JP3913577B2 - ポリウレタン系エマルジョンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタン系エマルジョンの製造方法に関する。詳しくは、耐溶剤性に優れ、かつ経時的な着色の起こらないポリウレタン系エマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリウレタンはその優れた機械的性質、耐摩耗性、耐薬品性、接着性などの特性を活かして、ゴムとプラスチックスの境界分野を埋める樹脂として、塗料、接着剤、人工皮革などの幅広い用途分野に浸透している。その中で、環境保全、省資源、安全性といった社会ニーズに対応すべく、ポリウレタン系エマルジョンが急激に発展してきている。ウレタン樹脂の水中への乳化分散技術、アイオノマー化による自己乳化分散技術、さらには水中での高分子量化技術などの進歩により高性能のポリウレタン系エマルジョンが出現し、その性能は今日では溶剤系ポリウレタン樹脂に匹敵するレベルになり、各種の用途分野で実用化されるに至っている。
【0003】
しかしながら、ポリウレタン系エマルジョンを水性化するために乳化剤を使用すると、エマルジョンを皮膜化した際に乳化剤がブリードして皮膜の接着性を阻害する場合がある。この問題点は、ポリウレタンプレポリマー中にイオン基を導入し、自己乳化型とすることで解決されるが、この方法ではポリウレタン系エマルジョンをイオン基により親水化しているため、該ポリウレタン系エマルジョンを各種の水性エマルジョンとブレンドして使用した場合にその親水性が失われ、混和性に問題を生じる場合がある。特開2000−178339公報では、アミノ基を有するポリビニルアルコールにより安定化されたポリウレタン系エマルジョンが提案され、これにより上記問題点は大幅に改善された。しかし、該ポリウレタン系エマルジョンはアミノ基を有するが故に、経時的な着色が起こる問題点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、耐溶剤性に優れ、かつ経時的な着色の起こらないポリウレタン系エマルジョンの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、水性媒体中において、ポリウレタンプレポリマー(A)に、分子中に下記一般式(I)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)、ならびに分子中に1級アミノ基、2級アミノ基、1級水酸基および2級水酸基から選ばれる少なくとも1種の活性水素原子を有する官能基を含有する低分子化合物(C)を反応させてポリウレタン系エマルジョンを製造することにより、上記の課題が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【化2】
(ここで、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびR 5 は、それぞれ水素原子または炭素数8以下の置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Aは2価の炭化水素基、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含む2価の炭化水素基を、Sは硫黄原子を、Xは−CH 2 CH(NH 2 )−COOH、−C(CH 3 ) 2 CH(NH 2 )−COOH、−CH 2 CH(NH(CH 3 ))−COOH、−CH 2 CH(N(CH 3 ) 2 )−COOH、−CH 2 CH(CONHCH 2 COOH)−NHCOCH 2 CH 2 CH(NH 2 )COOHおよびこれらの塩やベタインのいずれかから選ばれる1価の基をそれぞれ表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明に用いられるポリウレタンプレポリマー(A)は、実質的に、高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を、溶媒の存在下または不存在下で反応させて得られる、分子中にイソシアネート基を1個以上有するポリウレタンプレポリマーである。
【0008】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられる高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどを挙げることができ、ポリウレタンプレポリマーはこれらの高分子ポリオールの1種または2種以上から構成される。
【0009】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリオールは、例えば、常法に従って、ポリカルボン酸およびそのエステルまたは無水物などのエステル形成性誘導体に代表されるポリカルボン酸成分とポリオール成分とを直接エステル反応させるか、またはエステル交換反応させることによって得られる。
【0010】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリオールは、そのポリカルボン酸成分として、脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主とし、場合により少量の3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むポリカルボン酸成分を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0011】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタンなどのトリオール;ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリオールは、そのポリオール成分として、脂肪族ポリオールを主とし、場合により少量の3官能以上のポリオールを含むポリオール成分を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0012】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネートおよびジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオール成分としては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0013】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールとカーボネート化合物を反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリカーボネートポリオールとポリオールおよびポリカルボン酸とを反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールとポリカーボネートポリオールとを反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0014】
また、ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられる高分子ポリオール成分の数平均分子量は500〜10000であることが必要であり、700〜5000であることが好ましく、750〜4000であることがさらに好ましい。本発明のポリウレタン系エマルジョンの製造方法において、数平均分子量が500〜10000の範囲から外れた高分子ポリオールを用いて製造されたポリウレタンプレポリマーを使用する場合、得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン組成物はその耐寒性、耐熱性、耐溶剤性などが低下したものになりやすい。
【0016】
さらに、ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられる高分子ポリオール成分は、1分子当たりの水酸基の数fが2.0≦f≦4.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.0≦f≦3.0の範囲である。本発明のポリウレタン系エマルジョンの製造方法において、1分子当たりの水酸基数fが前記した2.0≦f≦4.0の範囲にある高分子ポリオール成分を用いて製造されたポリウレタンプレポリマーを使用する場合、得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン組成物の耐熱性、耐溶剤性が良好になる。
【0017】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に用いられる有機ジイソシアネート成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できるが、分子量500以下の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのうち1種または2種以上が好ましく使用される。とりわけ、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましく使用される。有機ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造においては、必要に応じて鎖伸長剤成分を用いることができる。用いうる鎖伸長剤成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造は、従来公知の方法で行うことができ、例えば30〜150℃の温度条件下、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。この際使用できる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、エマルジョン製造後の溶媒除去の容易性を考慮すると、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの沸点が100℃未満の溶媒が好ましい。また、プレポリマー製造後に、粘度低下などを目的として、上記の有機溶媒を添加、あるいは追加しても良い。
【0020】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造の際には、必要に応じて反応触媒を添加することができ、このような触媒としては例えば、オクチル酸スズ、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩などの有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミンなどを挙げることができる。
【0021】
ポリウレタンプレポリマー(A)の製造にあたっては、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤が有している活性水素原子の全量に基づいて、活性水素原子1当量当たりのイソシアネート基の当量Rが、1.05≦R≦3.0の範囲であることが好ましく、1.1≦R≦2.5の範囲であることがより好ましい。Rが1.05未満である場合には、ポリウレタンプレポリマーと後述する一般式(I)で表される単量体単位を有するビニルアルコール系重合体との反応性が低下し、本発明の製造方法で得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン組成物の耐熱性、耐溶剤性などが十分に改善されず、またポリウレタンプレポリマーの粘度が高いために水中への乳化分散が困難である。Rが3.0を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーと後述する一般式(I)で表される単量体単位を有するビニルアルコール系重合体ならびにアミノ基または水酸基を有する低分子化合物との反応の際に、エマルジョンが不安定化してゲル化しやすくなる。
【0022】
ポリウレタンプレポリマー(A)は、その分子中に共有結合により結合したアニオン性基を有するものであってもよい。ポリウレタンプレポリマー分子中に共有結合により結合したアニオン性基を導入する方法としては、ポリウレタンプレポリマーの製造に際して、アニオン性基を有する活性水素原子含有化合物を併用する方法が挙げられる。ここで、アニオン性基を有する活性水素原子含有化合物としては、分子内に水酸基またはアミノ基などの活性水素原子を有する官能基を1個以上含有し、かつカルボン酸、スルホン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアニオン性基を含有するものが挙げられ、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好適に用いられる。ポリウレタンプレポリマー(A)にアニオン性基としてカルボン酸、スルホン酸などの酸基を導入した場合、通常はトリエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質を添加してそれらの酸基を塩にする。
【0023】
前記アニオン性基を有する活性水素原子含有化合物の使用量は特に制限されないが、通常、ポリウレタンプレポリマー(A)に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%である。
【0024】
また、ポリウレタンプレポリマー(A)の製造に際し、必要に応じて、分子量200〜10,000のポリオキシエチレングリコールおよびそのモノアルキルエーテルなどのノニオン性基含有化合物を併用することもできる。
【0025】
ポリウレタンプレポリマー(A)の乳化は、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの乳化分散装置を用いて行われる。この際、ポリウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と水との反応を抑制するため、乳化温度は40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においてポリウレタン系エマルジョンは、ポリウレタンプレポリマー(A)の乳化と同時に、またはその乳化後に、一般式(I)で表される単量体単位を有するビニルアルコール系重合体(B)(以下、アミノ酸基含有PVA系重合体(B)と略記することがある)、ならびに分子中に1級アミノ基、2級アミノ基、1級水酸基および2級水酸基から選ばれる少なくとも1種の活性水素原子を有する官能基を含有する低分子化合物(C)(以下、活性水素原子含有低分子化合物(C)と略記することがある)を添加、反応させて得られる。アミノ酸基含有PVA系重合体(B)および活性水素原子含有低分子化合物(C)の添加は、同時に行っても良く、また別途に行っても良い。好ましくは、アミノ酸基含有PVA系重合体(B)を添加した後に、活性水素原子含有低分子化合物(C)が添加される。
【0027】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)の一般式(I)で表される単量体単位の含有量には、特に制限はなく、重合度などにより好適な範囲が変化するが、一般に、0.1〜15モル%が好ましく、0.2〜10モル%がより好ましい。該単量体単位の含有量が0.1モル%よりも少ない場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応性が低下し、本発明の製造方法で得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン系組成物の耐溶剤性などが十分に改善されない。また、該単量体単位の含有量が15モル%を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなる。
【0028】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)のけん化度は、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。けん化度が60モル%未満の場合には、本発明の製造方法で得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン系組成物の耐溶剤性が不十分になる恐れがある。また、アミノ酸基含有PVA系重合体(B)の重合度は100〜8000であることが好適であり、200〜5000であることがより好適である。
【0029】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)は、一般式(I)で表される単量体単位を除くと、実質的にビニルアルコール単位またはビニルアルコール単位とビニルエステル単位から構成される。ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルなどの単量体が挙げられ、通常、酢酸ビニルである。
【0030】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)は、本発明の効果を損なわない限り、ビニルエステル単位、ビニルアルコール単位および一般式(I)で表される単量体単位以外の単量体単位を1種類以上有していてもよい。そのような単量体単位としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化オレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド系単量体;N−ビニルピロリドン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸などの(無水)カルボン酸基を有する単量体;アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピル、メタクリル酸スルホプロピル、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体およびそのナトリウムまたはカリウム塩;アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有する単量体およびその4級化物;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体などの単量体単位が挙げられる。また、前記のアミノ酸基含有PVA系重合体は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合することによって得られる末端に官能基を有するものでもよい。
【0031】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)は様々な方法により得ることができる。その製造方法としては、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体および酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を共重合させて、側鎖にエポキシ基を有するビニルエステル系重合体を製造し、さらに該重合体の側鎖に存在するエポキシ基と一般式(I)で表される単量体単位を有するチオール化合物との間でNaOHなどを触媒として付加反応を行わせて、該重合体の側鎖に前記単量体単位を導入した後、該重合体をけん化する方法が前記単量体単位の導入に用いられる官能基を有する化合物の工業的入手性およびコスト、ならびに官能基導入反応の収率などを考慮すると好ましい。
【0032】
前記の製造方法において、エポキシ基を有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、8−ヒドロキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン、8−アセトキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン、N−(2,3−エポキシ)プロピルアクリルアミド、N−(2,3−エポキシ)プロピルメタクリルアミド、4−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、N−グリシドキシメチルアクリルアミド、N−グリシドキシメチルメタクリルアミド、N−グリシドキシエチルアクリルアミド、N−グリシドキシエチルメタクリルアミド、N−グリシドキシプロピルアクリルアミド、N−グリシドキシプロピルメタクリルアミド、N−グリシドキシブチルアクリルアミド、N−グリシドキシブチルメタクリルアミド、4−アクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、アクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリル酸グリシジルなどが用いられる。
【0033】
また、前記の製造方法において、一般式(I)で表される単量体単位を有するチオール化合物としては、システイン、ぺニシルアミン、グルタチオン、N−メチルシステイン、N,N−ジメチルシステインなどが例示される。また、これらの化合物の塩、酢酸エステルおよび安息香酸エステルなどのエステル誘導体ならびにチオエステル誘導体も使用できる。
【0034】
前記の製造方法において、チオール基もしくはチオエステル基とエポキシ基との反応は、無溶媒で、またはチオール基もしくはチオエステル基を有する化合物およびエポキシ基を有する化合物を溶解もしくは膨潤させる溶媒中で実施される。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;n−ヘキサンなどの炭化水素類が挙げられ、これらの溶媒は単独でもしくは2種以上を混合して使用される。反応条件は、エポキシ基を有する化合物の構造やチオール基もしくはチオエステル基を有する化合物の構造により異なるが、通常、溶媒を使用する場合においては、ポリマー濃度5〜90%、チオール基またはチオエステル基/エポキシ基=1.0〜5.0(モル比)、反応温度0〜250℃、反応時間0.01〜20時間である。ここで、チオール基とエポキシ基とを反応させる場合には、トリエチルアミン、ピリジンなどの3級アミン;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン;水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ナトリウムメトキシドなどの塩基性化合物が、チオエステル基とエポキシ基とを反応させる場合には、トリブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩が、それぞれ反応触媒として有効である。また、チオール基の酸化を防止するために、反応系を脱気または窒素置換したり、酸化防止剤などを添加することもできる。
【0035】
前記の製造方法において、チオール基またはチオエステル基とエポキシ基との反応の後、ビニルエステル系重合体のけん化反応を行う際には、通常のビニルエステル系重合体のけん化に用いられる塩基性触媒または酸触媒を用いたけん化反応がそのまま適用できる。すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒やp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用い、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類またはエチレングリコールなどのグリコール類を溶媒とするけん化反応が適用可能である。ここで、上記のけん化反応の溶媒には、ビニルエステル系重合体や触媒の溶解性を向上させるために、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、アセトン、水などの溶媒を適宜混合してもよい。けん化反応の条件は、使用するビニルエステル系重合体の構造や目的とするビニルアルコール系重合体のけん化度によって適宜調整されるが、通常、けん化反応触媒/重合体中のビニルエステル系単量体単位=0.001〜1.2(モル比)、反応温度20〜180℃、反応時間0.1〜20時間の範囲で実施される。
【0036】
前記の製造方法で得られるアミノ酸基含有PVA系重合体(B)は、主として分子鎖中に下記一般式(I)で表される単量体単位を有する。
【0037】
【化3】
(ここで、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素原子または炭素数8以下の置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Aは2価の炭化水素基、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含む2価の炭化水素基を、Sは硫黄原子を、Xは−CH 2 CH(NH 2 )−COOH、−C(CH 3 ) 2 CH(NH 2 )−COOH、−CH 2 CH(NH(CH 3 ))−COOH、−CH 2 CH(N(CH 3 ) 2 )−COOH、−CH 2 CH(CONHCH 2 COOH)−NHCOCH 2 CH 2 CH(NH 2 )COOHおよびこれらの塩やベタインのいずれかから選ばれる1価の基をそれぞれ表す。)
【0038】
一般式(I)で表される単量体単位中のAは、2価の炭化水素基、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含む2価の炭化水素基であればその構造に特に制限はなく、−(CH2CH2)n−(n=1〜10、好適には1〜8)、−CH2OCH2−、−OCH2−、−CONH−φ−OCH2−、−CONHCH2−、−CONHCH2OCH2−、−CONHCH2OCH2CH2−、−CONHCH2OCH2CH2CH2−、−CONHCH2OCH2CH2CH2CH2−、−CONHCH2−φ(CH3)2−CH2−などが例示される(なお、φはフェニレン基を意味する)。
【0039】
アミノ酸基含有PVA系重合体(B)の使用量は、ポリウレタンプレポリマー(A)100重量部に対し、0.2〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。アミノ酸基含有PVA系重合体(B)の使用量が0.2重量部未満の場合には、本発明の製造方法で得られるポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン系組成物の耐溶剤性が低下する恐れがあり、使用量が20重量部を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化する恐れがある。また、ポリウレタンプレポリマー(A)との反応に際してアミノ酸基含有PVA系重合体(B)は、通常、水溶液にして添加されるが、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などの有機溶媒や、これら有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させて添加しても良い。
【0040】
本発明において活性水素原子含有低分子化合物(C)としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素原子を分子中に含有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリンなどのモノアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
活性水素原子含有低分子化合物(C)の使用量は特に制限されないが、通常、活性水素原子含有低分子化合物(C)中の活性水素原子の量が、ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基1当量あたり、0.7〜1.2当量となる範囲で用いられ、好ましくは0.75〜1.15当量、より好ましくは0.8〜1.1当量となる範囲で用いられる。前記活性水素原子の量が、0.7当量未満または1.2当量を越える場合には、ポリウレタン系エマルジョンの鎖伸長が十分に行われず、ポリウレタン系エマルジョンからなるポリウレタン系組成物の耐溶剤性が不十分となる懸念がある。
【0042】
本発明の製造方法においてポリウレタン系エマルジョンは、通常、固形分濃度が20〜65重量%に調整されるが、これに限定されるものではない。また、ポリウレタンプレポリマー(A)の製造において有機溶媒を用いた場合には、必要に応じて、蒸留分離またはストリッピング操作により有機溶媒を除去することができる。
【0043】
本発明の製造方法によるポリウレタン系エマルジョンは、従来公知の種々のエマルジョンと配合可能である。配合可能なエマルジョンとしては特に制限されないが、例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エポキシエマルジョンなどが挙げられる。
【0044】
また、本発明の製造方法によるポリウレタン系エマルジョンには、必要に応じて、その乾燥性、セット性、粘度、造膜性などを調整するために、N−メチルピロリドン、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの各種有機溶剤;でんぷん、変性でんぷん、酸化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体などの水溶性高分子;尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホルマリン樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂などの熱硬化性樹脂;クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉などの充填剤;小麦粉などの増量剤;ホウ酸、硫酸アルミニウムなどの反応促進剤;酸化チタンなどの顔料;酸化防止剤;紫外線吸収剤;消泡剤;レベリング剤;凍結防止剤;防腐剤;防錆剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0045】
本発明の製造方法によるポリウレタン系エマルジョンは、経時的な着色が起こらず、かつ耐溶剤性に優れる。よって、産業用繊維、皮革、室内装飾、アパレル、床材(木製、コンクリート、フロアーポリッシュ)、プラスチック部品などのコーティング剤、パッケージ(包装紙など)、ラミネーション(フィルム/ホイル、繊維など)、一般工業用の接着剤(塩ビシート/木材、塩ビシート/金属、金属/木材)、ガラス繊維収束剤、インク、塗料などの用途分野に有効である。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。なお、以下の実施例において「部」および「%」は、特に断わりのない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0047】
ポリウレタン系エマルジョンの物性は以下の方法により評価した。(1)皮膜の耐溶剤性ポリウレタン系エマルジョンを20℃65%RH下でポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)フィルム上に流延し、7日間乾燥させて厚み500μmの乾燥皮膜を得た。この皮膜を直径2.5cmに打ち抜き、それを試料として20℃アセトンに24時間浸漬した場合の、皮膜の吸液率、溶出率を求めた。吸液率(%):(浸漬後の皮膜吸液重量/浸漬前の皮膜絶乾重量)×100溶出率(%):{1−(浸漬後の皮膜絶乾重量/浸漬前の皮膜絶乾重量)}×100浸漬前の皮膜絶乾重量:浸漬前の皮膜重量(含水)−(浸漬前の皮膜重量(含水)×皮膜含水率(%)/100)
皮膜含水率:皮膜(20℃アセトンに浸漬するサンプルとは別のサンプル)を、105℃で4時間絶乾し、皮膜の含水率を予め求める。浸漬後の皮膜絶乾重量:浸漬後の皮膜を105℃で4時間絶乾した重量。浸漬後の皮膜吸液重量:浸漬後の皮膜をアセトンから引き上げた後、皮膜についたアセトンをガーゼで拭き取り秤量。(2)皮膜の経時的な着色ポリウレタン系エマルジョンを20℃65%RH下でPETフィルム上に流延し、7日間乾燥させて厚み500μmの乾燥皮膜を得た。この皮膜を直射日光下に1週間放置し、着色状態を目視により観察し、以下の基準により判断した。
○:着色なし、△:黄色に着色、×:茶色に着色
【0048】
実施例で用いた化合物に関する略号を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例13
リットル三ツ口フラスコに、PMPA2000795.6g、IPDI240.1g、DMPA10.7gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のポリウレタンプレポリマー(アニオン性基含有化合物:DMPA1.0重量%)を得た。これにMEK527.2gを加えて均一に撹拌した後、フラスコ内温度を40℃に下げ、TEA8.1gを加えて10分間撹拌を行い、ポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。また、別途アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、得られた共重合体にNaOH触媒を用いてシステインを付加し、さらにけん化することによりアミノ酸基含有PVA系重合体(重合度500、けん化度97.5モル%、アミノ酸基変性量1.0モル%、以下、アミノ酸基含有PVA(B−1)と称する)を調製した。アミノ酸基含有PVA(B−1)52.7gを蒸留水1225.9gに溶解し、得られた水溶液をホモミキサーで強撹拌する中へ、前記ポリウレタンプレポリマー溶液を添加し、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した。さらにDETA12.4gおよびIPDA71.5gを蒸留水435.0gに溶解した水溶液を該乳化液に加えてホモミキサーで1分間撹拌し、ポリウレタンの鎖伸長を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去して固形分濃度40%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価結果を表2に示す。
【0051】
実施例2
アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、得られた共重合体にNaOH触媒を用いてシステインを付加し、さらにけん化することによりアミノ酸基含有PVA系重合体(重合度1500、けん化度88モル%、アミノ酸基変性量3.1モル%、以下、アミノ酸基含有PVA(B−2)と称する)を調製した。実施例1で用いたアミノ酸基含有PVA(B−1)を用いる代わりに、アミノ酸基含有PVA(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度40%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価結果を表2に示す。
【0052】
比較例1
アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、得られた共重合体にNaOH触媒を用いて2−アミノチオフェノールを付加し、さらにけん化することにより芳香族アミノ基含有PVA系重合体(重合度500、けん化度98モル%、芳香族アミノ基変性量1モル%)を調製した。実施例1で用いたアミノ酸基含有PVA(B−1)を用いる代わりに、該芳香族アミノ基含有PVA系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度40%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価結果を表2に示す。
【0053】
比較例2
アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、得られた共重合体にNaOH触媒を用いて2−メルカプトエタノールを付加し、さらにけん化することにより1級水酸基含有PVA系重合体(重合度500、けん化度97.5モル%、1級水酸基変性量1.0モル%)を調製した。実施例1で用いたアミノ酸基含有PVA(B−1)を用いる代わりに、該1級水酸基含有PVA系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度40%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価結果を表2に示す。
【0054】
比較例3
実施例1で用いたアミノ酸基含有PVA(B−1)を用いる代わりに、無変性PVA(重合度500、けん化度98.5モル%:(株)クラレ製PVA−105)を用いた以外は実施例1と同様にしてエマルジョン調製を試みたが、乳化後に分離が起こり、安定したエマルジョンが得られなかった。
【0055】
比較例4
実施例1で用いたアミノ酸基含有PVA(B−1)を用いなかった以外は実施例1と同様にしてエマルジョン調製を試みたが、乳化時に析出が生じ、安定したエマルジョンが得られなかった。
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
本発明の製造方法によるポリウレタン系エマルジョンは、耐溶剤性に優れ、かつ経時的な着色の問題がない。よって、産業用繊維、皮革、室内装飾、アパレル、床材(木製、コンクリート、フロアーポリッシュ)、プラスチック部品などのコーティング剤、パッケージ(包装紙など)、ラミネーション(フィルム/ホイル、繊維など)、一般工業用の接着剤(塩ビシート/木材、塩ビシート/金属、金属/木材)、ガラス繊維収束剤、インク、塗料などの用途分野に幅広く、かつ有効に利用できる。
Claims (1)
- 水性媒体中において、ポリウレタンプレポリマー(A)に、分子中に下記一般式(I)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)、ならびに分子中に1級アミノ基、2級アミノ基、1級水酸基および2級水酸基から選ばれる少なくとも1種の活性水素原子を有する官能基を含有する低分子化合物(C)を反応させることを特徴とするポリウレタン系エマルジョンの製造方法。
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