JP3952027B2 - 金属コロイド溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、種々の印刷方法、塗布方法によって、微細な導体配線や、薄くて厚みの均一な導電膜等を形成するのに適した、金属コロイド溶液に関するものである。
導体配線や導電膜等を形成する材料として、その粒径が数nm〜数十nm程度という、ごく微細な金属微粒子が用いられる。具体的には、かかる金属微粒子を、凝集を防止して、分散性を高めるために、分散剤の存在下で、分散媒中に分散した金属コロイド溶液を、各種印刷方法、塗布方法用のインクとして用いて、基材上に印刷または塗布した後、必要に応じて焼き付けることによって、導体配線や導電膜が形成される。
金属コロイド溶液としては、従来、分散媒として水を用いた水系のものが一般的であった。また、その粘度や表面張力、蒸気圧(沸点)等の物性も限られた範囲でしかなかった。しかし、近時、導体配線や導電膜の形成方法として、スピンコート塗布法、スクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法等の、種々の、印刷方法、塗布方法が採用されるようになってきており、金属コロイド溶液には、それぞれの印刷方法、塗布方法に適した物性を有することが求められつつある。
そこで、金属コロイド溶液の物性に、直接に影響を及ぼす分散媒として、水だけでなく、種々の有機溶媒を用いることが検討されている。たとえば、特許文献1には、粒径の揃った金属微粒子を製造できることが知られている、いわゆる液相還元法によって、分散剤の存在下、水中で、金属のイオンを還元して金属微粒子を析出させることで、水系の金属コロイド溶液を製造する方法を応用して、
・ 有機溶媒に、金属のイオンのもとになる金属化合物を溶解し、分散剤を加えたのち、還元して金属微粒子を析出させることで、分散媒が有機溶媒である金属コロイド溶液を製造する方法、
・ 水に、金属のイオンのもとになる金属化合物を溶解し、水溶性有機溶媒と分散剤とを加えたのち、還元して金属微粒子を析出させることで、分散媒が、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒である金属コロイド溶液を製造する方法、
が記載されている。
また、特許文献2には、気相成長法によって金属微粒子を製造する方法を応用して、気相中で成長過程の金属微粒子に、ミネラルスピリット等の、高沸点の有機溶媒の蒸気を接触させて、金属微粒子を冷却、回収することで、有機溶媒中に、金属微粒子が分散された金属コロイド溶液(独立分散液)を製造する方法が記載されている。
特開平11−80647号公報(請求項11、12、第0042欄、第0045欄〜第0046欄) 特開2001−35255号公報(第0006欄)
ところが、特許文献1に記載の方法のうち、分散媒として、有機溶媒を用いる方法では、特定の有機溶媒に対する溶解性にすぐれた金属化合物や、還元剤の種類が限られるため、形成できる金属微粒子の種類が限られるという問題がある。
また、水と、水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いる方法では、汎用されている水溶性の金属化合物や還元剤を使用することができるものの、これらの多くは、水溶性有機溶媒に対する溶解性が低いために、水溶性有機溶媒を加えた時点で、その一部が析出する等して、反応系の濃度にむらを生じやすい。
そして、この濃度のむらが原因となって、形成される金属微粒子の粒径にばらつきを生じる結果、導体配線や導電膜の、構造や導電性等が、不均一になるおそれがある。また、未反応の金属化合物が、不純物として、金属微粒子中に混入して、金属微粒子、ひいては、導体配線や導電膜の導電性等を阻害するおそれもある。
また、特許文献2に記載の方法は、安全面、環境面で、取り扱いに注意を要する高沸点の有機溶媒にしか適用できず、応用範囲が狭いという問題がある。
本発明は、安全面、環境面で取り扱いが容易である水系の分散媒と、粒径が均一で導電性等にすぐれた金属微粒子とを含み、しかも、各種の印刷方法、塗布方法に適した物性を有する金属コロイド溶液を提供することにある。
請求項1記載の発明は、水中で、金属のイオンを還元して析出させた、一次粒径が200nm以下の金属微粒子と、金属微粒子100重量部あたり2〜30重量部の、分子量が200〜30000で、かつSを含有しない有機化合物である分散剤と、分散媒としての、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とを含み、かつ前記水溶性有機溶媒が、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であると共に、前記混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wが5〜200であることを特徴とする金属コロイド溶液である。
請求項2記載の発明は、水中で、金属のイオンを還元して金属微粒子を析出させて得た、水系の金属コロイド溶液を出発原料として用いて、金属微粒子を水から完全に分離する工程を経ることなしに製造された請求項1記載の金属コロイド溶液である。
請求項3記載の発明は、金属微粒子が、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これらの合金からなる微粒子である請求項1記載の金属コロイド溶液である。
請求項4記載の発明は、金属微粒子を、0.1〜90重量%の割合で含有する請求項1記載の金属コロイド溶液である
請求項記載の発明は、分散剤が、P、B、およびハロゲン原子をも含有しない有機化合物である請求項1記載の金属コロイド溶液である。
請求項1記載の発明の金属コロイド溶液においては、金属微粒子として、通常の、水を用いた液相還元法によって製造された、粒径が均一なものを用いているため、形成される導体配線や導電膜の、構造や導電性等がばらつくのを防止して、その均一性を向上することができる。また、この金属微粒子は、未反応の金属化合物等の不純物を、殆ど含んでおらず、導電性にもすぐれているため、導体配線や導電膜の導電性を向上することもできる。
また、金属コロイド溶液の分散媒としては、水と、水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いているため、安全面、環境面で取り扱いが容易である。しかも、前記水溶性有機溶媒として、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種を選択すると共に、前記混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wを5〜200に限定することによって、金属コロイド溶液の粘度、表面張力、蒸気圧等の物性を、各種の印刷方法、塗布方法に適した範囲に、簡単に調整することができる。
また、分散剤として、Sを含有しない有機化合物を用いているため、前記Sにより、導体配線や導電膜、あるいは、これらの近傍に配置された電子部品等が劣化するのを防止することができる。
しかも、前記分散剤を、金属微粒子100重量部あたり2〜30重量部の割合で含有させることによって、金属微粒子の、金属コロイド溶液中での凝集等の発生を防止しつつ、導電性にすぐれた導体配線や導電膜を形成することもできる。
請求項2記載の発明によれば、還元析出法によって得た、水系の金属コロイド溶液を出発原料として用いて、金属微粒子を水から完全に分離する工程を経ることなしに、つまり、金属微粒子を水から完全に分離することによって生じる、凝集による二次粒子の生成や、それに伴って発生する粒径のばらつき、全体としての粒径の増加等を生じることなしに、金属コロイド溶液が製造される。このため、製造された金属コロイド溶液は、金属微粒子が、還元析出法によって製造された直後の、分散媒中に、ほぼ一次粒子の状態で、均一に分散された状態を維持しており、かかる金属コロイド溶液を用いることによって、導体配線や導電膜の構造や導電性を、さらに均一化することができる。
請求項3記載の発明によれば、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これらの合金からなる、導電性にすぐれた金属微粒子を用いることによって、導体配線や導電膜の導電性を、さらに、向上することができる
請求項記載の発明によれば、金属微粒子を、0.1〜90重量%の範囲内の、任意の割合で含有させることによって、金属コロイド溶液の物性を、各種の印刷方法、塗布方法に適した範囲に、簡単に調整することできる。
請求項記載の発明によれば、分散剤として、P、B、およびハロゲン原子をも含有しない有機化合物を用いているため、これらの元素により、導体配線や導電膜、あるいは、これらの近傍に配置された電子部品等が劣化するのを防止することできる。
以下に、本発明を説明する。
本発明の金属コロイド溶液は、水中で、金属のイオンを還元して析出させた、一次粒径が200nm以下の金属微粒子と、金属微粒子100重量部あたり2〜30重量部の、分子量が200〜30000で、かつSを含有しない有機化合物である分散剤と、分散媒としての、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とを含み、かつ前記水溶性有機溶媒が、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であると共に、前記混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wが5〜200であることを特徴とする。
このうち、金属微粒子の一次粒径が、200nm以下に限定されるのは、次の理由による。すなわち、一次粒径が200nmを超える大きな金属微粒子は、金属コロイド溶液中での分散性が低く、凝集して二次粒子を生じやすい。また、凝集しないまでも、金属コロイド溶液の流動性を低下させる。このため、かかる大きな金属微粒子を含む、金属コロイド溶液は、各種の印刷方法、塗布方法に用いるインクとしての物性を満足することができない。また、この金属コロイド溶液を用いて形成される導体配線や導電膜は、二次粒子の発生等によって、その構造や導電性が不均一になってしまう。
これに対し、一次粒径が200nm以下という、ごく微小な金属微粒子は、金属コロイド溶液中での分散性にすぐれるため、凝集等を生じにくい。また、金属コロイド溶液の、流動性も向上する。したがって、一次粒径が200nm以下の金属微粒子を含む、本発明の金属コロイド溶液は、先に述べたように、水溶性有機溶媒として、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種を選択すると共に、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wを5〜200に限定することによって、各種の印刷方法、塗布方法に用いるインクとして最適な物性、すなわち粘度、表面張力、および蒸気圧の範囲を十分に満足することができる。また、本発明の金属コロイド溶液を用いて形成される導体配線や導電膜は、その構造や導電性が極めて均一なものとなる。
なお、金属微粒子の、一次粒径の下限値については、とくに限定されず、理論上、金属としての導電性を有し得る、最小の粒径のものまで、使用可能であるが、実用上は、1nm以上であるのが好ましい。すなわち、金属微粒子の一次粒径は、1〜200nmであるのが好ましい。
金属微粒子の配合割合は、金属コロイド溶液の総量中の、0.1〜90重量%であるのが好ましい。配合割合が0.1重量%未満では、金属コロイド溶液が薄すぎて、いずれの印刷方法、塗布方法によっても、十分な厚みと導電性とを有する導体配線や導電膜を形成できないおそれがある。逆に、90重量%を超える場合は、流動性が低下して、各種の印刷方法や塗布方法用として適した金属コロイド溶液が得られないおそれがある。
なお、金属微粒子の一次粒径、および配合割合は、本発明の金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成する際に採用する印刷方法、塗布方法に適した、最適な物性を有するように、上記の範囲内から、それぞれの印刷方法、塗布方法に適したより好適な範囲を選択するのが好ましい。金属微粒子としては、種々の金属や合金からなるものが使用可能であるが、とくに、導体配線や導電膜に良好な導電性を付与することを考慮すると、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これらの合金からなる微粒子が好ましい。
分散剤としては、水、または、水溶性有機溶剤に対して良好な溶解性を有する、種々の分散剤の中から、分子量が200〜30000であるものが使用される。分散剤の分子量が200未満では、金属微粒子を安定に分散させる効果が得られないためである。また、分子量が30000を超える場合には、却って、金属微粒子を安定に分散させる効果が得られないためである。また、かかる高分子量の分散剤は、金属コロイド溶液を用いて形成した導体配線や導電膜中で、金属微粒子の間に介在して、その導電性を妨げるおそれもある。
これに対し、分子量が200〜30000である分散剤は、いわゆる、ループ−トレイン−テイル構造をとりやすいため、金属微粒子の分散性を向上する効果にすぐれている上、金属微粒子の間に介在して、導電性を妨げるおそれもない。なお、金属微粒子を安定に分散させることを考慮すると、分散剤の分子量は、上記の範囲内でも、とくに、2000〜30000であるのが好ましい。
また、分散剤は、導体配線や導電膜、あるいは、これらの近傍に配置された電子部品等が劣化するのを防止することを考慮すると、Sを含有しない有機化合物である必要があり、さらに、P、B、およびハロゲン原子を含有しない有機化合物であるのが好ましい。これらの条件を満足する、好適な分散剤としては、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤や、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の、分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、あるいは、1分子中に、ポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体(以下「PEI−PO共重合体」とする)等の、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤は、金属コロイド溶液の粘度調整剤としても機能しうる。
分散剤の配合割合は、金属微粒子100重量部あたり、2〜30重量部である必要がある。配合割合が2重量部未満では、分散剤を添加したことによる、金属微粒子を、金属コロイド溶液中に、均一に分散させる効果が十分に得られ、逆に、30重量部を超える場合には、粘度が高くなりすぎて、各種の印刷方法や塗布方法用として適した金属コロイド溶液が得られない。また、過剰の分散剤が、金属コロイド溶液を用いて形成した導体配線や導電膜中で、金属微粒子の間に介在して、その導電性を妨げる。
なお、分散剤の分子量や配合割合は、本発明の金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成する際に採用する印刷方法、塗布方法に適した、最適な物性を有するように、上記の範囲内から、それぞれの印刷方法、塗布方法に適したより好適な範囲を選択するのが好ましい。また、分散剤の種類も、本発明の金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成する際に採用する印刷方法、塗布方法に適した、最適な物性を有するように、各種の分散剤の中から、好適なものを選択して使用するのが好ましい。
水溶性有機溶媒としては、20℃での誘電率が3以上である、種々の、水溶性を有する有機溶媒の中から、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種が、選択して使用される。
このうち、アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
さらに含窒素有機化合物としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等の水溶性の含窒素有機化合物が挙げられる。水溶性有機溶媒は、それぞれ1種単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。
本発明では、金属コロイド溶液を用いて、導体配線や導電膜を形成するための、印刷方法、塗布方法に最適な物性を有するように、分散媒として、水と、前記アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の水溶性有機溶媒とを用い、かつ、前記混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wが5〜200の範囲内で適宜、選択されると共に、水溶性有機溶媒の種類、あるいは、2種以上の水溶性有機溶媒を併用する場合は、その組み合わせ等が適宜、選択される。
たとえば、スピンコート塗布法による導電膜の形成においては、金属コロイド溶液が、低粘度であることが求められ、逆に、スクリーン印刷法やディスペンサー塗布法による導体配線の製造では、金属コロイド溶液が、高粘度であることが求められる。また、スクリーン印刷法では、簡単に乾燥しないように、金属コロイド溶液の蒸気圧が高いことが求められる。
そこで、これらの物性を満足するために、水と、水溶性有機溶媒との配合割合や、水溶性有機溶媒の種類、2種以上の水溶性有機溶媒を併用する場合の組み合わせ等が、前記範囲内で選択される。また、それとともに、先に述べた、金属微粒子の一次粒径や配合割合、分散剤の分子量や配合割合、分散剤の種類等も、選択される。
本発明の金属コロイド溶液は、水中で、金属のイオンを還元して金属微粒子を析出させて得た、水系の金属コロイド溶液を出発原料として用いて、金属微粒子を水から完全に分離する工程を経ることなしに、製造するのが好ましい。より具体的には、水系の金属コロイド溶液を、たとえば、ロータリーエバポレータを用いたり、加熱したり、あるいは、遠心分離して上澄み液を除去したりすることで、所定の濃度に濃縮した後、所定量の水溶性有機溶媒を加えることによって、本発明の金属コロイド溶液が製造される。
出発原料としての、水系の金属コロイド溶液は、従来同様に製造することができる。たとえば、水に、金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と、分散剤とを溶解するとともに、還元剤を加えて、好ましくは、かく拌下、一定時間、金属のイオンを還元反応させることによって、水系の金属コロイド溶液が製造される。
金属のイオンのもとになる、水溶性の金属化合物としては、これに限定されないが、たとえば、銀の場合は、硝酸銀(I)(AgNO3)やメタンスルホン酸銀(CH3SO3Ag)等が挙げられ、とくに、硝酸銀(I)が好ましい。また、金の場合は、テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)等が挙げられる。さらに、白金の場合は、ジニトロジアンミン白金(II)(Pt(NO22(NH32)や、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(H2[PtCl6]・6H2O)等が挙げられる。また、上記の水溶性金属化合物を、必要に応じて、アンモニア、クエン酸等により錯体化して用いてもよい。
還元剤としては、水溶性を有する種々の還元剤が使用できるが、その粒径が、できるだけ小さく、かつ均一な金属微粒子を形成することを考慮すると、還元力の弱い還元剤を選択して使用するのが好ましい。
かかる還元剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコールや、アスコルビン酸等が挙げられる他、エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元性糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、および糖アルコール類(ソルビトール等)等が挙げられる。
金属微粒子の一次粒径を、前記範囲に調整するには、金属化合物、分散剤、還元剤の種類と配合割合を調整するとともに、金属化合物を還元反応させる際に、かく拌速度、温度、時間等を調整すればよい。
本発明の金属コロイド溶液は、その物性を適宜、調整することによって、先に述べたように、スピンコート塗布法による導電膜の形成や、スクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法による、導体配線の形成など、種々の印刷方法、塗布方法用のインクとして、好適に使用することができる。
以下に、本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
(銀コロイド溶液)
実施例1:
硝酸銀24gを純水150gに溶解した後、アンモニア水を加えて、液のpHを11.0に調整して、硝酸銀アンモニア溶液を調製した。つぎに、この硝酸銀アンモニア溶液に、分散剤としての、ポリビニルピロリドン(分子量30000)12gを加えて、溶解させた後、還元剤としての、エチレングリコール100gを添加して、かく拌速度1000rpmでかく拌しながら、40℃で180分間、反応させて、黄色のプラズモン吸収を有する、水系の銀コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた銀コロイド溶液を、20000G×20分間の条件で遠心分離して、銀微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、銀微粒子の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150EX〕を用いて測定したところ、5nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して、含水分量を20重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのアセトンを加えて、分散媒が水とアセトンとの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)とアセトン(Ac)の配合割合は、重量比で、Ag:W:Ac=80:20:100であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は32mN/m(25℃)、粘度は14mPa・s(25℃)、沸点は62℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、5nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、アセトンを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
また、銀コロイド溶液を、ガラス基板上に塗布し、乾燥させたのち、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図1に示すように、得られた塗膜は、粒径や形状が均一な多数の銀微粒子からなる、均一な構造を有することが確認された。
実施例2:
分散剤として、分子量25000のポリビニルピロリドン12gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
得られた銀コロイド溶液から、20000G×20分間の条件で、遠心分離により、銀微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、12nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して、含水分量を20重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのグリセリンを加えて、分散媒が水とグリセリンとの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)とグリセリン(Gl)の配合割合は、重量比で、Ag:W:Gl=80:20:200であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は55mN/m(25℃)、粘度は850mPa・s(25℃)、沸点は270℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、12nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、グリセリンを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例3:
硝酸銀の量を48g、分散剤としての、ポリビニルピロリドン(分子量30000)の量を24gとし、なおかつ、還元剤として、クエン酸50gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
得られた銀コロイド溶液から、20000G×20分間の条件で、遠心分離により、銀微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、22nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、60℃に加熱することで濃縮して、含水分量を1重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのエタノールを加えて、分散媒が水とエタノールとの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)とエタノール(Et)の配合割合は、重量比で、Ag:W:Et=99:1:200であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は24mN/m(25℃)、粘度は5mPa・s(25℃)、沸点は82℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、22nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、エタノールを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例4:
硝酸銀の量を48g、分散剤としての、ポリビニルピロリドン(分子量30000)の量を30gとし、なおかつ、還元剤としての、エチレングリコールの量を250gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた銀コロイド溶液を、限外ろ過膜を用いた電気透析をして、不純物を除去し、ついで、純水によって洗浄した後、銀微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、5nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、60℃に加熱することで濃縮して、含水分量を5重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのエチレングリコールモノブチルエーテル、および、グリセリンを加えて、分散媒が水とエチレングリコールモノブチルエーテルとグリセリンの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)とエチレングリコールモノブチルエーテル(EG)とグリセリン(Gl)の配合割合は、重量比で、Ag:W:EG:Gl=95:5:400:10であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は33mN/m(25℃)、粘度は18mPa・s(25℃)、沸点は250℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、5nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、エチレングリコールモノブチルエーテルとグリセリンを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例5:
硝酸銀の量を3gとし、なおかつ、分散剤として、分子量5000のポリアクリル酸2gを用いるとともに、還元剤として、クエン酸8gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
得られた銀コロイド溶液から、20000G×20分間の条件で、遠心分離により、銀微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、31nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、10000rpmの条件で遠心分離したのち、上澄みを取り除くことによって濃縮して、含水分量を12重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としての2−プロパノールを加えて、分散媒が水と2−プロパノールとの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)と2−プロパノール(Pr)との配合割合は、重量比で、Ag:W:Pr=88:12:100であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は35mN/m(25℃)、粘度は10mPa・s(25℃)、沸点は95℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、31nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、2−プロパノールを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例6:
硝酸銀の量を12gとし、分散剤として、分子量2000のポバール30gを用い、なおかつ、還元剤として、グルコース26gを用いるとともに、反応温度を60℃、反応時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた銀コロイド溶液を、限外ろ過膜を用いた電気透析をして、不純物を除去し、ついで、純水によって洗浄した後、銀微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、10nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、60℃に加熱することで濃縮して、含水分量を8重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としての2−エトキシエタノール、および、2−ピロリドンを加えて、分散媒が水と2−エトキシエタノールと2−ピロリドンの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と水(W)と2−エトキシエタノール(EE)と2−ピロリドン(Py)の配合割合は、重量比で、Ag:W:EE:Py=92:8:150:40であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は30mN/m(25℃)、粘度は19mPa・s(25℃)、沸点は190℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、10nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、2−エトキシエタノールと2−ピロリドンを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
比較例1:
実施例1で得た、5nmの位置に鋭いピークを有する水系の銀コロイド溶液を、60℃に加熱して水を全て乾燥、除去することによって、銀微粒子を水から完全に分離したのち、アセトンを加えて、分散媒がアセトンである銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)とアセトン(Ac)の配合割合は、重量比で、Ag:Ac=15:85であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は25mN/m(25℃)、粘度は1mPa・s(25℃)、沸点は58℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、1日静置することで銀微粒子が沈殿してしまい、分散性は不良であった。また、銀微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、250nmの位置にピークが見られたことから、銀微粒子を水から完全に分離後、アセトンを加えたことによって凝集が発生して、粒度分布が大きく変動したことが確認された。
比較例2:
反応終了後、遠心分離し、洗浄して、粒度分布を測定した水系の銀コロイド溶液を、10000rpmの条件で遠心分離したのち、上澄みを取り除くことによって濃縮して、含水分量を10重量%まで減らした後、非水溶性の有機溶媒であるトルエンを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、分散媒が水とトルエンである銀コロイド溶液を製造したところ、2液に分離してしまって、均一な銀コロイド溶液を得ることはできなかった。沸点は120℃であった。
比較例3:
還元剤として、クエン酸25gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水系の銀コロイド溶液を得た。
得られた銀コロイド溶液から、20000G×20分間の条件で、遠心分離により、銀微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、22nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この銀コロイド溶液を、60℃に加熱して水を全て乾燥、除去することによって、銀微粒子を水から完全に分離したのち、2−プロパノールを加えて、分散媒がアセトンである銀コロイド溶液を製造した。
銀コロイド溶液における、銀微粒子(Ag)と2−プロパノール(Pr)の配合割合は、重量比で、Ag:Pr=100:100であった。また、銀コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は28mN/m(25℃)、粘度は5mPa・s(25℃)、沸点は88℃であった。また、銀コロイド溶液における、銀微粒子の分散性を観察したところ、1日静置することで銀微粒子が沈殿してしまい、分散性は不良であった。また、銀微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、1500nmの位置にピークが見られたことから、銀微粒子を水から完全に分離後、アセトンを加えたことによって凝集が発生して、粒度分布が大きく変動したことが確認された。
(金コロイド溶液)
実施例7:
テトラクロロ金(III)酸四水和物40gを純水200gに溶解後、分散剤としてのポリビニルピロリドン(分子量25000)12gを加えて完全に溶解させた。つぎに、この塩化金溶液に、還元剤としての、リンゴ酸10gを加えた後、かく拌速度1000rpmでかく拌しながら、25℃で60分間、反応させて、赤紫色のプラズモン吸収を有する、水系の金コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた金コロイド溶液を、20000G×20分間の条件で遠心分離して、金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、金微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、20nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この金コロイド溶液を、10000rpmの条件で遠心分離したのち、上澄みを取り除くことによって濃縮して、含水分量を15重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのジプロピレングリコールを加えて、分散媒が水とジプロピレングリコールとの混合溶媒である銀コロイド溶液を製造した。
金コロイド溶液における、金微粒子(Au)と水(W)とジプロピレングリコール(DPG)の配合割合は、重量比で、Au:W:DPG=85:15:200であった。また、金コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は40mN/m(25℃)、粘度は85mPa・s(25℃)、沸点は210℃であった。また、金コロイド溶液における、金微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、20nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、ジプロピレングリコールを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例8:
実施例7で得た、20nmの位置に鋭いピークを有する水系の金コロイド溶液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して、含水分量を25重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としての酢酸エチルを加えて、分散媒が水と酢酸エチルとの混合溶媒である金コロイド溶液を製造した。
金コロイド溶液における、金微粒子(Au)と水(W)と酢酸エチル(EAc)の配合割合は、重量比で、Au:W:EAc=75:25:200であった。また、金コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は28mN/m(25℃)、粘度は2mPa・s(25℃)、沸点は88℃であった。また、金コロイド溶液における、金微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、25nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、酢酸エチルを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
比較例4:
実施例7で得た、20nmの位置に鋭いピークを有する水系の金コロイド溶液を、60℃に加熱して水を全て乾燥、除去することによって、金微粒子を水から完全に分離したのち、エタノールを加えて、分散媒がエタノールである金コロイド溶液を製造した。
金コロイド溶液における、金微粒子(Au)とエタノール(Et)の配合割合は、重量比で、Au:Et=100:200であった。また、金コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は23mN/m(25℃)、粘度は3mPa・s(25℃)、沸点は85℃であった。また、金コロイド溶液における、金微粒子の分散性を観察したところ、1日静置することで金微粒子が沈殿してしまい、分散性は不良であった。また、金微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、350nmの位置にピークが見られたことから、金微粒子を水から完全に分離後、エタノールを加えたことによって凝集が発生して、粒度分布が大きく変動したことが確認された。
(白金コロイド溶液)
実施例9:
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物45gを純水200gに溶解後、分散剤としてのポリアクリル酸(分子量5000)8gを加えて完全に溶解させた。次にこの塩化白金溶液に、還元剤としての、エタノール80gを加えた後、かく拌速度1000rpmでかく拌しながら、50℃で360分間、反応させて、黒色の、水系の白金コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた白金コロイド溶液を、限外ろ過膜を用いた電気透析をして、不純物を除去し、ついで、純水によって洗浄した後、金微粒子の粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、3nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この白金コロイド溶液を、60℃に加熱することで濃縮して、含水分量を5重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのアセトン、および、グリセリンを加えて、分散媒が水とアセトンとグリセリンの混合溶媒である白金コロイド溶液を製造した。
白金コロイド溶液における、白金微粒子(Pt)と水(W)とアセトン(Ac)とグリセリン(Gl)の配合割合は、重量比で、Pt:W:Ac:Gl=95:5:80:10であった。また、白金コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は30mN/m(25℃)、粘度は16mPa・s(25℃)、沸点は81℃であった。また、白金コロイド溶液における、白金微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、3nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、アセトンとグリセリンを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
実施例10:
分散剤として、分子量2000のポバール35gを用い、なおかつ、還元剤として、エチレングリコール100gを用いるとともに、反応温度を80℃、反応時間を180分間としたこと以外は、実施例9と同様にして、水系の白金コロイド溶液を得た。
つぎに、得られた白金コロイド溶液を、20000G×20分間の条件で、遠心分離により、白金微粒子よりも軽い不純物を除去する操作を繰り返し行い、ついで、純水によって洗浄した後、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、10nmの位置に鋭いピークが見られた。
つぎに、この白金コロイド溶液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮して、含水分量を15重量%まで減らした後、水溶性有機溶媒としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、分散媒が水とトリプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶媒である白金コロイド溶液を製造した。
白金コロイド溶液における、白金微粒子(Pt)と水(W)とトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPG)の配合割合は、重量比で、Pt:W:TPG=85:15:400であった。また、白金コロイド溶液の物性を測定したところ、表面張力は35mN/m(25℃)、粘度は10mPa・s(25℃)、沸点は220℃であった。また、白金コロイド溶液における、金微粒子の分散性を観察したところ、2ヶ月間、静置しても沈殿を生じず、非常に良好であった。その粒度分布を、前記粒度分布測定装置を用いて測定したところ、10nmの位置に鋭いピークが見られたことから、濃縮後、酢酸エチルを加えたことによって、粒度分布が変動していないことが確認された。
比較例5:
実施例10で得た、10nmの位置に鋭いピークを有する水系の白金コロイド溶液を、ロータリーエバポレータを用いて処理して、水を全て乾燥、除去することによって、白金微粒子を水から完全に分離したのち、非水溶性の有機溶媒であるテトラデカンを加えて白金コロイド溶液を製造したところ、2液に分離してしまって、均一な白金コロイド溶液を得ることはできなかった。沸点は240℃であった。
本発明の、実施例1の銀コロイド溶液を用いて形成した塗膜における、銀微粒子の構造を示す、電子顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. 水中で、金属のイオンを還元して析出させた、一次粒径が200nm以下の金属微粒子と、金属微粒子100重量部あたり2〜30重量部の、分子量が200〜30000で、かつSを含有しない有機化合物である分散剤と、分散媒としての、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とを含み、かつ前記水溶性有機溶媒が、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、酢酸エチル、および水溶性の含窒素有機化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であると共に、前記混合溶媒における、水Wと水溶性有機溶媒Oとの重量比O/Wが5〜200であることを特徴とする金属コロイド溶液。
  2. 水中で、金属のイオンを還元して金属微粒子を析出させて得た、水系の金属コロイド溶液を出発原料として用いて、金属微粒子を水から完全に分離する工程を経ることなしに製造された請求項1記載の金属コロイド溶液。
  3. 金属微粒子が、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これらの合金からなる微粒子である請求項1記載の金属コロイド溶液。
  4. 金属微粒子を、0.1〜90重量%の割合で含有する請求項1記載の金属コロイド溶液。
  5. 分散剤が、P、B、およびハロゲン原子をも含有しない有機化合物である請求項1記載の金属コロイド溶液。
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