JP3948544B2 - プレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)造の建物において、例えば、共同住宅などにおける耐力壁以外の間仕切り壁等の雑壁としては、耐震スリット付きのRC壁や、ファスナーにより固定する後付けプレキャストコンクリート(PC)壁が用いられ、主構造部に悪影響を与えず、また、地震時にも出入り口のスチールドアの開閉が可能となるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のような耐震スリット付きのRC壁やファスナー固定の後付けPC壁による雑壁では、施工が煩雑となり、耐震スリット材やPCのファスナーは材料的に高く、施工コストがかさみ、これらの取り付けなどで躯体工程が長くなるなどの問題があった。
【0004】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、雑壁などの非耐力壁を、建物躯体工事時において、簡易に、かつ、コンクリート打設により同時に施工できるPCパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明に係るプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法は、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、前記建物躯 体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルを製作し、前記建物躯体の骨組の建て方を行い、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を、コンクリートを打設する前の前記建物躯体の骨組に結合することにより、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺を前記建物躯体の骨組に定着する一方で、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺以外の他辺は前記建物躯体の骨組に定着することなく、前記壁用プレキャストコンクリートパネルを前記建物躯体の骨組に組み付け、しかる後に、前記建物躯体の骨組にコンクリートを打設することを特徴とする。
また、本発明は、前記建物躯体の骨組が、鉄骨及び/または鉄筋を備えた梁を含んでおり、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を前記建物躯体の梁の鉄骨及び/または鉄筋に結合することを特徴とする。
また、本発明は、前記建物躯体の骨組が、鉄骨及び/または鉄筋を備えた床スラブを含んでおり、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を前記建物躯体の床スラブの鉄骨及び/または鉄筋に結合することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法によれば、壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺から上方へ突出した複数のアンカー筋を、コンクリートを打設する前のRC造(またはSRC造)建物躯体の骨組に結合することによって、壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺のみを骨組に定着し、しかる後に骨組にコンクリートを打設する。
そのため、建物躯体工事時において、雑壁などの非耐力壁を、プレキャストコンクリートパネルを用いて簡易に施工することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法の実施の各形態例を図1から図13に基づいて説明する。
<第1の実施の形態例>
先ず、図1は本発明を適用した第1の実施の形態例として建物がSRC造であって雑壁を施工する場合を示すもので、鉄骨骨組の建て方を示した図、図2は続く柱、梁、壁配筋を示したもの、図3は続く建物躯体へのPC壁パネルの吊り込みを示したもの、図4は続く型枠組、コンクリート打設を示したものであり、各図において、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は断面図である。
【0008】
この実施の形態例では、先ず、壁用プレキャストコンクリートパネル(以下、PC壁パネル)を製作し、このPC壁パネルについては後述する。また、第1工程で建物の鉄骨骨組の建て方を行う。
即ち、図1に示すように、床スラブ2上において、2本の鉄骨柱4,4に鉄骨大梁6,6,6を先組みした鉄骨ユニット7を建て込む。なお、この建物ユニット7の建て方後、戸境方向仮設梁鉄骨8及び歪み直しワイヤ10,10,10,・・・を使用する。
次の第2工程で柱、梁、壁配筋を行う。
即ち、図2に示すように、鉄骨大梁6を梁鉄筋12で囲み、鉄骨柱4を柱鉄筋14で囲み、戸境の梁を含んで壁鉄筋16を組む。
【0009】
次の第3工程で躯体へのPC壁パネルの吊り込みを行う。
即ち、図3に示すように、PC壁パネル18を吊り込んで床スラブ2と鉄骨大梁6(梁鉄筋12)の間に仮置きする。なお、こうして仮置きしたPC壁パネル18の倒れ防止ために斜めサポート20を使用する。
PC壁パネル16の上端面で厚さ方向の中間部からは、PC壁パネル18の幅方向に間隔をおき幅方向の全長にわたってアンカー筋18a,18a,18a,・・・が多数突出しており、このアンカー筋18は上端がPC壁パネル16の厚さ方向に屈曲した逆L形縦筋から構成されている。
従って、PC壁パネル18を製作する際には、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルとして製作しておく。
そして、以上のPC壁パネル18の上端面に並んで突出する多数のアンカー筋18a,18a,18a,・・・を、コンクリートを打設する前の建物躯体の骨組の鉄骨大梁6及びその梁鉄筋12に溶接により結合することにより、PC壁パネル18の上辺を建物躯体の骨組に定着する一方で、PC壁パネル18の上辺以外の他辺は建物躯体の骨組に定着することなく、PC壁パネル18を建物躯体の骨組に組み付ける。
【0010】
次の第4工程で型枠組、コンクリート打設を行う。
即ち、図4に示すように、前述した配筋部分を柱型枠22、梁型枠24及び壁型枠26で各々囲んでから、その各型枠22,24,26内にコンクリート28を打設する。これによりアンカー筋18a,18a,18aとPC壁パネル18の上端はコンクリートに埋設される。
その後、打設コンクリート28の固化養生後、各型枠22,24,26を型ばらしする。
【0011】
以上の通り、一辺から複数のアンカー筋18aが突出したPC壁パネル18を工場またはサイトで製作するので、従来のような耐震スリット付きのRC壁やファスナー固定の後付けPC壁による雑壁の施工に比べて、製作コストを削減できるとともに、建物躯体への取り付けも簡易なので、短時間で施工できる。
【0012】
<第2の実施の形態例>
図5は本発明を適用した第2の実施の形態例として建物がRC造であってメーターボックスの壁を施工する場合を示すもので、建物躯体へのPC壁パネルの配置を示した横断平面図であり、図6はその矢印A−Aに沿った断面図、図7は同じく矢印B部の拡大図である。また、図8はメーターボックスの壁の組付状態を示した正面図で、図9はその矢印C−C線に沿った断面図、図10は背面図である。
この実施の形態例では、RCによる壁52と下階床スラブ54及び上階床スラブ56とで囲まれた空間にメーターボックスを施工する。
即ち、壁52の凹部52a,52aに沿って右PC壁パネル62及び左PC壁パネル64が配置されている。
そして、これら左右のPC壁パネル62,64の前面上部間に中央PC壁パネル66が配置されている。
【0013】
右PC壁パネル62は、縦に細長いもので、図11に示すように、この右PC壁パネル62の上端面で厚さ方向の中間部からは、この右PC壁パネル62の幅方向に間隔をおき幅方向の全長にわたって複数のアンカー筋62a,62a,62a,・・・が突出しており、それらアンカー筋62aの間に一対の吊り上げ用フック金具62b,62bが突出されている。この一対の吊り上げ用フック金具62b,62bを利用して右PC壁パネル62が吊り込まれる。
従って、右PC壁パネル62を製作する際には、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルとして製作しておく。
このような右PC壁パネル62は、図6、図8及び図10に示すように、アンカー筋62a,62a,62a,・・・の上部が逆L形に曲げられ、この逆L形に曲げられたアンカー筋62a,62a,62a,・・・が、コンクリートを打設する前の建物躯体の骨組の上階床スラブ56の鉄骨や鉄筋に結合され、これによって右PC壁パネル62の上辺が建物躯体の骨組に定着される一方で、右PC壁パネル62の上辺以外の他辺は建物躯体の 骨組に定着されることなく、右PC壁パネル62が建物躯体の骨組に組み付けられる。その後、コンクリートが打設されることでアンカー筋62a,62a,62a,・・・および吊り上げ用フック金具62b,62bが右PC壁パネル62の上辺と共に上階床スラブ56に埋設される。なお、右PC壁パネル62の下辺は下階床スラブ52上に近接している。
【0014】
左PC壁パネル64も、縦に細長いもので、図12に示すように、この左PC壁パネル64の上端面で厚さ方向の中間部からは、この左PC壁パネル64の幅方向に間隔をおき幅方向の全長にわたって複数のアンカー筋64a,64a,64a,・・・が突出しており、それらアンカー筋64aの間に一対の吊り上げ用フック金具64b,64bを備えている。この一対の吊り上げ用フック金具64b,64bを利用して左PC壁パネル64が吊り込まれる。
従って、左PC壁パネル64を製作する際には、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルとして製作しておく。
このような左PC壁パネル64も、図8から図10に示すように、アンカー筋64a,64a,64a,・・・の上部が逆L形に曲げられ、この逆L形に曲げられたアンカー筋64a,64a,64a,・・・が、コンクリートを打設する前の建物躯体の骨組の上階床スラブ56の鉄骨や鉄筋に結合され、これによって左PC壁パネル64の上辺が建物躯体の骨組に定着される一方で、左PC壁パネル64の上辺以外の他辺は建物躯体の骨組に定着されることなく、左PC壁パネル64が建物躯体の骨組に組み付けられる。その後、コンクリートが打設されることでアンカー筋64a,64a,64a,・・・および吊り上げ用フック金具64b,64bが左PC壁パネル64の上辺と共に上階床スラブ56に埋設される。なお、左PC壁パネル64の下辺は下階床スラブ52上に近接している。
【0015】
中央PC壁パネル66は、横に細長いもので、図13に示すように、この中央PC壁パネル66の上端面で厚さ方向の中間部からは、この中央PC壁パネル66の幅方向に間隔をおき幅方向の全長にわたって複数のアンカー筋66a,66a,66a,・・・が突出しており、それらアンカー筋66aの間に一対の吊り上げ用フック金具66b,66bを備えている。この一対の吊り上げ用フック金具66b,66bを利用して中央PC壁パネル66が吊り込まれる。
従って、中央PC壁パネル66を製作する際には、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルとして製作しておく。
このような中央PC壁パネル66は、図6及び図8から図10に示すように、アンカー筋66a,66a,66a,・・・の上部が逆L形に曲げられ、この逆L形に曲げられたアンカー筋66a,66a,66a,・・・が、コンクリートを打設する前の建物躯体の骨組の上階床スラブ56の鉄骨や鉄筋に結合され、これによって中央PC壁パネル66の上辺が建物躯体の骨組に定着される一方で、中央PC壁パネル66の上辺以外の他辺は建物躯体の骨組に定着されることなく、中央PC壁パネル66が建物躯体の骨組に組み付けられる。その後、コンクリートが打設されることでアンカー筋66a,66a,66a,・・・および吊り上げ用フック金具66b,66bが中央PC壁パネル66の上辺と共に上階床スラブ56に埋設される。なお、中央PC壁パネル66下方にはメーターボックスの開口部が形成される。
【0016】
そして、この中央PC壁パネル66の前面下端部に沿って、図8及び図9に示したように、取付アングル材68を当て、この取付アングル材68を、中央PC壁パネル66とその左右のPC壁パネル62,64にそれぞれボルト(アンカーボルト)・ナット結合して固定する。
その後、中央PC壁パネル66の下端部とその左右のPC壁パネル62,64とにより形成されるメーターボックス開口部に、図示しないサッシを溶接により固定して、そのサッシ内に図示しないスチールドアを取り付けた後、各隙間がモルタルにより閉塞される。
【0017】
なお、以上の実施の各形態例においては、施工する非耐力壁は雑壁やメーターボックスの壁であったが、本発明はこれらに限定されるものではなく、他の非耐力壁であっても良い。
さらに、PCパネルとしては、鉄筋入りも含まれるものであり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明に係るプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法では、建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、前記建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルを製作し、前記建物躯体の骨組の建て方を行い、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を、コンクリートを打設する前の前記建物躯体の骨組に結合することにより、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺を前記建物躯体の骨組に定着する一方で、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺以外の他辺は前記建物躯体の骨組に定着することなく、前記壁用プレキャストコンクリートパネルを前記建物躯体の骨組に組み付け、しかる後に、前記建物躯体の骨組にコンクリートを打設するようにした。
従って、壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺から上方へ突出した複数のアンカー筋を、コンクリートを打設する前のRC造(またはSRC造)建物躯体の骨組に結合することによって、壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺のみを骨組に定着し、しかる後に骨組にコンクリートを打設するため、建物躯体工事時において、雑壁などの非耐力壁を、プレキャストコンクリートパネルを用いて簡易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した第1の実施の形態例として建物がSRCであって雑壁を施工する場合を示すもので、鉄骨骨組の建て方を示した図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は断面図である。
【図2】 図1に続く柱、梁、壁配筋を示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は断面図である。
【図3】 図2に続く躯体へのPC壁パネルの吊り込みを示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は断面図である。
【図4】 図3に続く型枠組、コンクリート打設を示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は断面図である。
【図5】 本発明を適用した第2の実施の形態例として建物がRC造であってメーターボックスの壁を施工する場合を示すもので、建物躯体へのPC壁パネルの配置を示した横断平面図である。
【図6】 図5の矢印A−Aに沿った断面図である。
【図7】 図5の矢印B部の拡大図である。
【図8】 図5のメーターボックスの壁の組付状態を示した正面図である。
【図9】 図8の矢印C−C線に沿った断面図である。
【図10】 図8の組付状態の背面図である。
【図11】 図5のメーターボックスにおける右側PC壁パネルを示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図12】 図5のメーターボックスにおける左側PC壁パネルを示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図13】 図5のメーターボックスにおける中央PC壁パネルを示したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
2 床スラブ
4 鉄骨柱
6 鉄骨大梁
12 梁鉄筋
14 柱鉄筋
16 壁鉄筋
18 PC壁パネル
18a、62a、64a、66a アンカー筋
28 コンクリート
52 壁
54 下階床スラブ
56 上階床スラブ
62 右PC壁パネル
64 左PC壁パネル
66 中央PC壁パネル
Claims (3)
- プレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法において、
建物躯体に建て込まれたときに上辺をなす一辺から、前記建物躯体に建て込まれたときに上方となる方向へ、複数のアンカー筋が突出した壁用プレキャストコンクリートパネルを製作し、
前記建物躯体の骨組の建て方を行い、
前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を、コンクリートを打設する前の前記建物躯体の骨組に結合することにより、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺を前記建物躯体の骨組に定着する一方で、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの上辺以外の他辺は前記建物躯体の骨組に定着することなく、前記壁用プレキャストコンクリートパネルを前記建物躯体の骨組に組み付け、
しかる後に、前記建物躯体の骨組にコンクリートを打設する、
ことを特徴とするプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法。 - 前記建物躯体の骨組は、鉄骨及び/または鉄筋を備えた梁を含んでおり、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を前記建物躯体の梁の鉄骨及び/または鉄筋に結合することを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法。
- 前記建物躯体の骨組は、鉄骨及び/または鉄筋を備えた床スラブを含んでおり、前記壁用プレキャストコンクリートパネルの前記複数のアンカー筋を前記建物躯体の床スラブの鉄骨及び/または鉄筋に結合することを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリートパネルを用いた建物の非耐力壁の施工方法。
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