JP3962506B2 - ポンプ組付型リリーフバルブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポンプ本体に螺合して組付けられるポンプ組付型リリーフバルブの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のポンプ組付型リリーフバルブとして、ポンプ吐出圧をドレン側に逃がすリリーフポートと、リリーフポートをバルブスプリングに抗して開くポペット弁と、ポペット弁の背圧をドレン側に逃がすダンピング通路とを備えるものがある。
【0003】
ポペット弁の開閉作動に伴って背圧室に出入りする作動油がダンピング通路を通り、この作動油に対してダンピング通路が通路抵抗を付与することによりポペット弁の開閉作動が緩やかに行われ、異音の発生等を防止できる。
【0004】
背圧室には作動油中に含まれる空気が入る可能性があり、ダンピング通路は背圧室に入った空気を逃がす働きをする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリリーフバルブにあっては、その螺合中心線が略水平になるようにポンプ本体に組付けられた場合、螺合位置に応じてダンピング通路の背圧室に対する高さが変わり、背圧室に入った空気がダンピング通路を通って逃げにくくなる可能性がある。背圧室に空気が溜まると、ポペット弁の開閉作動が不良となるチャッタリングを起こし、リリーフバルブから異音が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ポンプ組付型リリーフバルブのチャッタリングを防止することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ポンプ吐出圧をバルブハウジング外部のドレン室に逃がすリリーフポートと、バルブハウジング内に配置されて背圧室を画成すると共に、リリーフポートをバルブスプリングに抗して開くポペット弁と、背圧室の背圧をドレン室に逃がすダンピング通路とを備え、ポンプ本体に螺合して組付けられるリリーフバルブに適用する。
【0008】
そして、リリーフバルブの螺合中心線を略水平に、またはダンピング通路が背圧室側からドレン室側に向けて高くなるようにポンプ本体に組付け、複数のダンピング通路をリリーフバルブの螺合中心線について略対称的に形成するものとした。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、ポンプ本体に螺合して組付けられる円筒状のプラグと、プラグの内側に結合されリリーフバルブを収装する円筒状のバルブハウジングとを備え、バルブハウジングの外周にプラグに螺合するネジ部を形成し、ネジ部を削除して複数の切り欠きを形成し、各切り欠きとプラグとの間にダンピング通路を画成するものとした。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、ポンプ本体に螺合して組付けられる円筒状のプラグと、プラグの内側に結合されリリーフバルブを収装する円筒状のバルブハウジングとを備え、バルブハウジングの外周面をプラグの内周面に圧入し、プラグの内周面に複数の溝を形成し、各溝とバルブハウジングの間にダンピング通路を画成するものとした。
【0011】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、ポペット弁の外周にバルブハウジングに摺接するシールリングを装着するものとした。
【0012】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、ポペット弁の開閉作動に伴って背圧室に出入りする作動油がダンピング通路を通り、この作動油に対してダンピング通路が通路抵抗を付与することによりポペット弁の開閉作動が緩やかに行われ、異音の発生等を防止する。
【0013】
背圧室には作動油中に含まれる空気が入る可能性があり、ダンピング通路は背圧室に入った空気を逃がす働きをする。
【0014】
リリーフバルブの螺合中心線を略水平に、またはダンピング通路が背圧室側からドレン室側に向けて高くなるようにポンプ本体に組付け、複数のダンピング通路を螺合中心線について略対称的に形成することにより、一方のダンピング通路が螺合中心線より低い位置に来ても他方のダンピング通路が螺合中心線より高い位置に来る。このため、背圧室に入った空気が浮力により高い方のダンピング通路を通ってドレン側へと逃げ、背圧室に多くの空気が溜まることがなく、ポペット弁の開閉作動を良好に維持できる。この結果、リリーフバルブがチャッタリングを起こして、異音が発生したり、バルブスプリングのバネ荷重が低下して設定圧が低くなることを防止できる。
【0015】
リリーフバルブはその中心線が水平線に対して傾斜しても、各ダンピング通路を背圧室側からドレン室側に向けて高くなるようにポンプハウジングに組み付けることにより、背圧室の空気が逃がす機能が確保され、ポンプハウジングの取付位置に対する制約を少なくすることができる。
【0016】
第2の発明において、背圧室に入った空気がバルブハウジングのネジ部を削除した切り欠き(ダンピング通路)を通って逃がされる。
【0017】
ダンピング通路をバルブハウジングとプラグの間に画成する構造のため、ダンピング通路の断面積を確保することとリリーフバルブの小型化を両立できる。
【0018】
第3の発明において、背圧室に入った空気がプラグの内周面に形成された溝(ダンピング通路)を通って逃がされる。
【0019】
ダンピング通路をバルブハウジングとプラグの間に画成する構造のため、ダンピング通路の断面積を確保することとリリーフバルブの小型化を両立できる。
【0020】
プラグの圧入量を変えることにより、リリーフバルブが開弁する設定圧が調節され、バルブスプリングのバネ荷重を調節するシムを廃止することができる
第4の発明において、複数のダンピング通路を設けることにより、ポペット弁の開閉作動に伴って各ダンピング通路を通って出入りする作動油に付与される通路抵抗が減少するが、ポペット弁に装着されたシールリングが付与する摺動抵抗によりポペット弁の開閉作動を緩やかにするダンピング効果が十分に得られ、異音等の発生が抑えられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1,図2は、本発明が適用可能なベーンポンプを示す。これ自体は、本出願人により特願平10−337132号として既に提案されている。
【0022】
図2に示すように、ポンプハウジング1には円柱状の収容室1aが形成され、収容室1aの開口端は、カバー7により封鎖される。収容室1aの内側にはその底面(最奥部の側面)側から、サイドプレート2、アダプタリング3が積層して収容され、アダプタリング3の内側に円環状のカムリング5が収容され、カムリング5の内側にロータ6が収容される。アダプタリング3、カムリング5、ロータ6の側面は、カバー7に当接してシールされる。
【0023】
収容室1aの底面には貫通穴1bが形成され、この貫通穴1bには、駆動軸8がメタル軸受9を介して回転可能に支持される。駆動軸8の先端側は、サイドプレート2、ロータ6を貫通して、カバー7に形成された支持穴7aに達し、この支持穴7aにメタル軸受10を介して回転可能に支持されている。ロータ6は、駆動軸8の途中にスプライン結合し、駆動軸8と一体に回転する。駆動軸8は図示されないエンジンによりプーリおよびベルトを介して回転駆動される。
【0024】
図1に示すように、ロータ6には複数の切り欠きが放射状に形成され、各切り欠きにベーン11がロータ6のラジアル方向に出没可能に収装される。ロータ6が回転すると、切り欠きから伸び出したベーン11の先端がカムリング5の内周面に摺接し、各ベーン11の間に画成された各ポンプ室12が拡縮する。
【0025】
サイドプレート2には、キドニー型の高圧凹溝13Aと低圧凹溝14Aが形成される。高圧凹溝13Aと低圧凹溝14Aは、駆動軸8を挟んで対称な位置に形成され、それぞれ吐出側と吸込側のポンプ室12に臨むようになっている。また、カバー7には、ロータ6を挟んでサイドプレート2側の高圧凹溝13Aおよび低圧凹溝14Aと相対する位置に、キドニー型の高圧凹溝13Bと低圧凹溝14Bが形成され、それぞれ吐出側と吸込側のポンプ室12に臨んでいる。
【0026】
高圧凹溝13Aは、サイドプレート2を貫通する高圧通路15を介して、収容室1a底部(最奥部)に形成された高圧室16に連通する。この高圧室16は、後述するように可変オリフィス25を介して吐出ポート18と連通する。低圧凹溝14Bは、カバー7に形成された低圧通路17を介して、吸込ポート19(さらにはタンクT)と連通する。
【0027】
カムリング5はピン4を回動支点として駆動軸8の左右に揺動可能に支持される。図1に示すように、カムリング5が駆動軸8に対して偏心した状態で、ロータ6が反時計回転方向に回転すると、拡大する吸込側(低圧凹溝14A、14B側)のポンプ室12には吸込ポート19からの作動油が吸い込まれる一方、縮小する吐出側(高圧凹溝13A、13B側)のポンプ室12からは吐出ポート18に向けて作動油が吐出される。
【0028】
ポンプハウジング1の側部には、収容室1aに開口する(詳しくは、後述する第二カム圧力室31に開口する)プラグ穴1cが形成され、プラグ穴1cにプラグ20が螺合して取り付けられる。プラグ20の先端側にはシリンダ穴20aが開口し、シリンダ穴20aには制御プランジャ21が摺動可能に収容される。制御プランジャ21の先端は、アダプタリング3に形成された貫通穴3aを貫通するフィードバックピン61を介してカムリング5の側面に当接する。
【0029】
制御プランジャ21にはその基端側に開口するプランジャ中空部21aが形成され、プランジャ中空部21aの内側にスプリング22が収容される。スプリング22は、シリンダ穴20aの底面とプランジャ中空部21aの底面との間に介装され、制御プランジャ21およびフィードバックピン61を介してカムリング5をその最大吐出位置に付勢している。
【0030】
プラグ20の外周には凹部20bが形成され、凹部20bとプラグ穴1cの間に環状の流体室23が画成される。プラグ穴1cの開口端部にはOリング24が備えられ、流体室23の密封がはかられる。プラグ20を貫通して流体室23とシリンダ穴20aを連通する可変オリフィス25が形成される。高圧室16からの作動油は、ポンプハウジング1に形成された流体通路36を介して流体室23に導入され、さらに可変オリフィス25を介してシリンダ穴20aおよびプランジャ中空部21aに導入される。
【0031】
可変オリフィス25の開口面積は、シリンダ穴20a内で摺動する制御プランジャ21の基端側エッジ21bにより調節される。カムリング5の偏心量が小さくなるのに追従して制御プランジャ21は図1において右側に変位し、可変オリフィス25の開口面積を狭める。
【0032】
制御プランジャ21の筒部には複数の通孔26が形成される。プランジャ中空部21aは、各通孔26を介してポンプハウジング1の収容室1aとアダプタリング3の間に形成された流体室27に常時連通する。流体室27は、通孔28を介して吐出ポート18に連通する。これにより、プランジャ中空部21aは、貫通穴26、流体室27および通孔28を介して吐出ポート18と常時連通している。
【0033】
カムリング5をスプリング22に抗して揺動させるため、アダプタリング3の内側にはカムリング5を挟むように第一カム圧力室32と第二カム圧力室31が画成される。アダプタリング3にはカムリング5の外周に摺接するシール材30が介装され、シール材30によって第一カム圧力室32と第二カム圧力室31の間が密封される。第一カム圧力室32の圧力が第二カム圧力室31に対して高まるのに伴って、カムリング5はスプリング22に抗して揺動し、ポンプ吐出流量が次第に減少する。
【0034】
第一カム圧力室32は切換弁40を介して吸込ポート19と高圧室16に選択的に連通する。切換弁40はポンプハウジング1に形成されたシリンダ42と、シリンダ42に収装されるスプール41を備える。
【0035】
スプール41は、ランド部41aとランド部41bを有する。図1においてランド部41aの右側に画成される第二のスプール圧力室45はオリフィス48、通孔49を介して吐出ポート18と連通する。ランド部41aと41bの間に画成されるドレン流体室46とドレンポート50を介して吸込ポート19に連通する。ランド部41bの左側に画成される第一のスプール圧力室47は通孔56と通孔58を介して高圧室16と連通する。
【0036】
シリンダ42の開口端はプラグ43により閉鎖される。スプール41の基端とシリンダ42の底部の間にはリターンスプリング44が介装される。スプール41がスプリング44の付勢力によりプラグ43に当接する閉位置で第一カム圧力室32が吸込ポート19に連通する。
【0037】
スプール41の両端に導かれる可変オリフィス25の前後差圧が所定値を越えて上昇すると、スプリング44に抗してスプール41が図1において右側の開位置に移動し、第一カム圧力室32が高圧室16に連通する。
【0038】
第二カム圧力室31は、サイドプレート2に形成された固定オリフィス62を介して高圧室16と常時連通する。第一カム圧力室32と第二カム圧力室31に導かれる可変オリフィス25の前後差圧が上昇するのに伴って、スプリング44に抗してカムリング5が揺動し、ポンプ吐出流量が減少する。
【0039】
第二カム圧力室31は、通孔63を介して切換弁40の環状ポート64と連通し、環状ポート64はスプール41のランド部41aによりドレン流体室46と選択的に連通される。ランド部41aのドレン流体室46側端部には複数のノッチ65が切られており、ポンプ吐出流量の増大に伴ってスプール41が図1において右側に移動すると、第二カム圧力室31とドレン流体室46を連通する開口面積が次第に増大する。
【0040】
次にベーンポンプの作動を説明する。
【0041】
ポンプの停止状態において、図1に示すように、カムリング5はスプリング22に付勢されて最大に偏心した位置にある。この状態からロータ6を回転させると、ポンプ室12から高圧室16に作動油が吐出される。高圧室16の作動油は、可変オリフィス25を通って減圧され、吐出ポート18から図示しない配管を通してパワーステアリング装置の油圧アクチュエータに供給される。高圧室16の油圧は、絞り59を介して第一のスプール圧力室47に導入される。ポンプ回転数が小さい間、切換弁40のスプール41はスプリング44の付勢力により閉位置に保持され、第一カム圧力室32にタンク圧が導かれるとともに、第二カム圧力室31にポンプ吐出圧が導かれ、カムリング5は最大に偏心した位置に保持される。これにより、ポンプ吐出量はポンプ回転数に比例して上昇し、車両の低速走行時からポンプ吐出圧が十分に上昇し、パワーステアリング装置に必要な油圧アシスト力を確保できる。
【0042】
ポンプ回転数が上昇するのに伴って高圧室16の吐出圧が上昇して行くと、切換弁40のスプール41はスプリング44に抗して図2の右方向に変位し、第一カム圧力室32にポンプ吐出圧を導くとともに、第二カム圧力室31にタンク圧を導く。この第一カム圧力室32に導かれる可変オリフィス25の上流圧力に基づく反力F1が、第二カム圧力室31に導かれる圧力F2とスプリング22のバネ力Fsとの和(F2+Fs)と釣り合うところまで、カムリング5は揺動する。こうしてカムリング5の偏心量が小さくなると、ポンプ回転に伴うポンプ室12の容積の変化量が小さくなり、吐出ポート18からのポンプ吐出量はポンプ回転数の上昇に対して一定に保たれる。
【0043】
ポンプ回転数がさらに上昇し、カムリング5の偏心量が小さくなると、カムリング5に追従する制御プランジャ21が可変オリフィス25の開口面積を次第に減らし、可変オリフィス25の前後差圧が大きくなり、カムリング5の偏心量がさらに小さくなる。このような可変オリフィス25の開口面積の減少およびカムリング5の偏心量の減少の効果が相俟って、ポンプ回転数の上昇に対してポンプ吐出流量が減少して行く垂下特性を得ることができる。こうして、ポンプ回転数(エンジン回転数)が高くなる車両の高速走行時には、ポンプ吐出流量を減少させ、パワーステアリング装置の油圧アシスト力が過大にならないで済み、不必要な作動油の供給によるエネルギー損失を低減し、作動油温度の上昇を抑えられる。
【0044】
図3に示すように、カバー7の側部にはリリーフバルブ70が組付けられる。リリーフバルブ70は吐出ポート18と吸込ポート19を結ぶリリーフ通路75の途中に介装され、ポンプ吐出圧が所定値を越えて上昇すると開弁し、ポンプ室12から吐出される作動油の一部を吸込ポート19へと戻し、ポンプ吐出圧を所定値以下に抑える働きをする。
【0045】
カバー(ポンプ本体)7にはその側部に開口するプラグ穴7cが形成される。リリーフバルブ70はプラグ穴7cに螺合して組付けられる円筒状のプラグ71と、プラグ71の内側に結合される円筒状のバルブハウジング72とを有する。ポンプハウジング1はリリーフバルブ70の螺合中心線Cが略水平になるようにエンジンに連結される。ここで螺合中心線Cはプラグ71の外周に形成されるネジ部の中心線とする。
【0046】
カバー7にはプラグ穴7cの底部に開口するバルブ穴7bが形成される。バルブ穴7bとバルブハウジング72の間に画成される流体室74は、カバー7に形成された通孔76を介してポンプハウジング1の収容室1aとアダプタリング3の間に形成された流体室27に連通する。流体室27は通孔28を介して吐出
ポート18に連通している。
【0047】
プラグ穴7cとバルブハウジング72およびプラグ71の間にドレン室79が画成され、ドレン室79はカバー7に形成された図示しない通孔を介して吸込ポート19に連通する。
【0048】
図4に示すように、バルブハウジング72の側部には一対の通孔83が開口し、各通孔83を介してバルブハウジング72の内外に画成されたドレン室81とドレン室79が連通される。
【0049】
バルブハウジング72の先端部には流体室74とドレン室81を連通するリリーフポート78が開口し、バルブハウジング72の内側にはリリーフポート78を開閉するポペット弁77が摺動可能に介装される。ポペット弁77とプラグ71の底部の間にはバルブスプリング86が介装される。バルブスプリング86の付勢力によりポペット弁77はリリーフポート78の開口部(バルブシート)に押し付けられる。流体室74に導かれるポンプ吐出圧が所定値を越えて上昇すると、ポペット弁77がバルブスプリング86に抗してリリーフポート78を開き、流体室74の作動油がリリーフポート78、ドレン室81、各通孔83を通ってドレン室79へと流れる
バルブハウジング72はプラグ71の内周に螺合して結合される。バルブハウジング72はその基端72aがプラグ71の環状段部71aに当接して締め付け固定される。バルブスプリング86の端部とプラグ71の底部の間にはシム87が介装され、各部品の加工誤差等に対応してシム87の厚さを変えることにより、リリーフバルブ70が開弁する設定圧を調節するようになっている。
【0050】
バルブハウジング72の内側はポペット弁77によってドレン室81と背圧室82が画成される。プラグ71とバルブハウジング72の間には背圧室82とドレン室79を連通するダンピング通路85が設けられる。ポペット弁77の開閉作動に伴って背圧室82は拡縮し、背圧室82の作動油はダンピング通路85を通って出入りする。このときダンピング通路85を通過する作動油に付与される通路抵抗によりポペット弁77の開閉作動が緩やかに行われ、異音の発生が抑えられる。
【0051】
ポペット弁77の外周にはシールリング84が装着され、シールリング84がバルブハウジング72の内周面に摺接することにより、ドレン室81と背圧室82の密封がはかられるとともに、シールリング84が付与する摺動によりポペット弁77の開閉作動が緩やかに行われ、異音の発生が抑えられる。
【0052】
ところで、背圧室82には作動油中に含まれる空気が入る可能性があり、ダンピング通路85は背圧室82に入った空気をドレン室79へと逃がす働きをする。
【0053】
しかしながら、プラグ71のカバー7に対する螺合位置に応じて背圧室82に対するダンピング通路85の高さが変わる構造のため、ダンピング通路85が螺合中心線Cより低い位置に来ると、背圧室82に入った空気がダンピング通路85を通って逃げにくくなる。背圧室82に空気が溜まると、ポペット弁77の開閉作動が不良となるチャッタリングを起こし、リリーフバルブ70から異音が発生したり、バルブスプリング86のバネ荷重が低下して設定圧が低くなってしまう可能性がある。
【0054】
本発明はこれ対処して、プラグ71とバルブハウジング72の間に2つのダンピング通路85を設け、各ダンピング通路85を螺合中心線Cについて略対称的に配置する。
【0055】
バルブハウジング72にはそのネジ部(外周面)を削除して形成される一対の切り欠き88と、各切り欠き88に開口する一対の通孔89とがそれぞれ形成される。
【0056】
リリーフバルブ70の内周面にはバルブハウジング72を螺合させるネジ部90と、ネジ部90と環状段部72aの間で各通孔89を囲む環状溝91が形成される。
【0057】
各ダンピング通路85は、各切り欠き88とネジ部90の間に画成される各隙間92、環状溝91、各通孔89に画成され、背圧室82に入った空気をダンピング通路85へと導く。
【0058】
以上のように、2つのダンピング通路85を螺合中心線Cについて略対称的に配置することにより、一方のダンピング通路85が螺合中心線Cより低い位置に来ても他方のダンピング通路85が螺合中心線Cより高い位置に来る。このため、背圧室82に空気が浮力により高い方のダンピング通路85を通ってドレン室79へと逃げ、背圧室82に多くの空気が溜まることがなく、ポペット弁77の開閉作動を良好に維持できる。この結果、リリーフバルブ70がチャッタリングを起こして、異音が発生したり、バルブスプリング86のバネ荷重が低下して設定圧が低くなることを防止できる。
【0059】
ポンプハウジング1は、リリーフバルブ70の中心線Cが水平線に対して傾斜しても、各ダンピング通路85が背圧室82側からドレン室79側に向けて高くなるように配置することにより背圧室82の空気を逃がされ、その取付位置に対する制約を少なくすることができる。
【0060】
2つのダンピング通路85を設けることにより、ポペット弁77の開閉作動に伴って各ダンピング通路85を通って出入りする作動油に付与される通路抵抗が減少するが、ポペット弁77の外周に装着されたシールリング84が付与する摺動抵抗によりポペット弁77の開閉作動を緩やかにするダンピング効果が十分に得られ、異音等の発生が抑えられる。
【0061】
各ダンピング通路85をバルブハウジング72とプラグ71の間に画成する構造のため、ダンピング通路85の断面積を確保することとリリーフバルブ70の小型化をはかることを両立できる。
【0062】
次に図6に示す他の実施の形態を説明する。プラグ71の内周面92にバルブハウジング72の外周面を圧入して結合する構造とし、プラグ71の内周面92に軸方向に延びる一対の溝93を形成する。各ダンピング通路85は各溝93によって画成され、背圧室82に入った空気をダンピング通路85へと導く。
【0063】
この場合も、図7に示すように、2つのダンピング通路85を螺合中心線Cについて略対称的に配置することにより、背圧室82に空気がダンピング通路85を通ってドレン室79へと逃げることが促され、チャッタリング等を防止できる。
【0064】
プラグ71の圧入量を変えることにより、リリーフバルブ70が開弁する設定圧が調節され、シムを廃止することができる。
【0065】
また、他の実施の形態として、3つ以上のダンピング通路を3つ以上螺合中心線Cについて略対称的に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すベーンポンプの横断面図。
【図2】同じくベーンポンプの縦断面図。
【図3】同じくベーンポンプの水平面に沿った断面図。
【図4】同じくリリーフバルブの断面図。
【図5】同じくリリーフバルブの正面図。
【図6】他の実施の形態を示すリリーフバルブの断面図。
【図7】同じくリリーフバルブの正面図。
【符号の説明】
1 ポンプハウジング
7 カバー
11 ベーン
12 ポンプ室
18 吐出ポート
19 吸込ポート
70 リリーフバルブ
71 プラグ
72 バルブハウジング
75 リリーフ通路
78 リリーフポート
82 背圧室
85 ダンピング通路
86 バルブスプリング
88 切り欠き
93 溝

Claims (4)

  1. ポンプ吐出圧をバルブハウジング外部のドレン室に逃がすリリーフポートと、
    バルブハウジング内に配置されて背圧室を画成すると共に、リリーフポートをバルブスプリングに抗して開くポペット弁と、
    背圧室の背圧をドレン室に逃がすダンピング通路とを備え、
    ポンプ本体に螺合して組付けられるリリーフバルブにおいて、
    リリーフバルブの螺合中心線を略水平に、またはダンピング通路が背圧室側からドレン室側に向けて高くなるようにポンプ本体に組付け、
    複数のダンピング通路をリリーフバルブの螺合中心線について略対称的に形成したことを特徴とするポンプ組付型リリーフバルブ。
  2. 前記ポンプ本体に螺合して組付けられる円筒状のプラグと、
    プラグの内側に結合されリリーフバルブを収装する円筒状のバルブハウジングとを備え、
    バルブハウジングの外周にプラグに螺合するネジ部を形成し、
    ネジ部を削除して複数の切り欠きを形成し、
    各切り欠きとプラグとの間にダンピング通路を画成したことを特徴とする請求項1に記載のポンプ組付型リリーフバルブ。
  3. 前記ポンプ本体に螺合して組付けられる円筒状のプラグと、
    プラグの内側に結合されリリーフバルブを収装する円筒状のバルブハウジングとを備え、
    バルブハウジングの外周面をプラグの内周面に圧入し、
    プラグの内周面に複数の溝を形成し、
    各溝とバルブハウジングの間にダンピング通路を画成したことを特徴とする請求項1に記載のポンプ組付型リリーフバルブ。
  4. 前記ポペット弁の外周にバルブハウジングに摺接するシールリングを装着したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のポンプ組付型リリーフバルブ。
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