JP3963413B2 - 電子写真感光体及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真プロセスを利用した複写機や、プリンタにおいて使用される電子写真感光体に関するものであり、更に詳しくは、電荷発生領域と電荷輸送領域とがマトリックス状に構成された新規な機能分離型電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体は複写機やプリンタ等の画像出力機器に広く用いられており、且つ、画像品質を決定する画像形成機構の心臓部として重要な役割をもっている。かつてはセレンや硫化カドミウム等の光導電性を有する無機材料を構成材料とする電子写真感光体が使用されていた。しかし、これらの電子写真感光体は熱的な安定性や光感度及び耐久性の面では十分な特性とは言えなかった。また更には、毒性の問題が重要視されるに伴って、市場では受け入れられなくなっていった。これらの問題を解決するためにアモルファスシリコン感光体の研究開発が積極的になされ、その結果、市場に投入された。しかしながら、アモルファスシリコン感光体は、特性や毒性の面での問題はないものの、製造装置に多額の投資を必要とすることや、歩留まり、スループットが小さいことによって、製品価格があまりに高価格であるという問題が大きいために、依然として市場での地位を確立するには至っていない。
【0003】
それに対して、有機材料を用いた電子写真感光体(以下、OPCと表記する)は、開発当初は感度等の特性が無機感光体に対してかなり劣るものであったが、積極的な研究開発の結果、比較的高感度のものが得られるようになり、無公害である上に、低コストであるという大きなメリットが受け入れられ、市場において急速に普及し、現在では電子写真感光体の主流となっている。
【0004】
一般に、無機感光体は正帯電で使用される場合が多いのに対し、OPCはほとんどの場合負帯電で使用される。それは、一般的なOPCの構成が光の入射によって電荷を発生する電荷発生層の上に、電荷輸送能力を有する電荷輸送層を積層した2層型機能分離電子写真感光体であり、この電荷輸送層は正孔を輸送する材料は実用可能な材料が数多く開発されているのに対し、電子を輸送する材料で安全に使用できるものが未だ開発されていないことから、前述のような構成をとった場合には、負帯電でしか機能しないためである。
【0005】
しかしながら、負帯電型のOPCにおいては以下のような問題点を有する。すなわち、電子写真プロセスにおいて、感光体表面に負の電荷を形成するための帯電工程は、コロトロンやスコロトロンといったコロナ放電を用いた方式が一般的であるが、ある量の負の電荷を形成する場合に発生するオゾンの量は、同じ量の正の電荷を形成させる場合の約10倍と言われている。このオゾン自体が感光体表面を劣化させるだけではなく、オゾンが空気中の窒素と結びついて生成されるNOx等の生成物が感光体表面に付着すると、感光体表面の抵抗を低下させ、その結果、画像流れ等の異常画像の問題の原因となる。このように帯電プロセスに起因する異常画像に関する問題や、今後更に重要視される環境への影響を考慮すると正帯電型の方が望ましい。
【0006】
このような問題を解決する技術として、例えば前記特開平5−34945号公報に開示されている技術がある。ここに記載されている技術は、機能分離型電子写真感光体ではないが、感光層を有機ポリシランと有機ポリシランの0.01〜0.8wt%の電荷発生剤を含有したものの単層で構成するというものであって、この構成により、正帯電を実現し、負帯電プロセスにおける問題点の解決を図る技術である。しかしながら、この技術においては、本来、正孔の輸送機能しか持たない有機ポリシランに微量の電荷発生剤を添加しただけのものであるために、光照射によって発生する電荷が極くわずかしか得られないことにより、満足な光感度が得られないという大きな問題がある。
一方、電荷輸送層については、先に述べたように電荷輸送層は正孔を輸送する材料は実用可能な材料が数多く開発されているが、その電荷輸送能力は必ずしも満足のできるレベルのものではなく、代表的な電荷輸送材料であるポリビニルカルバゾールを例にとれば、その正孔の移動度は10-6cm2/V・sと、まだまだ改善が必要であるという問題がある。
【0007】
この問題を解決する技術として、電荷発生層と電荷輸送層からなる2層型機能分離電子写真感光体に関するもので、2層型の機能分離型電子写真感光体であり、下層の電荷発生層にビスアゾ顔料を用い、上層の電荷輸送層に有機ポリシランを用いることを内容とする特開平6−11870号公報に記載の技術、2層型の機能分離型感光層の更に上層に表面保護層を設けた構造を採り、最下層の電荷発生層はτ型無金属フタロシアニンからなり、電荷輸送層は直鎖状のポリメチルフェニルシランからなっており、更に表面保護層が三次元架橋されたポリフェニルシランからなることを内容とする特開平6−222601号公報等に記載の、電荷輸送層に有機ポリシランを用いるという技術が提案されている。
確かに、有機ポリシランにおいては一般的に正孔の移動度が10-4cm2/V・s程度と言われており、高分子材料の中でも最高レベルの移動度を示すために、電荷の輸送能力向上による光感度の改善は期待できるものである。しかしながら、上述の従来技術においては、何れも下層に電荷発生層、その上に電荷輸送層を積層するという構造をとっていることにより、負帯電プロセスにしか対応できないことから、先に述べたような負帯電での問題が発生するばかりでなく、以下に述べるような新たな問題も発生する。
【0008】
最近の電子写真技術のプロセス動向は、ネットワーク化への対応の必要性から、アナログからデジタルへの転換が急速に進展している。と同時にカラー化、高精細化、高解像度についても、高いレベルで要求されている。高精細化、高解像度を実現するためには、露光時の書き込み光学系のビーム径の絞り込みも重要な課題であるが、同時にこれまでは問題とされなかった潜像の広がりといった現象が早急に解決すべき問題として認識されている。
【0009】
上記の問題について、一般的なOPCにおいて使用されている負帯電プロセスを想定し、以下に、図3を用いて説明する。
図3(a)に示した図は、導電性基板(301)上に電荷発生層(302)、電荷輸送層(303)を順次積層して形成した、最も単純な構成の機能分離型感光体を模式的に示したものであり、帯電極性が「負」として「帯電した直後」の様子を示したものである。感光体の表面に「負」の電荷(304)が形成され、対向する導電性基板に極性が反対の「正」の電荷(305)が誘起される。
【0010】
図3(b)は、半導体レーザーを光源として行なった「露光直後」の様子を示したものであり、光導電層中で入射光によるキャリアの対生成(306)が起こり、正孔は感光体表面側に、また、電子は基板側へと移動を開始した直後の様子を示している。ここで重要なことは、半導体レーザを光源として行なった露光の場合、光の吸収係数の関係からキャリアの対生成は基板近傍でも起こりうるということである。
【0011】
これらの対生成キャリア、特に正孔の挙動に注目すると、一般的に電荷輸送層は20〜30μmもあるために、正孔は感光体表面までの長い距離を走行する必要がある。このとき、もし感光体表面までを最短距離で走行すれば問題は発生しないが、実際は図3(b)に示すように、残存する表面の「負」の電荷によって正孔の進行方向が曲げられてしまうという問題が発生する。この結果、実際に半導体レーザー光で書き込んだ面積よりも広がった潜像が形成されてしまうという問題が発生する。その様子を模式的に示したのが図3(c)である。この現象が画像の「ボケ」を引き起こす要因であり、高精細化、高解像度の実現の際の大きな障害となる。電荷輸送層の膜厚を薄くしてこの問題の解決を図ることも考えられるが、その際は、帯電電位や光感度が十分に得られないことや、耐久性の面での問題が発生し、根本的な解決策にはなり得ない。この問題を解決しない限り、電子写真プロセスの露光工程において、半導体レーザーを光源として行なった露光の最小スポット径を絞り込んで高精細な画像を得ようとしても、それは不可能なことになってしまう。このことは、今後ますます進展する画像の高精細化に対して大きな障害となるものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、帯電プロセスにおいて発生するオゾンの量を少なくできる正帯電プロセスで使用可能な電子写真感光体を提供することを目的とするものである。また、画像の「ボケ」を引き起こす要因を根本的に解決し、その結果、高品質印字、銀塩写真画質に匹敵する高精細画像の出力ができる電子写真感光体を提供することを目的とするものである。また、該電子写真感光体を用いた電子写真画像形成方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の(1)「導電性基板上に少なくとも感光層を形成してなる電子写真感光体において、前記感光層が電荷発生領域と電荷輸送領域からなり、前記電荷発生領域は前記電荷輸送領域に設けられた孔に埋め込まれた構造で、かつ前記電荷輸送領域が有機ポリシランからなることを特徴とする電子写真感光体」、(2)「前記電荷輸送領域の孔が、フォトリソグラフィー(写真製版技術)を利用して形成されたものであることを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真感光体」、(3)「前記電荷輸送領域に孔を開ける手段として用いるフォトリソグラフィー工程が、露光光源としてエキシマレーザーを用いるものであることを特徴とする前記(1)又は(2)項に記載の電子写真感光体」によって解決されることを見い出した。
【0014】
また更に、(4)「露光に用いる光源に400nm以下の波長の光を含まないものを用いて画像形成プロセスを行なうことを特徴とする前記(1)乃至(3)項のいずれかに1に記載の電子写真感光体の使用方法」によって解決されることを見い出した。
【0015】
以下、本発明の構成及び動作について図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明の基本的な構成例の断面形状を示したものであり、導電性基板上(101)に、電荷輸送領域(102)を形成し、そこに形成した孔に電荷発生領域(103)を埋め込んで形成した単純な構成の感光体を模式的に示したものである。
【0016】
本発明の最も大きな特徴は、いわゆる機能分離型ではあっても、従来より提案され、実施されているような多層構造の機能分離型ではなく、マトリックス状に構成された新規の機能分離型電子写真感光体であるということである。このような構造をとることにより、従来構造では実現できなかった新たな機能分離の効果を得ることができるものである。
【0017】
例えば、現在実用化されているOPCのほとんどは、導電性基板上に電荷発生層、その上に電荷輸送層を設けるという構成であるために、先に述べたような理由によりオゾン発生量の多い負帯電プロセスでしか機能しない。更には、潜像の広がりによる画像「ボケ」が発生するという問題が避けられない。これらの問題の解決策として、かつて電荷発生層と電荷輸送層の構成を逆構成として正帯電プロセスに対応する電子写真感光体を得るという提案もなされたこともあったが、表面層となる電荷発生層の材料が一般的に脆いものであるために、耐久性の面で大きな問題となり、実用に供されることはなかった。
【0018】
それに対し本発明では、マトリックス状に構成された機能分離型の構造をとることにより、必ずしも電荷発生領域に耐久性を担わせる必要はなく、同じように表面に露出している電荷輸送領域に耐久性を担わせることも可能となる。この点が先に述べた「従来構造では実現できなかった新たな機能分離の効果」の一例である。
【0019】
本発明においては、電荷輸送領域として、それ自体が十分な機械的強度を有する有機ポリシランを用いているので、電荷輸送領域に耐久性を担わせることが容易に実現できる。また、更に本発明を発展させて、電荷発生領域に無機材料を用いた場合には、逆に耐久性を電荷発生領域に担わせることも可能となる。このように、本発明で示したマトリックス状に構成された機能分離型の構造をとることにより、帯電特性、光感度、機械強度のあらゆる面での設計の自由度が向上する。
【0020】
また、本発明においては、電荷輸送領域に孔を形成する際も複雑な工程を必要とせず、制御性、再現性に優れたフォトリソグラフィーを用いて実現できるところも大きな特徴である。それは、電荷輸送領域として用いている有機ポリシランが、波長400nm以下の光、いわゆる紫外光で、ポリシラン骨格の開裂が起こり、エッチングが可能となる性質を利用しているためである。ここで重要なことは、感光体表面に現れる電荷発生領域と電荷輸送領域のマトリックス状の構造は、得られる画像の高精細化、高解像度を実現するには、その構造自体が微細になっていなけれならないことである。
【0021】
そこで本発明のごとく、電荷輸送領域に孔を形成する際に波長の短い紫外光を用いるということは、すなわち、非常に微細な加工が容易にできるということであり、高精細化、高解像度を実現するには、最適の材料及び形成法の組み合わせといえる。更なる特徴として、フォトリソグラフィー時の露光光源にエキシマレーザーを用いることにより、露光エネルギーを適切に選ぶことによって、有機ポリシランのフォトアブレーション効果を利用し、完全ドライプロセスで、且つ極微細な孔を形成できることも挙げられる。
【0022】
次に、本発明の動作を図によって説明する。図2は、本発明によって得られる電子写真感光体の潜像形成プロセスを模式的に示したものである。感光体の構成は図1に示したように、導電性基板(201)上に電荷輸送領域(202)を形成し、そこに形成した孔に電荷発生領域(203)を埋め込んで形成した単純な構成の感光体である。
【0023】
潜像形成プロセスに従って、本発明による電子写真感光体の動作について説明する。
まず、コロトロン方式、スコロトロン方式に代表されるコロナ帯電方式や、ローラ方式、ブラシ方式等の接触帯電方式の手法により、電子写真感光体表面に電荷を与え帯電させる。このときの帯電極性は、感光層の材料特性及び現像で使用するトナーの極性により適宜設計されるべきものであるが、ここでは、電子写真感光体の表面に正の電荷(204)を与える、いわゆる「正帯電プロセス」について説明する。このときの帯電直後の様子を示したものが図2(a)である。
【0024】
次に、図2(b)に示したように、表面が正に帯電した状態の電子写真感光体に、半導体レーザ等を光源とする光のビームを用いて、電荷を打ち消すべき領域、すなわち出力画像では「白」になる領域にのみ書き込みを行なう。すると、光導電層に入射した光を吸収した電荷発生領域(203)内部において励起された対生成キャリア(206)が発生する。発生した対生成キャリアは図に示したように、正孔な電子写真感光体の導電性基板(201)側に移動する。このとき、高い正孔輸送能力を有する有機ポリシランを電荷輸送領域として用いていることによって、キャリアの走行は非常にスムーズに行なわれる。また、同時に生成する電子は感光体表面側へ走行する必要があるが、これは極距離が短いために問題無く感光体表面に到達して表面の正電荷を中和することができる。露光は400μm以下の短波長光を含まない光源を用いて行なうことが望ましい。このようにして潜像が形成される。先に述べたように、本発明では電子が走行する距離が短くてすむために、表面の電荷による影響はほとんど無視できることにより、従来のOPCで問題となった潜像の広がりという問題は発生せず、高精細化、高解像度の出力画像が得られる特徴を有している。このときの様子を示したものが図2(c)である。
【0025】
次に、光感度を左右するキャリアの生成と輸送の問題と同様に重要な課題として、帯電電位を支配する電荷保持能力の問題がある。電荷保持能力は抵抗値に大きく依存する特性であるが、本発明においては電荷輸送領域として有機ポリシランを用いているために導電率が1×10-11(Ω・cm)-1以下の高抵抗を有する電荷輸送領域を容易に得ることができる。したがって、電荷保持能力はほとんどこの電荷輸送領域に担わせることができ、その結果、十分な電荷保持能力が得られるばかりでなく、電荷発生領域を選択する上での設計の自由度が向上する効果が得られる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
(1).まず、電荷輸送領域となる有機ポリシランの合成を行なった。本実施例で用いる有機ポリシランはポリメチルフェニルシラン(以下PMPSと表記する)であり、以下に示すWurtz型反応による合成によって得た。つまり、メチルフェニルジクロロシランを110℃のトルエン中で金属ナトリウムを触媒として反応させ、重合させた。得られたPMPSは平均分子量が120,000程度で、収率は32.5%であった。
(2).次に、導電性基板として直径30mm、高さ300mmのアルミニウム製円筒形基板を用い、有機薬液による脱脂洗浄後、成膜に供した。
(3).上記(1)において得たPMPSをトルエンに溶解し、バーコート法により前記(2)の導電性基板に塗布し、乾燥させた。得られた膜厚は15μmであった。
(4).上記(3)で得られたPMPSからなる電荷輸送領域に対して以下の要領でフォトリソグラフィーを行なった。
マスク:孔形状=一辺が0.4μmの正方形でピッチ0.8μm、開口率50%のメタルマスク
露光光源:i線(波長=365nm)
露光光量:120mJ
現像液:一般的な有機アルカリ現像液
(5).上記の条件で得られた孔の形状は、直径0.42μm、深さ3.5μmであった。次に、この孔に電荷発生領域を以下の要領で埋め込んだ。電荷発生領域としてチタニルフタロシアニンをポリビニルブチラール(和光純薬工業(株)製、ポリビニルブチラール 1000、(重合度約900〜1100)のトルエン溶液)に重量比1:1で分散したものを用意し、上記(1)〜(4)の工程により電荷輸送領域まで形成したものに対してディッピングの手法を用いて電荷輸送領域の孔に電荷発生領域を充填し、その後乾燥させた。
(6).このようにして作成した機能分離型電子写真感光体を複写スピードが80ppmの高速乾式複写機に装填し、画像評価試験を行なった。このとき書き込みに用いた半導体レーザの波長は780nmであり、光量は30μW/cm2、光ビーム径を50μmとした。帯電方式はスコロトロン方式で印加電圧を6KVとした。この条件で950Vの帯電電位が得られた。また、現像は2成分現像剤を用いて、磁気ブラシ現像法を用いた。
得られた画像は、オリジナル画像として用いた600dpi相当のライン&スペース及び市松模様を忠実に再現しており、また耐久性を評価するために、30万枚の連続印刷を行ない、30万枚目の画像を詳細に評価したところ、初期の画像となんら変わることなく高精細な画像が得られた。
【0027】
実施例2
実施例1で示した工程のうち、(4)を以下のごとく変更した以外は、実施例1と同様である。
(1).まず、電荷輸送領域となる有機ポリシランの合成を行なった。本実施例で用いる有機ポリシランはポリメチルフェニルシラン(以下PMPSと表記する)であり、以下に示すWurtz型反応による合成によって得た。つまり、メチルフェニルジクロロシランを110℃のトルエン中で金属ナトリウムを触媒として反応させ、重合させた。得られたPMPSは平均分子量が120,000程度で、収率は32.5%であった。
(2).次に、導電性基板として直径30mm、高さ300mmのアルミニウム製円筒形基板を用い、有機薬液による脱脂洗浄後、成膜に供した。
(3).上記(1)において得たPMPSをトルエンに溶解し、バーコート法により前記(2)の導電性基板に塗布し、乾燥させた。得られた膜厚は15μmであった。
(4).上記(3)で得られたPMPSからなる電荷輸送領域に対して以下の要領でフォトリソグラフィーを行なった。
マスク:孔形状=一辺が0.25μmの正方形でピッチ0.5μm、開口率50%のメタルマスク
露光光源:KrFエキシマレーザー(波長=248nm)
露光光量:310mJ
現像液:完全なドライプロセスであるため不要
(5).上記の条件で得られた孔の形状は、直径0.27μm、深さ4.8μmであった。次に、この孔に電荷発生領域を以下の要領で埋め込んだ。電荷発生領域としてチタニルフタロシアニンをポリビニルブチラール(和光純薬工業(株)製、ポリビニルブチラール 1000、(重合度約900〜1100)のトルエン溶液)に重量比1:1で分散したものを用意し、上記(1)〜(4)の工程により電荷輸送領域まで形成したものに対してディッピングの手法を用いて電荷輸送領域の孔に電荷発生領域を充填し、その後乾燥させた。
(6).このようにして作成した機能分離型電子写真感光体を複写スピードが80ppmの高速乾式複写機に装填し、画像評価試験を行なった。このとき書き込みに用いた半導体レーザの波長は780nmであり、光量は30μW/cm2、光ビーム径を50μmとした。帯電方式はスコロトロン方式で印加電圧を6KVとした。この条件で950Vの帯電電位が得られた。また、現像は2成分現像剤を用いて、磁気ブラシ現像法を用いた。
得られた画像は、オリジナル画像として用いた600dpi相当のライン&スペース及び市松模様を忠実に再現しており、また耐久性を評価するために、30万枚の連続印刷を行ない、30万枚目の画像を詳細に評価したところ、初期の画像となんら変わることなく高精細な画像が得られた。
【0028】
実施例1及び2に示したように、本発明によれば、オゾンの発生量の少ない正帯電プロセスに適応可能で、なお且つ高感度で、高解像度を有する機能分離型電子写真感光体が得られ、得られる画像から耐久性を判断しても、実用上十分な耐久性を有する機能分離型電子写真感光体が得られた。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の請求項1の電子写真感光体においては、感光層が電荷発生領域と電荷輸送領域からなり、電荷発生領域は電荷輸送領域に設けられた孔に埋め込まれた構造であるために、帯電プロセスでオゾンの発生が少ない正帯電に適応できる電子写真感光体を得ることができる。また、マトリックス型の機能分離構造をとっているために、電荷発生領域及び電荷輸送領域の設計の自由度が向上し、目的に応じ最適な構成をとることができる。
そして、電荷輸送領域に高分子材料の中でも輸送能力が最も大きい有機ポリシランを使用しているので、光感度に優れた電子写真感光体を得ることができる。また、それ自体が十分な機械的強度を有する有機ポリシランを用いているので、耐久性に優れた電子写真感光体を得ることできる。
また、請求項2の電子写真感光体においては、有機ポリシランからなる電荷輸送領域に孔を設ける手段として、フォトリソグラフィーを用いているので、微細な孔を容易に形成することができ、その結果、高精細化、高解像度を実現できる電子写真感光体を得ることができる。
また、請求項3の電子写真感光体においては、有機ポリシランからなる電荷輸送領域に孔を設ける手段として、フォトリソグラフィー時の光源にエキシマレーザーを用いているので、完全ドライプロセスで孔を形成できるため工程が簡素化できる。
また、請求項4の電子写真感光体の使用方法においては、露光に用いる光源に400nm以下の波長の光を含んでいないために、ポリシランの構造に影響を与えることなく、長期間安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の構成例の断面形状を示した図である。
【図2】本発明によって得られる電子写真感光体の潜像形成プロセスを模式的に示した図である。
【図3】従来の積層型感光体における負帯電プロセスを説明した模式図である。
【符号の説明】
101,201,301 導電性基板
102,202 電荷輸送領域
103,203 電荷発生領域
204 表面正電荷
205 誘起負電荷
302 電荷発生層
303 電荷輸送層
304 表面負電荷
305 誘起正電荷
206,306 対生成キャリア
Claims (4)
- 導電性基板上に少なくとも感光層を形成してなる電子写真感光体において、前記感光層が電荷発生領域と電荷輸送領域からなり、前記電荷発生領域は前記電荷輸送領域に設けられた孔に埋め込まれた構造で、かつ前記電荷輸送領域が有機ポリシランからなることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記電荷輸送領域の孔が、フォトリソグラフィー(写真製版技術)を利用して形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記電荷輸送領域に孔を開ける手段として用いるフォトリソグラフィー工程が、露光光源としてエキシマレーザーを用いるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。
- 露光に用いる光源に400nm以下の波長の光を含まないものを用いて画像形成プロセスを行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体の使用方法。
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