JP3768039B2 - ベーンポンプのシール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベーンポンプのハウジング内を密封するシール構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のベーンポンプのシール構造として、ハウジングにロータおよび各ベーンを収容するポンプ収容室を形成するとともに、ポンプ収容室の周囲にシールリングが配置される環状段部を形成し、環状段部とカバーとの間でシールリングを挟み付けるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のシール構造にあっては、シールリングを環状段部に配置する際、シールリングの内周部を支持する部分がないため、シールリングの収まりが悪く、カバーの組付け時にシールリングを噛んだりする可能性があった。
【0004】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ベーンポンプのシール構造において、シールリングの組付不良を防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ハウジングに開口しロータおよび各ベーンを収容するポンプ収容室と、ポンプ収容室の周囲に形成されシールリングが配置される環状段部と、環状段部との間でシールリングを挟み付けるカバーとを備えるベーンポンプのシール構造に適用する。
【0006】
そして、環状段部の一部にポンプ収容室の周囲から外側に膨らむ膨径部を形成し、膨径部の内側にシールリングの内周部に係合するシール係止壁を形成するものとした。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、シールリングを膨径部に沿った形状に形成するものとした。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、膨径部を環状段部の略対称位置に形成するものとした。
【0009】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、ハウジングの内側に筒状のアダプタリングを嵌合し、ハウジングとカバーおよびアダプタリングの間に作動流体圧が導かれる流体室を画成し、シール係止壁を流体室に面して形成するものとした。
【0010】
第5の発明は、第1から第4のいずれか一つの発明において、カバーにポンプ収容室に嵌合するカバー凸部を形成し、シールリングの内周部に対してカバー凸部とシール係止壁が交互に並ぶものとした。
【0011】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、ベーンポンプの組立時、ポンプ収容室にロータおよび各ベーンを収容し、環状段部にシールリングを配置した後、カバーがハウジングに結合される。シールリングが環状段部とカバーの間に挟み付けられることにより、ポンプ収容室の密封がはかられる。
【0012】
シールリングをハウジングに組付ける際、シールリングはその内周部が部分的にシール係止壁に係合して支持されることにより環状段部に収まり、シールリングが環状段部からはみ出す組付不良を防止でき、作業性の向上がはかれる。
【0013】
また、膨径部をポンプ収容室の周囲に部分的に形成することにより、シールリングを収容する環状溝を全周に渡って形成する構造に比べてハウジングのコンパクト化がはかれる。
【0014】
第2の発明において、シールリングが膨径部に沿った形状をしているため、シールリングをハウジングに組付ける際、シールリングを変形させることなく環状段部に収められ、シールリングが環状段部からはみ出す組付不良を防止できる。
【0015】
第3の発明において、シールリングを環状段部に対応して略対称的に形成することにより、シールリングのシール係止壁に係合しない部位の長さが均等になり、シールリングを環状段部に収めようとする弾性復元力が均等に得られ、シールリングが環状段部からはみ出す組付不良を有効に防止できる。
【0016】
また、シールリングを反転させても環状段部に装着でき、シールリングの組付け作業を容易にすることができる。
【0017】
第4の発明において、ベーンポンプに作動流体が充填される際、作動流体を吸引するための負圧によってシールリングが流体室側に引き込まれようとするが、シール係止壁は環状段部と流体室の間を仕切る隔壁として働くため、この負圧によってシールリングが流体室側に引き込まれることを阻止し、ハウジングとカバー間の密封性が確保される。
【0018】
第5の発明において、ハウジングにカバーが結合した状態で、シールリングの内周部に対してカバー凸部とシール係止壁が交互に並ぶことにより、シールリングが環状段部からはみ出すことを防止でき、ハウジングとカバー間の密封性が維持される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1,図2は、本発明が適用可能な可変容量型ベーンポンプを示す。これ自体は、本出願人により特願平10−337132号として既に提案されている。
【0020】
図2に示すように、ハウジング1には円柱状のポンプ収容室1aが形成され、ポンプ収容室1aの開口端は、カバー7により封鎖される。ポンプ収容室1aの内側にはその底面(最奥部の側面)側から、サイドプレート2、アダプタリング3が積層して収容され、アダプタリング3の内側に円筒状のカムリング5が収容され、カムリング5の内側にロータ6が収容される。アダプタリング3、カムリング5、ロータ6の側面は、カバー7に当接してシールされる。
【0021】
ポンプ収容室1aの底面には貫通穴1bが形成され、この貫通穴1bには、駆動軸8がメタル軸受9を介して回転可能に支持される。駆動軸8の先端側は、サイドプレート2、ロータ6を貫通して、カバー7に形成された支持穴7aに達し、この支持穴7aにメタル軸受10を介して回転可能に支持されている。ロータ6は、駆動軸8の途中にスプライン結合し、駆動軸8と一体に回転する。駆動軸8は図示されないエンジンによりプーリおよびベルトを介して回転駆動される。
【0022】
図1に示すように、ロータ6には複数の切り欠きが放射状に形成され、各切り欠きにベーン11がロータ6のラジアル方向に出没可能に収装される。ロータ6が回転すると、切り欠きから伸び出したベーン11の先端がカムリング5の内周面に摺接し、各ベーン11の間に画成された各ポンプ室12が拡縮する。
【0023】
サイドプレート2には、キドニー型の高圧凹溝13Aと低圧凹溝14Aが形成される。高圧凹溝13Aと低圧凹溝14Aは、駆動軸8を挟んで対称な位置に形成され、それぞれ吐出側と吸込側のポンプ室12に臨むようになっている。また、カバー7には、ロータ6を挟んでサイドプレート2側の高圧凹溝13Aおよび低圧凹溝14Aと相対する位置に、キドニー型の高圧凹溝13Bと低圧凹溝14Bが形成され、それぞれ吐出側と吸込側のポンプ室12に臨んでいる。
【0024】
高圧凹溝13Aは、サイドプレート2を貫通する高圧通路15を介して、ポンプ収容室1a底部(最奥部)に形成された高圧室16に連通する。この高圧室16は、後述するように可変オリフィス25を介して吐出ポート18と連通する。低圧凹溝14Bは、カバー7に形成された低圧通路17を介して、吸込ポート19(さらにはタンクT)と連通する。
【0025】
カムリング5はピン4を回動支点として駆動軸8の左右に揺動可能に支持される。図1に示すように、カムリング5が駆動軸8に対して偏心した状態で、ロータ6が反時計回転方向に回転すると、拡大する吸込側(低圧凹溝14A、14B側)のポンプ室12には吸込ポート19からの作動油が吸い込まれる一方、縮小する吐出側(高圧凹溝13A、13B側)のポンプ室12からは吐出ポート18に向けて作動油が吐出される。
【0026】
ハウジング1の側部には、ポンプ収容室1aに開口する(詳しくは、後述する第二カム圧力室31に開口する)プラグ穴1cが形成され、プラグ穴1cにプラグ20が螺合して取り付けられる。プラグ20の先端側にはシリンダ穴20aが開口し、シリンダ穴20aには制御プランジャ21が摺動可能に収容される。制御プランジャ21の先端は、アダプタリング3に形成された貫通穴3aを貫通するフィードバックピン61を介してカムリング5の側面に当接する。
【0027】
制御プランジャ21にはその基端側に開口するプランジャ中空部21aが形成され、プランジャ中空部21aの内側にスプリング22が収容される。スプリング22は、シリンダ穴20aの底面とプランジャ中空部21aの底面との間に介装され、制御プランジャ21およびフィードバックピン61を介してカムリング5をその最大吐出位置に付勢している。
【0028】
プラグ20の外周には凹部20bが形成され、凹部20bとプラグ穴1cの間に環状の流体室23が画成される。プラグ穴1cの開口端部にはOリング24が備えられ、流体室23の密封がはかられる。プラグ20を貫通して流体室23とシリンダ穴20aを連通する可変オリフィス25が形成される。高圧室16からの作動油は、ハウジング1に形成された流体通路36を介して流体室23に導入され、さらに可変オリフィス25を介してシリンダ穴20aおよびプランジャ中空部21aに導入される。
【0029】
可変オリフィス25の開口面積は、シリンダ穴20a内で摺動する制御プランジャ21の基端側エッジ21bにより調節される。カムリング5の偏心量が小さくなるのに追従して制御プランジャ21は図1において右側に変位し、可変オリフィス25の開口面積を狭める。
【0030】
制御プランジャ21の筒部には複数の通孔26が形成される。プランジャ中空部21aは、各通孔26を介してハウジング1のポンプ収容室1aとアダプタリング3の間に形成された流体室27に常時連通する。流体室27は、通孔28を介して吐出ポート18に連通する。これにより、プランジャ中空部21aは、貫通穴26、流体室27および通孔28を介して吐出ポート18と常時連通している。
【0031】
カムリング5をスプリング22に抗して揺動させるため、アダプタリング3の内側にはカムリング5を挟むように第一カム圧力室32と第二カム圧力室31が画成される。アダプタリング3にはカムリング5の外周に摺接するシール材30が介装され、シール材30によって第一カム圧力室32と第二カム圧力室31の間が密封される。第一カム圧力室32の圧力が第二カム圧力室31に対して高まるのに伴って、カムリング5はスプリング22に抗して揺動し、ポンプ吐出流量が次第に減少する。
【0032】
第一カム圧力室32は切換バルブ40を介して吸込ポート19と高圧室16に選択的に連通する。切換バルブ40はハウジング1に形成されたシリンダ42と、シリンダ42に収装されるスプール41を備える。
【0033】
スプール41は、ランド部41aとランド部41bを有する。図1においてランド部41aの右側に画成される第二のスプール圧力室45はオリフィス48、通孔49を介して吐出ポート18と連通する。ランド部41aと41bの間に画成されるドレン流体室46とドレンポート50を介して吸込ポート19に連通する。ランド部41bの左側に画成される第一のスプール圧力室47は通孔56と通孔58を介して高圧室16と連通する。
【0034】
シリンダ42の開口端はプラグ43により閉鎖される。スプール41の基端とシリンダ42の底部の間にはリターンスプリング44が介装される。スプール41がスプリング44の付勢力によりプラグ43に当接する閉位置で第一カム圧力室32が吸込ポート19に連通する。
【0035】
スプール41の両端に導かれる可変オリフィス25の前後差圧が所定値を越えて上昇すると、スプリング44に抗してスプール41が図1において右側の開位置に移動し、第一カム圧力室32が高圧室16に連通する。
【0036】
第二カム圧力室31は、サイドプレート2に形成された固定オリフィス62を介して高圧室16と常時連通する。第一カム圧力室32と第二カム圧力室31に導かれる可変オリフィス25の前後差圧が上昇するのに伴って、スプリング44に抗してカムリング5が揺動し、ポンプ吐出流量が減少する。
【0037】
第二カム圧力室31は、通孔63を介して切換バルブ40の環状ポート64と連通し、環状ポート64はスプール41のランド部41aによりドレン流体室46と選択的に連通される。ランド部41aのドレン流体室46側端部には複数のノッチ65が切られており、ポンプ吐出流量の増大に伴ってスプール41が図1において右側に移動すると、第二カム圧力室31とドレン流体室46を連通する開口面積が次第に増大する。
【0038】
次に可変容量型ベーンポンプの作動を説明する。
【0039】
ポンプの停止状態において、図1に示すように、カムリング5はスプリング22に付勢されて最大に偏心した位置にある。この状態からロータ6を回転させると、ポンプ室12から高圧室16に作動油が吐出される。高圧室16の作動油は、可変オリフィス25を通って減圧され、吐出ポート18から図示しない配管を通してパワーステアリング装置の油圧アクチュエータに供給される。高圧室16の油圧は、絞り59を介して第一のスプール圧力室47に導入される。ポンプ回転数が小さい間、切換バルブ40のスプール41はスプリング44の付勢力により閉位置に保持され、第一カム圧力室32にタンク圧が導かれるとともに、第二カム圧力室31にポンプ吐出圧が導かれ、カムリング5は最大に偏心した位置に保持される。これにより、ポンプ吐出量はポンプ回転数に比例して上昇し、車両の低速走行時からポンプ吐出圧が十分に上昇し、パワーステアリング装置に必要な油圧アシスト力を確保できる。
【0040】
ポンプ回転数が上昇するのに伴って高圧室16の吐出圧が上昇して行くと、切換バルブ40のスプール41はスプリング44に抗して図2の右方向に変位し、第一カム圧力室32にポンプ吐出圧を導くとともに、第二カム圧力室31にタンク圧を導く。この第一カム圧力室32に導かれる可変オリフィス25の上流圧力に基づく反力F1が、第二カム圧力室31に導かれる圧力F2とスプリング22のバネ力Fsとの和(F2+Fs)と釣り合うところまで、カムリング5は揺動する。こうしてカムリング5の偏心量が小さくなると、ポンプ回転に伴うポンプ室12の容積の変化量が小さくなり、吐出ポート18からのポンプ吐出量はポンプ回転数の上昇に対して一定に保たれる。
【0041】
ポンプ回転数がさらに上昇し、カムリング5の偏心量が小さくなると、カムリング5に追従する制御プランジャ21が可変オリフィス25の開口面積を次第に減らし、可変オリフィス25の前後差圧が大きくなり、カムリング5の偏心量がさらに小さくなる。このような可変オリフィス25の開口面積の減少およびカムリング5の偏心量の減少の効果が相俟って、ポンプ回転数の上昇に対してポンプ吐出流量が減少して行く垂下特性を得ることができる。こうして、ポンプ回転数(エンジン回転数)が高くなる車両の高速走行時には、ポンプ吐出流量を減少させ、パワーステアリング装置の油圧アシスト力が過大にならないで済み、不必要な作動油の供給によるエネルギー損失を低減し、作動油温度の上昇を抑えられる。
【0042】
図3に示すように、カバー7の側部にはリリーフバルブ80が組付けられる。リリーフバルブ80は吐出ポート18と吸込ポート19を結ぶリリーフ通路85の途中に介装され、ポンプ吐出圧が所定値を越えて上昇すると開弁し、ポンプ室12から吐出される作動油の一部を吸込ポート19へと戻し、ポンプ吐出圧を所定値以下に抑える働きをする。
【0043】
ところで、ハウジング1とカバー7の間にはシールリング70が介装され、シールリング70によってポンプ収容室1aの密封がはかられる。
【0044】
ハウジング1にはポンプ収容室1aの周囲に環状段部71が環状に形成され、これにシールリング70が配置される。環状段部71はポンプ収容室1aの開口端を断面矩形に削除して形成される。
【0045】
カバー7にはハウジング1に対する接合面7dが平面状に形成されるとともに、ポンプ収容室1aに嵌合するカバー凸部7eが円柱状に形成される。
【0046】
シールリング70は環状段部71とカバー7の接合面7dに間に挟み付けられてポンプ収容室1aを密封するようになっている。また、作動油を充填する場合等にポンプ収容室1aに負圧が導かれるとき、カバー凸部7eがシールリング70の内周部を支持し、シールリング70が環状段部71からポンプ収容室1aに吸い出されないようになっている。
【0047】
しかしながら、ベーンポンプの組立時にシールリング70を環状段部71に配置する際、シールリング70の内周部を支持する部分がないと、細長い環状をしたシールリング70の収まりが悪く、カバー7の組付け時にシールリング70を噛んだりする可能性がある。
【0048】
これに対処して本発明は、図4に示すように、環状段部71の一部にポンプ収容室1aの周囲から外側に膨らむ一対の膨径部71f,71rを形成し、各膨径部71f,71rの内側にシールリング70の内周部に係合する一対のシール係止壁72f,72rを形成する
各膨径部71f,71rは図4においてポンプ収容室1aの左右に配置され、膨径部71f,71rは環状段部71の略対称位置に形成される。
【0049】
図5に示すように、シールリング70は環状段部71に対応して形成され、その中心線ついて対称的に形成される。シールリング70は各膨径部71f,71rに沿って曲折する一対の曲折部76と、ポンプ収容室1a(カバー凸部7e)に沿って円弧状に湾曲する一対の円弧部75とを有し、曲折部76と円弧部75とが交互に並ぶ。カバー7がハウジング1に取り付けられた状態で、シールリング70の内周部に対してシール係止壁72f,72rとカバー凸部7eが交互に並ぶ。
【0050】
ポンプ収容室1aはアダプタリング3の間に流体室27を画成する内壁部1jを有する。シール係止壁72fは内壁部1jから連続し、一定の厚さを持った堤状に突出形成される。シール係止壁72fは環状段部71と流体室74(リリーフ通路85)の間を仕切る隔壁の働きをする。
【0051】
シール係止壁72rはハウジング内周面1hから連続して形成され、シール係止壁72rの内周面がカバー凸部7eの外周面に当接する。
【0052】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0053】
ベーンポンプの組立時、ハウジング1の環状段部71にシールリング70が配置された後、カバー凸部7eがポンプ収容室1aに嵌合され、カバー7が図示しない4本のボルトを介してハウジング1に締結される。
【0054】
ハウジング1にシールリング70を組付ける際に、シールリング70はその内周部が部分的に各シール係止壁72f,72rに係合して支持されることにより環状段部71に収まり、シールリング70が環状段部71からはみ出す組付不良を防止でき、作業性の向上がはかれる。
【0055】
シールリング70が各膨径部71f,71rに沿った形状の各曲折部76を有しているため、ハウジング1にシールリング70を組付ける際に、シールリング70を変形させることなく環状段部71に収められ、シールリング70が環状段部71からはみ出す組付不良を防止できる。
【0056】
膨径部71f,71rおよびシールリング70を環状段部71について略対称的に形成することにより、各円弧部75を環状段部71に収めようとするシールリング70の弾性復元力が均等に得られ、シールリング70の組付不良を有効に防止できる。また、シールリング70を反転させても環状段部71に配置でき、作業性の向上がはかれる。
【0057】
パワーステアリング装置の油圧回路に作動油を充填するには、まずポンプ収容室1a内を図示しないポンプにより吸引した後、図示しない油圧回路のバルブを開いてポンプ収容室1a内に作動油を送り込む方法が用いられる。このポンプからの負圧がポンプ収容室1a内に導かれる際、各シール係止壁72f,72rとカバー凸部7eが交互に並んでシールリング70の内周部を支持しているので、シールリング70が環状段部71からポンプ収容室1aに吸い出されない。特に、シール係止壁72fは環状段部71と流体室74の間を仕切る隔壁として働くため、この負圧によってシールリング70が流体室74側に引き込まれることを阻止する。
【0058】
また、膨径部71f,71rをポンプ収容室1aの周囲に部分的に形成することにより、シールリングを収容する環状溝を全周に渡って形成する構造に比べてハウジング1のコンパクト化がはかれる。
【0059】
なお、環状段部に形成される膨径部およびシール係止壁は2カ所に限らず、3カ所以上に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すベーンポンプの横断面図。
【図2】同じくベーンポンプの縦断面図。
【図3】同じくベーンポンプの水平面に沿った断面図。
【図4】同じくハウジングの接合面等を示す側面図。
【図5】同じくシールリングの側面図。
【符号の説明】
1 ハウジング
1a ポンプ収容室
3 アダプタリング
5 カムリング
6 ロータ
7 カバー
7e カバー凸部
11 ベーン
70 シールリング
71 環状段部
71f 膨径部
71r 膨径部
72f シール係止壁
72r シール係止壁
75 円弧部
76 曲折部

Claims (5)

  1. ハウジングにロータおよび各ベーンを収容するポンプ収容室を形成し、
    前記ポンプ収容室の周囲にシールリングを収容する環状段部を形成し、
    前記環状段部との間でシールリングを挟み付けるカバーを備えるベーンポンプのシール構造において、
    前記環状段部の一部に前記ポンプ収容室の周囲から外側に膨らむ膨径部を形成し、
    前記膨径部の内側に前記シールリングの内周部に係合するシール係止壁を形成したことを特徴とするベーンポンプのシール構造。
  2. 前記シールリングを前記膨径部に沿った形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプのシール構造。
  3. 前記膨径部を前記環状段部の略対称位置に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のベーンポンプのシール構造。
  4. 前記ハウジングの内側に筒状のアダプタリングを嵌合し、
    前記ハウジングと前記カバーおよび前記アダプタリングの間に作動流体圧が導かれる流体室を画成し、
    前記シール係止壁を前記流体室に面して形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のベーンポンプのシール構造。
  5. 前記カバーに前記ポンプ収容室に嵌合するカバー凸部を形成し、
    前記シールリングの内周部に対して前記カバー凸部と前記シール係止壁が交互に並んだことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のベーンポンプのシール構造。
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