JP3961141B2 - ポリウレタン水性エマルジョンの製造方法、並びにポリウレタン水性エマルジョンおよびポリウレタン - Google Patents
ポリウレタン水性エマルジョンの製造方法、並びにポリウレタン水性エマルジョンおよびポリウレタン Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタン(以下「PU」と略記する。)水性エマルジョンの製造方法、並びにPU水性エマルジョンおよびPUに関する。さらに詳しくは、耐溶剤性および耐水性に優れると共に、他の水性エマルジョンとの混和安定性に優れたPU水性エマルジョンの製造方法、並びにPU水性エマルジョンおよびPUに関する。
【0002】
【従来の技術】
PUは、ゴムとプラスチックスの境界分野を埋める樹脂として、塗料、接着剤および人工皮革などの幅広い用途に使用されている。近年、環境保全、省資源および安全性などの社会ニーズに対応するため、水性PUが増加している。PUの水への乳化分散技術、アイオノマー化による自己乳化分散技術、水中での高分子量化技術等の進歩により、水性PUの性能が向上してきている。また、特開昭53−79990号では、乳化剤として酸性アミノ酸と脂肪酸の縮合生成物の水溶性塩を用いることが提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の水性PUは、製造時に使用する乳化剤などの影響により、PUが本来有している耐溶剤性や耐水性が低下するという問題がある。また、水性PUと各種の水性エマルジョンをブレンドする場合には、混和性に問題が生じることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐溶剤性および耐水性に優れると共に、他の水性エマルジョンとの混和安定性に優れたPU水性エマルジョンの製造方法、並びにPU水性エマルジョンおよびPUを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させることを特徴とするポリウレタン水性エマルジョン(以下「PUエマルジョン」と略記する。)の製造方法を見出した。さらに、水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させて得られたPUエマルジョンを見出した。さらに、水性媒体中において、水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させて得られたPUを見出した。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるPUプレポリマー(A)は、分子中にイソシアネート基を1個以上有するPUであればよい。PUプレポリマーの製造方法としては、高分子ポリオールと有機ジイソシアネートを反応させる方法が挙げられる。なお、この反応は、溶媒の存在下または不存在下で行われ、鎖伸長剤を併用してもよい。
【0007】
高分子ポリオールの数平均分子量は、500〜10000が好ましく、700〜5000がより好ましく、750〜4000が特に好ましい。数平均分子量が上記の範囲から外れると、最終的に得られるPUエマルジョンの皮膜の耐寒性、耐水性および耐溶剤性などが低下しやすい。
高分子ポリオールは、1分子当たりの水酸基の数(f)が2.0〜4.0の範囲が好ましく、2.0〜3.0の範囲がより好ましい。1分子当たりの水酸基の数(f)が上記の範囲である場合には、最終的に得られるPUエマルジョンの皮膜の耐水性および耐溶剤性が顕著に向上する。
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0008】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分とポリオール成分を直接エステル化反応させるか、もしくはエステル交換反応させることによって得られる。ポリカルボン酸成分としては、ポリカルボン酸、そのエステル、その無水物などが挙げられる。
ポリカルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;それらのエステル、それらの無水物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主として用いるのが好ましい。また、場合によっては、3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を少量併用するのが好ましい。
ポリオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ポリオールを用いるのが好ましい。また、場合によっては、3官能以上のポリオール成分を少量併用するのが好ましい。
【0009】
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート成分とポリオール成分との反応により得られる。
カーボネート成分としては、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートが挙げられる。ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネートが挙げられる。ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネートが挙げられる。
ポリオール成分としては、ポリエステルポリオールの説明の欄に記載したものが挙げられる。
【0010】
ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの;予め製造しておいたポリエステルポリオールとカーボネートを反応させて得られたもの;予め製造しておいたポリカーボネートポリオールと、ポリオールおよびポリカルボン酸を反応させて得られたもの;予め製造しておいたポリエステルポリオールと予め製造しておいたポリカーボネートポリオールを反応させて得られたものが挙げられる。
【0011】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0012】
有機ジイソシアネートとしては、通常のPUエマルジョンの製造に用いられる有機ジイソシアネートを使用することができる。中でも、分子量500以下の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが好ましく使用される。有機ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0013】
PUプレポリマーの製造には、必要に応じて鎖伸長剤を併用することができる。鎖伸長剤としては、通常のPUエマルジョンの製造に用いられる鎖伸長剤を使用することできる。中でも、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類が挙げられる。
【0014】
PUプレポリマーの製造方法としては、公知の方法が挙げられる。反応温度は、30〜150℃が好ましく、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。最終的に得られるPU水性エマルジョンからの溶媒除去の容易性を考慮すると、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃未満の溶媒が好ましい。また、プレポリマーの製造後に、粘度低下等を目的として、上記の有機溶媒を添加してもよい。
【0015】
PUプレポリマーを製造する際には、必要に応じて反応触媒を添加することができる。触媒としては、オクチル酸スズ、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩などの有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミンが挙げられる。
【0016】
PUプレポリマーの製造にあたっては、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤が有している活性水素原子の合計量に対して、イソシアネート基の当量比(R)が1.05〜3.0が好ましく、1.1〜2.5がより好ましい。Rが1.05未満の場合には、変性PVA(B)との反応性が低下し、耐水性および耐溶剤性等が十分に改善されず、またPUプレポリマーの粘度が高くなり水中への乳化が困難となる。一方、Rが3.0を越える場合には、変性PVA(B)やアミノ基または水酸基を含有する低分子化合物(C)との反応の際に、エマルジョンが不安定化してゲル化しやすくなる。
【0017】
次に、PUプレポリマーを水性媒体中で乳化させる。乳化方法としては、PUプレポリマーの分子中に親水性基を導入して、プレポリマー自身に自己乳化性を付与する方法;アミノ基または一級水酸基を含有する変性PVA(B)を用いて、PUプレポリマーを強制乳化させる方法;界面活性剤を用いて、PUプレポリマーを強制乳化させる方法が挙げられる。
【0018】
PUプレポリマーの分子中への親水性基の導入は、PUプレポリマーの合成時に、親水性基を有する活性水素原子を含有する化合物を併用することにより達成される。親水性基を有する活性水素原子を含有する化合物としては、分子内に水酸基またはアミノ基等の活性水素原子を1個以上含有し、且つカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性基;ポリオキシエチレン基等のノニオン性基;三級アミノ基、四級アンモニウム塩等のカチオン性基から選ばれる1種以上の親水性基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;分子量200〜10,000のポリオキシエチレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物;3−ジメチルアミノプロパノール等の三級アミノ基含有化合物およびこれらの誘導体等が挙げられる。さらに、上記の親水性基を有する活性水素原子を含有する化合物を共重合して得られるポリエステルポリオールまたはポリエステルポリカーボネートポリオールを用いることもできる。これらの中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸などのアニオン性基を有するものを用いてPUプレポリマーを製造した後、トリエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を添加してカルボン酸塩に変換する方法が好ましい。より好ましくは、アニオン性基の少なくとも一部がカチオン性化合物と塩を形成しているものが好ましい。
【0019】
界面活性剤を用いてPUプレポリマーを強制乳化させる場合には、PUプレポリマーは上記の親水性基を有していなくても良い。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。こられの中でも、HLB値が6〜20のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0020】
PUプレポリマーの乳化は、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化分散装置を用いて行われる。この際、PUプレポリマーのイソシアネート基と水との反応を抑制するため、乳化温度は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。
【0021】
本発明のPUエマルジョンは、水性媒体中において、成分(B)の存在下で、より好ましくは、成分(B)およびノニオン性界面活性剤の存在下で、成分(A)を乳化した後、成分(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させることによって得ることができる。
【0022】
本発明に使用される変性PVA(B)は、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性PVAである。
【0023】
アミノ基を含有する変性PVA(以下「アミノ基変性PVA」と略記する。)(A)としては、分子中に一級または二級アミノ基を有する変性PVAであればよい。
アミノ基変性PVA中のアミノ基の含有量は、アミノ基に由来する窒素原子の含有量が、変性PVAの全重量に対して、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。
アミノ基変性PVAの分子量は、ジメチルスルホキシド中の極限粘度測定(JIS)から算出した粘度平均分子量が、2,000〜200,000が好ましく、4,000〜100,000がより好ましい。
アミノ基変性PVAのけん化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
アミノ基変性PVAのアミノ基の含有量および重合度(または分子量)が上記の範囲よりも小さい場合には、PUエマルジョンの皮膜の耐水性および耐溶剤性等が不十分である。一方、アミノ基変性PVAのアミノ基の含有量および重合度(または分子量)が上記の範囲よりも大きい場合には、PUプレポリマーとの反応の際に、水性エマルジョンが不安定化し、ゲル化しやすくなる。
【0024】
アミノ基変性PVAは、一級アミノ基または二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、または加水分解等により一級アミノ基または二級アミノ基を生成しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体と、ビニルエステルを共重合させた後、ケン化する方法;アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体とビニルエステルを共重合させて得られたポリマーの側鎖のエポキシ基に、アミノ基を有するメルカプタンを水酸化ナトリウム等を触媒として付加反応させた後、ケン化する方法;PVAの水酸基と反応しうる官能基を分子内に有し、且つ一級あるいは二級アミノ基を有する化合物を変性PVAに反応させる方法;メルカプト基を有するPVAの存在下で、一級アミノ基または二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体を重合させる方法が挙げられる。
上記におけるビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
【0025】
一級水酸基を含有する変性PVA(以下「一級水酸基変性PVA」と略記する。)としては、分子内に一級水酸基を含有する変性PVAであればよい。
一級水酸基変性PVA中の一級水酸基の含有量は、0.1〜15モル%が好ましく、0.2〜10モル%がより好ましい。
一級水酸基変性PVAの重合度は、50〜4000が好ましく、100〜2000がより好ましい。
一級水酸基変性PVAのけん化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
一級水酸基変性PVAの一級水酸基の含有量および重合度(あるいは分子量)が上記の範囲よりも小さい場合あるいは大きい場合には、アミノ基変性PVAの欄に説明した現象が現れる。
【0026】
一級水酸基変性PVAは、けん反応後に一級水酸基を有する構造単位を与える単量体とビニルエステルとの共重合体をけん化することにより得られる。
けん化反応後に一級水酸基を有する構造単位を与える単量体としては、下記の化1および化2に示す単量体が挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
(但し、nは1〜20の整数を表し、R1はHまたはCH3を表す。)
【0029】
【化2】
【0030】
(但し、nは1〜20の整数を表し、R1はHまたはCH3を表し、R2はH、CH3、CH2CH3またはCH2CH2CH3を表す。)
【0031】
化1および化2におけるnは1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。化1あるいは化2の構造を有する単量体としては、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−メチルー2−プロペン−1−オール、3−メチルー3−ブテン−1−オール、それらのギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、前記のアミノ基変性PVAの説明の欄に記載したものが挙げられる。
【0032】
一級水酸基変性PVAは、上記以外の他の方法で合成したものでもよい。他の方法としては、2−メルカプトエタノール等の一級水酸基を分子内に有するチオール化合物の存在下で、ビニルエステルを重合し、それをけん化することにより末端に一級水酸基を含有する変性PVAを得る方法;ビニルエステルとアリルグリシジルエーテル等のエポキシ含有単量体を共重合し、そのエポキシ基と2−メルカプトエタノール等の一級水酸基含有チオール化合物等を付加反応させた後、けん化することにより一級水酸基変性PVAを得る方法が挙げられる。
アセトアセチル基変性PVAとしては、PVAに固気反応によりジケテンを反応させて得られるものが例示される。アセトアセチル基の含有量は0.1〜15モル%が好ましく、0.2〜10モル%がより好ましい。アセトアセチル基変性PVAの重合度、けん化度は前記した一級水酸基変性PVAと同じ範囲のものが好適である。
上記変性PVA(B)のうち、アミノ基または一級水酸基を含有するPVAが、本発明においてはより好適に使用される。
【0033】
アミノ基変性PVA、一級水酸基変性PVAまたはアセトアセチル基変性PVAは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
変性PVA(B)の添加量は、PUプレポリマー(A)100重量部に対して、0.2〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましい。変性PVAの添加量が0.2重量部未満の場合には、PUエマルジョンの耐水性および耐溶剤性が低下する。一方、変性PVAの添加量が20重量部を越える場合には、PUプレポリマーとの反応の際に、エマルジョンが不安定化し、ゲル化しやすくなる。
変性PVAの添加は、通常は水溶液の形態で行うが、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の有機溶媒やこれらと水の混合溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0035】
アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)は、分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる少なくとも1種の活性水素原子を有する低分子化合物であり、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に有するものが好ましい。低分子化合物の分子量は300以下が好ましい。低分子化合物の具体例としては、ジエチレントリアミン等のトリアミン類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリン等のモノアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類などが挙げられる。
【0036】
PUプレポリマー(A)のイソシアネート基の合計量に対して、低分子化合物(C)の中の活性水素原子の合計量が0.70〜1.20当量が好ましく、0.75〜1.15当量がより好ましく、0.80〜1.10当量が特に好ましい。活性水素原子の合計量が、0.70当量未満または1.20当量を越える場合には、PUの重合度が十分に上がらず、耐水性や耐溶剤性が不十分となる。
【0037】
本発明のPUエマルジョンは、通常、固形分濃度が約20〜65重量%に調整される。また、PUプレポリマーの製造時に有機溶媒を用いた場合には、必要に応じて、蒸留分離あるいはストリッピングをすることにより、有機溶媒を除去することができる。
【0038】
本発明のPUエマルジョンは、PU構造とPVA構造からなるポリマーを含有している。該ポリマーは、下記の一般式(1)または一般式(2)で表される結合形態を含んでいるものと推定され、本発明のPUエマルジョンの性能発現に寄与している。
PU−NHCONR−PVA (1)
(但し、PUはPU構造を表し、PVAはPVA構造を表し、RはH、CH3またはCH2CH3を表す。)
PU−NHCOO−PVA (2)
(但し、PUはPU構造を表し、PVAはPVA構造を表す。)
【0039】
本発明のPUエマルジョンは、必要に応じて、従来公知の各種エマルジョンを配合することができる。添加されるエマルジョンとしては、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エポキシエマルジョンが挙げられる。
【0040】
本発明のPUエマルジョンは、必要に応じて、その乾燥性、セット性、粘度、造膜性等を調整するために、N−メチルピロリドン、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の各種有機溶剤;でんぷん、変性でんぷん、酸化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、PVA等の水溶性高分子;尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホルマリン樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂等の熱硬化性樹脂;クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉等の充填剤;小麦粉等の増量剤;ホウ酸、硫酸アルミニウム等の反応促進剤;酸化チタン等の顔料;酸化防止剤;紫外線吸収剤;消泡剤;レベリング剤;凍結防止剤;防腐剤;防錆剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0041】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお以下の実施例及び比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。
【0042】
【実施例】
PUエマルジョン(以下「Em」と略記する。)の皮膜の耐溶剤性および耐水性、PUエマルジョンの混和安定性は以下の方法により測定した。
【0043】
[PUエマルジョンの皮膜の耐溶剤性]
50℃でキャスト製膜して得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、90℃のトルエン中に1時間浸漬し、皮膜の溶出率および面積膨潤率を下記の式から求めた。
溶出率(%)={(W1−W2)/W1 }×100
W1:浸漬前の重量
W2:浸漬後の重量
面積膨潤率(%)={(A1−A2)/A1 }×100
A1:浸漬前の面積
A2:浸漬後の面積
【0044】
[PUエマルジョンの皮膜の耐水性]
50℃でキャスト製膜して得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、20℃の水中に24時間浸漬し、皮膜の溶出率および面積膨潤率を上記のPUエマルジョンの皮膜の耐溶剤性の欄に示した式から求めた。
【0045】
[PUエマルジョンの混和安定性]
PUエマルジョン20gに対して、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(EVA-Em)(クラレ製、OM−4200、固形分濃度55%)80gを添加して混合した場合の安定性を観察した。その結果を下記の記号で示す。
○: 全く変化なし(安定性良好)。
△: 凝集あるいは相分離がわずかに観察される。
×: 凝集あるいは相分離が激しい。
【0046】
以下の実施例および比較例において用いた化合物に関する略号を下記に示す。
【0047】
PMPA2150: 数平均分子量2150のポリエステルジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール、およびアジピン酸を反応させて製造)
PMPA3600: 数平均分子量3600のポリエステルジオール(3−メチル−1,5−ペンタンジオール、およびアジピン酸を反応させて製造)
PTMG2000: 数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール
PCL2000: 数平均分子量2000のポリカプロラクトングリコール
IPDI: イソフォロンジイソシアネート
HMDI: メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)
TDI: 2,4−トリレンジイソシアネート
DMPA: 2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
TEA: トリエチルアミン
DETA: ジエチレントリアミン
IPDA: イソフォロンジアミン
EDA: エチレンジアミン
MEK: 2−ブタノン
【0048】
《アミノ基変性PVAの製造例》
参考例1
還流冷却管を備えた反応容器に、酢酸ビニルモノマー405部、アリルグリシジルエーテル11部およびメタノール30部を仕込み、内部を十分に窒素置換した。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.5部をメタノール15部に溶解した開始剤溶液を添加した。60℃で4時間重合させた後、冷却して重合を停止した。反応液の固形分濃度は54.8%であった。30℃の減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを除去し、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(固形分濃度44.5%)を得た。
還流冷却管を備えた反応容器に、上記で得られたポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液100部を仕込み、内部を十分に窒素置換した。2−アミノチオフェノール8.0部と水酸化ナトリウム0.03部をメタノール48部に溶解した溶液を添加し、50℃で2時間反応させた。
濃度10%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液20部を添加し、40℃で5時間放置することによりけん化反応を行った。得られた反応物を粉砕し、酢酸8部を加えて中和した。ソックスレー抽出器を用いてメタノールで48時間洗浄した後、60℃で20時間乾燥させることにより、1級アミノ基含有PVA(以下「アミノ基変性PVA▲1▼」略記する。)を得た。アミノ基変性PVA▲1▼のIR測定および1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、アミノ基に由来する窒素原子が0.67重量%導入されており、けん化度99.0モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲1▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し、粘度平均分子量を算出したところ、40,000であった。
【0049】
参考例2
酢酸ビニルモノマーを400部に、アリルグリシジルエーテルを19.3部に変更したこと以外は参考例1と同様にして酢酸ビニル共重合体を得た。
2−アミノチオフェノールを20部に変更しこと以外は参考例1と同様にして1級アミノ基含有PVA(以下「アミノ基変性PVA▲2▼」と略記する。)を得た。
アミノ基変性PVA▲2▼のIR測定および1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、アミノ基に由来する窒素原子が1.11重量%導入されており、けん化度97.5モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲2▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し、粘度平均分子量を算出したところ、35,000であった。
【0050】
参考例3
酢酸ビニルモノマーを350部に、アリルグリシジルエーテルを24.4部に変更したこと以外は参考例1と同様にして酢酸ビニル共重合体を得た。
2−アミノチオフェノールを28部に変更し、けん化触媒の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を10部に変更したこと以外は参考例1と同様にして1級アミノ基含有PVA(以下「アミノ基変性PVA▲3▼」と略記する。)を得た。
アミノ基変性PVA▲3▼のIR測定および1H−NMR測定により、エポキシ基は完全に消失しており、アミノ基に由来する窒素原子が1.77重量%導入されており、けん化度88.5モル%であることが確認された。アミノ基変性PVA▲3▼のジメチルスルホキシド中での極限粘度測定(JIS)を実施し、粘度平均分子量を算出したところ、15,000であった。
【0051】
《ポリウレタンエマルジョンの製造》
実施例1
3リットルの三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、IPDI111.1g、DMPA 6.71gを仕込んだ。乾燥窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌しながら、水酸基を定量的に反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。
これに、MEK 202.9gを加えて均一に撹拌した後、フラスコ内温度を40℃に下げた。これに、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製、ノニオン系界面活性剤、ポリオシエチレンノニルフェニルエーテル)14.5gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を上記プレポリマーに加えた後、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液A」と略記する。)。
乳化液Aを調整した後、直ちにアミノ基変性PVA▲1▼ 34.0g、DETA7.58gおよびIPDA 12.52gを蒸留水 652gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンA」と略記する)を得た。PUエマルジョンAの評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
3リットルの三ツ口フラスコに、PMPA3600 540.0g、IPDI80.0g、DMPA 6.04gを仕込んだ。乾燥窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌しながら、水酸基を定量的に反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。
これに、MEK 191.4gを加えて均一に撹拌した後、フラスコ内温度を40℃に下げた。これに、TEA 4.55gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製) 19.1gを蒸留水 397gに溶解した水溶液を上記プレポリマーに加えた後、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液B」と略記する。)。
乳化液Bを調整した後、直ちにアミノ基変性PVA▲2▼ 64.1gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで30秒間撹拌した。次いで、DETA 10.21gを蒸留水240gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンB」と略記する。)を得た。PUエマルジョンBの評価結果を表1に示す。
【0053】
実施例3
3リットルの三ツ口フラスコに、PTMG2000 250.0g、PCL2000 250.0g、HMDI 118.1g、DMPA 6.71gを仕込んだ。乾燥窒素雰囲気下、80℃で2時間撹拌しながら、水酸基を定量的に反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。
これに、MEK 188.7gを加えて均一に撹拌した後、フラスコ内温度を40℃に下げた。これに、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製)6.7gおよびエマルゲン930(花王製、ノニオン系界面活性剤、ポリオシエチレンノニルフェニルエーテル)6.7gを蒸留水 392gに溶解した水溶液を上記プレポリマーに加えた後、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液C」と略記する。)。
乳化液Cを調整した後、直ちにアミノ基変性PVA▲3▼ 32.2g、DETA6.81gおよびIPDA 5.62gを蒸留水 620gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンC」と略記する。)を得た。PUエマルジョンCの評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
3リットルの三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、TDI 87.1g、DMPA 6.71gを仕込んだ。乾燥窒素雰囲気下、70℃で2時間撹拌しながら、水酸基を定量的に反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。
これに、MEK 194.6gを加えて均一に撹拌した後、フラスコ内温度を40℃に下げた。これに、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った(以下「分散液D」と略記する。)。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製)16.5gおよびアミノ基変性PVA▲1▼ 32.4gを蒸留水 520gに溶解した水溶液を上記分散液Dに加えた後、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液D」と略記する。)。
上記で得られた乳化液Dを調整した後、直ちにDETA 7.59gおよびEDA 4.42gを蒸留水 494gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンD)」と略記する。)を得た。PUエマルジョンDの評価結果を表1に示す。
【0055】
実施例5
3リットルの三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、IPDI194.5g、DMPA 33.53g、MEK 249.1gを仕んだ。乾燥窒素雰囲気下、60℃で8時間撹拌しながら、水酸基を定量的に反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これに、フラスコ内温度を40℃に下げた。
これに、TEA 25.30gを加えて30分間撹拌を行った。次いで、蒸留水 720.0gを加えた後、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液E」と略記する。)。
乳化液Eを調整した後、直ちにアミノ基変性PVA▲2▼ 41.8g、DETA17.02gおよびIPDA 14.05gを蒸留水 576gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下、PUエマルジョンEと略記する。)を得た。PUエマルジョンEの評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例6
実施例1において得られた乳化液Aを調整した後、直ちに一級水酸基変性PVA(7−オクテン−1−オール 変性度1.1モル%、重合度300、けん化度97.8モル%)34.0g、DETA 7.58gおよびIPDA 12.52gを蒸留水 652gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターによりMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンF」と略記する。)を得た。PUエマルジョンFの評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
実施例2において得られた乳化液Bを調整した後、直ちに一級水酸基変性PVA(2−プロペン−1−オールの酢酸エステル 変性度1.3モル%、イタコン酸 変性度1.5モル%、重合度200、けん化度95.5モル%) 64.1gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで30秒間撹拌して反応を行った。次いで、DETA 10.21gを蒸留水240gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンG」と略記する。)を得た。PUエマルジョンGの評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例8
実施例3において得られた乳化液Cを調整した後、直ちに一級水酸基変性PVA(2−メチル−2−プロペン−1−オール 変性度2.5モル%、重合度500、けん化度88.8モル%) 32.2g、DETA 6.81gおよびIPDA 5.62gを蒸留水 620gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンH」と略記する。)を得た。 PUエマルジョンHの評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例9
実施例4において得られた分散液Dに、乳化剤としてエマルゲン985(花王製)16.5gおよび一級水酸基変性PVA(7−オクテン−1−オール 変性度1.1モル%、重合度300、けん化度97.8モル%) 32.4gを蒸留水 520gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して乳化した(以下「乳化液I」と略記する。)。
上記で得られた乳化液Iを調整した後、直ちにDETA 7.59gおよびEDA 4.42gを蒸留水 494gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンI」と略記する。)を得た。 PUエマルジョンIの評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例10
実施例5において得られた乳化液Eを調整した後、直ちに一級水酸基変性PVA(2−プロペン−1−オールの酢酸エステル 変性度1.3モル%、イタコン酸 変性度1.5モル%、重合度200、けん化度95.5モル%) 41.8g、DETA 17.02gおよびIPDA 14.05gを蒸留水 576gに溶解した水溶液を加え、ホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを除去して、固形分濃度40%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンJ」と略記する。)を得た。 PUエマルジョンJの評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例11
3リットル三ッ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、TDI87.1g、DMPA 6.71gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、70℃で2時間攪拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 194.6gを加えて均一に攪拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 5.06gを加えて10分間攪拌を行った。次いで乳化剤としてエマルゲン985(花王製ノニオン系界面活性剤)16.5gおよびアセトアセチル基含有PVA(PVAに固気反応によりジケテンを反応させて得たPVA:重合度1000、けん化度97.5モル%、アセトアセチル基含有量5モル%)32.4gを蒸留水520gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、直ちに、DETA 7.59gおよびEDA 4.42gを蒸留水494gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間攪拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去して固形分濃度40重量%のPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンK」と略記する。)を得た。結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
実施例1において、アミノ基変性PVA▲1▼を用いないこと以外は、実施例1と同様にしてPUエマルジョンを製造しようとしたところ、DETAおよびIPDAの水溶液を添加した際に、ゲル化して安定なエマルジョンを製造することができなかった。
【0063】
比較例2
実施例1において、エマルゲン985(花王製)の使用量を38.7gに変更し、アミノ基変性PVA▲1▼を用いないこと以外は、実施例1と同様にしてPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンL」と略記する。)を得た。PUエマルジョンLの評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例3
比較例2において得られたPUエマルジョンKに、アミノ基含有PVA▲1▼ 34.0gを添加して、加熱溶解することにより、PUエマルジョン(以下「PUエマルジョンM」と略記する。)を得た。PUエマルジョンMの評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例4
実施例1において、アミノ基含有PVA▲1▼に代えて、無変性ポリビニルアルコール(分子量40,000、けん化度98.8モル%)を用い、エマルゲン985の使用量を38.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPUエマルジョン(以下「PUエマルジョンN」と略記する。)を得た。PUエマルジョンNの評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例5
比較例2で得られたPUエマルジョンKに、一級水酸基変性PVA(7−オクテン−1−オール 変性度1.1モル%、重合度300、けん度97.8モル%) 34.0gを添加して、加熱溶解することにより、PUエマルジョン(以下「PUエマルジョンO」と略記する。)を得た。 PUエマルジョンOの評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明により得られたPUエマルジョンは、皮膜の耐溶剤性および耐水性に優れると共に、各種の水性エマルジョンや塩水との混和性に優れる。したがって、産業用繊維、皮革、室内装飾、アパレル、床材(木製、コンクリート、フロアーポリッシュ)、プラスチック部品等のコーティング剤、パッケージ(包装紙等)、ラミネーション(フィルム/ホイル、繊維等)、一般工業用の接着剤(塩ビシート/木材、塩ビシート/金属、金属/木材)、ガラス繊維収束剤、インク、塗料等の用途に有効に利用できる。また、本発明により得られたPUエマルジョンは、皮膜の透湿性にも優れていることから、透湿性の積層体、皮革などの製造にも有効に利用できる。
Claims (7)
- 水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させることを特徴とするポリウレタン水性エマルジョンの製造方法。
- 変性ポリビニルアルコール(B)がアミノ基を含有する変性ポリビニルアルコールである請求項1記載のポリウレタン水性エマルジョンの製造方法。
- 変性ポリビニルアルコール(B)が一級水酸基を含有する変性ポリビニルアルコールである請求項1記載のポリウレタン水性エマルジョンの製造方法。
- ポリウレタンプレポリマー(A)が共有結合により結合したアニオン性基を有しており、かつ該アニオン性基の少なくとも一部がカチオン性化合物と塩を形成しているポリウレタンプレポリマーである請求項1〜43のいずれか1項に記載のポリウレタン水性エマルジョンの製造方法。
- ポリウレタンプレポリマー(A)を水性媒体中に乳化する際に、ノニオン性界面活性剤を併用することを特徴とする請求項1〜54のいずれか1項に記載のポリウレタン水性エマルジョンの製造方法。
- 水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させて得られたポリウレタン水性エマルジョン。
- 水性媒体中において、アミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性ポリビニルアルコール(B)の存在下で、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(A)を乳化した後、アミノ基および/または水酸基を含有する低分子化合物(C)を添加して、成分(A)、成分(B)および成分(C)を反応させて得られたポリウレタン。
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