JP4260661B2 - ベーンポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、車両のパワーステアリングの駆動源等に用いられるベーンポンプの改良に関する。
車両に用いられるベーンポンプとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
このベーンポンプは、可変容量型に適用されたものであって、ポンプボディ内に揺動自在に収容されたカムリングと、ポンプボディ内に挿通した駆動軸に一体に設けられ、前記カムリングの内で回転するロータと、該ロータの外周部に放射方向に沿って複数形成されたスロットと、該各スロット内から放射方向へ出没自在に設けられた複数のベーンと、前記カムリングとロータとを軸方向から挟持するプレッシャープレート及びリアボディとを備えている。
また、前記リアボディのロータ側の内側面に、前記スロットの底部側に形成された背圧室に連通する円弧状溝を形成すると共に、該円弧状溝を、吸入領域の溝と吐出領域側の溝とに区分し、前記吸入領域の溝内に、ポンプ吸入側の圧力を導入するようにした。
したがって、吸入領域におけるベーンの基端部側(背圧室)に、ポンプ吸入側の圧力を作用させているので、ベーンをカムリングに押し付ける力が不足することなく、確実にカムリングに押し付けることができると共に、ベーンを過大な力でカムリングに押し付けることもないので、ベーンとカムリングとの摩擦損失を低下させることができる。
特開2003−172272号公報
しかしながら、この従来のベーンポンプにあっては、前述のように、吸入領域の溝にポンプ吸入側の圧力を導入するようになっているため、吸入領域から吐出領域に移行する間でのベーンの飛び出し性が悪いといった問題がある。
特に、ポンプ低回転状態においては、ベーンに作用する遠心力が小さいことから、前記ベーン飛び出し性の悪化が顕著になる。
本発明は、前記従来の技術的課題を解決するために案出されたもので、ポンプ運転中におけるカムリングの内周面に対するベーンの押付け力を確保するために、吸入領域の終端部においてベーン先端部に掛かる圧力を僅かに低下させ、ベーンの基端部側との圧力差を大きくしてベーンの押付け力を増大させることを目的としている。
請求項1に記載の発明は、とりわけ、前記いずれか一方のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記背圧室に連通するほぼ円環状のベーン背圧溝を形成すると共に、該ベーン背圧溝を、ポンプ吸入領域に対応する吸入側背圧溝とポンプ吐出領域に対応する吐出側背圧溝とに隔成し、前記吸入側背圧溝にポンプ吸入圧あるいはポンプ吸入圧より僅かに高い圧力を導入する一方、前記吐出側背圧溝にポンプ吐出圧を導入し、前記一方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、リザーバタンクと連通しかつ前記ポンプ室の吸入領域に開口する第1吸入側開口を形成し、前記他方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室を介してポンプ吸入側と連通しかつ前記第1吸入側開口と対向して前記ポンプ室の吸入領域に開口する第2吸入側開口を形成し、前記一方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室の吐出領域に開口する第1吐出側開口を形成し、前記他方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室の吐出領域に開口する第2吐出側開口を形成し、前記ポンプ室がロータの回転方向の吸入領域から吐出領域に移行する際における前記第1吸入側開口の終点位置を、前記第2吸入側開口の終点位置よりもロータ回転方向と反対方向へ短く設定し、前記複数のポンプ室のうち、隣接する一対の前記ベーンの前記ロータ回転方向後方側の前記ベーンが前記第1吸入側開口を通過したときの前記一対のベーンで挟まれた前記ポンプ室は、前記第2吸入側開口の終点付近と連通し、前記第1、第2吐出側開口のいずれにも連通しないように設けられていることを特徴としている。
一般的には、各ベーンで隔成された各ポンプ室に開口する吸入側開口の圧力を極端に低くすればベーン先端側の圧力が低下するので、ベーン基端部側からの圧力が変わらなければベーンはカムリングの内周面(カム面)に押し付けられが、前述のように、極端に低いポンプ吸入側の圧力では、作動液(オイル)中に気泡が発生し易くなり、騒音の発生原因となるキャビティーションを発生させるおそれがある。
そこで、例えば、ポンプ室の容積増加率が大きくかつ作動液の流入量が多い吸入領域の中間領域では、第1吸入側背圧溝には、ポンプ吸入圧より僅かに高い圧力を導入すると共に、ベーンの先端側の各ポンプ室には、第2の吸入側開口から低圧なポンプ吸入圧を導入するようにしてもよい。
したがって、吸入領域に位置するベーンは、各ポンプ室の低いポンプ吸入圧と、これより高い第1吸入側背圧溝の圧力との差圧により、ベーンをカムリングの内周面に小さな圧力で当接(摺接)させることが可能になる。
この結果、ベーンとカムリングとの間の摩擦抵抗の低減化を図ることができ、ひいてはエンジンの動力損失を低減させることができる。
しかも、前記ベーンが、吸入領域から吐出領域に移行する際に、第1吸入側開口を通過すると、ポンプ室は第1吸入側開口との連通が遮断されると共に、第1,第2吸入側背圧溝及び第1、第2吐出側背圧溝との連通も遮断されるが、第2吸入側開口の終点付近との連通だけが維持された形になる。この第2吸入側開口は、リザーバタンクに連通しておらず、ポンプ吸入側の低い圧力のみが作用している。つまり、二枚のベーン間のポンプ室に吸い込まれる作動油は、第1吸入側開口に連通しているその前の他のポンプ室から流入した負圧に近い低い圧力が作用する。
これによって、後側のベーンは、その先端部周りの圧力が第1吸入側開口に面していた場合より低くなって、このポンプ室の低い圧力によって先端部がスロット側からカムリング方向へ引き出されてカムリングの内周面に対して、吐出領域に入る前に予め当接した状態になる。
その直後に、吐出領域に移行した時点で、各背圧溝から供給された各吐出側背圧室の通常の高いポンプ吐出圧によってベーンの基端部側が押し出されて先端部がカムリングに強く圧接する。
したがって、ベーンは、吸入領域を通過した後、吐出領域までに至るまでに予めカムリング方向へ引き出されていることから、吸入領域から吐出領域への移行時におけるカムリングの内周面方向へのベーンの急激な突出移動が防止されて衝突打音の発生が抑制されると共に、吐出領域での飛び出し性、つまり応答性が良好になる。
また、前述のように、吸入領域の通過後でもベーンの先端部がカムリングの内周面に当接して高いシール性が確保されるため、ポンプ室内の作動液が吸入領域にある他のポンプ室へのリークも防止できる。
請求項2に記載の発明は、前記カムリングが揺動することによって前記ポンプ室の容積を可変制御すると共に、前記第1吸入側開口及び第2吸入側開口並びに前記第1吐出側開口と前記第2吐出側開口を円周方向にそれぞれ一つずつ備えた可変容量型として構成したことを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、前記複数のベーンを11枚に設定すると共に、前記第1吸入側開口の終点位置に対する前記第2吸入側開口の終点位置の円周方向の角度を、約5〜20度角の範囲内に設定したことを特徴としている。
以下、本発明にかかるベーンポンプの実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、この実施形態では可変容量型のベーンポンプに適用したものを示している。
すなわち、このベーンポンプは、図1〜図4に示すように、フロントボディ2と一方のサイドプレートであるリアボディ3とを突き合わせてなるポンプボディ1と、該ポンプボディ1の内部に形成された収容空間4の内面に嵌着されたアダプターリング5と、該アダプターリング5のほぼ楕円形の空間内に揺動支点ピン6を中心として揺動自在なカムリング7と、該カムリング7の内周側に回転自在に配置され、前記ポンプボディ1内に挿通された駆動軸8に連結されたロータ9とを備えている。
前記カムリング7は、ほぼ円環状に形成され、このロータ12に対して偏心した状態で前記収容空間4内に配置されていると共に、前記揺動支点ピン6及びこれとほぼ対向した位置にあるシール部材51を介して第1流体圧力室10と第2流体圧力室11を隔成している。
前記カムリング7とロータ9は、軸方向の両端面が前記リアボディ3と前記収容空間4の底部側に配置された他方のサイドプレートである円盤状のプレッシャプレート12によって挟持状態に配置されている。
前記ロータ9は、図外のエンジンによって前記駆動軸8が回転駆動されると図1の矢印方向(反時計方向)に回転するようになっていると共に、外周部には、円周方向の等間隔位置に放射方向に沿ったスロット13が複数形成されている。この各スロット13内には、11枚のベーン14がそれぞれ前記カムリング7の内周面方向へ放射状に出没自在に保持されている。また、前記各スロット13の内周側端部に、ほぼ円形状の背圧室15が連続一体に設けられている。
また、前記カムリング7とロータ9との間に形成される空間内に、隣接する二枚のベーン14によってポンプ室16が形成されており、前記カムリング7を前記揺動支点ピン6を支点として揺動させることによってこのポンプ室16の容積を増減させるようになっている。
前記第2流体圧力室11には、図1に示すように、圧縮コイルばね17が配置されており、前記カムリング7を常時前記第1流体圧力室10側、つまり、ポンプ室16の容積が最大になる方向に付勢している。
また、前記ロータ12の回転に伴って前記各ポンプ室16の容積が漸次拡大する吸入領域A(図3,図4参照)における前記リアボディ3のロータ12側の内側面には、円弧状の第1吸入側開口18が形成されている。
この第1吸入側開口18は、吸入ポート19及び図外の吸入通路を介してリザーバタンクから吸い込んだ作動油を前記各ポンプ室16に供給するようになっている。
また、前記ロータ12の回転に伴って、前記各ポンプ室16の容積が漸次縮小していく吐出領域B(図3,図4参照)における前記プレッシャプレート12の内側面には、円弧状の第2吐出側開口20とこれに連通する吐出孔21が形成されており、ポンプ室16から吐出された圧力流体が、前記第2吐出側開口20及び吐出孔21を介してフロントボディ2の底部に形成された吐出側圧力室22に導入される。この吐出側圧力室22に導入された圧力流体は、ポンプボディ1に形成された図外の吐出通路から配管を介してパワーステアリング装置の油圧パワーシリンダに送られるようになっている。
また、前記プレッシャプレート12の前記リアボディ3の第1吸入側開口18と対向する内側面位置には、図4に示すように、ほぼ同形円弧状の第2吸入側開口23が形成されており、この円弧長さは吸入領域Aと同じ長さに設定されている。
さらに、リアボディ3の前記プレッシャプレート12の第2吐出側開口20と対向する内側面位置には、ほぼ同形の第1吐出側開口24が形成されており、この第1吐出側開口24及び前記プレッシャプレート12側の第2吐出側開口20の円弧長さは吐出領域Bとほぼ同一に設定されている。かかる第1、第2吐出側開口20,24と前記第1、第2吸入側開口18、23を形成することによって、各ポンプ室16の両側の圧力バランスを保持するようになっている。
また、前記リアボディ3の前記ロータ9側の内側面には、前記吸入領域Aにおいて前記背圧室15にほぼ向かい合う位置に円弧状の第1吸入側背圧溝25が形成されている。この第1吸入側背圧溝25は、パワーステアリング装置のバルブ出口とリザーバタンクとの間の流体通路に、連通路50及びリアボディ3の戻し通路を介して接続されている。
一方、プレッシャプレート12の前記リアボディ3の第1吸入側背圧溝25と対向する内側面位置には、円弧状の第2吸入側背圧溝26が形成されており、この第2吸入側背圧溝26は、後述する制御バルブ40と連通するリリーフ通路27に連通している。前記両第1吸入側背圧溝25,26は、その円弧長さが吸入領域Aに収まる長さにそれぞれ設定されている。
また、リアボディ3の吐出領域Bにおける位置に、前記背圧室15と連通する円弧状の第1吐出側背圧溝28が形成されている。この第1吐出側背圧溝28は、中央部が吐出領域Bに位置していると共に、始点28a側と終点28b側の両端部側が吸入領域Aの前記第1吸入側背圧溝25の両端部付近まで延長されている。すなわち、前記隣接する二枚のベーン14(図3中の14a、14b)間に形成されるポンプ室16が吸入領域Aから吐出領域Bに移行する時点、つまり後方側のベーン14bが第1吸入側開口18から外れ、前方側のベーン14aが第1吐出側開口24内に移行する時点で、その後方側のベーン14bのスロット13の背圧室15が吸入領域Aの第1吸入側背圧溝25から外れて一時的に前記第1吐出側背圧溝28にも連通しないように形成されている。
一方、前記プレッシャプレート12の前記ロータ9側の内側面には、図4に示すように、前記吐出領域Bの始端b1前からこれを越えた領域から前記吸入領域Aの終端a2までに円弧状の第2吐出側背圧溝29が形成されている。すなわち、この第2吐出側背圧用溝29は、始点29aがリアボディ3の吐出領域Bの第1吐出側背圧溝28の終点28bと同様に、吸入領域Aの第2吸入側開口23の終点23bとほぼ同一の位置に延設され、終点29bが吐出領域Bの終端b2よりも始端b1側の上流部に位置しており、その先の部分Sは吸入領域Aの第2吸入側背圧溝26の始点26aの位置まで平坦に形成されている。さらに、この第2吐出側背圧溝29は、プレッシャプレート12に穿設された絞り孔30を介して前記吐出側圧力室22に連通し、該吐出圧力が導入されるようになっている。
そして、前記リアボディ3側に形成された前記第1吸入側開口18は、その円周方向の長さが、対向する前記プレッシャプレート12の第2吸入側開口23の円周方向の長さよりも短く設定されている。
すなわち、前記第2吸入側開口23は、図4に示すように、その長さが、前述したように、吸入領域Aの長さとほぼ同一に設定されて、その始点23aが吸入領域Aの始点位置a1とほぼ同一位置になっている一方、終点23bが吸入領域Aの終点位置a2とほぼ同一位置になっている。これに対して、第1吸入側開口18は、図3に示すように、その始点18aが第2吸入側開口23の始点23aと同一位置になっているが、終点18bは第2吸入側開口23の終点23bよりも後退した位置にあり、前記第1吸入側背圧溝25の終点25bとほぼ同一位置に設定されている。つまり、第2吸入側開口23の終点23bから第1吸入側開口18の終点18bまでの円周方向の角度θは約10°長さ分だけ短く設定されている。
したがって、前記隣接する二枚のベーン14(図3中の14a、14b)間に形成されるポンプ室16が、吸入側から吐出側に移行する時点、つまり後方側のベーン14bが第1吸入側開口18の終点18bから外れ、かつ、スロット13の背圧室15bが第1吸入側背圧溝25の終点25bから外れた時点で、前方側のベーン14aとの間に形成されているポンプ室16が、いまだ第2吸入側開口23の終点23bまで達せず該第2吸入側開口23に連通した状態にあるように設定されている。
前記制御バルブ40は、前記特開2003−172272号公報のものと同一の構成であって、簡単に説明すると、この制御バルブ40は、図1に示すように、前記フロントボディ2内に形成されたバルブ孔41内に摺動自在に収容されたスプール弁42と、該スプール弁42を図1の左方向(第1作動油圧室10方向)に付勢してバルブ孔41のプラグ43に当接させるスプリング44と、前記プラグ43とスプール弁42の先端部との間に形成されて、図外のメータリングオリフィスの上流側の作動油圧が導入される高圧室45とを備え、前記メータリングオリフィスの下流側の作動油圧が前記スプリング43の収容室46に供給され、この収容室46と高圧室45の両圧力差が所定以上になるとスプール弁42がスプリング44のばね圧に抗して図中右方向に移動するようになっている。
前記第1作動油圧室10は、前記スプール弁42が左に位置するときは接続通路47aを介してバルブ孔41のポンプ吸入室48に接続され、前記差圧によってスプール弁42が右側に摺動した場合は、ポンプ吸入室48が漸次遮断されて、高圧室45と連通するようになっている。これによって、ポンプ吸入室48の圧力とメータリングオリフィスの上流側の圧力が選択的に供給されるようになっている。
一方、前記第2作動油圧室11は、スプール弁42の非作動時には接続通路47bを介して前記収容室46に接続され、スプール弁42の作動に伴い収容室46が漸次遮断されると共に、ポンプ吸入室48に接続されて、メータリングオリフィスの下流側とポンプ吸入側の圧力が選択的に供給されるようになっている。
また、前記スプール弁42の内部に設けられたリリーフバルブ49は、前記収容室46の圧力が所定以上に達したときに、開放してこの作動油圧を逃がすようになっており、このリリーフされた作動油が前記リリーフ通路27を介して前記リアボディ3の第1吸入側背圧溝25に供給されるようになっている。
そして、前記ベーン14が吸入領域Aを移動中には、先端部にポンプ吸入側の圧力が作用する共に、パワーステアリング装置で使用された作動油が図2に示す連通路50及び第1吸入側背圧溝25を介してスロット13の背圧室15に導入されて、この油圧がベーン14の基端部に作用している。したがって、背圧室15内の油圧は、ポンプ吸入側の圧力よりもやや高くなっていることから、各ベーン14を押し出してカムリング7の内周面に確実に押し付けることができる。
また、この圧力は、ポンプ吸入側の圧力よりもやや高いだけで、ポンプ吐出圧よりは遙かに低いので、カムリング7の内周面とベーン14との摩擦損失が低下して、ポンプの駆動動力を低減できる。
さらに、前記リリーフバルブ49が作動したしたときは、ポンプの吐出油はリリーフバルブ49から直接ポンプ吸入室に流れて、パワーステアリング装置に供給される流量は少なくなり、リザーバタンク内のフィルターなどの流動抵抗により圧力が低下することから、この圧力によってはベーン14を押し出すことができない。
しかし、この実施形態では、前述のように、リリーフバルブ49からリリーフされた作動油をリリーフ通路27を介して吸入領域Aの第2吸入側背圧溝26に供給しているので、このリリーフされた作動油の圧力によってベーン14を押し出してカムリング7の内周面に確実に当接させることができる。
したがって、この実施形態では、いずれの場合においても、吸入領域Aでのカムリング7とベーン14との間の摩擦抵抗を十分に低減させつつ該ベーン14をカムリング7に確実に押し付けることが可能になる。
さらに、この実施形態では、隣接する二枚のベーン14間のポンプ室16が、吸入領域Aから吐出領域Bへ移行する時点、つまり図3に示すように、後方側のベーン14bが第1吸入側開口18を通過すると共に、前方側のベーン14aが吐出側開口28に移動して、これら両ベーン14a、14b間のポンプ室16が吐出領域Bに移行する直前の時点で、前方側のベーン14aのスロット13の背圧室15にすでに吐出領域Bの吐出側背圧溝28,29内の高圧が供給されることから、ベーン14aは十分に飛び出して確実にカムリング7の内周面に押し付けられる。特にプレッシャプレート12側の吐出側背圧溝29は絞り孔30が形成されていることから、その内圧の速い上昇と高圧の維持が確保されることから、ベーン14の飛び出し性が良好になる。
また、前述のように、前記ベーン14が、吸入領域Aから吐出領域Bに移行する際に、第1吸入側開口18を通過すると、ポンプ室16は第1吸入側開口18との連通が遮断されると共に、第1,第2吸入側背圧溝25、26及び第1、第2吐出側背圧溝28、29との連通も遮断されるが、第2吸入側開口23の終点23b付近との連通だけが維持された形になる。この第2吸入側開口23は、リザーバタンクに連通しておらず、ポンプ吸入側の低い圧力のみが作用している、つまり、二枚のベーン14a、14b間のポンプ室16に吸い込まれる作動油は、第1吸入側開口18に連通しているその前の他のポンプ室16から流入した負圧に近い低い圧力が作用する。
これによって、後側のベーン14bは、その先端部周りの圧力が第1吸入側開口18に面していた場合より低くなって、このポンプ室16の低い圧力によって先端部がスロット13側からカムリング7方向へ引き出されてカムリング7の内周面に対して、吐出領域Bに入る前に予め当接した状態になる。
その直後に、吐出領域Bに移行した時点で、各背圧溝24、29から供給された各吐出側背圧室15の通常の高いポンプ吐出圧によってベーン14の基端部側が押し出されて先端部がカムリング7に強く圧接する。
したがって、ベーン14は、吸入領域Aを通過した後から吐出領域Bまでに至るまでに予めカムリング7方向へ引き出されていることから、吸入領域Aから吐出領域Bへの移行時におけるカムリング7の内周面方向へのベーン14の急激な突出移動が防止されて衝突打音の発生が抑制されると共に、吐出領域Bでの飛び出し性、つまり応答性が良好になる。
また、前述のように、吸入領域Aの通過後でもベーン14の先端部がカムリング7の内周面に当接して高いシール性が確保されるため、ポンプ室16内の作動液が吸入領域7にある他のポンプ室16へのリークも防止できる。
また、前記第1吸入側開口18の終点18b位置に対する前記第2吸入側開口23の終点23bの位置の円周方向の角度を約10°の角度に設定したため、実験結果により、キャビティーションの発生が低減し、かつベーンの飛び出し性を向上させることができる。
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
請求項(1) 前記カムリングが揺動することによって前記ポンプ室の容積を可変制御すると共に、前記吸入ポートと吐出ポートを円周方向にそれぞれ一つずつ備えた可変容量型としたことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
通常の固定容量型のベーンポンプは、吸入側開口と吐出側開口が円周方向にそれぞれ1対ずつ形成されているため、各スロットからの各ベーンの出没がロータの1回転当たり2回ずつ発生する。このため、吸入領域に設けられたスロット背圧室が吸入圧(リザーバタンク圧)を導入するものではないので、ベーンを十分に突出させることができない。
ところが、可変容量型のベーンポンプでは、吸入、吐出行程がロータの1回転当たり、1回ずつであることから、吸入領域に設けられたロータ内のスロット背圧室に前記吸入側背圧溝を介して吸入圧を導入していても、ベーンを十分に突出させることができる。
請求項(2) 前記複数のベーンを11枚に設定すると共に、前記第1吸入側開口の終点位置に対する前記第2吸入側開口の終点位置の円周方向の角度を約5〜20度角範囲内に設定したことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
発明者の実験によれば、第2吸入側開口の長さを前述のように設定することによってキャビティーションの発生が低減し、かつベーンの飛び出し性を向上させることがわかった。さらに好ましくは前記角度を約10度にすると良い。
本発明の実施形態のベーンポンプを示す図2のA−A線断面図である。 同ベーンポンプを示す図1のB−B線断面図である。 図1のC−C線断面図である。 本実施形態に供されるプレッシャプレートの正面図である。
符号の説明
1…ポンプボディ
3…リアボディ(サイドプレート)
4…収容空間
7…カムリング
8…駆動軸
9…ロータ
10・11…第1、第2流体圧力室
12…プレッシャプレート(サイドプレート)
13…スロット
14…ベーン
15…背圧室
16…ポンプ室
18…第1吸入側開口
18b…終点
20…第2吐出側開口
23…第2吸入側開口
23b…終点
24…第1吐出側開口
25…第1吸入側背圧溝
26…第2吸入側背圧溝
28…第1吐出側背圧溝
29…第2吐出側背圧溝
A…吸入領域
B…吐出領域

Claims (3)

  1. 駆動軸によって回転駆動されるロータと、
    該ロータの外周部に形成された複数のスロットに放射方向に出没自在に設けられた複数のベーンと、
    前記ロータの軸方向両側に配置されたサイドプレートと、
    前記ロータの外周側に配置されて、内周面に前記ベーンの先端部が摺接しつつ前記ロータの外周面と隣接する各ベーン及び前記各サイドプレートとの間に複数のポンプ室を形成するカムリングと、
    前記スロットの底部側に形成されて、前記ベーンの基端面に突出方向への圧力を作用させる背圧室と、を備えたベーンポンプにおいて、
    前記いずれか一方のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記背圧室に連通するほぼ円環状のベーン背圧溝を形成すると共に、
    該ベーン背圧溝を、ポンプ吸入領域に対応する吸入側背圧溝とポンプ吐出領域に対応する吐出側背圧溝とに隔成し、前記吸入側背圧溝にポンプ吸入圧あるいはポンプ吸入圧より僅かに高い圧力を導入する一方、前記吐出側背圧溝にポンプ吐出圧を導入し、
    前記一方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、リザーバタンクと連通しかつ前記ポンプ室の吸入領域に開口する第1吸入側開口を形成し、
    前記他方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室を介してポンプ吸入側と連通しかつ前記第1吸入側開口と対向して前記ポンプ室の吸入領域に開口する第2吸入側開口を形成し、
    前記一方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室の吐出領域に開口する第1吐出側開口を形成し、
    前記他方側のサイドプレートの前記ロータと対向する内側面に、前記ポンプ室の吐出領域に開口する第2吐出側開口を形成し、
    前記ポンプ室がロータの回転方向の吸入領域から吐出領域に移行する際における前記第1吸入側開口の終点位置を、前記第2吸入側開口の終点位置よりもロータ回転方向と反対方向へ短く設定し、
    前記複数のポンプ室のうち、隣接する一対の前記ベーンの前記ロータ回転方向後方側の前記ベーンが前記第1吸入側開口を通過したときの前記一対のベーンで挟まれた前記ポンプ室は、前記第2吸入側開口の終点付近と連通し、前記第1、第2吐出側開口のいずれにも連通しないように設けられていることを特徴とするベーンポンプ。
  2. 請求項1に記載のベーンポンプにおいて、
    前記カムリングが揺動することによって前記ポンプ室の容積を可変制御すると共に、前記第1吸入側開口及び第2吸入側開口並びに前記第1吐出側開口及び前記第2吐出側開口を円周方向にそれぞれ一つずつ備えた可変容量型として構成したことを特徴とするベーンポンプ。
  3. 請求項1に記載のベーンポンプにおいて、
    前記複数のベーンを11枚に設定すると共に、前記第1吸入側開口の終点位置に対する前記第2吸入側開口の終点位置の円周方向の角度を、約5〜20度角の範囲内に設定したことを特徴とするベーンポンプ。
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