JP3956432B2 - 密閉型圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気調和機等の冷凍サイクルに組み込まれる密閉型圧縮機、特にHFC410A等の高圧冷媒を使用する圧縮機の密閉容器の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気調和機等の冷凍サイクルに組み込まれる密閉型圧縮機は図4に示すような構成で、密閉容器101内に電動機102と圧縮機構部103が収容される。電動機下部には圧縮機構部103が配され、電動機102の固定子102aの外周は密閉容器101の胴部101aに焼きバメ固定されている。圧縮機構部103はこの例ではローリングピストンタイプで密閉容器101の外に付けられたアキュムレータ104に繋がる吸い込み管105は、圧縮機構部103のシリンダ106にあけられた孔107に差し込まれている。この吸い込み管105は密閉容器101とロウ付けで密封されている。吸い込み管105から圧縮機構部103で圧縮された冷媒は密閉容器101内部に吐き出され吐き出し管108より冷凍サイクル(図示せず)に吐き出される。従って、密閉容器101の内部は吐き出し圧力になっている。
【0003】
このような圧縮機の冷媒としては、従来HCFC22(R22)が用いられてきたが、その大気放出がオゾン層の破壊を招く可能性があるため、将来全廃することが決められている。このHCFC22の代替冷媒としてはいくつかのHFC冷媒が候補に挙がっているが、HFC125,HFC32,HFC134aの混合冷媒のR407CとHFC125とHFC32の混合冷媒のR410Aが有力候補としてあげられている。R407Cにおいてはその吐き出し圧力はほぼR22と同一であるが、R410Aにおいてはその吐き出し圧力がR22の約1.7倍となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような吐き出し圧力の大きな代替冷媒を密閉容器が吐き出し圧力である高圧型の密閉型圧縮機に使用する場合は密閉容器の耐圧強度を上げなければならない。
【0005】
密閉容器の耐圧力向上させる方法としてはその板厚を増す方法があるが、電動機の固定子を密閉容器に焼きバメするものにおいては密閉容器の板厚を増すと固定子にかかる応力が増し、電動機固定子のコアを変形させ、電動機巻線のレアーショートにつながる。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために成されたもので、生産がしやすく、高圧の代替冷媒に耐える耐圧強度を持った密閉容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、電動機の固定子を密閉容器に焼きバメ固定する高圧型の密閉型圧縮機において、前記密閉容器を円筒形の胴部と鏡板から構成し、前記密閉容器胴部の鋼板材料の降伏点応力を前記鏡板の降伏点応力より大きい鋼材とし、胴部の板厚を鏡板の板厚より薄くしたもので、胴部の鋼板材の降伏点応力を大きくすることにより、板厚をあげることなく、高圧冷媒に耐える密閉容器を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、電動機の固定子を密閉容器に焼きバメ固定する高圧型の密閉型圧縮機において、前記密閉容器を円筒形の胴部と鏡板から構成し、前記密閉容器胴部の鋼板材料の降伏点応力を前記鏡板の降伏点応力より大きい鋼材とし、胴部の板厚を鏡板の板厚より薄くしたもので、胴部の鋼板材の降伏点応力を大きくすることにより、板厚をあげることなく、高圧冷媒に耐えることができ、従って、鋼の弾性係数はほぼ同じであるので、密閉容器の焼きバメによって固定子にかかる応力が増し、電動機固定子のコアを変形させて、電動機の巻線のレアーショートにつながることがない。更に密閉容器の鏡板は降伏点応力が小さい鋼材の板厚をあげて耐圧を向上させるため、複雑な形状に絞り加工が可能となり、鏡板からの騒音発生を抑えることが出来る。請求項2の発明は、請求項1の発明を具体材料でしめしたものである。
【0009】
更に、請求項3記載の発明は冷媒としてHFC32もしくはそれを含む混合冷媒を使用する請求項1又は2に記載のもので、特に圧力の高いR410Aに適用すると、この発明は有効である。
【0010】
【実施例】
(実施例1)
図1は本発明の一実施例を示したもので、密閉容器の1の内部に電動機2と圧縮機構部3を収納している。圧縮機構部3は本実施例はローリングピストンタイプのもので、シリンダ4、ピストン5、クランク軸6、これを支える主軸受け7、副軸受け8からなる。クランク軸6は電動機2のロータ2bに直結されている。密閉容器1の外側にアキュムレータ9が取り付けられ、アキュムレータ9と圧縮機構部3はシリンダ4にあけられた孔4aに挿入された吸い込み管10で連結されている。アキュムレータ9に入った吸い込みガスは、吸い込み管10から圧縮機構部3には入り、圧縮され、密閉容器内部11に吐き出され、吐き出し管12より冷凍サイクル(図示せず)に出ていく。従って、密閉容器1の内部11は吐き出し圧力になっている。
【0011】
このような構造の密閉型圧縮機においてR22の代替冷媒の候補であるR410Aを使用すると、密閉容器の内部11の圧力は、R22の場合過負荷条件で2.6MPaであったものが、4.2MPaとなる。この圧力に対して密閉容器1は十分な耐圧強度も持つことが必要である。そのため通常は上記の圧力に対し3倍から5倍の破壊圧力を設定する。本発明においては密閉容器1は胴部1a、上鏡板部1b、下鏡板部1cの3部品から構成している。図2に胴部1aを示す。胴部1aは降伏点応力の大きい自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板、または圧力容器鋼板を使用し、その板厚をR22で使用されているものと同一に設定している。自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板は引っ張り強さが490N/mm2以上、降伏点が325N/mm2以上であり、降伏点応力も高く、溶接性も良い。円筒形状の胴部1aは平板を巻いてその端部1eを溶接して作成する。この作成法では板厚を増すより、抗張力を増す方が作成しやすい。また、電動機2の固定子2aはこの密閉容器胴部1aに焼きバメ固定されている。胴部の鋼板材の降伏点応力を大きくしているが、鋼の弾性係数はほぼ同じであるので、板厚がR22用の胴部と同じであれば、密閉容器の焼きバメによって固定子にかかる応力も変わらないため、電動機固定子のコアを変形させて、電動機の巻線のレアーショートにつながることがない。
【0012】
一方、上下の鏡板1b,1cは図3にその一例を示すようにカップ状の形態をしている。鏡板は平板から深絞り加工により作成される。また、鏡板からは騒音が放散されやすいため、複雑形状に絞った方がよい。従って、鏡板の耐圧力を上昇させるには絞り加工性を重視し、降伏点応力があまり大きくない材料を選び、その板厚を上げて対応すべきである。本発明では具体的には熱間圧延軟鋼板、または冷間圧延鋼板が選択された。板厚を上げることは騒音の放散を防ぐことにも効果を上げる。
【0013】
以上は、ロータリー圧縮機の実施例で述べたが、スクロール圧縮機など高圧式の他の形式の圧縮機においても同様なことが言える。
【0014】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の請求項1および2によれば、電動機の固定子を密閉容器に焼きバメ固定する高圧型の密閉型圧縮機において、密閉容器胴部の鋼板材料の降伏点応力を鏡板の降伏点応力より大きい鋼材とし、胴部の板厚を鏡板の板厚より薄くしたもので、胴部の鋼板材の降伏点応力を大きくすることにより、板厚をあげることなく、高圧冷媒に耐えることができ、密閉容器の焼きバメによって、電動機固定子のコアを変形させて、電動機の巻線のレアーショートにつながることがなく、更に密閉容器の鏡板は、複雑な形状に絞り加工が可能となり、鏡板からの騒音発生を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す密閉型圧縮機の縦断面図
【図2】 本発明の一実施例の密閉容器胴部の断面図
【図3】 本発明の一実施例の密閉容器鏡板の断面図
【図4】 従来の密閉型圧縮機の縦断面図
【符号の説明】
1 密閉容器
1a 胴部
1b 上鏡板
1c 下鏡板
2 電動機
2a 電動機固定子
3 圧縮機構部
10 吸い込み管
Claims (3)
- 密閉容器の内部を吐き出しガス雰囲気とし、その内部に電動機とこの電動機で駆動する圧縮機構部を配設し、前記密閉容器を円筒形の胴部と鏡板から構成し、前記電動機の固定子の外周を前記密閉容器胴部に焼きバメ固定した密閉型圧縮機において、前記密閉容器胴部の鋼板材料の降伏点応力を前記鏡板の降伏点応力より大きい鋼材とし、胴部の板厚を鏡板の板厚より薄くした密閉型圧縮機。
- 胴部の材料を自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板、または圧力容器鋼板とし、鏡板を熱間圧延軟鋼板、または冷間圧延鋼板とした請求項1記載の密閉型圧縮機。
- 冷媒としてHFC32もしくはそれを含む混合冷媒を使用する請求項1又は2に記載の密閉型圧縮機。
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