JP3961207B2 - 車両振動分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両運転性を評価するための動的テストベンチにおける適切な減衰係数を得るための車両振動分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の駆動システムを開発する場合、あるいは駆動システムの最適化を図る場合における目標値は、有害物質放出特性、燃費、出力および車両運転性が重要な要素として関連する。一般に、車両運転性は、特に一時的な運転状態における車の特性と関連するドライバーの主観的な感覚であると理解される。アクセルを急激に踏み込んだとき、加速が急速に衝撃なしに起これば快適と感じられる。同様なことは、他の一時的な運転状態、例えば、オーバーランへの突然の変化またはオーバーランの中止にも当てはまる。ドライバーが起こす変化に車が反応するときの遅れ、不規則性または変動の大部分は、不快と感じられる。その例としては、衝撃変動、応答の遅れ、回転数の変動または引張り力変動などである。良好な加速、また適切な引張り力や、静かで且つ安定したアイドリングは、肯定的に感じられる。車両運転性はエンジン管理によって大きく影響されるが、エンジンのサスペンション及び駆動装置全体の形状によっても影響される。エンジン管理に影響し、低燃費と有利な排ガス放出特性を得ようとするので、追加目標としては車両運転性の維持または向上を考慮しなければならない。
【0003】
しかし、その場合に問題なのは、実際上、車両運転性の客観的で再現性の高い確定が、燃費や有害物質の放出量の確定よりも相当困難なことである。更に、自動車開発の初期の段階ではテスト車を通常利用できないので、一時的なエンジン管理機能を動的エンジンテストベンチで最適化しなければならないため、困難が加わる。その場合、これまで、車両運転性に関する信頼できるデータを入手できなかった。周知の方法では、エンジン管理の所定の調整位置で実際の車を使用した試運転で判断できる。しかし、実際上、多数の異なるエンジン位置をこの方法で調査することはできない。更に、現在のところ、車両運転性についての信頼できるデータを得るようにテストベンチにおいて車両の駆動装置を未だ正確にシミュレートできないので、テストベンチでこの方法を応用するのは困難である。従って、これまで、後の自動車開発段階で初めて、経験のあるテストドライバーの主観を基礎にして車両運転性を評価できる。その場合、時間のかかる測定ルーチンで、連続した車両運転性に関連した運転状態で運転し、書き込み用紙を利用して車両特性が評価された。もちろん、主観的特性に基づくので、このような評価の再現性は制限がある。
【0004】
米国特許(US 4169370A)明細書から、自動車における振動の周波数選択的検出法および検出装置が知られる。この装置は、主に加速度センサー、約4Hzの平均周波数に固定設定された帯域フィルタ及び平方平均値を形成する分析装置からなる。確かに、約4Hzの周波数で主観的な人の振動感を近似的にシミュレートできる、しかし、車両運転性に対する他の周波数や他の影響値の作用は考慮されていない。従って、車両運転性については十分に判断できない。この理由は、とりわけ、特定の振動の発生がドライバーの瞬間的な走行状況に応じて完全に違ったものとして判断されることにある。他の制限は、装置を含めた周知の方法がテスト車で利用するように限定されていることである。従って、テストベンチでのテストは可能ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、実際の車両で全てのテストを実施することなく、車両運転性を高信頼性かつ高再現性で評価するための動的テストベンチにおける適切な減衰係数を得るための車両振動分析方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は請求項記載の発明により達成される。つまり、縦加速度のような特徴のある測定値に基づいて、実際の車両の走行中の衝撃時間領域を確定するステップと、前記衝撃時間領域における車両運転状態に関するデータを検出するステップと、前記衝撃時間領域を第1の測定領域とその後の第2の測定領域に分割するステップと、前記第1の測定領域と前記第2の測定領域における前記特徴のある測定値の周波数スペクトルを作成し、前記第2の測定領域に対する前記第1の測定領域の周波数スペクトルの最大の差がある周波数を特徴のある衝撃周波数として確定するステップと、前記検出された車両運転状態に関するデータと共に、前記特徴のある衝撃周波数を記憶し、車両駆動系等の車両に関するシミュレーションモデルを構築するステップと、前記シミュレーションモデルを用いて種々の車両運転状態をシミュレートしながら、テストベンチにおける測定を実行することで、種々の車両運転状態における前記特徴のある衝撃周波数のために適切な減衰係数を求めるステップと、前記求められた減衰係数を前記車両運転状態に対応させて記憶するステップとを備える車両振動分析方法である。ここで、特徴ある測定値を車両の縦加速度とした場合、衝撃周波数は、エンジンの一時的な運転状態により発生する車両縦加速度の周波数である。
ドライブ中には、衝撃が見込まれる特別な過渡状態がある。このような過渡状態は、例えば、急にアクセルを踏み込むことにより起こる。適切な分析電子機器はこのような臨界状態を衝撃領域として確認する。基本的には、測定走行中、関連車両運転状態が記録される。車両運転性の判断に関連する信号は車両ボデーの縦加速度である。第2のステップでは、各々の衝撃領域内に他の関連運転状態、特にエンジン回転数、負荷(スロットルバルブの位置)及びその時々に選ばれているギヤ段も記録される。
【0007】
本発明で重要なのは、測定データから衝撃に実際に関連する信号をフィルタにより適切に取り出すことである。その場合、本発明は、第1の時間部分内の衝撃領域内で主にエンジンに依存する攪乱成分があるが、この成分が特定の時間後消滅すると言う確認事項に基づいている。従って、前記衝撃領域が第1の測定領域とその後の第2の測定領域に分割され、その際、第1の測定領域では衝撃に関連する信号があることから出発し、第2の測定領域では該当する信号がない。衝撃はその時々の変化によるが、約0. 8〜2. 5秒で消滅することから出発できる。大部分のケースでは、消滅時間は1〜2秒である。次のステップでは、第1の測定領域に関して1つの周波数スペクトル及び第2の測定領域に関して1の周波数スペクトルが得られる。特に、高速フーリエ変換(FFT)によりこの周波数スペクトルが得られる。経験によれば、特定の周波数領域内の特徴のある衝撃周波数は、およそ2〜7Hzである。次に、両方の測定領域の周波数スペクトルを相互に控除して、他の作用要因、例えば、タイヤ、エンジン、シャシー、風、道路などの振動により起こる信号のノイズ成分を、十分にフィルタで除去できる。振幅の最大値により、特徴のある衝撃周波数を確定できる。特徴のある衝撃周波数は、車両のその時々の運転状態で決まる。従って、この周波数は運転状態についてのデータに応じた特性範囲として記憶される。上記の通り、これらのデータは典型的には、回転数、エンジン負荷およびギヤ段である。特徴のある衝撃周波数での振幅も記憶される。周知の方法では、テストベンチでテストできるように、車両に関して1のシミュレーションモデルが作成される。その場合、テストベンチは、車両の重量、始動装置の剛性およびタイヤの伝達特性を再現するため、2又は多重振動子をシミュレートする。しかし、テストベンチでも車両運転性に関するデータが得られるように、最適な方法によりテストベンチで減衰もシミュレートしなければならない。ここでも、減衰係数は車両の運転状態に左右され、直接の方法で車両に関するデータから確定できない。それどころか、テストベンチで、事前に実際の車両における測定点として記憶されている個々の車両運転状態がシミュレート走行され、その際、テストベンチでその時々の特定の衝撃周波数が設定される。
【0008】
それから、減衰量は、テストベンチで測定された振動振幅が実際の車両で測定された振動振幅と一致するまで、減衰係数を変化させることによって確定できる。この方法で、テストベンチは減衰特性領域を確定して較正され、それによって、対応する実際の車両の運転性指数と実際に一致するテストベンチでの指数も確定できる。次に、テストベンチのこのような較正後、エンジン管理のパラメータを変更できる。特徴のある衝撃周波数がエンジン設定位置から十分独立しているので、この周波数はこのような変更後でも、テストベンチで維持される。従って、テストベンチで、信頼できる方法で、種々のエンジン設定位置に対する操縦性に関するデータを入手できる。車両テストベンチにおけるシミュレーションが実際の車両よりも相当短く、相当少ない費用で自動化されるので、本発明でエンジン管理の最適化を相当単純化できる。従って、適切なテストベンチ作業で、操縦性を燃費と排ガス特性の他の追加目的値として最適化に含めることができる。
【0009】
操縦性を判断するため、特に、動的テストベンチでなく、車両においてのみ入手できる測定値が基準になる。1つの例は車両縦加速度である。システムトレーニング段階において、テストベンチにないこの測定値が車両内で測定され、計算される。測定値と計算値間の差形成に関する誤差も確定される。システムトレーニング段階では、誤差が最小になるまで、値の計算方法が修正される。次に、トレーニングされたシステムが動的テストベンチに取り付けられる。従って、特殊な車両タイプもシミュレートできる。車両を利用できない早い時点の開発段階では、同様な車両タイプの同等なデータに依拠できる。これによって、この方法は既に早い時点で、動的テストベンチ、すなわちエンジン及び駆動装置テストベンチで使用できる。
【0010】
更に、各国特有の対応システムにより評価値を確定できる。これによって、リンクアームの各国特有の要件および必要性を考慮できる。例えば、幾つかの国では快適な走行方式、また他の国ではスポーティーな走行方式が推奨される。これは、例えば、反復式の計算パラメータの調整または加重係数により考慮できる。種々の走行状態の多数の個別判断となる計算結果は、記憶された対応トリガー条件−エンジン及び/又は車両の事前定義運転状態と組み合わせて保存されている。全ての個別判断から、車両運転性全体に関連する確定値が計算される。
【0011】
ここで、前述された車両運転性を表現する評価値(Dr)を確定する方法について述べる。この方法は、走行特性に関する測定値の取得のために実際の車両での測定を実行するステップと、特定の測定値の状態から構成されているトリガー条件が満足されているかどうかを常時チェックするステップと、このトリガー条件を満足した場合、前記測定値から得られる周波数特性をパラメータとする所定の関数に基づき車両運転性を表現する少なくとも1つの評価値(Dr)を計算するステップと、この評価値(Dr)を出力するステップとからなる。
その際、好ましくは、前記関数のパラメータとして測定された車両縦加速度の時間変化:a(t)をフーリエ変換することによって得られた周波数特性から最大振幅値:aoscを求め、この最大振幅値が前記所定の関数のパラメータとして評価値(Dr)の計算に用いられる
なお、この車両運転性を表現する評価値(Dr)を確定する方法では、所定の走行運転サイクルを正確に順守する必要はない。しかし、テストで実施した走行運転サイクルは、主に標準ドライブに一致しなければならない。その場合、エンジン関連および車両関連データは、ドライブ中の時系列として記憶される。エンジン関連データとして、特にエンジン回転数、スロットルバルブ又はアクセル位置、吸気マニホールド負圧、冷却剤温度、点火時期、噴射量、ラムダ値、排ガス還流率および排ガス温度が該当する。車両関連値として、車両速度および車両縦加速度を挙げることができる。そして、事前に定義されたトリガー条件により、種々の走行状態が確認される。例えば、「チップ・イン(Tip−In)」で、低い回転数および低い負荷の状態からスロットルバルブが突然開放される走行状態が定義されている。他の走行状態は、例えば、アイドリング、変速段などである。これらの走行状態の各々に対して、トリガー条件、すなわち、種々の測定値の構成が与えられ、この構成が発生すれば、該当の走行状態があると結論される。従って、記録された測定データの分析では、個々の時点を特定の運転状態の存在に対応させることができる。例えば、チップ・イン行程がテスト走行のどの時点で起こったかを確定できる。次に、各時点毎に、1以上の測定値を基準にして評価値を定義できる。その場合、特に、ドライバーの主観的な感覚に、この評価値を最良な状態で適応できるように、車両の車両運転性についてのテスト員の報告は統計的手段で分析されると見込まれている。その場合、テスト員は、個々の運転状態における車両の特性について詳細に尋ねられる。次に、テスト員による評価をできるだけ良好に反映するように、評価値が選ばれる。その時々の以前に支配的な運転状態も車両特性に影響するおそれがあるので、各運転状態で以前の運転状態も考慮して、運転状態を細分してさらに精密にもできる。これによって、可能な状態の数も増加する。評価値は、1以上の測定値の関数からリアルタイムで計算される。例えば、本発明の好適実施形態によると、特徴のある衝撃周波数での車両縦加速度の振動振幅が、このような評価値として利用される。このような振動振幅をどのように導くことができるかは、以下で詳細に説明される。最後に、計算された評価値が出力される。車両運転性または操縦性を確定するため、利用できる測定値がその時々の走行状態に応じて種々に判断されることが、本発明では重要である。これによって、テスト員による主観的判断と極めて良好に一致する評価結果を得ることができる。
【0012】
さらに、実際の車両とテストベンチでも確定できる個々の測定値間の依存性を表現し、特に1組の所定の測定値から評価値を計算するためのシミュレーションモデルの作成、且つシミュレーションモデルによる動的テストベンチの較正も重要である。このようなシミュレーションモデルとして、例えば、パラメーターが特定の車両または同様な車両のグループに適応される多重振動子を使用できる。好ましくは、、実際の車両とテストベンチでも確定できる個々の測定値間の依存性を表現し、また特に事前定義した1組の測定値から評価値を計算するためにシミュレーションモデルを作成し、且つこのシミュレーションモデルにより動的テストベンチが較正される。つまり、テストベンチでは、通常、評価値の計算に必要な全ての測定値が入手できない。従って、テストベンチで測定できる値から車両でのみ測定できる値を逆推論する必要がある。その場合、シミュレーションモデルは、シミュレーションモデルにより計算された値が実際に測定された値に十分一致するまで、精密化される。このシミュレーションモデルが、動的テストベンチを較正するために使用される。
【0013】
車両の車両運転性を判断にするための走行特性評価装置は、次の特徴構成を有する。エンジン回転数、スロットルバルブ設定位置、アクセル位置、車両速度、車両縦加速度、吸気マニホールド負圧、冷却剤温度、点火時期、噴射量、ラムダ値、排ガス還流率および排ガス温度グループからなる少なくとも車両運転性に関連するエンジン及び/又は車両固有の測定値を検出するための、検出電子機器を含む測定値検出器を有する測定システムと、エンジン及び/又は車両運転状態に関するデータを含み、また車両運転性に相関する評価値のデータ保存システムと、エンジン及び/又は車両の運転状態に関するデータに対して車両の車両運転性に関する評価値を対応させる対応システムと、測定データと保存データとの比較、また対応システムを利用した車両運転性に関する評価値の確定用分析装置。データ保存システムには、判断に必要なトリガー条件、また計算結果が保存されている。分析論理の必要なルーチンはプログラムに保存するのが望ましい。トリガー条件として保存されている車両運転性に関連する記憶走行状態と計算操縦性結果は、その時々の1セットをなす。上記装置は、この装置を組み込んだ車両の車両運転性を判断する測定装置として設計できる。このような測定装置を使用して、車両運転性に関して種々の車両タイプを比較できる。しかし、サービス目的で特定の車両を、車両運転性に影響するエージング現象または可能な欠陥に関して調べることができる。車両製造分野において、このような装置は車両製品の検査に使用できる。
【0014】
これに代わる方法として、車両の状態に関する情報をドライバーにフィードバックする装置も車内に固定取付けできる。車両運転性測定をモニターし、なお必要な測定継続時間を予測するため、この装置は、データ保存システムの事前に定義された運転状態のグループから、既に検出された運転状態の数を確定するカウンターを装備することが見込まれている。原則的には、車両の縦方向に発生する全ての振動が、多かれ少なかれ不快と感じられる。例外は、周波数が殆ど0. 5Hz未満である実際の車両加速度である。衝撃振動と全く関係ない、約6Hz以上の周波数に達する、エンジンにより発生する振動も殆どが受け入れられる。従って、0. 5Hz未満および約8Hz以上、特に6Hz以上の周波数が測定データ検出または測定データ分析から除外される。これは例えば、帯域ロック又は帯域フィルタにより行える。後の車両車両運転性に関する情報は、本発明により、既に自動車の非常に早い開発段階で入手でき、燃費、有害物質放出量および車両運転性に関する基準に従ってエンジン管理パラメータを調整できる。これによって、開発時間が短縮され、調整質が改善される。更に、調整時に有害物質放出特性も改善できる。このシステムは、オンライン動作とオフライン動作で利用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。このシステム1は、テスト対象車両内に取り付けられ、エンジンA及び/又は車両Bの運転状態の車両運転性関連測定値2、3、例えば、エンジン回転数、スロットルバルブ設定位置またはアクセル位置、車両速度、車両縦加速度、吸気マニホールド負圧、冷却剤温度、点火時期、噴射量、ラムダ値、排ガス還流率および排ガス温度を、その時々に操作する手間なしに自動的に測定する。測定データ2、3は、データ保存装置4のメモリーセル4bにより永続的に記録されている。これらの測定データの車両運転性に関連する、静的および動的状態、いわゆるトリガー条件4aもデータ保存装置4に同様に保存されている。測定データ2、3が記憶トリガー条件4aと一致すれば、分析装置5によって事前に定義された数学的および統計分析が分析ユニット5aにおいて開始される。この分析は、瞬間的走行状態のドライバー感覚の完全で客観的な、高再現性のシミュレーションを含む。計算経過、さらに瞬間的測定データと主観的車両運転性感覚間の関連は、多数の測定結果、並びに主観的判断と客観的測定値間の相関性として、対応システム6に保存されている。計算結果は、データ保存装置4の前記メモリーセル4cに全自動で記録される。
【0016】
本システム1は、実際のドライブで永続的に動作させて使用できる。その場合、ドライバーはシステム1に全く注意する必要がなく、そのため、他の目的にもドライブを利用できる。ドライバー、車両および道路に関連する走行状態の経過を検出するため、多数の走行トリガー条件4aが分析され、記憶される。特に、これらの結果は、実際にしばしば走行される状態を開発および較正段階で正確に調整するために利用できる。カウンター7は、事前に定義されたトリガー条件のどれだけが既に検出されているかを計算し、必要分析精度で決まる必要な測定時間に関する情報を供給する。その場合、何回も検出されたトリガー条件4aは、統計的手段、例えば計算結果の平均値を形成したり、あるいは逸脱する結果をフィルタで除去して分析される。車両分析全体に必要な測定時間は数時間である。その後、車両運転性判断に関する完全なデータセットを利用できる。統計的評価の方法で、データセット全体から車両運転性評価の予備数を形成できる。場合によっては、例えば、較正のための選択車両運転性状態、例えば、アイドリング、全負荷または同様なものの測定と分析を実施できる。その場合、個々の結果のみが利用される。
【0017】
オンライン動作では、システム1は自己学習システムとしても設計できる。計算装置でトリガー条件4aに関して事前に定義されていないが、その分析で非常に劣悪か又は非常に良好な車両運転性の判断が得られる走行状態が発生すれば、この状態は結果と組み合わせて把握され、分析のため目印が付けられる。次の測定では、このようにして学習されたトリガー条件4aが既に事前定義されている。オフライン動作では、分析結果は表とグラフで表示できる。限界の結果を事前に入力することによって、例えば、限界値よりも劣悪な分析結果も強調できる。場合によっては、学習されたトリガー条件4aは別々に表示できる。オフライン動作では、実際の測定と先行する測定間の簡単な比較も可能であり、その場合、変化の影響を直ぐに点検できる。更に、この結果は同様な構造の他の車両の測定結果とも比較できる。
【0018】
本発明の特別な利点は、既に動的エンジンテストベンチで車両運転性を判断できることである。そのため、本発明の実施形態では、図1に破線で示した装置8が使用され、この装置は、動的エンジンテストベンチで入手できない車両運転性に関連した車両測定データ3、例えば、車両の縦加速度、をエンジン関連予備測定データ2a、例えば、エンジン振動、支持力などからシミュレートする。本発明の特に好適な実施形態では、システム1は、図1で点線で示した自己学習車両シミュレーション装置9と結合して使用される。例えばニューロンネットワークから構成される自己学習車両シミュレーション装置9は、車両特性を確実にシミュレートする。この車両シミュレーション装置9は、実際に車両で使用して訓練や較正をすることができる。その場合、エンジン関連予備測定データ2aによりシミュレートされた種々の運転点毎の車両データ3aは、例えば、反復法で実際の車両測定データ3bと比較され計算されて、且つ車両測定データのシミュレーションのため装置8に差dが送られる。この差dに基づき、使用したシミュレーション・アルゴリズムのパラメータが補正され、現実化される。車両測定データの十分正確なシミュレーションの後、訓練された車両シミュレーション装置9を動的エンジンテストベンチで車両運転性判断のため使用できる。従って、動的テストベンチで正確な車両シミュレーションを利用できる。車両シミュレーション装置9は、システム1にドッキングできるモジュールよりも有利な形で設計されている。それにより、迅速に、トレーニングとテストベンチを交代に使用したり、改善できる。
【0019】
更に、このシステム1は、エンジン管理システムのパラメータ確定のため、自動較正プログラムに連結できる。その場合、この連結により、迅速な静的および動的較正をするため、車両運転性情報を含めることができる。この評価法は、以下では、具体例、即ち、第2ギヤにおけるいわゆる「チップ・イン」行程、つまり、スロットルバルブの開度を増加した加速行程により説明される。チップ・インケースの場合、最初に、実際のドライブで、時間に対するスロットルバルブ位置DK、エンジン回転数Nと縦加速度aが測定される(図2を参照)。これと並行して、テスト員の主観的感覚が検出される。その場合、評価基準として、優秀=10〜最悪=1の10段階の尺度が利用される。その後、回転数Nと縦加速度aが分析される。その場合、図3に示すような、回転数Nと縦加速度aのFFT(高速フーリエ変換値)が計算される。最大振幅値が具体的なケースで3〜4Hzの領域内に発生することは、明らかに確認できる。その場合、2〜8Hzの周波数領域の衝撃振動の最大値および最大値が発生する周波数は、次式で計算できる。
【0020】
【数1】
【0021】
ここに、stは複素数部分で、a(t)は加速度aの時間的経過を表す。第2のステップで、縦加速度に基づく車両運転性を表現する評価値とFFT振幅は次式で関係付けられる。
【0022】
【数2】
【0023】
ここに、c1、c2及びc3は調整パラメータであり、aoscは2〜8Hzの領域における衝撃振動の最大振幅を表し、且つDrは評価値として計算された操縦性指数である。係数c1、c2及びc3は、自己学習システムで自動的に発見できる。例えば、そのため、反復ループを使用できる。そこでは、計算値Drと主観的な判断Drsubj間の違いが最小になるまで係数を変化する。これは、次式によって行われる。
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
【数5】
【0027】
この場合、pi、q i及びr iの表現は変化段階幅を示す。計算操縦性指数Drと主観的操縦性指数Drsubj間の差が事前定義限界値よりも小さくなるまで、c1、c2及びc3を変化する。十分なシステムの訓練後、車両内の主観的判断は衝撃振動の振幅aoscから確実にシミュレートできる。発見された係数c1、c2、c3は、この主観的判断をシミュレートしている。従って、各国特有の特性も正確に検出できる。傾向として応答時間が大きい快適な走行特性が推奨される諸国では、どちらかと言えばスポーティな走行方式を採用する諸国と違った評価が行われる。明らかに、このシステムはドライバーの運転方法の判断にも利用できる。上記の計算方法は、評価を実施する多数の可能性の1つにすぎない。反復は例えば、数学および統計学から判明する他の方法でも実施できる。動的テストベンチでは、測定値として縦加速度を入手できない。このケースでは、加速信号aは回転数Nとエンジントルクの既存の信号からシミュレートされる。その場合、トルクの測定に比較的大きな費用がかかるので、回転数Nが動的テストベンチと車両内でも直ぐに入手できる唯一の信号である。回転数Nから縦加速度aをシミュレートするため、ここでも、自己学習システムが使用される。第1ステップでは、回転数信号Nと縦加速度a間の相関が、例えば反復法で形成される。第2ステップでは、縦加速度aが動的テストベンチの回転数Nから得られる。
【0028】
例で証明されたチップ・イン評価と同様な方法で、他の関連値、例えば、アイドリング質、定数走行、全負荷加速度、ギヤ数、ウォームアップ特性、始動行程などが分析される。更に、評価に重要な時間、例えば、遅延時間も考慮できる。このような遅延時間は、例えば、加速の遅れ又はスロットルバルブの閉鎖後のエンジン制動作用の遅れである。ここでの他の例は、シフト時の回転数の過大なバラツキであり、その場合、回転数は、スロットルバルブを同時に閉鎖したにも拘わらず、クラッチを外した後、減少せずに増加する。
【0029】
図4及び5は、チップ・イン行程中の回転数Nと最大スロットルバルブ位置により表現した、チップ・インケースで発生する回転数Nと縦加速度aの衝撃振動の最大振幅Noscとaoscを示す。「チップ・イン」ケースに関する判断結果は特性領域であり、その領域は、車両運転性評価Drが回転数Nとスロットルバルブ位置DKに対して記載されている図6に示されている。その場合、特性領域における車両運転性評価値Drは次のような尺度で示される。
【0030】
10 ... 特に経験豊かなテストドライバーにとって不快でない
9 ... 特に経験豊かなテストドライバーにとって不快
8 ... 評価の厳しいドライバーにとって不快
7 ... 何人かのテストドライバーにとって不快
6 ... 全てのドライバーにとって不快
5 ... 全てのドライバーにとって非常に不快
【0031】
図7には、時間により変化する種々の測定値が記載されている。101で、スロットルバルブの位置を示す。m/s2表示のそこから得られた加速度は、102で示されている。更に、フィルタをかけた加速度103とエンジン回転数104が記載されている。このダイヤグラムでは、典型的な衝撃領域は、81秒直後にスロットルバルブの位置がゼロから60%を超えて上昇することによって発生する。ほぼ83. 5秒で、スロットルバルブは再度、確実に閉鎖される。適切な分析電子機器によって、衝撃領域はT0とT2の時点間の時間区分として確定される。T0〜T2のこの衝撃領域は、再度、第1の測定領域MB1と第2の測定領域MB2に分割される。第1の測定領域MB1は時点T0と時点T1間におよび、第2の測定領域MB2は時点T1と時点T2間に選ばれている。本ケースで、第1の測定領域MB1の継続時間は秒で示されている。
【0032】
図8のダイヤグラムでは、水平軸にHz表示の周波数が記載されている。垂直軸には、その時々の周波数における加速度変動の振幅が記載され、従って、図8は加速度の周波数スペクトルを示している。その場合、11で第1の測定領域から得られたスペクトルが示され、12で第2の測定領域からのスペクトルが示されている。両方のスペクトルの差は、13で示されている。2〜7Hzの期待領域内のスペクトルの差に、明らかに目立った最大値があることが判る。図8では、この最大値は4. 7Hzの周波数である。実際の車両のドライブ中における測定値の記録シリーズでは、エンジン回転数、スロットルバルブ位置およびその時々に投入されたギヤの種々の値での多数の測定点が得られる。
【0033】
図9には、このテストから得られた特定のギヤ段に関する特性領域が示されている。水平軸には1/min表示のエンジン回転数が記載され、垂直軸にはパーセント表示のスロットルバルブの位置が示されている。領域21は、特徴のある衝撃周波数が3. 5〜4Hzに位置する領域を示す。領域22は、4〜4. 5Hz間に特徴のある衝撃周波数を有し、これに対して領域23は4. 5Hzを超える特徴のある衝撃周波数を有する。
【0034】
図10に、3次元表示で、エンジン回転数とスロットルバルブの位置に対する特徴のある衝撃周波数における振幅が記載されている。その場合、エンジン回転数は0〜6000の1/min表示で、スロットルバルブの位置は0〜100のパーセント表示で記載されている。垂直軸では、衝撃振幅がm/s2で表示されている。
【0035】
図11には、動的テストベンチで設定する減衰係数が記載された特性領域が示されている。再度、水平軸には1/min表示のエンジン回転数が、且つ垂直軸にはパーセント表示のスロットルバルブの位置が記載されている。次の表1には、図5の領域表示と並べた確定された減衰係数が示されている。
【0036】
【表1】
基準領域 減衰係数
41 < 0. 4
42 0. 4〜0. 45
43 0. 45〜0. 5
44 0. 5〜0. 55
45 0. 55〜0. 6
46 > 0. 6
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置のブロック図
【図2】スロットルバルブ位置、加速度および回転数の測定データ
【図3】FFTによる加速度および回転数の測定データ
【図4】衝撃現象が記載されているスロットルバルブ位置・回転数を示す図
【図5】衝撃現象が記載されているスロットルバルブ位置・回転数を示す図
【図6】計算車両運転性評価を含む3次元図
【図7】時間領域内の種々の測定データ
【図8】図領域内に車両の縦加速度の変動を示す図
【図9】エンジン回転数と負荷に対する特徴のある衝撃周波数を示す特性領域を示す図
【図10】エンジン回転数と負荷に対する衝撃強度を示す特性領域を示す図
【図11】エンジン回転数と負荷に対する特性領域内の減衰係数を示す図
【符号の説明】
2,3 運転状態に関するデータ
4 データ保存システム
4a 評価値に関するデータ
5 分析装置
6 対応システム
a 車両縦加速度
A エンジン
B 車両
DK スロットルバルブ又はアクセル位置
Dr 評価値
N エンジン回転数
Claims (3)
- 車両運転性を評価するための動的テストベンチにおける適切な減衰係数を得るための車両振動分析方法において、
縦加速度のような特徴のある測定値に基づいて、実際の車両の走行中の衝撃時間領域を確定するステップと、
前記衝撃時間領域における車両運転状態に関するデータを検出するステップと、
前記衝撃時間領域を第1の測定領域とその後の第2の測定領域に分割するステップと、
前記第1の測定領域と前記第2の測定領域における前記特徴のある測定値の周波数スペクトルを作成し、前記第2の測定領域に対する前記第1の測定領域の周波数スペクトルの最大の差がある周波数を特徴のある衝撃周波数として確定するステップと、
前記検出された車両運転状態に関するデータと共に、前記特徴のある衝撃周波数を記憶し、車両駆動系等の車両に関するシミュレーションモデルを構築するステップと、
前記シミュレーションモデルを用いて種々の車両運転状態をシミュレートしながら、テストベンチにおける測定を実行することで、種々の車両運転状態における前記特徴のある衝撃周波数のために適切な減衰係数を求めるステップと、
前記求められた減衰係数を前記車両運転状態に対応させて記憶するステップと、
を備える車両振動分析方法。 - 前記テストベンチにおける前記減衰係数を、前記特徴のある衝撃周波数における振動振幅を用いて求める請求項1記載の車両振動分析方法。
- 前記第1の測定領域の継続時間として、0. 8〜2. 5秒を選ぶ請求項1又は2記載の車両振動分析方法。
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