JP3961130B2 - 感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンおよびそれらの製造方法に関し、詳しくは、感熱ゲル化性、貯蔵安定性、機械的安定性に優れたポリウレタン系エマルジョンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリウレタンはその優れた機械的性質、耐摩耗性、耐薬品性、接着性などの特性を活かして、ゴムとプラスチックスの境界分野を埋める樹脂として、塗料、接着剤、人工皮革などの幅広い用途分野に浸透している。その中で、環境保全、省資源、安全性といった社会ニーズに対応すべく、水性ポリウレタンが急激に発展してきている。ウレタン樹脂の水中への乳化分散技術、アイオノマー化による自己乳化分散技術、さらには水中での高分子量化技術等に進歩により高性能の水性ポリウレタンが出現し、その性能は今日では溶剤系ポリウレタン樹脂に匹敵するレベルになり、各種の用途分野で実用化されるに至っている。
【0003】
しかしながら、水性ポリウレタンを繊維質基材に含浸させ付与して多孔性シート材料や人工皮革等を製造する場合、エマルジョンの乾燥固化の段階でポリウレタンが繊維質基材表面に移動する、いわゆるマイグレーションという現象が起こり、風合いが低下する原因となっている。マイグレーションを防止するために、水性ポリウレタンに感熱ゲル化性を付与することが行われている。例えば、特開昭63−23958では、安定剤として水溶性ポリエーテルポリウレタンを用いたポリウレタンエマルジョンに電解質を添加することを提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開昭63−23958の方法でも、貯蔵安定性、機械的安定性は十分でなく、また水溶性高分子を用いるためにエマルジョンの粘度が高くなる傾向にあり、繊維質基材への浸透性が低下しやすい。
【0005】
本発明の目的は、感熱ゲル化性、貯蔵安定性、機械的安定性に優れたポリウレタン系エマルジョンおよびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく本発明者はいろいろ検討を重ねてきた。その結果、特定の構造のポリビニルアルコール系重合体を用いてポリウレタン系エマルジョンを製造することにより、上記の課題が達成されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる際に、あるいは乳化させた後に、(a)分子中に一級および二級アミノ基から選ばれた少なくとも一種の基を有するポリビニルアルコール系重合体、および(b)分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも一種の基を有する低分子化合物を、同時にまたは別途に添加し、反応させ、次いで電解質を添加することを特徴とする感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンの製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる際に、あるいは乳化させた後に、(a)分子中に一級および二級アミノ基から選ばれる少なくとも一種の基を有し、且つケン化度が85モル%以下のポリビニルアルコール系重合体、(b)分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも一種の基を有する低分子化合物を、同時にまたは別途に添加し、反応させることを特徴とする感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンの製造方法に関する。
【0009】
さらに本発明は、前記製造方法で得られることを特徴とする感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンに関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明は、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる際に、あるいは乳化させた後に、(a)一級および二級アミノ基から選られる少なくとも一種の基を有するポリビニルアルコール系重合体、および(b)分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも一種の低分子化合物(以下、活性水素原子含有低分子化合物と称することがある)を、同時にまたは別途に添加し、反応させ、次いで場合により電解質を添加して得られることを特徴とする感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンの製造方法、および該方法によって得られる感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンである。
【0011】
本発明に用いられるポリウレタンプレポリマーは、実質的に、高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を、溶媒の存在下または不存在下で反応させて得られた、分子中にイソシアネート基を1個以上有するポリウレタンである。
【0012】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうる高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどを挙げることができ、ポリウレタンプレポリマーはこれらの高分子ポリオールの1種または2種以上を用いて形成されていることができる。
【0013】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いるポリエステルポリオールは、例えば、常法に従って、ポリカルボン酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体などのポリカルボン酸成分とポリオール成分を直接エステル反応させるかまたはエステル交換反応させることによって得られる。
【0014】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分として、脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体から主としてなり、場合により少量の3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むものを用いて製造されたものであることが好ましい。
【0015】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリオール成分として、脂肪族ポリオールからなり、場合により少量の3官能以上のポリオールを含むポリオール成分を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0016】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0017】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールとカーボネート化合物を反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリカーボネートポリオールとポリオールおよびポリカルボン酸を反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールを反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0018】
また、ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
高分子ポリオール成分の数平均分子量は500〜10000であることが必要であり、700〜5000であるのが好ましく、750〜4000であるのがさらに好ましい。数平均分子量が500〜10000の範囲から外れる高分子ポリオールを用いて製造されたポリウレタンプレポリマーを使用する場合は、得られるポリウレタン組成物の耐寒性、耐熱性、耐溶剤性などが低下したものとなりやすい。
【0020】
さらに、高分子ポリオールは、1分子当たりの水酸基の数fが2.0≦f≦4.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.0≦f≦3.0の範囲である。1分子当たりの水酸基数fが前記した2.0≦f≦4.0の範囲にある高分子ポリオールを用いて得られたポリウレタンプレポリマーを本発明のポリウレタン系エマルジョンで使用すると、得られるポリウレタン組成物の耐熱性、耐溶剤性が良好になる。
【0021】
有機ジイソシアネート成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できるが、分子量500以下の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのうち1種または2種以上が好ましく使用される。有機ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明のポリウレタンプレポリマーの製造には、必要に応じて鎖伸長剤成分を用いることができる。用いうる鎖伸長剤成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
ポリウレタンプレポリマーの製造は、従来から公知の方法で行うことができ、30〜150℃の温度条件下で、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。この際用いることができる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、エマルジョン製造後の溶媒除去の容易性を考慮すると、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃未満の溶媒がより好ましい。また、プレポリマー製造後に、粘度低下等を目的として、上記の有機溶媒を添加、あるいは追加しても良い。
【0024】
ポリウレタンプレポリマーの製造の際には、必要に応じて反応触媒を添加することができ、このような触媒としては例えば、オクチル酸スズ、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩などの有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミンなどを挙げることができる。
【0025】
ポリウレタンプレポリマーの製造にあたっては、高分子ポリオール、鎖伸長剤および後述する親水性基を有する化合物の活性水素を有するアミノ基または水酸基の合計量に基づいて、活性水素原子を有するアミノ基または水酸基1当量当たりのイソシアネート基当量の比(R)が、1.05≦R≦3.0の範囲で使用するのが好ましく、1.1≦R≦2.5の範囲で使用するのがより好ましい。Rが1.05未満である場合には、後述するポリビニルアルコール系重合体との反応性が低下し、耐熱性、耐溶剤性等が十分に改善されず、またプレポリマーの粘度が高いために水中への乳化が困難である。Rが3.0を越える場合には、後述するポリビニルアルコール系重合体やアミノ基または水酸基を有する低分子化合物との反応の際にエマルジョンが不安定化してゲル化しやすくなる。
【0026】
次にポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる。この際、用いることができるノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、この中でもHLB値が6〜20のものを用いるのが好ましい。ノニオン界面活性剤の添加量は、ポリウレタンプレポリマーの重量に対して、0.1〜15重量%が好ましく、0.3〜12重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を併用しても良い。
【0027】
また、ポリウレタンの乳化安定性の向上のために、ポリウレタンプレポリマー分子中へ親水性基を導入してもよい。親水性基の導入は、上記プレポリマー反応において、親水性基を有する化合物を併用することにより達成される。親水性基を有する化合物としては、分子内に水酸基またはアミノ基等の活性水素原子を1個以上含有し、且つカルボン酸、スルホン酸、カルボン酸、スルホン酸塩等のアニオン性基;ポリオキシエチレン基等のノニオン性基;三級アミノ基、四級アンモニウム塩等のカチオン性基から選ばれる1種以上の親水性基を有する化合物が挙げられる。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;分子量200〜10,000のポリオキシエチレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物;3−ジメチルアミノプロパノール等の三級アミノ基含有化合物およびこれらの誘導体等が挙げられる。さらに、上記の親水性基を有する化合物を共重合して得られるポリエステルポリオールまたはポリエステルポリカーボネートポリオールを用いることもできる。この中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸などのアニオン性基を有する化合物を用いてポリウレタンプレポリマーを製造し、プレポリマー反応終了後にトリエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を添加してアニオン性基の少なくとも一部を塩に変換したものが好ましい。
【0028】
ポリウレタンプレポリマーの乳化は、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化分散装置を用いて行われる。この際、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水との反応を抑制するため、乳化温度は40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明のポリウレタン系エマルジョンの製造は、ポリウレタンプレポリマーの乳化と同時に、または乳化後、一級または二級アミノ基を有するポリビニルアルコール系重合体、および分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基または二級水酸基から選ばれる活性水素原子を有する低分子化合物を添加、反応させて行う。ポリビニルアルコール系重合体および活性水素原子含有低分子化合物の添加は、同時に行っても良く、また別途に行っても良い。
【0030】
本発明に用いられる、分子中に一級および二級アミノ基から選ばれる少なくとも一種の基を有するポリビニルアルコール系重合体としては、分子内に一級または二級アミノ基を含有するポリビニルアルコール系重合体であれば特に制限はない。アミノ基を有するポリビニルアルコール系重合体の製造方法としては、例えば、
(1)一級アミノ基または二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、または加水分解等により一級アミノ基または二級アミノ基を生成しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体と、酢酸ビニルとを共重合させた後、ケン化する方法;
(2)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体と酢酸ビニルとを共重合させて得られたポリマーの側鎖のエポキシ基に、アミノ基を有するメルカプタンを酢酸ナトリウム等を触媒として付加反応させた後、ケン化する方法;
(3)ポリビニルアルコールの水酸基と反応しうる官能基を分子内に有し、且つ一級あるいは二級アミノ基を有する化合物をポリビニルアルコール系重合体に反応させる方法;
(4)メルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体の存在下で、一級アミノ基または二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体を重合させる方法;
等が挙げられる。
【0031】
ポリビニルアルコール系重合体は、分子内に一級あるいは二級アミノ基以外の官能基を有していても本発明の効果を損なわない限り差し支えない。そのような官能基を与える単量体単位としては、エチレン、イソブチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピル、メタクリル酸スルホプロピル、およびそれらのアルカリ塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体を重合することによって得られる末端に官能基を有するポリマーでも良い。
【0032】
ポリビニルアルコール系重合体の一級あるいは二級アミノ基の含有量は、特に制限はなく、重合度等により好適な範囲が変化するが、一般に、前記アミノ基由来の窒素原子の含有量が、該ポリビニルアルコール系重合体の全重量に対して、0.05〜5重量%であるのが好ましく、0.1〜3重量%であるのがより好ましい。アミノ基由来の窒素原子の含有量が0.05重量%よりも少ない場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応性が低下し、耐熱性、耐溶剤性等が十分に改善されない。また、アミノ基由来の窒素原子の含有量が5重量%を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなる。
【0033】
ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。ケン化度が50モル%未満の場合には、ポリウレタン系エマルジョンの貯蔵安定性、機械的安定性、得られるポリウレタン組成物の耐熱性および耐溶剤性等が不十分である。また、ポリビニルアルコール系重合体の分子量は、ジメチルスルホキシド中の極限粘度測定(JIS)から算出した粘度平均分子量が、2,000〜200,000であるのが好ましく、4,000〜100,000であるのがより好ましい。分子量が2,000未満の場合には、得られるポリウレタン組成物の耐熱性、耐溶剤性等が不十分であり、分子量が200,000を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなり、またポリウレタン系エマルジョンの繊維質基材等への浸透性が劣る。
【0034】
ポリビニルアルコール系重合体の添加量は、ポリウレタンプレポリマー100重量部に対し、0.2〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。添加量が0.2重量部未満の場合には、得られるポリウレタン組成物の耐熱性、耐溶剤性等が不十分であり、添加量が20重量部を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなる。また、ポリビニルアルコール系重合体の添加は、通常水溶液にして行うが、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の有機溶媒やこれらと水の混合溶媒に溶解させて添加しても良い。
【0035】
本発明で用いられる、活性水素原子含有低分子化合物としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、ジエチレントリアミン等のトリアミン類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリン等のモノアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
活性水素原子含有低分子化合物の添加量としては、低分子化合物中の活性水素原子を有するアミノ基または水酸基の量が、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基1当量あたり、0.70〜1.20当量であるのが好ましく、0.75〜1.15当量であるのがより好ましく、0.80〜1.10当量であるのがより好ましい。この量が、0.70当量未満または1.20当量を越える場合には、ポリウレタン組成物の重合度が十分に上がらず、耐熱性や耐溶剤性が不十分となる。
【0037】
本発明では、ポリビニルアルコール系重合体のケン化度が85モル%を越える場合には、ポリウレタン系エマルジョンに感熱ゲル化性を付与するために、電解質を添加することが必須である。この際用いることができる電解質としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硝酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも塩化カルシウム、硫酸ナトリウムが好ましい。電解質の添加量は、ポリウレタン系エマルジョンの全重量に対して、10%以下であるのが好ましく、7%以下であるのがより好ましい。添加量が10%を越える場合には、エマルジョンが不安定になり、室温でゲル化しやすくなる。下限値については0.01%以上が好ましく、さらに0.05%以上が最適である。ポリビニルアルコール系重合体としてケン化度が85モル%以下のものを用いる場合には、ポリビニルアルコール系重合体自身が感熱ゲル化性を持つために電解質を添加する必要はないが、感熱ゲル化温度を鋭敏にするために電解質を添加することは何ら差し支えない。
【0038】
本発明のポリウレタン系エマルジョンは、通常、固形分濃度が約20〜65重量%に調整されるが、これに限定されるものではない。また、プレポリマー製造において有機溶媒を用いた場合には、必要に応じて、感熱ゲル化温度以下で蒸留分離あるいはストリッピングをすることにより、有機溶媒を除去することができる。ポリビニルアルコール系重合体のケン化度が85モル%を越える場合には、電解質の添加の前に有機溶媒を除去し、その後電解質を添加する方法が、製造の容易性や安定性の面から有利である。
【0039】
本発明のポリウレタン系エマルジョンは、必要があれば、従来公知の各種エマルジョンを本発明の効果を損なわない範囲で添加して用いることができる。添加することができるエマルジョンとしては、例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エポキシエマルジョン等が挙げられる。
【0040】
また、本発明のポリウレタン系エマルジョンは、必要に応じて、その感熱ゲル化性、乾燥性、セット性、粘度、造膜性等を調整するために、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤;N−メチルピロリドン、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の各種有機溶剤;でんぷん、変性でんぷん、酸化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体等の水溶性高分子;尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホルマリン樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂等の熱硬化性樹脂;クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉等の充填剤;小麦粉等の増量剤;ホウ酸、硫酸アルミニウム等の反応促進剤;酸化チタン等の顔料;酸化防止剤;紫外線吸収剤;消泡剤;レベリング剤;凍結防止剤;防腐剤;防錆剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明のポリウレタン系エマルジョンは、感熱ゲル化性、貯蔵安定性、機械的安定性に優れており、不織布などの繊維処理加工に用いると、風合いや耐摩耗性、耐溶剤性、耐久性等に優れた製品を安定に製造することができ、非常に有用である。
【0042】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、ポリウレタン系エマルジョンの感熱ゲル化温度、貯蔵安定性、機械的安定性の測定は以下のようにして行った。なお、部は重量部を、濃度%は重量%をそれぞれ示す。
【0043】
[感熱ゲル化温度]
ポリウレタン系エマルジョンを試験管に10g秤取し、80℃の恒温熱水浴中で撹拌しながら昇温し、エマルジョンが流動性を失いゲル状物となるときのエマルジョンの温度を感熱ゲル化温度とした。
【0044】
[貯蔵安定性]
ポリウレタン系エマルジョンを25℃で放置し、凝析物の生成を観察した。
【0045】
[機械的安定性]
ポリウレタン系エマルジョンを不織布に含浸し、マングルで搾って凝析物の生成を観察した。
【0046】
以下の実施例などで用いた化合物に関する略号を下記の表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
《アミノ基含有ポリビニルアルコールの製造》
[参考例1]
還流冷却管を備えた反応容器に、酢酸ビニルモノマー 405部、アリルグリシジルエーテル 11部およびメタノール 30部を秤取し、内部を十分に窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部をメタノール15部に溶解させた開始剤溶液を添加し、60℃で4時間重合させた後、冷却して重合を停止させた。このときの固形分濃度は54.8%であった。次いで、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(固形分濃度44.5%)を得た。次に、前記ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液 100部を、還流冷却管を備えた反応容器に秤取し、内部を十分に窒素置換した後、2−アミノチオフェノール 8.0部と水酸化ナトリウム 0.03部をメタノール 48部に溶解させた溶液を添加し、50℃で2時間反応させた。次いで、濃度10%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液 20部を添加し、40℃で5時間放置することによりケン化反応を行った。得られた反応物を粉砕し、酢酸 8部を加えて中和した後、ソックスレー抽出器を用いてメタノールで48時間以上洗浄し、続いて60℃で20時間以上乾燥させることにより1級アミノ基含有ポリビニルアルコール(以下、アミノ基変性PVA▲1▼と称する)を得た。アミノ基変性PVA▲1▼のIRおよび1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、またアミノ基由来の窒素原子が0.67重量%導入され、ケン化度が99.0モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲1▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均分子量を算出したところ、40,000であった。
【0049】
[参考例2]
参考例1において、酢酸ビニルモノマーを 400部、アリルグリシジルエーテルを 19.3部として酢酸ビニル共重合体を得、2−アミノチオフェノールを 20部として反応させること以外は、参考例1と同様にして1級アミノ基含有ポリビニルアルコール(以下、アミノ基変性PVA▲2▼と称する)を得た。アミノ基変性PVA▲2▼のIRおよび1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、またアミノ基由来の窒素原子が1.11重量%導入され、ケン化度が97.5モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲2▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均分子量を算出したところ、35,000であった。
【0050】
[参考例3]
参考例1において、酢酸ビニルモノマーを 350部、アリルグリシジルエーテルを 24.4部として酢酸ビニル共重合体を得、2−アミノチオフェノールを 28部として反応させ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を10部としてケン化反応を行うこと以外は、参考例1と同様にして1級アミノ基含有ポリビニルアルコール(以下、アミノ基変性PVA▲3▼と称する)を得た。アミノ基変性PVA▲3▼のIRおよび1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、またアミノ基由来の窒素原子が1.77重量%導入され、ケン化度が88.5モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲2▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均分子量を算出したところ、15,000であった。
【0051】
[参考例4]
参考例1において、酢酸ビニルモノマーを 400部、アリルグリシジルエーテルを 19.3部として酢酸ビニル共重合体を得、2−アミノチオフェノールを 20部として反応させ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を5部としてケン化反応を行うこと以外は、参考例1と同様にして1級アミノ基含有ポリビニルアルコール(以下、アミノ基変性PVA▲4▼と称する)を得た。アミノ基変性PVA▲4▼のIRおよび1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、またアミノ基由来の窒素原子が1.11重量%導入され、ケン化度が80.0モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲4▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均分子量を算出したところ、35,000であった。
【0052】
《ポリウレタンエマルジョンの製造》
[実施例1]
3l三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、IPDI 111.1g、DMPA 6.71gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 202.9gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製,ノニオン系界面活性剤)14.5gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにアミノ基含有PVA▲1▼ 34.0g、DETA7.58gおよびIPDA 12.52gを蒸留水 652gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去した後、塩化カルシウム 13.6gを加えて固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲1▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲1▼の感熱ゲル化温度は49℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0053】
[実施例2]
3l三ツ口フラスコに、PMPA3600 540.0g、IPDI 80.0g、DMPA 6.04gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 191.4gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 4.55gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン930(花王製,ノニオン系界面活性剤)19.1gを蒸留水 397gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにアミノ基含有PVA▲2▼ 32.0gを蒸留水 373gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで30秒間撹拌し、次いでDETA 10.78gを蒸留水 240gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌しして反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去した後、塩化ナトリウム 32.1gを加えて固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲2▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲2▼の感熱ゲル化温度は43℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0054】
[実施例3]
3l三ツ口フラスコに、PTMG2000 250.0g、PCL2000 250.0g、HMDI 118.1g、DMPA 6.71gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、80℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 188.7gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製,ノニオン系界面活性剤)6.7gおよびエマルゲン930(花王製,ノニオン系界面活性剤)6.7gを蒸留水 392gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにアミノ基含有PVA▲3▼ 48.3g、DETA 6.76gおよびIPDA 5.57gを蒸留水 644gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去した後、硫酸ナトリウム 16.2gを加えて固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲3▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲3▼の感熱ゲル化温度は45℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0055】
[実施例4]
3l三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、TDI 87.1g、DMPA 6.71gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、70℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 194.6gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン930(花王製,ノニオン系界面活性剤)16.5gおよびアミノ基含有PVA▲1▼ 32.4gを蒸留水 520gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちに、DETA 7.59gおよびEDA 4.42gを蒸留水 494gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去した後、塩化カリウム 26.0gを加えて固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲4▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲4▼の感熱ゲル化温度は42℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0056】
[実施例5]
実施例1において、アミノ基含有PVA▲1▼の代わりにアミノ基含有PVA▲4▼を用い、塩化カルシウムを用いないこと以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲5▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲5▼の感熱ゲル化温度は48℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0057】
[比較例1]
実施例1において、塩化カルシウムを用いないこと以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲6▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲6▼は感熱ゲル化温度を示さず、また貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0058】
[比較例2]
実施例1において、アミノ基含有PVA▲1▼を用いないこと以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョンを製造しようとしたところ、DETAおよびIPDAの水溶液を添加した際に、系がゲル化して安定なエマルジョンを製造することができなかった。
【0059】
[比較例3]
実施例1において、アミノ基含有PVA▲1▼を用いず、エマルゲン985を38.7g用いること以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲7▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲7▼の感熱ゲル化温度は48℃であり、貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0060】
[比較例4]
実施例1において、アミノ基含有PVA▲1▼の代わりに無変性ポリビニルアルコール(分子量40,000、ケン化度98.8モル%)を用い、エマルゲン985を38.7g用いること以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョン(以下、PUエマルジョン▲8▼と称する)を得た。PUエマルジョン▲8▼の感熱ゲル化温度は50℃であり、また貯蔵安定性および機械的安定性は下記の表2に示すとおりであった。
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
本発明によって得られるポリウレタン系エマルジョンは、感熱ゲル化性、貯蔵安定性、機械的安定性に優れており、不織布などの繊維処理加工に用いると、風合いや耐摩耗性、耐溶剤性、耐久性等に優れた製品を安定に製造することができ、非常に有用である。
Claims (3)
- 分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる際に、あるいは乳化させた後に、(a)分子中に一級および二級アミノ基から選ばれた少なくとも一種の基を有するポリビニルアルコール系重合体、および(b)分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも一種の基を有する低分子化合物を、同時にまたは別途に添加し、反応させ、次いで電解質を添加することを特徴とする感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョンの製造方法。
- 分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをノニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化させる際に、あるいは乳化させた後に、(a)分子中に一級および二級アミノ基から選ばれる少なくとも一種の基を有し、且つケン化度が85モル%以下のポリビニルアルコール系重合体、(b)分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも一種の基を有する低分子化合物を、同時にまたは別途に添加し、反応させることを特徴とする感熱性ポリウレタン系エマルジョンの製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られた感熱ゲル化性ポリウレタン系エマルジョン。
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