JP2012163041A - ベーンポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数のベーン7と共に複数のポンプ室rを形成するポンプボディ4の軸方向端面410に、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポート43と、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポート44と、を設け、吐出ポート44に連通すると共に、ポンプ室rが吸入領域から吐出領域へ移行する際にこのポンプ室rと連通する絞り部(吐出ポート始端部85)を、互いに対向するカムリング8の軸方向端面83とポンプボディ4の軸方向端面410との間に設けた。
【選択図】 図2
Description
[構成]
ベーンポンプ1(以下、単に「ポンプ1」という。)は、自動車の油圧式アクチュエータ、具体的にはベルト式の連続可変トランスミッション(CVT100)への油圧供給源として使用される。図1は、CVT100の一例を示すブロック図である。コントロールバルブ200内には、CVTコントロールユニット300により制御される各種のバルブ201〜213が設けられている。ポンプ1から吐出された作動油は、コントロールバルブ200を介してCVT100の各部(プライマリプーリ101、セカンダリプーリ102、フォワードクラッチ103、リバースブレーキ104、トルクコンバータ105、潤滑・冷却系106等)に供給される。なお、他の油圧式アクチュエータ、例えばパワーステアリングシステムの油圧供給源としてポンプ1を使用しても良い。ポンプ1は内燃機関のクランクシャフトにより駆動され、作動流体を吸入・吐出する。作動流体として作動油、具体的にはATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)を用いる。作動油(ATF)は、弾性係数が比較的小さく、僅かな容積変化に対して圧力が大きく変化する性質を有している。
リアボディ40には、z軸方向に延びる有底円筒状の収容凹部40bが形成されている。収容凹部40bの内周には、円環状のアダプタリング9が設置されている。アダプタリング9の内周面は、z軸方向に延びる略円筒状の収容孔90を構成している。収容孔90のx軸正方向側には、yz平面と略平行な第1平面部91が形成されている。収容孔90のx軸負方向側には、yz平面と略平行な第2平面部92が形成されている。第2平面部92のz軸方向略中央には、段差部920がx軸負方向側に形成されている。収容孔90のy軸正方向側であって回転軸Oに対して若干x軸正方向寄りには、z軸と略平行な第3平面部93が形成されている。第3平面部93には、z軸方向から見て半円状の溝(凹部930)が形成されている。凹部930を挟んだ両側には、アダプタリング9を径方向に貫通する第1,第2連通路931,932が形成されている。凹部930のx軸正方向側における第3平面部93には第1連通路931が開口し、第3平面部93のx軸負方向側に隣接して第2連通路932が開口している。収容孔90のy軸負方向側には、xz平面と略平行な第4平面部94が形成されている。第4平面部94には、z軸方向から見て矩形状の溝(凹部940)が形成されている。
制御部3は、リアボディ40に設けられており、制御弁30と第1、第2通路31,32と制御室R1,R2とを有している。アダプタリング内周面90とカムリング外周面81との間の空間は、そのz軸負方向側がプレート41に、z軸正方向側がフロントボディ42により封止される一方、平面部93とシール部材S1とにより、2つの制御室R1,R2に液密に隔成されている。x軸正方向側には第1制御室R1が形成され、x軸負方向側には第2制御室R2が形成されている。なお、上記規制位置で、カムリング外周とアダプタリング内周との間には所定の隙間が確保されており、第1、第2制御室R1,R2の容積は所定以上でありゼロとならない。第1制御室R1にはアダプタリング9の第1連通路931が開口し、第2制御室R2には第2連通路932が開口している。リアボディ40に形成された第1通路31は第1連通路931と連通して第1制御油路を構成し、第2通路32は第2連通路932と連通して第2制御油路を構成している。制御弁30は油圧制御弁(スプール弁)であり、リアボディ40内のバルブ収容孔40aに収容されたスプール302を、ソレノイド301により駆動することで、第1通路31(第1制御室R1)及び第2通路32(第2制御室R2)への作動油の供給を切り替える。制御弁30の作動は、CVTコントロールユニット300により、例えば内燃機関の回転数とスロットルバルブ開度とに基づき制御される。
図3は、プレート41をz軸正方向側から見た平面図である。プレート41には、吸入ポート43と、吐出ポート44と、吸入側背圧ポート45と、吐出側背圧ポート46と、ピン設置孔47と、貫通孔48とが形成されている。ピン設置孔47にはピンPINが挿入され固定設置される。貫通孔48には駆動軸5が挿入され回転自在に設置される。各ポート43〜46等は、プレート41のz軸正方向側の面410に形成されている。
(プレート41の吸入ポートの構成)
吸入側円弧溝430の径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、カムリング8が最小偏心位置にあるときの環状室R0の径方向幅と略等しい(図2参照)。吸入側円弧溝430の内径側の縁437は、ロータ外周面60(突出部62を除く)よりも若干外径側に位置する。吸入側円弧溝430の外径側の縁438は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも若干外径側に位置し、その終端側で、最大偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも僅かに外径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、吸入側の各ポンプ室rは、z軸方向から見て吸入側円弧溝430と重なり、吸入側円弧溝430と連通している。吸入孔431は、z軸方向から見て略長円状であり、径方向幅が吸入側円弧溝430と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入孔431は、プレート41を貫通して形成された凹部であり、y軸と重なる位置に形成されている。連通孔432は、吸入孔431と同様の形状で、プレート41を貫通して形成された凹部である。吸入側円弧溝430の始端部435には、回転負方向に凸の略半円弧状に形成された本体始端部433と、本体始端部433に連続するノッチ434とが形成されている。ノッチ434は、本体始端部433からポンプ回転方向と回転負方向に延びるように、略0.5ピッチの長さだけ形成されており、その先端は始点Aと一致している。ノッチ434は、z軸方向から見て、回転方向に向かうにつれて徐々に径方向幅が大きくなる略鋭三角形状に設けられている。ノッチ434の径方向幅の最大値は、吸入側円弧溝430の幅よりも小さく設けられている。ノッチ434の(z軸方向)深さは、回転方向に向かうにつれてゼロから徐々に増加する。すなわち、ノッチ434の流路断面積は、吸入側円弧溝430の本体部よりも小さく、ノッチ434は、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を構成している。本体始端部433から連通孔432までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に深くなるように形成されている。吸入側円弧溝430の終端部436は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入孔431から終端部436までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に浅くなるように形成されている。
吐出側円弧溝440の径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430の径方向幅よりも若干小さい。吐出側円弧溝440の内径側の縁446は、(突出部62を除く)ロータ外周面60よりも若干外径側に位置する。吐出側円弧溝440の外径側の縁447は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80と略重なる。吐出側の各ポンプ室rは、カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て吐出側円弧溝440と重なり、吐出側円弧溝440と連通している。吐出孔442は、プレート41を貫通して形成された凹部であり、z軸方向から見て略長円状であって、ロータ径方向における幅が吐出側円弧溝440と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチよりも若干長い。吐出孔442の回転方向側縁は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されており、終端部444の回転方向側縁と一致している。吐出側円弧溝440の回転負方向側縁は、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されており、その先端Eは、吐出ポート始端部の始点Cから回転方向に略2ピッチ弱の距離をおいた位置にある。
図6は、図5における吐出ポート始端部84の近傍の拡大図である。図7は、図6のA−A視断面図である。吐出ポート始端部84は、カムリング端面82の径方向幅のほぼ半分の幅lを有し、回転方向に略1.5〜2ピッチ分の長さ(角度範囲ε)だけ延びるように設けられた溝であり、浅溝部840と深溝部841を有している。幅lは、吐出側円弧溝440の径方向幅と略等しく設けられている。
吸入側背圧円弧溝450の径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430と略等しく、スリット基端部610のロータ径方向寸法と略等しい。吸入側背圧円弧溝450の内径側の縁454は、スリット基端部610の内径側縁よりも若干内径側に位置する。吸入側背圧円弧溝450の外径側の縁455は、スリット基端部610の外径側縁よりも僅かに内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吸入側背圧円弧溝450は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。吸入側背圧円弧溝450は、略4ピッチ分に相当する角度の範囲(吸入側円弧溝430よりも狭い範囲)で形成されている。吸入側背圧円弧溝450の始点aは、吸入側円弧溝430(ノッチ434)の始点Aよりも若干回転方向側であって本体始端部433の回転方向側に隣接する位置にある。吸入側背圧円弧溝450の終点bは、吸入側円弧溝430の終点Bよりも回転負方向側に略0.5ピッチ分に相当する角度だけ離れた位置にある。連通孔451は、プレート41を貫通して形成された凹部であり、z軸方向から見て略長円状であって、ロータ径方向における幅が吸入側背圧円弧溝450と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入側背圧円弧溝450において、始点aから連通孔451までの間には、始端部452が設けられている。z軸方向から見て、始端部452の先端は、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝450の終端部453は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。連通孔451から終端部453までの区間には傾斜が設けられており、連通孔451から終点bへ向かうにつれて徐々に浅くなる。終端部453の(z軸方向)深さは、始端部452の深さよりも浅く設けられている。
吐出側背圧円弧溝460の径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吐出側円弧溝440よりも僅かに小さく、スリット基端部610の径方向寸法よりも若干小さい。吐出側背圧円弧溝460の内径側の縁464は、スリット基端部610の内径側縁よりも若干外径側に位置する。吐出側背圧円弧溝460の外径側の縁465は、スリット基端部610の外径側縁よりも僅かに内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吐出側背圧円弧溝460は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なる径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。吐出側背圧円弧溝460は、略6.5ピッチ弱に相当する角度の範囲(吐出側円弧溝440よりも広い範囲)で形成されている。吐出側背圧円弧溝460の始点cは、吐出領域の始点Cよりも回転負方向側に略1ピッチに相当する角度だけ離れており、第1閉じ込み領域の始端部付近に位置している。吐出側背圧円弧溝460の終点dは、吐出側円弧溝440の終点Dよりも回転方向側に1ピッチ弱に相当する角度だけ離れており、第2閉じ込み領域の終端部近くに位置している。連通孔461は、プレート41を貫通して形成された凹部であって、z軸方向から見た開口断面は略円形状であり、その直径は吐出側背圧円弧溝460の径方向幅と略等しい。
次に、実施例1のポンプ1の作用を説明する。以下、プレート41の各ポート43等を用いて説明するが、フロントボディ42の側についても同様である。
(ポンプ作用)
カムリング8を回転軸Oに対してx軸正方向に偏心して配置した状態でロータ6を回転させることにより、ポンプ室rは回転軸周りに回転しつつ周期的に拡縮する。ポンプ室rが回転方向に拡大するy軸負方向側で、吸入ポート43からポンプ室rに作動油を吸入する。ポンプ室rが回転方向に縮小するy軸正方向側で、ポンプ室rから吐出ポート44へ上記吸入した作動油を吐出する。具体的には、あるポンプ室rに着目すると、吸入領域において、このポンプ室rの回転負方向側のベーン7(以下、「後側ベーン7」という。)が吸入側円弧溝430の終点Bを通過するまで、言い換えると、回転方向側のベーン7(以下、「前側ベーン7」という。)が吐出ポート始端部84,85の始点Cを通過するまで、当該ポンプ室rの容積は増大する。この間、当該ポンプ室rは吸入側円弧溝430と連通しているため、作動油を吸入ポート43から吸入する。第1閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転方向側の面)が吸入側円弧溝430の終点Bと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吐出ポート始端部84,85の始点Cと一致する回転位置では、当該ポンプ室rは吸入ポート43(吸入側円弧溝430)とも吐出ポート始端部84,85とも連通せず、液密に保たれる。当該ポンプ室rの後側ベーン7が吸入側円弧溝430の終点Bを通過(前側ベーン7が吐出ポート始端部84,85の始点Cを通過)した後は、吐出領域において、回転に応じて当該ポンプ室rの容積は減少し、吐出ポート始端部84,85ないし吐出ポート44(吐出側円弧溝440)と連通するため、ポンプ室rから作動油を吐出ポート44へ吐出する。同様に、第2閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転方向側の面)が吐出側円弧溝440の終点Dと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吸入側円弧溝430の始点Aと一致する位置では、当該ポンプ室rは吐出側円弧溝440とも吸入側円弧溝430とも連通せず、液密に保たれる。
カムリング8がx軸正方向側に揺動して偏心量δがゼロでないとき、y軸負方向側では、ポンプ室rの容積はロータ6が回転するにつれて拡大し、ポンプ室rがx軸正方向側でx軸上に位置するとき最大となる。y軸正方向側では、ポンプ室rの容積はロータ6が回転するにつれて縮小し、ポンプ室rがx軸負方向側でx軸上に位置するとき最小となる。図2に示す最大偏心位置で、ポンプ室rの縮小時と拡大時の容積差は最大となり、ポンプ容量も最大となる。一方、カムリング8がx軸負方向側に揺動して偏心量δが最小(ゼロ)となる最小偏心位置では、y軸負方向側でもy軸正方向側でも、ロータ6の回転につれてポンプ室rの容積は拡大も縮小もしない。言い換えると、ポンプ室r間の容積差は最小(ゼロ)となり、ポンプ容量も最小となる。このように、カムリング8の揺動量に応じて容積差が変化し、これに対応してポンプ容量も変化する。具体的には、吐出領域のポンプ室rで圧縮された作動油(及び吐出領域のベーン基端部71の背圧室brで圧縮された作動油)は、吐出ポート44(及び吐出側背圧ポート46)を経て吐出室40gに供給される。吐出室40gの作動油は、制御弁30を通って第1、第2制御室R1,R2に供給され、また吐出通路を通ってCVT100に供給される。ここで第1制御室R1への供給通路と第2制御室R2への供給通路との間にはメータリングオリフィスORが設けられている。よって、第1制御室R1と第2制御室R2とに供給される作動油の圧力は差圧を持つこととなり、この差圧の大きさによってカムリング8の揺動量が決められる。
ロータ6の回転時、ベーン7には遠心力(ベーン7を外径方向へ移動させる力)が作用するため、回転数が十分に高い等、所定の条件が整えば、ベーン7の先端部70はスリット61から突出し、カムリング8の内周面80に摺接する。ベーン先端部70がカムリング内周面80に当接することで、ベーン7の外径方向の移動が規制される。ベーン7がスリット61から突出するとベーン7の背圧室brの容積が拡大し、ベーン7がスリット61へ没入する(収納される)とベーン7の背圧室brの容積が縮小する。カムリング8が回転軸Oに対してx軸正方向に偏心した状態でロータ6が回転すると、カムリング内周面80に摺接する各ベーン7の背圧室brは、回転軸Oの周りで回転しながら周期的に拡縮する。ここで、背圧室brが拡大するy軸負方向側(吸入領域)では、背圧室brに作動油が供給されないと、ベーン7の突出(飛び出し)が阻害され、ベーン先端部70がカムリング内周面80に当接せず、ポンプ室rの液密性が確保されないおそれがある。一方、背圧室brが縮小するy軸正方向側(吐出領域)では、背圧室brから作動油が円滑に排出されないと、ベーン7のスリット61への収納(引込み)が阻害され、ベーン先端部70とカムリング内周面80との摺動抵抗が増加する。これに対し、ポンプ1では、吸入領域では、吸入側背圧ポート45から背圧室brに作動油を供給する。これにより、ベーン7の飛び出し性を向上する。吐出領域では、背圧室brから吐出側背圧ポート46へ作動油を排出する。これにより、ベーン7の摺動抵抗を低減する。
以下、図8を参照しつつ説明する。前側ベーン7(の回転負方向側の面)が第1閉じ込み領域から吐出領域へ移行するとき、吐出ポート始端部84,85の絞り作用により、ポンプ室rと吐出ポート44との連通が急激に行われないため、吐出ポート44及びポンプ室rの圧力の変動が抑制される。例えばz軸負方向側についてみると、ベーン7(の回転負方向側の面)が吐出ポート始端部85の始点Cを越えて回転方向に移動すると、このベーン7を前側ベーンとし、(他のポンプ室rよりも容積が大きい)最大容積であるポンプ室r(以下、「ポンプ室r*」という。)は、容積減少を開始するとともに、吐出ポート始端部85(浅溝部850)との連通を開始する。その後、前側ベーン7が吐出側円弧溝440の始点Eを越えてポンプ室r*が吐出ポート44との連通を開始するまでの間、ポンプ室r*は、その容積を減少しつつ、カムリング内周面80において吐出ポート始端部85の浅溝部850と連通する。前側ベーン7が始点Cを越えた当初は、ポンプ室r*の容積減少量(圧縮量)は小さく、ポンプ室r*内は低圧である(吸入圧Piに近い)。このため、ポンプ室r*内の圧力は吐出ポート始端部85(浅溝部850)内の圧力よりも低い。よって、ポンプ室r*内へは吐出ポート始端部85(浅溝部850)から作動油が流入する。すなわち、作動油は、吐出ポート44に連通する他のポンプ室r(ポンプ室r*よりも回転方向側にあり深溝部851の終端部856が開口するポンプ室)から深溝部851へ流れ、深溝部851から浅溝部850を通ってポンプ室r*へ流れる。例えば、吸入領域においてポンプ室r*に吸入された作動油が空気を含んでいた場合、浅溝部850と連通したポンプ室r*には、吐出ポート44からの高圧の作動油が、浅溝部850とプレート41の面410との間の隙間を通ってポンプ室r*に逆流し、ポンプ室r*内の空気を圧縮する。一方、前側ベーン7が始点Eに近づくまで移動すると、それまでのポンプ室r*への吐出ポート始端部85(浅溝部850)からの作動油の供給と、ポンプ室r*の容積減少とにより、ポンプ室r*内の圧力が吐出ポート始端部85(浅溝部850)内の圧力よりも高くなる場合がある。この場合、ポンプ室r*内の作動油は、浅溝部850を通って深溝部851へ流れ、深溝部851を通ってその終端部856のカムリング内周面80における開口部から他のポンプ室r(ポンプ室r*よりも回転方向側にあり終端部856が開口するポンプ室)へ流れ、(この他のポンプ室rに連通する)吐出ポート44へ流れる。
従来のベーンポンプでは、ポンプ室をポンプ軸方向から閉塞するポンプボディ(プレート)の面であってこれに対してベーンの端面が対向しつつ移動する面に、ポンプ室内の作動油を給排するための溝(吸入ポートや吐出ポート)を設けている。また、上記面に対してベーンの端面が移動し、ポンプ室が上記溝に連通する際、急激な圧力変動を抑制するため、上記溝に連通しかつ流路断面積が上記溝よりも小さい溝を上記面に設け、これにより絞り部を構成している。そして、ポンプの回転に応じて、ポンプ室が上記溝(吸入ポートや吐出ポート)よりも前に先ず絞り部と連通するようにしている。例えば、あるポンプ室が吸入領域から吐出領域へ移行する際、(吐出ポートに連通する)絞り部と連通したポンプ室には、吐出ポートからの高圧の作動油が、絞り部を構成する溝とベーン端面との間の隙間を通ってポンプ室に逆流する。このような作動油の逆流による圧力変化を抑制するため、絞り部として、回転方向に流路断面積が徐々に変化するノッチではなく、ベーンの回転に応じて絞り部の流路断面積の変化が少ない(深さや幅が略一定の)薄溝を設けることも考えられる。しかし、従来のベーンポンプでは、絞り部において作動油の通路(流路周壁)を構成するベーン端面に対して作動油の相対速度が大きくなるため、キャビテーションが発生して騒音が生じるおそれがあった。特に、吸入領域においてポンプ室に吸入された作動油が空気を含んでいた場合、高圧の作動油が急激にポンプ室に逆流(してポンプ室内の空気を圧縮)し、絞り部における作動油の流速が高くなるため、キャビテーションが発生するおそれが高くなる。
以下、実施例1から把握される本発明のポンプ1の効果を列挙する。
(1)駆動軸5により回転駆動されるロータ6と、ロータ6の外周に形成された複数のスリット61の夫々に突没可能に収容されたベーン7と、ロータ6を囲んで配置されるカムリング8と、カムリング8、ロータ6、及びベーン7を内部に収容するポンプボディ4(プレート41、フロントボディ42)と、を備え、ポンプボディ4は、カムリング8及びロータ6の軸方向端面に対向して配置されてカムリング8、ロータ6、及びベーン7と共に複数のポンプ室rを形成する軸方向端面410を有し、ポンプボディ4の軸方向端面410には、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポート43と、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポート44と、が設けられたベーンポンプにおいて、吐出ポート44に連通すると共に、ポンプ室rが吐出領域へ移行する際にこのポンプ室rと連通する絞り部(吐出ポート始端部85)を、互いに対向するカムリング8の軸方向端面83とポンプボディ4の軸方向端面410との間に設けた。
よって、ポンプ室rが吐出領域へ移行する際にキャビテーションの発生を抑制し、これによる騒音を低減できる。
よって、絞り部の流量等の調整や加工が容易である。
よって、絞り部(浅溝部840)における作動油の流れ方向がベーン先端部70の移動方向と平行になることを抑制してキャビテーションの発生をより効果的に抑制し、かつ、絞り部(浅溝部840)における流路長を長くして絞り効果を向上することができる。
よって、キャビテーションをより効果的に低減することができる。
よって、絞り部(吐出ポート始端部84)の絞り機能を向上することができる。
以上、本発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、作動流体として、油(ATF)以外の流体を用いることも可能である。実施例1では、ベーン7(スリット61)を、ロータ径方向に沿って延びるように設けたが、ロータ径方向に対して傾斜して設けてもよい。実施例1では、カムリング内周が円筒状でありカムリングが揺動することでポンプ室の容積を変化させるタイプのベーンポンプを例にしたが、カムリングの内周が異形(非円筒状)でありカムリングがポンプボディに固定されたままカムリング内周の形状に沿ってベーンが摺接することでポンプ室の容積を変化させるタイプのベーンポンプに本発明を適用することとしてもよい。この場合、ポンプ吐出量を可変制御するために流量制御装置を別途設けることが可能である。また実施例1では、プレート41とフロントボディ42の両方に吸入ポート、吐出ポート、吸入側背圧ポート、吐出側背圧ポートを形成したが、一方側にのみ設けるようにしてもよい。
4 ポンプボディ
43 吸入ポート
44 吐出ポート
410 軸方向端面
5 駆動軸
6 ロータ
61 スリット
7 ベーン
8 カムリング
82,83 軸方向端面
84,85 吐出ポート始端部(絞り部)
840 浅溝部
841 深溝部
r ポンプ室
Claims (5)
- 駆動軸により回転駆動されるロータと、
前記ロータの外周に形成された複数のスリットの夫々に突没可能に収容されたベーンと、
前記ロータを囲んで配置されるカムリングと、
前記カムリング、前記ロータ、及び前記ベーンを内部に収容するポンプボディと、を備え、
前記ポンプボディは、前記カムリング及び前記ロータの軸方向端面に対向して配置されて前記カムリング、前記ロータ、及び前記ベーンと共に複数のポンプ室を形成する軸方向端面を有し、
前記ポンプボディの前記軸方向端面には、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室の容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポートと、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室の容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポートと、が設けられたベーンポンプにおいて、
前記吐出ポートに連通すると共に、前記ポンプ室が吐出領域へ移行する際に該ポンプ室と連通する絞り部を、互いに対向する前記カムリングの前記軸方向端面と前記ポンプボディの前記軸方向端面との間に設けた
ことを特徴とするベーンポンプ。 - 請求項1に記載のベーンポンプにおいて、
前記絞り部は、前記カムリングの前記軸方向端面に設けられた溝を有する
ことを特徴とするベーンポンプ。 - 請求項2に記載のベーンポンプにおいて、
前記溝は、
前記吐出ポートよりも浅く、内径側で前記カムリングの内周面に開口する浅溝部と、
前記浅溝部よりも深く、前記浅溝部の外径側に連通すると共に、ポンプ回転方向側端で前記カムリングの内周面に開口する深溝部と、を有する
ことを特徴とするベーンポンプ。 - 請求項3に記載のベーンポンプにおいて、
前記カムリングの内周面に開口する前記浅溝部の内径側の縁に面取り部を設けたことを特徴とするベーンポンプ。 - 請求項3又は4に記載のベーンポンプにおいて、
前記深溝部のポンプ回転方向側の端部は、ポンプ回転方向に向かうにつれて内径側に偏倚するように設けられていることを特徴とするベーンポンプ。
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