JP3948089B2 - 圧電体素子及びそれを用いたインクジェット式記録ヘッド - Google Patents

圧電体素子及びそれを用いたインクジェット式記録ヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電体素子の構造に係わる。特に、インクジェット式記録ヘッドのインク吐出の駆動源として機能する圧電体素子の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット式記録ヘッドは、インク吐出の駆動源として機能する圧電体素子を備えている。この圧電体素子は、圧電体膜と、この圧電体膜を挟む上部電極及び下部電極を備えている。
【0003】
圧電体膜は、一般的に、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」という場合がある。)を主成分とする二成分系、又は、この二成分系にPZTの第三成分を加えた三成分系の組成を有する。この圧電体膜の成膜法として、ゾル・ゲル法、CVD法、スパッタ法、レーザアブレーション法等が知られている。
【0004】
これらの成膜法の中でも、特に、ゾル・ゲル法では、PZT系圧電体膜の金属成分の水酸化物の水和錯体(ゾル)を脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物(圧電体膜)を調整する。この方法によれば、PZT系圧電体膜の前駆体を所定の厚みとなるまで数回の塗工/乾燥/脱脂を繰り返すことにより成膜できるため、組成制御に優れている。
【0005】
例えば、0.5μm乃至2μm程度の厚みを有するPZT膜をゾル・ゲル法で成膜する場合、PZT膜のゾルをスピンコートし、乾燥/脱脂を行う工程を数工程(例えば、4工程)行い、その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)熱処理(プレアニール)し、さらにゾルをスピンコートして、乾燥/脱脂を行う工程を数工程(例えば、4工程)行い、その後、RTA熱処理(ファイナルアニール)する工程を経ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したゾル・ゲル法で圧電体膜を成膜する場合、脱脂工程やRTA工程で結晶粒を成長させる際に、圧電体膜内部に応力が作用し、クラックが発生するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、製造過程においてクラックの発生を防止する構造的特徴を備える圧電体素子を提供することを目的とする。より具体的には、圧電体膜に格子欠陥のある層(転位層)を形成することにより、製造過程における内部応力を緩和し、クラック等の発生を防止する圧電体素子を提供することを目的とする。さらには、本発明に係わる圧電体素子を備えるインクジェット式記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するべく、本発明に係わる圧電体素子は、圧電体膜と、上記圧電体膜を挟む上部電極及び下部電極と、を備える圧電体素子において、上記圧電体膜は、格子欠陥である転位層を備えることを特徴とする。圧電体膜に格子欠陥である転位層を形成することで、圧電体膜の成膜過程における応力を緩和し、クラックの発生を防止するとともに、圧電特性の向上を図ることができる。また、内部応力を緩和することで、厚膜化を可能にすることができる。
【0009】
格子欠陥である転位層の転位密度は1013乃至1014/cmの範囲であることが好ましい。転位密度が1014/cm以上であると圧電体膜の構造的強度が低下し、転位密度が1013/cm以下であると膜内に生じる応力を緩和することができないからである。
【0010】
また、格子欠陥である転位層は、圧電体膜の厚み方向に5nm乃至15nmの厚さで存在することが好ましく、特に、10nmであることが好ましい。厚みが5nm以下であると膜内に生じる応力を緩和することができず、15nm以上であると圧電体膜の構造的強度が低下するからである。
【0011】
本発明に係わる圧電体素子は、ゾル・ゲル法で形成することができる。この成膜法において、格子欠陥である転位層は、圧電体膜前駆体を形成するためのゾルをN(Nは自然数)回塗布してなる第1の膜を熱処理(プレアニール)した後、該第1の膜上に上記ゾルをM(Mは自然数)回塗布してなる第2の膜を熱処理(ファイナルアニール)することで、上記第2の膜中における上記第1及び第2の膜の界面近傍に形成することができる。即ち、第1の膜をプレアニールすることで、N回目に塗布されたゾルの結晶粒子が成長する際に結晶粒子の表面における格子配列が適度に乱れるため、N+1回目に塗布されるゾルに格子欠陥である転位層を形成することができる。この場合、第1の膜は、N回目に塗布されるゾルの鉛の含有量が1回目乃至N−1(Nは2以上の自然数)回目に塗布されるゾルの鉛の含有量より多く、上記第2の膜は、N+M回目に塗布されるゾルの鉛の含有量がN+1回目乃至N+M−1(Mは2以上の自然数)回目に塗布されるゾルの鉛の含有量より多いことが好ましい。
【0012】
具体的には、N回目及びM回目に塗布するゾルのPbの含有量は、1.2mol%であり、1回目乃至N−1回目及びN+1回目乃至N+M−1回目に塗布するゾルのPbの含有量は、1.05mol%であることが好ましい。これは、第1の膜をプレアニールするとき、又は、第2の膜をアニールするときに、最上層から鉛が蒸発し、この層に存在する鉛量が少なくなるのを防止するためである。また、鉛量が減ると、その層は低誘電性となり、圧電特性を低下させるが、これを防止する効果もある。
【0013】
但し、N回目及びM回目に塗布されるゾルの鉛含有量を多くしなくとも、上述したように第1の層をプレアニールすることで格子欠陥を得ることができる。
【0014】
本発明に係わるインクジェット式記録ヘッドは、加圧室と、この加圧室を加圧可能な位置に配置された本発明に係わる圧電体素子と、を備える。この構成により、圧電特性及び耐圧特性に優れたインクジェット式記録ヘッドを提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1を、図1乃至図5を参照して説明する。本実施の形態は、圧電体膜に構造的特徴(格子欠陥である転位層)を有する圧電体素子に係わるものである。
【0016】
ここで、図1は本実施の形態に係わる圧電体素子を基板上に形成した状態を示す断面図、図2は図1に示す圧電体素子の製造工程断面図、図3は図2(B)に示す製造工程をより詳細に示した製造工程断面図、図4は格子欠陥の説明図、図5は格子欠陥である転位層の説明図である。
【0017】
図1に示したように、本実施の形態に係わる圧電体素子は、シリコン単結晶基板10(厚さ:220μm)上に二酸化珪素から成る酸化膜20(膜厚:1.0μm)、下部電極30(膜厚:0.58μm)、圧電体膜40(膜厚:0.8μm)及び上部電極50(膜厚:0.1μm)が順次形成されている。
【0018】
下部電極30は、特に図示しないが、基板10側からチタン層(膜厚:20nm)、酸化チタン層(膜厚:20nm)、チタン層(膜厚:5nm)、白金層(膜厚:500nm)、チタン層(膜厚:5nm)からなる多層構造を具備している。
【0019】
この圧電体素子は、図2及び図3に示す工程により製造される。
【0020】
図2(A): 厚さ220μmのシリコン単結晶基板10上に熱酸化法により膜厚1.0μmの二酸化珪素から成る酸化膜20を形成する。この工程では、酸素或いは水蒸気を含む酸化性雰囲気中で高温処理する。この酸化膜20は振動板として機能するものであるが、二酸化珪素膜に限られず、酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜でもよく、さらに、振動板自体をなくして後述する下部電極に振動板の役割を兼ねてもよい。また、酸化膜20の形成は、熱酸化法に限らず、CVD法でもよい。この酸化膜20の表面上にスパッタ成膜法等の薄膜形成法により下部電極30となるチタン層(膜厚:20nm)、酸化チタン層(膜厚:20nm)、チタン層(膜厚:5nm)、白金層(膜厚:500nm)、チタン層(膜厚:5nm)を順次形成する。これらチタン層は下部電極30と酸化膜20の密着力を向上させるためのものである。
【0021】
図2(B): 下部電極30上に圧電体膜40を成膜する。本実施の形態では、ゾル・ゲル法で圧電体膜40を成膜する。この圧電体膜40の組成は、
Pb(Zr0.56Ti0.44)0.9(Mg1/3Nb2/3)0.1
である。圧電体膜40は0.8μmの厚みとするため、圧電体膜40を形成するためのゾルを8回に分けてスピンコートし、乾燥・脱脂工程を行う。
【0022】
具体的には、図3(A)に示すように、下部電極30上に圧電体膜40を成膜するためのゾルを1500rpmで30秒間スピンコーティングし、膜厚0.1μmとし、180℃10分で乾燥した後、400℃30分で脱脂して圧電体層41を形成する。更に、同様の工程を2回繰り返して圧電体層42、43を形成する。この場合、圧電体層41、42及び43を形成するゾルのPbの含有量は、1.05mol%とすることが好ましい。
【0023】
次いで、Pbの含有量が、1.2mol%であるゾルを圧電体層43上に1500rpmで30秒間スピンコーティングし、180℃10分で乾燥した後、400℃30分で脱脂して圧電体層44を形成する。このとき、圧電体層44を形成する際にゾルのPbの含有量を多くしたのは、後述するRTAによるプレアニール時においてPbが蒸発し、圧電体層44が低誘電性となり、圧電特性が低下するのを防止するためである。但し、圧電体層44を形成するゾルにおけるPbの含有量は圧電体層41、42及び43を形成するゾルのPbの含有量と同じにしてもよい。この場合は、圧電体層44に生じる低誘電性層により、圧電体膜内部に生じる応力を緩和することになる。
【0024】
次いで、圧電体層41乃至44に、RTAを用いて酸素雰囲気中で550℃で5分間、続けて675℃1分間の連続熱処理(プレアニール)を行い、圧電体膜40Aを形成する。このプレアニールにより、圧電体膜40Aの表面近傍の格子配列は乱れた状態で焼結し、結晶化する。
【0025】
圧電体膜層41乃至44を形成した工程と同様の工程により、圧電体膜40A上に圧電体層45乃至48を形成する。圧電体層45乃至47を形成するゾルのPbの含有量は、1.05mol%とすることが好ましく、圧電体層48を形成するゾルのPbの含有量は、1.2mol%とすることが好ましい。また、圧電体層48を形成後、RTAを用いて酸素雰囲気中で600℃で5分間、続けて850℃で1分間の連続熱処理(ファイナルアニール)を行い、圧電体膜40Bを形成する。このようにして、図3(C)に示すように、下部電極30上に圧電体膜40を成膜する。
【0026】
この場合、圧電体膜40Aの表面近傍の格子配列は乱れた状態で焼結し、結晶化しているため、圧電体膜40Bの格子配列は圧電体膜40Aの表面近傍の格子配列の影響を受け、格子欠陥が生じた状態で焼結し、結晶化する。このため、図4に示すように、圧電体膜40Bには、圧電体膜40Aと圧電体膜40Bの界面近傍に格子欠陥である転位層40Cが形成される。この格子欠陥である転位層40Cは、圧電体膜40を成膜する際に生じる内部応力を緩和するため、圧電体膜の成膜時のクラック発生を防止することができる。
【0027】
上記の条件下で成膜した圧電体膜40Bに形成された格子欠陥層40Cを1000万倍に拡大してみると、図5のようになる。この図は、高分解能断面TEM(XHRTEM)写真をスケッチしたものである。同図中、△は格子欠陥(格子の転位)を示し、実線は圧電体膜40Aと圧電体膜40Bの界面である。この実線を境に、上側に圧電体膜40B、下側に圧電体膜40Aが位置する。同図から、界面近傍において格子欠陥が多く存在することがわかる。この格子欠陥である転位層の転位密度を測定したところ、1013乃至1014/cmの範囲であり、格子欠陥である転位層40Cの厚みは、約10nmであることが確認された。格子欠陥である転位層40Cの無い圧電体膜の転位密度は1011乃至1012/cmであるから、格子欠陥である転位層40C内における格子欠陥は約100倍多いことになる。
【0028】
図2(C): 圧電体膜40を成膜後、圧電体膜40上に上部電極50を形成する。この工程は、厚さ0.1μmの白金を直流スパッタ法で成膜する。その後、パターニング等の所望の工程を行い、圧電体素子を得る。
【0029】
尚、上述の説明では、圧電体膜40を成膜するためにゾルを8回に分けてコーティングしたが、成膜時における応力に耐えられるならば、8回に限られない。同様に、プレアニールする場合も、4層目に限らず、2層目、3層目等の任意の層で行ってもよい。
【0030】
(実施例)
上述の製造方法(圧電体膜の4層目と8層目の鉛含有量を多くする場合)で得られた本実施の形態に係わる圧電体素子の圧電定数d31は150pC/N、電圧出力係数g31が11.0mV・m/N、誘電率eが1550であった。また、上述の製造方法(全ての層の圧電体膜の鉛含有量を等しくする場合)で得られた本実施の形態に係わる圧電体素子の圧電定数d31は110pC/N、電圧出力係数g31が9.5mV・m/N、誘電率eが1350であった。
【0031】
これに対し、圧電体膜の成膜時におけるプレアニール処理をしなかった比較例では、圧電定数d31が120pC/N、電圧出力係数g31が11.0mV・m/N、誘電率eが1250であった。この結果から、上述の製造方法(全ての層の圧電体膜の鉛含有量を等しくする場合)で得られた本実施の形態に係わる圧電体素子は、鉛の蒸発等による低誘電率層の存在により、圧電定数d31及び誘電率eの値は低下するものの、この低誘電率層が格子欠陥を含むため、圧電体膜内部に生じる応力を緩和し、クラックの発生を防止することができる。一方、比較例では、圧電体膜の成膜時におけるプレアニール処理をしていないため、格子欠陥層が形成されず、圧電体膜内部に生じる応力を緩和することができないので、厚い圧電体膜内部にクラックが発生しやすい構造となる。また、圧電定数d31及び誘電率eの値は低下し、圧電特性が低下していることがわかる。
【0032】
従って、本実施の形態に係わる圧電体素子によれば、格子欠陥を含む構成であるため、圧電体膜の信頼性を向上させることができるとともに、圧電特性を向上させることができる。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図6乃至図8を参照して説明する。本実施の形態は、圧電体膜に構造的特徴(格子欠陥である転位層)を有するインクジェット式記録ヘッドに係わるものである。
【0034】
ここで、図6はインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図、図7及び図8はインクジェット式記録ヘッドの主要部の製造工程断面図である。尚、図1乃至図5と同一符号については同一部であり、その詳細な説明を省略する。
【0035】
以下、図6を参照してインクジェット式記録ヘッドの構成を説明した後、図7及び図8を参照してインクジェット式記録ヘッドの主要部の製造工程を説明する。
【0036】
(インクジェット式記録ヘッドの構成)
図6に示すインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図は、インクの供給流路が加圧室基板内に形成されるタイプを示す。同図に示すように、インクジェット式記録ヘッドは主に加圧室基板1、ノズルユニット2及び基体4から構成される。
【0037】
加圧室基板1はシリコン単結晶基板上に形成された後、各々に分離される。加圧室基板1は複数の短冊状の加圧室11が設けられ、全ての加圧室11にインクを供給するための共通流路13を備える。加圧室11の間は側壁12により隔てられている。加圧室基板1の基体4側には振動板膜及び圧電体薄膜素子が形成されている(製造工程については後述する)。また、各圧電体薄膜素子からの配線はフレキシブルケーブルである配線基板3に収束され、基体4の外部回路(図示せず)と接続される。
【0038】
ノズルプレート2は加圧室基板1に接合される。ノズルプレート2における加圧室11に対応する位置にはインク滴を吐出するためのノズル21が形成されている。
【0039】
基体4は金属等の鋼体であり、加圧室基板1の取付台となる。
【0040】
(インクジェット式記録ヘッドの主要部における製造工程)
次に、本実施の形態に係わるインクジェット式記録ヘッドの製造工程について図7、図8を参照して説明する。
【0041】
尚、図7及び図8は、図6の加圧室基板1のa−a矢視断面図に相当する。
【0042】
図7(A): 所定の大きさと厚さ(例えば、直径102mm、厚さ220μm)のシリコン単結晶基板10に対してその全面に熱酸化法により二酸化シリコンからなるエッチング保護層(熱酸化膜)20を形成する。
【0043】
次いで、この基板10の能動素子側の面(圧電体膜が形成される側)に、下部電極30、圧電体膜40及び上部電極50からなる圧電体素子を形成する。圧電体素子の形成法については上述した実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。この圧電体素子は圧電体膜40に格子欠陥である転位層を含む構造であるため、圧電体素子の製造工程における応力を緩和し、クラックの発生等を防止することができる。
【0044】
図7(B): 上部電極50及び圧電体膜40に対して、加圧室11が形成されるべき位置に合わせて適当なエッチング(図示せず)を施し、イオンミリングを用いて所定の分離形状に形成する。さらに、下部電極に対しても同様に適当なエッチング(図示せず)を施し、イオンミリングを用いて所定の形状に形成する。
【0045】
また、基板10の能動素子側に、後工程で侵される種々の薬品に対する保護膜(図示せず)を施し、基板10の加圧室側の面の少なくとも加圧室或いは側壁を含む面領域の熱酸化膜20を弗化水素によりエッチングし、エッチング用の窓14を形成する。
【0046】
図7(C): 湿式異方性エッチング液、例えば、80℃に保温された濃度10%の水酸化カリウム水溶液を用いて窓14のシリコン単結晶基板10を所定の深さまでエッチングし、凹部15を形成する。
【0047】
尚、この工程は、平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた乾式異方性エッチングで行ってもよい。
【0048】
図8(D): 凹部15が形成されている基板10に対してCVD法等の化学的氣相成長法により二酸化珪素膜20をエッチング保護層として1μm形成した後、加圧室を形成するべき位置に合わせてエッチングマスクを施し、弗化水素によりエッチングする。
【0049】
尚、この二酸化珪素膜20の他の成膜法として、ゾル・ゲル法を用いてもよいが、能動素子側の面には既に圧電体素子が形成されているため、1000℃以上の高温加熱が必要とされるゾル・ゲル法は、圧電体膜の結晶性を阻害するので好ましくない。
【0050】
図8(E): 湿式異方性エッチング液、例えば、80℃に保温された濃度10%の水酸化カリウム水溶液を用いて基板10を加圧室側から能動素子側に向けて異方性エッチングし、加圧室11及び側壁12を形成する。
【0051】
図8(F): 以上の工程で形成された加圧室基板に、別体のノズルユニット2を接合する(図6参照)。このノズルユニット2には、各加圧室11に対応してノズル21が形成されている。
【0052】
以上、説明したように、本実施の形態に係わるインクジェット式記録ヘッドによれば、圧電体膜の構造上、格子欠陥である転位層を有するため、インクジェット式記録ヘッドの製造工程における圧電体膜に生じるクラックの発生を防止することができ、歩留りの向上を図ることができる。従って、コストの低下を図ることができる。
【0053】
また、圧電体素子の信頼性の向上とともに、圧電体膜の圧電特性の向上を図ることができるため、インクの吐出量が増加し、鮮明な印字を行うことができる。
【0054】
また、アニールする際の最上層のゾルの鉛の含有量を他の層のゾルの鉛の含有量より多くすることで、圧電体膜の厚み方向における鉛の存在量の差異を少なくすることができ、圧電特性の劣化を防止することができる。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係わる圧電体素子によれば、圧電体膜に格子欠陥である転位層を含むため、圧電体素子の製造工程における応力を緩和し、クラックの発生等を防止することができる。この構成により、圧電体膜を厚膜化することができるとともに、圧電特性の向上を図ることができる。
【0056】
また、本発明に係わるインクジェット式記録ヘッドによれば、圧電体膜の圧電特性の向上により、インクの吐出量が増加し、鮮明な印字を行うことができる。また、製造過程におけるクラックの発生を抑えることができるため、コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係わる圧電体素子を基板上に形成した状態を示す断面図である。
【図2】図1に示す圧電体素子の製造工程断面図である。
【図3】図2(B)に示す製造工程をより詳細に示した製造工程断面図である。
【図4】格子欠陥である転位層の説明図である。
【図5】高分解能断面TEM写真に基づいた、格子欠陥である転位層の説明図である。
【図6】インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図7】インクジェット式記録ヘッドの主要部の製造工程断面図である。
【図8】インクジェット式記録ヘッドの主要部の製造工程断面図である。
【符号の説明】
1…加圧室基板
2…ノズルユニット
3…配線基板
4…基体
10…基板
11…加圧室
12…側壁
13…共通流路
20…酸化膜
21…ノズル
30…下部電極
40…圧電体膜
40C…格子欠陥である転位層
50…上部電極

Claims (2)

  1. 圧電体膜と、上記圧電体膜を挟む上部電極及び下部電極と、を備える圧電体素子において、上記圧電体膜は、格子欠陥である転位層を備え、
    当該転位層は、
    転位密度が1013乃至1014/cm2の範囲であって、圧電体膜の厚み方向に5nm乃至15nmの厚さで存在することを特徴とする圧電体素子。
  2. 加圧室と、この加圧室を加圧可能な位置に配置された請求項1に記載の圧電体素子と、を備えるインクジェット式記録ヘッド。
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