装置の正常/異常判定が可能になるという効果が得られる。
(17)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記マスタシリンダの液圧に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するマスタシリンダ液圧関連量検出手段と、
前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連する量を検出し、その量を規定する信号を出力するブースタ圧力関連量検出手段と、
それらマスタシリンダ液圧関連量検出手段とブースタ圧力関連量検出手段との出力信号に基づき、当該ブレーキ装置が正常であるか異常であるかを判定するブレーキ装置正常/異常判定装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
したがって、このブレーキ装置によれば、マスタシリンダ液圧関連量検出手段による検出値とブースタ圧力関連量検出手段による検出値との関係と、ブレーキ装置が正常であるか異常であるかというブレーキ装置の状態との間に成立する一定の関係を利用することにより、当該ブレーキ装置の正常/異常判定が可能になるという効果が得られる。
(18)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連する量を検出するブースタ圧力関連量検出手段と、
少なくともそのブースタ圧力関連量検出手段の検出結果に基づき、前記変圧室の圧力がまだ大気圧まで増加しておらず、前記バキュームブースタが助勢限界に達する前であるが、間もなく助勢限界に達することを判定する限界間際判定装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
前述のように、バキュームブースタを備えたブレーキ装置においては、バキュームブースタが助勢限界に達した状態のみならず、助勢限界に達する間際である状態も検出し、バキュームブースタが助勢限界に達する時期より先行して、運転者に警告したり、作動遅れを伴う増圧装置を作動させることが要望される場合がある。本ブレーキ装置によれば、この要望を容易に満たすことが可能となるという効果が得られる。
(19)前記限界間際判定装置が間もなくバキュームブースタが助勢限界に達することを判定した場合に、前記ブレーキシリンダの液圧を増圧する増圧装置を含む(18)項に記載のブレーキ装置。
本項のブレーキ装置によれば、バキュームブースタが助勢限界に達する時期より先行して増圧装置の作動を開始させ、増圧装置の作動遅れにかかわらず、ブレーキシリンダの液圧を適切に増圧することができる。
(20)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
作動液を加圧するポンプを備え、前記ブレーキシリンダの液圧を増圧する増圧装置と、
前記負圧室と変圧室との少なくとも一方の圧力に関連する量を検出するブースタ圧力関連量検出手段と、
少なくともそのブースタ圧力関連量検出手段の出力信号に基づき、前記変圧室の圧力がまだ大気圧まで増加しておらず、前記バキュームブースタが助勢限界に達する前であるが、間もなく助勢限界に達する時期に前記ポンプの作動を開始させるポンプ制御装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
(21)前記ポンプ制御装置が、前記マスタシリンダの実際の液圧が助勢限界値より一定値低い値以上となったときに前記ポンプの作動を開始させる手段を備えた(20)項に記載のブレーキ装置。
(22)前記ポンプ制御装置が、前記バキュームブースタの変圧室の実際の圧力が大気圧より一定値低い値以上となったときに前記ポンプの作動を開始させる手段を備えた(20)項に記載のブレーキ装置。
(23)前記増圧装置が、(a) 前記マスタシリンダとブレーキシリンダとを互いに接続する主通路に補助通路により接続された液圧源と、(b) 運転者によるブレーキ操作中であって、前記マスタシリンダの液圧より高い液圧を前記ブレーキシリンダに発生させることが必要である場合に、前記液圧源から作動液を供給させる液圧源制御装置と、(c) 前記主通路のうち前記補助通路との接続点と前記マスタシリンダとの間の部分に設けられ、その主通路におけるブレーキシリンダ側の第2液圧をマスタシリンダ側の第1液圧に対して相対的に制御する圧力制御装置であって、前記液圧源から作動液が供給されている状態では、第2液圧が第1液圧より高いがその差が目標値以下であれば、前記液圧源から前記マスタシリンダへ向かう作動液の流れを阻止し、第2液圧が第1液圧より高くかつその差が前記目標値より大きくなろうとすれば、液圧源からマスタシリンダへ向かう作動液の流れを許容することにより、第2液圧を第1液圧より高くかつその差が前記目標値となるように制御する圧力制御装置とを含む (9),(19)ないし(22)項のいずれかに記載のブレーキ装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
まず、第1実施形態であるブレーキ装置の構成を概略的に説明する。
このブレーキ装置は、図1に示すように、車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるブレーキシリンダ10の液圧源としてマスタシリンダ12とポンプ14とを有する。マスタシリンダ12とブレーキ操作部材としてのブレーキペダル16との間にはバキュームブースタ17が接続されている。マスタシリンダ12とブレーキシリンダ10とは主通路18により互いに接続されている。その主通路18には、その途中に補助通路20によりポンプ14の吐出側が接続されるとともに、補助通路20との接続点とマスタシリンダ12との間の部分に圧力制御弁21が設けられている。圧力制御弁21は、ポンプ14の非作動時には、マスタシリンダ12とブレーキシリンダ10との間の作動液の双方向の流れを許容し、ポンプ14の作動時には、ポンプ14からの作動液をマスタシリンダ12に逃がすとともにその逃がすときのポンプ14の吐出圧の高さをマスタシリンダ12の液圧に基づいて変化させる。ポンプ14には電子制御ユニット(以下、「ECU」と略称する。)22が設けられている。ECU22は、ブースタ圧力関連量検出手段23とマスタシリンダ液圧関連量検出手段24との出力信号に基づき、運転者によるブレーキ操作中であって、マスタシリンダ12の液圧より高い液圧をブレーキシリンダ10に発生させることが必要である場合に、ポンプ14を作動させる。
【0010】
次に、本実施形態の構成を具体的に説明する。
図2には、本実施形態の機械的構成が示されている。本実施形態は、4輪車両に設けられるダイヤゴナル2系統式のブレーキ装置である。このブレーキ装置は、アンチロック制御機能を有し、また、アンチロック制御中、ポンプ14により作動液をブレーキ回路内において還流させる。そして、本実施形態は、ブレーキ操作中、そのポンプ14を利用してブレーキ効き特性制御(以下、単に「効き特性制御」という。)を実行する。ここで、「効き特性制御」とは、バキュームブースタ17に助勢限界があることを考慮し、車体減速度Gがブレーキ操作力F(運転者がブレーキペダル16を踏む力)に対して理想的な勾配で(例えば、バキュームブースタ17の助勢限界の前後を問わず、ほぼ同じ勾配で)増加するようにそれらブレーキ操作力Fと車体減速度Gとの関係であるブレーキの効き特性を制御することをいう。
【0011】
マスタシリンダ12は、図2に示すように、ハウジングに2つの加圧ピストン12a,12bが互いに直列にかつ各々摺動可能に嵌合されることによってハウジング内に各加圧ピストン12a,12bの前方において2つの加圧室が互いに独立して形成されたタンデム型である。このマスタシリンダ12は、バキュームブースタ17を介してブレーキペダル16に連携させられており、そのブレーキペダル16の踏力であるブレーキ操作力Fがマスタシリンダ12の2つの加圧ピストン12a,12bのうちバキュームブースタ17の側の加圧ピストン12aにバキュームブースタ17により倍力されて伝達される。
【0012】
バキュームブースタ17は、図3に示すように、中空のハウジング25を備えている。ハウジング25内の空間は、パワーピストン26によりマスタシリンダ12の側の負圧室27とブレーキペダル16の側の変圧室28とに仕切られている。負圧室27は、負圧源としてのエンジン吸気管に常時接続されている。パワーピストン26は、マスタシリンダ12の側において、ゴム製のリアクションディスク29を介してブースタピストンロッド30と連携させられている。ブースタピストンロッド30はマスタシリンダ12の加圧ピストン12aに連携させられ、パワーピストン26の作動力を加圧ピストン12aに伝達する。
負圧室27と変圧室28との間に弁機構31が設けられている。弁機構31は、ブレーキペダル16と連携させられているバルブオペレーティングロッド32とパワーピストン26との相対移動に基づいて作動するものであり、コントロールバルブ31aと、エアバルブ31bと、バキュームバルブ31cと、コントロールバルブスプリング31dとを備えている。エアバルブ31bは、コントロールバルブ31aと共同して変圧室28の大気に対する連通・遮断を選択的に行うものであり、バルブオペレーティングロッド32に一体的に移動可能に設けられている。コントロールバルブ31aは、バルブオペレーティングロッド32にコントロールバルブスプリング31dによりエアバルブ31bに着座する向きに付勢される状態で取り付けられている。バキュームバルブ31cは、コントロールバルブ31aと共同して変圧室28の負圧室27に対する連通・遮断を選択的に行うものであり、パワーピストン26に一体的に移動可能に設けられている。
このように構成されたバキュームブースタ17においては、非作動状態では、コントロールバルブ31aが、エアバルブ31bに着座する一方、バキュームバルブ31cから離間し、それにより、変圧室28が大気から遮断されて負圧室27に連通させられる。したがって、この状態では、負圧室27も変圧室28も共に等しい高さの負圧(大気圧以下の圧力)とされる。これに対して、作動状態では、バルブオペレーティングロッド32がパワーピストン26に対して相対的に接近し、やがてコントロールバルブ31aがバキュームバルブ31cに着座し、それにより、変圧室28が負圧室27から遮断される。その後、バルブオペレーティングロッド32がパワーピストン26に対してさらに相対的に接近すれば、エアバルブ31bがコントロールバルブ31aから離間し、それにより、変圧室28が大気に連通させられる。この状態では、変圧室28が昇圧し、負圧室27と変圧室28との間に差圧が発生し、その差圧によってパワーピストン26が作動させられる。
【0013】
図2に示すように、マスタシリンダ12の一方の加圧室には左前輪FLおよび右後輪RR用の第1ブレーキ系統が接続され、他方の加圧室には右前輪FRおよび左後輪RL用の第2ブレーキ系統が接続されている。それらブレーキ系統は互いに構成が共通するため、以下、第1ブレーキ系統のみを代表的に説明し、第2ブレーキ系統については説明を省略する。
第1ブレーキ系統においては、マスタシリンダ12が主通路18により左前輪FLのブレーキシリンダ10と右後輪RRのブレーキシリンダ10とにそれぞれ接続されている。主通路18は、マスタシリンダ12から延び出た後に二股状に分岐させられており、1本の基幹通路34と2本の分岐通路36とが互いに接続されて構成されている。各分岐通路36の先端にブレーキシリンダ10が接続されている。各分岐通路36の途中には常開の電磁開閉弁である増圧弁40が設けられ、開状態でマスタシリンダ12からブレーキシリンダ10へ向かう作動液の流れを許容する増圧状態を実現する。各増圧弁40にはバイパス通路42が接続され、各バイパス通路42には作動液戻り用の逆止弁44が設けられている。各分岐通路36のうち増圧弁40とブレーキシリンダ10との間の部分からリザーバ通路46が延びてリザーバ48に至っている。各リザーバ通路46の途中には常閉の電磁開閉弁である減圧弁50が設けられ、開状態でブレーキシリンダ10からリザーバ48へ向かう作動液の流れを許容する減圧状態を実現する。
リザーバ48は、ハウジングにリザーバピストン54が実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されて構成されるとともに、その嵌合によって形成されたリザーバ室56において作動液を付勢手段としてのスプリング58によって圧力下に収容するものである。このリザーバ48はポンプ通路60により、ポンプ14の吸入側に接続されている。ポンプ14の吸入側には逆止弁である吸入弁62、吐出側には逆止弁である吐出弁64がそれぞれ設けられている。ポンプ14の吐出側と主通路18とを互いに接続する補助通路20には、絞りとしてのオリフィス66と固定ダンパ68とがそれぞれ設けられており、それらにより、ポンプ14の脈動が軽減される。
【0014】
ここで、圧力制御弁21の構造を図4に基づいて詳細に説明する。
圧力制御弁21は、マスタシリンダ液圧とブレーキシリンダ液圧との関係を電磁的に制御する形式である。圧力制御弁21は具体的には、図4に示すように、図示しないハウジングと、主通路18におけるマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間の作動液の流通状態を制御する弁子70およびそれが着座すべき弁座72と、それら弁子70および弁座72の相対移動を制御する磁気力を発生させるソレノイド74とを有している。
この圧力制御弁21においては、ソレノイド74が励磁されない非作用状態(OFF状態)では、スプリング76の弾性力によって弁子70が弁座72から離間させられ、それにより、主通路18においてマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れが許容され、その結果、ブレーキ操作が行われれば、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧と等圧で変化させられる。このブレーキ操作中、弁子70には、弁座72から離間する向きに力が作用するため、ソレノイド74が励磁されない限り、マスタシリンダ液圧すなわちブレーキシリンダ液圧が高くなっても、弁子70が弁座72に着座してしまうことはない。すなわち、圧力制御弁21は常開弁なのである。
これに対し、ソレノイド74が励磁される作用状態(ON状態)では、ソレノイド74の磁気力によりアーマチュア78が吸引され、そのアーマチュア78と一体的に移動する可動部材としての弁子70が固定部材としての弁座72に着座させられる。このとき、弁子70には、ソレノイド74の磁気力に基づく吸引力F1 と、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差に基づく力F2 とスプリング76の弾性力F3 との和とが互いに逆向きに作用する。力F2 の大きさは、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差と、弁子70がブレーキシリンダ液圧を受ける実効受圧面積との積で表される。
ソレノイド74が励磁される作用状態(ON状態)であって、ポンプ14の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がそれほど増加せず、
2 ≦F1 −F3
なる式で表される関係が成立する領域では、弁子70が弁座72に着座し、ポンプ14からの作動液がマスタシリンダ12に逃げることが阻止され、ポンプ14の吐出圧が増加し、ブレーキシリンダ10にマスタシリンダ液圧より高い液圧が発生させられる。これに対し、ポンプ14の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がさらに増加し、
2 >F1 −F3
なる式で表される関係が成立しようとする領域では、弁子70が弁座72から離間し、ポンプ14からの作動液がマスタシリンダ12に逃がされ、その結果、ポンプ14の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がそれ以上増加することが阻止される。このようにしてブレーキシリンダ10には、スプリング76の弾性力F3 を無視すれば、マスタシリンダ液圧に対してソレノイド吸引力F1 に基づく差圧分高い液圧が発生させられることになる。
また、圧力制御弁21は、図5にグラフで表されているように、ソレノイド74の磁気力である吸引力F1 の大きさがソレノイド74の励磁電流Iの大きさに応じてリニアに変化するように設計されている。
【0015】
この圧力制御弁21には図2に示すように、バイパス通路82が設けられており、そのバイパス通路82の途中に逆止弁84が設けられている。万が一、ブレーキペダル16の踏み込み時に圧力制御弁21内の可動部材に生ずる流体力によって圧力制御弁21が閉じることがあっても、マスタシリンダ12からブレーキシリンダ10へ向かう作動液の流れが確保されるようにするためである。圧力制御弁21にはさらに、それに並列にリリーフ弁86も設けられている。ポンプ14による吐出圧が過大となることを防止するためである。
【0016】
効き特性制御の実行中には、ポンプ14がリザーバ48から作動液を汲み上げ、その作動液を各ブレーキシリンダ10に吐出することによって各ブレーキシリンダ10が増圧されるが、アンチロック制御が実行されていない場合には、リザーバ48に汲み上げるべき作動液が存在しないのが普通であり、効き特性制御の実行を確保するためには、アンチロック制御の実行の有無を問わず、リザーバ48に作動液を補給することが必要となる。そのため、本実施形態においては、基幹通路34のうちマスタシリンダ12と圧力制御弁21との間の部分から延びてリザーバ48に至る補給通路88が設けられている。しかし、この補給通路88により常時マスタシリンダ12とリザーバ48とを互いに連通させたのでは、ブレーキペダル16が操作されても、リザーバ48においてリザーバピストン54がボトミングした後でないとマスタシリンダ12が昇圧することができず、ブレーキの効き遅れが生じる。また、アンチロック制御中、ポンプ14は作動液をリザーバ48からではなくマスタシリンダ12から汲み上げてしまい、リザーバ48による減圧機能が阻害される。
そこで、本実施形態においては、補給通路88の途中に流入制御弁90が設けられている。流入制御弁90は、マスタシリンダ12からリザーバ48への作動液の補給が必要であるときには開状態となり、マスタシリンダ12からリザーバ48への作動液の流れを許容し、一方、マスタシリンダ12からリザーバ48への作動液の補給が必要ではないときには閉状態となり、マスタシリンダ12からリザーバ48への作動液の流れを阻止し、マスタシリンダ12による昇圧を可能とする。本実施形態においては、流入制御弁90が常閉の電磁開閉弁とされている。また、本実施形態においては、マスタシリンダ12から作動液を導入することが必要である場合であるか否かの判定が、アンチロック制御中、リザーバ48においてポンプ14により汲み上げるべき作動液が存在しないか否かの判定とされ、また、その作動液の存否判定が、増圧弁40が増圧状態にある時間の積算値と、減圧弁50が減圧状態にある時間の積算値とがそれぞれ演算されるとともに、それら増圧時間と減圧時間とに基づいてリザーバ48における作動液の残量が推定されることにより、行われる。
【0017】
ブレーキ操作中、主通路18のうち圧力制御弁21より上流側の部分内の作動液を利用してポンプ14による作動液の加圧を行う際、その上流側部分内の高圧の作動液をリザーバ48により低圧にしてポンプ14により汲み上げるより、リザーバ48により低圧にしないで汲み上げる方が、ポンプ14の作動応答性が向上するとともに、ポンプ14の負担軽減によってポンプ14の低能力化が容易となる。
そこで、本実施形態においては、ポンプ通路60のうち補給通路88との接続点とリザーバ通路46との接続点との間の部分に、補給通路88からリザーバ48に向かう作動液の流れを阻止し、その逆向きの流れを許容する逆止弁92が設けられている。
【0018】
図6には、本実施形態の電気的構成が示されている。前記ECU22は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されており、そのROMに記憶されているブレーキ効き特性制御ルーチンおよびアンチロック制御ルーチンがCPUによりRAMを使用しつつ実行されることにより、効き特性制御とアンチロック制御とがそれぞれ実行される。
【0019】
ECU22の入力側には、ブレーキスイッチ102,ブースタ負圧スイッチ(ブースタ圧力関連量検出手段23の一例)104,マスタシリンダ液圧センサ(マスタシリンダ液圧関連量検出手段24の一例)106および車輪速センサ108が接続されている。
ブレーキスイッチ102は、ブレーキペダル16が操作されていなければOFF状態のブレーキ操作信号を出力し、一方、操作されていればON状態のブレーキ操作信号を出力し、それにより、ブレーキ操作の有無を表す情報をECU22に供給する。
ブースタ負圧スイッチ104は、バキュームブースタ17に取り付けられ、それの変圧室28の圧力PV を受けて作動する。ブースタ負圧スイッチ104は、図7にグラフで表されているように、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM より低い基準値PV0より低い状態ではOFF状態のブースタ負圧信号(第1信号)を出力し、一方、基準値PV0以上である状態ではON状態のブースタ負圧信号(第2信号)を出力する。すなわち、本実施形態においては、ブースタ負圧スイッチ104が、変圧室圧力関連量検出手段の一例であるとともに、変圧室28の圧力PV に応じて作動する圧力スイッチの一例とされているのである。
マスタシリンダ液圧センサ106は、マスタシリンダ12の液圧を受けて作動し、マスタシリンダ液圧PM の高さを規定するマスタシリンダ液圧信号であってマスタシリンダ液圧PM が連続的に変化するのに応じて連続的に変化するものを出力する。
車輪速センサ108は、各輪毎に設けられ、各輪の車輪速を規定する車輪速信号を出力する。
【0020】
一方、ECU22の出力側には、図6に示すように、前記ポンプ14を駆動するポンプモータ114が接続され、そのポンプモータ114の駆動回路にモータ駆動信号が出力される。ECU22の出力側にはさらに、前記圧力制御弁21のソレノイド74,流入制御弁90,増圧弁40および減圧弁50の各ソレノイド116も接続されている。圧力制御弁21のソレノイド74には、ソレノイド74の磁気力をリニアに制御するための電流制御信号が出力され、一方、流入制御弁90,増圧弁40および減圧弁50の各ソレノイド116にはそれぞれ、ソレノイド116をON/OFF駆動するためのON/OFF駆動信号が出力される。
【0021】
以下、この圧力制御弁21を用いたECU22による効き特性制御を説明するが、まず、概略的に説明する。
バキュームブースタ17は、ブレーキ操作力Fがある値まで増加すると、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM まで上昇し切ってしまい、助勢限界に達する。助勢限界後は、バキュームブースタ17はブレーキ操作力Fを倍力することができないから、何ら対策を講じないと、図8にグラフで表されているように、ブレーキの効き、すなわち、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ液圧PB の高さが助勢限界がないと仮定した場合におけるブレーキシリンダ液圧PB の高さより低下する。かかる事実に着目して効き特性制御が行われるのであり、具体的には、図9にグラフで表されているように、バキュームブースタ17が助勢限界に達した後には、ポンプ14を作動させてマスタシリンダ液圧PM より差圧ΔPだけ高い液圧をブレーキシリンダ10に発生させ、それにより、バキュームブースタ17の助勢限界の前後を問わず、ブレーキの効きを安定させる。ここに、差圧ΔPとマスタシリンダ液圧PM との関係は例えば、図10にグラフで表されるものとされる。
したがって、効き特性制御を行うためには、バキュームブースタ17が助勢限界に達したか否かを判定することが必要になるが、バキュームブースタ17が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ液圧PM は常に一定であるとは限らず、車両の状態、例えば、運転者による加速操作の有無やその加速操作の強さやエンジンの負荷等によって負圧室27の圧力PC の高さが変動すればそれに伴って変化する。具体的には、図11にグラフで表されているように、負圧室27の圧力PC がノーマル値より負圧側にシフトすれば(負圧傾向が強まり、大気圧との差が大きくなれば)、バキュームブースタ17が助勢限界に達する際のブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ液圧PM(ひいてはブレーキシリンダ液圧PB)がノーマル値より大きくなり、逆に、負圧室27の圧力PC がノーマル値より正圧側にシフトすれば(負圧傾向が弱まり、大気圧との差が小さくなれば)、バキュームブースタ17が助勢限界に達する際のブレーキ操作力F,マスタシリンダ液圧PM およびブレーキシリンダ液圧PBがノーマル値より小さくなる。そのため、負圧室27の圧力PC の変動を考慮しないでブレーキ操作力Fまたはマスタシリンダ液圧PM がある値まで増加したときにバキュームブースタ17が助勢限界に達したと判定し、ポンプ14を作動させてブレーキシリンダ液圧PB を差圧ΔPだけ増圧したのでは、図12にグラフで表されているように、負圧室27の圧力PC の変動に伴い、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ液圧PB の高さが変動し、ブレーキの効きが安定しない。
したがって、効き特性制御を行うためには、バキュームブースタ17が助勢限界に達したか否かを判定することが必要になるが、バキュームブースタ17が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ液圧PM は常に一定であるとは限らず、車両の状態、例えば、運転者による加速操作の有無やその加速操作の強さやエンジンの負荷等によって負圧室27の圧力PC の高さが変動すればそれに伴って変化する。具体的には、図11にグラフで表されているように、負圧室27の圧力PC がノーマル値より負圧側にシフトすれば(負圧傾向が強まり、大気圧との差が大きくなれば)、バキュームブースタ17が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ液圧PM がノーマル値より大きくなり、逆に、負圧室27の圧力PC がノーマル値より正圧側にシフトすれば(負圧傾向が弱まり、大気圧との差が小さくなれば)、バキュームブースタ17が助勢限界に達したときのブレーキ操作力Fおよびマスタシリンダ液圧PM がノーマル値より小さくなる。そのため、負圧室27の圧力PC の変動を考慮しないでブレーキ操作力Fまたはマスタシリンダ液圧PM がある値まで増加したときにバキュームブースタ17が助勢限界に達したと判定し、ポンプ14を作動させてブレーキシリンダ液圧PB を差圧ΔPだけ増圧したのでは、図12にグラフで表されているように、負圧室27の圧力PC の変動に伴い、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ液圧PB の高さが変動し、ブレーキの効きが安定しない。
【0022】
ところで、ブレーキペダル16,バキュームブースタ17およびマスタシリンダ12を主体とする力伝達系においては、バキュームブースタ17が助勢限界前であれば、ブレーキ操作力Fと、マスタシリンダ液圧PM と、負圧室27と変圧室28との差圧であるブースタ負圧PVBとの間に次式(1) で表される関係が成立する。
M ×PM =AVB×PVB+RP ×F
ただし、
M :マスタシリンダ12の加圧ピストン12a,12bの有効受圧面積
VB :バキュームブースタ17のパワーピストン26の有効受圧面積
P :ブレーキペダル16を含むブレーキ操作機構の倍力率(レバー比)
この状態から、ブレーキ操作力Fが一定時間当たりにΔF増加し、その結果、マスタシリンダ液圧PM はΔPM 、差圧PVBはΔPVBそれぞれ増加したと仮定すれば、ブレーキ操作力Fとマスタシリンダ液圧PM とブースタ負圧PVBとの間に次式(2) で表される関係が成立する。
M ×(PM +ΔPM )=AVB×(PVB+ΔPVB)+RP ×(F+ΔF)
この式は、上記式(1) を用いることにより、次式(3) に変形できる。
M ×ΔPM =AVB×ΔPVB+RP ×ΔF
【0023】
ところで、バキュームブースタ17の倍力率RVB(サーボ比)は一般に、次式(4) で定義される。
VB=(AVB×ΔPVB+RP ×ΔF)/RP ×ΔF
この式(4) において分母はバキュームブースタ14の入力、分子は出力をそれぞれ表している。この式(4) を用いれば、増加量ΔFは次式(5) で表される。
ΔF={AVB/(RP×(RVB−1))}×ΔPVB
この式(5) を用いれば、上記式(3) は次式(6) に変形できる。
M ×ΔPM =(AVB×RVB/(RVB−1))×ΔPVB
したがって、増加量ΔPM と増加量ΔPVBとの間に次式(7) で表される関係が成立する。
ΔPM =((AVB/AM )×RVB/(RVB−1))×ΔPVB
【0024】
ここに、ある期間中、負圧室27の圧力PC が変動しないと仮定すれば、その間、ブースタ負圧PVBの一定時間当たりの増加量ΔPVBと変圧室28の圧力PV の一定時間当たりの増加量ΔPV との間に次式(8) で表される関係が成立する。
ΔPVB=ΔPV
したがって、増加量ΔPM と増加量ΔPV との間に次式(9) で表される関係が成立する。
ΔPM =((AVB/AM )×RVB/(RVB−1))×ΔPV
この式(9) において「((AVB/AM )×RVB/(RVB−1))」は、横軸に変圧室28の圧力PV 、縦軸にマスタシリンダ液圧PM を取ったグラフの、バキュームブースタ17が助勢限界に達する前における傾きSを表している。
【0025】
ここで、「増加量ΔPV 」を、変圧室28の圧力PV の、それが前記基準値PV0に達したときから大気圧PATM まで増加するときまでの増加量と定義すれば、「増加量ΔPM 」は、マスタシリンダ液圧PM の、変圧室28の圧力PV が基準値PV0から大気圧PATM まで増加するときの増加量、すなわち、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に達するときまでの増加量を意味することとなる。よって、変圧室28の圧力PV が基準値PV0に達したときにマスタシリンダ液圧PM の実際値を検出し、それを基準値PM1とすれば、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に達するときのマスタシリンダ液圧PM である助勢限界値PM0が、
M0=PM1+ΔPM
なる式で求められることになる。それら基準値PM1と助勢限界値PM0と増加量ΔPM との関係はグラフで表せば図13に示すものとなる。
そこで、本実施形態においては、効き特性制御が、実際のマスタシリンダ液圧PM が助勢限界値PM0に達したときにポンプ14を作動させるものとされている。そして、効き特性制御においては、マスタシリンダ12とブレーキシリンダ10との差圧ΔPとマスタシリンダ液圧PM との関係が図14にグラフで表されるようになるように圧力制御弁21のソレノイド74の励磁電流Iが制御される。
例えば、図15にグラフで表されているように、変圧室28の圧力PV が負圧室27の圧力PC に等しい状態で、時期t1 にブレーキ操作が開始され、ブレーキ操作力Fが0から増加すれば、それに伴って変圧室28の圧力PV が大気圧PATM に向かって上昇を始める。時期t2 に変圧室28の圧力PV が基準値PV0まで上昇すれば、そのときの実際のマスタシリンダ液圧PM が基準値PM1とされるとともに、基準値PM1と、増加量ΔPV に対応する増加量ΔPM との和として、助勢限界値PM0が求められる。その後、時期t3 に実際のマスタシリンダ液圧PM が助勢限界値PM0まで上昇すれば、その後、ブレーキ操作力Fが増加するにもかかわらず変圧室28の圧力PV が大気圧PATM で一定に保たれるにもかかわらず、ポンプ14が作動させられることによってブレーキシリンダ液圧PB が増加させられる。
その後、ブレーキ操作力Fが減少し、やがて、時期t4 に実際のマスタシリンダ液圧PM が助勢限界値PM0より低くなれば、ポンプ14が停止させられ、その後、変圧室28の圧力PV が低下し、時期t5 にブレーキ操作力Fが0に、変圧室28の圧力PV が負圧室27の圧力PC と等しい高さに復帰する。
この一連のブレーキ操作の間、負圧室27の圧力PC はほぼ一定に保たれるがある回の一連のブレーキ操作と別の回の一連のブレーキ操作との間で負圧室27の圧力PC が異なる場合がある。一方、負圧室27の圧力PC の高さは、変圧室28の圧力PV が基準値PV0に達したときの実際のマスタシリンダ液圧PM すなわち基準値PM0に反映される。したがって、本実施形態によれば、ある回の一連のブレーキ操作と別の回の一連のブレーキ操作との間で負圧室28の圧力PC の高さが異なっても、ブレーキの効きが異なることが防止され、常に安定したブレーキ性能が発揮されるのである。
【0026】
ところで、バキュームブースタ17は常に正常に作動するとは限らず、何らかの事情で負圧室27の圧力PC が十分に強い負圧にならず、失陥する場合がある。図16にグラフで表されているように、バキュームブースタ17が正常であるか失陥したかによって効き特性が変化する。そのため、バキュームブースタ17が常に正常であると仮定して効き特性制御を行ったのでは、バキュームブースタ17の失陥時に運転者は大きな力でブレーキペダル16を操作することが必要となる。
そこで、本実施形態においては、効き特性制御が、バキュームブースタ17が失陥したか否かを判定し、図17にグラフで表されているように、失陥した場合には助勢限界値PM0を0とすることにより、実際のマスタシリンダ液圧PM が0より僅かでも高くなればポンプ14を作動させるものとされている。
【0027】
効き特性制御は、負圧室27の圧力PC を圧力センサ,圧力スイッチ等の圧力検出手段により検出して、エンジン作動中にもかかわらず負圧室27の圧力PC が大気圧PATM より低い基準値PC0より高いときに、バキュームブースタ17が失陥していると判定するものとすることができる。しかし、このようにした場合には、負圧室27と変圧室28とにそれぞれ圧力検出手段を設けなればならない。
そこで、本実施形態においては、ブレーキ操作が行われていない状態では、負圧室27と変圧室28とが等圧であり、変圧室28の圧力PV を検出することによって負圧室27の圧力PC を知ることができることに着目し、圧力検出手段としての前記ブースタ負圧スイッチ104を利用してバキュームブースタ17の失陥判定が行われる。すなわち、本実施形態においては、変圧室28の圧力PV を検出する圧力検出手段が、バキュームブースタ17の助勢限界への到達判定とバキュームブースタ17の失陥判定とに共用されているのである。
【0028】
図18には、効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。
本ルーチンは、運転者により車両のイグニションスイッチがON状態に操作された後、繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、次に、S2において、ブースタ負圧スイッチ104からブースタ負圧信号が取り込まれる。その後、S3において、バキュームブースタ17が失陥しているか否かの判定が行われる。
このS3の詳細が図19にブースタ失陥判定ルーチンとして示されている。本ルーチンにおいてはまず、S31において、ブレーキスイッチ102からブレーキ操作信号が取り込まれるとともに、そのブレーキ操作信号に基づき、現在ブレーキ操作中であるか否かが判定される。今回はブレーキ操作中であると仮定すれば判定がYESとなり、直ちに本ルーチンの実行が終了し、図18のS4に移行するが、今回はブレーキ操作中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S32において、ブースタ負圧スイッチ104がOFF状態であるか否か、すなわち、現在負圧室27に連通している変圧室28に強い負圧が発生しているか否かが判定される。今回はブースタ負圧スイッチ104がOFF状態であると仮定すれば、判定がYESとなり、S33において、バキュームブースタ17が正常であると判定される。これに対して、今回はブースタ負圧スイッチ104がON状態であると仮定すれば、S32の判定がNOとなり、S34において、バキュームブースタ17が失陥していると判定される。いずれの場合も、以上で本ルーチンの一回の実行が終了し、図18のS4に移行する。
【0029】
このS4においては、RAMに設けられた制御フラグが0であるか否かが判定される。この制御フラグは、ブースタ負圧スイッチ104がOFF状態からON状態に切り換わったことに応じて助勢限界値PM0が演算された後、ブースタ負圧スイッチ104がOFF状態に復帰するまでの間、助勢限界値PM0が更新されることを防止するために設けられており、ECU22のコンピュータの電源投入に伴って0に初期化される。今回は制御フラグが0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S5に移行する。
このS5においては、ブースタ負圧スイッチ104がON状態であるか否かが判定される。今回はバキュームブースタ17が失陥しておらず、しかも、ブレーキ操作力Fが小さいため、ブースタ負圧スイッチ104がON状態ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S6において、バキュームブースタ17が助勢限界前であると判定される。その後、S7において、圧力制御弁21のソレノイド74にそれをOFFする信号が出力され、それにより、圧力制御弁21が開状態とされる。続いて、S8において、流入制御弁90のソレノイド116にそれをOFFする信号が出力され、それにより、流入制御弁90が閉状態とされる。その後、S9において、ポンプモータ114にそれをOFFする信号が出力される。
続いて、S10において、ブースタ負圧スイッチ104がOFF状態にあるか否かが判定される。OFF状態にあると仮定すれば判定がYESとなり、S11において、制御フラグを0に初期化する信号が出力され、ON状態にあると仮定すればS10の判定がNOとなり、S11がスキップされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0030】
これに対して、今回はバキュームブースタ17が失陥しているか、または、失陥してはいないがブレーキ操作力Fが大きいため、ブースタ負圧スイッチ104がON状態であると仮定すれば、S5の判定がYESとなり、S12以下のステップが実行される。
まず、S12において、前記S3においてバキュームブースタ17が失陥していると判定されたか否かが判定される。今回は失陥してはいないと判定されたと仮定すれば、判定がNOとなり、S13において、前記S1において取り込まれたマスタシリンダ液圧信号に基づいて前記基準値PM1が決定されるとともに、助勢限界値PM0が、前述の、
M0=PM1+S×ΔPV
なる式によって演算される。この式において「S」は、既知の定数であり、ROMに記憶されている。これに対して、今回はバキュームブースタ17が失陥していると仮定すれば、S12の判定がYESとなり、S14において、助勢限界値PM0が0とされる。
【0031】
いずれの場合にも、その後、S15において、前記制御フラグが1とされ、続いて、S16において、前記マスタシリンダ液圧信号に基づき、現在のマスタシリンダ液圧PM が助勢限界値PM0以上であるか否かが判定される。今回は助勢限界値PM0より低いと仮定すれば、判定がNOとなり、S6以下のステップに移行し、これに対して、今回は助勢限界値PM0以上であると仮定すれば、S16の判定がYESとなり、S17以下のステップに移行する。
まず、S17において、現在、バキュームブースタ17が助勢限界に達した後であると判定され、次に、S18において、現在のマスタシリンダ液圧PM に基づき、マスタシリンダ液圧PM とブレーキシリンダ液圧PB との差圧ΔPの目標値が演算される。マスタシリンダ液圧PM の実際値の、助勢限界値PM0からの増分IPM と、目標差圧ΔPとの関係がROMに記憶されており、その関係に従って現在のマスタシリンダ液圧PM に対応する目標差圧ΔPが決定されるのである。その関係は例えば、図20にグラフで表されているように、増分IPM が増加するにつれて目標差圧ΔPが0からリニアに増加する関係とされる。
その後、S19において、圧力制御弁21のソレノイド74の、その目標差圧ΔPに応じた電流値Iが演算される。目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係もROMに記憶されており、その関係に従って目標差圧ΔPに対応するソレノイド電流値Iが演算されるのである。続いて、S20において、その電流値Iで励磁電流がソレノイド74に供給されることにより、圧力制御弁21が制御される。その後、S21において、流入制御弁90が制御される。
【0032】
このS21の詳細が図21に流入制御弁制御ルーチンとしてフローチャートで表されている。
まず、S61において、現在アンチロック制御の実行中であるか否かが判定される。実行中ではないと仮定すれば判定がNOとなり、S62において、流入制御弁90のソレノイド116にそれをONする信号、すなわち、流入制御弁90を開かせるための信号が出力される。これにより、マスタシリンダ12から作動液が補給通路88を経てポンプ14に導入可能となる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
これに対し、現在アンチロック制御の実行中であると仮定すればS61の判定がYESとなり、S63において、リザーバ48においてポンプ14により汲み上げるべき作動液として存在する作動液の量の推定演算、すなわち,リザーバ残量の推定演算が行われる。続いて、S64において、推定されたリザーバ残量が0であるか否か、すなわち、リザーバ48においてポンプ14により汲み上げるべき作動液が存在しないか否かが判定される。今回はリザーバ残量が0ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S65において、流入制御弁90のソレノイド116にそれをOFFする信号、すなわち、流入制御弁90を閉じさせるための信号が出力される。一方、今回はリザーバ残量が0であると仮定すれば、S64の判定がYESとなり、S62において、流入制御弁90にそれを開かせるための信号が出力される。いずれの場合も、以上で本ルーチンの一回の実行が終了し、図18のS22に移行する。このS22においては、ポンプモータ114にそれをONする信号が出力され、これにより、ポンプ14によりリザーバ48から作動液が汲み上げられ、作動液が各ブレーキシリンダ10に吐出され、これにより、各ブレーキシリンダ10がマスタシリンダ液圧PM よりそのマスタシリンダ液圧PM に応じた目標差圧ΔPだけ高い液圧が発生させられる。その後、S10に移行し、今回はブースタ負圧スイッチ104がOFF状態にはないから、判定がNOとなり、S11がスキップされ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0033】
その後、今回の一連のブレーキ操作が終了し、ブレーキ操作力Fが低下すれば、それに伴って変圧室27の圧力PV も低下し、やがてブースタ負圧スイッチ104がOFF状態となる。その結果、S10の判定がYESとなり、S11において、制御フラグが0に初期化される。
【0034】
以上、ブレーキ効き特性制御ルーチンの内容を図面に基づいて詳細に説明したが、アンチロック制御ルーチンは、本発明と直接に関係しないため、簡単に説明する。アンチロック制御ルーチンは、車輪速センサ108により各輪の車輪速および車体の走行速度を監視しつつ、増圧弁40は開状態、減圧弁50は閉状態とする増圧状態,増圧弁40も減圧弁50も閉状態とする保持状態および増圧弁40は閉状態、減圧弁50は開状態とする減圧状態を選択的に実現することにより、車両制動時に各輪がロックすることを防止する。さらに、アンチロック制御ルーチンは、アンチロック制御中ポンプモータ114を作動させ、ポンプ14によりリザーバ48から作動液を汲み上げて主通路18に戻す。
【0035】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU22のうち図18のS1〜S6およびS12〜17を実行する部分が、「判定装置」の一例を構成し、その同じ部分が、「第1判定手段」の一例を構成しているのである。また、本実施形態においては、ポンプ14(液圧源の一例)と、ECU22のうち図18のS9,S16およびS22を実行する部分(液圧源制御装置の一例)と、圧力制御弁21(圧力制御装置の機械的構成部分の一例)と、ECU22のうち図18のS7およびS18〜S20を実行する部分(圧力制御装置の電気的構成部分の一例)とが、「第2の助勢装置」の一例を構成しているのである。
【0036】
なお付言すれば、本実施形態には種々の改良を加えることができる。
例えば、図18のルーチンにつき、ポンプ14の作動遅れを考慮し、実際のマスタシリンダ液圧PM が助勢限界値PM0より一定値低い値以上となったときにポンプ14を作動させ、それにより、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に達するのに先行してポンプ14の作動を開始させる改良を加えることができる。
【0037】
また、同図のルーチンにつき、ブースタ負圧スイッチ104の異常を検出するとともに、異常が検出されたときには、S13において、助勢限界値PM0を負圧室27の圧力がノーマル値であると仮定して決定する改良を加えることができる。なお、ブースタ負圧スイッチ104の異常検出は例えば、イグニションスイッチがON状態にあり、かつ、エンジンが始動していない場合に、ブースタ負圧スイッチ104がOFF状態であれば、ブースタ負圧スイッチ104が異常であると検出する方式とすることができる。
【0038】
さらに、図21のルーチンにつき、リザーバ48における作動液の残量を直接センサにより検出する改良を加えることができる。残量は例えば、リザーバ48におけるリザーバピストン54に永久磁石を一体的に移動可能に設け、それに近接してセンサとしてのリードスイッチを設けることにより検出することができる。
【0039】
さらに、同図のルーチンにつき、アンチロック制御が実行中であるか否かを問わず、リザーバ48における作動液の残量を推定または検出し、推定または検出された残量が0でなければ流入制御弁90を閉状態とし、0であれば開状態とする改良を加えることができる。
【0040】
さらに、同図のルーチンにつき、それの一連の複数回の実行の開始直前に(各回の効き特性制御の開始直前に)リザーバ48に作動液が存在する可能性がない場合(例えば、アンチロック制御の不実行状態で本ルーチンの一連の実行が開始される場合)には、作動液の存否判定なしで流入制御弁90を開かせるべく、直ちにS62を実行し、一方、可能性がある場合(例えば、アンチロック制御の実行状態で本ルーチンの一連の実行が開始される場合)には、作動液の存否判定を行って作動液が存在しない場合に限り流入制御弁90を開かせるべく、S64を経てS62とS65とを選択的に実行する改良を加えることができる。このようにすれば、効き特性制御の終了時に、後続する将来的なアンチロック制御に備えて、ポンプ14を駆動することによってリザーバ48を空にすることができないブレーキシステムでありながら、効き特性制御中、マスタシリンダ12からリザーバ48に作動液が無駄に流入することが防止され、結果的に、効き特性制御の終了時にリザーバ48ができる限り空になるようにされ、それにより、後続する将来的なアンチロック制御の開始時にリザーバ48が作動液で溢れてブレーキシリンダ10の減圧を正常に行い得ない事態の発生を回避し得る。なお、リザーバ48を専用の戻り通路によりマスタシリンダ12用のリザーバ23と接続するとともに、その戻り通路の途中に別のポンプと別の開閉弁とを互いに直列に設け、効き特性制御の終了時にその開閉弁を開かせてそのポンプを駆動するようにすれば、効き特性制御の終了時にリザーバ48を確実に空にすることが可能となる。
【0041】
次に第2実施形態を説明する。なお、本実施形態は先の第1実施形態と共通する部分が多いため、共通する部分は同一の符号を使用することによって説明を省略し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0042】
本実施形態においては、第1実施形態と異なり、図22に示すように、ブースタ負圧スイッチ200が、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM より低い状態ではOFF状態のブースタ負圧信号を出力し、大気圧PATM 以上の状態ではON状態のブースタ負圧信号を出力するものとされている。また、本実施形態においては、ECU202は、ブースタ負圧スイッチ200とマスタシリンダ液圧センサ106との出力信号に基づいてポンプ14を制御することにより、効き特性制御を実行する。
図23には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。以下、このフローチャートに基づいて本実施形態における効き特性制御を説明するが、第1実施形態における図18のフローチャートと共通する部分については簡単に説明する。
【0043】
本ルーチンも車両走行中繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、S101において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、次に、S102において、ブースタ負圧スイッチ200からブースタ負圧信号が取り込まれる。続いて、S103において、前記制御フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であると仮定すれば判定がYESとなり、S104において、ブースタ負圧スイッチ200がON状態にあるか否か、すなわち、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM 以上であるか否かが判定される。今回はON状態にはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S105において、バキュームブースタ17が助勢限界前であると判定される。その後、S106において、圧力制御弁21のソレノイド74がOFFされ、S107において、流入制御弁90のソレノイド116がOFFされ、S108において、ポンプモータ114がOFFされる。続いて、S109において、ブースタ負圧スイッチ200がOFF状態にあるか否かが判定される。OFF状態にあれば判定がYESとなり、S110において制御フラグが0にリセットされ、ON状態にあれば判定がNOとなり、S110がスキップされるが、今回はブースタ負圧スイッチ200がOFF状態にあると仮定されているため、判定がYESとなり、S110において、制御フラグを0にリセットする信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0044】
これに対して、今回は変圧室28の圧力PV が大気圧PATM 以上であるためにブースタ負圧スイッチ200がON状態であると仮定すれば、S104の判定がYESとなり、S111以下のステップが実行される。
まず、S111において、制御フラグが1にセットされ、次に、S112において、前記マスタシリンダ液圧信号に基づいてマスタシリンダ液圧PM の現在値が演算され、その演算値が助勢限界値PM0に決定される。続いて、S113において、現在、バキュームブースタ17が助勢限界に達した後であると判定される。
その後、S114において、マスタシリンダ液圧PM の現在値の助勢限界値PM0からの増分IPM に基づき、マスタシリンダ液圧PM とブレーキシリンダ液圧PB との差圧ΔPの目標値が演算される。その後、S115において、圧力制御弁21のソレノイド74の、その目標差圧ΔPに応じた電流値Iが演算される。続いて、S116において、その電流値Iで励磁電流がソレノイド74に供給されることにより、圧力制御弁21が制御される。その後、S117において、流入制御弁90が制御される。続いて、S118において、ポンプモータ114がONされる。その後、S109において、ブースタ負圧スイッチ200がOFF状態にあるか否かが判定されれば、現在ON状態にあるから、判定がNOとなり、S110がスキップされ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU202のうち図23のS101,S102,S104,S105およびS113を実行する部分が「判定装置」の一例を構成し、また、その同じ部分が「第2判定手段」の一例を構成しているのである。
【0046】
なお付言すれば、本実施形態においては、変圧室28の実際の圧力PV が大気圧PATM 以上となったときにポンプ14の作動が開始されるようになっているが、例えば、ポンプ14の作動遅れを考慮し、変圧室28の実際の圧力PV が大気圧PATM より一定値低い値以上となったときにブースタ負圧スイッチの出力信号が変化し、その変化に応じてポンプ14を作動させることにより、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に達するのに先行してポンプ14の作動が開始される形態で本発明を実施することができる。
【0047】
次に第3実施形態を説明する。なお、本実施形態は先の第2実施形態と共通する部分が多いため、異なる部分のみを詳細に説明する。
本実施形態においては、図24に示すように、前記ブースタ負圧スイッチ104に代えてブースタ負圧センサ300が設けられている。このブースタ負圧センサ300は、負圧室27の圧力PC を受けて作動し、その圧力PC の高さが連続的に変化するのに応じて連続的に変化するブースタ負圧信号を出力する。そして、ECU302は、そのブースタ負圧センサ300と前記マスタシリンダ液圧センサ106との出力信号に基づいて効き特性制御を実行する。
【0048】
図25には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。以下、このフローチャートに基づいて本実施形態における効き特性制御を説明するが、第2実施形態における図23のフローチャートと共通する部分については簡単に説明する。
【0049】
本ルーチンも車両走行中繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、S201において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、次に、S202において、ブースタ負圧センサ300からブースタ負圧信号が取り込まれる。その後、S203において、そのブースタ負圧信号に基づいて負圧室27の圧力PC が検出されるとともに、その圧力PC に基づき、かつ、負圧室27の圧力PC と助勢限界値PM0との予め定められた関係(ROMに記憶されている)に従って、負圧室27の圧力PC の実際値に対応する助勢限界値PM0が演算される。その予め定められた関係は、負圧室27の圧力PC が低いほど(負圧傾向が強いほど)、助勢限界値PM0が増加する関係であり、グラフで表せば、例えば図26に示すものとなる。
その後、S204において、前記マスタシリンダ液圧信号に基づき、現在のマスタシリンダ液圧PM がその助勢限界値PM0以上であるか否かが判定され、助勢限界値PM0以上でなければ判定がNOとなって、S205以下のステップが図23の場合と同様に実行され、これに対して、助勢限界値PM0以上であれば判定がS204の判定がYESとなって、S209以下のステップが図23の場合と同様に実行される。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ブースタ負圧センサ300が「ブースタ圧力関連量検出手段」の一例を構成するとともに、「負圧室圧力関連量検出手段」の一例を構成し、また、ECU302のうち図25のS201〜S205およびS204を実行する部分が、「判定装置」の一例を構成し、また、その同じ部分が「第3判定手段」の一例を構成しているのである。
【0051】
なお付言すれば、本実施形態においては、前述のように、負圧室27の圧力PC と助勢限界値PM0との関係がROMに記憶されており、その関係に従って助勢限界値PM0が演算されるようになっている。
一方、負圧室27の圧力PC がある値PC1であるときの助勢限界値PM01 と、負圧室27の圧力PC が別の値PC2であるときの助勢限界値PM02 との差は、次式
M01 −PM02 =S×(PC2−PC1
で表される。ここで、「PC1」を基準値とすれば、「PM01 」は負圧室27の圧力PC が基準値PC1である場合の助勢限界値PM01 を意味することとなり、さらに、「PC2」を現在値とすれば、「PM02 」は負圧室27の圧力PC が現在値である場合の助勢限界値PM0を意味することとなる。すなわち、助勢限界値PM0は、
M0=PM01 −S×(PC −PC1
なる式で求めることができるのである。
したがって、本発明は、かかる知見に基づき、負圧室27の圧力PC が基準値PC1である場合の助勢限界値PM01 がROMに記憶され、負圧室圧力関連量検出手段により負圧室27の現在圧力PC が検出され、その現在圧力PC と、ROMに記憶されている助勢限界値PM01 と、上記式とに基づき、負圧室27の現在圧力PC に対応する助勢限界値PM0が演算される形態で実施することも可能である。
【0052】
次に第4実施形態を説明する。なお、本実施形態は先の第3実施形態と共通する部分が多いため、異なる部分のみを詳細に説明する。
本実施形態においては、図27に示すように、前記ブースタ負圧センサ300が省略され、その代わりに、電子エンジン制御装置400のコンピュータがECU402に接続されている。電子エンジン制御装置400は、図28に示すように、コンピュータを主体とする燃料噴射制御装置410を備えており、それの入力側には吸気管負圧センサ412とエンジン回転数センサ414とが接続され、それの出力側には図示しないエンジンに燃料を電磁的に噴射するインジェクタ416が接続されている。吸気管負圧センサ412は、エンジンの吸気管に設けられ、その吸気管の圧力PI を受けて作動するとともに、その圧力PI が連続的に変化するのに応じて連続的に変化する信号を出力する。エンジン回転数センサ414は、エンジン回転数NEが連続的に変化するのに応じて連続的に変化するエンジン回転数信号を出力する。燃料噴射制御装置410は、吸気管負圧センサ412とエンジン回転数センサ414との出力信号に基づいてインジェクタ416による燃料噴射を制御する。
燃料噴射制御装置400に本実施形態におけるECU402が接続されている。ECU402は、燃料噴射制御装置400から、吸気管の圧力PI を入力し、それを負圧室27の圧力PC として使用する。
【0053】
図29には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。以下、このフローチャートに基づいて本実施形態における効き特性制御を説明するが、第3実施形態における図25のフローチャートと共通する部分については簡単に説明する。
【0054】
本ルーチンも車両走行中繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、S301において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、次に、S302において、吸気管負圧センサ414が出力した吸気管負圧信号が燃料噴射制御装置410を介して取り込まれる。その後、S303において、その吸気管負圧信号に基づいて負圧室27の圧力PC が検出されるとともに、その圧力PC に基づき、かつ、負圧室27の圧力PC と助勢限界値PM0との予め定められた関係(ROMに記憶されている)に従って、負圧室27の圧力PC の実際値に対応する助勢限界値PM0が演算される。
その後、S304において、前記マスタシリンダ液圧信号に基づき、現在のマスタシリンダ液圧PM がその助勢限界値PM0以上であるか否かが判定され、助勢限界値PM0以上でなければ判定がNOとなって、S305以下のステップが図24の場合と同様に実行され、これに対して、助勢限界値PM0以上であればS304の判定がYESとなって、S309以下のステップが図25の場合と同様に実行される。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、吸気管負圧センサ414が「ブースタ圧力関連量検出手段」の一例を構成するとともに、「負圧室圧力関連量検出手段」の一例を構成し、また、ECU402のうち図29のS301〜S305およびS309を実行する部分が、「判定装置」の一例を構成し、また、同じ部分が「第3判定手段」の一例を構成しているのである。
【0056】
次に第5実施形態を説明する。なお、本実施形態は先の第4実施形態と共通する部分が多いため、異なる部分のみを詳細に説明する。
本実施形態においては、図30に示すように、第4実施形態と同様に、電子エンジン制御装置500がECU502に接続されている。その電子エンジン制御装置500は、図31に示すように、コンピュータを主体とする燃料噴射制御装置510を備えており、それの入力側にはスロットル開度センサ512とエンジン回転数センサ514とが接続され、それの出力側にはインジェクタ516が接続されている。スロットル開度センサ512は、エンジンの吸気管内に設けられたスロットルバルブの開度が連続的に変化するのに応じて連続的に変化するスロットル開度信号を出力する。エンジン回転数センサ514とインジェクタ516は第4実施形態におけると同じものである。燃料噴射制御装置510は、スロットル開度センサ512とエンジン回転数センサ514との出力信号に基づいてインジェクタ516による燃料噴射を制御する。
燃料噴射制御装置500に本実施形態におけるECU502が接続されている。ECU502は、燃料噴射制御装置400から、スロットル開度信号とエンジン回転数信号とを入力し、それらに基づいて負圧室27の圧力PC を検出する。
【0057】
図32には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。以下、このフローチャートに基づいて本実施形態における効き特性制御を説明するが、第4実施形態における図29のフローチャートと共通する部分については簡単に説明する。
【0058】
本ルーチンも車両走行中繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、S401において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、次に、S402において、スロットル開度センサ514からスロットル開度信号が取り込まれ、S403において、エンジン回転数センサ516からエンジン回転数信号が取り込まれる。その後、S404において、それらスロットル開度信号とエンジン回転数信号とに基づくとともに、スロットル開度TAとエンジン回転数NEと吸気管負圧PI との予め定められた関係(ROMに記憶されている)に従って、現在の吸気管負圧PI が決定され、その吸気管負圧PI が負圧室27の圧力PC とされる。スロットル開度TAとエンジン回転数NEと吸気管負圧PI との間に一定の関係が成立し、また、吸気管負圧PI は負圧室27の圧力PC の近似値として使用可能であるからである。続いて、S405において、検出されたれた負圧室27の圧力PC に基づくとともに、負圧室27の圧力PC と助勢限界値PM0との予め定められた関係(ROMに記憶されている)に従って、負圧室27の圧力PC の実際値に対応する助勢限界値PM0が演算される。
その後、S406において、前記マスタシリンダ液圧信号に基づき、現在のマスタシリンダ液圧PM がその助勢限界値PM0以上であるか否かが判定され、助勢限界値PM0以上でなければ判定がNOとなって、S407以下のステップが図29の場合と同様に実行され、これに対して、助勢限界値PM0以上であれば判定がYESとなって、S411以下のステップが図29の場合と同様に実行される。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、スロットル開度センサ512とエンジン回転数センサ514とが「ブースタ圧力関連量検出手段」の一例を構成するとともに、「負圧室圧力関連量検出手段」の一例を構成し、また、ECU502のうち図32のS401〜S407およびS411を実行する部分が、「判定装置」の一例を構成し、また、同じ部分が「第3判定手段」の一例を構成しているのである。
【0060】
なお付言すれば、先の第4実施形態においては、吸気管負圧センサ412により検出された吸気管負圧PI がそのまま負圧室27の圧力PC とされ、また、後の第5実施形態においては、スロットル開度センサ512とエンジン回転数センサ514とにより検出された吸気管負圧PI がそのまま負圧室27の圧力PC とされ、結局、いずれの実施形態においても、吸気管負圧PI がそのまま負圧室27の圧力PC とされ、さらに、その負圧室27の圧力PC に基づいて助勢限界値PM0が決定されるようになっているが、吸気管負圧PI に基づくとともに、吸気管負圧PI の変化に対する負圧室27の圧力PC の応答遅れを考慮して、助勢限界値PM0を決定する形態で本発明を実施することも可能である。
【0061】
例えば、直接にまたは間接に取得した吸気管負圧PI に基づくとともに、負圧室27の圧力PC の応答遅れを考慮して負圧室27の圧力PC を演算し、その演算値に基づいて助勢限界値PM0を決定する形態とすることができる。この形態においては、吸気管負圧PI から負圧室27の圧力PC を演算する式として例えば、
C (n) =k×PI (n) +(1−k)×PI (n-1)
を採用することができる。ただし、この式において、「PC (n) 」は、負圧室27の圧力PC の今回値、「PI (n) 」は、吸気管負圧PI の今回値、「PI (n-1) 」は、吸気管負圧PI の前回値を意味する。また、「k」は、0より大きくかつ1未満に設定されるとともに、吸気管負圧PI に対する負圧室27の圧力PC の応答遅れを表す時定数に合わせて設定される。
【0062】
また、直接にまたは間接に取得した吸気管負圧PI に基づくとともに、負圧室27の圧力PC の応答遅れを考慮しないで負圧室27の圧力PC を演算し、その演算値に基づくとともに、負圧室27の圧力PC の応答遅れを考慮しないで助勢限界値PM0を暫定的に決定し、助勢限界値PM0の複数の暫定値PM0′に基づくとともに、負圧室27の圧力PC の応答遅れを考慮して助勢限界値PM0を最終的に決定する形態とすることもできる。この形態においては、助勢限界値PM0の複数の暫定値PM0′から助勢限界値PM0の最終値PM0を演算する式として例えば、
M0 (n)=k×PM0(n) +(1−k)×PM0(n-1)
を採用することができる。この式においても、「(n) 」および「(n-1) 」の意味は上記の場合と同様であり、また、「k」も上記の場合と同様に設定される。
【0063】
次に第6実施形態を説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態と機械的構成(図2)が共通であり、異なるのは電気的構成のみであり、しかも、その電気的構成のうちブレーキ効き特性制御ルーチンに関連する部分のみが異なるため、異なる部分のみについて詳細に説明し、共通する部分については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0064】
図33には、本実施形態の電気的構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、ブレーキスイッチ102が設けられていないとともに、ECU22に代えてECU600が設けられている。
【0065】
図34には、ブレーキ操作力Fとマスタシリンダ液圧PM とブレーキシリンダ液圧PB と車体減速度Gとの関係がグラフで表されている。本実施形態においても、バキュームブースタ17が助勢限界に到達した後に、ポンプ14が作動させられ、マスタシリンダ12とブレーキシリンダ10との間に差圧ΔPが発生させられ、それにより、結果的に、バキュームブースタ17の助勢限界の前後を問わず、ブレーキシリンダ液圧PB がブレーキ操作力Fに応じてリニアに増加させられる。一方、この図から明らかなように、マスタシリンダ液圧PM と車体減速度Gとの間には、マスタシリンダ液圧PM が増加すれば車体減速度Gも増加するという関係があり、よって、実際のマスタシリンダ液圧PM が標準的な助勢限界値PM0に到達するときの車体減速度Gの値を一義的に決定することができる。したがって、その値を基準値G0 とすれば、実際の車体減速度Gがその基準値G0 に到達したときに、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定することができる。
【0066】
そこで、本実施形態においては、ブースタ負圧スイッチ104が正常である場合には、そのブースタ負圧スイッチ104とマスタシリンダ液圧センサ106との共同によってバキュームブースタ17が助勢限界に到達したか否かが判定される一方、ブースタ負圧スイッチ104が失陥した場合には、実際の車体減速度Gの高さを監視し、それが基準値G0 に到達したときに、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定される。なお、ブースタ負圧スイッチ104が失陥した場合に、マスタシリンダ液圧センサ106によって実際のマスタシリンダ液圧PM の高さを監視し、それが標準的な助勢限界値PM0に増加したときに、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定するように変更することも可能である。
【0067】
また、本実施形態においては、ブースタ負圧スイッチ104が失陥した場合ににおいて、実際の車体減速度Gと基準値G0 との関係からバキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定された後には、目標差圧ΔPが、図35にグラフで表すように、車体減速度Gの実際値の基準値G0 からの増分IGに応じて増加するように決定される。
【0068】
図36には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。
まず、S501において、ブースタ負圧スイッチ104が失陥しているか否かが判定される。例えば、ブースタ負圧スイッチ104に断線,短絡等が発生しているか否かが判定され、それら断線,短絡等が発生している場合には、ブースタ負圧スイッチ104が失陥していると判定される。次に、S502において、先のS501においてブースタ負圧スイッチ104が失陥していると判定されたか否かが判定される。今回は、S501において失陥していると判定されなかったと仮定すれば、判定がNOとなり、S503において、第1実施形態におけると同様にして、ブースタ負圧スイッチ104とマスタシリンダ液圧センサ106との共同によってバキュームブースタ17が助勢限界に到達したか否かが判定される。今回は助勢限界に到達してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S504において、増圧制御の終了処理が行われる。具体的には、図18に示すS6〜S9におけると同様に、助勢限界到達前であると判定され、圧力制御弁21のソレノイド74にそれをOFFにするための信号が出力され、流入制御弁90のソレノイド116にそれをOFFするための信号が出力され、そして、ポンプモータ114にそれをOFFするための信号が出力される。これに対して、今回は助勢限界に到達したと仮定すれば、S503の判定がYESとなり、S505において、増圧制御が行われる。具体的には、図18に示すS17〜S22におけると同様に、助勢限界到達後であると判定され、マスタシリンダ液圧PM の実際値の助勢限界値PM0(固定値としての標準値ではなく可変値としての実際値)からの増分IPM に応じて目標差圧ΔPが演算され、圧力制御弁21のソレノイド74に供給すべき電流値Iがその目標差圧ΔPに応じて演算され、その電流値Iの下で圧力制御弁21が制御され、図21に示す流入制御弁制御ルーチンの実行によって流入制御弁90が制御され、そして、ポンプモータ114がONされる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0069】
以上、ブースタ負圧スイッチ104が失陥していない場合について説明したが、失陥している場合には、S502の判定がYESとなり、S506において、車体減速度Gが演算される。本実施形態においては、ECU600のROMに記憶されている前記アンチロック制御ルーチンの実行により、車輪速センサ108により検出された各輪の車輪速に基づいて推定車速が演算されるようになっており、このS506においては、その推定車速の時間微分値として車体減速度Gが演算される。図37には、車輪速の検出から車体減速度Gの演算までの過程が機能ブロック図で示されている。各輪の車輪速センサ108の出力側が推定車速演算手段602の入力側に接続され、その推定車速演算手段602の出力側が車体減速度演算手段604の入力側に接続されている。そして、ECU600のうちこのS506を実行する部分が車体減速度演算手段604に対応している。
【0070】
次に、S507において、演算された車体減速度Gに基づき、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したか否かが判定される。具体的には、車体減速度Gが、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したときに取ることが予想される基準値G0 以上であるか否かが判定される。今回は基準値G0 以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S508以下において、S504におけると同様に、増圧制御の終了処理が行われる。具体的には、S508において、助勢限界到達前であると判定され、S509において、圧力制御弁21のソレノイド74にそれをOFFにするための信号が出力され、S510において、流入制御弁90のソレノイド116にそれをOFFするための信号が出力され、S511において、ポンプモータ114にそれをOFFするための信号が出力される。これに対して、今回は基準値G0 以上であると仮定すれば、S507の判定がYESとなり、S512以下において、S505におけるに準じて、増圧制御が行われる。具体的には、S512において、助勢限界到達後であると判定され、S513において、マスタシリンダ液圧PM の実際値の助勢限界値PM0(固定値としての標準値)からの増分IPM 、または、車体減速度Gの実際値の基準値G0 (助勢限界値PM0の標準値に対応する固定値)からの増分IGに応じて目標差圧ΔPが演算される。それら増分IPM またはIGと目標差圧ΔPとの関係が第1実施形態におけると同様にROMに記憶されている。その後、S514において、圧力制御弁21のソレノイド74に供給すべき電流値Iがその目標差圧ΔPに応じて演算され、S515において、その電流値Iの下で圧力制御弁21が制御され、S516において、図21に示す流入制御弁制御ルーチンの実行によって流入制御弁90が制御され、S517において、ポンプモータ114がONされる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、ブースタ負圧スイッチ104が失陥した場合でも、バキュームブースタ17の助勢限界に到達したか否かが判定され、到達した場合には、ポンプ14によってブレーキシリンダ10の増圧制御が行われるため、ブースタ負圧スイッチ104の故障に対するブレーキ装置の信頼性が向上するという効果が得られる。
【0072】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、車輪速センサ108と推定車速演算手段602と車体減速度演算手段604(ECU600のうち図36のS506を実行する部分)とが「車体減速度検出手段」の一例を構成し、ECU600のうち図36のS501〜S503,S507,S508およびS512を実行する部分が「判定装置」の一例を構成し、そのうちS501,S502,S507,S508およびS512を実行する部分が「異常時判定手段」の一例を構成し、また、圧力制御弁21,ポンプ14,ポンプモータ114,流入制御弁90,ECU600のうち図36のS504,S505,S509〜S511およびS513〜S517を実行する部分等が「第2の助勢装置」の一例を構成しているのである。
【0073】
次に第7実施形態を説明する。なお、本実施形態も先の第6実施形態と同様に、第1実施形態と機械的構成が共通であり、異なるのは電気的構成のみであり、しかも、その電気的構成のうちブレーキ効き特性制御ルーチンに関連する部分のみが異なるため、異なる部分のみについて詳細に説明し、共通する部分については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0074】
図38には、本実施形態の電気的構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、ECU22に代えてECU700が設けられている。
【0075】
図39には、ブレーキ操作力Fとマスタシリンダ液圧PM と車体減速度Gと変圧室28の圧力PV との関係がグラフで表されている。前述のように、マスタシリンダ液圧PM と車体減速度Gとの間には、マスタシリンダ液圧PM が増加すれば車体減速度Gも増加するという関係があり、また、マスタシリンダ液圧PM の増加量ΔPM に応じて車体減速度Gの増加量ΔGが一義的に決まる。増加量ΔPM と増加量ΔGとの関係は例えば、
ΔG=(1/W)・K・ΔPM
なる式で表すことができる。
ただし、
W:車両重量
K:ブレーキ装置の諸元による決まる係数
【0076】
したがって、マスタシリンダ液圧PM の実際値が、変圧室28の圧力PV が前記基準値PV0に到達したときからバキュームブースタ17が助勢限界に到達するまでに増加する基準増加量ΔPM0が予め決定されれば、その基準増加量ΔPM0に応じた基準増加量ΔG0 が決定される。よって、車体減速度Gの実際値の、変圧室28の圧力PV が基準値PV0に到達したときからの増加量ΔGがその基準増加量ΔG0 と等しくなったときに、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定することができる。
【0077】
そこで、本実施形態においては、マスタシリンダ液圧センサ106が正常である場合には、そのマスタシリンダ液圧センサ106とブースタ負圧スイッチ104との共同によってバキュームブースタ17が助勢限界に到達したか否かが判定される一方、マスタシリンダ液圧センサ106が異常である場合には、そのマスタシリンダ液圧センサ106に代えて車体減速度検出手段が用いられてその車体減速度検出手段とブースタ負圧スイッチ104との共同によってバキュームブースタ17が助勢限界に到達したか否かが判定されるようになっている。
【0078】
図40には、増加量ΔGが基準増加量ΔG0 に到達したときにバキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定する場合の効果がグラフで表されている。ブレーキ操作力Fが0であるときの変圧室28の圧力PV は負圧室27の圧力PC と等しい。したがって、負圧室27に接続されたエンジン負圧源の圧力変動によってその負圧室27の圧力PC の高さが変動すれば、ブレーキ操作力Fが0であるときの変圧室28の圧力PV の高さが変動する。グラフには、変圧室28の圧力PV の高さの変動が「ブースタ負圧のばらつき」として示されているとともに、変圧室28の圧力PV の高さが、標準的である場合(実線グラフ)と、大気圧側にシフトした場合(上側の破線グラフ)と、負圧側にシフトした場合(下側の破線グラフ)とが代表的に示されている。
【0079】
なお、エンジン負圧源と負圧室27との間には一般に、チェックバルブが設けられていて、エンジン負圧源の圧力が上昇してもそれに伴って負圧室27の圧力PC が上昇することが阻止されるが、このようなチェックバルブがあっても、エンジン負圧源の圧力が低下した場合には、それに伴って負圧室27の圧力PC も低下してしまうため、エンジン負圧源の圧力変動によって負圧室27の圧力PC の高さが変動することになる。
【0080】
また、エンジン負圧源には、エンジン吸気管またはそれに接続されたサージタンクを選ぶことができる。
【0081】
変圧室28の圧力PV の高さが変動すれば、それに応じて、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達するときのマスタシリンダ液圧PM の高さも変動する。グラフには、助勢限界時のマスタシリンダ液圧PM の高さが、変圧室28の圧力PV の高さが標準的である場合には「PM0」、大気圧側にシフトした場合には「PM1」、負圧側にシフトした場合には「PM2」としてそれぞれ示されている。さらに、グラフには、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達するときの車体減速度Gの高さも、助勢限界時のマスタシリンダ液圧PM の高さに関する上記3つの場合についてそれぞれ示されている。すなわち、車体減速度Gが、助勢限界時のマスタシリンダ液圧PM がPM0,PM1およびPM2である場合について「G0 」,「G1 」および「G2 」としてそれぞれ示されているのである。そして、それら車体減速度G0 ,G1 ,G2 はいずれも、変圧室28の圧力PV が基準値PV0に到達したときのそれぞれの高さに同じ増加量ΔGを加算することによって求められ、ここに、「増加量ΔG」は前記基準増加量ΔG0 と一致する。よって、車体減速度Gの増加量ΔGが基準増加量ΔG0 と等しくなったときに、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したと判定することとすれば、変圧室28の圧力Pv の高さの変動を考慮して助勢限界判定が正しく行われることになる。
【0082】
したがって、本実施形態によれば、マスタシリンダ液圧センサ106が異常である場合でも、負圧室27の圧力PC の高さの変動にかかわらず、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達したことが正しく判定され、その結果、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ液圧PB の高さが変動することが防止されて、ブレーキの効きが安定するという効果が得られる。
【0083】
図41には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。
まず、S601において、マスタシリンダ液圧センサ(図において「M/C液圧センサ」で表す。)106が失陥しているか否かが判定される。具体的には、前記第6実施形態の図36のS501におけると同様に、マスタシリンダ液圧センサ106に断線,短絡等が発生しているか否かが判定され、それら断線,短絡等が発生している場合には、マスタシリンダ液圧センサ106が失陥していると判定される。次に、S602において、先のS601においてマスタシリンダ液圧センサ106が失陥していると判定されたか否かが判定される。今回は、失陥していると判定されなかったと仮定すれば、判定がNOとなり、S603において、マスタシリンダ液圧センサ106からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、S604において、ブースタ負圧スイッチ104からブースタ負圧信号が取り込まれる。その後、S605において、それらマスタシリンダ液圧信号とブースタ負圧信号とに基づき、第1実施形態におけると同様にして、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達したか否か、すなわち、実際のマスタシリンダ液圧PM が負圧室27の圧力PC に応じて変動する助勢限界値PM0以上であるか否かが判定される。今回は、助勢限界値PM0以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S606において、第6実施形態のS512におけると同様にして、ブレーキシリンダ10の増圧制御の終了処理が行われる。これに対して、今回は、助勢限界値PM0以上であると仮定すれば、S605の判定がYESとなり、S607において、第6実施形態のS505におけると同様にして、増圧制御が行われる。いずれの場合にも、その後、S608において、制御フラグが0とされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0084】
以上、マスタシリンダ液圧センサ106が正常である場合について説明したが、失陥している場合には、S602の判定がYESとなり、S609において、ブレーキスイッチ102がONであるか否か、すなわち、ブレーキ操作中であるか否かが判定される。今回は、ブレーキスイッチ102がONではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S610において、制御フラグが0とされ、その後、S611において、S606におけると同様にして、増圧制御の終了処理が行われ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。すなわち、本実施形態においては、ブースタスイッチ102がONでない場合には、増圧制御の要否判定を行うことなく、直ちに増圧制御が不要であると判定されて終了処理が行われるのであり、それにより、マスタシリンダ液圧センサ106なしで増圧制御の要否判定を行うことに起因するブレーキ装置の作動信頼性の低下が防止されるのである。
【0085】
これに対して、今回は、ブレーキスイッチ102がONであると仮定すれば、S609の判定がYESとなり、S612において、ブースタ負圧スイッチ104がONであるか否か、すなわち、変圧室28の圧力PV が基準値PV0に到達したか否かが判定される。今回は、ブースタ負圧スイッチ104がONではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S610において、制御フラグが0とされ、その後、S611において、増圧制御の終了処理が行われ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0086】
これに対して、今回は、ブースタ負圧スイッチ104がONであると仮定すれば、S612の判定がYESとなり、S613において、第6実施形態におけると同様にして車体減速度Gが演算される。その後、S614において、制御フラグが0であるか否かが判定される。今回は0であるから、判定がYESとなり、S615において、車体減速度Gの演算値が基準値G1 とされる。その後、S616において、制御フラグが1とされ、続いて、S617において、車体減速度Gの演算値から基準値G1 が差し引かれることによって増加量ΔGが演算される。その後、S618において、演算された増加量ΔGが前記基準増加量ΔG0 以上であるか否か、すなわち、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達したか否かが判定される。今回は、基準増加量ΔG0 以上ではないと仮定すれば、S618の判定がNOとなり、S611において、増圧制御の終了処理が行われ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0087】
その後、本ルーチンが実行されれば、S613において、新たな車体減速度Gが演算され、その後、今回は制御フラグが1であるから、S614の判定がNOとなり、S615とS616とがスキップされ、S617において、新たな車体減速度Gから、前回におけると同じ大きさの基準値G1 が差し引かれることによって新たな増加量ΔGが演算される。その後、S618において、演算された増加量ΔGが基準増加量ΔG0 以上であるか否かが判定される。今回は、基準増加量ΔG0 以上であると仮定すれば、S618の判定がNOとなり、S619において、第6実施形態におけるS512〜S517におけると同様にして、増圧制御が行われ、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、マスタシリンダ液圧センサ106が失陥している場合でも、負圧室27の圧力PC の高さの変動にかかわらず、バキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達したことを正しく判定することができるという効果が得られる。
【0089】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、マスタシリンダ液圧センサ106が「マスタシリンダ液圧直接関連量検出手段」の一例を構成し、車輪速センサ108と推定車速演算手段602と車体減速度演算手段604(ECU700のうち図41のS613を実行する部分)とが「車体減速度検出手段」の一例を構成し、ECU700のうち図41のS601〜605,S608〜S610,S612およびS614〜S618を実行する部分が「判定装置」の一例を構成し、そのうちS601,S602,S609,S610,S614〜S618を実行する部分が「異常時判定手段」の一例を構成し、また、圧力制御弁21,ポンプ14,ポンプモータ114,流入制御弁90,ECU700のうち図41のS606,S607,S611およびS619を実行する部分等が「第2の助勢装置」の一例を構成しているのである。
【0090】
次に第8実施形態を説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態と機械的構成(図2)が共通であり、異なるのは電気的構成のみであるため、異なる部分のみについて詳細に説明し、共通する部分については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0091】
図42には、本実施形態の電気的構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、ECU22に代えてECU800が設けられるとともに、警告装置802が追加されている。警告装置802は、ECU800によって制御され、ECU800がブレーキ装置のどこかに何らかの異常があると判定した場合に、そのことを光,音または振動によって運転者に視覚的,聴覚的または触覚的に警告する。
【0092】
図43には、マスタシリンダ液圧PM と変圧室28の圧力PV との関係がグラフで表されている。ブレーキ操作力Fが増加すれば、それに伴って変圧室28の圧力PV が負圧から大気圧に向かって増加するとともにマスタシリンダ液圧PM が0から増加する。したがって、マスタシリンダ液圧PM と変圧室28の圧力PV との間には、図において実線L0 のグラフで表される関係が成立する。ところで、変圧室28の圧力PV の高さは負圧室27の圧力PC の高さに依存し、その負圧室27の圧力PC はエンジンの負圧源の圧力(以下、「エンジン負圧」という。)に依存する。そして、エンジン負圧はエンジンの運転状態の如何によって変化し、結局、変圧室28の圧力PV はエンジン負圧のばらつきによってばらつくことになる。したがって、マスタシリンダ液圧PM と変圧室28の圧力PV との間には、図において、実線L0 を中心とするとともに、互いに平行な2本の一点鎖線L1 ,L2 で表される幅を有するグラフで表される関係が成立することになる。また、ブースタ負圧スイッチ104は、変圧室28の圧力PV の高さを2状態で検出してOFFとONとに切り換わり、基準値PV0より負圧側であるときにOFF、大気圧側であるときにONとなる。
【0093】
したがって、ブースタ負圧スイッチ104がONであるときにマスタシリンダ液圧センサ106により検出される検出マスタシリンダ液圧PM の高さは、次の5つの場合に分類される。
(1) バキュームブースタ17もブースタ負圧スイッチ104もマスタシリンダ12もマスタシリンダ液圧センサ106も正常である場合
この場合には、ブースタ負圧スイッチ104がONであるときに、マスタシリンダ液圧センサ106による検出マスタシリンダ液圧PM の高さが、図において基準値P1 とP2 とで挟まれる帯状の領域A内に存在する。
(2) バキュームブースタ17が異常となり、変圧室28に正常な高さの負圧が発生しない場合
この場合には、検出マスタシリンダ液圧PM とは無関係にブースタ負圧スイッチ104がONであり続けるため、検出マスタシリンダ液圧PM の高さが、領域Aよりマスタシリンダ液圧PM が低い帯状の領域B内に存在する。
(3) ブースタ負圧スイッチ104が異常となった場合
この場合には、ブースタ負圧スイッチ104がONであるときに、検出マスタシリンダ液圧PM が、領域B内に存在するか、または領域Aよりマスタシリンダ液圧PM が高い帯状の領域C内に存在する。
(4) マスタシリンダ12(正確には、互いに独立な2系統のうち、マスタシリンダ液圧センサ106により液圧が検出される系統)が異常となり、昇圧不能となった場合
この場合には、ブースタ負圧スイッチ104がONとなったときに、検出マスタシリンダ液圧PM が、正常値より低くなり、領域B内に存在する。
(5) マスタシリンダ液圧センサ106が異常となった場合
この場合には、ブースタ負圧スイッチ104がONとなったときに、検出マスタシリンダ液圧PM が、領域BまたはC内に存在する。
【0094】
したがって、ブースタ負圧スイッチ104がONであるときに検出マスタシリンダ液圧PM の高さが領域A,BまたはCのいずれに存在するかを検出することによってブレーキ装置のすべての構成要素が正常であるかいずれかの構成要素に異常があるかが分かる。
【0095】
なお、バキュームブースタ17もブースタ負圧スイッチ104もマスタシリンダ12もマスタシリンダ液圧センサ106も正常である場合に、ブースタ負圧スイッチ104がONであるときに、検出マスタシリンダ液圧PM が取り得る領域は、正確には、2本の一点鎖線L1 ,L2 と変圧室28の圧力PV が0であることを示す横軸L3 と変圧室28の圧力PV が基準値PV0に等しいことを表す破線L4 とによって囲まれる平行四辺形状の領域である。しかしながら、本実施形態においては、前述のように、変圧室28の圧力PV の高さが基準値PV0より負圧側である状態と大気圧側である状態との2つしか検出することができない。そこで、本実施形態においては、上側の一点鎖線L1 と破線L3 との交点Q1 に対応する検出マスタシリンダ液圧PM の高さが基準値P1 、下側の一点鎖線L2 と横軸L4 との交点Q2 に対応する検出マスタシリンダ液圧PM の高さが基準値P2 とされた上で、領域Aが、検出マスタシリンダ液圧PM が基準値P1 に等しいことを表す実線L5 と、基準値P2 に等しいことを表す実線L6 と、横軸L3 と、破線L4 とによって囲まれる長方形状の領域とされている。
【0096】
以上要するに、ブースタ負圧スイッチ104のブースタ負圧信号とマスタシリンダ液圧センサ106のマスタシリンダ液圧信号とブレーキ装置の状態との間に一定の関係が成立するのであり、その関係を利用することにより、本実施形態においては、ブレーキ装置の正常/異常判定が行われる。その正常/異常判定を行うためのルーチンがECU700のROMに記憶されている。
【0097】
図44には、その正常/異常判定ルーチンがフローチャートで表されている。まず、S701において、ブースタ負圧スイッチ104がONであるか否かが判定される。今回はONではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0098】
これに対して、今回はブースタ負圧スイッチ104がONであると仮定すれば、S701の判定がYESとなり、S702において、検出マスタシリンダ液圧PM が低い方の基準値P1 より低い異常低圧状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその異常低圧状態が所定時間以上連続してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S703に移行する。このS703においては、検出マスタシリンダ液圧PM が高い方の基準値P2 より高い異常高圧状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその異常高圧状態が所定時間以上連続してもいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S704に移行する。このS704においては、検出マスタシリンダ液圧PM が基準値P1 以上でありかつ基準値P2 以下である正常液圧状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその正常液圧状態が所定時間以上連続してもいないと仮定すれば、判定がNOとなり、本ルーチンの一回の実行が終了するが、今回は正常液圧状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、判定がYESとなり、S705において、ブレーキ装置が正常状態にあると判定される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0099】
これに対して、今回は異常低圧状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、S702の判定がYESとなり、また、今回は異常高圧状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、S703の判定がYESとなり、いずれの場合にも、その後、S706において、ブレーキ装置が異常状態にあると判定される。その後、S707において、前記警告装置802にそれを作動させる警告信号が出力され、それにより、ブレーキ装置に何らかの異常があることが運転者に警告される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0100】
したがって、本実施形態によれば、ブレーキシリンダ10の増圧制御のために設けられたブースタ負圧スイッチ104とマスタシリンダ液圧センサ106とが利用されることにより、運転者がブレーキ装置の異常を早期に発見可能となるという効果が得られる。
【0101】
本実施形態においては、ECU800のROMにブレーキ効き特性制御ルーチンも記憶されており、そのルーチンは、第1実施形態におけるルーチンと同様であるため、説明を省略する。
【0102】
次に第9実施形態を説明する。なお、本実施形態も先の第8実施形態と同様に、第1実施形態と機械的構成が共通であり、異なるのは電気的構成のみであるため、異なる部分のみについて詳細に説明し、共通する部分については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。また、本実施形態は、第8実施形態と同様に、ブレーキ装置の正常/異常を判定する装置を備えている。
【0103】
図45には、本実施形態の電気的構成が示されている。本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、ECU22に代えてECU900が設けられるとともに、ブレーキ負圧スイッチ104に代えてブースタ負圧センサ902が設けられている。ブースタ負圧センサ902は、変圧室28の圧力PV の高さが連続的に変化するのに応じて連続的に変化するブースタ負圧信号を出力する。さらに、本実施形態においては、第8実施形態におけると同様に、警告装置904が追加されている。
【0104】
図46にも、図43と同様なグラフが示されている。しかし、本実施形態においては、ブースタ負圧センサ902により変圧室28の圧力PV が連続値として検出可能とされている。そのため、第8実施形態における3つの領域A,BおよびCがそれぞれ、狭い領域ではなく、広い領域とされている。
【0105】
すなわち、(1) バキュームブースタ17もブースタ負圧センサ902もマスタシリンダ12もマスタシリンダ液圧センサ106も正常である場合には、ブースタ負圧センサ902による検出圧力PV とマスタシリンダ液圧センサ106による検出マスタシリンダ液圧PM との検出圧力対応点が、エンジン負圧のばらつきに応じた幅を有する帯状の領域A内に存在する。また、(2) バキュームブースタ17が異常となり、変圧室28に正常な高さの負圧が発生しない場合には、検出圧力対応点が、領域Aよりマスタシリンダ液圧PM が低い三角形状の領域B内に存在する。また、(3) ブースタ負圧センサ902が異常となった場合には、検出圧力対応点が、領域B内に存在するか、または領域Aよりマスタシリンダ液圧PM が高い三角形状の領域C内に存在する。また、(4) マスタシリンダ12(正確には、互いに独立な2系統のうち、マスタシリンダ液圧センサ106により液圧が検出される系統)が異常となり、昇圧不能となった場合には、検出圧力対応点が、領域B内に存在する。また、(5) マスタシリンダ液圧センサ106が異常となった場合には、検出圧力対応点が、領域BまたはC内に存在する。
【0106】
したがって、検出対応点が領域A,BまたはCのいずれに存在するかを検出することによってブレーキ装置のすべての構成要素が正常であるかいずれかの構成要素に異常があるかが分かる。
【0107】
そこで、本実施形態においては、かかる知見に基づいてブレーキ装置の正常/異常を判定するためのルーチンがECU800のROMに記憶されている。
【0108】
図47には、その正常/異常判定ルーチンがフローチャートで表されている。まず、S801において、検出圧力対応点が領域B内に存在する状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその状態が所定時間以上連続してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S802に移行する。このS802においては、検出圧力対応点が領域C内に存在する状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその状態が所定時間以上連続してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S803に移行する。このS803においては、検出圧力対応点が領域A内に存在する状態が所定時間以上連続したか否かが判定される。今回はその状態が所定時間以上連続してはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちに本ルーチンの一回の実行が終了する。これに対して、今回は検出圧力対応点が領域A内に存在する状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、S803の判定がYESとなり、S804において、ブレーキ装置が正常状態にあると判定される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0109】
これに対して、検出圧力対応点が領域B内に存在する状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、S801の判定がYESとなり、また、検出圧力対応点が領域C内に存在する状態が所定時間以上連続したと仮定すれば、S802の判定がYESとなり、いずれの場合にも、その後、S805において、ブレーキ装置が異常状態にあると判定される。続いて、S806において、前記警告装置904にそれを作動させる警告信号が出力され、それにより、ブレーキ装置に何らかの異常があることが運転者に警告される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0110】
図46に示すように、本実施形態においては、領域BとCとによって挟まれた帯状の領域全体が領域Aとされているわけではなく、検出マスタシリンダ液圧PM が基準値P0 以下である部分Dは領域Aの対象外とされている。その部分を領域Aの対象外としないと、マスタシリンダ12またはマスタシリンダ液圧センサ106が異常であるために検出マスタシリンダ液圧PM が0である場合には、検出圧力対応点が図において部分Dから縦軸上を上方に移動してその部分Dから逸脱するまでの間、実際には異常状態にあるブレーキ装置が誤って正常状態にあると判定されてしまうからである。したがって、本実施形態においては、検出圧力対応点が部分Dに存在する間は、ブレーキ装置の正常/異常の判定結果が出力されず、誤った判定結果が出力されることが防止され、正常/異常判定装置の信頼性が向上する。なお、本実施形態においては、正常/異常判定ルーチンが、検出マスタシリンダ液圧PM が基準値P0 以下であるか否かにかかわらず実行されるようになっているが、基準値P0 以下である場合には、実行されないようにし、それにより、誤った判定結果の出力を防止することができる。
【0111】
ところで、負圧室27の圧力PC の高さは、バキュームブースタ17に何ら異常がなくても、エンジン始動時から正常であるとは限らず、エンジン始動時には不足していて、正常になるまでに時間がかかる場合がある。そこで、本実施形態においては、エンジン始動センサによりエンジン始動が検出されてから、負圧室27に正常な高さが発生するのに必要である基準時間が経過するまでは、正常/異常判定ルーチンが実行されないか、または実行されてもそれの判定結果が出力されないようになっている。したがって、本実施形態によれば、ブレーキ装置の正常/異常に関し、エンジン始動時における負圧室27の圧力PC の高さ不足に起因して誤った判定結果が出力されることが防止され、このことによっても、正常/異常判定装置の信頼性が向上する。
【0112】
本実施形態においては、ECU900のROMにブレーキ効き特性制御ルーチンも記憶されている。そのルーチンは、先のいずれの実施形態とも異なり、ブースタ負圧センサ902を用いてバキュームブースタ17が実際に助勢限界に到達したか否かを判定するものである。
【0113】
図48には、本実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。まず、S901において、ブースタ負圧センサ902からブースタ負圧信号が取り込まれる。次に、S902において、そのブースタ負圧信号に基づいて変圧室28の圧力PV が演算され、その圧力PV が大気圧PATM 以上であるか否かが判定される。今回は、大気圧PATM 以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、バキュームブースタ17が助勢限界到達前にあると判定されて、S903において、増圧制御の終了処理が行われる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0114】
これに対して、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM 以上であると仮定すれば、S902の判定がYESとなり、バキュームブースタ17が助勢限界到達後にあると判定されて、S904において、増圧制御が行われる。この増圧制御においては、マスタシリンダ液圧センサ106による検出マスタシリンダ液圧PM の、変圧室28の圧力PV が大気圧PATM に到達したとき、すなわち、バキュームブースタ17が助勢限界に到達したときからの増分IPM に応じて前記目標差圧ΔPが演算され、その目標差圧ΔPが実現されるように圧力制御弁21が制御される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、ブレーキシリンダ10の増圧制御のために設けられたブースタ負圧センサ902とマスタシリンダ液圧センサ106とが利用されることにより、運転者がブレーキ装置の異常を早期に発見可能となるという効果が得られる。
【0116】
先の第8実施形態においては、変圧室28の圧力PV の高さが特定の範囲内に入らない限り、ブレーキ装置の正常/異常を判定することができないが、本実施形態においては、ブースタ負圧センサ902により変圧室28の圧力PV の高さが連続値として検出される。したがって、本実施形態によれば、ブレーキ装置の正常/異常判定を行うことが常時可能となるという効果も得られる。
【0117】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるブレーキ装置の概略的な構成を示す系統図である。
【図2】上記第1実施形態の機械的構成を示す系統図である。
【図3】図2におけるバキュームブースタを示す側面断面図である。
【図4】図2における圧力制御弁の構造および作動を説明するための正面断面図である。
【図5】図4の圧力制御弁におけるソレノイド励磁電流Iとソレノイド吸引力F1 との関係を示すグラフである。
【図6】上記第1実施形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】図2におけるブースタ負圧スイッチの作動状態を示すグラフである。
【図8】バキュームブースタを備えたブレーキ装置におけるブレーキ操作力Fとブレーキシリンダ液圧PB との関係を示すグラフである。
【図9】上記第1実施形態における効き特性制御を説明するためのグラフである。
【図10】上記効き特性制御におけるマスタシリンダ液圧PM と、マスタシリンダとブレーキシリンダとの差圧ΔPとの関係を示すグラフである。
【図11】バキュームブースタを備えたブレーキ装置におけるブレーキ操作力Fとブレーキシリンダ液圧PB との関係がバキュームブースタの負圧室の圧力変動に伴って変化する様子を示すグラフである。
【図12】バキュームブースタの負圧室の圧力変動を考慮しないで上記効き特性制御を行った場合のブレーキ操作力Fとブレーキシリンダ液圧PB との関係を示すグラフである。
【図13】上記第1実施形態において、バキュームブースタの負圧室の圧力変動を考慮した効き特性制御を行う場合のブレーキ操作力Fとマスタシリンダ液圧PM との関係を示すグラフである。
【図14】上記第1実施形態において、バキュームブースタの負圧室の圧力変動を考慮したブレーキ効き特性制御におけるマスタシリンダ液圧PM と差圧ΔPとの関係を示すグラフである。
【図15】上記効き特性制御を経時的に説明するためのグラフである。
【図16】バキュームブースタを備えたブレーキ装置におけるブレーキ操作力FとブレーキシリンダPB との関係がバキュームブースタの正常時と失陥時とで異なる様子を示すグラフである。
【図17】上記第1実施形態におけるマスタシリンダ液圧PM と差圧ΔPとの関係がバキュームブースタの正常時と失陥時とで異なる様子を示すグラフである。
【図18】上記第1実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】図18におけるS3の詳細をブースタ失陥判定ルーチンとして示すフローチャートである。
【図20】図18のS18におけるマスタシリンダ液圧PM の実際値の助勢限界値PM0からの増分IPM と上記差圧ΔPの目標値との関係を示すグラフである。
【図21】図18におけるS21の詳細を流入制御弁制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図22】本発明の第2実施形態であるブレーキ装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図23】上記第2実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図24】本発明の第3実施形態であるブレーキ装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図25】上記第3実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図26】上記第3実施形態における、バキュームブースタの負圧室の圧力PC とマスタシリンダ液圧PM の助勢限界値PM0との関係を示すグラフである。
【図27】本発明の第4実施形態であるブレーキ装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図28】図27における電子エンジン制御装置400の電気的構成を示すブロック図である。
【図29】上記第4実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図30】本発明の第5実施形態であるブレーキ装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図31】図30における電子エンジン制御装置500の電気的構成を示すブロック図である。
【図32】上記第5実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図33】本発明の第6実施形態であるブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図34】上記第6実施形態において車体減速度Gに基づいて効き特性制御が行われる原理を説明するためのグラフである。
【図35】上記第6実施形態における車体減速度Gと目標差圧ΔPとの関係を示すグラフである。
【図36】上記第6実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図37】上記第6実施形態における車体減速度検出手段を示す機能ブロック図である。
【図38】本発明の第7実施形態であるブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図39】上記第7実施形態において車体減速度Gに基づいて効き特性制御が行われる原理を説明するためのグラフである。
【図40】上記第7実施形態においてブースタ負圧のばらつきにかかわらずバキュームブースタの助勢限界点を正しく判定することができる理由を説明するためのグラフである。
【図41】上記第7実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図42】本発明の第8実施形態であるブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図43】上記第8実施形態においてブレーキ装置の正常/異常判定が行われる原理を説明するためのグラフである。
【図44】上記第8実施形態における正常/異常判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図45】本発明の第9実施形態であるブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図46】上記第9実施形態においてブレーキ装置の正常/異常判定が行われる原理を説明するためのグラフである。
【図47】上記第9実施形態における正常/異常判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図48】上記第9実施形態におけるブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ブレーキシリンダ
12 マスタシリンダ
12a,12b 加圧ピストン
14 ポンプ
16 ブレーキペダル
17 バキュームブースタ
18 主通路
20 補助通路
22,202,302,402,502,600,700,800,900ECU
23 ブースタ負圧関連量検出手段
24 マスタシリンダ液圧関連量検出手段
26 パワーピストン
27 負圧室
28 変圧室
104,200 ブースタ負圧スイッチ
106 マスタシリンダ液圧センサ
108 車輪速センサ
300 ブースタ負圧センサ
412 吸気管負圧センサ
512 スロットル開度センサ
514 エンジン回転数センサ
602 推定車速演算手段
604 車体減速度演算手段
902 ブースタ負圧センサ

Claims (5)

  1. 車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
    運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
    そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    負圧源に接続された負圧室とその負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するバキュームブースタと、
    ポンプを含み、そのバキュームブースタが助勢限界に達した後に、前記マスタシリンダの作動液を加圧してブレーキシリンダに供給することにより、ブレーキシリンダの液圧を前記マスタシリンダの液圧より高くする増圧装置と、
    前記ブレーキシリンダの液圧を制御することにより、車輪がロックすることを防止するアンチロック制御を行う装置と、
    その装置によるアンチロック制御中に、前記ブレーキシリンダから流出させられた作動液を収容するとともに、前記ポンプの吸入側に接続されたリザーバと、
    前記ポンプと前記マスタシリンダとを接続する補給通路に設けられた流入制御弁と、
    前記リザーバに前記ポンプにより汲み上げるべき作動液が存在するか否かの存否判定を行う手段によって、前記リザーバに汲み上げるべき作動液が存在すると判定した場合に前記流入制御弁を閉状態とし、前記リザーバに汲み上げるべき作動液が存在しないと判定した場合に前記流入制御弁を開状態とする流入制御弁制御手段であって、前記ブレーキシリンダの液圧が前記増圧装置によって前記マスタシリンダの液圧より高くされ、かつ、アンチロック制御中でない場合に、前記流入制御弁を開状態とし、アンチロック制御中であって、前記リザーバに存在する作動液量が0より多い場合に前記流入制御弁を閉状態とし、0以下である場合に開状態とするものと
    を含むことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 前記リザーバに存在する作動液量を、前記アンチロック制御中における前記ブレーキシリンダの液圧の減圧時間と増圧時間とに基づいて推定する手段を含む請求項1に記載のブレーキ装置。
  3. 前記リザーバと前記ポンプとを接続するポンプ通路の、前記補給通路との接続点よりリザーバ側の部分に、前記補給通路からリザーバに向かう作動液の流れを阻止し、リザーバからポンプに向かう作動液の流れを許容する逆止弁が設けられた請求項1または2に記載のブレーキ装置。
  4. 前記増圧装置が、前記ブレーキシリンダの液圧を、前記バキュームブースタが助勢限界に達した後に、前記ブレーキ操作部材の操作力が前記助勢限界に達する以前と同じ倍力率で倍力された場合に得られる高さまで増加させるものである請求項1ないしのいずれか1つに記載のブレーキ装置。
  5. 前記増圧装置が、(a) 前記マスタシリンダと前記ブレーキシリンダとを互いに接続する主通路に補助通路により接続された液圧源と、(b) 運転者によるブレーキ操作中であって、前記マスタシリンダの液圧より高い液圧を前記ブレーキシリンダに発生させることが必要である場合に、前記液圧源から作動液を供給させる液圧源制御装置と、(c) 前記主通路のうち前記補助通路との接続点と前記マスタシリンダとの間の部分に設けられ、その主通路におけるブレーキシリンダ側の第2液圧をマスタシリンダ側の第1液圧に対して相対的に制御する圧力制御装置であって、前記液圧源から作動液が供給されている状態では、第2液圧が第1液圧より高いがその差が目標値以下であれば、前記液圧源から前記マスタシリンダへ向かう作動液の流れを阻止し、第2液圧が第1液圧より高くかつその差が前記目標値より大きくなろうとすれば、液圧源からマスタシリンダへ向かう作動液の流れを許容することにより、第2液圧を第1液圧より高くかつその差が前記目標値となるように制御する圧力制御装置とを含む請求項1ないしのいずれか1つに記載のブレーキ装置。
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