JP3965739B2 - 集積回路のノイズシミュレーション装置及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワンチップマイコン等の大規模な集積回路から発生するノイズを、集積回路の回路設計またはレイアウト設計の段階でシミュレーションできるようにした集積回路のノイズシミュレーション装置及び記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
大規模な集積回路である例えばワンチップマイコン等から発生するノイズが他の回路部品や他の電子機器に悪影響を与えて誤動作させるという問題、いわゆるEMIの問題が、近年、クローズアップされている。このため、集積回路を設計する場合、発生するノイズを極力低くするように設計している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したように設計した集積回路がどれくらいの大きさのノイズを発生するかは、上記集積回路の半導体チップを実際に製造して、製造した半導体チップが発生するノイズを測定器により測定してみるまでわからなかった。このため、半導体チップ(集積回路)を市場に出荷した後で、ノイズを低減してほしいという要望が市場から寄せられることがあった。このような場合、集積回路をバージョンアップするときなどに、ノイズ対策を厳しく実施する設計を行い、ノイズ対策した半導体チップを出荷するようにし、市場の要望に答えていた。しかし、このような対応では、ノイズ対策が十分であるとはいえなかった。
【0004】
この場合、集積回路の設計段階でノイズを評価することができれば、その段階でノイズ対策を厳しく実施する設計を行うことができるから、実際に製造する半導体チップは最初からノイズを小さくできる。このため、設計段階で集積回路のノイズを評価する方法が求められている。
【0005】
これに対して、本発明者は、アナログ回路を解析するプログラム、即ち、アナログシミュレーションプログラムを用いて設計段階で集積回路の動作をアナログシミュレーションし、集積回路のノイズを評価することを考えた。この場合、集積回路が有するトランジスタ等の素子の個数が少なくて数百個程度までであれば、上記アナログシミュレーションで十分評価できる。
【0006】
しかし、近年の集積回路である例えばワンチップマイコンは、数十万ないし数百万個の素子を有している。このような大規模な集積回路をアナログシミュレーションしようとすると、数千ないし数十万時間という時間がかかると予想される。このため、大規模な集積回路をアナログシミュレーションしてノイズを評価することは実際には不可能であった。
【0007】
一方、集積回路を論理シミュレーションプログラムを用いて論理シミュレーションする方法が、従来より、提供されている。この論理シミュレーションであれば、大規模な集積回路であっても実際にシミュレーションすることが可能である。しかし、論理シミュレーションでは、「0」、「1」のデータしか出力されないため、集積回路の各端子の電圧波形や電流波形を解析することができず、このため、集積回路のノイズを評価することができなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、集積回路が発生するノイズを設計段階で評価することができる集積回路のノイズシミュレーション装置及び記録媒体を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明においては、集積回路に対して消費電流シミュレーションを実行することにより、集積回路の電流特性を解析し、この解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記集積回路のモデル回路を構成する。そして、このモデル回路に接続する電源配線等のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記モデル回路に付加してノイズシミュレーション用回路を作成する。
【0010】
更に、このノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する構成とした。
【0011】
この構成の場合、数十万個の素子を備えた大規模な集積回路であっても、その消費電流シミュレーションは数時間程度で完了する。そして、モデル回路を構成し、電源配線等のインピーダンス情報に等価な回路をモデル回路に付加してノイズシミュレーション用回路を作成する作業は、数分ないし数十分で完了する。更に、作成されたノイズシミュレーション用回路の素子数は多くても10個程度であるから、このノイズシミュレーション用回路に対するアナログシミュレーションは、数分で完了する。従って、上記構成によれば、数十万個の素子を備えた大規模な集積回路であっても、比較的短時間で集積回路から発生するノイズをほぼ正確に解析することができるのである。尚、上記構成の場合、ノイズを解析するために要する全作業時間のうちの大部分は、消費電流シミュレーションにかかる時間である。従って、消費電流シミュレーションにかかる時間を短縮できれば、更に作業時間を短くできる。
【0012】
そこで、本発明者は、請求項2の発明に示すように、集積回路を複数の機能ブロックに分割した後、これら複数の機能ブロックに対して消費電流シミュレーションを実行して各機能ブロックの電流特性を解析するように構成した。このように構成すると、分割した各機能ブロックの素子数が少なくなるから、各機能ブロックを消費電流シミュレーションするのに要する時間を短縮でき、ひいては全作業時間を短くできる。尚、この構成の場合、最終的に作成されるノイズシミュレーション用回路の素子数は、100個程度まで増える可能性があるが、この程度の素子数のノイズシミュレーション用回路に対するアナログシミュレーションは、数分程度で完了するから、全作業時間を長くする要因にはほとんどならない。また、上記集積回路を複数の機能ブロックに分割する構成によれば、数百万個以上の素子を有する更に大規模な集積回路であっても、各機能ブロックの素子数が多くても数十万個程度となるから、多少作業時間は長くなるが、集積回路から発生するノイズを解析する作業を実際に行うことができる。
【0013】
また、請求項3または4の発明の記録媒体に記録されたプログラムでコンピュータを動作させると、コンピュータを請求項1または2の集積回路のノイズシミュレーション装置として機能させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本実施例の集積回路のノイズシミュレーション方法の作業順序を示す図である。この図1(a)に示すように、まず、ノイズシミュレーション対象の集積回路1を複数例えば4個の機能ブロック2に分割するステップを行う。この場合、4個の機能ブロック2には、ブロックA、B、C、Dの名称が付されている。また、集積回路1を機能ブロック2に分割する作業(処理)は、ミニコンやEWSやパソコン等からなるコンピュータ上で回路設計用のCADやブロック分割用プログラム等を動作させることによって実行するように構成されている。
【0015】
続いて、上記分割した各機能ブロック2に対して消費電流シミュレーションを実行することにより、各機能ブロック2の電流特性を解析するステップを行う。ここでは、コンピュータ上で消費電流シミュレーションプログラムを動作させて、各機能ブロック2毎に消費電流シミュレーションを行う。これにより、各機能ブロック2毎に、図1(b)に示すような、電流特性、即ち、ピーク電流ipeakと平均電流iaveが解析されて出力される。この場合、上記ピーク電流ipeakは集積回路内部のクロック信号のエッジに同期して出力されている。また、出力された各機能ブロック2の電流特性を表すデータは、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0016】
次に、図1(c)に示すように、上記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から機能ブロック2のモデル回路3を構成するステップを実行する。ここでは、モデル回路3の電流特性(即ち、ピーク電流ipeakと平均電流iave)が機能ブロック2の電流特性(即ち、ピーク電流ipeakと平均電流iave)に一致するように、モデル回路3のインバータ回路4を構成するトランジスタサイズ及びモデル回路3の負荷容量5の容量値を決定するように構成されている。この場合、モデル回路3は、機能ブロック2の等価回路といえる。そして、複数の機能ブロック2の全てについて、対応するモデル回路3を作成するようにしている。
【0017】
また、上記モデル回路3を作成する作業(処理)は、コンピュータ上で動作するプログラム(モデル回路作成用プログラム)によって実行されるように構成されている。そして、作成された各モデル回路3を表現するデータは、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0018】
続いて、各機能ブロック2に接続される電源配線等のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を上記各モデル回路3に付加するステップを実行する。ここで、上記抽出した配線インピーダンス情報に等価な回路は、図1(d)に示すように、抵抗、コイル、コンデンサ等から構成されている。また、上記電源配線等のインピーダンス情報を抽出する作業、並びに、抽出したインピーダンス情報に等価な回路を作成してこの等価回路を上記各モデル回路3に付加する作業は、コンピュータ上でプログラム(インピーダンス情報抽出付加用プログラム)を動作させることによって実行される構成となっている。更に、インピーダンス情報が付加された各モデル回路3を表現するデータは、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0019】
そして、上述したように各モデル回路3に各配線インピーダンス情報を付加した後は、図1(d)に示すように、上記複数のモデル回路3を結合してノイズシミュレーション用回路6を作成するステップが実行される。この各モデル回路3に結合する作業は、コンピュータ上でプログラム(モデル回路結合用プログラム)を動作させることによって実行される構成となっている。そして、作成されたノイズシミュレーション用回路6を表現するデータは、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0020】
次に、上述したように作成されたノイズシミュレーション用回路6に対してアナログシミュレーションを実行することにより、ノイズシミュレーション用回路6のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分、具体的には、出力端子7の電圧波形または電流波形を解析する。この場合、コンピュータ上でアナログシミュレーションプログラムを動作させて上記アナログシミュレーションを実行するように構成されている。そして、出力端子に出力される電圧波形(または電流波形)の解析結果を、図1(e)の左半部に示す。この解析結果は、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0021】
続いて、上記解析した電圧波形または電流波形を例えばFFT(高速フーリエ変換)を用いて周波数分析して、上記回路部分である出力端子7から出力されるノイズを解析するステップが実行されるように構成されている。この電圧波形(または電流波形)の周波数分析結果を、図1(e)の右半部に示す。これにより、集積回路1から発生するノイズをほぼ正確に評価することができる。尚、上記周波数分析結果を表現するデータは、コンピュータのメモリやハードディスク等に記憶されるように構成されている。
【0022】
また、上記実施例の場合、コンピュータ及びこのコンピュータ上で動作させる各種のプログラム(回路設計用のCAD、ブロック分割用プログラム、消費電流シミュレーションプログラム、モデル回路作成用プログラム、インピーダンス情報抽出付加用プログラム、モデル回路結合用プログラム、アナログシミュレーションプログラム)から、集積回路のノイズシミュレーション装置が構成されている。
【0023】
即ち、上記各種のプログラムがコンピュータを動作させることにより、集積回路1を複数の機能ブロック2に分割する手段としての機能、上記複数の機能ブロック2に対して消費電流シミュレーションを実行することにより各機能ブロック2の電流特性を解析する手段としての機能、上記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路4と負荷容量5から各機能ブロック2の各モデル回路3を構成する手段としての機能、各機能ブロック2に接続される電源配線等のインピーダンス情報を抽出すると共にこの抽出したインピーダンス情報に等価な回路を各モデル回路3に付加する手段としての機能、上記複数のモデル回路3を結合してノイズシミュレーション用回路6を作成する手段としての機能、及び、上記ノイズシミュレーション用回路6に対してアナログシミュレーションを実行することにより、ノイズシミュレーション用回路6のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段としての機能が実現されるように構成されている。
【0024】
次に、上記した集積回路のノイズシミュレーション方法(装置)によって、集積回路から発生するノイズをほぼ正確にシミュレーション可能である根拠について、図2も参照して説明する。ここでは、上記した集積回路のノイズシミュレーション方法(装置)を、本発明者が発明したときの発明段階(インベンティブステップ)に対応させながら説明する。
【0025】
まず、集積回路から発生するノイズをシミュレーションするためには、集積回路の全内部回路の動作をアナログシミュレーションして、集積回路の端子から出力される電圧波形及び電流波形を求める必要がある。しかし、例えばワンチップマイコン等の集積回路は、数十万ないし数百万個の素子を有しているため、このような大規模な集積回路をアナログシミュレーションしようとすると、数千ないし数十万時間という時間がかかると予想されるため、アナログシミュレーションしてノイズを評価することは実際には不可能であった。
【0026】
これに対して、本発明者は、集積回路の規模が大き過ぎるためにアナログシミュレーションできないのであるから、アナログシミュレーション可能な程度まで集積回路の内部回路を単純化するようなモデル回路を作成してみようと考えた。このモデル回路は、集積回路の内部のノイズ量を反映する回路にする必要がある。ここで、集積回路の内部のノイズ量を特徴付けるものは、集積回路内部の電流変化と電圧変動である。例えば図2に示す集積回路8の出力端子9及び入力端子10に着目すると、これら端子9、10の状態としては、Lレベル(ロウレベル)、Hレベル(ハイレベル)、Zレベル(ハイインピーダンスレベル)の3つレベルがある。
【0027】
そして、端子9、10がHレベルであれば、その端子9、10には集積回路8内の電源線11のレベルが出力する。また、端子9、10がLレベルであれば、その端子9、10には集積回路8内のGND線12のレベルが出力する。更に、端子9、10がZレベルであっても、その端子9、10と電源線11及びGND線12との間にカップリング容量成分13、13が存在するため、端子9、10には集積回路8内の電源線11及びGND線12のレベルの影響が出力されるようになる。
【0028】
従って、電源線11やGND線12に電位の変動(即ち、ノイズ)が生ずると、この変動、即ち、ノイズが端子9、10から出力されるようになることを、本発明者は認識した。この場合、集積回路の端子9、10のうち、出力端子9から出力されるノイズの方が入力端子10から出力されるノイズよりもかなり大きいことがわかっているため、集積回路8のノイズを評価するに際しては、出力端子9から出力されるノイズについて調べれば十分である。
【0029】
次に、本発明者は、集積回路8の内部の電源線11やGND線12に電位の変動が生ずる原因について考察した。集積回路8の内部回路は、多数のトランジスタから構成されている。これらのトランジスタがあるタイミング(多くは、集積回路8内部のクロックの変化時点)で出力が変化すると、その過渡時に、貫通電流や充放電電流が流れ、電源電位が局所的に変化する。そして、この変化が集積回路8内部の電圧変動となることを、本発明者は見つけた。
【0030】
ここで、上記電圧変動を見積もるためには、まず、集積回路内部の電流変化量を抽出した後、電源端子からそのトランジスタまでのインピーダンスを付加すれば、電圧変動量を求める得ることがわかった。但し、この電圧変動を見積もる作業を、大規模な集積回路内の全てのトランジスタについて実行しようとすると、やはり非常に長い時間がかかってしまうので、実現することができない。
【0031】
そこで、本発明者は、集積回路内の個々のトランジスタを対象にすることを止め、集積回路を複数の機能ブロックに分けると共に、これら分けた機能ブロック毎に電流特性を見積もり、更に、その機能ブロックまでの電源線のインピーダンスを付加して、電圧変動量を見積もる(シミュレーションする)ように構成することを考えた。ここで、各機能ブロックの電流特性を得るには、汎用アナログシミュレーションプログラムまたは消費電流シミュレーションプログラムを使用することができる。しかし、汎用アナログシミュレーションプログラムで機能ブロックをアナログシミュレーションしようとすると、機能ブロックが有するトランジスタの個数が数十万個もあるような場合には、数千時間という長い時間がかかるため、アナログシミュレーションの実行は不可能である。
【0032】
これに対して、消費電流シミュレーションプログラムで機能ブロックを消費電流シミュレーションする場合は、機能ブロックが有するトランジスタの個数が数十万個あっても、1時間ないし数時間程度で完了するから、消費電流シミュレーションを実行することができる。従って、本実施例では、各機能ブロックを消費電流シミュレーションして各機能ブロックの電流特性、即ち、ピーク電流及び平均電流を求めるように構成した。
【0033】
そして、上記求めた電流特性を反映するモデル回路を作成するに当たっては、インバータ回路と負荷容量とからなる回路が最も単純なモデルであるから、インバータ回路と負荷容量によってモデル回路を作成するように構成した。このモデル回路においては、インバータ回路を構成するトランジスタのサイズで主にピーク電流を合わせ込むようにし、負荷容量の容量値で主に平均電流を合わせ込むようにしている。そして、インバータ回路の入力には、集積回路のクロック信号を入力させるように構成している。
【0034】
更に、集積回路を分けた全ての機能ブロックについて、上記モデル回路を作成する処理を行った後、各機能ブロックまでの電源線のインピーダンス(パッケージやボンディングワイヤ等も考慮したインピーダンス情報)を各モデル回路に付加する。そして、これらモデル回路を結合することによりノイズシミュレーション用回路を作成する。このようにして作成されたノイズシミュレーション用回路は、集積回路の電流特性に着目した等価回路となっているため、集積回路のノイズに着目した等価回路ということができる。従って、上記ノイズシミュレーション用回路をアナログシミュレーションすれば、集積回路のノイズに着目した等価回路をアナログシミュレーションすることになり、集積回路のノイズをほぼ正確にシミュレーション(評価)することができるのである。
【0035】
次に、本実施例の集積回路のノイズシミュレーション方法で集積回路のノイズをシミュレーションした結果を図3及び図4に示す。そして、実際に製造した集積回路のノイズを測定装置により測定した結果を図5及び図6に示す。ここで、図3は、集積回路のサンプルA(ノイズ対策を行う前のもの)のノイズを、本実施例の集積回路のノイズシミュレーション方法でシミュレーションした結果である。図5は、上記サンプルAの集積回路を実際に製造した後、その製造した集積回路のノイズを測定装置により測定した結果である。
【0036】
また、図4は、上記サンプルAの集積回路に対してノイズ対策を実行した集積回路であるサンプルBのノイズを、本実施例の集積回路のノイズシミュレーション方法でシミュレーションした結果である。図6は、上記サンプルBの集積回路を実際に製造した後、その製造した集積回路のノイズを測定装置により測定した結果である。
【0037】
上記図3と図5から、サンプルAについてはシミュレーション結果の最大値の方が実測値の最大値よりも10dB程度ノイズが小さいことがわかる。また、図4と図6から、サンプルBについてはシミュレーション結果の最大値の方が実測値の最大値よりも7dB程度ノイズが小さいことがわかる。更に、ピークの出現の様子もシミュレーション結果と実測値とで若干ずれていることがわかる。このようにシミュレーション結果と実測値が相違する理由は、測定系及び集積回路のリードフレーム、ボンディングワイヤのインピーダンスが異なっているためであると考えられる。従って、本実施例のノイズシミュレーションによって、集積回路のノイズをある程度正確に評価することが可能であるといえる。
【0038】
また、サンプルA、Bのノイズのシミュレーション結果の最大値の差は9dBであり、サンプルA、Bのノイズの実測値の最大値の差は12dBである。これら最大値の差をみると、ノイズ対策の効果を見積もる点では、本実施例のノイズシミュレーションによりかなり有効な見積もりが可能なことがわかる。
【0039】
尚、上記実施例では、集積回路1を複数の機能ブロック2に分割するように構成したが、これに代えて、集積回路の素子数が数十万個程度であれば、機能ブロックに分割せずに、集積回路を消費電流シミュレーションするように構成しても良い。
【0040】
具体的には、集積回路に対して消費電流シミュレーションを実行することにより、集積回路の電流特性を解析した後、解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から集積回路のモデル回路を構成し、このモデル回路に接続する電源配線等のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路をモデル回路に付加してノイズシミュレーション用回路を作成し、そして、このノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析するように構成すれば良い。
【0041】
また、集積回路1の出力端子9に注目すると、この端子9の出力が変化する際には、前述したノイズの他に、その端子回路部分で生ずる電流変化(過渡電流)によりノイズが発生する。このノイズを解析するには、ノイズが発生する回路をアナログシミュレーションしてその電圧変動及び電流変化を解析すれば良い。この場合、出力端子9の端子回路部分が有する素子数は少ないので、該端子回路部分だけを単独でアナログシミュレーションすることにより、出力端子9の出力が変化する際に発生するノイズを解析するように構成することができる。尚、前述したように作成したノイズシミュレーション用回路に、上記端子回路部分を付加して、まとめてアナログシミュレーションするように構成しても良い。
【0042】
一方、上記実施例において、コンピュータで動作させる各種プログラムは、フロッピーディスクやCD−ROM等からなる記録媒体に記録しておくことが好ましい。そして、記録媒体に記録しておいたプログラムは、コンピュータを動作させることにより、集積回路を複数の機能ブロックに分割する手段としての機能、前記複数の機能ブロックに対して消費電流シミュレーションを実行することにより、前記各機能ブロックの電流特性を解析する手段としての機能、前記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記各機能ブロックの各モデル回路を構成する手段としての機能、前記各機能ブロックに接続される電源配線等のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記各モデル回路に付加する手段としての機能、前記複数のモデル回路を結合してノイズシミュレーション用回路を作成する手段としての機能、及び、前記ノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段としての機能を実現するものである。
【0043】
この場合、記録媒体に記録するプログラムは、コンピュータを動作させることにより、上記各手段としての機能のうちの少なくとも1つの機能を実現するものであっても良い。尚、上記記録媒体からコンピュータのハードディスク等へ上記プログラムをインストールすることにより、上記プログラムをコンピュータで動作させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、集積回路のノイズシミュレーション方法を説明する図
【図2】集積回路の端子に発生するノイズを説明する電気回路図
【図3】集積回路のサンプルA(ノイズ対策を行う前のもの)のノイズをシミュレーションした結果を示す図
【図4】集積回路のサンプルB(ノイズ対策を行った後のもの)のノイズをシミュレーションした結果を示す図
【図5】集積回路のサンプルAを実際に製造した後、その製造した集積回路のノイズを測定装置により測定した結果を示す図
【図6】集積回路のサンプルBを実際に製造した後、その製造した集積回路のノイズを測定装置により測定した結果を示す図
【符号の説明】
1は集積回路、2は機能ブロック、3はモデル回路、4はインバータ回路、5は負荷容量、6はノイズシミュレーション用回路、7は出力端子、8は集積回路、9は出力端子、10は入力端子、11は電源線、12はGND線を示す。
Claims (4)
- 集積回路に対して消費電流シミュレーションを実行することにより、前記集積回路の電流特性を解析する手段と、
前記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記集積回路のモデル回路を構成する手段と、
前記等価回路に接続する電源配線のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記モデル回路に付加してノイズシミュレーション用回路を作成する手段と、
前記ノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段とを備えて成る集積回路のノイズシミュレーション装置。 - 集積回路を複数の機能ブロックに分割する手段と、
前記複数の機能ブロックに対して消費電流シミュレーションを実行することにより、前記各機能ブロックの電流特性を解析する手段と、
前記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記各機能ブロックの各モデル回路を構成する手段と、
前記各機能ブロックに接続される電源配線のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記各モデル回路に付加する手段と、
前記複数のモデル回路を結合してノイズシミュレーション用回路を作成する手段と、
前記ノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段とを備えて成る集積回路のノイズシミュレーション装置。 - コンピュータを、
複数の機能ブロックに対して消費電流シミュレーションを実行することにより、前記各機能ブロックの電流特性を解析する手段、
解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記各機能ブロックのモデル回路を構成する手段、
前記各機能ブロックに接続される電源配線のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記各モデル回路に付加する手段、
前記複数のモデル回路を結合してノイズシミュレーション用回路を作成する手段、
前記ノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行することにより、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。 - コンピュータを、
集積回路を複数の機能ブロックに分割する手段、
前記複数の機能ブロックに対して消費電流シミュレーションを実行することにより、前記各機能ブロックの電流特性を解析する手段、
前記解析した電流特性が得られるようにインバータ回路と負荷容量から前記各機能ブロックの各モデル回路を構成する手段、
前記各機能ブロックに接続される電源配線のインピーダンス情報を抽出すると共に、この抽出したインピーダンス情報に等価な回路を前記各モデル回路に付加する手段、
前記複数のモデル回路を結合してノイズシミュレーション用回路を作成する手段、または、
前記ノイズシミュレーション用回路に対してアナログシミュレーションを実行すること により、前記ノイズシミュレーション用回路のうちのノイズが大きくなると予想される回路部分の電圧波形または電流波形を解析すると共に、この解析した電圧波形または電流波形を周波数分析して前記回路部分のノイズを解析する手段のうちの少なくとも1つの手段として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。
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