JP2004191197A - 濃度測定装置及び濃度測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】試料液S中に検知極2を挿入して、試料液S中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測する濃度測定装置であって、前記検知極2が、回転又は振動する支持体1の下端面に設けられていると共に、圧縮弾性体7の付勢力により検知極2を押圧する洗浄体6を備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料液中に検知極を挿入して試料液中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測する濃度測定装置及び濃度測定方法に関する。さらに詳しくは、試料液中の挟雑物質等に関わらず、安定してポーラログラフ方式又はガルバニ電池方式の酸化還元電流(電解電流)計測や酸化還元電位(検知極電位)計測が可能な濃度測定装置及び濃度測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、残留塩素、溶存オゾン,塩素要求量、二酸化塩素等の測定を目的として、ポーラログラフ方式又はガルバニ電池方式の酸化還元電流測定装置が用いられている。
これらの測定方式は、試料液に、白金、金などの貴金属やグラシーカーボンなどからなる検知極と、検知極に対して充分に大きい表面積をもつ銀などからなる対極とを浸漬し、両極間の間に適当な一定電圧を印加して検知極近傍において測定対象成分の電解還元(又は酸化)を起こさせることで電解電流を得、これを測定することにより所定成分の濃度を求めるものである。
このような測定方式では、検知極の表面に薄く均一な拡散層を得、測定対象成分の濃度に比例した電解電流(拡散電流)が測定されている。薄く均一な拡散層を得るため、試料液には、検知極表面に対する一定の線速度を与えることが行われている。
したがって、正確な測定値を得るには、検知極の表面状態が常時一定であることが必要となる。
【0003】
ところが、検知極表面は、対極で生成される電解物質や試料液中の夾雑物が主として電気化学的に付着(メッキ)することにより汚染されて感度が低下し易く、測定に際しては電極の洗浄が必要となる。この洗浄手段として、従来からセラミック等のビーズを充填した中で検知極を回転又は振動させたり、さらには試料液に水流を起こさせ、その水流にのせてビーズ状研磨剤を検知極表面に当てて研磨することなどが行われていた(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−288559号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、試料液中に検知極に吸着する挟雑物を大量に含んでいたり、測定対象成分が高濃度であったりした場合、前記特許文献1のように、ビーズ状研磨剤を検知極表面に当てて研磨する方法では、検知極の良好な表面状態を短時間しか維持できない場合がある。
【0006】
ビーズ状研磨剤による研磨効率は、ビーズ状研磨剤の量を増やすことによってある程度向上させることができる。しかし、ビーズ状研磨剤の量を増やしすぎると、汚れや試料液をビーズ状研磨剤の間隙に保持しやすくなるため、かえって検知極が汚れやすくなったり、試料液の置換が悪くなったりする弊害がある。
【0007】
また、ビーズ状研磨剤のビーズ径を小さくして接触面積を上げることによっても、ある程度研磨効率を向上させることができる。しかし、ビーズ径を小さくするためにはビーズ状研磨剤を保持するカゴのメッシュも小さくしなければならず、メッシュ部がつまりやすくなり、試料液の置換が悪くなるという弊害がある。
【0008】
また、ビーズ状研磨剤の材質をジルコニア等の硬質材料とすることによっても、ある程度研磨効率を向上させることができる。しかし、ビーズ状研磨剤はそれ自体が汚れるため頻繁に交換が必要な消耗品であり、比較的高価な硬質材料を採用すると、運転コストが上がるという弊害がある。また、研磨される検知極の摩耗速度が速くなるという弊害もある。
【0009】
このように、ビーズ状研磨剤の研磨効率を上げることには限界があり、測定対象成分が高濃度であったり、試料液中に検知極に吸着する挟雑物を大量に含んでいたりする場合、安定して測定を行うことが困難であった。
【0010】
さらに、検知極は、通常支持体の先端に設けられるが、ビーズ状研磨剤は、この支持体の先端部周囲に浮遊して分布するため、検知極だけでなく、支持体まで浸食してしまう。特に、支持体は通常検知極よりも柔らかい材質で形成されるため、検知極よりも速く削られしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて、測定対象成分が高濃度であったり、試料液中に検知極に吸着する挟雑物を大量に含んでいる場合であっても、安定してポーラログラフ方式又はガルバニ電池方式の酸化還元電流(電解電流)計測や酸化還元電位(検知極電位)計測が可能であり、さらに、支持体を必要以上に研磨してしまうことのない濃度測定装置及び濃度測定方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の濃度測定装置は、試料液中に検知極を挿入して、試料液中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測する濃度測定装置であって、前記検知極が、回転又は振動する支持体の下端面に設けられていると共に、弾性体の付勢力により該検知極を押圧する洗浄体を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、回転又は振動する検知極が、これを押圧する洗浄体により研磨される。その際、押圧は弾性体の付勢力によるので、検知極が偏芯回転や振動によって上下動したり、研磨により短小化しても、検知極と洗浄体との接触を最適な状態に維持することができる。
また、洗浄体は、検知極を押圧するように接触するので、すなわち、支持体の先端部周囲に浮遊して分布するビーズ状研磨剤とは異なり、検知極に直接接触して研磨するので、支持体を必要以上に研磨してしまうことがない。
【0014】
本発明において、弾性体と洗浄体とは。別個の構成要素とすることができる。具体的には、前記洗浄体を圧縮弾性体の上端に設けたり、引張弾性体の下端に設けたりして、洗浄体と別途に設けられた弾性体の付勢力を利用することができる。
また、洗浄体を圧縮弾性体で構成し、洗浄体自身の付勢力を利用することもできる。さらに、洗浄体を圧縮弾性体で構成すると共に、他の圧縮弾性体や引張弾性体を併用し、洗浄体と別途に設けられた弾性体との双方の付勢力を利用することもできる。
【0015】
本発明の濃度測定方法は、上記本発明に係る濃度測定装置を用いて、試料液中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は第1実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。図1の濃度測定装置は、支持体1と、支持体1の下端面に設けられた検知極2と、支持体1に巻回された対極3と、検知極2と対極3との間に流れる酸化還元電流(電解電流)又は検知極2の電位(検知極電位)を計測して試料液S中の測定対象成分の濃度に変換する変換器4と、検知極2を回転又は振動させるモータ5と、検知極2の下方に当接して設けられた洗浄体6と、この洗浄体6を検知極2に向けて付勢する圧縮弾性体7とから概略構成されている。
【0017】
支持体1は、例えば、エポキシ樹脂等からなる棒状体である。検知極2は、例えば半球を伏せたような形状であり、その下端面が支持体1の下端面と同一平面上に位置するように、支持体1の下端側に埋め込まれている。検知極2のリード線2aは、支持体1の内部を通って、支持体1の上方から導出され、変換器4に接続されている。また、対極3は例えば線状であり、支持体1の周囲に巻回されている。対極3のリード線3aも、変換器4に接続されている。
検知極2の材質としては、例えば、金、白金、合金、グラシーカーボン等が好適に採用できる。また、対極3の材質としては、例えば、白金、銀/塩化銀等が好適に採用できる。
【0018】
検知極2は、モータ5によって回転又は振動させられる。回転の場合、支持体の中心線を回転軸とする単純な回転でもよいが、一点を支点とする歳差運動(偏芯回転)とすることが、リード線2a、3aを導出する便宜上好ましい。
【0019】
洗浄体6は、検知極2と接触する面の少なくとも一部が、例えば、セラミック、#4,000程度のサンドペーパー等の研磨材料により構成されている。洗浄体6の全体を研磨材料で構成しない場合、他の部分の材質に特に限定はない。
洗浄体6の上面、特に研磨材料により構成されている部分の上面は平坦面であることが好ましい。これにより、検知極2と充分に接触を保ち、検知極2及び支持体1の下端面の平坦性を保って研磨することができる。
洗浄体6の全体形状に特に限定はないが、平面視が円形、矩形等である板状とすることが、製造上、取り扱いの便宜上好ましい。
【0020】
洗浄体6を検知極2に向けて付勢する圧縮弾性体7としては、例えば、圧縮コイルばねや圧縮したスポンジ体等を採用することができる。特に圧縮コイルばねは、試料液に対する耐食性に優れた材質を選択しやすく、また、付勢力の方向や大きさも安定させやすいので好ましい。
圧縮弾性体7は、その下端が測定セル8の底面に固定されており、上端に設けた洗浄体6を上方に付勢するようになっている。そのため、洗浄体6が、検知極2を下方から押圧するようになっている。
なお、圧縮弾性体7が圧縮コイルの場合、複数本を配置してもよい。
【0021】
電解電流を計測する場合、変換器4には、検知極2と対極3との間に所定の一定電圧を付与する加電圧機構と電流計とが設けられる。加電圧機構は、具体的には所定の電圧に設定可能な電源である。
なお、印可される所定の印加電圧の値にはゼロも含まれる。この場合、電流計を介して検知極と対極とを繋ぐ単なる配線によって加電圧機構を構成することができる。
一般的には、印加電圧がゼロでない場合はポーラログラフ方式と呼ばれ、印加電圧がゼロの場合はガルバニ電池方式と呼ばれる。両方式とも、被還元物質等が一定の厚さの拡散層と呼ばれる層の中において、濃度勾配による自然拡散によってのみ検知極表面に運ばれ、その表面で酸化還元されるときに流れる拡散電流(酸化還元電流)を捉える点において共通しており、本質的な差違はない。
本実施形態の濃度測定装置は、ポーラログラフ方式とガルバニ電池方式のいずれの方式であっても差し支えない。
検知極2と対極3との具体的材質、及びこれらの間に印加される所定の印加電圧の具体的な値は、測定対象成分等に応じて適宜決定される。
一方、検知極電位を計測する場合、変換器4には、電圧計が設けられる。
【0022】
変換器4にはさらに、計測した電解電流又は検知極電位を測定対象成分の濃度に換算する濃度換算回路が設けられる。また、計測した電解電流又は検知極電位、換算した濃度等を表示及び/又は出力する機能を有している。
なお、試料液Sには、測定原理に応じて、試薬や希釈液等を、適宜添加しておくことができる。
【0023】
次に、図2は第2実施形態に係る濃度測定装置の等価回路図である。図2において、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の濃度測定装置は、圧縮弾性体7に代えて、引張弾性体17、17を用いている点が、第1実施形態の濃度測定装置と相違している。
【0024】
引張弾性体17としては、例えば、引張コイルばねや引っ張った状態のゴム等を採用することができる。特に引張コイルばねは、試料液に対する耐食性に優れた材質を選択しやすく、また、付勢力の方向や大きさも安定させやすいので好ましい。
引張弾性体17は、その上端が測定セル18の上面に固定されており、下端に設けた洗浄体6を上方に付勢するようになっている。そのため、洗浄体6が、検知極2を下方から押圧するようになっている。
なお、引張弾性体17が引張コイルばね又はゴムの場合、支持体1の周囲に複数本を均等に配置することが好ましい。
【0025】
次に、図3は第3実施形態に係る濃度測定装置の等価回路図である。図3において、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の濃度測定装置は、洗浄体6及び圧縮弾性体7に代えて、圧縮弾性体である洗浄体16を用いている点が、第1実施形態の濃度測定装置と相違している。
【0026】
洗浄体16としては、例えば、金属たわしやスポンジ等を採用することができる。特に金属コイルで形成した金属たわしは、試料液に対する耐食性に優れた材質を選択しやすいので好ましい。
洗浄体16は、その下端が測定セル18の底面に当接するように配置されており、その上面を支持体1で押さえつけることにより、反作用として上方に向かう付勢力が得られるようになっている。そのため、洗浄体16が、検知極2を下方から押圧するようになっている。
【0027】
これら第1から第3の実施形態によれば、検知極2を回転又は振動させることによって、検知極2の下端面を洗浄体6、16の上面にこすりつけて研磨することができる。このとき、支持体1の下端面も研磨されるが、検知極2の下端面よりも上方まで浸食されることがなく、検知極2と支持体1の下端面の平坦性が保持されやすい。
また、検知極2を回転又は振動させることによって、試料液Sを検知極2表面に対して相対的に流動させることができる。したがって。電解電流を計測する場合に検知極2の近傍に安定な拡散層を形成することができる。
【0028】
なお、上記各実施形態においては、電極として、検知極2と対極3のみを示したが、この他に、参照電極や基準電極、試料液の温度を検知するのためのサーミスタ等を適宜追加することができる。また、対極3は支持体1に巻き回した線状体に限られず、例えば、支持体1から独立して試料液Sに挿入される棒状体とすることができる。
また、この測定セル8、18としては、図1〜3に示すようなバッチ測定式のセルだけでなく、フローセルも採用できることはもちろんである。
また、変換器4は、電解電流や検知極電位を測定対象成分の濃度に変換する濃度換算回路を有するものであるとしたが、濃度にまで変換する機能は必須ではなく、電解電流や検知極電位をそのまま表示及び/又は出力するものであっても差し支えない。
また、上記各実施形態においては、洗浄体による機械研磨に加えて、電気的な洗浄方法を併用することができる。
電気的な洗浄方法としては、測定時の印加電圧と異なる電圧を付与するいわゆる電解研磨や、周期的に電極間の回路を開放して、検知極に電圧がかからない状態を作る方法等が採用できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、測定対象成分が高濃度であったり、試料液中に検知極に吸着する挟雑物を大量に含んでいる場合であっても、安定してポーラログラフ方式又はガルバニ電池方式の酸化還元電流(電解電流)計測や酸化還元電位(検知極電位)計測が可能となる。また、支持体を必要以上に研磨してしまうことがないので、長期間の使用に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【符号の説明】
1……支持体、2……検知極、3……対極、4……変換器、5……モータ、6、16……洗浄体、7……圧縮弾性体、17……引張弾性体、
Claims (5)
- 試料液中に検知極を挿入して、試料液中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測する濃度測定装置であって、
前記検知極が、回転又は振動する支持体の下端面に設けられていると共に、
弾性体の付勢力により該検知極を押圧する洗浄体を備えていることを特徴とする濃度測定装置。 - 前記洗浄体が、圧縮弾性体の上端に設けられている請求項1に記載の濃度測定装置。
- 前記洗浄体が、引張弾性体の下端に設けられている請求項1に記載の濃度測定装置。
- 前記洗浄体が圧縮弾性体からなる請求項1から請求項3の何れかに記載の濃度測定装置。
- 請求項1から請求項4の何れかに記載の濃度測定装置を用いて、試料液中の測定対象成分濃度に対応する電解電流又は検知極電位を計測することを特徴とする濃度測定方法。
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