JP2008153552A - アクチュエータ装置の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電特性を向上すると共に、圧電特性を均一化することができるアクチュエータ装置及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】基板10上にイリジウム及び白金を少なくとも含む下電極60を形成する工程と、該下電極60上に圧電材料からなる圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させた圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を繰り返し行って、複数層の前記圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜の最後に焼成した最終層を形成した後、当該複数層の圧電体膜を670℃〜750℃の温度で加熱処理して圧電体層70を形成するポストアニール工程と、該圧電体層70上に上電極80を形成して、前記下電極60、前記圧電体層70及び前記上電極80からなる圧電素子300を形成する工程とを具備する。
【選択図】図2
【解決手段】基板10上にイリジウム及び白金を少なくとも含む下電極60を形成する工程と、該下電極60上に圧電材料からなる圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させた圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を繰り返し行って、複数層の前記圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜の最後に焼成した最終層を形成した後、当該複数層の圧電体膜を670℃〜750℃の温度で加熱処理して圧電体層70を形成するポストアニール工程と、該圧電体層70上に上電極80を形成して、前記下電極60、前記圧電体層70及び前記上電極80からなる圧電素子300を形成する工程とを具備する。
【選択図】図2
Description
本発明は、基板上に変位可能に設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備するアクチュエータ装置の製造方法に関する。
アクチュエータ装置に用いられる圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、下電極と上電極との2つの電極で挟んで構成されたものがある。このようなアクチュエータ装置は、一般的に、撓み振動モードのアクチュエータ装置と呼ばれ、例えば、液体噴射ヘッド等に搭載されて使用されている。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。また、インクジェット式記録ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置としては、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
圧電素子を構成する圧電体層の製造方法としては、いわゆるゾル−ゲル法が知られている。すなわち、下電極を形成した基板上に有機金属化合物のゾルを塗布して乾燥およびゲル化(脱脂)させて圧電体の前駆体膜を形成する工程を少なくとも一回以上実施し、その後、高温で熱処理して結晶化させる。
また、圧電素子を構成する圧電体層の製造方法としては、いわゆるMOD(Metal-Organic Decomposition)法が知られている。すなわち、一般的に、金属アルコキシド等有機金属化合物をアルコールに溶解し、これに加水分解抑制剤等を加えて得たコロイド溶液を被対象物上に塗布した後、これを乾燥して焼成することで成膜される。
そして、ゾル−ゲル法又はMOD法による成膜工程を複数回繰り返し実施することで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造している。
また、イリジウム被覆基板上に圧電体層を積層形成した後、これを400℃、酸素雰囲気中にて50Torrという減圧環境下でポストアニール(再加熱)を行うことで、圧電体層を形成する製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ゾル−ゲル法又はMOD法により複数層の圧電体膜を積層形成すると、最終的に焼成した圧電体膜は、他の圧電体膜に比べて酸素が欠損した状態で形成されてしまうという問題がある。そして、このような酸素が欠損した圧電体膜を有する圧電体層は、残留応力が増大し、変位特性等の圧電特性が劣化してしまうという問題がある。
また、下電極に白金及びイリジウムが含まれている場合、下電極上に圧電体膜を焼成して結晶化する加熱をした際に同時に加熱されただけでは、下電極の白金及びイリジウムの拡散が均一にならず、下電極の基板の面内での変位特性にばらつきが生じるため、圧電素子の圧電特性にばらつきが生じてしまうという問題がある。
さらに、特許文献2では、圧電体層を焼成して結晶化した後にポストアニールを行う構成が記載されているものの、減圧環境下でポストアニールを行っていると共に下電極としてイリジウムが用いられている。そして、特許文献2では、400℃という低温で加熱しているため、基板の面内での下電極の変位特性の均一化を行うことができず、圧電素子の圧電特性にばらつきが生じてしまうという問題がある。
なお、このような問題は液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置の製造方法に限定されず、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置の製造方法においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、圧電特性を向上すると共に、圧電特性を均一化することができるアクチュエータ装置の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板上にイリジウム及び白金を少なくとも含む下電極を形成する工程と、該下電極上に圧電材料からなる圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させた圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を繰り返し行って、複数層の前記圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜の最後に焼成した最終層を形成した後、当該複数層の圧電体膜を670℃〜750℃の温度で加熱処理して圧電体層を形成するポストアニール工程と、該圧電体層上に上電極を形成して、前記下電極、前記圧電体層及び前記上電極からなる圧電素子を形成する工程とを具備することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる態様では、最終層として他の領域よりも酸素が欠損した圧電体膜が形成されたとしても、ポストアニール工程を行うことで最終層に酸素を補って、圧電体層の残留応力を低減して、基板の面内での残留応力のばらつきを減少して、圧電素子の圧電特性を均一化することができると共に、下電極を構成するイリジウム及び白金の拡散(再結晶化)を行って、基板の面内での下電極の組成比を均一化して変位特性を均一化することで、圧電素子の圧電特性を均一化することができる。
かかる態様では、最終層として他の領域よりも酸素が欠損した圧電体膜が形成されたとしても、ポストアニール工程を行うことで最終層に酸素を補って、圧電体層の残留応力を低減して、基板の面内での残留応力のばらつきを減少して、圧電素子の圧電特性を均一化することができると共に、下電極を構成するイリジウム及び白金の拡散(再結晶化)を行って、基板の面内での下電極の組成比を均一化して変位特性を均一化することで、圧電素子の圧電特性を均一化することができる。
ここで、前記下電極を形成する工程では、白金を主成分とする白金層と、イリジウムを主成分とするイリジウム層とを積層して形成することが好ましい。これによれば、下電極を所望の組成比で高精度に形成することができる。
また、前記ポストアニール工程では、酸素を20%以上含有する雰囲気下で加熱処理することが好ましい。これによれば、最終層に酸素を確実に補うことができる。
また、前記圧電体層が、チタン酸ジルコン酸鉛であることが好ましい。これによれば、圧電特性の良好な圧電素子を有するアクチュエータ装置を実現できる。
さらに本発明の他の態様は、上記態様の製造方法によって、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板の一方面に、前記アクチュエータ装置を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、圧電特性が均一化された圧電素子によって液体噴射特性を均一化して信頼性を向上した液体噴射ヘッドを実現できる。
かかる態様では、圧電特性が均一化された圧電素子によって液体噴射特性を均一化して信頼性を向上した液体噴射ヘッドを実現できる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
また、本実施形態の下電極膜60は、圧電体層70を形成する前に密着層と、密着層上に白金(Pt)からなる白金層と、白金層上にイリジウムからなるイリジウム層とが順次積層されて形成され、詳しくは後述する製造方法によって圧電体層70を焼成して結晶化させて形成した際に下電極膜60も同時に加熱処理される。
圧電体層70は、下電極膜60上に形成されるペロブスカイト構造の結晶膜である。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成した。
また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、弾性膜50及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザーバとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図8を参照して説明する。なお、図3〜図8は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)からなる二酸化シリコン膜51を形成する。
次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図4(a)に示すように、密着層61、白金層62及びイリジウム層63からなる下電極膜60を形成する。具体的には、まず、絶縁体膜55上に、密着層61を形成する。密着層61としては、例えば、厚さが10〜50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、密着層61として、厚さ20nmのチタン(Ti)を設けた。このように下電極膜60の最下層に密着層61を設けることによって、絶縁体膜55と下電極膜60との密着力を高めることができる。次いで、密着層61上に白金(Pt)からなり厚さが50〜500nmの白金層62を形成する。そして、白金層62上にイリジウム(Ir)からなるイリジウム層63を形成する。これにより、密着層61、白金層62及びイリジウム層63からなる下電極膜60が形成される。なお、イリジウム層63は、後の工程で圧電体層70を焼成して結晶化させて形成する際に、密着層61の成分が圧電体層70に拡散するのを防止すると共に圧電体層70の成分が下電極膜60に拡散するのを防止するためのものである。このようなイリジウム層63の厚さは5〜20nmが好ましい。
次いで、図4(b)に示すように、下電極膜60上にチタン(Ti)からなる結晶種層64を形成する。この結晶種層64は、3.5〜5.5nmの厚さで形成する。なお、結晶種層64の厚さは、4.0nmが好ましい。本実施形態では、結晶種層64を4.0nmの厚さで形成した。なお、本実施形態では、結晶種層64として、チタン(Ti)を用いるようにしたが、結晶種層64は、後の工程で圧電体層70を形成する際に、圧電体層70の結晶の核となるものであれば、特にこれに限定されず、例えば、結晶種層64として、酸化チタン(TiO2)を用いてもよい。
また、このように形成される結晶種層64は、その膜密度(Ti密度)ができるだけ高い方が好ましく、少なくとも4.5g/cm3以上であることが望ましい。結晶種層64の膜密度が高いほど時間経過に伴い表面に形成される酸化層の厚さは薄く抑えられ、圧電体層70の結晶が良好に成長するからである。なお、結晶種層64の膜密度は、厚さに関係なく成膜条件によって決まる。さらに、結晶種層64は非晶質であることが好ましい。具体的には、結晶種層64のX線回折強度、特に、(002)面のX線回折強度(XRD強度)が実質的に零となっていることが好ましい。このように結晶種層64が非晶質であると、結晶種層64の膜密度が高まり表層に形成される酸化層の厚みが薄く抑えられ、その結果、圧電体層70の結晶をさらに良好に成長させることができるからである。
このように下電極膜60の上に結晶種層64を設けることにより、後の工程で下電極膜60上に結晶種層64を介して圧電体層70を形成する際に、圧電体層70の優先配向方位を(100)または(111)に制御することができ、電気機械変換素子として好適な圧電体層70を得ることができる。なお、結晶種層64は、圧電体層70が結晶化する際に、結晶化を促進させるシードとして機能し、圧電体層70の焼成後には圧電体層70内に拡散するものである。
なお、このような下電極膜60の各層61〜63及び結晶種層64は、例えば、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成することができる。また、少なくとも下電極膜60の白金層62、イリジウム層63及び結晶種層64は、スパッタリング装置内の真空状態から開放せずに連続して成膜することが好ましい。このように下電極膜60の白金層62、イリジウム層63及び結晶種層64を連続成膜することによって、下電極膜60の白金層62、イリジウム層63及び結晶種層64の密着力を高めて下電極膜60内の層間剥離を防止することができる。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、有機金属化合物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図4(c)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に有機金属化合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を170〜180℃で8〜30分間保持することで乾燥することができる。また、乾燥工程での昇温レートは0.5〜1.5℃/secが好適である。なお、ここで言う「昇温レート」とは、加熱開始時の温度(室温)と到達温度との温度差の20%上昇した温度から、温度差の80%の温度に達するまでの温度の時間変化率と規定する。例えば、室温25℃から100℃まで50秒で昇温させた場合の昇温レートは、(100−25)×(0.8−0.2)/50=0.9[℃/sec]となる。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。また、脱脂工程では、昇温レートを0.5〜1.5℃/secとするのが好ましい。
次に、図4(d)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。この焼成工程では、圧電体前駆体膜71を650〜800℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、上記温度領域で5〜30分間加熱を行って圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成した。また、焼成工程では、昇温レートを15℃/sec以下とするのが好ましい。これにより優れた特性の圧電体膜72を得ることができる。
なお、このような乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
次に、図5(a)に示すように、下電極膜60上に1層目の圧電体膜72を形成した段階で、下電極膜60及び1層目の圧電体膜72をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。なお、下電極膜60及び1層目の圧電体膜72のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
ここで、例えば、下電極膜60の上に結晶種層64を形成した後にパターニングしてから1層目の圧電体膜72を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして下電極膜60をパターニングするために結晶種層64が変質してしまい、変質した結晶種層64上に圧電体膜72を形成しても当該圧電体膜72の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜72も1層目の圧電体膜72の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
それに比べ、1層目の圧電体膜72を形成した後に下電極膜60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜72は結晶種層64に比べて2層目以降の圧電体膜72を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜72の結晶成長に大きな影響を与えない。
次に、図5(a)に示すように、1層目の圧電体膜72と下電極膜60とをパターニングした後は、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことにより、図5(b)に示すように複数層の圧電体膜72を積層形成する。このとき、複数層を積層した圧電体膜72の内、最後に焼成した最終層72Aは、他の領域(圧電体膜72)に比べて酸素が欠損した状態で形成される。なお、ここで言う最終層72Aとは、最後に焼成された圧電体膜のことを言い、上述した塗布、乾燥及び脱脂工程を繰り返し行って複数層の圧電体前駆体膜71を形成した後、これら複数層の圧電体前駆体膜71を同時に加熱焼成して圧電体膜を形成した場合には、複数層の圧電体前駆体膜71から形成された圧電体膜のことを最終層と言う。
次に、複数層の圧電体膜72及び最終層72Aを形成した後、図5(c)に示すように、これらを再加熱処理(ポストアニール)することで複数層の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成する(ポストアニール工程)。すなわち、ポストアニール工程を行うことによって、酸素が欠損した最終層72Aに酸素を補って、他の領域(圧電体膜72)と同じ酸素量の圧電体膜72として、複数層の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成する。
なお、ポストアニール工程での加熱処理する温度は、670℃〜750℃が好ましい。ポストアニール工程での加熱処理する温度(加熱温度)は、下電極膜60の白金層62及びイリジウム層63の拡散を良好に行うために必要な温度(670℃以上)であるのが好ましい。ちなみに、ポストアニール工程での加熱温度が670℃よりも低いと、白金層62及びイリジウム層63の下電極膜60内での拡散を均一に行えない。また、ポストアニール工程での加熱温度が、750℃よりも高いと圧電体層70の表面が粗れるといった形状異常が発生するため好ましくない。
また、ポストアニール工程での加熱温度は、圧電体膜形成工程における焼成工程での加熱温度よりも高い方が好ましい。本実施形態では、圧電体膜72の焼成工程での加熱温度が、680℃である場合には、ポストアニール工程での加熱温度は、690℃〜750℃が好ましい。また、ポストアニール工程での加熱温度の最高到達時の加熱時間が3時間以内が好ましい。このように、ポストアニール(再加熱)を、圧電体膜72を焼成して結晶化させる際の加熱温度よりも高くすること、及びポストアニールの加熱温度の最高到達時の過熱時間を上記のようにすることで、圧電体膜72に確実に酸素を補うことができる。
さらに、ポストアニール工程では、酸素を20%以上有する雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、最終層72Aに確実に酸素を補うことができる。
このように、複数層の圧電体膜72を積層形成した際に、圧電体膜72の最後に焼成した最終層72Aが他の領域(圧電体膜72)に比べて酸素が欠損した状態で形成されても、ポストアニール工程を行うことで、酸素が欠損した最終層72Aに酸素を補って、最終層72Aを他の領域(圧電体膜72)と同じ酸素の組成比として良好な圧電特性を有する複数層の圧電体膜72を形成することができる。
すなわち、圧電体膜形成工程を繰り返し行って複数層の圧電体膜72を形成した後、ポストアニール工程を行うことによって、圧電体層70の残留応力を低減することができると共に、流路形成基板用ウェハ110の面内での残留応力の均一化を行って、圧電特性を向上することができると共に圧電特性の面内での均一化を行うことができる。
また、圧電体膜形成工程を繰り返し行うことで、下電極膜60も同時に加熱され、密着層61、白金層62、イリジウム層63が混合及び拡散して合金化(特に白金層62の再結晶化)された下電極膜60となる。このとき、圧電体膜形成工程によって加熱されただけでは、流路形成基板用ウェハ110の面内で下電極膜60を構成する成分の拡散(特に白金層62の再結晶化)が良好に行われないが、本実施形態では、圧電体膜形成工程を行った後、再加熱するポストアニール工程を行うことによって、下電極膜60を構成する複数層、特に白金層62及びイリジウム層63の拡散及び再結晶化を良好に行って、下電極膜60の面内での組成比を均一化することができる。これにより、流路形成基板用ウェハ110の面内での下電極膜60の剛性を均一化することができ、圧電素子300の変位特性などの圧電特性を面内で均一化することができる。
ここで、ポストアニール工程での加熱温度を400、500、600、670、700、730及び750℃とし、それぞれの圧電体層70の残留応力による反り量、下電極膜60の白金の配向強度の平均差及び下電極膜60の流路形成基板用ウェハ110の面内での表面抵抗率と表面抵抗率分布を測定した。この結果を図9に示す。
図9(a)に示すように、ポストアニール工程での加熱温度が低いと、圧電体層70の残留応力による反り量が高くなり、ポストアニール工程での加熱温度が高いと、圧電体層70の残留応力による反り量が低くなることが分かる。このため、ポストアニール工程を行うことで圧電体層70の残留応力を低減することができ、特に、加熱温度を670℃以上とすることで、残留応力の顕著な低減を実現できる。
また、図9(b)に示すように、ポストアニール工程での加熱温度が低いと、下電極膜60に含まれる白金の配向強度が低く、ポストアニール工程での加熱温度が高いと、下電極膜60に含まれる白金の配向強度が高くなることが分かる。このため、ポストアニール工程を行うことで、下電極膜60に含まれる白金の再結晶化が行われて、白金の拡散が良好に行われていることが分かる。特に、加熱温度を670℃以上とすることで、下電極膜60に含まれる白金の配向強度を高くして、白金の拡散及び再結晶化を確実に行うことができる。
さらに、図9(c)に示すように、ポストアニール工程での加熱温度が低いと、下電極膜60の抵抗値が高くなり、流路形成基板用ウェハ110の面内での抵抗値分布が高く、すなわち面内での抵抗値にばらつきがある。これに対して、ポストアニール工程での加熱温度が高いと、下電極膜60の抵抗値が低くなり、流路形成基板用ウェハ110の面内での抵抗値分布が低く、すなわち面内での抵抗値が均一化されることが分かる。このため、ポストアニール工程を行うことで、流路形成基板用ウェハ110の面内での下電極膜60の組成が均一化されて、下電極膜60の面内での特性、特に変位特性が均一化されることが分かる。特に、670℃以上の加熱温度でポストアニール工程を行うことで、流路形成基板用ウェハ110の面内での下電極膜60の抵抗値分布を低くすることができる。なお、ポストアニール工程での加熱温度を700℃以上とすることで、下電極膜60の抵抗値分布を3%以下とすることができる。このように下電極膜60の抵抗値分布を3%以下とすることで、下電極膜60の面内での変位特性を確実に均一化することができる。
ちなみに、圧電体層70(最終層72A)上に上電極膜80を形成する工程の後、再加熱を行うポストアニール工程を行うことも考えられるが、上電極膜80を形成する工程の後にポストアニール工程を行うと、上電極膜80が最終層72Aに酸素を補うのを阻害すると共に、上電極膜80が加熱により酸化してしまい上電極膜80の特性が変わってしまうため好ましくない。本実施形態のように、上電極膜80を形成する工程の前にポストアニール工程を行うことで、上電極膜80が最終層72Aに酸素を補うのを阻害するのを防止することができると共に、上電極膜80が加熱により酸化して上電極膜80の特性が変わってしまうのを防止することができる。
次に、図6(a)に示すように、圧電体層70上に亘って、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を形成する。
次に、図6(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び上電極膜80のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接着剤35を介して接合する。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110にマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂した後、焼成して圧電体膜72を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂する工程を複数回、例えば、2回繰り返し行った後、焼成することで圧電体膜72を形成するようにしてもよい。このような場合、最後に焼成された最終層72Aは、2層の圧電体前駆体膜71が焼成されて形成された圧電体膜となる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂した後、焼成して圧電体膜72を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂する工程を複数回、例えば、2回繰り返し行った後、焼成することで圧電体膜72を形成するようにしてもよい。このような場合、最後に焼成された最終層72Aは、2層の圧電体前駆体膜71が焼成されて形成された圧電体膜となる。
また、上述した実施形態1では、密着層61、白金層62及びイリジウム層63からなる下電極膜60を形成した後、圧電体層70を形成する製造方法を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、下電極膜60として、絶縁体膜55側にイリジウムからなるイリジウム層を有するものであってもよい。また、下電極膜60として、密着層61上に、イリジウムと白金との合金を形成してから、圧電体層70を形成するようにしてもよい。さらに、下電極膜60として、密着層61上に例えば、マルチスパッタ装置などを用いて白金とイリジウムとをターゲットとして、白金とイリジウムとが混合された混合層を形成するようにしてもよい。下電極膜60が何れの構成であるとしても、白金とイリジウムとを含む下電極膜60上に圧電体層70を形成する際に、ポストアニール工程を行うことで、上述した効果を得ることができるものである。
さらに、上述した実施形態1では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置の製造方法に限られず、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置の製造方法にも適用することができる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 64 結晶種層、 70 圧電体層、 71 圧電体前駆体膜、 72 圧電体膜、 72A 最終層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子
Claims (5)
- 基板上にイリジウム及び白金を少なくとも含む下電極を形成する工程と、該下電極上に圧電材料からなる圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させた圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程を繰り返し行って、複数層の前記圧電体膜を形成する工程と、前記圧電体膜の最後に焼成した最終層を形成した後、当該複数層の圧電体膜を670℃〜750℃の温度で加熱処理して圧電体層を形成するポストアニール工程と、該圧電体層上に上電極を形成して、前記下電極、前記圧電体層及び前記上電極からなる圧電素子を形成する工程とを具備することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記下電極を形成する工程では、白金を主成分とする白金層と、イリジウムを主成分とするイリジウム層とを積層して形成することを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記ポストアニール工程では、酸素を20%以上含有する雰囲気下で加熱処理することを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記圧電体層が、チタン酸ジルコン酸鉛であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法によって、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板の一方面に、前記アクチュエータ装置を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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