JP3952349B2 - 気流により管内を輸送される粉粒体に接着剤をまぶす方法及び装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気流により粉粒体を輸送する輸送管内に接着剤を噴出し、粉粒体に接着剤をまぶす方法及び装置に関し、最も代表的には、解繊された木材ファイバーに有機イソシアネート系の接着剤をまぶし付ける技術に関する。
【０００２】
【従来の技術】
粉体あるいは粒体（本明細書中において、単に「粉粒体」という。）に接着剤をまぶし付け、これを所望の形状に圧縮成形してボードなどの製品を製造する技術は公知である。
例えば、中質木質繊維ボード（ＭＤＦ）を製造する場合、輸送管中を蒸気等の気体で輸送される解繊された木材ファイバーの流れの中に、例えばウレタン系樹脂などの有機イソシアネートや、アミノ系樹脂などの接着剤を噴出して、木材ファイバーの表面にまぶし付け、これを圧縮成形して所望のボードを得るものである。
然しながら、この種の装置においては、しばしば輸送管路の閉塞が発生する。
【０００３】
典型的なまぶし付け装置では、輸送管路は内径約２５〜１５０ｍｍのステンレス鋼管で、５〜１５０ｂａｒ、１５０〜２００℃、１〜３ｔ／ｈｒの蒸気流により、５〜１０ｔ／ｈｒのファイバーを輸送し、これに約１〜３ｔ／ｈｒの添加速度でウレタン系の接着剤、例えばＭＤＩ（ジフェニルメタンジイソシアネート）を添加するようになっているが、このような装置では平均６時間程度の運転で閉塞が発生する。従って、連続運転できるのは数時間程度であり、この程度運転した後は装置の分解清掃又は閉塞部の交換が必要であるため、装置の運転効率が低下し、コストが嵩むという問題があり、長時間連続運転できる技術の開発が強く望まれている。
また、このような輸送管路の閉塞はプラント全体に大きな損害を及ぼすので、完全な予防対策が求められている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は叙上の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、粉粒体の輸送管路の閉塞を完全に防止でき、長時間に亘って連続運転が可能な方法及び装置を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
輸送管路の閉塞の発生原因について先ず簡単に説明する。
一般に、接着剤は口径約６ｍｍ程度のノズルから、輸送管の中心軸へ向けて略直角に噴出され、これが管内を流れる気流中に飛散し、気流中の木材ファイバーと接触してまぶし付けが行なわれる。
接着剤が良くまぶされた粉粒体は多少べたべたしているので、管壁に付着する可能性があるが、その付着力は気流による流体抵抗に比べて極めて小さく、そのため粉粒体そのものが長く管璧に留まることはない。従って接着剤が完全に粉粒体にまぶされた後には輸送管路の閉塞は発生しない。
【０００６】
閉塞が発生するのは接着剤噴出部の直後であり、そのような場所で閉塞が発生する理由は、輸送管の中心軸へ向けて略直角に噴出される接着剤の流れが、輸送管路を流れる蒸気及び粉粒体から成る混合物の流れに対し、あたかも輸送管路中に突出する棒状の障害物として機能し、その下流域にカルマン渦列を発生させることにある。
このカルマン渦列は、その反作用によって、噴出される接着剤の流れを激しく蛇行させる。その主たる蛇行は、輸送管路の中心軸（Ｚ軸）と接着剤の噴出方向（Ｘ軸）によって定められるＸＺ平面に直角なＹＺ平面内に発生するが、副次的な蛇行はＸＺ平面内にも発生し、そのため管内壁の一部に接着剤の飛沫が付着することになる。
【０００７】
そのように接着剤の液滴が管壁に粘着すると、その粘着力は気流による流体抵抗より大きいため容易には剥離せず、その上その粘着物には気流により搬送される粉粒体が激しく衝突し、管壁の付着物を成長させ、場合によっては長時間高温に曝されるため付着物の硬化反応が進行し、固形化することになる。
このように固形化した粘着物が管壁に発生すると、接着剤の飛沫の付着が一層促進されるようになり、また、粉粒体の突き刺さりも更に助長されるようになる。そのため固形化された付着物は急速に成長し、一気に輸送管路を閉塞することになる。
【０００８】
この状態を図４ないし図６に示した公知のまぶし付け装置を参照しつつ説明する。図４は公知のまぶし付け装置の作動を説明する縦断面図であり、図５は図４に示した装置の一部破断上面図、図６は図４に示した装置の軸直角（Ａ−Ａ）断面図である。この公知のまぶし付け装置２０では、輸送管２１内を、解繊された木材ファイバー等の粉粒体２４が高圧蒸気の気流によってＺ軸方向、即ち輸送管路の中心軸方向に沿って、図中左側から右側へ矢印の方向に輸送されている。
接着剤噴出口２２からは、輸送管２１の中心軸Ｚに対して略直角なＸ軸方向に接着剤２３が噴出されるようになっているが、この接着剤２３があたかも輸送管内に突出する棒状の障害物として機能し、その下流域にカルマン渦列２５を発生させる。このカルマン渦列２５の作用で、接着剤２３の流れは激しく蛇行し、このとき輸送管２１の内壁面が近接しているため、図４ないし図６に示す位置Ｃにおいて、接着剤の液滴が管内壁に接触、粘着することとなる。
一旦このように接着剤の粘着が生じると、その粘着物に気流中の木材ファイバー又はチップ２４が衝突して突き刺さり、付着物が成長し、場合によっては、長時間高温に曝されるため、接着剤の固化反応が進行し、半ば固形化する。
このように固形化した突起が生じると、接着剤２３の液滴の付着はますます促進されるので、突起の成長は一段と加速され、輸送管路は早期に閉塞されるに到るものである。
【０００９】
従って、このような輸送管路の閉塞を予防するためには、接着剤の噴出口近傍で接着剤の飛沫が管壁に接触しないようにすればよく、それには、噴出口から噴射される接着剤の流れが、輸送管路中に突出する棒状の障害物とならず、その下流域にカルマン渦列を発生させないようにすればよいことが判明した。
【００１０】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る方法は、粉粒体輸送管内への接着剤の噴出方向を、粉粒体輸送管の上流側に向くように傾斜させることを特徴とするものである。
このように、接着剤の噴出方向が輸送管の上流側に向くように傾斜していると、従来の如く輸送管内の気流に対して略直角に接着剤を噴出させるのと異なり、カルマン渦列の発生条件が損なわれるため、明瞭で強力なカルマン渦列の発生が見られず、更にまた、上流側へ向けて気流に対抗、衝突する形で噴出された接着剤は、気流の圧力で吹きちぎられて輸送管内に広く飛散するので、管内壁に付着するのが有効に防止される。
【００１１】
なお、本発明において、接着剤の噴出方向を粉粒体輸送管の上流側に向くように傾斜させる場合、接着剤の噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度を３０°以上、７０°以下とすることが推奨される。
上記傾斜角度が３０°未満であると、噴出される接着剤の流れが輸送管の内壁面に近いため、気流で吹き分けられた接着剤が輸送管の内壁面に付着しやすくなり、好ましくない。
また、７０°を超えると、傾斜させる効果が少なく、従来の略直角であるのと同様にカルマン渦列を発生しやすくなる。
【００１２】
なお、接着剤の付着防止効果を一層増大させるため、粉粒体輸送管内の気流と接着剤との混合部付近の輸送管に超音波等の振動を加えることも推奨される。
【００１３】
本発明方法の最も代表的な形態においては、輸送管内を搬送される粉粒体は解繊された木材ファイバーであり、輸送管内へ噴出される接着剤は有機イソシアネートである。
【００１４】
上記方法を好適に実施するための本発明に係る装置は、接着剤噴出ノズルを、その噴出方向が粉粒体輸送管の上流側に向くように輸送管に対して傾斜して取り付けたことを特徴とする。
接着剤噴出ノズルの傾斜角度は、接着剤噴出ノズルの噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度を３０°以上、７０°以下とすることが推奨される。
また、粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管に振動を加える装置を設けることが推奨される。
更にまた、接着剤の付着防止効果を増大させるため、粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管の内壁面にポリテトラフルオルエチレンによるコーティングを施したり、溶射処理を施すことも推奨される。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施例について説明する。
図１は、本発明に係る粉粒体に接着剤をまぶす方法を実施する装置の一実施例の基本構成を、輸送管中心軸及び噴出ノズル中心軸を含む面（ＺＸ面）に沿って切断した状態において示す縦断面図、図２は、図１に示した実施例の一部破断上面図、図３は、もう一つの実施例を示す縦断面図である。
【００１６】
この図１及び図２に示した本発明に係るまぶし付け装置１０においては、輸送管１１内を、解繊された木材ファイバー等の粉粒体１４が高圧蒸気の気流によってＺ軸方向、即ち輸送管路の中心軸方向に沿って、図中左側から右側へ矢印の方向に輸送されている。
接着剤噴出ノズル１２からは、輸送管内へ向けて接着剤１３が噴出されるが、本発明における噴出ノズル１２は、図示する如くその噴出方向が輸送管１１の上流側に向くように、輸送管１１に対して傾斜して取り付けてある。
そのため、噴出ノズル１２から噴出される接着剤１３は気流に対抗、衝突する形で噴出され、気流の圧力で吹きちぎられて輸送管内に広く飛散し、管内壁の特定箇所に付着することがない。特に、従来の如く輸送管内の気流に対して略直角に接着剤を噴出させる場合と異なり、明瞭で強力なカルマン渦列の発生がないため、接着剤１３の蛇行が生じず、管内壁への接着剤の付着を有効に防止できる。
【００１７】
接着剤噴出ノズル１２の望ましい傾斜角度は、粉粒体を搬送する気流の速度や、噴出ノズルから噴出される接着剤の粘度、噴出量、噴出速度等々によって異なるが、一般的には、図１に示す如く、噴出ノズル１２の噴出中心軸と輸送管１１の中心軸のなす角度αが３０°以上、７０°以下となるように設定することが推奨される。上記傾斜角度αが３０°未満であると、噴出された接着剤１３の流れが輸送管の噴出ノズル側の内壁面（図１において上側の内壁面）に近くなるため、気流で吹き分けられた接着剤が付着しやすくなり、また、αが７０°を超えると、傾斜させる効果が少なく、従来と同様にカルマン渦列を発生し、接着剤の流れが蛇行して輸送管の内壁面に付着するので、いずれも好ましくない。
【００１８】
図３に示した実施例は、輸送管１１内の搬送気流と接着剤１３とが混合する領域近くの輸送管に振動を加えるため、当該領域の輸送管の外周壁と図示しない固定部材との間に超音波振動装置１５を介在させた例を示している。超音波振動装置に限らず、それより低周波のバイブレーターを取り付けるようにしてもよい。
輸送管１１にこのような振動が付与されていると、その内壁面近くの気体も振動し、管内壁に向けて接近する接着剤の粒子も振動して、それらの粒子の管内壁面への付着防止効果が一層向上する。
【００１９】
更にまた、図３に示した実施例においては、輸送管１１内の搬送気流と接着剤１３との混合領域部分の管内壁面に、ポリテトラフルオルエチレン（商標名「テフロン」）によるコーティング１６又は溶射処理が施してある。ポリテトラフルオルエチレンは、その表面の摩擦係数が低いため、接着剤の付着防止効果が大きい。
なお、図３に示した実施例では、超音波振動装置１５及びポリテトラフルオルエチレンによるコーティング１６を併用したが、いずれか一方のみを用いることも自由である。
【００２０】
なお、本発明は、最も代表的には、解繊された木材ファイバーに有機イソシアネートをまぶし付けるために好適に利用できるが、これら以外の粉粒体や接着剤にも適用し得ることは勿論である。
【００２１】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されるから、本発明によるときは、粉粒体の輸送管路の内壁面に接着剤が付着することがなく、このため輸送管路の閉塞を防止又は著しく遅延させることができ、まぶし付け装置を長時間に亘って連続運転し得る方法及び装置を提供し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る粉粒体に接着剤をまぶす方法を実施する装置の一実施例の基本構成を、輸送管中心軸及び噴出ノズル中心軸を含む面に沿って切断した状態において示す縦断面図である。
【図２】図１に示した実施例の一部破断上面図である。
【図３】本発明に係るもう一つの実施例を示す縦断面図である。
【図４】公知のまぶし付け装置の作動を説明する縦断面図である。
【図５】図４に示した装置の一部破断上面図である。
【図６】図４に示した装置の軸直角（Ａ−Ａ）断面図である。
【符号の説明】
１０ 本発明に係る接着剤まぶし付け装置
１１ 粉粒体輸送管
１２ 接着剤噴出ノズル
１３ 接着剤
１４ 粉粒体
１５ 超音波振動装置
１６ コーティング
２０ 従来公知の接着剤まぶし付け装置
２５ カルマン渦列
【発明の属する技術分野】
本発明は、気流により粉粒体を輸送する輸送管内に接着剤を噴出し、粉粒体に接着剤をまぶす方法及び装置に関し、最も代表的には、解繊された木材ファイバーに有機イソシアネート系の接着剤をまぶし付ける技術に関する。
【０００２】
【従来の技術】
粉体あるいは粒体（本明細書中において、単に「粉粒体」という。）に接着剤をまぶし付け、これを所望の形状に圧縮成形してボードなどの製品を製造する技術は公知である。
例えば、中質木質繊維ボード（ＭＤＦ）を製造する場合、輸送管中を蒸気等の気体で輸送される解繊された木材ファイバーの流れの中に、例えばウレタン系樹脂などの有機イソシアネートや、アミノ系樹脂などの接着剤を噴出して、木材ファイバーの表面にまぶし付け、これを圧縮成形して所望のボードを得るものである。
然しながら、この種の装置においては、しばしば輸送管路の閉塞が発生する。
【０００３】
典型的なまぶし付け装置では、輸送管路は内径約２５〜１５０ｍｍのステンレス鋼管で、５〜１５０ｂａｒ、１５０〜２００℃、１〜３ｔ／ｈｒの蒸気流により、５〜１０ｔ／ｈｒのファイバーを輸送し、これに約１〜３ｔ／ｈｒの添加速度でウレタン系の接着剤、例えばＭＤＩ（ジフェニルメタンジイソシアネート）を添加するようになっているが、このような装置では平均６時間程度の運転で閉塞が発生する。従って、連続運転できるのは数時間程度であり、この程度運転した後は装置の分解清掃又は閉塞部の交換が必要であるため、装置の運転効率が低下し、コストが嵩むという問題があり、長時間連続運転できる技術の開発が強く望まれている。
また、このような輸送管路の閉塞はプラント全体に大きな損害を及ぼすので、完全な予防対策が求められている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は叙上の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、粉粒体の輸送管路の閉塞を完全に防止でき、長時間に亘って連続運転が可能な方法及び装置を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
輸送管路の閉塞の発生原因について先ず簡単に説明する。
一般に、接着剤は口径約６ｍｍ程度のノズルから、輸送管の中心軸へ向けて略直角に噴出され、これが管内を流れる気流中に飛散し、気流中の木材ファイバーと接触してまぶし付けが行なわれる。
接着剤が良くまぶされた粉粒体は多少べたべたしているので、管壁に付着する可能性があるが、その付着力は気流による流体抵抗に比べて極めて小さく、そのため粉粒体そのものが長く管璧に留まることはない。従って接着剤が完全に粉粒体にまぶされた後には輸送管路の閉塞は発生しない。
【０００６】
閉塞が発生するのは接着剤噴出部の直後であり、そのような場所で閉塞が発生する理由は、輸送管の中心軸へ向けて略直角に噴出される接着剤の流れが、輸送管路を流れる蒸気及び粉粒体から成る混合物の流れに対し、あたかも輸送管路中に突出する棒状の障害物として機能し、その下流域にカルマン渦列を発生させることにある。
このカルマン渦列は、その反作用によって、噴出される接着剤の流れを激しく蛇行させる。その主たる蛇行は、輸送管路の中心軸（Ｚ軸）と接着剤の噴出方向（Ｘ軸）によって定められるＸＺ平面に直角なＹＺ平面内に発生するが、副次的な蛇行はＸＺ平面内にも発生し、そのため管内壁の一部に接着剤の飛沫が付着することになる。
【０００７】
そのように接着剤の液滴が管壁に粘着すると、その粘着力は気流による流体抵抗より大きいため容易には剥離せず、その上その粘着物には気流により搬送される粉粒体が激しく衝突し、管壁の付着物を成長させ、場合によっては長時間高温に曝されるため付着物の硬化反応が進行し、固形化することになる。
このように固形化した粘着物が管壁に発生すると、接着剤の飛沫の付着が一層促進されるようになり、また、粉粒体の突き刺さりも更に助長されるようになる。そのため固形化された付着物は急速に成長し、一気に輸送管路を閉塞することになる。
【０００８】
この状態を図４ないし図６に示した公知のまぶし付け装置を参照しつつ説明する。図４は公知のまぶし付け装置の作動を説明する縦断面図であり、図５は図４に示した装置の一部破断上面図、図６は図４に示した装置の軸直角（Ａ−Ａ）断面図である。この公知のまぶし付け装置２０では、輸送管２１内を、解繊された木材ファイバー等の粉粒体２４が高圧蒸気の気流によってＺ軸方向、即ち輸送管路の中心軸方向に沿って、図中左側から右側へ矢印の方向に輸送されている。
接着剤噴出口２２からは、輸送管２１の中心軸Ｚに対して略直角なＸ軸方向に接着剤２３が噴出されるようになっているが、この接着剤２３があたかも輸送管内に突出する棒状の障害物として機能し、その下流域にカルマン渦列２５を発生させる。このカルマン渦列２５の作用で、接着剤２３の流れは激しく蛇行し、このとき輸送管２１の内壁面が近接しているため、図４ないし図６に示す位置Ｃにおいて、接着剤の液滴が管内壁に接触、粘着することとなる。
一旦このように接着剤の粘着が生じると、その粘着物に気流中の木材ファイバー又はチップ２４が衝突して突き刺さり、付着物が成長し、場合によっては、長時間高温に曝されるため、接着剤の固化反応が進行し、半ば固形化する。
このように固形化した突起が生じると、接着剤２３の液滴の付着はますます促進されるので、突起の成長は一段と加速され、輸送管路は早期に閉塞されるに到るものである。
【０００９】
従って、このような輸送管路の閉塞を予防するためには、接着剤の噴出口近傍で接着剤の飛沫が管壁に接触しないようにすればよく、それには、噴出口から噴射される接着剤の流れが、輸送管路中に突出する棒状の障害物とならず、その下流域にカルマン渦列を発生させないようにすればよいことが判明した。
【００１０】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る方法は、粉粒体輸送管内への接着剤の噴出方向を、粉粒体輸送管の上流側に向くように傾斜させることを特徴とするものである。
このように、接着剤の噴出方向が輸送管の上流側に向くように傾斜していると、従来の如く輸送管内の気流に対して略直角に接着剤を噴出させるのと異なり、カルマン渦列の発生条件が損なわれるため、明瞭で強力なカルマン渦列の発生が見られず、更にまた、上流側へ向けて気流に対抗、衝突する形で噴出された接着剤は、気流の圧力で吹きちぎられて輸送管内に広く飛散するので、管内壁に付着するのが有効に防止される。
【００１１】
なお、本発明において、接着剤の噴出方向を粉粒体輸送管の上流側に向くように傾斜させる場合、接着剤の噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度を３０°以上、７０°以下とすることが推奨される。
上記傾斜角度が３０°未満であると、噴出される接着剤の流れが輸送管の内壁面に近いため、気流で吹き分けられた接着剤が輸送管の内壁面に付着しやすくなり、好ましくない。
また、７０°を超えると、傾斜させる効果が少なく、従来の略直角であるのと同様にカルマン渦列を発生しやすくなる。
【００１２】
なお、接着剤の付着防止効果を一層増大させるため、粉粒体輸送管内の気流と接着剤との混合部付近の輸送管に超音波等の振動を加えることも推奨される。
【００１３】
本発明方法の最も代表的な形態においては、輸送管内を搬送される粉粒体は解繊された木材ファイバーであり、輸送管内へ噴出される接着剤は有機イソシアネートである。
【００１４】
上記方法を好適に実施するための本発明に係る装置は、接着剤噴出ノズルを、その噴出方向が粉粒体輸送管の上流側に向くように輸送管に対して傾斜して取り付けたことを特徴とする。
接着剤噴出ノズルの傾斜角度は、接着剤噴出ノズルの噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度を３０°以上、７０°以下とすることが推奨される。
また、粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管に振動を加える装置を設けることが推奨される。
更にまた、接着剤の付着防止効果を増大させるため、粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管の内壁面にポリテトラフルオルエチレンによるコーティングを施したり、溶射処理を施すことも推奨される。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施例について説明する。
図１は、本発明に係る粉粒体に接着剤をまぶす方法を実施する装置の一実施例の基本構成を、輸送管中心軸及び噴出ノズル中心軸を含む面（ＺＸ面）に沿って切断した状態において示す縦断面図、図２は、図１に示した実施例の一部破断上面図、図３は、もう一つの実施例を示す縦断面図である。
【００１６】
この図１及び図２に示した本発明に係るまぶし付け装置１０においては、輸送管１１内を、解繊された木材ファイバー等の粉粒体１４が高圧蒸気の気流によってＺ軸方向、即ち輸送管路の中心軸方向に沿って、図中左側から右側へ矢印の方向に輸送されている。
接着剤噴出ノズル１２からは、輸送管内へ向けて接着剤１３が噴出されるが、本発明における噴出ノズル１２は、図示する如くその噴出方向が輸送管１１の上流側に向くように、輸送管１１に対して傾斜して取り付けてある。
そのため、噴出ノズル１２から噴出される接着剤１３は気流に対抗、衝突する形で噴出され、気流の圧力で吹きちぎられて輸送管内に広く飛散し、管内壁の特定箇所に付着することがない。特に、従来の如く輸送管内の気流に対して略直角に接着剤を噴出させる場合と異なり、明瞭で強力なカルマン渦列の発生がないため、接着剤１３の蛇行が生じず、管内壁への接着剤の付着を有効に防止できる。
【００１７】
接着剤噴出ノズル１２の望ましい傾斜角度は、粉粒体を搬送する気流の速度や、噴出ノズルから噴出される接着剤の粘度、噴出量、噴出速度等々によって異なるが、一般的には、図１に示す如く、噴出ノズル１２の噴出中心軸と輸送管１１の中心軸のなす角度αが３０°以上、７０°以下となるように設定することが推奨される。上記傾斜角度αが３０°未満であると、噴出された接着剤１３の流れが輸送管の噴出ノズル側の内壁面（図１において上側の内壁面）に近くなるため、気流で吹き分けられた接着剤が付着しやすくなり、また、αが７０°を超えると、傾斜させる効果が少なく、従来と同様にカルマン渦列を発生し、接着剤の流れが蛇行して輸送管の内壁面に付着するので、いずれも好ましくない。
【００１８】
図３に示した実施例は、輸送管１１内の搬送気流と接着剤１３とが混合する領域近くの輸送管に振動を加えるため、当該領域の輸送管の外周壁と図示しない固定部材との間に超音波振動装置１５を介在させた例を示している。超音波振動装置に限らず、それより低周波のバイブレーターを取り付けるようにしてもよい。
輸送管１１にこのような振動が付与されていると、その内壁面近くの気体も振動し、管内壁に向けて接近する接着剤の粒子も振動して、それらの粒子の管内壁面への付着防止効果が一層向上する。
【００１９】
更にまた、図３に示した実施例においては、輸送管１１内の搬送気流と接着剤１３との混合領域部分の管内壁面に、ポリテトラフルオルエチレン（商標名「テフロン」）によるコーティング１６又は溶射処理が施してある。ポリテトラフルオルエチレンは、その表面の摩擦係数が低いため、接着剤の付着防止効果が大きい。
なお、図３に示した実施例では、超音波振動装置１５及びポリテトラフルオルエチレンによるコーティング１６を併用したが、いずれか一方のみを用いることも自由である。
【００２０】
なお、本発明は、最も代表的には、解繊された木材ファイバーに有機イソシアネートをまぶし付けるために好適に利用できるが、これら以外の粉粒体や接着剤にも適用し得ることは勿論である。
【００２１】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されるから、本発明によるときは、粉粒体の輸送管路の内壁面に接着剤が付着することがなく、このため輸送管路の閉塞を防止又は著しく遅延させることができ、まぶし付け装置を長時間に亘って連続運転し得る方法及び装置を提供し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る粉粒体に接着剤をまぶす方法を実施する装置の一実施例の基本構成を、輸送管中心軸及び噴出ノズル中心軸を含む面に沿って切断した状態において示す縦断面図である。
【図２】図１に示した実施例の一部破断上面図である。
【図３】本発明に係るもう一つの実施例を示す縦断面図である。
【図４】公知のまぶし付け装置の作動を説明する縦断面図である。
【図５】図４に示した装置の一部破断上面図である。
【図６】図４に示した装置の軸直角（Ａ−Ａ）断面図である。
【符号の説明】
１０ 本発明に係る接着剤まぶし付け装置
１１ 粉粒体輸送管
１２ 接着剤噴出ノズル
１３ 接着剤
１４ 粉粒体
１５ 超音波振動装置
１６ コーティング
２０ 従来公知の接着剤まぶし付け装置
２５ カルマン渦列
Claims (5)
- 粉粒体輸送管（１１）内の５〜１０ｔ／ｈｒの解繊された木材ファイバー（１４）を輸送する５〜１５０ｂａｒ、１５０〜２００℃、１〜３ｔ／ｈｒの蒸気流中に１〜３ｔ／ｈｒの添加速度で有機イソシアネートから成る接着剤（１３）を噴出し、解繊された木材ファイバー（１４）に接着剤（１３）をまぶす方法において、接着剤（１３）の噴出方向を、粉粒体輸送管（１１）の上流側に向くように傾斜させ、接着剤の噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度（α）を３０°以上、７０°以下とすることを特徴とする上記の解繊された木材ファイバーに接着剤をまぶす方法。
- 粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管に振動を加える請求項１に記載の解繊された木材ファイバーに接着剤をまぶす方法。
- 粉粒体輸送管（１１）内の解繊された木材ファイバーを含む蒸気流中に有機イソシアネートから成る接着剤（１３）を噴出し、解繊された木材ファイバー（１４）に接着剤（１３）をまぶす装置（１０）において、粉粒体輸送管（１１）が５〜１５０ｂａｒ、１５０〜２００℃、１〜３ｔ／ｈｒの蒸気流により５〜１０ｔ／ｈｒの解繊された木材ファイバーを輸送でき、かつ接着剤噴出ノズル（１２）が有機イソシアネートから成る接着剤（１３）を１〜３ｔ／ｈｒの添加速度で噴出でき、接着剤噴出ノズル（１２）を、その噴出方向が粉粒体輸送管（１１）の上流側に向くように輸送管（１１）に対して傾斜して、接着剤噴出ノズルの噴出中心軸と輸送管中心軸のなす角度（α）を３０°以上、７０°以下となるように取り付けたことを特徴とする上記の解繊された木材ファイバーに有機イソシアネートから成る接着剤をまぶす装置。
- 粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管に振動を加える装置（１５）を設けた請求項３に記載の解繊された木材ファイバーに接着剤をまぶす装置。
- 粉粒体輸送管内の気流と接着剤の混合部付近の輸送管の内壁面にポリテトラフルオルエチレンによるコーティング（１６）を施した請求項３又は４に記載の解繊された木材ファイバーに接着剤をまぶす装置。
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