JP3988381B2 - 内燃機関のトルク制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関のトルク制御装置に係り、特に車両の発進性能の低下や自動変速機全体の耐久性・強度を損なうことなく、自動変速機の軽量化や小型化等を図り得る内燃機関のトルク制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両においては、点火装置が備えられた内燃機関と、この内燃機関に連結した自動変速機(A/T)とを搭載して設けている。この場合に、自動変速機と内燃機関が出力するエンジントルクとの関係においては、内燃機関が出力するエンジントルクが大きい場合に、その内燃機関が出力するエンジントルクに耐え得るような各部品によって自動変速機を構成する必要がある。
【0003】
また、一般的に、自動変速機にあっては、トルクコンバータによって内燃機関が出力するエンジントルクを増大させる機能を有し、特に、その内燃機関が出力するエンジントルクを増大させる機能は、車両の発進時等で、インプット軸が回転せずに内燃機関のエンジントルクがかかっている時に、大きく働くものである。
【0004】
このような自動変速機の制御装置としては、例えば、特開2000−71816号公報に開示されている。この公報に記載のものは、変速装置による変速が必要である場合に、設定された待機時間が経過したときに、設定されたトルクリダクションの時間とレベルとに基づき、変速を開始する前にエンジントルクを低減し、変速開始時に変速ショックが発生するのを防止するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動変速機の各部品にかかる最大トルクは、スロットルバルブのスロットル開度を全開にした全開発進時に発生し、この時のエンジントルクに耐え得て、発進性能の低下を回避するために、自動変速機の各部品の耐久性・強度を高くする必要があり、よって、自動変速機の重量が増加するとともに自動変速機が大型化し、しかも、高価になり、また、、ブレーキペダルを踏み込んでスロットル開度を全開にするようなストール状態でも、自動変速機に大きなトルクが発生するものである。
【0006】
そして、自動変速機のインプット軸が回転してこのインプット軸の回転数が上昇してくれば、自動変速機の各部品にかかるトルクが急激に減少することから、車両の発進時以外の自動変速機にかかるトルクを考えれば、各部品には非常に余裕があり、自動変速機において、重量、大きさ、コストの面で無駄が多くなるという不都合があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、上述の不都合を除去するために、点火装置とスロットルバルブが備えられた内燃機関とこの内燃機関に連結した自動変速機とを車両に搭載して設け、前記自動変速機の各レンジ信号を検出するレンジ信号検出手段を設け、前記車両の制動装置のブレーキ信号を検出するブレーキ信号検出手段を設け、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段とを設け、前記点火装置の点火時期を遅角側に制御する制御手段を設けた内燃機関のトルク制御装置において、前記制御手段は、前記点火装置の点火時期の遅角量を前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関の負荷によるマップに設定し、且つ前記遅角量を設定する範囲は、走行レンジの場合よりも後退レンジの場合の方が前記内燃機関の所定の中間回転数を中心として前記内燃機関の回転数範囲を広くするように、且つ走行レンジの場合よりも後退レンジの場合の方が最大遅角量の値が大きくなるようにして走行レンジの場合と後退レンジの場合とでは異なる値とし、前記ブレーキ信号検出手段のブレーキ信号の検出時で且つ前記レンジ信号検出手段が走行レンジ信号を検出した時には前記点火装置の点火時期を走行レンジの遅角側に制御するとともに、前記ブレーキ信号検出手段のブレーキ信号の検出時で且つ前記レンジ信号検出手段が後退レンジ信号を検出した時には前記点火装置の点火時期を後退レンジの遅角側に制御することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明は、車両の発進時等で、自動変速機のインプット軸の回転が開始する時に、点火時期の遅角側への制御によって内燃機関のエンジントルクを低減して、自動変速機の各部品にかかる最大トルクを低減し、よって、自動変速機の各部品の耐久性・強度を高くする必要がなくなり、これにより、自動変速機の各部品の重量の増加を回避したり、各部品の大きさの大型化を回避させ、車両の発進性能の低下や自動変速機全体の耐久性・強度を損なうことなく、自動変速機の軽量化や小型化を図り、運転性能や燃費を向上し、しかも、コストを低減することができる。
【0009】
【実施例】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。図1〜11は、この発明の実施例を示すものである。図10において、2は車両(図示せず)に搭載される内燃機関、4は吸気通路、6は排気通路である。
【0010】
内燃機関2は、一側の第1シリンダバンク8と他側の第2シリンダバンク10とをV字形状に配置して構成されている。
【0011】
吸気通路4には、上流側から順次に、エアクリーナ12と、吸気温センサ14と、マスエアフローセンサ16と、スロットルバルブ18とが配設されている。吸気通路4の下流側は、2本の第1、第2分岐吸気通路4−1、4−2に分岐されている。第1分岐吸気通路4−1は第1シリンダバンク8側の燃焼室(図示せず)に接続されるとともに、第2分岐吸気通路4−2は第2シリンダバンク10側の燃焼室(図示せず)に接続されている。
【0012】
スロットルバルブ18には、このスロットルバルブ18のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ20が設けられている。吸気通路4には、スロットルバルブ18を迂回するバイパス通路22が設けられている。このバイパス通路22途中には、アイドルエアコントロールバルブ24が設けられている。
【0013】
排気通路6は、上流側が2本の第1、第2分岐排気通路6−1、6−2に分岐されている。第1分岐排気通路6−1は第1シリンダバンク8側の燃焼室に接続されるとともに、第2分岐排気通路6−2は第2シリンダバンク10側の燃焼室に接続されている。
【0014】
第1分岐排気通路6−1途中に第1触媒コンバータ26−1が設けられるとともに、第2分岐排気通路6−2途中には第2触媒コンバータ26−2が設けられている。第1分岐排気通路6−1途中の第1触媒コンバータ26−1よりも上流側部位には、排気中の酸素濃度を検出する第1フロント側O2センサ28−1が設けられている。また、第1分岐排気通路6−1途中の第1触媒コンバータ26−1よりも下流側部位には、第1リヤ側O2センサ30−1が設けられる。
【0015】
第2分岐排気通路6−2途中の第2触媒コンバータ26−2よりも上流側部位には、第2フロント側O2センサ28−2が設けられる。また、第2分岐排気通路6−2途中の第2触媒コンバータ26−2よりも下流側部位には、第2リヤ側O2センサ30−2が設けられる。
【0016】
第1、第2リヤ側O2センサ30−1、30−2よりも下流側部位においては、第1、第2分岐排気通路6−1、6−2が合流され、この合流部位よりも下流側の排気通路6途中には三元触媒コンバータ32が配設される。
【0017】
内燃機関2には、各燃焼室に指向させて燃料噴射弁34が夫々設けられている。この燃料噴射弁34は、燃料供給通路36を介して燃料タンク38に連絡されている。この燃料タンク38内の燃料は、燃料ポンプ40によって圧送され、燃料フィルタ42で含有した塵埃が除去されて燃料供給通路36によって燃料噴射弁34に供給される。
【0018】
燃料供給通路36途中には、燃料の圧力を調整する燃料圧力調整部44が連絡して設けられている。この燃料圧力調整部44は、吸気通路4に連通する導圧通路46から導入される吸気管圧力によって燃料圧を一定値に調整し、余剰の燃料を燃料戻り通路48から燃料タンク38に戻させるものである。燃料タンク38には、燃料レベルセンサ50と圧力センサ52とが配設されている。
【0019】
燃料タンク38内は、蒸発燃料用通路54を介してスロットルバルブ18よりも下流側の吸気通路4に連通している。蒸発燃料用通路54の途中には、キャニスタ56が設けられている。
【0020】
内燃機関2には、EGR制御手段58が設けられている。このEGR制御手段58には、排気系から吸気系に還流される排気のEGR量を調整するEGRバルブ60が設けられている。このEGRバルブ60は、排気系の第2フロント側O2センサ28−2よりも上流側の第2分岐排気通路6−2と吸気系の第1、第2分岐吸気通路4−1、4−2の合流部位とを連通するEGR通路62とに設けられ、電子的に制御されてEGR量を調整するものである。
【0021】
内燃機関2の第2シリンダバンク10には、PCVバルブ64が設けられている。
【0022】
また、内燃機関2には、点火装置のイグニションコイルアセンブリ66−1、66−2が備えられている。この点火装置は、内燃機関2の運転状態によって点火時期を進角側又は遅角側に制御するものである。
【0023】
車両には、図11に示す如く、内燃機関2に連結した自動変速機(A/T)68が搭載して設けられている。この自動変速機68は、ミッションケース70内において、トルクコンバータ72と、インプット軸としてのオーバドライブインプット軸74と、オイルポンプ76と、オーバドライブブレーキ78と、オーバドライブクラッチ80と、フォーワードクラッチインプット軸82と、フォーワードクラッチ84と、ダイレクトクラッチ86と、ワンウェイクラッチ88と、セカンドコーストブレーキ90と、セカンドブレーキ92と、リバース(後退)ブレーキ94と、フロントプラネタリギヤ96と、リヤプラネタリギヤ98と、オーバドライブプラネタリギヤ100とから構成され、セレクトレバー(図示せず)のポジションによって各レンジ(例えば、P(駐車)、R(後退)、N(中立)、D(走行)、2(2速)、1(1速))に変速するものである。
【0024】
吸気温センサ14と、マスエアフローセンサ16と、スロットル開度センサ20と、アイドルエアコントロールバルブ(ISCバルブ)24と、第1フロント側O2センサ28−1と、第1リヤ側O2センサ30−1と、第2フロント側O2センサ28−2と、第2リヤ側O2センサ30−2と、燃料噴射弁34と、燃料ポンプ40と、圧力センサ52と、EGRバルブ60と、イグニションコイルアセンブリ66とは、制御手段(ECM)102に連絡している。
【0025】
また、この制御手段102には、カムシャフトポジジョンセンサ104と、吸気圧センサ106と、水温センサ108と、エンジン回転数検出手段としても機能するクランク角センサ110と、インジケータランプ112と、接続端子114と、パワーステアリング圧力スイッチ116と、ヒータブロアファンスイッチ118と、クルーズ・コントロール・モジュール120と、車両の車速状態を検出する車速検出手段である車速センサ122と、コンビネーションメータ124と、A/Cコンデンサファンリレー126と、A/Cコントローラ128と、データリンクコネクタ130と、ABSコントローラモジュール132と、メインリレー134と、イグニションスイッチ136と、P/Nポジションスイッチ138と、バッテリ140と、スタータスイッチ142と、O/Dオフランプ144と、パワーランプ146と、ライティングスイッチ148と、ストップランプスイッチ150と、O/Dカットスイッチ152と、パワー/ノーマルチェンジスイッチ154と、4WD LOWスイッチ156と、自動変速機68の各レンジを検出するレンジ信号検出手段であるレンジスイッチ158と、第1ソレノイドバルブ160と、第2ソレノイドバルブ162と、TCCソレノイドバルブ164と、A/Tインプットスピードセンサ166と、A/Tアウトプットスピードセンサ168と、車両の制動装置のブレーキペダル170の踏み込んだブレーキ信号を検出するブレーキ信号検出手段であるブレーキスイッチ172とが連絡している。
【0026】
この制御手段102は、ブレーキ信号検出手段であるブレーキスイッチ170のブレーキ信号の検出時で且つレンジスイッチ158が走行(D)レンジ信号を検出した時には、点火装置の点火時期を遅角側に制御するものである。このため、制御手段102には、図4に示す如く、エンジン回転数とエンジン負荷とによって設定された遅角量(TRD)の走行レンジ用遅角マップが組み込まれている。
【0027】
また、制御手段102は、ブレーキスイッチ170のブレーキ信号の検出時で且つレンジスイッチ158が後退(R)レンジ信号を検出した時には、点火装置の点火時期を遅角側に制御するものである。このため、制御手段102には、図5に示す如く、エンジン回転数とエンジン負荷とによって設定された遅角量(TRR)の後退レンジ用遅角マップが組み込まれている。
【0028】
更にまた、制御手段102は、車速センサ122の検出した車速が、遅角実施車速条件としての設定車速(VSP1)よりも低い場合に、点火装置の点火時期を遅角側に制御するものである。
【0029】
また、制御手段102は、車速センサ122の検出した車速が、遅角実施車速条件としての設定車速(VSP1)よりも低い場合において、点火装置の点火時期を遅角側に制御する継続時間が設定時間(T1又はT2)よりも長い場合に、つまり、図4、5で設定される遅角量が必要な領域にある継続時間続けて入っていた時に、点火装置の点火時期を遅角側に制御するものである。
【0030】
次に、この実施例の作用を、図1〜3に示す第1〜3の各遅角制御のフローチャートに基づいて説明する。
【0031】
図1のフローチャートは、第1の遅角制御を行うものであり、ブレーキペダルを踏み込んで、スロットル開度を全開にしたようなストール時の内燃機関2のトルクリダクションの制御であり、図9に示す遅角1の期間のみトルクリダクションを実施する。
【0032】
図1に示す如く、制御手段102のプログラムがスタートすると(ステップ202)、ブレーキスイッチ170がオンか否かを判断する(ステップ204)。このステップ204がNOで、ブレーキスイッチ170がオフの場合には、この判断を継続する。
【0033】
ステップ204がYESで、ブレーキスイッチ170がオンの場合には、走行(D)レンジか否かを判断する(ステップ206)。
【0034】
このステップ206がYESで、走行(D)レンジの場合には、図4の走行レンジ用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ208)。
【0035】
ステップ206がNOで、走行(D)レンジではない場合には、後退(R)レンジか否かを判断する(ステップ210)。このステップ210がNOで、後退(R)レンジでない場合には、ステップ204に戻す。
【0036】
ステップ210がYESで、後退(R)レンジの場合には、図5の後退レンジ用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ212)。
【0037】
前記ステップ208、212の遅角制御の後は、ステップ204に戻す。
【0038】
この図1の第1の遅角制御においては、自動変速機68にどれだけ耐え得る耐久性・強度を持たせるにもよるが、図6のB程度であれば、図9の遅角2の期間まで制御を行わなくても、耐久性・強度上問題がなく、図7、8のスロットル全開の発進時に発生するトルクでも、遅角制御が必要とならない状態の時に、使用する。
【0039】
図2のフローチャートは、第2の遅角制御であり、車速状態で遅角制御を行い、内燃機関2のトルクリダクションを実施するものである。
【0040】
図2に示す如く、制御手段102のプログラムがスタートすると(ステップ302)、車速が遅角実施車速条件としての設定車速(VSP1)未満か否かを判断する(ステップ304)。このステップ304がNOで、車速が設定車速(VSP1)を越えている場合には、この判断を継続する。
【0041】
ステップ304がYESで、車速が設定車速(VSP1)未満の場合には、走行(D)レンジか否かを判断する(ステップ306)。
【0042】
このステップ306がYESで、走行(D)レンジの場合には、図4の走行レンジ用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ308)。
【0043】
ステップ306がNOで、走行(D)レンジではない場合には、後退(R)レンジか否かを判断する(ステップ310)。このステップ310がNOで、後退(R)レンジでない場合には、ステップ304に戻す。
【0044】
ステップ310がYESで、後退(R)レンジの場合には、図5の後退レンジ用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ312)。
【0045】
前記ステップ308、312の遅角制御の後は、ステップ304に戻す。
【0046】
この図2の第2の遅角制御においては、図6のC状態まで自動変速機68の耐え得る耐久性・強度を下げた時に使用する制御であり、ストール状態からの発進では、図9の遅角2の期間、図7の遅角必要領域3の期間、図8の遅角4の期間に、遅角制御を実施する。
【0047】
図3のフローチャートは、第3の遅角制御であり、短期間であれば、自動変速機68が耐久性・強度上問題がない場合に、遅角制御を実施して、内燃機関2のトルクリダクションを行うものである。
【0048】
図3に示す如く、制御手段102のプログラムがスタートすると(ステップ402)、車速が遅角実施車速条件としての設定車速(VSP1)未満か否かを判断する(ステップ404)。このステップ404がNOで、車速が設定車速(VSP1)を越えている場合には、この判断を継続する。
【0049】
ステップ404がYESで、車速が設定車速(VSP1)未満の場合には、走行(D)レンジか否かを判断する(ステップ406)。
【0050】
このステップ406がYESで、走行(D)レンジの場合には、走行レンジでの遅角量(TDR)が零でないか否か、つまり、走行レンジでの遅角制御をしているか否かを判断する(ステップ408)。このステップ408がNOで、走行レンジでの遅角制御をしていない場合には、ステップ404に戻す。
【0051】
ステップ408がYESで、遅角制御をしている場合には、走行レンジでの遅角制御をしている継続時間が第1設定時間T1を越えているか否かを判断する(ステップ410)。このステップ410がNOで、走行レンジでの遅角制御をしている継続時間が第1設定時間T1を越えていない場合には、ステップ404に戻す。
【0052】
このステップ410がYESで、走行レンジでの遅角制御をしている継続時間が第1設定時間T1を越えている場合には、図4の走行用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ412)。
【0053】
前記ステップ406がNOで、走行(D)レンジではない場合には、後退(R)レンジか否かを判断する(ステップ414)。このステップ414がNOで、後退(R)レンジでない場合には、ステップ404に戻す。
【0054】
ステップ414がYESで、後退(R)レンジの場合には、後退レンジでの遅角量(TRR)が零でないか否か、つまり、後退レンジでの遅角制御をしているか否かを判断する(ステップ416)。このステップ416がNOで、後退レンジでの遅角制御をしていない場合には、ステップ404に戻す。
【0055】
ステップ416がYESで、後退レンジでの遅角制御をしている場合には、後退レンジでの遅角制御の継続時間が第2設定時間T2を越えているか否かを判断する(ステップ418)。このステップ418がNOで、後退レンジ時の遅角制御の継続時間が第2設定時間T2を越えていない場合には、ステップ404に戻す。
【0056】
ステップ418がYESで、後退レンジでの遅角制御の継続時間が第2設定時間T2を越えている場合には、図5の走行レンジ用遅角マップに従って遅角量を設定し、この設定された遅角量で点火時期を遅角側に制御する(ステップ420)。
【0057】
前記ステップ412、420の遅角制御の後は、ステップ404に戻す。
【0058】
この図3の第3の遅角制御においては、発進時の動力性能は車両の重量が軽い程向上するが、発進時に遅角制御を行うと、エンジントルクが低下するために、車両の重量と遅角制御とは相反するので、重量と遅角制御とによる性能低下の両方を考慮して、耐久性・強度を設定し、更に、大きさやコストも重要となる。
【0059】
従って、図6に示す如く、速度比が小さいときに、内燃機関2から入力されるエンジントルクが大きいが、オーバドライブインプット軸74が回転しない時及びこのオーバドライブインプット軸74の回転が小さい時には、自動変速機68で発生トルクが大きくなり、特に、ブレーキペダルを踏み込んで、スロットル開度を全開にしたようなストール時、また、上がり坂又はスタック状態からのスロットル開度の全開のよる加速時には、図7に示す如く、自動変速機68で発生するトルクが大きくなり、従来では、このような全ての状態に発生するトルクに耐え得る各部品に設定して自動変速機68を構成して、重量、大きさ、コストの面で不利となっていた。
【0060】
しかし、この実施例においては、車両の発進時等で、自動変速機68のオーバドライブインプット軸74の回転が開始する時に、点火時期の遅角側への制御によって内燃機関2のエンジントルクを低減して、自動変速機68の各部品にかかる最大トルクを低減し、よって、自動変速機68の各部品の耐久性・強度を高くする必要がなくなり、これにより、自動変速機68の各部品の重量の増加を回避したり、各部品の大きさの大型化を回避させ、車両の発進性能の低下や自動変速機68全体の耐久性・強度を損なうことなく、自動変速機68の軽量化や小型化を図り、運転性能や燃費を向上し、しかも、コストを低減することができる。
【0061】
特に、図1の第1の遅角制御においては、図6のBまで自動変速機68の強度を低下させることができ、各部品の大きさを小さくして自動変速機68の小型化を図るとともに、コストを低減することができる。また、図2の第2の遅角制御においては、図6のCまで自動変速機68の強度を低下させることができ、各部品の大きさを小さくして自動変速機68の小型化を図るとともに、コストを低減することができる。更に、図3の第3の遅角制御においては、図6のB、Cまで自動変速機68の強度を低下させることができ、各部品大きさを小さくして自動変速機68の小型化を図るとともに、コストを低減し、また、発進時の性能低下を防止することができ、従って、平坦路でのスロットル開度の全開加速時には、遅角制御が実施されることがなく、かなり上り坂でのスロットル開度を全開にした全開発進時やスタック状態からの全開加速時のみ遅角制御が実施されることから、特別な状態以外での発進・運転性能の低下を防止することができる。
【0062】
なお、この発明は上述の実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0063】
例えば、エンジントルクを低減(リダクション)する手段として、内燃機関に負荷やブレーキ力をかけてエンジントルクを実質的に低減したり、また、燃料量や吸気量等を調整してエンジントルクを低減することができる。
【0064】
また、内燃機関の温度が高い場合には、内燃機関の動きが円滑なので、トルクリダクションを大きくする一方、内燃機関の温度が低い場合には、内燃機関の動きが鈍いので、トルクリダクションを小さくし、これにより、トルクリダクションの大きさを緻密に調整して運転性能を向上することができる。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細な説明から明らかなようにこの発明によれば、車両の発進時等で、自動変速機のインプット軸の回転が開始する時に、点火時期の遅角側への制御によって内燃機関のエンジントルクを低減して、自動変速機の各部品にかかる最大トルクを低減し、よって、自動変速機の各部品の耐久性・強度を高くする必要がなくなり、これにより、自動変速機の各部品の重量の増加を回避したり、各部品の大きさの大型化を回避させ、車両の発進性能の低下や自動変速機全体の耐久性・強度を損なうことなく、自動変速機の軽量化や小型化を図り、運転性能や燃費を向上し、しかも、コストを低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の遅角制御のフローチャートである。
【図2】第2の遅角制御のフローチャートである。
【図3】第3の遅角制御のフローチャートである。
【図4】走行レンジ用遅角マップを示す図である。
【図5】後退レンジ用遅角マップを示す図である。
【図6】速度比と自動変速機での発生トルクとの関係を示す図である。
【図7】自動変速機での発生トルクの領域を示す図である。
【図8】登坂・加速時等のスロットル開度の全開での発進状態を示す図である。
【図9】ストール発進時の状態を示す図である。
【図10】トルク制御装置のシステム構成図である。
【図11】自動変速機の断面図である。
【符号の説明】
2 内燃機関
66 イグニションコイルアッセンブリ
68 自動変速機
102 制御手段
122 車速センサ
158 レンジスイッチ
172 ブレーキスイッチ
Claims (1)
- 点火装置とスロットルバルブが備えられた内燃機関とこの内燃機関に連結した自動変速機とを車両に搭載して設け、前記自動変速機の各レンジ信号を検出するレンジ信号検出手段を設け、前記車両の制動装置のブレーキ信号を検出するブレーキ信号検出手段を設け、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段とを設け、前記点火装置の点火時期を遅角側に制御する制御手段を設けた内燃機関のトルク制御装置において、前記制御手段は、前記点火装置の点火時期の遅角量を前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関の負荷によるマップに設定し、且つ前記遅角量を設定する範囲は、走行レンジの場合よりも後退レンジの場合の方が前記内燃機関の所定の中間回転数を中心として前記内燃機関の回転数範囲を広くするように、且つ走行レンジの場合よりも後退レンジの場合の方が最大遅角量の値が大きくなるようにして走行レンジの場合と後退レンジの場合とでは異なる値とし、前記ブレーキ信号検出手段のブレーキ信号の検出時で且つ前記レンジ信号検出手段が走行レンジ信号を検出した時には前記点火装置の点火時期を走行レンジの遅角側に制御するとともに、前記ブレーキ信号検出手段のブレーキ信号の検出時で且つ前記レンジ信号検出手段が後退レンジ信号を検出した時には前記点火装置の点火時期を後退レンジの遅角側に制御することを特徴とする内燃機関のトルク制御装置。
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