以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用エンジン及び車両用のブレーキ装置の構成を示す図である。
図1に示すエンジン101は、内燃機関であり、詳細には、火花点火式のガソリン機関である。
前記エンジン101の吸気管102には、スロットルモータ103aでスロットルバルブ103bを開閉駆動する電子制御スロットル104が介装される。
そして、前記電子制御スロットル104及び吸気バルブ105を介して、燃焼室106内に空気が吸入される。
燃料は、各気筒の吸気ポート102Aに配設された燃料噴射弁130から噴射される。
燃焼排気は、燃焼室106から排気バルブ107を介して排出され、排気浄化を行う触媒を備えたフロント触媒コンバータ108及びリア触媒コンバータ109で浄化された後、大気中に放出される。
前記排気バルブ107は、排気カムシャフト110に一体的に形成されたカム111によって一定のバルブリフト量,バルブ作動角及びバルブタイミングを保って開閉駆動される。
一方、吸気バルブ105は、可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113によって、バルブリフト量及びバルブ作動角、更に、バルブ作動角の中心位相が連続的に変えられるようになっている。
マイクロコンピュータを内蔵するエンジンコントロールユニット(ECU)114は、目標吸入空気量及び目標吸気負圧が得られるように、スロットルバルブ103bの目標開度及び吸気バルブ105の目標開特性を設定し、これらの目標に基づいて前記電子制御スロットル104,可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113を制御する。
具体的には、前記可変バルブリフト機構112及び可変バルブタイミング機構113による吸気バルブ105の開特性の制御によって、エンジン101の吸入空気量を制御し、前記電子制御スロットル104で吸気負圧の発生を制御する。
即ち、前記電子制御スロットル104による吸気負圧の発生は、吸入空気量を制御するためのものではなく、エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)を負圧源として用いる機器(後述するマスタバック132aや蒸発燃料処理装置やブローバイガス処理装置など)に対して負圧を供給するためのものである。
従って、上記エンジン101によると、吸気負圧の小さい(大気圧に近い)条件下で運転し、ポンピングロスの低下によって燃費性能・出力性能の向上を図ることができる。
前記エンジンコントロールユニット114には、アクセル開度ACC(アクセルペダルの踏込量)を検出するアクセルペダルセンサ116、エンジン101の吸入空気量QAを検出するエアフローセンサ115、クランクシャフト120の角度信号POSを出力するクランク角センサ117、スロットルバルブ103bの開度TVOを検出するスロットルセンサ118、エンジン101の冷却水温度TWを検出する水温センサ119、エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)PBを検出する吸気圧センサ142等からの検出信号が入力される。
前記クランク角センサ117からの角度信号POSに基づいて、前記エンジンコントロールユニット114でエンジン回転速度NEが算出される。
また、前記エンジン101には、燃料タンク133にて発生した蒸発燃料を、蒸発燃料通路134を介してキャニスタ135に一時的に吸着させ、キャニスタ135から脱離させた蒸発燃料を、パージ制御弁136を備えたパージ通路137を介してスロットルバルブ103b下流の吸気通路に吸引させる、蒸発燃料処理装置が備えられている。
また、前記エンジン101には、クランクケース内に溜まるブローバイガスを、PCV(ポジティブ・クランクケースベンチレーテッド・バルブ)138が介装されるブローバイガスパージ通路139を介してスロットルバルブ103b下流の吸気通路に吸引させ、スロットルバルブ103b上流の新気を、新気通路140を介してシリンダヘッドを経由してクランクケース内に導入するブローバイガス処理装置が備えられている。
更に、前記エンジン101の吸気負圧(吸気管負圧)を利用してブレーキ操作力を倍力するマスタバック132aを含んでなるブレーキ油圧回路が設けられている。
前記ブレーキ油圧回路は、ブレーキペダル131の操作力を倍力する負圧式倍力手段としてのマスタバック132a(ブレーキブースタ)と、該マスタバック132aで倍力された操作力に応じてマスタシリンダ圧(第1液圧)を発生するタンデム型のマスタシリンダ203(第1液圧発生手段)と、前記マスタシリンダ圧を各ホイールシリンダ204〜207に供給する油圧ユニット202とから構成される。
前記マスタバック132aには、前記スロットルバルブ103b下流(負圧源)の吸気負圧が、負圧導入管132cを介して導入されるようになっており、前記負圧導入管132cの途中には、チェックバルブ210が介装されている。
ブレーキコントロールユニット(BCU)201は、マイクロコンピュータを内蔵し、前記マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPを検出する負圧センサ132b(負圧検出手段)、前記ブレーキペダル131のストローク量BS(踏込量)を検出するブレーキペダルセンサ208、前記マスタシリンダ圧MCPを検出する液圧センサ209などからの信号を入力すると共に、前記油圧ユニット202に含まれる後述の電磁弁及びモータに対して操作信号を出力する。
前記エンジンコントロールユニット114とブレーキコントロールユニット201とは、通信回路211によって相互通信可能に接続されており、各種センサの検出結果・演算結果・制御要求信号などを相互に送受信する。
図2〜図4は、前記可変バルブリフト機構(VEL)112の構造を詳細に示すものである。
図2〜図4に示す可変バルブリフト機構は、一対の吸気バルブ105,105と、シリンダヘッド11のカム軸受14に回転自在に支持された中空状の吸気カムシャフト13と、該吸気カムシャフト13に軸支された回転カムである2つの偏心カム15,15(駆動カム)と、前記吸気カムシャフト13の上方位置に同じカム軸受14に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16に制御カム17を介して揺動自在に支持された一対のロッカアーム18,18と、各吸気バルブ105,105の上端部にバルブリフター19,19を介して配置された一対のそれぞれ独立した揺動カム20,20と、を備えている。
前記偏心カム15,15とロッカアーム18,18とは、リンクアーム25,25によって連係され、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とは、リンク部材26,26によって連係されている。
上記ロッカアーム18,18,リンクアーム25,25,リンク部材26,26が伝達機構を構成する。
前記偏心カム15は、図5に示すように、略リング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向にカム軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xが吸気カムシャフト13の軸心Yから所定量だけ偏心している。
また、前記偏心カム15は、吸気カムシャフト13に対し前記バルブリフター19に干渉しない両外側にカム軸挿通孔15cを介して圧入固定されていると共に、カム本体15aの外周面15dが同一のカムプロフィールに形成されている。
前記ロッカアーム18は、図4に示すように、略クランク状に屈曲形成され、中央の基部18aが制御カム17に回転自由に支持されている。
また、基部18aの外端部に突設された一端部18bには、リンクアーム25の先端部と連結するピン21が圧入されるピン孔18dが貫通形成されている一方、基部18aの内端部に突設された他端部18cには、各リンク部材26の後述する一端部26aと連結するピン28が圧入されるピン孔18eが形成されている。
前記制御カム17は、円筒状を呈し、制御軸16外周に固定されていると共に、図2に示すように軸心P1位置が制御軸16の軸心P2からαだけ偏心している。
前記揺動カム20は、図2及び図6,図7に示すように略横U字形状を呈し、略円環状の基端部22に吸気カムシャフト13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔22aが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18の他端部18c側に位置する端部23にピン孔23aが貫通形成されている。
また、揺動カム20の下面には、基端部22側の基円面24aと該基円面24aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面24bとが形成されており、該基円面24aとカム面24bとが、揺動カム20の揺動位置に応じて各バルブリフター19の上面所定位置に当接するようになっている。
即ち、図8に示すバルブリフト特性からみると、図2に示すように基円面24aの所定角度範囲θ1がベースサークル区間になり、カム面24bの前記ベースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2が所謂ランプ区間となり、更に、カム面24bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。
また、前記リンクアーム25は、円環状の基部25aと、該基部25aの外周面所定位置に突設された突出端25bとを備え、基部25aの中央位置には、前記偏心カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合穴25cが形成されている一方、突出端25bには、前記ピン21が回転自在に挿通するピン孔25dが貫通形成されている。
更に、前記リンク部材26は、所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部26a,26bには前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム20の端部23の各ピン孔18d,23aに圧入した各ピン28,29の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔26c,26dが貫通形成されている。尚、各ピン21,28,29の一端部には、リンクアーム25やリンク部材26の軸方向の移動を規制するスナップリング30,31,32が設けられている。
上記構成において、制御軸16の軸心P2と制御カム17の軸心P1との位置関係によって、図6,7に示すように、バルブリフト量が変化することになり、前記制御軸16を回転駆動させることで、制御カム17の軸心P1に対する制御軸16の軸心P2の位置を変化させる。
前記制御軸16は、図10に示すような構成により、DCサーボモータ(アクチュエータ)121によって所定回転角度範囲内で回転駆動されるようになっており、前記制御軸16の角度を前記アクチュエータ121で変化させることで、吸気バルブ105のバルブ作動角がバルブリフト量と共に連続的に変化する(図9参照)。
図10において、DCサーボモータ121は、その回転軸が制御軸16と平行になるように配置され、回転軸の先端には、傘歯車122が軸支されている。
一方、前記制御軸16の先端に一対のステー123a,123bが固定され、一対のステー123a,123bの先端部を連結する制御軸16と平行な軸周りに、ナット124が揺動可能に支持される。
前記ナット124に噛み合わされるネジ棒125の先端には、前記傘歯車122に噛み合わされる傘歯車126が軸支されており、DCサーボモータ121の回転によってネジ棒125が回転し、該ネジ棒125に噛み合うナット124の位置が、ネジ棒125の軸方向に変位することで、制御軸16が回転されるようになっている。
ここで、ナット124の位置を傘歯車126に近づける方向が、バルブ作動角(バルブリフト量)が小さくなる方向で、逆に、ナット124の位置を傘歯車126から遠ざける方向が、バルブ作動角(バルブリフト量)が大きくなる方向となっている。
前記制御軸16の先端には、図10に示すように、制御軸16の角度位置APを検出する角度センサ127が設けられており、該角度センサ127で検出される実際の角度位置が目標角度位置に一致するように、前記エンジンコントロールユニット114が前記DCサーボモータ121の通電操作量をフィードバック制御する。
尚、吸気バルブ105のバルブ作動角及びバルブリフト量を可変とする可変バルブリフト機構(VEL)112の構造は、上記のものに限定されず、公知の種々の構造のものを適宜採用することができる。
図11は、前記可変バルブタイミング機構(VTC)113の構造を示す。
本実施形態の可変バルブタイミング機構113は油圧式機構であり、クランクシャフト120によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、吸気カムシャフト13の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈する4つの隔壁部63が、それぞれハウジング56の周方向に沿って90°間隔で突設されている。
前記回転部材53は、吸気カムシャフト13の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の最大遅角側の回動位置(基準作動状態)において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送する機関駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記ECU114は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、デューティ制御信号に基づいて制御することで、クランクシャフト120に対する吸気カムシャフト13の回転位相を変更し、吸気バルブ105の作動角の中心位相を進・遅角制御する。
例えば、電磁アクチュエータ99にオンデューティ0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出される。
従って、遅角側油圧室83の内圧が高、進角側油圧室82の内圧が低となって、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相が遅角される。
一方、電磁アクチュエータ99にオンデューティ100%の制御信号(ON信号)を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相が進角される。
このように、ベーン78a〜78dがハウジング56内で相対回転できる範囲で、吸気カムシャフト13のクランクシャフト120に対する位相が最遅角位置から最進角位置までの間で連続的に変化し、吸気バルブ105の作動角の中心位相が連続的に変化するものである。
尚、可変バルブタイミング機構113としては、上記のように油圧を用いる機構の他、特開2003−129806号公報や特開2001−241339号公報に開示されるように、カムシャフトにブレーキトルクを作用させる可変バルブタイミング機構を用いることができ、更に、特開2007−262914号公報に開示されるような電動モータを駆動源とする可変バルブタイミング機構であってもよい。
図12は、前記ブレーキ油圧回路における油圧ユニット202の詳細を示す図である。
図12に示す油圧ユニット202では、前記マスタシリンダ203から左右の前輪FR,FLそれぞれのホイールシリンダ204,205に接続される、2つの独立したマスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bが設けられており、前記マスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bには、それぞれに遮断弁2002A,2002Bが介装されている。
また、モータ2003で駆動されるポンプ2004が設けられ、該ポンプ2004は、吸込口からリザーバタンク2018内のブレーキ液を吸い込み、昇圧して吐出する。前記ポンプ2004は、例えばプランジャ又はギアポンプであり、前記モータ2003及びポンプ2004が第2液圧発生手段に相当する。
前記ポンプ2004の吐出口と、ホイールシリンダ204,205,206,207それぞれへのポンプアップ圧の供給を制御するIN弁2005A〜2005Dの一方のポートとが、ポンプアップ圧供給配管2006によって接続されている。
前記ポンプアップ圧供給配管2006は、前記ポンプ2004の吐出口の下流側で2つに分岐し、分岐後の配管が更に2つに分岐して、IN弁2005A〜2005Dの一方のポートにそれぞれ接続される。
前記ポンプアップ圧供給配管2006の最初の分岐点Xの下流側には、IN弁2005A〜2005Dに向けての流れのみを許容するチェックバルブ2007A,2007Bが介装されている。
前記IN弁2005A〜2005Dの他方のポートと、ホイールシリンダ204,205,206,207からの液圧のリリーフを制御するOUT弁2020A〜2020Dの一方のポートとが、それぞれに第1給排配管2008A〜2008Dによって接続されている。
そして、前記OUT弁2020A〜2020Dの他方のポートは、前記ポンプ2004吸込口とリザーバタンク2018とを接続するリザーバ配管2009に接続されている。
更に、第1給排配管2008A,2008Bの途中と、前記遮断弁2002A,2002Bの下流側の前記マスタシリンダ圧供給配管2001A,2001Bとをそれぞれに接続する第2給排配管2010A,2010Bが設けられる。
また、給排配管2008C,2008Dの途中と、左右の後輪RR,RLそれぞれのホイールシリンダ206,207とを接続するポンプアップ圧給排配管2011A,2011Bが設けられている。
また、前記ポンプ2004の吐出口の直後のポンプアップ圧供給配管2006と、前記ポンプ2004の吸込口の直前の前記リザーバ配管2009とを接続するリリーフ配管2012が設けられ、前記リリーフ配管2012には、ポンプ吐出側の液圧が設定圧を超えたときに開弁するリリーフバルブ2013が介装されている。
尚、前記遮断弁2002A,2002B及びOUT弁2020C,2020Dは、スプリングによって開弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって閉弁する電磁弁であり、前記IN弁2005A〜2005D及びOUT弁2020A,2020Bは、スプリングによって閉弁方向に付勢され、電磁コイルへの通電によって開弁する電磁弁である。
前記ホイールシリンダ204,205,206,207には、ホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ2015A〜2015Dがそれぞれに設けられており、前記ホイールシリンダ圧センサ2015A〜2015Dの検出信号(ホイールシリンダ圧信号)は、前記ブレーキコントロールユニット201に入力される。
上記構成において、左右の後輪RR,RLそれぞれのホイールシリンダ206,207に対して、マスタシリンダ圧を供給する経路は設けられておらず、ホイールシリンダ206,207に対しては、ポンプ2004によって生成されるポンプアップ圧(第2液圧)が供給される。
ホイールシリンダ206,207に対するポンプアップ圧の給排を制御するIN弁2005C,2005D及びOUT弁2020C,2020Dに対する非通電状態では、IN弁2005C,2005Dが閉状態、OUT弁2020C,2020Dが開状態となる。
この場合、ポンプ2004からのポンプアップ圧は、前記IN弁2005C,2005Dで遮断される一方、OUT弁2020C,2020Dが開状態であるため、ホイールシリンダ206,207とリザーバタンク2018とがOUT弁2020C,2020Dを介して連通するようになり、ホイールシリンダ206,207の液圧は、リザーバタンク2018にリリーフされて、ホイールシリンダ206,207の液圧(ホイールシリンダ圧)が低下する。
一方、IN弁2005C,2005D及びOUT弁2020C,2020Dに対する通電状態では、IN弁2005C,2005Dが開状態、OUT弁2020C,2020Dが閉状態となる。
この場合、ポンプ2004からのポンプアップ圧は、前記IN弁2005C,2005Dを介してホイールシリンダ206,207に供給される一方、ホイールシリンダ206,207とリザーバタンク2018との接続がOUT弁2020C,2020Dで遮断されるため、ホイールシリンダ206,207の液圧(ホイールシリンダ圧)が増加する。
更に、IN弁2005C,2005Dを非通電とし、OUT弁2020C,2020Dに対して通電すると、IN弁2005C,2005Dが閉状態となり、OUT弁2020C,2020Dも閉状態となるから、ポンプアップ圧のホイールシリンダ206,207に対する給排が止められ、ホイールシリンダ圧が保持されることになる。
一方、左右の前輪FR,FLそれぞれのホイールシリンダ204,205に対しては、マスタシリンダ圧とポンプアップ圧との一方を選択的に供給できるようになっている。
即ち、前記IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bに対する非通電状態では、前記IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bが共に閉状態となり、このときに、遮断弁2002A及び2002Bも非通電とすれば、マスタシリンダ圧がホイールシリンダ204,205に対して供給されることになる。
前記遮断弁2002A及び2002Bに通電すれば、遮断弁2002A及び2002Bが閉状態になって、ホイールシリンダ204,205に対するマスタシリンダ圧の供給が断たれる。
この遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、OUT弁2020A,2020Bを非通電、IN弁2005A,2005Bを通電状態にすると、OUT弁2020A,2020Bが閉弁し、IN弁2005A,2005Bが開弁することで、ポンプアップ圧がホイールシリンダ204,205に供給されるようになる。
また、遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、IN弁2005A,2005Bを非通電、OUT弁2020A,2020Bを通電状態にすると、IN弁2005A,2005Bが閉弁し、OUT弁2020A,2020Bが開弁することで、ポンプアップ圧がホイールシリンダ204,205からリリーフされる。
更に、遮断弁2002A,2002Bへの通電状態(閉弁状態)で、IN弁2005A,2005B及びOUT弁2020A,2020Bを非通電とすれば、ポンプアップ圧のホイールシリンダ204,205に対する給排が停止されることで、ホイールシリンダ圧が保持される。
尚、油圧ユニット202を、全てのホイールシリンダ204〜207に対して、マスタシリンダ圧及びポンプアップ圧を供給できる油圧回路とすることができる。
次に、前記エンジンコントロールユニット114によるエンジン制御を、図13のフローチャートに従って説明する。
ステップS1001では、各種検出信号の読込みを行う。
具体的には、アクセル開度ACC、エンジン回転速度NE、吸入空気量QA、吸気負圧PB、ブースタ負圧BNPなどを読み込む。
ステップS1002では、目標吸気負圧(目標吸気管負圧)の設定を行う。
具体的には、下記複数条件(1)〜(6)のうちの1つが成立した場合には、その成立条件で要求される吸気負圧を目標吸気負圧とし、下記複数条件(1)〜(6)のうちの複数が同時に成立した場合には、各成立条件(1)〜(6)それぞれから要求される複数の目標吸気負圧のうちの最も大きな値(大気圧に対して最も低い圧)を選択し、下記複数条件(1)〜(6)のいずれもが非成立の場合には、目標吸気負圧を大気圧(0mmHg)又は大気圧近傍の圧力とする。
尚、下記条件(1)〜(6)に基づいて設定される目標吸気負圧は、いずれも大気圧よりも低い圧力である。
(1)キャニスタパージの要求:キャニスタパージを行う条件が成立すると、パージエアを、吸気負圧を利用して吸気系に吸い込ませるために、パージ要求量に応じて目標吸気負圧を決定する。
(2)ブローバイガスの要求:ブローバイガスをエンジン101に吸引させる条件が成立すると、ブローバイガスを、吸気負圧を利用して吸気系に還元させるために、処理するブローバイガス量に応じて目標吸気負圧を設定する。
(3)ブレーキ液温の低温判定時の要求:ブレーキ液の温度が低いと、ポンプアップ圧による制動力の制御応答が遅くなってしまうので、前輪の制動をマスタシリンダ圧で行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
(4)ポンプ連続作動判定時の要求:ポンプ2004を連続して作動させる場合、モータ2003が過熱する可能があるので、ポンプ2004が連続して作動している状態を判定すると、前輪の制動をマスタシリンダ圧で行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
(5)ポンプアップ圧異常の要求:ポンプアップ圧でホイールシリンダ圧が高められないなどの異常がポンプアップシステムに発生した場合に、マスタシリンダ圧で制動を行わせるべく、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を目標吸気負圧に設定する。
(6)制動からの要求:図14に示すように、マスタバック132aの弁機構が全開する倍力限界点(全負荷点)で得られるマスタシリンダ圧は、マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)で変化し、ブースタ負圧が大きいほど倍力限界点でのマスタシリンダ圧は大きくなるので、常用の制動(0.4g以下の制動)が、マスタバック132aの弁機構が全開する倍力限界点(全負荷点)以前に発生するマスタシリンダ圧で行われるように、常用の制動における減速度の最大値での制動を実現できるマスタシリンダ圧が、マスタバック132aの倍力限界点(全負荷点)で得られるように、目標吸気負圧(ブースタ負圧)を設定する(図15参照)。
前述した各条件(1)〜(6)に基づく目標吸気負圧の設定に代えて、エンジンの負荷(エンジントルク)に応じて目標吸気負圧を設定させることができ、具体的には、高負荷域よりも低中負荷域でより大きな負圧を発生させるように目標吸気負圧を設定させることができる。
更に、前記エンジンの負荷(エンジントルク)に応じた目標吸気負圧と、前記各条件(1)〜(6)のうちの少なくとも1つに基づく要求負圧との中から、最も大きな負圧を目標吸気負圧とすることができる。
図13のフローチャートのステップS1002で、上記のようにして目標吸気負圧(目標吸気管負圧)を設定すると、次のステップS1003では、前記可変バルブリフト機構(VEL)112及び可変バルブタイミング機構(VTC)113の制御目標を設定し、次のステップS1004では、前記電子制御スロットル(ETB)104の制御目標を設定する。
そして、ステップS1005では、前記制御目標に基づいて、前記可変バルブリフト機構(VEL)112,可変バルブタイミング機構(VTC)113及び電子制御スロットル(ETB)104を制御する。
前記制御目標の設定は、例えば、特開2003−184587号公報に開示されるようにして行われる。
即ち、アクセル開度及び機関回転速度NEに応じて目標トルクを設定し、この目標トルクが得られる目標吸入空気量を算出し、更に、前記目標吸入空気量を、機関回転速度NE及び排気量(シリンダ総容量)に基づいて目標体積流量比に変換する。
そして、前記目標体積流量比をそのときの目標吸気負圧(目標吸気管負圧)に基づいて補正し、該補正後の目標体積流量比から目標バルブ開口面積を算出する。
次いで、そのときの可変バルブタイミング機構(VTC)113による吸気バルブ105の作動角の中心位相と、前記目標バルブ開口面積とから、前記制御軸16の目標角度、即ち、目標バルブリフト量を算出する。
また、前記可変バルブタイミング機構(VTC)113によって可変とされる、吸気バルブ105の作動角の中心位相の目標は、エンジン負荷・エンジン回転速度などから設定する。
更に、前記電子制御スロットル(ETB)104の目標開度は、前記目標バルブリフト量及び目標中心位相の条件下で、目標吸気負圧が得られる開度として演算される。
次に、図16のフローチャートに従って、前記ブレーキコントロールユニット201によるブレーキ制御を詳述する。
図16のフローチャートにおいて、まず、ステップS1101では、各種信号の読込みを行う。
具体的には、ブレーキペダルの操作量(ストローク量或いはマスタシリンダ圧)、ブースタ負圧、ホイールシリンダ圧などを示す信号の読込みを行う。
ステップS1102では、ブレーキペダル131の操作量が基準値(例えば0)以上であるか否かに基づいて、制動時であるか否か(運転者による制動要求があるか否か)を判断する。
前記ブレーキペダルの操作量は、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BS、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCP、踏力センサを備える場合には該踏力センサで検出されるブレーキペダル131の踏力などである。
非制動時であれば、ステップS1103へ進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A〜2005Dを閉、前輪側のOUT弁2020A,2020Bを閉、後輪側のOUT弁2020C,2020Dを開とする。
これにより、前輪側のホイールシリンダ204,205に対してマスタシリンダが供給される状態になり、また、後輪側のホイールシリンダ206,207がリザーバ配管2009と接続され、ホイールシリンダ206,207のシリンダ圧がリリーフされる状態になる。
一方、制動時であれば、ステップS1104へ進み、ブレーキ操作量に応じて目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する。
例えば、ブレーキペダルセンサ208で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BSが基準値を越えていることに基づいて制動状態であると判断する場合には、図17に示すように、ブレーキペダルセンサ208(要求制動力検出手段)で検出される前記ブレーキペダル131のストローク量BSが大きくなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出する。
また、液圧センサ209で検出されるマスタシリンダ圧MCPが基準値を越えていることに基づいて制動状態であると判断する場合には、図18に示すように、液圧センサ209(要求制動力検出手段)で検出されるマスタシリンダ圧MCPが高くなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出させることができる。
また、ブレーキペダルの踏力が基準値を越えていることに基づいて制動状態であると判断する場合には、踏力が高くなるほど、より大きな目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を算出させることができる。
更に、目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)は、車両の積載状態に応じて決定することができる。
これは、車両に対する荷物・人員の積載により、前後輪の荷重が、積載がない場合と比べ変化するためであり、荷重の変化に応じた目標制動力とするものである。
積載状態は、例えば、減速中の各輪のスリップ率などにより検出することができ、また、荷重センサ等で検出することができる。
更に、制動時のステアリング舵角と車速などに応じて前後左右輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を決定することができる。
これは、車両の旋回時には、旋回外側の車輪荷重が旋回内側の車輪荷重より大きくなるため、旋回外側の車輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を大きくするものである。
尚、ブレーキ操作量(ストローク量BS,マスタシリンダ圧MCP,ブレーキペダル踏力)が大きくなるに従って、前輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を後輪の目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)よりもより大きくすることができる。
これは、制動による車両の減速度が大きくなるほど、前輪の荷重が増え、相対的に後輪の荷重が減るので、その分、前輪の制動力を増やすものである。
また、ブレーキ操作量(ストローク量BS,マスタシリンダ圧MCP,ブレーキペダル踏力)の増大変化率で目標制動力を補正することができ、具体的には、前記増大変化率が閾値を超えた場合に、前記変化率と前記閾値との偏差に応じて目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を増大補正する。
上記のようにして目標制動力(目標ホイールシリンダ圧)を決定すると、次のステップS1105では、前輪のホイールシリンダ圧の制御か、後輪のホイールシリンダ圧の制御かを判定する。
ここで、前輪のホイールシリンダ圧の制御を行う場合には、ステップS1105からステップS1107へ進む。
尚、ステップS1105の判定は、前輪と後輪とでホイールシリンダ圧の制御が異なることを示し、実際には、前輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1107〜ステップS1114の処理)と後輪のホイールシリンダ圧の制御(ステップS1106の処理)とが並行して実行されるものとする。
ステップS1107では、前輪のホイールシリンダ204,205にポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧:第2液圧)を供給して制動を行う、ポンプアップ圧制動状態であるか否かを判断する。
そして、本ルーチンの前回以前においてマスタシリンダ圧からポンプアップ圧への切り替えが行われていて、前輪のポンプアップ圧制動状態であれば、ステップS1113以降へ進む。
一方、ポンプアップ圧制動状態でない場合(マスタシリンダ圧のよる制動状態である場合)には、ステップS1108へ進み、負圧センサ132b(負圧検出手段)で検出されたブースタ負圧BNP(マスタバック132aの負圧室内の負圧)に基づき、モータ2003の駆動開始判定に用いる目標制動力の閾値Aと、マスタシリンダ圧からポンプアップ圧への切り替えタイミングの判定に用いる目標制動力の閾値Bとを設定する。
前記閾値A及び閾値Bは、図19に示すように、閾値A<閾値Bであって、ブースタ負圧BNPが高いほどより大きな値に設定され、閾値Bは、マスタバック132aの全負荷点での制動力よりも僅かに低い値に設定される。
尚、負圧センサ132bで検出されたブースタ負圧BNPに代えて、前記目標吸気負圧又は実際の吸気負圧に応じて前記閾値A,Bを設定させることができる。
ステップS1109では、前記ステップS1104で設定した目標制動力が、ステップS1108で設定した閾値A以上であるか否かを判定することで、ポンプ2004(モータ2003)の駆動開始タイミングであるか否かを判断する。
そして、目標制動力が増大して閾値Aに達すると、ステップS1110へ進んで、前記モータ2003の回転駆動(通電)を開始させる。
ステップS1111では、前記ステップS1104で設定した目標制動力が、ステップS1108で設定した閾値B以上になったか否かを判断する。
目標制動力が増大して閾値Bに達すると、ステップS1114に進んで、それまでのマスタシリンダ圧を前輪のホイールシリンダ204,205に供給して制動を行う状態から、ポンプ2004の吐出圧(ポンプアップ圧)をホイールシリンダ204,205に供給して制動を行うポンプアップ圧制動に移行させる(第1の液圧切替え手段)。
一方、マスタシリンダ圧による制動状態で、目標制動力が閾値Bに達していない場合には、マスタシリンダ圧で要求の制動力を満たすことができると判断し、ステップS1112へ進む。
ステップS1112では、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを閉として、マスタシリンダ圧で制動を行わせる。
ステップS1111からステップS1114へ進んで、ポンプアップ圧への切り替えを行うと、次回ステップS1107に進んだ場合に、ポンプアップ制動状態であると判断されることで、ステップS1113へ進む。
ステップS1113では、前記マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPが設定負圧よりも大きいか否かを判断する。
尚、大気圧を0kPaとし、大気圧よりも低い圧である負圧をプラスで示し、前記設定負圧は、設定負圧>0に設定されるものとする。
上記判断は、運転者によるブレーキペダルの踏み込みによって低下したブースタ負圧BNPが回復して、マスタシリンダ圧が要求制動力を満たすようになっているか否かを判断するものである。
ステップS1113で、ブースタ負圧BNPが設定負圧よりも大きいと判断された場合には、ポンプアップ圧を前輪のホイールシリンダ204,205に供給して制動を行う状態から、マスタシリンダ圧をホイールシリンダ204,205に供給して制動を行う状態に戻しても、要求の制動力を満たすことになり、また、マスタシリンダ圧による制動に戻してモータ2003を停止すれば、ブースタ負圧BNPを有効利用して、モータ2003の消費電力を節約でき、更に、モータ2003の連続使用による過熱を抑制することができる。
そこで、ステップS1113で、ブースタ負圧BNPが設定負圧よりも大きいと判断された場合には、ステップS1112に進み、遮断弁2002A,2002Bを開、モータ2003をオフ、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを閉として、前輪をマスタシリンダ圧で制動を行わせる状態に復帰させる。
上記のステップS1113からステップS1112に進む処理が、第2の液圧切替手段に相当する。
一方、ステップS1113で、ブースタ負圧BNPが設定負圧以下であると判断された場合には、マスタシリンダ圧では要求の制動力を満たさないものと判断し、ステップS1114へ進んで、ポンプアップ制動状態を継続させる。
尚、ステップS1113においてブースタ負圧BNPと比較させる設定負圧は、前述のように、マスタシリンダ圧が要求の制動力を満たすか否かを判別するための値であり、例えば、1Gでの減速要求を満たすことができる値として予め固定値として記憶させておくことができる他、後述するように車両の運転条件(要求制動力に相関する運転条件など)に応じて可変に設定することができる。
一方、図12に示したブレーキ油圧回路では、後輪のホイールシリンダ206,207には、マスタシリンダ圧が供給されず、ポンプアップ圧の供給のみが可能に構成されているので、ステップS1105で後輪の制御を判定した場合には、ステップS1106へ進み、後輪のホイールシリンダ206,207に対してポンプアップ圧の供給制御を行う。
前記ステップS1114におけるポンプアップ圧の供給制御においては、まず、遮断弁2002A,2002Bを閉弁させ、前輪のホイールシリンダ204,205に対するマスタシリンダ圧の供給を遮断する。
そして、ホイールシリンダ圧センサ2015A,2015Bで検出されるホイールシリンダ204,205の実際の圧力と、目標ホイールシリンダ圧(目標制動力)とを比較し、増圧要求時には、モータ2003をオンとし、IN弁2005A,2005Bを開、OUT弁2020A,2020Bを閉とし、ポンプアップ圧が前輪のホイールシリンダ204,205に供給されるようにする。
そして、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで増圧すると、IN弁2005A,2005Bを閉とし、かつ、モータ2003をオフすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
また、減圧要求時には、IN弁2005A,2005Bを閉、OUT弁2020A,2020Bを開とし、前輪のホイールシリンダ204,205のシリンダ圧を低下されるようにする。
そして、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで減圧すると、OUT弁2020A,2020Bを閉とすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
また、ステップS1106における後輪でのポンプアップ圧の供給制御も同様にして行われ、増圧要求時には、モータ2003をオンとし、IN弁2005C,2005Dを開、OUT弁2020C,2020Dを閉とし、ポンプアップ圧が後輪のホイールシリンダ206,207に供給されるようにする。
そして、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで増圧したと判断されると、IN弁2005C,2005Dを閉とし、かつ、モータ2003をオフすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
一方、減圧要求時であれば、IN弁2005C,2005Dを閉、OUT弁2020C,2020Dを開とし、後輪のホイールシリンダ206,207のシリンダ圧が低下するようにする。
そして、実際のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧にまで減圧されると、OUT弁2020C,2020Dを閉とすることで、そのときのホイールシリンダ圧が保持されるようにする。
図20のタイムチャートは、前記図16のフローチャートに示した制御を実行した場合の車速、マスタシリンダ圧、ポンプアップ圧、マスタバック負圧、吸気負圧、ブレーキ踏力、ブレーキストローク、ブレーキスイッチの変化を示す。
この図20のタイムチャートにおいて、時刻t1の時点でアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えがなされ、これによって、吸気負圧が増大すると共に、倍力に用いられることでマスタバック負圧は低下する(大気圧に近づく)。
時刻t2では、目標制動力が閾値以上になったことに基づいてマスタシリンダ圧からポンプアップ圧への切り替えがなされる。
時刻t2でポンプアップ圧への切り替えがなされた後、時刻t3でブレーキストロークが停止し、その後は、増大変化しつつある吸気負圧がマスタバック132a内に導入されることで、マスタバック負圧が増大に転じる。
そして、時刻t4でマスタバック負圧が設定負圧(例えば1G減速を実現できる負圧)に達することで、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧への戻しがなされ、ポンプが停止されることでポンプアップ圧は略零に低下する。
時刻t4の時点でポンプアップ圧からマスタシリンダ圧に戻さずに、制動要求が無くなるまで、ポンプアップ制動を継続させる場合、ポンプアップ圧を用いなくてもマスタシリンダ圧で要求制動力を満たすことができるのに、無用にポンプが駆動されることで、モータの消費電力が多くなり、また、ポンプの連続作動によってモータ過熱が生じる可能性がある。
これに対し、前述のように、時刻t4の時点でポンプアップ圧からマスタシリンダ圧に戻せば、要求制動力を満たすことができるまでに回復したマスタバック負圧を有効利用して、倍力制動を行わせることができ、マスタシリンダ圧を用いることで、ポンプアップ圧(モータ駆動)が不要となって、モータの消費電力を低減し、また、モータの過熱を回避することが可能となる。
次に、前記ステップS1113においてブースタ負圧BNPと比較させる設定負圧(負圧の設定値)を、車両の運転条件に応じて可変に設定する、ブレーキコントロールユニット(BCU)201による演算処理(負圧設定手段)を、図21のフローチャートに従って説明する。
ステップS1201では、前記所定負圧の基準値を、例えば1Gでの減速要求を満たすことができる値に設定する。
ステップS1202では、そのときの車速の検出結果を読み込む。
ステップS1203では、ステップS1202で読み込んだ車速に基づいて補正値(1)を設定し、該補正値(1)で前記基準値を補正した結果を第1の補正後設定負圧として設定する。
前記車速に応じた設定負圧の補正においては、前記基準車速よりもそのときの車速が高い場合には、車速が高いほど基準値をより大きな値(大気圧に対してより低い値)に補正設定する。
これは、高車速側での制動は、見かけの摩擦係数の低下を招く場合があり、同じ制動力を確保するのにより高いホイールシリンダ圧が要求されることになるためである。
ステップS1204では、エンジン101と組み合わされ、エンジン101の出力を駆動輪に伝達する変速機における変速段(シフトレンジ)が後退段(後退レンジ)であるか否かを判断する
ここで、後退段(後退レンジ)である場合には、ステップS1205へ進み、前記第1の補正後設定負圧を、予め記憶された補正値(2)だけ減少補正した結果を、第2の補正後設定負圧に設定し、後退段(後退レンジ)でない場合には、後退段(後退レンジ)が選択されている状態に適合する補正は不要であるので、ステップS1206へ進み、前記第1の補正後設定負圧をそのまま第2の補正後設定負圧に設定する。
後退時における車速は前進時よりも低く、また、後退制動時には、前輪の接地荷重が軽くなることで、前輪の制動が過剰に効いて前輪がロックし易くなるため、前進用に前輪側に強い制動をかけるブレーキ装置においては、そもそも前進時のような減速Gを実現できない。
従って、後退段(後退レンジ)が選択されている後進時には、前記設定負圧を減少補正し、前進時よりもブースタ負圧BNPが小さい状態(マスタバック132aの負圧室の圧力がより大気圧に近い状態)から、マスタシリンダ圧に戻すことが可能である。
そこで、後退段(後退レンジ)が選択されている後進時には、制動による減速Gが後進によって低下する分に対応する補正値(2)によって設定負圧を減少補正し、ブースタ負圧BNPの上昇変化中に前進時よりも早いタイミングでマスタシリンダ圧に切り替えられるようにする。
尚、前進側の変速段(シフトレンジ)であっても、低速側の変速段(シフトレンジ)である場合に、設定負圧を減少補正することができる。
ステップS1207では、車両が旋回中であるか否か、換言すれば、横方向の加速度が所定以上であるか否かを、操作角及び車速から判断する。
旋回中である場合には、タイヤは曲がる力と制動力との双方を発することになり、制動で実現できる減速Gが低下するため、前記設定負圧を非旋回時に比べて小さくし、ブースタ負圧BNPの上昇変化中のより早いタイミングから、マスタシリンダ圧に戻すことが可能である。
そこで、旋回中であると判断された場合には、ステップS1208へ進み、前記第2の補正後設定負圧から補正値(3)を減算した結果を、第3の補正後設定負圧に設定する。
前記補正値(3)は、制動による減速Gが旋回走行によって低下する分に対応する値に予め設定されており、固定値とすることができる他、旋回による横方向加速度(横G)が大きいときほどより大きな値に設定することができる。
一方、非旋回中(直進状態)であれば、旋回走行状態に適合させるための補正は不要であるので、ステップS1209へ進み、前記第2の補正後設定負圧をそのまま第3の補正後設定負圧に設定する。
ステップS1210では、エンジンブレーキの発生状態であるか否かを、アクセル開度、エンジン回転速度、変速段、エンジントルク、トルクコンバータのロックアップ状態などから判断する。
例えば、アクセル開度が略全閉で、エンジン回転速度がアイドル回転速度よりも高く、かつ、変速段(シフトレンジ)が前進段(ドライブレンジ)である場合を、エンジンブレーキの発生状態であると判断することができる。
そして、エンジンブレーキの発生状態であれば、ブレーキ装置が発生すべき制動力が相対的に減るので、ステップS1211へ進み、エンジンブレーキによる制動力に対応する補正値(4)に基づいて、前記第3の補正後設定負圧を減少補正し、該減少補正結果を第4の補正後設定負圧に設定する。
一方、エンジンブレーキの非発生状態であれば、ブレーキ装置が発生すべき制動力が減ることがないので、設定負圧の減少補正は不要であり、ステップS1212に進み、前記第3の補正後設定負圧をそのまま第4の補正後設定負圧に設定する。
ここで、エンジンブレーキ状態でのエンジン回転速度が高いほど、エンジンブレーキ力が大きいと判断して、補正値(4)をより大きな値に設定することができる。
ステップS1213では、回生ブレーキ中であるか否かを判断する。
例えば、駆動力を発生させるための電動機(モータ)を、減速時に発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで制動をかけることが、回生ブレーキであり、回生ブレーキによる制動力分だけ、ブレーキ装置が発生すべき制動力が相対的に減る。
そこで、回生ブレーキ中であれば、ステップS1214へ進み、回生ブレーキによる制動力に対応する補正値(5)に基づいて、前記第4の補正後設定負圧を減少補正し、該減少補正結果を第5の補正後設定負圧に設定する。
ここで、回生ブレーキによる制動力(回生されたエネルギー)に応じて補正値(5)を設定することができる。
一方、回生ブレーキ中でない場合には、ブレーキ装置が発生すべき制動力が減ることがないので、設定負圧の減少補正は不要であり、ステップS1215に進み、前記第4の補正後設定負圧をそのまま第5の補正後設定負圧に設定する。
ステップS1216では、前記第5の補正後設定負圧を、設定負圧に設定し、次のステップS1217では、ステップS1216で設定した設定負圧を最終値として決定する。
上記のように、設定負圧の基準値を、車速,変速段(シフトレンジ),旋回走行,エンジンブレーキ,回生ブレーキに応じて補正し、最終的な設定負圧を決定する。
これにより、ブレーキ装置が大きな制動力を発生する必要がない場合には、ブースタ負圧BNPの上昇変化中のより早いタイミングで、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧に切り替えることができ、ブースタ負圧BNPの有効利用、モータ2003の消費電力の節約、モータ2003の連続使用による過熱の抑制を、より促進させることができる。
一方、高車速時に、設定負圧を高めに設定して、より高いマスタシリンダ圧の発生が可能になってからマスタシリンダ圧に切り替えることで、要求制動力を満たさない条件での切り替えを抑止することができる。
尚、設定負圧を運転条件に応じて可変とする場合に用いる運転条件としては、上記図21のフローチャートに示したものの他、車両が走行している路面の勾配、路面の条件(ドライ・ウエットなどの違いや、舗装路・未舗装路の違いなどの路面の摩擦係数に影響する条件)、車両の積載重量、牽引の有無、車間距離、ブレーキペダルの踏み込み開始位置などを用いることができ、また、上記図21のフローチャートに示したものを含む複数条件のうちの1つ或いは複数を適宜組み合わせて、設定負圧の補正を行わせることができる。
ところで、図16のフローチャートに示す実施形態では、ブースタ負圧BNPと設定負圧との比較に基づいて、ホイールシリンダに供給する液圧をポンプアップ圧からマスタシリンダ圧に切り替えるようにしたが、図22のフローチャートに示すように、ブースタ負圧BNPと設定負圧との比較、及び、要求制動力の変化に基づいて、前記切り替えの実行判断を行わせることができる。
図22のフローチャートにおいて、ステップS1113A及びステップS1113B以外の各ステップは、図16のフローチャートと同じ処理を行うので、同じステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。
図22のフローチャートにおいて、ステップS1107でポンプアップ制動状態であると判断されて、ステップS1113Aに進むと、前記ステップS1113と同様に、前記マスタバック132aの負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPが設定負圧よりも大きいか否かを判断する。
尚、前記設定負圧は、前述のように固定値とすることができる他、運転条件に応じて可変に設定することができる。
ステップS1113Aでブースタ負圧BNPが設定負圧以下であると判断された場合には、マスタシリンダ圧に切り替えた場合に要求制動力を満たすことができなくなる場合があるので、ステップS1114へ進んで、ポンプアップ制動状態を継続させる。
一方、ステップS1113Aでブースタ負圧BNPが設定負圧よりも大きいと判断された場合には、マスタシリンダ圧に切り替えても要求の制動力を満たすことができると判断し、更に、ステップS1113Bに進む。
ステップS1113Bでは、要求制動力(目標ホイールシリンダ圧)の今回値と前回値とを比較することで、要求制動力が増大変化しているか否かを判断する。
ポンプアップ制動においては、増圧要求に対してはポンプ2004の駆動が必要となるが、液圧保持及び減圧制御は、ポンプ2004を停止した状態で行われる。
従って、要求制動力が増大変化していなく、液圧保持又は減圧制御が行われる場合には、ポンプ2004駆動による電力消費はなく、マスタシリンダ圧に切り替えても消費電力の節約効果はない。
また、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧に切り替えた場合、両液圧に差異があると、切り替えショックを運転者に与えることになってしまう。
そこで、要求制動力が増大変化してなく、液圧保持又は減圧制御状態である場合には、ステップS1114へ進んで、ポンプアップ制動状態を継続させる。
これにより、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧への切り替えに伴うショックの発生を抑制することができる。
一方、ステップS1113Bで要求制動力が増大変化していると判断された場合には、そのままポンプアップ制動状態を継続させる場合には、ポンプ2004を駆動してポンプアップ圧を発生させる必要がある一方で、マスタシリンダ圧で要求制動力を満たすことができるようになっているから、ステップS1112へ進んで、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧への切り替えを実行する。
但し、ポンプアップ圧からマスタシリンダ圧への切り替えは、マスタシリンダ圧≧ポンプアップ圧であることを条件として(マスタシリンダ圧がポンプアップ圧以上になるのを待って)行わせることが好ましく、これにより、切り替えに伴って制動力が一時的に弱まることを回避することができる。
次に、ポンプアップ制動状態で、ポンプアップシステムの異常が発生した場合に、ブレーキコントロールユニット(BCU)201によって実行される演算処理を、図23のフローチャートに従って説明する。
ステップS1301では、ポンプアップ制動状態であるか否かを判断し、ポンプアップ制動状態であれば、ステップS1302へ進む。
ステップS1302では、ポンプアップシステムに異常が発生しているか否かを判別する。
前記ポンプアップシステムとは、ポンプ2004,モータ2003,IN弁2005A〜2005D,OUT弁2020A〜2020Dの他、これらを接続させる油圧管路、更に、前記モータ2003の駆動回路を含むものである。
そして、ポンプアップシステムの異常とは、目標ホイールシリンダ圧に基づく実際のホイールシリンダ圧の増圧・減圧・保持制御が正常に行えない状態である。
例えば、要求制動力の増大変化に対してマスタシリンダ圧からポンプアップ圧に切り替え、ポンプアップ圧の供給によってホイールシリンダ圧を増圧させる場合に、所期の増圧が行えなかった場合には、モータ2003やモータ駆動回路の故障を要因とする増圧不能の異常状態を判定する。
また、増圧を行うことができた後の液圧保持要求、更に、減圧要求に対して、実際の液圧を保持・減圧させることができない場合には、IN弁2005A〜2005D及び/又はOUT弁2020A〜2020D(油圧制御弁)の故障を要因とする保持・減圧不能の異常状態を判定する。
ステップS1302で、ポンプアップシステムに異常が発生していると判断されると、ステップS1303へ進み、マスタシリンダ圧への切り替えに備えて、スロットルバルブ103bで吸入空気量を制御する場合に発生する吸気負圧と同等の吸気管負圧を生成させるように、前記ブレーキコントロールユニット201からエンジンコントロールユニット114に向けて要求信号を出力する。
尚、ポンプアップシステムに異常が発生していると判断された場合には、運転者に異常発生を警告するために、警告灯の点灯などを行うことが好ましい。
ステップS1304では、ポンプアップシステムの異常が、モータ駆動回路を含むモータ2003の異常(ポンプアップによる増圧不能状態)であるか否かを判断する。
モータ駆動回路を含むモータ2003の異常発生時(ポンプアップによる増圧不能状態)である場合には、ステップS1305へ進み、要求制動力(目標ホイールシリンダ圧)の今回値と前回値とを比較することで、要求制動力が増大変化しているか否かを判断する。
ここで、要求制動力(目標ホイールシリンダ圧)の増大変化状態である場合には、ポンプ2004によって生成されるポンプアップ圧をホイールシリンダに供給する必要があるが、モータ異常状態であるため、正常にポンプアップ圧を供給してホイールシリンダ圧を目標に追従変化させることができない。
そこで、ステップS1305で要求制動力の増大変化時であると判断されると、ステップS1306へ進み、そのときのマスタシリンダ圧がポンプアップ圧以上であるか否かを判断することで、マスタシリンダ圧への切り替えが直ちに可能であるか否かを判定する。
ポンプアップ圧によって制動力を正常に増大させることができない条件であっても、マスタシリンダ圧に切り替えることで制動力が一時的に低下することは好ましくないので、ステップS1306では、マスタシリンダ圧への切り替えに伴って制動力が低下するか否かを判断する。
そして、マスタシリンダ圧がポンプアップ圧以上であれば、マスタシリンダ圧に切り替えても制動力が低下することはないので、ステップS1307へ進んで、直ちにマスタシリンダ圧に切り替える。
上記のステップS1307へ進んで、マスタシリンダ圧に戻す処理が、第3の液圧切替手段に相当する。
一方、マスタシリンダ圧がポンプアップ圧未満である場合には、ポンプアップ圧によって正常に制動力を増大変化させることができないものの、現時点でマスタシリンダ圧に切り替えると、制動力を低下させることになるので、ステップS1308へ進み、ポンプアップ制動状態を継続させ、マスタシリンダ圧がポンプアップ圧以上になるのを待って、マスタシリンダ圧への切り替えを実行させるようにする。
但し、ポンプアップ制動状態の継続によって、制動力が低下することは回避できるとしても、マスタシリンダ圧に切り替えるまでの間、要求制動力の増大変化に対応させて実際の制動力を増大させることができない。
そこで、次のステップS1309では、図12に示した油圧ブレーキ装置以外の制動手段を作動させて、制動力の増大要求に対応させるようにする。
ステップS1309で作動させる制動手段としては、例えば、電動式のパーキングブレーキ装置があり、また、回生ブレーキを備える場合には、回生量を増やして回生に伴う制動力を増やす方法があり、更に、エンジンブレーキによる制動力を増大させるべく、変速機のギア比(変速段)をより低速側にシフトさせる方法がある。
但し、ステップS1309の処理を行わない構成とすることができる。
また、ステップS1305で、要求制動力の増大変化時ではないと判断されると、ステップS1311へ進み、IN弁2005A〜2005D及びOUT弁2020A〜2020D(油圧制御弁)を用いた液圧保持制御・減圧制御を実行する。
一方、ステップS1304でモータ2003(モータ駆動回路)に異常がなく、ポンプアップ圧による増圧が行えたと判断された場合には、ステップS1310へ進む。
ステップS1310では、IN弁2005A〜2005D及び/又はOUT弁2020A〜2020D(油圧制御弁)の故障を要因とする保持・減圧不能であるか否かを判断する。
そして、保持・減圧不能の場合には、ステップS1307へ進み、直ちに、マスタシリダ圧への切り替えを行わせる。
IN弁2005A〜2005DやOUT弁2020A〜2020Dなどの油圧制御弁による油圧制御が不能の場合には、現時点のホイールシリンダ圧を保持することができず、要求制動力が増大変化しているか又は一定であるのに、実際のホイールシリンダ圧が減少変化してしまう可能性がある。
そこで、マスタシリンダ圧がポンプアップ圧以上であるか否かを判断することなく、直ちにマスタシリンダ圧に切り替えて、制動性能が大きく悪化することを抑制する。
また、ステップS1310でIN弁2005A〜2005D及びOUT弁2020A〜2020D(油圧制御弁)が正常動作していると判断された場合であって、他の要因によるシステム異常時である場合には、ステップS1305へ進み、モータ異常時(増圧不能異常時)と同様な処理を行わせる。
上記のようにポンプアップシステムに異常が発生した場合にマスタシリンダ圧への切り替えを行わせるようにすれば、異常発生に対して制動性能が大きく悪化することを抑制できる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項1記載の車両用ブレーキ装置の制御装置において、
前記第2の液圧切替手段が、前記設定負圧を、車両の運転条件に基づいて可変に設定する負圧設定手段を含むことを特徴とする車両用ブレーキ装置の制御装置。
係る構成によると、ブレーキ装置が大きな制動力を発生する必要がない場合には、負圧の上昇変化中のより早いタイミングで、第2液圧から第1液圧に切り替えることができ、負圧の有効利用、ポンプの消費電力の節約、ポンプの連続使用による過熱の抑制を、より促進させることができる。
(ロ)請求項1又は(イ)記載の車両用ブレーキ装置の制御装置において、
前記第2液圧発生手段の異常を診断する診断手段と、
前記第1の液圧切替手段により前記第2液圧が前記ホイールシリンダに供給されている状態において、前記診断手段によって前記第2液圧発生手段の異常が診断された場合に、前記車輪のホイールシリンダに供給する液圧を前記第2液圧から前記第1液圧に戻す第3の液圧切替手段と、
を更に含むことを特徴とする車両用ブレーキ装置の制御装置。
係る構成によると、第2液圧発生手段に異常が発生した場合に第1液圧への切り替えを行わせるようにすれば、異常発生に対して制動性能が大きく悪化することを抑制できる。