JP4737027B2 - 圧電体素子の製造方法、及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

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本発明は、インクジェット式記録ヘッドに用いる圧電体素子に係り、特に厚膜化が可能で高い信頼性を得ることのできる圧電体素子の製造技術に関する。
圧電体素子は、電界を印加することにより体積変化を生じたり、圧力を加えると電圧変化を生じたりする電気機械変換作用を生ずるものである。圧電体素子はインクジェット式記録ヘッドの重要な駆動素子である。ペロブスカイト(perovskite)結晶構造を有する圧電性材料はこの作用を顕著に示すものが多いため、圧電体素子の材料に用いられている。
従来、圧電体素子の製造方法は、PZT等の圧電性材料をゾル−ゲル法で積層し、一層当たり100nm程度の圧電体薄膜を複数積層していくものであった。例えば、特開平3−69512号公報には、有機化合物の水素を金属で置換したアルコキシドを含んだ前駆物質を、金属カチオンを用いて加水分解し、その水溶液を基質に塗布して、最後に600℃から700℃程度の温度でアニールして圧電特性を示す薄膜を成形する手順が記載されている。このような従来の圧電体素子の製造方法は、例えば、Communications of the American Ceramic Society, vol. 79, no. 8, 2189-92 (1996)にも記載されている。
インクジェット式記録ヘッドは、インクを溜めるための圧力室基板の一面を形成する振動板上に前記圧電体素子を形成して構成されている。このインクジェット式記録ヘッドは、圧電体素子の変形が振動板に伝達されて圧力室の体積が変形し、圧力室のインクに圧力が加えられることによってインクを吐出可能に構成されている。
しかし従来の製造方法で生産される圧電体素子ではまだ十分な信頼性があるとはいえなかった。一般により高い電圧を圧電体素子の電極膜間に印加するほど圧電体素子の信頼性は損なわれる。しかし印加する電圧が低いと圧電体素子の体積変化が少なく、インクジェット式記録ヘッドに適用した場合にはインクの吐出量が少なくなってしまう。
一方圧電体素子を多層積層構造にして厚膜化すれば圧電体膜内の電界の強さが小さくなるので信頼性は向上するが、ある程度以上圧電体薄膜を積層すると内部応力によって製造過程においてクラックが生ずるといった不都合があった。
そこで本願発明者は内部応力を緩和するための構造を採用することで圧電体素子の厚膜化を可能とし、圧電体素子の信頼性を著しく向上することに成功した。
すなわち、本発明の第1の課題は、圧電体薄膜中に微結晶粒を生じさせることにより厚膜化を可能とする圧電体素子の製造方法を提供することである。
本発明の第2の課題は、圧電体薄膜中に微結晶粒を生じさせた圧電体素子を製造することにより、信頼性を向上させることのできるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を提供することである。
上記第1の課題を解決する発明は、電気機械変換作用を示す圧電体素子を製造する圧電体素子の製造方法であって、圧電性材料に当該圧電性材料に含まれる鉛の量に対して70乃至135mol%の高分子有機化合物を含有させ前駆体を生成する工程と、前記前駆体を所定の厚みに塗布する塗布工程と、塗布された前記前駆体を乾燥させ脱脂する乾燥・脱脂工程と、を所定回繰り返し、複数積層された前記前駆体を同時に熱処理して結晶化させて圧電体薄膜を複数積層する工程と、積層された前記圧電体薄膜上に上部電極膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする圧電体素子の製造方法である。
例えば、圧電体薄膜を複数積層する工程は、塗布工程と乾燥・脱脂工程により前駆体を積層してからさらに熱処理する工程を、さらに複数回繰り返す。
なお、圧電体薄膜を複数積層する工程では、当該圧電体薄膜を一層当たり40nm以上80nm以下の厚みで形成することは好ましい。さらに圧電体薄膜を複数積層する工程では、当該圧電体薄膜を一層当たり略65nmの厚みで形成することは好ましい。
例えば、高分子有機化合物としてはポリエチレングリコールを使用する。
上記第2の課題を解決する発明は、圧力室基板に設けられた圧力室に体積変化を生じさせることによって圧力室に設けられたノズルからインクを吐出可能に構成されたインクジェット式記録ヘッドにおいて、圧力室基板に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に上記圧電体素子の製造方法により圧電体素子を形成する工程と、圧電体素子を圧力室に体積変化を生じさせることが可能な形状に整形する工程と、圧力室基板に圧力室を形成する工程と、を備えたことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法である。
次に、本発明の最良の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明の圧電体素子をインクジェット式記録ヘッドに適用したものである。
(インクジェットプリンタの構成)
図1に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドが用いられるインクジェットプリンタの斜視図を示す。同図に示すように、本インクジェットプリンタ100は、本体2に、本発明に係る圧電体素子を備えたインクジェット式記録ヘッド1、トレイ3および排出口4等を備えて構成されている。トレイ3は、用紙5を載置可能に構成される。インクジェット式記録ヘッド1は、図示しない内部移送機構により、用紙5の幅方向(矢印方向)に移送自在に構成されている。
この構成において、コンピュータ等から印字用データがこのインクジェットプリンタ100に供給されると、図示しない内部ローラが用紙5を本体2に取り入れる。用紙5は、ローラの近傍を通過するとき、同図矢印方向に駆動されるインクジェット式記録ヘッド1により印字され、排出口4から排出される。
図2に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの構造を説明する斜視図を示す。同図に示すように、インクジェット式記録ヘッド1は、ノズル11の設けられたノズル板10、および振動板30の設けられた圧力室基板20を、筐体25に嵌め込んで構成される。圧力室基板20は、キャビティ(圧力室)21、側壁22およびリザーバ23等が形成されている。
なお、本実施形態では、インクを溜めるリザーバが流路基板に設けられているが、ノズル板を多層構造にし、その内部にリザーバを設けるものでもよい。
(インクジェット式記録ヘッドの構成)
図3に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの一部拡大斜視図を示す。一部は断面図になっている。この図は、図2に示すインクジェット式記録ヘッドの構造のうち、圧力室基板20および振動板30の部分を反対側から拡大して見た図に相当する。同図に示すように、本インクジェット式記録ヘッド1の主要部は、ノズル板10、圧力室基板20、振動板30および圧電体素子40を備えて構成されている。
ノズル板10は、圧力室基板20に複数設けられたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノズル11が配置されるよう、圧力室基板20に貼り合わせられて構成されている。
圧力室基板20は、キャビティ21、側壁22、リザーバ23および供給口24を備えている。圧力室基板20のキャビティ21は、シリコン等の基板をエッチングすることにより複数形成されるものであり、個々のキャビティにはインクが充填可能に形成される。側壁22は、エッチングされずに残った部分であり、キャビティ21間を仕切るよう構成される。リザーバ23は、各キャビティ21にインクを供給可能な共通の流路として構成されている。供給口24は、各キャビティ21にインクを導入可能に構成されている。
振動板30は、圧力室基板20の一方の面に設けられている。振動板30の一部には、インクタンク口31が設けられており、筐体25を介して、図示しないインクタンクからのインクをリザーバ23に供給可能な構成になっている。
圧電体素子40は、本発明に係る部材であり、振動板30上を変形させることによりキャビティ21に圧力を印加可能な位置に所定の形状で形成されている。
(圧電体素子の層構造)
図4に、振動板30および圧電体素子40の層構造を断面図で示す。同図に示すように、振動板30が絶縁膜301および下部電極膜302を積層して構成され、圧電体素子40が複数の圧電体薄膜401〜40n(nは2以上の自然数)、さらに上部電極膜410を積層して構成されている。
絶縁膜301は、導電性のない材料、例えば、シリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素により構成され、圧電体素子の体積変化により変形し、キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に構成されている。
下部電極膜302は、上部電極膜410と対になる、圧電体薄膜に電圧を印加するための電極であり、導電性を有する複数の材料、例えば、白金(Pt)層で構成されている。下部電極膜302は、同図に示すように熱酸化膜301の総ての領域に重ねて形成しても、圧電体素子40の下部領域のみに形成してもよい。また、圧電体素子40の下部における厚みとその他の領域における厚みとを異ならせて形成してもよい。
上部電極膜410は、圧電体素子に電圧を印加するための電極であり、導電性を有する材料、例えば厚み0.1μmの白金(Pt)で形成されている。
圧電体薄膜401〜40nは、圧電特性を有する圧電性材料に高分子有機化合物を混合した前駆体を結晶化させて構成されている。例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr、Ti)O3):PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr0.56Ti0.440.9(Mg1/3Nb2/30.13)等で構成される。
圧電体薄膜401〜40nは、高分子有機化合物が作用して各層に微結晶粒420を備えている。微結晶粒の直径は20nm乃至80nm程度である。各圧電体薄膜に含まれる微結晶粒は下部電極膜に近い圧電体薄膜ほど面密度が高く上部電極膜に近いほど面密度が低くなる傾向にある。例えば圧電体薄膜が4層で構成されている場合(401〜404)、下部電極膜302に最も近い圧電体薄膜401における微結晶粒の面密度は5×109/cm2程度となる。また中央付近の圧電体薄膜402または403における微結晶粒の面密度は1×109/cm2程度となる。また上部電極膜410に最も近い圧電体薄膜404における微結晶粒の面密度は1×108/cm2程度となる。なお、この面密度の変化は必ずしも厳密なものではなく全体として上記した傾向を備えるという意味である。
圧電体薄膜の厚みは、圧電体薄膜一層当たり40nm以上80nm以下程度であることが好ましく、さらに圧電体薄膜一層当たり略65nmの厚みであることが好ましい。これらの厚みであればクラック等の発生なく多数層を積層して最も厚い圧電体素子を形成できるからである(図8参照)。
さらに圧電体薄膜は従来より多く積層することが可能である。最大1.6μm〜2.0μmまで積層させることが可能である。余りに厚く積層すると高い駆動電圧が必要となり、あまりに薄くすると駆動電圧を印加する際、PZT膜内に高電場が生じ、膜の特性が低下したり、膜が絶縁破壊したりして信頼性を損ねるからである。
(作用)
図7を参照して微結晶粒ができる理由を考察する。一般にPZT等の圧電性材料を含んだ前駆体を熱処理すると、アモルファス状態であった分子構造からペロブスカイト結晶構造の緻密な結晶構造が発達する。結晶が発達する方向は下から上に向かってである。すなわち図7において下部電極と接している下層では、下部電極の結晶構造が前駆体へ伝達され、界面から一定の速度V2で結晶粒が成長していく。複数の点から結晶粒が成長して結晶粒同士が接触すると柱状構造の結晶粒が成長していくのである。一方、アモルファス層内にも一定の速度v1で成長する結晶粒が存在する。
本発明の高分子有機化合物を含んだ前駆体では、熱処理が加えられると、下部電極の白金等の影響が多いほど、すなわち下部電極に近い層ほど、層内における結晶粒が成長する速度V1が大きい傾向がある。よって下部電極に近い圧電体薄膜では層内からの結晶の成長速度V1が界面からの結晶の成長速度V2に比べ相対的に大きいので多数の微結晶粒が結晶後に残留する。一方下部電極から遠いほど層内から結晶粒が成長する速度V1が相対的に小さい。相対的に圧電体薄膜の境界から結晶粒が成長する速度V2のほ方が大きくなると、層内からの微結晶粒が圧電体薄膜の境界から成長した結晶粒に飲み込まれて消滅する場合が多くなる。よって下部電極から遠い圧電体薄膜では層内から成長した結晶が界面から成長した柱状の結晶に飲み込まれ消滅し結晶後に相対的に少ない微結晶粒しか残留しなくなる。上記作用ゆえに下部電極膜302に近い圧電体薄膜ほど微結晶粒420が多く残留する傾向が生ずるのである。
さて圧電体素子の製造時、圧電体薄膜には結晶の成長に伴って複雑な内部応力が生ずる。圧電体薄膜内部に生じた内部応力は結晶構造上弱い点から破壊(クラック)を生ずる。圧電体薄膜を厚くすればするほど内部応力が大きく加算される。このため余りに厚く形成した圧電体素子では、熱処理の過程でクラックが生ずるのである。従来はこのクラック発生があるため、ある程度以上(例えば1.0μm以上)圧電体素子を厚くすることができなかった。
本発明によれば、微結晶粒420が各部に存在するため、圧電体薄膜内に多くの粒界が存在する。これらの粒界によって圧電体薄膜内部に生じた内部応力を緩和する。すなわち微結晶粒420が結晶構造に生じた内部応力を緩和しているのである。一方微結晶粒420はそれ自体圧電性材料の結晶であるため圧電体素子全体の圧電特性を阻害することはない。したがって本発明の圧電体素子によれば、圧電特性を阻害することなく応力集中による破壊(クラック)を防止できるのである。
本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、この信頼性の高い圧電体素子を備える。このインクジェット式記録ヘッドの動作原理を説明する。圧電体素子40の下部電極302と上部電極410との間に電圧が印加されていない場合、圧電特性を示す圧電体薄膜401〜40nには、体積変化を生じさせない。したがって、電圧が印加されない圧電体素子40に対応して形成されたキャビティ21に圧力に変化が生じず、ノズル11からインク滴は吐出されない。
一方、圧電体素子40の下部電極302と上部電極410との間に、圧電体素子40に体積変化を生じさせる電圧が印加されている場合、圧電体薄膜401〜40nは体積変化を生じる。したがって、電圧が印加されている圧電体素子40が取り付けられた振動板30が大きくたわみ、そのキャビティ21内の体積を変化させる。このためキャビティ21内の圧力が変化し、ノズル11からインク滴が吐出される。本発明によれば、圧電体素子の信頼性が高いためインクジェット式記録ヘッド全体の信頼性も高い。
(製造方法の説明)
次に、本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する。
絶縁膜形成工程(図5(a)): まず、圧力室基板20の基礎となるシリコン基板201に絶縁膜301、例えば二酸化ケイ素の膜を形成する。シリコン基板201は、例えば200μm程度、絶縁膜301は、1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には公知の熱酸化法等を用いる。
下部電極膜形成工程(同図(b)): 次いで絶縁膜301の上に下部電極膜302を形成する。下部電極膜302は、例えば白金層を0.5μmの厚みで積層する。これら層の製造は公知の直流スパッタ法等を用いる。
塗布・乾燥・脱脂工程(同図(c)): 次いで圧電体薄膜401〜40nを形成する。まずPZT等の圧電性材料の前駆体に高分子有機化合物を混入させて溶解液を生成する。高分子有機化合物としては、例えばポリエチレングリコール等を混入する。高分子有機化合物の含有量は、圧電性材料の前駆体に含まれる鉛の量に対して70乃至135mol%程度含有させる。この程度の含有量が最も効率よく微結晶粒を成長させることができるからである。
次いで高分子物質を混入した溶解液を、下電極膜302上に一定の厚みに塗布する。この厚みは前述したとおりである。例えば公知のスピンコート法を用いる。一回のコーティングは、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒程度行う。塗布後、一定温度(例えば180度)で一定時間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒が蒸発する。乾燥後、さらに大気雰囲気下において所定の高温(例えば400度)で一定時間(30分間)脱脂する。脱脂により金属に配位している有機の配位子が熱分解され、金属が酸化されて金属酸化物となる。
上記塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数、例えば4回繰り返して4層積層する。これらの乾燥や脱脂により、溶液中の金属アルコキシドが加水分解や重縮合され金属−酸素−金属のネットワークが形成される。
熱処理工程(同図(d)): 4層重ねるごとに、さらに圧電体層の結晶化を促進し圧電体としての特性を向上させるために所定の雰囲気下で熱処理する。例えば、4層積層後、酸素雰囲気下において、高速熱処理(RAT)で、600度で5分間、さらに900度で1分間加熱する。この熱処理によりアモルファス状態のゲルからペロブスカイト結晶構造が形成される。この結晶化の際に、上記したような微結晶粒も上記した分布にしたがって残留することになる。
上記塗布・乾燥・脱脂を4回繰り返して熱処理を1回行うという一連の工程をさらに所定回数、例えば4回繰り返すことになり圧電体薄膜401〜40nが形成される。
上部電極形成工程(同図(e)): 圧電体薄膜の上に、さらに電子ビーム蒸着法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極膜410を形成する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは100nm程度にする。
エッチング工程(図6(a)): 各層を形成後、振動板膜30(絶縁膜301および下部電極膜302)上の積層構造(401〜40nおよび410)を、各キャビティ21の形状に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする。エッチングする際、スピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジストを塗布し、露光・現像して、レジストを上部電極膜410上に形成する。これに、通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な層構造部分を除去する。エッチングで不要部分を取り除くことによって、圧電体素子40が形成される。
圧力室形成工程(同図(b)): 圧電体素子40を形成した圧力室基板20の他方の面をエッチングしてキャビティ21を形成する。例えば、異方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、キャビティ21空間のエッチングを行う。エッチングされずに残された部分が側壁22になる。エッチングでキャビティ等を形成したものが、圧力室基板20である。
貼り合わせ工程(同図(c)): エッチング後の圧力室基板20にノズル板10を、樹脂等を用いて貼り合わせる。このとき、各ノズル11がキャビティ21各々の空間に配置されるよう位置合せする。ノズル板10の貼り合わせられた圧力室基板20を筐体25に取り付ければ(図2参照)、インクジェット式記録ヘッド101が完成する。なお、ノズル板を貼り合わせる代わりに、ノズルと圧力室基板を一体的にエッチングして形成してもよい。
(実施例)
上記実施形態の製造方法に沿って製造した圧電体素子の実施例を示す。圧電体層を構成する圧電性材料には、
Pb(Zr0.56Ti0.440.9(Mg1/3Nb2/30.13
を用いた。
表1に、上記本発明の製造方法によって製造したインクジェット式記録ヘッドの実施例と、従来の製造方法によって製造したインクジェット式記録ヘッドの比較例との比較結果を示す。比較項目は、圧電体素子の圧電特性を決定する圧電d定数、圧電g定数および誘電率εと、信頼性、クラックを生ずることなく形成可能な圧電体素子の最大の厚みである。なお、圧電d定数および圧電g定数の添え字31は、圧電体素子の厚み方向についての定数であることを示す。信頼性は障害を発生することなく使用できた回数等を相対値で示した。比較例は通常の前駆体を用い、熱処理を600度で5分間、900で1分間行ったものである。
Figure 0004737027
表1から判るように、圧電特性は変わらないまま、圧電体素子の厚みを2倍以上にし、信頼性を3倍にすることができた。
図8に、圧電体薄膜一層当たりの膜厚と全体としてクラックを生ずることなく積層可能であった圧電体素子の膜厚の最大値との関係を示す。同図に示すように、一層当たりの膜厚を一定の範囲に抑えて多層積層にすれば全体としての膜厚を厚くすることができる。
図9に、上記実施例における圧電体薄膜と下部電極膜との界面付近の断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真の模写図を示す。同図に示すように、微結晶粒が残留していることがはっきりと確認できる。また下部電極膜から離れるほど微結晶粒の個数が減少していく傾向が現れている。
上記したように本実施形態によれば、圧電性材料に高分子有機化合物を混合すること及び圧電体薄膜一層当たりの厚みを制御することにより微結晶粒を生じさせることができる。微結晶粒が内部応力を緩和するので、積層数を多くして圧電体素子の厚みを厚く形成することができる。圧電体素子を厚くしたので、圧電体薄膜にかかる電界の強さを抑えることができ圧電体素子やインクジェット式記録ヘッドの信頼性を向上させることができる。
<その他の変形例>
本発明は、上記各実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、上記実施形態では、ゾル−ゲル法を用いて圧電体層を形成したが、それ以外の方法、例えばスパッタリング法を用いて圧電体層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、単一の圧電性材料により圧電体層を形成したが、層ごとに異なる圧電性材料を用いてもよい。異なる圧電性材料を用いる場合にも、高分子有機化合物を混ぜることおよび圧電体薄膜一層当たりの厚みを制御することにより微結晶粒を成長させることができる。
また、本発明の圧電体素子は、上記インクジェット式記録ヘッドに使用する圧電体素子のみならず、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサ、パイロ電気検出器、センサ、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザ用周波数二倍器等のような圧電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、および電気光学装置の製造に適応することができる。
本発明によれば、圧電体薄膜中に微結晶粒を生じさせる工程を備えたので、厚膜化を可能とする圧電体素子の製造方法を提供できる。
本発明によれば、圧電体薄膜中に微結晶粒を生じさせた圧電体素子を製造するので、信頼性を向上させることのできるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を提供できる。
実施形態のインクジェットプリンタの構造を説明する斜視図である。 実施形態のインクジェット式記録ヘッドの構造を説明する斜視図である。 実施形態のインクジェット式記録ヘッドの斜視図一部断面図である。 本発明のインクジェット式記録ヘッドの積層構造を説明する断面図である。 本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する製造工程断面図である。(a)は絶縁膜形成工程、(b)は下部電極膜形成工程、(c)は圧電体薄膜形成工程、(d)は熱処理工程および(e)は上部電極膜形成工程である。 本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明する製造工程断面図である。(a)は圧電体素子形成工程、(b)は圧力室形成工程、および(c)は貼り合わせ工程である。 微結晶粒成長の原理を説明する図である。 圧電体薄膜一層当たりの膜厚とクラックが発生しない全体膜厚との関係図である。 圧電体薄膜の断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真である。
符号の説明
10…ノズル板、11…ノズル、20…圧力室基板、21…キャビティ、22…側壁、23…リザーバ、201…シリコン基板、30…振動板、301…絶縁膜、302…下部電極膜、40…圧電体素子、401−40n…圧電体薄膜、410…上部電極膜、420…微結晶粒。

Claims (6)

  1. 電気機械変換作用を示す圧電体素子を製造する圧電体素子の製造方法であって、
    圧電性材料に当該圧電性材料に含まれる鉛の量に対して70乃至135mol%の高分子有機化合物を含有させ前駆体を生成する工程と、
    基板に下部電極膜を形成する工程と、
    前記下部電極膜が形成された基板に前記前駆体を所定の厚みに塗布する塗布工程と、塗布された前記前駆体を乾燥させ脱脂する乾燥・脱脂工程と、を所定回繰り返し、複数積層された前記前駆体を同時に熱処理して結晶化させて圧電体薄膜を複数積層する工程と、
    積層された前記圧電体薄膜上に上部電極膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする圧電体素子の製造方法。
  2. 前記圧電体薄膜を複数積層する工程は、前記塗布工程と前記乾燥・脱脂工程により前記前駆体を積層してからさらに熱処理する工程を、さらに複数回繰り返す請求項1に記載の圧電体素子の製造方法。
  3. 前記圧電体薄膜を複数積層する工程では、当該圧電体薄膜を一層当たり40nm以上80nm以下の厚みで形成する請求項1又は2に記載の圧電体素子の製造方法。
  4. 前記圧電体薄膜を複数積層する工程では、当該圧電体薄膜を一層当たり65nmの厚みで形成する請求項1又は2に記載の圧電体素子の製造方法。
  5. 前記高分子有機化合物としてポリエチレングリコールを使用する請求項1に記載の圧電体素子の製造方法。
  6. 圧力室基板に設けられた圧力室に体積変化を生じさせることによって前記圧力室に設けられたノズルからインクを吐出可能に構成されたインクジェット式記録ヘッドにおいて、
    前記圧力室基板に絶縁膜を形成する工程と、
    前記絶縁膜が形成された前記圧力室基板を前記基板として、前記絶縁膜上に請求項1乃至請求項5のいずれか一の圧電体素子の製造方法により圧電体素子を形成する工程と、
    前記圧電体素子を前記圧力室に体積変化を生じさせることが可能な形状に整形する工程と、
    前記圧力室基板に前記圧力室を形成する工程と、を備えたことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法。
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