JP2012163040A - ベーンポンプ - Google Patents

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悟多 熊坂
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Abstract

【課題】 騒音を低減することが可能なベーンポンプを提供すること。
【解決手段】 吸入側圧力(吸入圧Pi)が導入されるとともに、吸入領域に位置する複数のベーン7を収容するスリット61の基端部に連通する吸入側背圧ポート45,53と、吸入側背圧ポート45,53の圧力を、吐出側圧力(吐出圧Pd)よりも低い範囲で吸入側圧力よりも高く増圧する吸入側背圧ポート増圧手段(連通路403等, 422等、溝11,13)を設けた。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ベーンポンプに関する。
従来、ロータのスリット溝にベーンを出没可能に収容し、カムリング内周面とロータ外周面とベーンとの間に形成したポンプ室の容積を変化させるベーンポンプが知られている。例えば、特許文献1に記載のベーンポンプは、ベーンの先端部がポンプの吐出領域または吸込領域のいずれかにあるとき、当該ベーンの基端部に作用させる圧力(背圧)をベーン先端部に作用する圧力に近づける。これにより、ベーン先端部がカムリング内周面に摺動するときの抵抗を減らし、ポンプを駆動する動力の損失を低減することを図っている。
特開平7−259754号公報
しかし、特許文献1に記載のベーンポンプでは、騒音が発生するという問題があった。本発明の目的とするところは、騒音を低減することができるベーンポンプを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のベーンポンプは、好ましくは、吸入領域に位置するベーンの基端部に作用させる圧力を、吐出側圧力よりも低い範囲で、吸入側圧力よりも高く増圧することとした。
よって、騒音を低減することができる。
ベーンポンプが適用されるCVTのブロック図である。 ベーンポンプの内部を回転軸方向から見た断面図である。 ベーンポンプを回転軸を通る平面で切った断面図である。 リアボディを回転軸方向から見た図である。 プレートを回転軸方向から見た図である。 フロントボディを回転軸方向から見た図である。 油圧回路の概略図である。 実施例2のプレートを回転軸方向から見た図である。
[実施例1]
[構成]
ベーンポンプ1(以下、単に「ポンプ1」という。)は、自動車の油圧式アクチュエータ、具体的にはベルト式の連続可変トランスミッション(CVT100)への油圧供給源として使用される。図1は、CVT100の一例を示すブロック図である。コントロールバルブ200内には、CVTコントロールユニット300により制御される各種のバルブ201〜213が設けられている。ポンプ1から吐出された作動油は、コントロールバルブ200を介してCVT100の各部(プライマリプーリ101、セカンダリプーリ102、フォワードクラッチ103、リバースブレーキ104、トルクコンバータ105、潤滑・冷却系106等)に供給される。なお、他の油圧式アクチュエータ、例えばパワーステアリングシステムの油圧供給源としてポンプ1を使用しても良い。ポンプ1は内燃機関のクランクシャフトにより駆動され、作動流体を吸入・吐出する。作動流体として作動油、具体的にはATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)を用いる。作動油(ATF)は、弾性係数が比較的小さく、僅かな容積変化に対して圧力が大きく変化する性質を有している。
図2は、ポンプ1の内部を回転軸方向から見た一部断面図である。説明の便宜上、三次元直交座標系を設け、ポンプ1の径方向にx軸及びy軸、ポンプ1の回転軸方向にz軸を設定する。ポンプ1の回転軸O上にz軸を設け、回転軸Oに対してカムリング8の中心軸Pが揺動する方向にx軸を設け、x軸及びz軸に直交する方向にy軸を設ける。図2の紙面上方をz軸正方向とし、Oに対してPが離れる側(第2閉じ込み領域に対する第1閉じ込み領域の側。図3参照。)をx軸正方向とし、吸入領域に対して吐出領域の側をy軸正方向とする。 ポンプ1は、吐出容量(1回転当たりに吐出する流体量。以下、ポンプ容量という。)を可変にできる可変容量形であり、作動油を吸入・吐出するポンプ部2と、吐出容量を制御する制御部3とを、ポンプハウジングとしてのボディ4内に一体のユニットとして有している。
ポンプ部2は主な構成要素として、クランクシャフトにより駆動される駆動軸(回転軸)5と、駆動軸5により回転駆動されるロータ6と、ロータ6の外周に形成された複数のスリット61のそれぞれに突没可能に収容されたベーン7と、ロータ6を囲んで配置されるカムリング8と、カムリング8を囲んで配置されるアダプタリング9とを有している。ボディ4は、収容凹部40b内にロータ6、ベーン7及びカムリング8を収容するリアボディ40(ポンプハウジング)と、リアボディ40の収容凹部40bの底部40cに収容されると共に、カムリング8及びロータ6の軸方向一側面に配置され、ロータ6、ベーン7及びカムリング8と共に複数のポンプ室rを形成するプレート(サイドプレート)41と、リアボディ40の収容凹部40bの開口を閉塞するとともに、カムリング8及びロータ6の軸方向他側面に配置され、ロータ6、ベーン7及びカムリング8とともに複数のポンプ室rを形成するフロントボディ(ポンプカバー)42と、を有している。
(ポンプ部2の構成)
リアボディ40には、z軸方向に延びる有底円筒状の収容凹部40bが形成されている。収容凹部40bの内周には、円環状のアダプタリング9が設置されている。アダプタリング9の内周面は、z軸方向に延びる略円筒状の収容孔90を構成している。収容孔90のx軸正方向側には、yz平面と略平行な第1平面部91が形成されている。収容孔90のx軸負方向側には、yz平面と略平行な第2平面部92が形成されている。第2平面部92のz軸方向略中央には、段差部920がx軸負方向側に形成されている。収容孔90のy軸正方向側であって回転軸Oに対して若干x軸正方向寄りには、z軸と略平行な第3平面部93が形成されている。第3平面部93には、z軸方向から見て半円状の溝(凹部930)が形成されている。凹部930を挟んだ両側には、アダプタリング9を径方向に貫通する第1,第2連通路931,932が形成されている。凹部930のx軸正方向側における第3平面部93には第1連通路931が開口し、第3平面部93のx軸負方向側に隣接して第2連通路932が開口している。収容孔90のy軸負方向側には、xz平面と略平行な第4平面部94が形成されている。第4平面部94には、z軸方向から見て矩形状の溝(凹部940)が形成されている。
アダプタリング9はカムリング8を取り囲むように配置されており、アダプタリング9の収容孔90内には、円環状のカムリング8が揺動自在に設置されている。z軸方向から見て、カムリング8の内周面(カムリング内周面)80及び外周面(カムリング外周面)81は略円形であり、カムリング8の径方向幅は略一定である。y軸正方向側のカムリング外周面81には、z軸方向から見て半円状の溝(凹部810)が形成されている。x軸負方向側のカムリング外周面81には、x軸方向に軸を有する略円筒状の凹部811が所定深さまで穿設されている。アダプタリング内周の凹部930とカムリング外周の凹部810との間には、z軸方向に延びるピンPINが、これらの凹部930,810に挟み込まれるように、各凹部930,810に当接して設置される。アダプタリング内周の凹部940には、シール部材S1が設置される。シール部材S1は、カムリング外周面81のy軸負方向側に当接する。アダプタリング内周の段差部920には、弾性部材としてのスプリングSPGの一端が設置される。スプリングSPGはコイルスプリングである。カムリング外周の凹部811には、スプリングSPGの他端が嵌挿される。スプリングSPGは圧縮状態で設置され、アダプタリング9に対してカムリング8をx軸正方向側に常時付勢する。
アダプタリング9の収容孔90のx軸方向寸法、すなわち第1平面部91と第2平面部92との間の距離は、カムリング外周面81の直径よりも大きく設けられている。カムリング8は、アダプタリング9に対して平面部93で支持され、平面部93を支点にxy平面内で揺動自在に設置されている。ピンPINはアダプタリング9に対するカムリング8の位置ズレ(相対回転)を抑制する。カムリング8の揺動は、x軸正方向側では、カムリング外周面81がアダプタリング9の第1平面部91に当接することで規制され、x軸負方向側では、カムリング外周面81がアダプタリング9の第2平面部92に当接することで規制される。カムリング8の中心軸Pの回転軸Oに対する偏心量をδとする。カムリング外周面81が第2平面部92に当接する位置(最小偏心位置)では、偏心量δが最小値となる。カムリング外周面81が第1平面部91に当接する図2の位置(最大偏心位置)では、偏心量δが最大となる。カムリング8が揺動する際には、平面部93がカムリング外周面81に摺接するとともに、シール部材S1がカムリング外周面81に摺接する。
ボディ4(リアボディ40、プレート41、フロントボディ42)には駆動軸5が回転自在に軸支されている。駆動軸5のz軸正方向側は、チェーンを介して内燃機関のクランクシャフトに結合されており、クランクシャフトに同期して回転する。駆動軸5の外周には、ロータ6が同軸に固定(セレーション結合)されている。ロータ6は、駆動軸5とともに、回転軸Oの周りに、図2の時計回り方向に回転する。ロータ6は略円柱状であり、カムリング8の内周側に設置されている。言い換えると、カムリング8は、ロータ6を取り囲むように配置されている。ロータ6の外周面(ロータ外周面)60とカムリング内周面80とプレート41、フロントボディ42との間に、環状室R0が形成されている。
ロータ6には、複数の溝(スリット61)が放射状に形成されている。各スリット61は、z軸方向から見て、ロータ外周面60から回転軸Oに向かって所定深さまで、ロータ径方向に延びて直線状に設けられており、ロータ6のz軸方向全範囲にわたって形成されている。スリット61は、ロータ6を周方向に等分割する位置に11箇所、形成されている。各スリット61の回転軸Oに向かう側(以下、「内径側」という。)の端部(スリット基端部610)は、略円筒状に形成されており、z軸方向から見て、ロータ周方向におけるスリット本体部611の幅よりも大径の略円形である。なお、スリット基端部610を特に円筒状に形成しなくてもよく、例えばスリット本体部611と同様の溝形状としてもよい。ベーン7は、略矩形状の板部材(羽根)であり、複数(11枚)設けられ、各スリット61に1枚ずつ出没可能に収容されている。ベーン7の回転軸Oから離れる側(以下、「外径側」という。)の先端部(ベーン先端部70)は、カムリング内周面80に対応して緩やかな曲面状に形成されている。なお、スリット61とベーン7の数は11に限らない。スリット基端部610と、このスリット61に収容されたベーン7の内径側の端部(受圧部としてのベーン基端部71)との間には、このベーン7を外径側へ付勢する油圧を発生する圧力室としての背圧室brが形成されている。
環状室R0は、複数のベーン7によって、複数(11個)のポンプ室(容積室)rに区画されている。以下、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向。以下、単に「回転方向」といい、ロータ6の逆回転方向を「回転負方向」という。)において隣り合うベーン7同士の間(2つのベーン7の側面間)の距離を、1ピッチという。1つのポンプ室rの回転方向幅は、1ピッチであり不変である。カムリング8の中心軸Pが回転軸Oに対して(x軸正方向側に)偏心した状態では、x軸負方向側からx軸正方向側に向かうにつれて、ロータ外周面60とカムリング内周面80との間のロータ径方向距離(ポンプ室rの径方向寸法)が大きくなる。この距離の変化に応じ、ベーン7がスリット61から出没することで、各ポンプ室rが隔成されるとともに、x軸正方向側のポンプ室rのほうが、x軸負方向側のポンプ室rよりも、容積が大きくなる。このポンプ室rの容積の差異により、x軸を境としてy軸負方向側では、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向)であるx軸正方向側に向かうにつれて、ポンプ室rの容積が拡大する一方、x軸を境としてy軸正方向側では、ロータ6の回転方向(図2の時計回り方向)であるx軸負方向側に向かうにつれて、ポンプ室rの容積が縮小する。
ロータ外周面60には、各ベーン7に対応する位置に、z軸方向から見て略台形状の突出部62が設けられている。突出部62は、ロータ6のz軸方向全範囲にわたって、ロータ外周面60から所定高さまで突出するように形成されている。突出部62の略中央位置には、各スリット61の開口部が設けられている。スリット61のロータ径方向長さ(突出部62及びスリット基端部610を含む)は、ベーン7のロータ径方向長さと略同じに設けられている。突出部62を設けることで、スリット61のロータ径方向長さが所定以上確保され、例えば第1閉じ込み領域でベーン7がスリット61から最大限突出したとしてもスリット61におけるベーン7の保持性が確保されている。言い換えると、突出部62によりベーン7の保持性を向上しつつ、ロータ外周面60から突出部62以外の肉を除いているため、この除肉分だけポンプ室rの容積を大きくしてポンプ効率を向上し、かつロータ6全体を軽量化して動力損失を軽減している。
(制御部3の構成)
制御部3は、リアボディ40に設けられており、制御弁30と第1、第2通路31,32と制御室R1,R2とを有している。アダプタリング内周面90とカムリング外周面81との間の空間は、そのz軸負方向側がプレート41に、z軸正方向側がフロントボディ42により封止される一方、平面部93とシール部材S1とにより、2つの制御室R1,R2に液密に隔成されている。x軸正方向側には第1制御室R1が形成され、x軸負方向側には第2制御室R2が形成されている。なお、上記規制位置で、カムリング外周とアダプタリング内周との間には所定の隙間が確保されており、第1、第2制御室R1,R2の容積は所定以上でありゼロとならない。第1制御室R1にはアダプタリング9の第1連通路931が開口し、第2制御室R2には第2連通路932が開口している。リアボディ40に形成された第1通路31は第1連通路931と連通して第1制御油路を構成し、第2通路32は第2連通路932と連通して第2制御油路を構成している。制御弁30は油圧制御弁(スプール弁)であり、リアボディ40内のバルブ収容孔40aに収容されたスプール302を、ソレノイド301により駆動することで、第1通路31(第1制御室R1)及び第2通路32(第2制御室R2)への作動油の供給を切り替える。制御弁30の作動は、CVTコントロールユニット300により、例えば内燃機関の回転数とスロットルバルブ開度とに基づき制御される。
(ボディ4の構成)
図3は、ポンプ1を駆動軸5の回転中心Oを通る平面で切った部分断面図である。図4は、リアボディ40をz軸正方向側から見た正面図である。図3は図4のI-I視断面に略相当する。図5は、プレート41をz軸正方向側から見た平面図である。プレート41には、吸入ポート43と、吐出ポート44と、吸入側背圧ポート45と、吐出側背圧ポート46と、ピン設置孔47と、貫通孔48とが形成されている。ピン設置孔47にはピンPINが挿入され固定設置される。貫通孔48には駆動軸5が挿入され回転自在に設置される。駆動軸5の外周面と貫通孔48の内周面との間には所定の隙間CL2が設けられている。各ポート43〜46等は、プレート41のz軸正方向側の面410に形成されている。
吸入ポート43は、外部から吸入側のポンプ室rに作動油を導入する際の入り口となる部分であり、図5に示すように、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が拡大するy軸負方向側の区間に設けられている。吸入ポート43は、吸入側円弧溝430と吸入孔431と連通孔432とを有している。吸入側円弧溝430は、プレート41の面410に形成され、ポンプ吸入側の油圧が導入される溝であって、吸入側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吸入側円弧溝430に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して吸入側円弧溝430のx軸負方向側の始点Aとx軸正方向側の終点Bとがなす略4.5ピッチ分に相当する角度αの範囲に、ポンプ1の吸入領域が設けられている。吸入側円弧溝430の始点A及び終点Bは、x軸に対して略0.5ピッチに相当する角度βだけy軸負方向側に離れた位置に設けられている。吸入側円弧溝430の回転方向略中央には、吸入孔431が開口している。吸入側円弧溝430には、吸入孔431に隣接して回転負方向寄り(始点A側)に、連通孔432が開口している。
吐出ポート44は、吐出側のポンプ室rから外部へ作動油を吐出する際の出口となる部分であり、ロータ6の回転に応じてポンプ室rの容積が縮小するy軸正方向側の区間に設けられている。吐出ポート44は、吐出側円弧溝440と吐出孔442を有している。吐出側円弧溝440は、面410に形成され、ポンプ吐出側の油圧が導入される溝であって、吐出側のポンプ室rの配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吐出側円弧溝440に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して吐出側円弧溝440のx軸正方向側の始点Cとx軸負方向側の終点Dとがなす角度αの範囲に、ポンプ1の吐出領域が設けられている。吐出側円弧溝440の始点C及び終点Dは、x軸に対して略0.5ピッチ分に相当する角度βだけy軸正方向側に離れた位置に設けられている。吐出側円弧溝440の回転方向側の終端部444には、吐出孔442が開口している。
第1閉じ込み領域及び第2閉じ込み領域は、この領域内にあるポンプ室rの作動油を閉じ込め、吐出側円弧溝440と吸入側円弧溝430とが連通することを抑制する領域であり、x軸に跨る区間に設けられている。吸入側円弧溝430の終点Bと吐出側円弧溝440の始点Cとがなす角度2βの範囲に第1閉じ込み領域が設けられ、吐出側円弧溝440の終点Dと吸入側円弧溝430の始点Aとがなす角度2βの範囲に第2閉じ込み領域が設けられている。
プレート41には、ベーン7の根元(背圧室br、スリット基端部610)に連通する背圧ポート45,46が、吸入側と吐出側でそれぞれ分離して設けられている。吸入側背圧ポート45は、吸入領域の大部分に位置する複数のベーン7の背圧室brと吸入ポート43とを連通するポートである。ベーン7が「吸入領域に位置する」とは、z軸方向から見て、ベーン7のベーン先端部70が吸入ポート43(吸入側円弧溝430)と重なっていることをいう。吸入側背圧ポート45は、吸入側背圧円弧溝450と連通孔451とを有している。吸入側背圧円弧溝450は、面410に形成され、ポンプ吸入側の油圧が導入される溝であって、ベーン7の背圧室br(ロータ6のスリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝450には、径方向で吸入側円弧溝430の連通孔432と略重なる位置に、連通孔451が開口している。
吐出側背圧ポート46は、吐出領域、第1閉じ込み領域、及び第2閉じ込み領域の大半に位置する複数のベーン7の背圧室brに連通するポートである。ベーン7が「吐出領域等に位置する」とは、z軸方向から見て、ベーン7のベーン先端部70が吐出ポート44(吐出側円弧溝440)等と重なっていることをいう。吐出側背圧ポート46は、吐出側背圧円弧溝460と連通孔461とを有している。吐出側背圧円弧溝460は、面410に形成され、ポンプ吐出側の油圧が導入される溝であって、ベーン7の背圧室br(スリット基端部610)の配置に沿って、回転軸Oを中心とする略円弧状に形成されている。吐出側背圧円弧溝460には、y軸と略重なる位置に、連通孔461が開口している。また、吐出側背圧円弧溝460の回転負方向寄り(始点c側)は、回転方向において第1閉じ込み領域と重なり、吐出側背圧円弧溝460の回転方向寄り(終点d側)は、第2閉じ込み領域の大半と重なっている。
リアボディ40の内部には、軸受保持孔40d、低圧室40e、高圧室40f、及び吐出室40gが形成されている。軸受保持孔40dは、底部40cのz軸正方向端面に開口する有底円筒状の凹部であり、回転軸Oを中心に底部40cのz軸方向所定位置まで穿設されている。軸受保持孔40dの内周には、軸受としてのブッシュ10が固定設置されている。ブッシュ10は薄肉円筒状の支持・緩衝部材であり、ブッシュ10の内周側には駆動軸5のz軸負方向端部が挿入され、ブッシュ10に対して回転自在に設置されている。駆動軸5のz軸負方向端部の外周面が回転方向に摺接するブッシュ10の内周面には、溝11が設けられている。
低圧室40eは、リザーバ設置孔400と第1連通路401と吸入通路402と第2連通路403と吸入口404を有している。リザーバ設置孔400は、リアボディ40のx軸正方向側かつy軸負方向側かつz軸負方向側において外部に開口する略円筒状の空間であり、作動油を貯留しポンプ1へ供給可能なリザーバRESが設置される。リザーバRESにおける作動油の圧力は略大気圧である。リザーバ設置孔400における開口部の反対側の端部には、第1連通路401と吸入通路402が接続している。第1連通路401は、リアボディ40のy軸負方向端部内をz軸正方向に延びてリアボディ40の(フロントボディ42との接合面である)z軸正方向端面に開口する。吸入通路402は、底部40cの内部に内径側に延びるように形成され、その内径側の端部において第2連通路403と吸入口404に接続している。吸入口404は、吸入通路402の内径側の端部のz軸正方向側に接続すると共に、z軸方向に延びるように形成され、底部40cのz軸正方向端面に略扇形に開口する。吸入口404は、底部40cのy軸負方向側に、y軸と重なる位置であって若干x軸負方向寄りに、回転軸Oの周りを略60°の範囲で取り囲むように、底部40cに穿設されている。第2連通路403は、吸入通路402の内径側の端部のz軸負方向側に接続すると共に、内径側に向かって延びるように形成され、軸受保持孔40dのz軸負方向端部に接続している。第2連通路403は、軸受保持孔40dのz軸負方向側の内周面と、駆動軸5及びブッシュ10のz軸負方向端面との間の隙間CL1に開口している。
プレート41には、第3,第4連通路412,413及び第5,第6連通路415,416がz軸方向に貫通形成されている。第3連通路412は、吸入ポート43の連通孔432に開口すると共に、z軸負方向に向かって延びるように形成され、プレート41のz軸負方向端面411の外径側に開口している。第4連通路413は、吸入側背圧ポート45の連通孔451に開口すると共に、z軸負方向に向かって延びるように形成され、プレート41のz軸負方向端面411の内径側に開口している。第5連通路415は、吐出ポート44の吐出孔442に開口すると共に、z軸負方向側に向かって延びるように形成され、プレート41のz軸負方向端面411の外径側に開口している。第6連通路416は、吐出側背圧ポート46の連通孔461に開口すると共に、z軸負方向側に向かって延びるように形成され、プレート41のz軸負方向端面411の内径側に開口している。リアボディ40の低圧室40e(吸入口404)の開口部は、プレート41のz軸負方向端面411における第3,第4連通路412,413の開口部を覆うように設けられている。プレート41のz軸正方向端面410には、貫通孔48と吸入側背圧ポート45(連通孔451)を連通させる径方向溝414が、プレート41のz軸方向所定深さまで設けられている。溝414は、吸入側背圧ポート45(連通孔451)の内周に接続すると共に、プレート41の径方向に延び、貫通孔48の内周に接続している。溝414の周方向幅は、連通孔451の周方向幅よりも若干狭く設けられている。
高圧室40fは、底部40cのz軸正方向端面に開口する凹部であり、底部40cのx軸正方向側かつy軸正方向寄りに、回転軸Oの周りを略120°の範囲で取り囲むように、底部40cのz軸方向所定位置まで穿設されている。吐出室40gは、底部40cのz軸正方向端面に開口する凹部であり、底部40cのx軸負方向側かつy軸正方向寄りに、回転軸Oの周りを略60°の範囲で取り囲むように、底部40cのz軸方向所定位置まで穿設されている。高圧室40fの開口部は、プレート41のz軸負方向端面411における第6連通路416の開口部を覆うように設けられている。吐出室40gの開口部は、プレート41のz軸負方向端面411における第5連通路415の開口部を覆うように設けられている。底部40cのz軸正方向端面には、高圧室40fと吐出室40gの開口の外周を取り囲むように、環状のシール溝408が形成されている。このシール溝408には環状のシール部材S2が設置される。プレート41のz軸負方向側の面411がリアボディ40の底部40cと対向して設置された状態では、シール部材S2がz軸方向に圧縮されてプレート41の面411に密着し、これにより高圧室40fと吐出室40gが液密に保たれる。シール部材S2によって、シール部材S2の外周側の低圧領域と内周側の高圧領域とが画成されている。
図7は、ボディ4内において各部を接続する油圧回路(作動油の連通路)を示す。図7(a)は低圧(吸入)側、図7(b)は高圧(吐出)側の回路の概略を夫々示す。図7(a)に示すように、リザーバRESは、リザーバ設置孔400を介して低圧室40eに連通し、低圧室40eは第3連通路412を介して吸入ポート43(連通孔432)に連通している。また、低圧室40eは第4連通路413を介して吸入側背圧ポート45(連通孔451)に連通している。また、低圧室40eは、第2連通路403及び隙間CL1を介してブッシュ10の溝11に連通している。溝11は、隙間CL2及び溝414を介して吸入側背圧ポート45(連通孔451)に連通している。図7(b)に示すように、吐出ポート44(吐出孔442)は第5連通路415を介して吐出室40gに連通し、吐出室40gは、メータリングオリフィスORを介してポンプ1の外部のCVT100に吐出圧を供給する吐出通路49に連通している。吐出側背圧ポート46(連通孔461)は、第6連通路416を介して高圧室40fに連通している。高圧室40fは、リアボディ40内の連通路を介して、吐出室40gに連通している。
図6は、フロントボディ42をz軸負方向側から見た正面図である。図3は図6のII-II視断面に略相当する。フロントボディ42のz軸負方向端面50には、吸入ポート51及び吐出ポート52と、吸入側背圧ポート53及び吐出側背圧ポート54が、夫々、プレート41に形成された吸入ポート43及び吐出ポート44と、吸入側背圧ポート45及び吐出側背圧ポート46に対して、略対応するz軸方向位置及び形状で形成されている。吸入ポート51には、吸入側円弧溝510と吸入孔511と連通孔512が設けられている。吐出ポート52には、吐出側円弧溝520が設けられており、吐出孔が設けられていない。吸入側背圧ポート53には、吸入側背圧円弧溝530と連通孔531が設けられている。吐出側背圧ポート54には、吐出側背圧円弧溝540と始端部541が設けられており、連通孔が設けられていない。フロントボディ42の内部には、ピン設置孔55、軸受保持孔42d及び低圧室42eが形成されている。ピン設置孔55にはピンPINが挿入され固定設置される。軸受保持孔42dは、フロントボディ42のz軸負方向端面50に開口する有底円筒状の凹部であり、回転軸Oを中心にフロントボディ42のz軸方向所定深さまで穿設されている。軸受保持孔42dの内周には、軸受としてのブッシュ12が固定設置されている。ブッシュ12の内周側には駆動軸5のz軸正方向部分が挿入され、ブッシュ12に対して回転自在に設置されている。駆動軸5の外周面が回転方向に摺接するブッシュ12の内周面には、溝13が設けられている。
低圧室42eは、第7連通路420と吸入通路421と第8〜第10連通路422〜424を有している。第7連通路420は、フロントボディ42のy軸負方向端部内をz軸負方向に延びて(リアボディ40と接合する)z軸負方向端面50に開口すると共に、リアボディ40の第1連通路401の開口部とz軸方向で対向し、第1連通路401と接続する。吸入通路421は、フロントボディ42の内部に形成され、x軸正方向側かつy軸負方向側かつz軸正方向側において開口部をキャップCにより閉塞される空間である。吸入通路421におけるy軸負方向側かつz軸負方向側の端部には、第1連通路420が接続している。第8連通路422は、吸入通路421の内径側の端部のz軸正方向側に接続すると共に、内径側に向かって延びるように形成され、軸受保持孔42dのz軸正方向端部に接続している。第8連通路422は、軸受保持孔42dのz軸正方向側の内周面と、駆動軸5の外周面及びブッシュ12のz軸正方向端面との間の隙間CL3に開口している。第9連通路423は、吸入通路421の外径側かつz軸負方向側に接続すると共に、z軸負方向に向かって延びるように形成され、吸入ポート51の連通孔512に開口している。第10連通路424は、吸入通路421の内径側かつz軸負方向端に接続すると共に、z軸負方向に向かって延びるように形成され、吸入側背圧ポート53の連通孔531に開口している。フロントボディ42のz軸負方向端面50には、軸受保持孔42dのz軸負方向端部(軸受保持孔42dのz軸負方向側の内周面と、駆動軸5の外周面と、ブッシュ12のz軸負方向端面との間の隙間CL4)と吸入側背圧ポート53を連通させる径方向溝425が、フロントボディ42のz軸方向所定深さまで設けられている。溝425は、吸入側背圧ポート53の内周に接続すると共に、フロントボディ42の径方向に延び、軸受保持孔42dの内周に接続している。溝425の周方向幅は、連通孔531の周方向幅よりも若干狭く設けられている。
図7(a)に示すように、リザーバRESは、リザーバ設置孔400を介してリアボディ40の低圧室40eに連通し、低圧室40eは第1連通路401及び第7連通路420を介してフロントボディ42の低圧室42eに連通している。低圧室42eは第9連通路423を介して吸入ポート51(連通孔512)に連通している。また、低圧室42eは第10連通路424を介して吸入側背圧ポート53(連通孔531)に連通している。また、低圧室42eは、第8連通路422及び隙間CL3を介してブッシュ12の溝13に連通している。溝13は、隙間CL4及び溝425を介して吸入側背圧ポート53に連通している。図7(b)に示すように、吐出ポート52はリアボディ40の吐出ポート44(吐出孔442)を介して吐出室40gに連通している。
吐出側背圧ポート54は、リアボディ40の吐出側背圧ポート46(連通孔461)を介して高圧室40fに連通している。
次に、プレート41の各ポート43〜46等と、フロントボディ42の各ポート51〜54等の詳細について説明する。
(プレート41の吸入ポートの構成)
吸入側円弧溝430の径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、カムリング8が最小偏心位置にあるときの環状室R0の径方向幅と略等しい(図2参照)。吸入側円弧溝430の内径側の縁437は、ロータ外周面60(突出部62を除く)よりも若干外径側に位置する。吸入側円弧溝430の外径側の縁438は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも若干外径側に位置し、その終端側で、最大偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80よりも僅かに外径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、吸入側の各ポンプ室rは、z軸方向から見て吸入側円弧溝430と重なり、吸入側円弧溝430と連通している。吸入孔431は、z軸方向から見て略長円状であり、径方向幅が吸入側円弧溝430と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入孔431は、プレート41のz軸方向所定深さまで形成された凹部であり、y軸と重なる位置に形成されている。連通孔432は、吸入孔431と同様の形状で、プレート41のz軸方向所定深さまで形成された凹部である。吸入側円弧溝430の始端部435には、回転負方向に凸の略半円弧状に形成された本体始端部433と、本体始端部433に連続するノッチ434とが形成されている。ノッチ434は、本体始端部433からポンプ回転方向と回転負方向に延びるように、略0.5ピッチの長さだけ形成されており、その先端は始点Aと一致している。ノッチ434は、z軸方向から見て、回転方向に向かうにつれて徐々に径方向幅が大きくなる略鋭三角形状に設けられている。ノッチ434の径方向幅の最大値は、吸入側円弧溝430の幅よりも小さく設けられている。ノッチ434の(z軸方向)深さは、回転方向に向かうにつれてゼロから徐々に増加する。すなわち、ノッチ434の流路断面積は、吸入側円弧溝430の本体部よりも小さく、ノッチ434は、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を構成している。本体始端部433から連通孔432までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に深くなるように形成されている。吸入側円弧溝430の終端部436は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入孔431から終端部436までの間は、傾斜が設けられており、回転方向に徐々に浅くなるように形成されている。
(プレート41の吐出ポートの構成)
吐出側円弧溝440の径方向幅は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430の径方向幅よりも若干小さい。吐出側円弧溝440の内径側の縁446は、(突出部62を除く)ロータ外周面60よりも若干外径側に位置する。吐出側円弧溝440の外径側の縁447は、最小偏心位置にあるカムリング8のカムリング内周面80と略重なる。吐出側の各ポンプ室rは、カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て吐出側円弧溝440と重なり、吐出側円弧溝440と連通している。吐出孔442は、プレート41のz軸方向所定深さまで形成された凹部であり、z軸方向から見て略長円状であって、ロータ径方向における幅が吐出側円弧溝440と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチよりも若干長い。吐出孔442の回転方向側縁は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されており、終端部444の回転方向側縁と一致している。(回転方向で吸入側円弧溝430の終点Bと対向する)吐出側円弧溝440の始端部443の先端は、z軸方向から見て略矩形状に形成されており、始点Cを含んで径方向に延びる縁を有している。始端部443は、始点Cから半円弧状の縁445まで延びて形成されている。縁445の回転負方向側の先端Eは、始点Cから回転方向に略2ピッチ弱の距離をおいた位置にある。始端部443は、縁445から吐出孔442までの間に設けられた本体部448よりも溝深さが浅い。始点Cから縁445に至るまで傾斜が設けられており、縁445に向かうにつれて徐々に深くなる。始端部443は、その流路断面積が本体部448よりも小さく、かつ回転方向に向かうにつれて徐々に(z軸方向)深さが大きくなる形状に設けられたオリフィス溝であり、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を構成している。吸入側円弧溝430の終点Bと吐出側円弧溝440の始点Cとの間の面410には溝が設けられておらず、この区間に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して終点Bと始点Cとがなす角度2βの範囲に、ポンプ1の第1閉じ込み領域が設けられている。第1閉じ込み領域の角度範囲は、略1ピッチ分に相当する。同様に、吐出側円弧溝440の終点Dと吸入側円弧溝430の始点Aとの間の面410には溝が設けられておらず、この区間に対応する角度範囲、すなわち回転軸Oに対して終点Dと始点Aとがなす角度2βの範囲に、第2閉じ込み領域が設けられている。第2閉じ込み領域の角度範囲は、略1ピッチ分に相当する。
(プレート41の吸入側背圧ポートの構成)
吸入側背圧円弧溝450の径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吸入側円弧溝430と略等しく、スリット基端部610のロータ径方向寸法と略等しい。吸入側背圧円弧溝450の内径側の縁454は、スリット基端部610の内径側縁よりも若干内径側に位置する。吸入側背圧円弧溝450の外径側の縁455は、スリット基端部610の外径側縁よりも僅かに内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吸入側背圧円弧溝450は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なるロータ径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。吸入側背圧円弧溝450は、略4ピッチ分に相当する角度の範囲(吸入側円弧溝430よりも狭い範囲)で形成されている。吸入側背圧円弧溝450の始点aは、吸入側円弧溝430(ノッチ434)の始点Aよりも若干回転方向側であって本体始端部433の回転方向側に隣接する位置にある。吸入側背圧円弧溝450の終点bは、吸入側円弧溝430の終点Bよりも回転負方向側に略0.5ピッチ分に相当する角度だけ離れた位置にある。連通孔451は、プレート41のz軸方向所定深さまで形成された凹部であり、z軸方向から見て略長円状であって、ロータ径方向における幅が吸入側背圧円弧溝450と略等しく、回転方向における長さが略1ピッチである。吸入側背圧円弧溝450において、始点aから連通孔451までの間には、始端部452が設けられている。z軸方向から見て、始端部452の先端は、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されている。吸入側背圧円弧溝450の終端部453は、回転方向に凸の略半円弧状に形成されている。連通孔451から終端部453までの区間には傾斜が設けられており、連通孔451から終点bへ向かうにつれて徐々に浅くなる。終端部453の(z軸方向)深さは、始端部452の深さよりも浅く設けられている。
(プレート41の吐出側背圧ポートの構成)
吐出側背圧円弧溝460の径方向寸法(溝幅)は、回転方向全範囲で略等しく設けられており、吐出側円弧溝440よりも僅かに小さく、スリット基端部610の径方向寸法よりも若干小さい。吐出側背圧円弧溝460の内径側の縁464は、スリット基端部610の内径側縁よりも若干外径側に位置する。吐出側背圧円弧溝460の外径側の縁465は、スリット基端部610の外径側縁よりも僅かに内径側に位置する。カムリング8の偏心位置に関わらず、z軸方向から見て、吐出側背圧円弧溝460は、スリット基端部610(背圧室br)と大部分重なる径方向位置に設けられており、スリット基端部610(背圧室br)と重なるとき、これと連通する。吐出側背圧円弧溝460は、略6.5ピッチ弱に相当する角度の範囲(吐出側円弧溝440よりも広い範囲)で形成されている。吐出側背圧円弧溝460の始点cは、吐出側円弧溝440の始点Cよりも回転負方向側に略1ピッチに相当する角度だけ離れており、第1閉じ込み領域の始端部付近に位置している。吐出側背圧円弧溝460の終点dは、吐出側円弧溝440の終点Dよりも回転方向側に1ピッチ弱に相当する角度だけ離れており、第2閉じ込み領域の終端部近くに位置している。連通孔461は、プレート41のz軸方向所定深さまで形成された凹部であって、z軸方向から見た開口断面は略円形状であり、その直径は吐出側背圧円弧溝460の径方向幅と略等しい。
以下、フロントボディ42側の各溝について、リアボディ40(プレート41)側の各溝と異なる構成のみ説明する。吸入ポート51において、吸入側円弧溝510の回転方向始端部515は、回転負方向に凸の略半円弧状に形成されており、絞り(ノッチ)が設けられていない。吸入孔511は、吸入側円弧溝510の中央部付近から終端部516にかけて開口している。吸入孔511は、ロータ径方向幅が吸入側円弧溝510と略等しく、回転方向における長さが略3ピッチである。吸入孔511は、フロントボディ42に形成された吸入通路421に接続されており、この吸入通路421から作動油が供給される。連通孔512は、吸入孔511に隣接して終端部515に開口している。連通孔512は、回転方向における長さが略1ピッチである。連通孔512は、フロントボディ42に形成された第9連通路423に接続されている。吐出ポート52において、吐出側円弧溝520の始端部521は、吐出側円弧溝520の本体部522よりも深さが浅く形成されたオリフィス溝であり、絞り部として機能する。始端部521の回転負方向側の縁は矩形状に形成され、回転方向側の縁(本体部522における始端部521との境界部)は回転負方向に向かって凸の略半円状に形成されている。吐出側円弧溝520の終端部には、吐出孔が設けられていない。
吸入側背圧ポート53において、連通孔531は、吸入側背圧円弧溝530の回転負方向寄りに、径方向で吸入側円弧溝510の連通孔512と重なる位置に開口している。連通孔531は、z軸方向から見て略長円状であり、回転方向における長さが略1ピッチである。プレート41の溝414が、貫通孔48からy軸負方向側かつx軸負方向側に延びて吸入側背圧ポート45の連通孔451に接続されているのに対し、フロントボディ42の溝425は、軸受保持孔42dからy軸負方向側に延びて吸入側背圧ポート53の連通孔531ではなく背圧円弧溝530に接続されている。吐出側背圧ポート54において、吐出側背圧円弧溝540の始端cから第1閉じ込み領域の回転方向側部分の略中間地点までの始端部541は、吐出側背圧円弧溝540の本体部542よりも深さが浅く形成されたオリフィス溝であり、絞り部として機能する。始端部541の回転負方向側の縁及び回転方向側の縁(本体部542の始端部541との境界部)は共に略矩形状に形成されている。吐出側背圧ポート54において、連通孔は設けられていない。
フロントボディ42のz軸負方向端面50には、揺動するカムリング8と(カムリング8が摺接する)面50との間に潤滑用の油を供給するための溝が複数設けられている。第2閉じ込み領域の全体を回転方向で覆うように、吐出側円弧溝520(本体部522)の終端部に接続して回転方向側に延びる潤滑油溝57が形成されている。第1閉じ込み領域の大部分を回転方向で覆うように、吐出側円弧溝520(本体部522)の始端部に接続して回転負方向側に延びる潤滑油溝58が形成されている。また、吸入領域の大部分(吸入孔511)を回転方向で覆うように、第1制御室R1に連通し面50に開口する潤滑油吸入孔591に接続して、回転負方向側に延びる潤滑油溝59が形成されている。潤滑油溝57〜59は、吸入ポート51及び吐出ポート52よりも外径側に設けられており、その径方向寸法(溝幅)は、ポート51,52等よりも狭い。潤滑油溝57〜59は、吐出ポート52や第1制御室R1からの高圧の作動油を、揺動するカムリング8と面50の間に潤滑油として供給する。
[作用]
次に、実施例1のポンプ1の作用を説明する。
(ポンプ作用)
カムリング8を回転軸Oに対してx軸正方向に偏心して配置した状態でロータ6を回転させることにより、ポンプ室rは回転軸周りに回転しつつ周期的に拡縮する。ポンプ室rが回転方向に拡大するy軸負方向側で、吸入ポート43,51からポンプ室rに作動油を吸入する。ポンプ室rが回転方向に縮小するy軸正方向側で、ポンプ室rから吐出ポート44,52へ上記吸入した作動油を吐出する。具体的には、あるポンプ室rに着目すると、吸入領域において、このポンプ室rの回転負方向側のベーン7(以下、「後側ベーン7」という。)が吸入側円弧溝430,510の終点Bを通過するまで、言い換えると、回転方向側のベーン7(以下、「前側ベーン7」という。)が吐出側円弧溝440,520の始点Cを通過するまで、当該ポンプ室rの容積は増大する。この間、当該ポンプ室rは吸入側円弧溝430,510と連通しているため、作動油を吸入ポート43,51から吸入する。第1閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転方向側の面)が吸入側円弧溝430の終点Bと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吐出側円弧溝440の始点Cと一致する回転位置では、当該ポンプ室rは吸入側円弧溝430,510とも吐出側円弧溝440,520とも連通せず、液密に保たれる。当該ポンプ室rの後側ベーン7が吸入側円弧溝430,510の終点Bを通過(前側ベーン7が吐出側円弧溝440,520の始点Cを通過)した後は、吐出領域において、回転に応じて当該ポンプ室rの容積は減少し、吐出側円弧溝440,520と連通するため、ポンプ室rから作動油を吐出ポート44へ吐出する。同様に、第2閉じ込み領域において、当該ポンプ室rの後側ベーン7(の回転方向側の面)が吐出側円弧溝440,520の終点Dと一致し、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が吸入側円弧溝430の始点Aと一致する位置では、当該ポンプ室rは吐出側円弧溝440,520とも吸入側円弧溝430,510とも連通せず、液密に保たれる。
本実施例1では、第1、第2閉じ込み領域の範囲がそれぞれ1ピッチ分(1つのポンプ室rの分)だけ設けられているため、吸入領域と吐出領域とが連通することを抑制しつつ両領域をできるだけ拡大し、これによりポンプ効率を向上することができる。なお、閉じ込み領域(吸入ポート43,51と吐出ポート44,52との間隔)を1ピッチ以上の範囲にわたって設けることとしてもよい。言い換えると、閉じ込み領域の角度範囲は、吐出領域と吸入領域を連通させない範囲であれば、任意に設定可能である。ここで、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が第1閉じ込み領域から吐出領域へ移行するとき、始端部443,521の絞り作用により、ポンプ室rと吐出側円弧溝440,520との連通が急激に行われないため、吐出ポート44,52及びポンプ室rの圧力の変動が抑制される。すなわち、高圧の吐出ポート44,52から低圧のポンプ室rへ作動油が急激に流入することが抑制されるため、吐出ポート44,52から吐出孔442を介して接続された外部の配管に供給される作動油量の急激な減少が抑制される。よって、配管における圧力変動(油撃)を抑制することができる。また、ポンプ室rに供給される流量の急激な増加が抑制されるため、ポンプ室rにおける圧力変動も抑制することができる。なお、始端部443,521を適宜省略することとしてもよい。また、前側ベーン7(の回転負方向側の面)が第2閉じ込み領域から吸入領域へ移行するとき、ノッチ434の絞り作用により、ポンプ室rと吸入側円弧溝430,510の連通が急激に行われないため、吸入ポート43,51及びポンプ室rの圧力の変動が抑制される。すなわち、ポンプ室rの容積が一気に増大することが抑制され、高圧のポンプ室rから低圧の吸入ポート43,51へ作動油が急激に流出することが抑制されるため、気泡の発生(キャビテーション)を抑制することができる。なお、ノッチ434を適宜省略することとしてもよい。
(容量可変作用)
カムリング8がx軸正方向側に揺動して偏心量δがゼロでないとき、y軸負方向側では、ポンプ室rの容積はロータ6が回転するにつれて拡大し、ポンプ室rがx軸正方向側でx軸上に位置するとき最大となる。y軸正方向側では、ポンプ室rの容積はロータ6が回転するにつれて縮小し、ポンプ室rがx軸負方向側でx軸上に位置するとき最小となる。図2に示す最大偏心位置で、ポンプ室rの縮小時と拡大時の容積差は最大となり、ポンプ容量も最大となる。一方、カムリング8がx軸負方向側に揺動して偏心量δが最小(ゼロ)となる最小偏心位置では、y軸負方向側でもy軸正方向側でも、ロータ6の回転につれてポンプ室rの容積は拡大も縮小もしない。言い換えると、ポンプ室r間の容積差は最小(ゼロ)となり、ポンプ容量も最小となる。このように、カムリング8の揺動量に応じて容積差が変化し、これに対応してポンプ容量も変化する。具体的には、図7(b)に示すように、吐出領域のポンプ室rで圧縮された作動油(及び吐出領域のベーン基端部71の背圧室brで圧縮された作動油)は、吐出ポート44,52(及び吐出側背圧ポート46,54)を経て吐出室40gに供給される。吐出室40gの作動油は、制御弁30を通って第1、第2制御室R1,R2に供給され、また吐出通路49を通ってCVT100に供給される。ここで第1制御室R1への供給通路と第2制御室R2への供給通路との間にはメータリングオリフィスORが設けられている。よって、第1制御室R1と第2制御室R2とに供給される作動油の圧力は差圧を持つこととなり、この差圧の大きさによってカムリング8の揺動量が決められる。
より具体的には、第1、第2制御室R1,R2に作動油が供給されていない状態で、カムリング8はスプリングSPGによりx軸正方向側に付勢され、偏心量δは最大となっている。第1制御室R1には、制御弁30から第1制御油路(第1連通路931)を介して作動油が供給される。供給された作動油圧は、スプリングSPGの付勢力に抗してカムリング8をx軸負方向側に向かって押圧する第1油圧力を発生する。第2制御室R2には、制御弁30から第2制御油路(第2連通路932)を介して作動油が供給される。供給された作動油圧は、スプリングSPGの付勢力に加勢してカムリング8をx軸正方向側に向かって押圧する第2油圧力を発生する。CVTコントロールユニット300は、制御弁30の作動を制御し、第1、第2制御室R1,R2に供給する作動油(カムリング8に作用する第1、第2油圧力)を適宜変化させることで、カムリング8が揺動し、偏心量δを変化させる。これにより、ポンプ容量を可変制御する。具体的には、第1制御室R1の作動油圧が高くなると、第1油圧力が大きくなる。また、第2制御室R2の作動油の圧力が高くなると、第2油圧力が大きくなる。第1、第2油圧力の合計がカムリング8をx軸負方向側に押す方向である場合、この油圧力よりも、スプリングSPGによる(カムリング8をx軸正方向側に押す)付勢力が小さいと、カムリング8はx軸負方向側に移動する。すると、偏心量δが小さくなり、ポンプ室rの縮小時と拡大時の容積差が小さくなるため、ポンプ容量が減少する。逆に、第1、第2油圧力の合計がカムリング8をx軸負方向側に押す方向である場合であって、この油圧力よりもスプリングSPGによる付勢力が大きいときや、上記油圧力の合計がカムリング8をx軸正方向側に押す方向である場合には、カムリング8はx軸正方向側に移動する。すると、偏心量δが大きくなり、ポンプ室rの縮小時と拡大時の容積差が大きくなるため、ポンプ容量が増える。なお、第2制御室R2を設けず、第1制御室R1の油圧力のみにより制御してもよい。また、カムリング8を付勢する弾性部材として、コイルスプリング以外のものを利用してもよい。ポンプ1は、所定の高回転域では、このようにポンプ容量を可変制御することで、駆動に必要なトルク(駆動トルク)を低減し、出力を必要最低限に抑える。これにより、固定容量ポンプに比べて損失トルク(動力損失)を低減することができる。
(背圧ポートの分離による動力損失低減)
ロータ6の回転時、ベーン7には遠心力(ベーン7を外径方向へ移動させる力)が作用するため、回転数が十分に高い等、所定の条件が整えば、ベーン7の先端部70はスリット61から突出し、カムリング8の内周面80に摺接する。ベーン先端部70がカムリング内周面80に当接することで、ベーン7の外径方向の移動が規制される。ベーン7がスリット61から突出するとベーン7の背圧室brの容積が拡大し、ベーン7がスリット61へ没入する(収納される)とベーン7の背圧室brの容積が縮小する。カムリング8が回転軸Oに対してx軸正方向に偏心した状態でロータ6が回転すると、カムリング内周面80に摺接する各ベーン7の背圧室brは、回転軸Oの周りで回転しながら周期的に拡縮する。ここで、背圧室brが拡大するy軸負方向側(吸入領域)では、背圧室brに作動油が供給されないと、ベーン7の突き出し(飛び出し)が阻害され、ベーン先端部70がカムリング内周面80に当接せず、ポンプ室rの液密性が確保されないおそれがある。一方、背圧室brが縮小するy軸正方向側(吐出領域)では、背圧室brから作動油が円滑に排出されないと、ベーン7のスリット61への収納(引込み)が阻害され、ベーン先端部70とカムリング内周面80との摺動抵抗が増加する。これに対し、ポンプ1では、吸入領域では、吸入側背圧ポート45から背圧室brに作動油を供給する。これにより、ベーン7の突き出し性を向上する。吐出領域では、背圧室brから吐出側背圧ポート46へ作動油を排出する。これにより、ベーン7の摺動抵抗を低減する。
具体的には、y軸負方向側の吸入領域では、ベーン7の先端部70に吸入ポート43,51内の圧力が作用し、ベーン基端部71(根元)に吸入側背圧ポート45,53内の圧力が作用する。吸入側背圧ポート45,53と吸入ポート43,51は共に低圧室40e,42eに連通しているため、吸入ポート43,51内の圧力と吸入側背圧ポート45,53内の圧力は共に低圧である。よって、ベーン先端部70に作用する圧力とベーン基端部71に作用する圧力との差は大きくない。より具体的には、図7(a)に示すように、作動油はリザーバRESから低圧室40e,42eを経て、第3,第9連通路412,423から吸入ポート43,51に、第4,第10連通路413,424から吸入側背圧ポート45,53に、夫々供給される。ポンプ1の駆動時には吸入領域では作動油は吸入され続けているため、吸入ポート43,51内の圧力(吸入圧Pi)は負圧、すなわち大気圧以下となっている。一方、吸入側背圧ポート45,53は、低圧室40e,42eを介して吸入ポート43,51と連通しているため、第4,第10連通路413,424からは吸入側背圧ポート45,53に吸入圧Piの作動油が供給されることとなる。一方、後述するように、吸入側背圧ポート45,53には吸入側背圧ポート増圧手段(溝11,13)を介して作動油が供給されるため、吸入側背圧ポート45,53の圧力は吸入圧Piよりも高いPi+ΔPiとなる。しかし、この圧力Pi+ΔPiは、ポンプ1の吐出圧Pdよりも低くなる。したがって、例えば背圧室brに吐出側のポートから高圧の作動油を供給した場合に比べて、ベーン先端部70がカムリング内周面80に遠心力以外の油圧力により不必要に強く押し付けられることが抑制され、ベーン7がカムリング内周面80に摺接する際の摩擦による損失トルクが低く抑えられる。言い換えると、ベーン先端部70のカムリング内周面80への摺動抵抗が軽減され、吸入領域における全てのベーン基端部71に高圧のポンプ吐出側圧力を作用させる場合に比べ、動力損失を低減できる。
一方、y軸正方向側の吐出領域では、ベーン先端部70に吐出ポート44,52内の圧力が作用し、ベーン基端部71に吐出側背圧ポート46,54内の圧力が作用する。吐出側背圧ポート46,54と吐出ポート44,52は共に高圧室40fに連通しており、吐出ポート44,52内の圧力と吐出側背圧ポート46,54内の圧力は共に高圧である。よって、ベーン先端部70に作用する圧力とベーン基端部71に作用する圧力との差は大きくない。具体的には、ポンプ1の駆動時には吐出領域ではポンプ作用により作動油の圧力が上昇するため、吐出ポート44,52内の圧力は大気圧よりも高い吐出圧Pdとなる。一方、吐出側背圧ポート46,54は、高圧室40fを介して吐出ポート44,52と連通しているため、吐出圧Pdに近い高圧となる。したがって、ベーン先端部70がカムリング内周面80に不必要に強く押し付けられることが抑制され、ベーン7がカムリング内周面80と摺接する際の摩擦による損失トルクが低く抑えられる。
このように、ポンプ1では、ベーン7の背圧室brと連通する背圧ポートを吸入側と吐出側とで分離し、吸入工程と吐出工程の両方で、ベーン7のベーン先端部70とベーン基端部71に(吐出圧Pdと吸入圧Piとの差のように大きな)圧力差が発生することを抑制している。このため、遠心力によりベーン7を適度にカムリング8に押し付けつつ、摺動抵抗を低減することができる。よって、摩耗を低減できるとともに、ロータ6を回転させるために余分な駆動トルクが浪費されることがないため、動力損失を低減できる。言い換えると、ポンプ1は、回転数に対する駆動トルクが低く、高効率な(すなわち動力損失を低減して燃費を向上できる)、いわゆる低トルク式ポンプであり、通常の可変容量ベーンポンプに比べ、同一体格でも吐出量が大きい(すなわち小型化できる)という特長を有している。
(吸入側背圧ポート増圧による騒音抑制)
前述のように、吸入工程のベーン7は、スリット61内に没した状態からカムリング内周面80に向かって突き出すために、主に遠心力を利用している。すなわち、ベーンの突き出し量は、ベーン7を突き出す(または突き出しを妨げる)方向に作用する力に応じて決まる。この作用力は、主に遠心力と、作動油の粘性抵抗と、スリット61に対するベーン7の摩擦力とで決まる。これらのうち、遠心力の割合が最も大きい。よって、内燃機関の始動時やアイドル状態等のポンプ低回転域では、遠心力が小さく、吸入工程でベーン7の突き出しが不十分となり、ベーン先端部70がカムリング内周面80から離間した状態になるおそれがある。 複数のポンプ室rは順番に、ロータ6の回転に応じて第1、第2閉じ込み領域に差し掛かると、吸入工程と吐出工程が切り替わる。突き出し量が小さい任意のベーン7が、カムリング内周面80から離間した状態のままで、吸入領域と吐出領域が切り替わる上記回転位置(閉じ込み領域)にあると、以下の問題が生じる。すなわち、あるポンプ室r(第1ポンプ室rという。)の後側ベーン7(上記突き出し量の小さいベーン7)が第1閉じ込み領域内にあるとき、第1ポンプ室rの前側ベーン7は吐出領域にあり、第1ポンプ室rは吐出ポート44,52と連通しているため、高圧である。一方、第1ポンプ室rに対して回転負方向側に隣接するポンプ室r(第2ポンプ室rという。)の後側ベーン7は吸入領域にあるため、第2ポンプ室rは吸入ポート43,51と連通しており、低圧である。このように、あるベーン7を挟んで隣り合うポンプ室rの圧力が、一方のポンプ室rは低圧であり他方のポンプ室rは高圧である場合、当該ベーン7の突出(カムリング8への押し付け)が不十分であると、ベーン先端部70とカムリング内周面80との間の隙間を通って、高圧のポンプ室rから低圧のポンプ室rへと作動油が漏出する現象(作動油の吹き抜け)が発生する。特に低温環境下では、作動油の粘性抵抗が大きくなるため、突き出しが不十分となって吹き抜けが発生する可能性が高まる。吹き抜けにおいては、急激な作動油の流れが発生するため、吐出ポート44,52内及び吸入ポート43,51内の圧力が大きく変動して、騒音が発生する。また、ロータ6の回転に伴い周期的に吐出ポート44,52内の圧力低下が生じるため、吐出圧の脈動が発生する原因となる。また、吐出量が低下してポンプ吐出側の圧力が十分に得られないため、ポンプ効率が低下するとともに、ポンプ吐出圧を利用したシステム(CVT100)の始動性が悪化するおそれがある。
これに対し、本実施例1のポンプ1では、吸入側背圧ポート45,53に対して作動油を供給する吸入側背圧ポート増圧手段を設けた。すなわち、吸入ポート43,51は低圧室40e,42eに連通するため、ベーン先端部70には低圧(吸入圧Pi)が作用する。一方、吸入側背圧ポート45,53も低圧室40e,42eに連通するが、吸入側背圧ポート増圧手段により、吸入ポート43,51の圧力よりも高い圧力(Pi+ΔPi)に増圧される。よって、ベーン7は、その基端部71が第1閉じ込み領域に差し掛かる手前の吸入領域からすでに、基端部71と先端部70との差圧ΔPiによりカムリング8の側に押し付けられ、その先端部70はカムリング内周面80から離間しにくくなる。したがって、吸入工程におけるベーン7の突き出し性が改善されるため、吹き抜けによる騒音や効率悪化を抑制し、低温時の始動性を向上させることができる。なお、吸入側背圧ポート45,53は低圧室40e,42eに連通しているため、吸入側背圧ポート45,53が増圧されても、吐出ポート44,52のような高圧(吐出圧Pd)に達することは回避される。すなわち、吸入側背圧ポート45,53の増圧によりベーン先端部70における摺動抵抗が必要以上に増大することは、抑制されている。
本実施例1では、吸入側背圧ポート増圧手段は、ボディ4のリア側とフロント側の両方に設けられている。よって、リア側とフロント側の両方の吸入側背圧ポート45,53を増圧することで、より確実にベーン7をカムリング8に押し付けることができ、したがって、上記騒音低減等の効果を向上できる。なお、吸入側背圧ポート増圧手段を、リア側とフロント側の一方に設けることとしてもよい。
ボディ4のリア側に設けられた吸入側背圧ポート増圧手段は、低圧室40eと吸入側背圧ポート45とを連通する連通路403,CL1,CL2,414(以下、「連通路403等」という。)と、この連通路403等上に設けられ、ポンプ1の作動時に低圧室40e側から吸入側背圧ポート45側へ作動油を供給する作動油供給手段とを有している。ボディ4のフロント側に設けられた吸入側背圧ポート増圧手段は、低圧室42eと吸入側背圧ポート53とを連通する連通路422,CL3,CL4,425(以下、「連通路422等」という。)と、この連通路422等上に設けられ、ポンプ1の作動時に低圧室42e側から吸入側背圧ポート53側へ作動油を供給する作動油供給手段とを有している。
連通路403等,422等は、低圧室40e,42eと吸入側背圧ポート45,53とを連通する通常の(ないし元々備えられた)連通路413,424とは別の通路として設けられている。なお、吸入側背圧ポート増圧手段の連通路403等,422等と通常の連通路413,424とを共通化してもよい。本実施例1では、これらを別々に設けたことで、吸入側背圧ポート45,53への作動油の供給量を調節することが容易である。
連通路403等,422等の一部は、ポンプ1の駆動軸5の軸受に設けられている。具体的には、駆動軸5とボディ4との間の隙間CL1〜CL4を連通路として利用している。ここで、駆動軸5の周りの隙間CL1〜CL4と吸入側背圧ポート45,53とを連通させるため、ボディ4(プレート41、フロントボディ42)における吸入側背圧ポート45,53が設けられた面410,50には、隙間CL2,CL4と吸入側背圧ポート45,53とを接続する径方向溝414,425が設けられている。言い換えると、ロータ6のz軸方向側面に対向するボディ4の面410,50には、隙間CL2,CL4と吸入側背圧ポート45,53とを連通する連通路(作動油導入路)が設けられており、この連通路は溝414,425により構成されている。よって、軸受の潤滑のために元から備えられている油路CL1〜CL4をそのまま吸入側背圧ポート増圧手段の連通路として転用できるため、構成を簡素化できる。具体的には、ボディ4に径方向溝414,425を設けるだけで、連通路403等,422等を構成できる。なお、溝414,425の流路断面積や形状、(駆動軸5の周りにおける)位置、及び数は、吸入側背圧ポート45,53への作動油の供給に最適なものを選択できる。また、このようにボディ4の面410,50において作動油が流通する溝414,425を設けても、吐出側背圧ポート46,54から溝414,425への作動油の流入は抑制される。ロータ6のz軸方向側面と面410,50との間には僅かな隙間しか無く、また、吐出側背圧ポート46,54は高圧室40fと連通しているため吐出側背圧ポート46,54から上記隙間への作動油の漏出量はそもそも少ないからである。
作動油供給手段は、ボディ4において駆動軸5が相対回転する軸受の内周面に設けられた溝11,13により構成されている。軸受は、ボディ4に設けられたブッシュ10,12であり、溝11,13はブッシュ10,12の内周面に設けられている。なお、軸受は、ブッシュに限らず、一般の滑り軸受であってもよい。溝11,13は、ポンプ回転軸Oに対して傾斜するように設けられており、粘性ポンプとして機能する。すなわち、作動油の粘性と、駆動軸5と溝11,13との相対回転とにより、この溝11,13を通って作動油を輸送するポンプを構成している。具体的には、軸受により保持される駆動軸5の外周面には、連通路403等,422等から供給される作動油が、その粘性によって薄膜状に付着しており、回転する駆動軸5と共に連れ回る。この作動油は、駆動軸5の外周面が軸受の内周面に対して僅かな隙間を介して回転することで、上記内周面に設けられた溝11,13内に掻き取られる。なぜならば、溝11,13が延びる方向が、駆動軸5の回転方向(xy平面)に対して勾配が設けられるよう、溝11,13が傾斜して形成されているからである。すなわち、溝11,13の延びる方向は、回転軸Oが延びる方向(z軸方向)に対して勾配(0°より大きく90°未満の角度)が設けられており、回転軸Oに対して傾斜して延びているため、溝11,13内に掻き取られた作動油は、駆動軸5の回転と共に各溝11,13内を一方向に流れることになる。具体的には、溝11,13は、ロータ6側(吸入側背圧ポート45,53が設けられた面410,50側)に向かうにつれて回転軸Oの回転方向側にオフセットする(言い換えると、回転方向側に向かうにつれてロータ6側にオフセットする)ように傾斜して設けられている。よって、駆動軸5が回転するにつれて、溝11,13内に掻き取られた作動油は、溝11,13内をロータ6側(吸入側背圧ポート45,53が設けられた面410,50側)に押し出され、流れることになる。このように、作動油供給手段は、作動油の粘性を利用して、ポンプ1の回転により低圧室40e,42eから吸入側背圧ポート45,53へ向かう作動油の流れを溝11,13内に生じさせる。
このように、作動油を輸送するポンプ(作動油供給手段)を構成するために、軸受(ボディ4)の内周面に溝11,13を設けるだけでよく、特別な(複雑・高価な)構成が不要である。このため、吸入側背圧ポート増圧手段の構成を簡素化できる。また、作動油の粘性を利用しており、低温時ほど粘度が高くなって粘性ポンプの効率が上がる(作動油の輸送量が増える)ので、ベーン7の突き出し性が悪い低温時ほど上記効果を向上できる。ここで、吸入側背圧ポート45,53内の圧力が低圧室40e,42e内の圧力よりも高くなっても、吸入側背圧ポート45,53から作動油が溝11,13を通って逆流する事態は、溝11,13の勾配(上記粘性ポンプの作用)によって抑制される。このため、ポンプ1の作動中、吸入側背圧ポート45,53内の圧力は吸入圧Piよりも高く保たれ、この圧力によるベーン押し付け力も適当に保持される。なお、各溝11,13の傾き(勾配)や形状や流路断面積、及びその数は、作動油の(温度に応じた)粘性や(ポンプ回転数に応じた)輸送量の特性に基づき、最適なものを選択できる。例えば、溝11,13の勾配部分は、溝11,13に部分的にでも設けられていればよく、溝11,13の一部に回転軸O又は回転方向に平行な部分があってもよい。
溝11,13は、駆動軸5と軸受(ブッシュ10,12)の内周面とが摺動しやすい領域以外の領域に設けられており、具体的には、吐出側(y軸正方向側)の軸受の内周面に設けられている。すなわち、ポンプ1の作動時、吐出領域ではロータ外周面60に高圧が作用し、吸入領域ではロータ外周面60に低圧が作用するため、駆動軸5には吸入側(y軸負方向側)に向かう力が作用する。よって、軸受の内周面における吸入側(y軸負方向側)には駆動軸5が押し付けられて摺接することになる。一方、軸受の内周面における吐出側(y軸正方向側)には駆動軸5が押し付けられず、僅かな隙間が保たれる。本実施例1では、このように駆動軸5からの荷重が懸かりにくい吐出側(y軸正方向側)の軸受(ブッシュ10,12)の内周面に溝11,13を設けているため、軸受(ブッシュ10,12)の摩耗や損傷を抑制し、溝11,13や軸受の機能低下を抑制することができる。なお、軸受の内周面ではなく、駆動軸5の外周面に溝を設けることで上記粘性ポンプを構成してもよい。しかし、この場合、駆動軸5からの荷重が懸かり易い吸入側(y軸負方向側)の軸受の内周面に駆動軸5の外周面(の溝)が摺接するため、軸受が摩耗し損傷するおそれがある。これに対し、本実施例1では、軸受の側に溝11,13を設けたため、軸受の機能低下を抑制することができる。
また、吸入側背圧ポート増圧手段の連通路403等,422等を、吸入側背圧円弧溝450に連通させるのではなく、ボディ面410,50内において吸入領域の終端B側に吸入側背圧円弧溝450とは別に分離した溝を設け、この設けた溝に連通路403等,422等を連通させるようにしてもよい。言い換えると、吸入側背圧ポート45,53を夫々2分割して、吐出側背圧ポート46,54に隣接する側の背圧ポートにのみ連通路403等,422等(溝414,425)を接続し、連通路403等,422等から作動油を供給することとしてもよい。この場合、吸入側背圧ポート45,53の全体を増圧するのではなく、吐出側背圧ポート46,54に隣接する領域でのみ、吸入圧Piよりも高い圧力をベーン基端部71に供給することとなるため、カムリング8に対するベーン7の不要な押し付け力を削減し、ポンプ1の駆動トルクを低減することができる。
[効果]
以下、実施例1から把握される本発明のポンプ1の効果を列挙する。
(1)駆動軸5により回転駆動されるロータ6と、ロータ6の外周に形成された複数のスリット61の夫々に突没可能に収容されたベーン7と、ロータ6を囲んで配置されるカムリング8と、カムリング8、ロータ6、及びベーン7を内部に収容するポンプボディ4(プレート41、フロントボディ42)と、を備え、ポンプボディ4は、カムリング8及びロータ6の軸方向側面に対向して配置されてカムリング8、ロータ6、及びベーン7と共に複数のポンプ室rを形成する面410,50を有し、ポンプボディ4の上記面410,50には、ロータ6の回転に応じて複数のポンプ室rの容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポート43,51と、ロータ6の回転に応じて複数のポンプ室rの容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポート44,52と、吸入側圧力(吸入圧Pi)が導入されるとともに、吸入領域に位置する複数のベーン7を収容するスリット61の基端部に連通する吸入側背圧ポート45,53と、吐出側圧力(吐出圧Pd)が導入されるとともに、吐出領域に位置する複数のベーン7を収容するスリット61の基端部に連通する吐出側背圧ポート46,54と、が設けられたベーンポンプにおいて、吸入側背圧ポート45,53の圧力を、吐出側圧力よりも低い範囲で吸入側圧力よりも高く増圧する吸入側背圧ポート増圧手段を設けた。
よって、吸入側背圧ポート45,53の圧力を吸入側圧力よりも高く増圧することで、低温時であっても、吸入領域においてカムリング8からのベーン7の離間を抑制し、これにより吹き抜けによる騒音や効率悪化を抑制しつつ、低温始動性を向上させることができる。また、吸入側背圧ポート45,53の圧力を吐出側圧力よりも低い範囲で増圧することで、ベーン7の摩擦による駆動トルク増大を抑制することができる。
(2)吸入側背圧ポート増圧手段は、作動油源(低圧室40e,42e)と吸入側背圧ポート45,53とを連通する連通路403等, 422等と、この連通路403等, 422等上に設けられ、ポンプ1の作動時に作動油源(低圧室40e,42e)側から吸入側背圧ポート45,53側へ作動油を供給する作動油供給手段とを有し、作動油供給手段は、ポンプボディ4内に設けられて駆動軸5を相対回転可能に支持する軸受(ブッシュ10,12)の内周面に設けられ、面410,50側に向かうにつれて駆動軸5の回転方向側に偏倚するように傾斜する溝11,13を有し、連通路403等, 422等は、面410,50に設けられ、溝11,13の面410,50側の開口(隙間CL2,CL4)と吸入側背圧ポート45,53とを連通する溝414,425を有している。
よって、吸入側背圧ポート増圧手段の構成を簡素化しつつ、ポンプ1の作動中、吸入側背圧ポート45,53内の圧力を吸入圧Piよりも高く保つことができる。また、作動油の粘性を利用して作動油を輸送するため、ベーン7の突き出し性が悪い低温時ほど上記効果を向上できる。
(3)溝11,13は、軸受(ブッシュ10,12)の内周面における吐出領域側に設けられている。
よって、溝11,13や軸受の機能低下を抑制することができる。
[実施例2]
作動油が低温状態にて吸入側背圧ポート増圧手段の効果を高めるため、言い換えるとベーン7の突き出し性をよくするためには、溝11,13の本数を増やす、又は駆動軸5の軸周りの速度を大きくする必要がある。しかし、溝11,13の本数を増やすと軸受(ブッシュ10,12)の機能を低下させるおそれがある。また、軸周りの速度を上げるには、回転数を上げるか、又は軸径を大きくしなければならない。しかし、ポンプ機能を満足しなければならない最低回転数には規定があり、また、軸径を大きくするとポンプが大型化してしまう。よって、ポンプが低回転でも吸入工程におけるベーン突き出し性を向上させるため、実施例2のポンプ1は、実施例1に対し、第1閉じ込み領域の手前(吸入領域の終わり近く)でベーン基端部71に高圧を作用させる手段として、ベーン始動ポート466等を設けることで、更に以下の効果が得られる。
図8は、実施例2のプレート41をz軸正方向側から見た図である。吐出側背圧円弧溝460は吸入領域まで臨むように形成されており、吐出側背圧円弧溝460の始点cは、吐出側円弧溝440の始点Cよりも回転負方向側に延び、第1閉じ込み領域を越え、吸入側円弧溝430の終点Bよりも回転負方向側に位置している。言い換えると、吐出側背圧円弧溝460は、背圧ポート本体部468のほかに、略1ピッチ分の角度γの範囲においてベーン始動ポート466を有している。なお、吸入側背圧円弧溝450は実施例1よりも短く設けられており、その終点bは、ベーン始動ポート466の始点cよりも回転負方向側に略0.5ピッチ分に相当する角度だけ離れた位置にある。また、ベーン始動ポート466は、背圧ポート本体部468よりも溝深さが浅く、傾斜が設けられており、回転方向に向かうにつれて徐々に深くなる。すなわち、ベーン始動ポート466は、回転方向に流路断面積が徐々に大きくなる絞り部を有している。フロントボディ42のz軸負方向端面50にも、ベーン始動ポート466とz軸方向で対応する位置と範囲に、吐出側背圧ポート54を延長することで、ベーン始動ポート466と同様の始動ポートが設けられている。他の構成は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。以下、プレート41の側(ベーン始動ポート466)を例にして作用を説明するが、フロントボディ42の側でも同様の作用が得られる。
本実施例2のポンプ1では、ベーン始動ポート466に吐出側背圧ポート46内の高圧(吐出圧Pd)の作動油を供給することとした。よって、ベーン7が第1閉じ込み領域に移行する手前(吸入領域の終わり近く)の角度範囲γにさしかかると、このベーン7の背圧室br(基端部71)にはベーン始動ポート466内の高圧(吐出圧Pd)が作用する一方、先端部70には吸入ポート43内の低圧が作用する。この差圧により、ベーン7は外径方向に押し出されて突出し、カムリング内周面80に押し付けられる。よって、第1閉じ込み領域における吹き抜けをより確実に抑制することができる。なお、吐出側背圧ポート46とは分離して独立したベーン始動ポートを設け、このベーン始動ポートに例えば吐出ポート44からの作動油を供給することとしてもよい。この場合、吐出側背圧ポート46の圧力の急減が抑制されるため、第2閉じ込み領域における作動油の吹き抜けも抑制することが可能となる。これに対し、本実施例2では、吐出側背圧ポート46を延長することでベーン始動ポート466を形成したため、構成を簡素化できる。また、ベーン始動ポート466に絞り部を設けたため、ベーン7の背圧室brがベーン始動ポート466にかかった瞬間に吐出側背圧ポート46から背圧室brに作動油が急激に流れることを抑制し、吐出側背圧ポート46の圧力が急激に低下することを抑制できる。なお、この絞り部を省略してもよい。
本実施例2のように、第1閉じ込み領域の手前でベーン始動ポート466によりベーン基端部71に高圧を作用させた場合、吸入領域でベーン先端部70がカムリング内周面80から離間した状態で、ベーン始動ポート466から高圧の作動油が背圧室brに流入すると、ベーン7が勢いよく押し出されて飛び出し、カムリング8に勢いよく衝突して、その際に騒音が発生するおそれがある。特に作動油の粘性抵抗が大きくなる低温時や遠心力が小さい機関始動時等には、吸入工程におけるベーン7の突き出し量が不十分となって、ベーン始動ポート466に差しかかる直前の上記離間量が大きくなる。よって、ベーン始動ポート466に差し掛かって飛び出すベーン7がカムリング8に衝突する際の速度も大きくなって、衝突音が大きくなるおそれがあった。これに対し、ポンプ1では、吸入領域において吸入側背圧ポート45に対して作動油を供給する吸入側背圧ポート増圧手段(溝11等)を設けた。よって、吸入側背圧ポート増圧手段を単独で設けた実施例1では突き出し性が不充分であった低回転において第1閉じ込み領域における吹き抜けを抑制しつつ、ベーン基端部71がベーン始動ポート466に差し掛かる手前の吸入領域において、ベーン7基端部71と先端部70との差圧ΔPiにより、カムリング内周面80からの先端部70の離間量が小さくなるため、ベーン基端部71がベーン始動ポート466に差し掛かってこれに高圧(吐出圧Pd)が作用しても、ベーン7がカムリング8に勢いよく衝突することも抑制され、衝突による騒音を低減できる。
また、吸入側背圧ポート増圧手段を設けたことで、吸入領域においてベーン始動ポート466からの高圧によりベーン7をカムリング8に押し付けるべき範囲、すなわちベーン始動ポート466の回転方向長さが小さくて済むため、この分だけ摺動抵抗(駆動トルク)を低減できる。例えば、ベーン始動ポート466に供給される高圧は、始動性を向上するために吐出圧Pdよりも高く設定される場合があるが、この場合、ベーン先端部70での押し付け摩擦が発生して駆動トルクが増加する。これに対し、本実施例2では、吸入側背圧ポート増圧手段によってカムリング内周面80からの先端部70の離間量が小さくなるため、ベーン始動ポート466に供給する高圧を吐出圧Pdよりも高く設定する必要が少ない。よって、始動性を向上しつつ、駆動トルク増加を抑制してポンプ効率を向上することができる。なお、ベーン始動ポート466が設けられる角度範囲γを1ピッチ分より小さくしてもよい。
(実施例2の効果)
(4)ポンプボディ4の上記面410,50に、吐出側圧力が導入されるとともに、吸入ポート43,51の終端部に位置する複数のベーン7を収容するスリット61の基端部に連通するベーン始動ポート466等を設けた。
よって、吸入ポート43,51から吐出ポート44,52への移行(第1閉じ込み領域への移行)直前におけるベーン突き出し性を向上することで、吹き抜けによる騒音や効率悪化を抑制して、低温始動性を向上させることができる。また、ベーン始動ポート466等の高圧(吐出圧Pd)によりベーン7がカムリング8に勢いよく衝突することによる騒音を、吸入側背圧ポート増圧手段によりベーン7のカムリング内周面80からの離間量を予め小さくすることで、低減できる。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1,2に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1,2に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、作動流体として、油(ATF)以外の流体を用いることも可能である。実施例1では、ベーン7(スリット61)を、ロータ径方向に沿って延びるように設けたが、ロータ径方向に対して傾斜して設けてもよい。実施例1,2では、カムリング内周が円筒状でありカムリングが揺動することでポンプ室の容積を変化させるタイプのベーンポンプを例にしたが、カムリングの内周が異形(非円筒状)でありカムリングがポンプボディに固定されたままカムリング内周の形状に沿ってベーンが摺接することでポンプ室の容積を変化させるタイプのベーンポンプに本発明を適用することとしてもよい。この場合、ポンプ吐出量を可変制御するために流量制御装置を別途設けることが可能である。また実施例1,2では、プレート41とフロントボディ42の両方に吸入ポート43,51、吐出ポート44,52、吸入側背圧ポート45,53、吐出側背圧ポート46,54を形成したが、一方側にのみ設けるようにしてもよい。
1 ベーンポンプ
4 ポンプボディ
5 駆動軸
6 ロータ
7 ベーン
8 カムリング
10,12 ブッシュ(軸受)
11,13 溝(作動油供給手段)
40 リアボディ
41 プレート
42 フロントボディ
43,51 吸入ポート
44,52 吐出ポート
45,53 吸入側背圧ポート
46,54 吐出側背圧ポート
410,50 面
61 スリット
40e,42e 低圧室(作動油源)
403 連通路
422 連通路
414,425 溝(連通路)
r ポンプ室

Claims (4)

  1. 駆動軸により回転駆動されるロータと、
    前記ロータの外周に形成された複数のスリットの夫々に突没可能に収容されたベーンと、
    前記ロータを囲んで配置されるカムリングと、
    前記カムリング、前記ロータ、及び前記ベーンを内部に収容するポンプボディと、を備え、
    前記ポンプボディは、前記カムリング及び前記ロータの軸方向側面に対向して配置されて前記カムリング、前記ロータ、及び前記ベーンと共に複数のポンプ室を形成する面を有し、
    前記ポンプボディの前記面には、
    前記ロータの回転に応じて前記複数のポンプ室の容積が拡大する吸入領域に開口する吸入ポートと、
    前記ロータの回転に応じて前記複数のポンプ室の容積が縮小する吐出領域に開口する吐出ポートと、
    吸入側圧力が導入されるとともに、前記吸入領域に位置する前記複数のベーンを収容する前記スリットの基端部に連通する吸入側背圧ポートと、
    吐出側圧力が導入されるとともに、前記吐出領域に位置する前記複数のベーンを収容する前記スリットの基端部に連通する吐出側背圧ポートと、
    が設けられたベーンポンプにおいて、
    前記吸入側背圧ポートの圧力を、前記吐出側圧力よりも低い範囲で前記吸入側圧力よりも高く増圧する吸入側背圧ポート増圧手段を設けた
    ことを特徴とするベーンポンプ。
  2. 請求項1に記載のベーンポンプにおいて、
    前記吸入側背圧ポート増圧手段は、作動油源と前記吸入側背圧ポートとを連通する連通路と、前記連通路上に設けられ、ポンプ作動時に前記作動油源側から前記吸入側背圧ポート側へ作動油を供給する作動油供給手段とを有し、
    前記作動油供給手段は、前記ポンプボディ内に設けられて前記駆動軸を相対回転可能に支持する軸受の内周面に設けられ、前記面側に向かうにつれて前記駆動軸の回転方向側に偏倚するように傾斜する第1溝を有し、
    前記連通路は、前記面に設けられ、前記第1溝の前記面側の開口と前記吸入側背圧ポートとを連通する第2溝を有する
    ことを特徴とするベーンポンプ。
  3. 請求項2に記載のベーンポンプにおいて、
    前記第1溝は、前記軸受の内周面における前記吐出領域側に設けられている
    ことを特徴とするベーンポンプ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベーンポンプにおいて、
    前記ポンプボディの前記面に、
    前記吐出側圧力が導入されるとともに、前記吸入ポートの終端部に位置する前記ベーンを収容する前記スリットの基端部に連通するベーン始動ポートを設けた
    ことを特徴とするベーンポンプ。
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