JP4053192B2 - 水性組成物、コーティング剤およびインキジェット用記録剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤に関し、さらに詳しくは、混和安定性に優れ、均一な皮膜の得られ、耐溶剤性に優れる水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリウレタンはその優れた機械的性質、耐磨耗性、耐薬品性、接着性などの特性を生かして、ゴムとプラスチックスの境界分野を埋める樹脂として、塗料、接着剤、人工皮革などの幅広い用途分野に浸透している。その中で、環境保全、省資源、安全性といった社会ニーズに対応すべく、水性ポリウレタンが急激に発展してきている。ウレタン樹脂の水中への乳化分散技術、アイオノマー化による自己乳化分散技術、さらには水中での高分子量化技術等の進歩により高性能の水性ポリウレタンが出現し、その性能は今日では溶剤系ポリウレタン樹脂に匹敵するレベルになり、各種の用途分野で実用化されるに至っている。
一方、ポリビニルアルコール(以下PVAと略記することがある)は数少ない結晶性の水溶性高分子として優れた界面活性および強度特性を有することから、紙加工、繊維加工およびエマルジョン用の安定剤に利用されている他、PVA系フィルムおよびPVA系繊維等の原料として重要な地位を占めている。PVA系フィルムでは、低温での耐衝撃性を付与するために、水性ポリウレタンをブレンドして使用することも考えられるが、水性ポリウレタンとPVAをブレンドして使用するケースでは混和性に問題がある場合がしばしばある。また、混和した水性樹脂を皮膜化した際に、相分離がおこり、均一な皮膜が得られないといった問題が生じる場合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものでり、優れた混和安定性を有し、均一な皮膜が得られ、さらには耐溶剤性にも優れるポリウレタン/ポリビニルアルコール系水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、(A)水性媒体中において、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.1〜15モル%有するビニルアルコール系重合体および(b)ジエチレントリアミン、イソフォロンジアミンおよびトリエチルアミンから選ばれる少なくとも一種の低分子化合物を反応させて得たポリウレタン系エマルジョン、(B)一級または二級アミノ基、アセトアセチル基およびエチレン単位から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.1〜15モル%有するビニルアルコール系重合体および(C)ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシデルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグルシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびエチレン/プロピレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれる少なくとも一種のエポキシ化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ピメリンジアルデヒド、スベリンジアルデヒドおよびジアルデヒドデンプンから選ばれる少なくとも一種のアルデヒド化合物並びにトリレンジイソシアネート(TDI)、水素化TDI、トリメチロールプロパン−TDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の耐水化剤からなる水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤を提供することによって達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)ポリウレタン系エマルジョンは、水性媒体中において、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルアルコール系重合体、および(b)分子中にアミノ基または水酸基を有する低分子化合物を、反応させて得られるポリウレタン系エマルジョンである。
【0006】
本発明に用いられるポリウレタンプレポリマーは、実質的に、高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を、溶媒の存在下または不存在下で反応させて得られた、分子中にイソシアネート基を1個以上有するポリウレタンである。
【0007】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうる高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどを挙げることができ、ポリウレタンプレポリマーはこれらの高分子ポリオールの1種または2種以上を用いて形成されていることができる。
【0008】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いるポリエステルポリオールは、例えば、常法に従って、ポリカルボン酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体などのポリカルボン酸成分とポリオール成分を直接エステル反応させるかまたはエステル交換反応させることによって得られる。
【0009】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分として、脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体から主としてなり、場合により少量の3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むものを用いて製造されたものであることが好ましい。
【0010】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いられるポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリオール成分として、脂肪族ポリオールからなり、場合により少量の3官能以上のポリオールを含むポリオール成分を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0011】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0012】
ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールとカーボネート化合物を反応させるて得られたもの、予め製造しておいたポリカーボネートポリオールとポリオールおよびポリカルボン酸を反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールを反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0013】
また、ポリウレタンプレポリマーの製造に用いうるポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
高分子ポリオール成分の数平均分子量は500〜10000であることが必要であり、700〜5000であるのが好ましく、750〜4000であるのがさらに好ましい。数平均分子量が500〜10000の範囲から外れる高分子ポリオールを用いて製造されたポリウレタンプレポリマーを使用する場合は、得られる水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性などが低下する場合がある。
【0015】
さらに、高分子ポリオールは、1分子当たりの水酸基の数fが2.0≦f≦4.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.0≦f≦3.0の範囲である。1分子当たりの水酸基数fが前記した2.0≦f≦4.0の範囲にある高分子ポリオールを用いて得られたポリウレタンプレポリマーを本発明のポリウレタン系エマルジョンで使用すると、得られる水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性が良好になる。
【0016】
有機ジイソシアネート成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できるが、分子量500以下の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのうち1種または2種以上が好ましく使用される。有機ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
本発明のポリウレタンプレポリマーの製造には、必要に応じて鎖伸長剤成分を用いることができる。用いうる鎖伸長剤成分としては、通常のポリウレタン系エマルジョンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
ポリウレタンプレポリマーの製造は、従来から公知の方法で行うことができ、30〜150℃の温度条件下で、有機溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。この際用いることができる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、エマルジョン製造後の溶媒除去の容易性を考慮すると、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃未満の溶媒がより好ましい。また、プレポリマー製造後に、粘度低下等を目的として、上記の有機溶媒を添加、あるいは追加しても良い。
【0019】
ポリウレタンプレポリマーの製造の際には、必要に応じて反応触媒を添加することができ、このような触媒としては、例えば、オクチル酸スズ、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩などの有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミンなどを挙げることができる。
【0020】
ポリウレタンプレポリマーの製造にあたっては、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤が有している活性水素原子の全量に基づいて、活性水素原子1当量当たりのイソシアネート基当量の比(R)が、1.05≦R≦3.0の範囲で使用するのが好ましく、1.1≦R≦2.5の範囲で使用するのがより好ましい。Rが1.05未満である場合には、後述するビニルアルコール系重合体との反応性が低下し、水性樹脂組成物の耐溶剤性等が十分に改善されず、またプレポリマーの粘度が高いために水中への乳化が困難である。Rが3.0を越える場合には、後述するビニルアルコール系重合体やアミノ基または水酸基を有する低分子化合物との反応の際にエマルジョンが不安定化してゲル化しやすくなる。
【0021】
次にポリウレタンプレポリマーを水中に乳化させるが、この方法として(1)ポリウレタンプレポリマー分子中に親水性基を導入して、プレポリマー自身に自己乳化性を付与する方法、(2)界面活性剤を用いて、ポリウレタンプレポリマーを強制乳化させる方法が挙げられる。
【0022】
ポリウレタンプレポリマー分子中への親水性基の導入は、上記プレポリマー反応において、親水性基を有する活性水素原子含有化合物を併用することにより達成される。親水性基を有する活性水素原子含有化合物としては、分子内に水酸基またはアミノ基等の活性水素原子を1個以上含有し、且つカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性基;ポリオキシエチレン基等のノニオン性基;三級アミノ基、四級アンモニウム塩等のカチオン性基から選ばれる1種以上の親水性基を有する化合物が挙げられる。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;分子量200〜10,000のポリオキシエチレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物;3−ジメチルアミノプロパノール等の三級アミノ基含有化合物およびこれらの誘導体等が挙げられる。さらに、上記の親水性基を有する活性水素原子含有化合物を共重合して得られるポリエステルポリオールまたはポリエステルポリカーボネートポリオールを用いることもできる。この中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸を用いてポリウレタンプレポリマーを製造し、プレポリマー反応終了後にトリエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を添加してカルボン酸塩に変換する方法が好ましい。
【0023】
また、界面活性剤を用いてポリウレタンプレポリマーを強制乳化させる場合には、ポリウレタンプレポリマーは上記の親水性基を有していなくても良い。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤等を用いることができる。この中でも、HLB値が6〜20のノニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0024】
ポリウレタンプレポリマーの乳化は、上記の2方法のいずれかまたは両者を用いて、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化分散装置を用い行われる。この際、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水との反応を抑制するため、乳化温度は40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0025】
乳化して得られるエマルジョンの粒子径に特に制限はないが、通常0.1μm〜10μmの粒径に分散させて用いられる。粒径がこの範囲をはずれると、エマルジョンの安定性に問題が生じる懸念がある。
【0026】
本発明で用いる(A)ポリウレタン系エマルジョンは、水性媒体中において、ポリウレタンプレポリマーの乳化と同時に、または乳化後、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルアルコール系重合体、および分子中に一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる活性水素原子を有する低分子化合物を同時または別途に添加、反応させる方法などにより得られる。ビニルアルコール系重合体および活性水素原子含有低分子化合物の添加は、同時に行っても良く、また別途に行っても良い。
【0027】
本発明に用いられる、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルアルコール系重合体としては、分子内に一級または二級アミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を含有するビニルアルコール系重合体であれば特に制限はない。一級または二級アミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を有するビニルアルコール系重合体の製造方法としては、例えば、
(1)ビニルホルムアミド、メチルビニルアセトアミド、ヒドロキシメチルメチルアクリレート等の、一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、または加水分解等により一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を生成しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体と、酢酸ビニルとを共重合させた後、けん化する方法;
(2)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体と酢酸ビニルとを共重合させて得られたポリマーの側鎖のエポキシ基に、一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有するメルカプタンを水酸化ナトリウム等を触媒として付加反応させた後、けん化する方法;
(3)ポリビニルアルコールの水酸基と反応しうる官能基を分子内に有し、且つ一級または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有する化合物をビニルアルコール系重合体に反応させる方法;
(4)メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体の存在下で、一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を重合させる方法;
(5)ポリビニルアルコールの水酸基に固気反応によりジケテンを反応させる方法;
等が挙げられる。
上記(a)ビニルアルコール系重合体のうち、一級または二級アミノ基あるいは一級水酸基を含有するビニルアルコール系重合体が、好適である。
【0028】
(a)ビニルアルコール系重合体は、分子内にアミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基以外の官能基を有していても本発明の効果を損なわない限り差し支えない。そのような官能基を与える単量体単位としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピル、メタクリル酸スルホプロピル、およびそれらのアルカリ塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体を重合することによって得られる末端に官能基を有するポリマーでも良い。
【0029】
本発明の(A)のエマルジョンを構成する、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリビニルアルコール系重合体の官能基の含有量は、0.1〜15モル%とする必要があり、0.2〜10モル%とするのが好ましい。0.1モル%よりもアミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基含有量が少ない場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応性が低下し、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性等が十分に改善されない。また、アミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基の含有量が15モル%を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなる。
【0030】
(a)ビニルアルコール系重合体のケン化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。ケン化度が50モル%未満の場合には、得られる水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性等が不十分である。また、ビニルアルコール系重合体の重合度は100〜10000であることが好適であり、さらに好適には200〜8000である。
【0031】
(a)ビニルアルコール系重合体の添加量は、ポリウレタンプレポリマー100重量部に対し、0.2〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。添加量が0.2重量部未満の場合には、得られる水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性等が不十分であり、添加量が20重量部を越える場合には、ポリウレタンプレポリマーとの反応の際にエマルジョンが不安定化し、系がゲル化しやすくなる。また、ポリビニルアルコール系重合体の添加は、通常水溶液にして行うが、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の有機溶媒と水の混合溶媒に溶解させて添加しても良い。
【0032】
本発明で用いられる、(b)分子中にアミノ基または水酸基を有する低分子化合物としては、一級アミノ基、二級アミノ基、一級水酸基および二級水酸基から選ばれる活性水素原子を有する低分子化合物が挙げられ、とくに、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に有する分子量300以下の低分子化合物が好適である。例えば、ジエチレントリアミン等のトリアミン類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリン等のモノアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
(b)低分子化合物の添加量としては、低分子化合物中の活性水素原子の量が、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基1当量あたり、0.70〜1.20当量であるのが好ましく、0.75〜1.15当量であるのがより好ましく、0.80〜1.10当量であるのがより好ましい。活性水素原子の量が、0.70当量未満または1.20当量を越える場合には、ポリウレタンエマルジョンの重合度が十分に上がらず、水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性が不十分となる。
【0034】
本発明で用いられるポリウレタン系エマルジョンは、通常、固形分濃度が約20〜65重量%に調整されるが、これに限定されるものではない。また、プレポリマー製造において有機溶媒を用いた場合には、必要に応じて、蒸留分離あるいはストリッピングをすることにより有機溶媒を除去することができる。
【0035】
本発明で用いられるポリウレタン系エマルジョンは、一般的に、ポリウレタン単位とポリビニルアルコール単位が下記の一般式化1〜化3で表される構造単位で結合されたポリマーを含有していると考えられ、それが本発明の水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の性能発現に寄与していると想定される。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
本発明の水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤は、上記(A)、(B)ビニルアルコール系重合体および(C)耐水化剤からなる。(A)と(B)とを配合することにより、後述する実施例からも明らかなように優れた混和性を有し、均一な皮膜が得られ、耐溶剤性にも優れた水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤を得ることができる。
【0040】
本発明を構成する(B)としては、一級または二級アミノ基、アセトアセチル基、エチレン単位を含有するビニルアルコール系重合体が用いられる。その他、カルボキシル基、スルホン酸基、シラノール基、ボロン酸基、フッ素基、一級水酸基、フェノール性水酸基、炭化水素基、フェニル基、ナフタレン基、エチレン性不飽和二重結合などの官能基を分子中に導入したビニルアルコール系重合体であっても構わない。
【0041】
本発明の(B)が分子中に一級または二級アミノ基、アセトアセチル基およびエチレン単位から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルアルコール系重合体である場合、官能基の含有量は、0.1〜15モル%とする必要があり、0.2〜10モル%とするのが好ましい。0.1モル%よりも一級または二級アミノ基、アセトアセチル基およびエチレン単位含有量が少ない場合には、それぞれの官能基の導入効果が少なく、15モル%を越える場合には、ポリビニルアルコール本来の特徴である水溶性あるいは耐溶剤性が低下する恐れが生じる。
【0042】
また(B)ビニルアルコール系重合体のケン化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。ケン化度が50モル%未満の場合には、得られる水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の耐溶剤性等が不十分である。また、ビニルアルコール系重合体の重合度は100〜10000であることが好適であり、さらに好適には200〜8000である。
【0043】
(B)に対する(A)の配合量は、特に制限はないが、一般的には(B)100重量部に対して固形分換算で300重量部以下が好ましく、200重量部以下がより好ましい。この範囲を逸脱して水性ポリウレタンを配合すると、PVA本来の特徴が十分に発現しない場合がある。(A)の配合量の下限値については1重量部以上が好ましく、さらには2重量部以上が好ましい。(A)の配合量が前記の量未満の場合、ポリウレタン配合の効果が見られない場合がある。
【0044】
本発明の水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤は、前記(A)および(B)以外に(C)ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、エポキシ化合物、アルデヒド化合物およびイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の耐水化剤を配合することが必須である。
【0045】
本発明に用いられる耐水化剤(C)のうち、エポキシ基を分子内に有する化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジβメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;P−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0046】
なかでも、水溶性エポキシ化合物が好ましく、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシデルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグルシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレン/プロピレングリコールジグリシジルエーテル等各種のものが挙げられる。
【0047】
また、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂は、一般には紙力増強剤として知られている。この樹脂は公知の方法で製造することができ、例えばアジピン酸とジエチレントリアミンの脱水重縮合で得られる。この樹脂の市販品としては日本PMC(株)の「WS525」、「WS535」や「WS570」等を挙げることができる。
【0048】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのモノアルデヒド類、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ピメリンジアルデヒド、スベリンジアルデヒド、ジアルデヒドデンプン等のジアルデヒド類が挙げられる。
【0049】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI);水素化TDI;トリメチロールプロパン−TDIアダクト(例えばバイエル社製、商品名:DesmodurL);トリフェニルメタントリイソシアネート;メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI);水素化MDI;重合MDI;ヘキサメチレンジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート;4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の多価イソシアネートが挙げられる。乳化剤を用いて水に分散させたイソシアネートも使用できる。
【0050】
耐水化剤(C)は任意に配合でき、その配合割合は特に制限されないが、好ましくは(A)ポリウレタン系エマルジョンと(B)ビニルアルコール系重合体とからなる樹脂組成物100重量部(固形分)に対して0.1〜50重量部(固形分)である。耐水化剤(C)の配合割合が0.1未満の場合、配合効果がみられない場合があり、50重量部をこえると水性組成物、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤の安定性が悪化する恐れがある。
【0051】
また、必要に応じて、その乾燥性、セット性、粘度、造膜性などを調整するために、酢酸ビニル重合体エマルジョン、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−塩化ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−第3級カルボン酸ビニルエステル共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体エマルジョン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、スチレンー(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体エマルジョン等の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、ジエン系樹脂エマルジョン等の水性樹脂エマルジョン、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの各種有機溶剤、でんぷん、変性でんぷん、酸化でんぷん、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブテン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体などの水溶性高分子や尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホリマリン樹脂、フェノール/ホリマリン樹脂などの熱硬化性樹脂、さらに、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉などの充填剤、小麦粉などの増量剤、ホウ酸、硫酸アルミニウムなどの反応促進剤、酸化チタンなどの顔料あるいはその他、消泡剤、分散剤、凍結防止剤、防腐剤、防錆剤などの各種添加剤をも適宜添加することができる。
【0052】
本発明の水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤は各種基材へ塗工される。基材としては、紙、板紙、各種フィルム等が主であるが、その他不織布、スパンボンド等各種繊維基材等が挙げられる。また、とりわけインクジェット記録紙用コーティング剤として好ましく用いられる。
【0053】
本発明の水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤を基材に塗布する方法としては、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布、グラビア塗布、含浸、サイズプレス塗工、ゲートロール塗工等が挙げられる。また、本発明の水性組成物は、その他接着剤、塗料などにも使用できる。
【0054】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施例及び比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。以下の実施例および比較例において用いた化合物の略号を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
製造例1
3リットル三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、IPDI 111.1g、DMPA 6.71gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 202.9gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 5.06gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製,ノニオン系界面活性剤)14.5gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにアミノ基含有ポリビニルアルコール(アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、2−アミノチオフェノールをNaOHを触媒として付加し、さらにけん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度500、けん化度97.5mol%、一級アミノ基変性量1.0mol%) 34.0g、DETA 7.58gおよびIPDA 12.52gを蒸留水 652gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去して固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。
【0057】
製造例2
3リットル三ツ口フラスコに、PMPA3600 540.0g、IPDI 80.0g、DMPA 6.04gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。これにMEK 191.4gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 4.55gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤としてエマルゲン985(花王製,ノニオン系界面活性剤)19.1gを蒸留水 397gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコールに固気反応によりジケテンを反応させて得たポリビニルアルコール:重合度1000、けん化度97.5mol%、アセトアセチル基含有量5mol%)64.1gを蒸留水 420gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで30秒間撹拌し、次いでDETA 10.21gを蒸留水240gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去して固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。
【0058】
製造例3
3リットル三ツ口フラスコに、PMPA2150 537.5g、IPDI 194.5g、DMPA 33.53g、MEK 249.1gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、60℃で8hr撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。その後、40℃にフラスコ内温度を下げ、TEA 25.30gを加えて30分間撹拌を行った。次いで、蒸留水 720.0gを加えて撹拌を行いポリウレタンプレポリマーを水中に乳化させた後、直ちに、一級水酸基含有ポリビニルアルコール(アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、2−メルカプトエタノールをNaOHを触媒として付加し、さらにけん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度500、けん化度97.5mol%、一級水酸基変性量1.0mol%)41.8g、DETA 17.02gおよびIPDA 14.05gを蒸留水 576gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌して反応を行った。その後、MEKをロータリーエバポレーターにより除去して固形分重量40wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。
【0059】
比較製造例1
製造例1において、アミノ基含有ポリビニルアルコールを用いないこと以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン系エマルジョンを得た。
比較製造例2
製造例2において、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコールを用いないこと以外は、製造例2と同様にしてポリウレタン系エマルジョンを得た。
比較製造例3
製造例3において、一級水酸基含有ポリビニルアルコールを用いないこと以外は、製造例3と同様にしてポリウレタン系エマルジョンを得た。
【0060】
実施例1〜10、比較例1〜5
表2に示す配合組成において水性コーティング剤を調製し、各水性コーティング剤およびインクジェット用記録剤としての評価を下記により行った。結果を表3に示す。
(混和安定性)
各水性コーティング剤を調製後、ガラス製のサンプル管に入れ、20℃で1週間放置した。放置後、各水性コーティング剤の状態を観察した。
(皮膜化した際の相溶性)
各水性コーティング剤を20℃において、皮膜化(厚み100μm)を行い、乾燥後の皮膜の状態を目視により観察した。○透明、△やや白濁、×白濁
【0061】
(インクジェット適性評価)
(1)インクジェット記録方法
吐出オリフイス径60μmのオンデイマンド型インクジェット記録ヘッドを有する記録装置を用い、下記4色のインクを用いてカラーインクジェット記録を行い、記録特性の評価を行った。
イエローインク(組成)
C.I.アシッドイエロー2.3 2部
ジエチレングリコール 30部
水 70部
マゼンタインク(組成)
C.I.アシッドレッド32 2部
ジエチレングリコール 30部
水 70部
シアンインク(組成)
C.I.ダイレクトブルー86 2部
ジエチレングリコール 30部
水 70部
ブラックインク(組成)
C.I.ダイレクトブラック19 2部
ジエチレングリコール 30部
水 70部
【0062】
(2)インク吸収速度
インクジェット記録後、一定時間ごとに被記録材上の印字を指でこすり、印字部分が変化しなくなるまでの時間を測定した。時間が短いほどインク吸収速度が大である。
(3)耐水性
インクジェット記録後のシートの印字部に水を付け指でこすったとき、印字部が溶解したりにじんだりするかどうかを4段階で判定した。
◎ほとんどにじみなし、○僅かににじみがある、△にじみがある、×にじみ多い(4)耐溶剤性
アセトンを試験片の塗膜表面にたらし、試験片の表面を指でこすり、塗膜外観の変化をみた。評価結果は◎非常に良好、○良好、△やや悪い、×塗膜に剥がれ有り、のように表記した。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【発明の効果】
本発明の水性組成物、水性コーティング剤は、混和安定性、皮膜の均一性、耐溶剤性等に優れるため、各種基材へ塗工されて好ましく用いられる。基材としては、紙、板紙、各種フィルム等が主であるが、その他不織布、スパンボンド等各種繊維基材等が挙げられる。また、とりわけインキジェット記録紙用コーティング剤として好ましく用いることができる。
Claims (4)
- (A)水性媒体中において、分子中にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーに、(a)分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.1〜15モル%有するビニルアルコール系重合体および(b)ジエチレントリアミン、イソフォロンジアミンおよびトリエチルアミンから選ばれる少なくとも一種の低分子化合物を反応させて得たポリウレタン系エマルジョン、(B)一級または二級アミノ基、アセトアセチル基およびエチレン単位から選ばれる少なくとも一種の官能基を0.1〜15モル%有するビニルアルコール系重合体および(C)ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシデルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグルシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびエチレン/プロピレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれる少なくとも一種のエポキシ化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ピメリンジアルデヒド、スベリンジアルデヒドおよびジアルデヒドデンプンから選ばれる少なくとも一種のアルデヒド化合物並びにトリレンジイソシアネート(TDI)、水素化TDI、トリメチロールプロパン−TDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の耐水化剤からなる水性組成物。
- (a)ビニルアルコール系重合体が、一級または二級アミノ基あるいは一級水酸基を含有するビニルアルコール系重合体である請求項1記載の水生組成物。
- 請求項1記載の水性組成物からなる水性コーテイング剤。
- 請求項1記載の水性組成物からなるインキジェット用記録剤。
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