JP3958616B2 - 酸化還元電流測定方法及び測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作用極と対極とを有し、両電極間に流れる酸化還元電流を検出して試料液(検水)中の測定対象成分の濃度を測定する、所謂、ポーラログラフ法を利用した酸化還元電流測定方法及び測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩素処理水、二酸化塩素処理水などの遊離残留塩素、溶存二酸化塩素、亜塩素酸イオン(二酸化塩素処理の反応生成物)などの濃度を測定するモニターには、保守・精度管理が比較的容易なポーラログラフ方式酸化還元電流測定装置が幅広く使用されている。
【0003】
ポーラログラフ方式は、白金や金などの貴金属からなる作用極と、作用極に対して十分大きい表面積を持つ銀などの対極との間に一定の電圧を印加して作用極付近で対象測定成分の電解還元(又は、酸化)を起こさせることで電解電流を得、これをアンプで増幅し演算して濃度を求めるものである。
【0004】
測定対象成分に合わせて電極材質を選択し、拡散電流が得られるプラトー領域の印加電圧に設定することで、上記の遊離残留塩素、溶存オゾン、溶存二酸化塩素、亜塩素酸イオン、更には、過酸化水素、次亜臭素酸などの測定が可能である。
【0005】
測定装置として大きさ、構造が固定されている場合、作用極の表面に薄く均一な拡散層を得ることは、測定感度を大きくし安定な連続測定を行うために重要な要素となるので、作用極近傍の試料置換をスムーズに行う必要がある。
【0006】
そこで、従来の検出システムでは、
A.試料を定流量でセンサーフローセル内を通過させる方式、
B.測定装置自体をモーターで振動、回転させて一定の線速度を作り出す方式、などが採用されている。
【0007】
上記両方式A、Bとも、作り出される水流や振動を利用してビーズなどによる検出電極の研磨が可能であり、物理的な自浄機能を持った測定装置が提供されている。特に、方式Bでは、方式Aのように定流量の送液システムは不要であり、モーターによって作り出される線速度が大きいため、比較的広い範囲での流量変動に強い検出システムとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方式Aによる測定装置では、安定な測定を行うために必要となる均一な拡散層を常に得る手段として、測定装置の他に定流量の送液システム(構造、ポンプなど)が必要である。
【0009】
又、方式Bを採用した測定装置では、作り出される線速度で補える範囲での流量精度はそれほど拘る必要がないが、測定装置を振動、回転させるための駆動部モーターが消耗品であるため、定期的なメンテナンス、部品交換などが必要であり、トータルコストが大となるといった問題を有している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、検水(試料液)を定流量で送液するために複雑な構造や部品、及び、短寿命の消耗品を必要としない、構造が簡単で、高精度にて測定対象成分の濃度を測定することのできる酸化還元電流測定方法及び測定装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る酸化還元電流測定方法及び測定装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、作用極と対極間に流れる酸化還元電流を検出して検水中の測定対象成分の濃度を測定する酸化還元電流測定方法において、外部とは画定され少なくとも作用極が配置された検知領域の容積を、振動体を連続的に振動させることで膨張収縮させて、前記検知領域に外部から検水を一定方向に流入させることと前記検知領域から外部に検水を一定方向に流出させることとを連続的に行うことにより、前記作用極近傍に検水の流れを生じさせることと前記作用極近傍に検水を連続的に供給することとを同時に行うことを特徴とする酸化還元電流測定方法が提供される。一実施態様によれば、前記対極は、検水の流動方向にて前記作用極の下流に配置する。他の実施態様によれば、前記作用極は、前記振動体の前記検知領域に面した表面に設ける。
【0012】
第2の本発明によれば、作用極と対極間に流れる酸化還元電流を検出して検水中の測定対象成分の濃度を測定する酸化還元電流測定装置において、
外部とは画定され、検水の入口及び出口を備え、少なくとも前記作用極が配置された検知チャンバーを形成する基体と、
振動することにより前記検知チャンバーの容積を膨張収縮させる振動体と、
前記検知チャンバーの入口及び出口にそれぞれ配置された第1及び第2逆止弁手段と、
を有し、前記振動体の連続的な振動に対応して前記第1及び第2逆止弁手段が協働して、前記検知チャンバーの入口を介して前記検知チャンバー内に検水を一定方向に流入させることと前記検知チャンバーの出口を介して前記検知チャンバー内の検水を一定方向に流出させることとを連続的に行うことにより、前記作用極近傍に前記検水の流れを生じさせることと前記作用極近傍に前記検水を連続的に供給することとを同時に行うことを特徴とする酸化還元電流測定装置が提供される。
【0013】
本発明の測定装置の一実施態様によれば、前記作用極は、前記振動体の前記検知チャンバーに面した表面に設ける。
【0014】
本発明の測定装置の他の実施態様によれば、前記入口内、或いは、前記入口に隣接して温度検出手段を配置する。
【0015】
本発明の測定装置の他の実施態様によれば、前記振動体は、圧電体を利用したバイモルフ振動子である。
【0016】
上記本発明にて、測定対象成分は、遊離残留塩素、溶存オゾン、溶存二酸化塩素、亜塩素酸イオン、過酸化水素又は次亜臭素酸とし得る。
【0017】
このとき、測定対象成分が遊離残留塩素である場合には前記作用極は金電極又は白金電極、前記対極は銀電極又は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存オゾンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には前記作用極は金電極、白金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が過酸化水素である場合には前記作用極は白金電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には前記作用極は金電極、前記対極は銀電極又は銀−臭化銀電極とし得る。
【0018】
又、測定時に前記作用極に印加する電圧は、測定対象成分が遊離残留塩素である場合には+200〜−300mV、測定対象成分が溶存オゾンである場合には+200〜+500mV、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には+200〜+600mV、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には+550〜+950mV、測定対象成分が過酸化水素である場合には+600〜+980mV、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には+200〜−200mVとし得る。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る酸化還元電流測定方法及び測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0020】
実施例1
図1に、本発明の酸化還元電流測定方法及び装置を説明するための測定装置の概略構成を示す。
【0021】
本発明によれば、酸化還元電流測定装置1は、作用極2が設けられた検知チャンバー3を有する。また、検知チャンバー3には、検水を検知チャンバー3内へと導入する入口を形成する入口チャンバー4と、検知チャンバー3内から検水を送出する出口を形成する出口チャンバー5とが、それぞれ第1及び第2逆止弁6、7を介して接続されている。
【0022】
本発明にて、検知チャンバー3は、内容積が可変とされる容積可変領域を画成している。つまり、検知チャンバー3は、検知チャンバー3を形成する壁体の一部として振動体8を備えており、この振動体8を駆動手段9により振動させることによって、検知チャンバー3の内容積が膨張し、又収縮される。
【0023】
従って、振動体8の振動に対応して第1及び第2逆止弁6、7は協働することにより、検水は、入口チャンバー4から検知チャンバー3へと流入し、又、検知チャンバー3から出口チャンバー5へと流動する。
【0024】
つまり、振動体8が、図1にて、位置(P1)へと移動して、検知チャンバー3内の容積を膨張させると、チャンバー内が減圧され、第1逆止弁6が開、第2逆止弁7は閉となり、入口チャンバー4から検知チャンバー3内へと検水が流入する。次に、振動体8が、位置P2へと移動して、検知チャンバー3内の容積を収縮させると、チャンバー内が加圧され、第1逆止弁6が閉、第2逆止弁7が開となり、検知チャンバー3から出口チャンバー5へと検水が流動する。
【0025】
振動体8を、連続的に振動させることにより、検水は、実質的に定流量にて、入口チャンバー4から検知チャンバー3、そして、出口チャンバー5へと、測定装置内を流動する。
【0026】
本発明によれば、振動体8は、ダイヤフラムを電磁式駆動手段にて振動させる構成であってもよいが、圧電体を利用したバイモルフ振動子を好適に使用することができる。バイモルフ振動子は、当業者には周知であり詳しい説明は省略するが、両面に電極を有する薄い圧電素子を貼り合わせた板であり、この素子に電圧を印加することにより、一方は伸び、他方は縮む性質を有している。従って、振動子に電源より交流電圧を印加することにより、振動子はその周波数で振動する。通常、商用電源AC100V或いは200V、50Hz/60Hzで駆動することができる。又、周波数又は電圧を変えることにより微小流量の調節が可能である。
【0027】
特に、本実施例で使用した、上記バイモルフ振動子を備えた極光株式会社製のバイモルポンプ(商品名)は、駆動源となる交流電源の電圧と周波数で流量を任意に制御することが可能であり、また、バイモルポンプは、バイモルフ振動子自体が振動ダイヤフラムとして機能する構造であるためモーターや軸は不要である。
【0028】
そのために、バイモルフ振動子を使用した構成の測定装置は、摺動に伴う短寿命の消耗品がなく、また、ヘッド差圧を利用するなどの送液に関する構造の付加も不要である。結果として、従来よりも単純構造なシステムを低価格で供給することが可能である。
【0029】
又、本発明の測定装置1では、作用極2は、検知チャンバー3内に配置される。又、対極10は、検知チャンバー3内に配置することもできるが、図1に示すように、検知チャンバー3の下流に位置して設けられた出口チャンバー5内に配置するのが好ましい。その理由は次の通りである。
【0030】
つまり、例えば、遊離残留塩素などの濃度を測定する際には、作用極2として金(Au)を使用し、対極10として銀(Ag)が使用されるが、塩素を測定中に対極10の銀が反応して塩化銀を生成する。
【0031】
このとき、検水(試料液)の流れの中で作用極2に対して上流に対極10が配置された場合は、流出した塩化銀が下流の作用極表面をめっきし、測定感度を劣化させる。
【0032】
そこで、本発明の好ましい実施例としては、対極10は作用極2に対して検水の流動方向下流に配置される。特に、本実施例では、対極10は、図示するように、作用極2の下流側に距離を置いて、しかも、出口チャンバー5内に配置される。これによって、作用極2への塩化銀の回り込みが阻止される。
【0033】
このように、本発明は、検出部を構成する作用極2及び対極10が、検水の流路を形成する検知チャンバー3内に、或いは、検知チャンバー3及び出口チャンバー5にそれぞれ組み込まれており、試料の送液部と検出部を一体とした構成とされる。
【0034】
従って、本発明によれば、上記構成により、少なくとも作用極が配置された検知領域の容積を、振動体を振動させることにより膨張収縮させ、作用極近傍の検水の流れを生じさせることと連続的な検水の供給を同時に行うことが可能となり、構造が簡単で、高精度にて測定対象成分の濃度を測定することのできる酸化還元電流測定装置を実現できる。
【0035】
実施例2
図2〜図7に、本発明の原理に従った構成とされる酸化還元電流測定装置1のより具体的な実施例を示す。
【0036】
本実施例にて、酸化還元電流測定装置1は、極光株式会社製の超小型バイモルポンプBPS−215i(商品名)を改造して作製した。本実施例で使用したバイモルポンプの特性は、AC100V、50Hz駆動時に流量が30mL/min、吐出圧が20kPaであった。
【0037】
本実施例の説明にて、上、下、右、左、中央、水平、垂直、といった語句を用いるが、これは説明の便宜上用いるに過ぎず、装置の構成及び機能を限定するものではない。
【0038】
本実施例の酸化還元電流測定装置1は、図2に示すように、36mm×36mm×21mmとされる全体形状が略立方体をした装置本体1Aを有する。装置本体1Aは、基体20と、基体20の上下に配置され取り付けネジ(図示せず)にて一体に組み立てられた底蓋21及び上蓋22と、を有する。本実施例で、これら基体20、底蓋21及び上蓋22は、樹脂にて作製された。
【0039】
基体20は、図3にて理解されるように、その内部が中央水平隔壁23にて、上方部分と下方部分とに大きく二分されている。中央水平隔壁23にて仕切られた下側には、検知チャンバー3が形成され、上側には、入口チャンバー4と出口チャンバー5とが形成される。
【0040】
図3及び図4に示すように、入口チャンバー4と出口チャンバー5とは、中央水平隔壁23より上方へと突出した垂直隔壁24にて仕切られており、上蓋22を基体20に取り付けることにより、上蓋22にも形成された垂直隔壁25と協働して、入口チャンバー4と出口チャンバー5とを完全に分離される。これにより、入口チャンバー4と出口チャンバー5とはそれぞれ独立した閉空間領域を形成している。また、入口チャンバー4には、入口導管26が接続されており、出口チャンバー5には、出口導管27が接続されている。
【0041】
本実施例では、図3、図6及び図7を参照するとより良く理解されるように、基体20の中央水平隔壁23にて仕切られた下側には、基体20の周壁28で囲包された円形状の凹部29が形成され、この凹部29に所定の厚さを有した円盤形状とされる振動体8としてのバイモルフ振動子が配置される。
【0042】
バイモルフ振動子8は、底蓋21を基体20に取り付けることにより、底蓋21に形成した押さえ30がバイモルフ振動子8の周辺部を中央水平隔壁23に押し付けることにより、その場に保持される。尚、本実施例では、バイモルフ振動子8の周辺部に対応した中央水平隔壁部23には、シール溝31が形成され、この溝31にOリング32を配置することにより、バイモルフ振動子8の周辺部は、中央水平隔壁23に対して液密に取り付けられる。バイモルフ振動子8は、ケーブル8a(図2)にて装置本体外部に設けられた電源(図示せず)へと接続される。
【0043】
また、本実施例では、検知チャンバー3は、互いに離間して形成された円形凹部3a、3bを連通溝3cにて連結することにより形成される。つまり、検知チャンバー3は、中央水平隔壁23とバイモルフ振動子8との間に形成された閉空間領域である。
【0044】
また、第1逆止弁6が、検知チャンバー3を構成する一方の円形凹部3aと入口チャンバー4とを仕切る中央水平隔壁23部分に設けられ、第2逆止弁7が、検知チャンバー3を構成する他方の円形凹部3bと出口チャンバー5とを仕切る中央水平隔壁23部分に設けられる。
【0045】
本実施例の測定装置1では、作用極2として、検知チャンバー3を形成する中央水平隔壁23部分に直径2mmの金(Au)ロッドを埋め込み、線径0.4mmの白金リード線2aで入口チャンバー4から装置本体外部へリードアウトした。このとき、金ロッド2と白金線2aは、金電極2の検知チャンバー3に露出する部分を除いて、接液を防止するために、図5に示すように、接着剤、例えば、エコーボンド(グレース・ジャパン株式会社製商品名)Sを使用して被覆シールした。
【0046】
一方、対極10としては、図4に最も良く示すように、線径0.6mmの銀(Ag)線を出口チャンバー5に入れて先端10aを接着剤(エコーボンド)で固定し、もう一方の端10bをポンプ外部へリードアウトした。
【0047】
また、ポーラログラフ方式の電極感度は試料温度に相関がある出力変動をするため、図4及び図5に示すように、温度測定手段として、温度補償用のサーミスタや白金測温体のような温度測定素子35を入口チャンバー4に隣接した基体空間部に配置し、接着剤(エコーボンド)Sで固定し、リード線35aにより装置本体外部へリードアウトした。
【0048】
作用極2及び対極10、更には、温度測定素子35に接続されたリード線2a、10b、35aの他端は、電極ケーブル(図示せず)に接続され、電極ケーブルは、図示してはいないが、電源回路、測定回路などに接続されている。
【0049】
作用極2と対極10との間には、電源回路から所定の電圧が印加され、その時の電流値を電流計にて測定することにより、検水中の測定対象成分の濃度が求められる。
【0050】
上述のように構成された本実施例の酸化還元電流測定装置1の作動について説明する。
【0051】
駆動電源をオンとすることにより、バイモルフ振動子8が振動すると、検知チャンバー3の内容積が膨張し、又収縮される。従って、第1及び第2逆止弁6、7は協働して作用し、検水は、入口導管26から入口チャンバー4へと導入され、次いで、第1逆止弁6を通って検知チャンバー3へと流入し、その後、検知チャンバー3から第2逆止弁7を通って出口チャンバー5へと流出し、出口導管27を通って流出する。
【0052】
バイモルフ振動子8を、連続的に振動させることにより、検水は、実質的に定流量にて、入口チャンバー4から検知チャンバー3、そして、出口チャンバー5へと、測定装置内を流動する。そして、検知チャンバー3にて作用極2に接液し、出口チャンバー5にて対極10に接液する。
【0053】
上記構成及び作用をなす本実施例の測定装置1を利用して残留塩素測定を行った。その測定例を図8に示す。この測定例は、印加電圧に対する検出電流をプロットすることによりポーラログラフ方式の特性を示した電流−電圧特性グラフで、水道水(約0.6mg/Lの遊離有効塩素を含む)(A)と、その活性炭ろ過による脱塩素水(B)を測定した結果である。
【0054】
図8には、従来型、即ち、作用極として直径2mmの金を備えた偏心回転電極式残留塩素検出器の電流−電圧曲線グラフ(C)を示すが、本発明の装置で得られたグラフ(A)とほぼ同等な波形が描かれている。
【0055】
この特性から、従来型測定装置と組み合わされていた変換器を利用し、印加電圧0〜−100mVに設定することで残留塩素の連続測定を行うことができた。変換器に温度補償演算を組み込むことにより、設定値の温度補償も可能であった。
【0056】
図9に、試料として工場内上水を使用し、残留塩素の連続測定を行った場合の1日分の記録結果を示す。印加電圧は−100mVであり、温度補償を行った。グラフ(A)は、本発明の装置で得られた測定結果を示し、グラフ(B)は、従来の残留検出器による測定結果を示す。本発明の装置にても、従来装置と同様の測定結果が得られることが分かる。
【0057】
上記実施例では、対極10を作用極2の下流に配置することにより、作用極2の清浄化を保つとして説明したが、本発明の装置においても、勿論、電解的な研磨の実施が可能である。
【0058】
また、本実施例では、検知チャンバー3に作用極2を設置したが、振動体、例えば、バイモルフ振動子8の接液部分に金をプリントすることで作用極2とし、従来型のビーズ研磨のようなメカニックな研磨による電極の自浄作用を容易に付加することができる。又、振動体そのものを作用極とすることで、振動による大きな線速度が得られ、装置の流量変動に対する特性もより向上する。
【0059】
上記実施例では、測定の実施は遊離残留塩素を測定対象成分として説明したが、作用極2、対極10の材質の変更を行うことにより、二酸化塩素などの成分も測定対象とすることが可能である。
【0060】
更に具体的にいえば、本発明の酸化還元電流測定装置は、例えば、
(1)プール水、水道水(上水)中などの遊離残留塩素濃度測定。
(2)水道水(上水)、半導体製造プロセス(ICチップの洗浄など)の洗浄水中などの溶存オゾン濃度測定。
(3)プール水、食料品(カット野菜など)の洗浄水若しくは漂白剤中などの溶存二酸化塩素(ClO2)濃度測定。
(4)プール水中などの亜塩素酸イオン(ClO2 -)濃度測定。
(5)パルプ、繊維の漂白、半導体の洗浄、廃水処理、食品、容器の殺菌などにおける過酸化水素の濃度測定。
(6)しゅう素消毒液などの次亜臭素酸(HBrO)濃度測定。
などのために利用することができる。作用極2及び対極10の材料、及び対極10を基準として作用極2に印加する電圧は、上記各目的のために適宜選択することができる。
【0061】
例えば遊離残留塩素濃度の測定を行う場合、好ましくは、作用極は金(Au)電極又は白金(Pt)電極とされ、対極は銀(Ag)電極又は銀−塩化銀(Ag−AgCl)電極とされる。
【0062】
溶存オゾン濃度の測定を行う場合、好ましくは、金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極(例えば、東海カーボン株式会社製:商品名グラッシーカーボン)、対極は銀−塩化銀電極とされ、溶存二酸化塩素濃度の測定を行う場合には、好ましくは、作用極は金電極、白金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、対極は銀−塩化銀電極とされ、亜塩素酸イオン濃度の測定を行う場合には、好ましくは、作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、対極は銀−塩化銀電極とされ、過酸化水素の測定を行う場合には、好ましくは、作用極は白金電極、対極は銀−塩化銀電極とされ、次亜臭素酸濃度の測定を行う場合には作用極は金電極、対極は銀電極又は銀−臭化銀(Ag−AgBr)電極とされる。
【0063】
又、例えば遊離残留塩素濃度の測定を行う場合、作用極と対極との間には、例えば+200〜−300mV、好ましくは、(作用極として金を使用した場合)−50〜−100mVが、対極10を基準として作用極2に印加される。溶存オゾン濃度の測定を行う場合には、例えば+200〜+500mV、好ましくは、+250〜+450mV、溶存二酸化塩素濃度の測定を行う場合には、例えば+200〜+600mV、好ましくは、+250〜+450mV、亜塩素酸イオン濃度の測定を行う場合には、例えば+550〜+950mV、好ましくは+650〜+850mV、過酸化水素の測定を行う場合には、例えば+600〜+980mV、好ましくは+700〜+900mV、次亜臭素酸濃度の測定を行う場合には+200〜−200mVが、好ましくは、0〜−100mVが、対極10を基準として作用極2に印加される。
【0064】
上述の各測定対象成分に対する作用極2及び対極10の材料、測定時に対極10を基準として作用極2に印加する電圧の実施例を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の酸化還元電流測定方法及び測定装置は、外部とは画定され少なくとも作用極が配置された検知領域の容積を、振動体を連続的に振動させることで膨張収縮させて、前記検知領域に外部から検水を一定方向に流入させることと前記検知領域から外部に検水を一定方向に流出させることとを連続的に行うことにより、作用極近傍に検水の流れを生じさせることと前記作用極近傍に検水を連続的に供給することとを同時に行う構成とされるので、検水を定流量で送液するために複雑な構造や部品、及び、短寿命の消耗品を必要とせず、構造が簡単で、高精度にて測定対象成分の濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸化還元電流測定方法及び装置を説明するための測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の酸化還元電流測定装置の一実施例を示す外観斜視図である。
【図3】酸化還元電流測定装置の断面図である。
【図4】底蓋及び上蓋を除去した酸化還元電流測定装置の基体の上蓋方向より見た斜視図である。
【図5】上蓋を除去した酸化還元電流測定装置の平面図である。
【図6】底蓋及び上蓋を除去した酸化還元電流測定装置の基体の底壁方向より見た斜視図である。
【図7】底蓋及び振動体を除去した酸化還元電流測定装置の底壁方向より見た平面図である。
【図8】本発明の酸化還元電流測定装置を使用して遊離残留塩素の測定を行った場合の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の酸化還元電流測定装置を使用して遊離残留塩素の連続測定を行った場合の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 酸化還元電流測定装置
1A 装置本体
2 作用極
3 検知チャンバー
4 入口チャンバー
5 出口チャンバー
6、7 第1及び第2逆止弁
8 振動体
9 駆動手段
10 対極
20 基体
21 底蓋
22 上蓋
23 中央水平隔壁
24、25 垂直隔壁
26 入口導管
27 出口導管
35 温度測定素子
Claims (13)
- 作用極と対極間に流れる酸化還元電流を検出して検水中の測定対象成分の濃度を測定する酸化還元電流測定方法において、
外部とは画定され少なくとも作用極が配置された検知領域の容積を、振動体を連続的に振動させることで膨張収縮させて、前記検知領域に外部から検水を一定方向に流入させることと前記検知領域から外部に検水を一定方向に流出させることとを連続的に行うことにより、前記作用極近傍に検水の流れを生じさせることと前記作用極近傍に検水を連続的に供給することとを同時に行うことを特徴とする酸化還元電流測定方法。 - 前記対極は、検水の流動方向にて前記作用極の下流に配置することを特徴とする請求項1の酸化還元電流測定方法。
- 前記作用極は、前記振動体の前記検知領域に面した表面に設けることを特徴とする請求項1又は2の酸化還元電流測定方法。
- 測定対象成分は、遊離残留塩素、溶存オゾン、溶存二酸化塩素、亜塩素酸イオン、過酸化水素又は次亜臭素酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化還元電流測定方法。
- 測定対象成分が遊離残留塩素である場合には前記作用極は金電極又は白金電極、前記対極は銀電極又は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存オゾンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には前記作用極は金電極、白金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が過酸化水素である場合には前記作用極は白金電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には前記作用極は金電極、前記対極は銀電極又は銀−臭化銀電極であることを特徴とする請求項4の酸化還元電流測定方法。
- 測定時に前記作用極に印加する電圧は、測定対象成分が遊離残留塩素である場合には+200〜−300mV、測定対象成分が溶存オゾンである場合には+200〜+500mV、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には+200〜+600mV、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には+550〜+950mV、測定対象成分が過酸化水素である場合には+600〜+980mV、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には+200〜−200mVである請求項5の酸化還元電流測定方法。
- 作用極と対極間に流れる酸化還元電流を検出して検水中の測定対象成分の濃度を測定する酸化還元電流測定装置において、
外部とは画定され、検水の入口及び出口を備え、少なくとも前記作用極が配置された検知チャンバーを形成する基体と、
振動することにより前記検知チャンバーの容積を膨張収縮させる振動体と、
前記検知チャンバーの入口及び出口にそれぞれ配置された第1及び第2逆止弁手段と、
を有し、前記振動体の連続的な振動に対応して前記第1及び第2逆止弁手段が協働して、前記検知チャンバーの入口を介して前記検知チャンバー内に検水を一定方向に流入させることと前記検知チャンバーの出口を介して前記検知チャンバー内の検水を一定方向に流出させることとを連続的に行うことにより、前記作用極近傍に前記検水の流れを生じさせることと前記作用極近傍に前記検水を連続的に供給することとを同時に行うことを特徴とする酸化還元電流測定装置。 - 前記作用極は、前記振動体の前記検知チャンバーに面した表面に設けることを特徴とする請求項7の酸化還元電流測定装置。
- 前記入口内、或いは、前記入口に隣接して温度検出手段を配置することを特徴とする請求項8の酸化還元電流測定装置。
- 前記振動体は、圧電体を利用したバイモルフ振動子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかの項に記載の酸化還元電流測定装置。
- 測定対象成分は、遊離残留塩素、溶存オゾン、溶存二酸化塩素、亜塩素酸イオン、過酸化水素又は次亜臭素酸であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかの項に記載の酸化還元電流測定装置。
- 測定対象成分が遊離残留塩素である場合には前記作用極は金電極又は白金電極、前記対極は銀電極又は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存オゾンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には前記作用極は金電極、白金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には前記作用極は金電極又はガラス状ガス不透過性炭素電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が過酸化水素である場合には前記作用極は白金電極、前記対極は銀−塩化銀電極であり、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には前記作用極は金電極、前記対極は銀電極又は銀−臭化銀電極であることを特徴とする請求項11の酸化還元電流測定装置。
- 測定時に前記作用極に印加する電圧は、測定対象成分が遊離残留塩素である場合には+200〜−300mV、測定対象成分が溶存オゾンである場合には+200〜+500mV、測定対象成分が溶存二酸化塩素である場合には+200〜+600mV、測定対象成分が亜塩素酸イオンである場合には+550〜+950mV、測定対象成分が過酸化水素である場合には+600〜+980mV、測定対象成分が次亜臭素酸である場合には+200〜−200mVである請求項12の酸化還元電流測定装置。
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