JP2000307163A - 圧電体薄膜素子、及びその製造方法 - Google Patents
圧電体薄膜素子、及びその製造方法Info
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Abstract
供。 【解決手段】 圧電体薄膜素子の製造を複数の熱処理工
程から行う。各工程の熱処理において、前段階までの熱
処理工程の温度を越えないようにする。圧電体薄膜を構
成する柱状結晶の粒界は、圧電体薄膜の厚さ方向に少な
くとも一つの不連続面を有する。
Description
その製造方法に関する。さらに、この発明は、この圧電
体素子を備えた機械アクチュエータに関する。さらに、
本発明は、圧電体薄膜を含む機能性膜の結晶構造の改良
に関する。
揮し、種々のアクチュエータとして機能するデバイスと
して知られている。圧電体薄膜素子は、基板上に共通電
極としての下電極を形成し、この上にパターン化された
圧電体薄膜を形成し、さらに各圧電体薄膜のパターンの
上に個別電極としての上電極を設けた構造を備える。す
なわち、圧電体薄膜が一対の電極間に存在する構成であ
る。上電極と下電極とに間に電圧を加えると、電圧が加
わったパターンの圧電体薄膜素子に歪みが生じ、この歪
みが機械的駆動源として利用される。
のに、インクジェット式プリンタ用ヘッドが存在する。
このインクジェット式プリンタヘッドにおいては、特定
の圧電体薄膜に歪みが発生すると、この圧電体薄膜に対
応したインク溜まりからインクが印刷対象に対して吐出
される。
タン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」と称することと
する。)に代表される圧電材料からなるものが良く知ら
れている。圧電体薄膜は、スパッタ法等の物理的気相成
長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、ゾルゲ
ル法等のスピンコート法等で成膜され、次いで、700
〜1000℃の高温熱処理を受けることにより形成され
る。
をアルカリ加熱水中で成長させる技術も提案されてい
る。また、圧電体薄膜の結晶構造を改良して圧電体特性
を高めるための試みが提案されている。圧電体薄膜の結
晶構造は、圧電体薄膜を成す複数の結晶粒と、この結晶
粒間に存在する結晶粒界から構成されている。
度は、結晶粒内の例えば酸素欠損等の欠陥による影響
と、粒界の状態による影響を主として受ける。後者の影
響が多いと考えられている。圧電体薄膜は下電極の影響
を少なからず受けて結晶成長をする。このとき、圧電体
薄膜を成す結晶は、柱状になることが一般的である。柱
状結晶における結晶粒界は、圧電体薄膜の下電極側から
上電極側にかけて、すなわち、圧電体薄膜の膜厚方向に
連続的に形成される。但し、このような結晶粒界は上電
極と下電極との間のリーク電流の通路(リークパス)に
なる可能性がある。このリークパスによって、圧電体素
子の耐電圧が低くなるという欠点がある。
粒をできるだけ大きくする等して、圧電体薄膜の粒界密
度を小さくするか、あるいは圧電体薄膜を単結晶化する
などの試みが、JAE-HYUN JOO,YOU-JIN LEE,SEUNG-KI JO
O,Feroelectrics,1997,Vol.196,pp.1-4においてなされ
ている。しかしながら、発明者は、圧電体薄膜内の結晶
粒界を数本以下あるいは圧電体を単結晶化することは、
実際問題としてかなり困難なことであるとの知見を得て
いる。
する結晶粒界を極力少なくした圧電体薄膜素子を提供す
ることである。本発明の他の目的は、耐電圧特性に優れ
た圧電体薄膜素子を提供することである。本発明のさら
に他の目的は、耐電圧特性を高めた新規な圧電体の結晶
構造を提供することである。本発明のさらに他の目的
は、この圧電体素子を備えたアクチュエータ、特にイン
クジェットプリンタヘッドを提供することである。本発
明のさらに他の目的は、これらを製造するための方法を
提供することである。
厚さ方向の一端から他端にかけて既述の結晶粒界が不連
続になるようにしたことを特徴とする。すなわち、結晶
粒界が連続していない結晶構造からなる複数の層が圧電
体薄膜の厚さ方向に存在する。各層同士の間で結晶粒界
が途切れている。
粒の粒径が隣接する層同士の間で異なるような構造を持
つ圧電体薄膜を提供することである。あるいは、隣接す
る層同士の結晶粒の結晶粒界が重ならないように各層の
結晶粒がシフトした構造を持つ圧電体薄膜を提供するこ
とである。
薄膜に実現することは、圧電体薄膜形成工程を熱処理の
ための態様が異なる複数の熱処理工程から構成させるこ
とがその一例である。特に、好適な形態は、圧電体薄膜
を形成するための一連の熱処理の工程において、第2の
段階以降の各段階において、前段階迄で得られた結晶粒
が再結晶化して、結果として連続した結晶粒界が生じな
いような熱処理の形態が採用されることである。たとえ
ば、前段階迄の熱処理温度を越えないようにすることで
ある。熱処理の過程で、既存の結晶粒が再結晶化する
と、圧電体薄膜の厚さ方向に連続した結晶となり、この
結晶の粒界も同方向に連続したものになる。それを防止
するために、複数の熱処理工程を実行しながら圧電体薄
膜を順次積層していく過程で、熱処理温度を各工程毎に
下げていく。また、熱処理の加熱速度を各工程毎に上げ
たり、あるいは下げたりなど変化させることである。熱
処理のための具体的な方法は、特に限定されない。RT
Aを利用する熱処理、あるいは、ファーネスアニール
(拡散炉)を利用する熱処理とを各工程ごとに使用する
ことができる。RTAによる熱処理のように、加熱速度
が高いものを利用すると、たとえば、結晶粒径は300
0−4000nmのような比較的大きなものになり、フ
ァーネスアニーリングのように加熱速度がRTAに比べ
て低いものを用いると、50−80nm程度の結晶粒径
をもつ圧電体結晶を得ることができる。また、加熱の際
の最高温度を調節することにより結晶粒径を調整でき
る。結晶粒径が異なる圧電体結晶を後述の図に示すよう
に複数の層から形成するような熱処理を多段階に実行す
ることにより、各層の結晶の結晶粒界が連続しないよう
にできる。
界が圧電体薄膜の厚さ方向に連続しないようできるの
で、圧電体薄膜の耐電圧特性を向上することができる。
て説明する。 (インクジェット式記録ヘッド)図1は、公知のインク
ジェット式記録ヘッドを側面から見た概略図である。同
ヘッド1は、ノズル板10、圧力室基板20、振動板3
0を備えて構成されている。圧力室基板20は、キャビ
ティ21、側壁22を備えている。キャビティ21は、
圧力室であってシリコン等の基板をエッチングすること
により形成されるものである。側壁22は、キャビティ
21間を仕切るよう構成されている。11はキャビティ
21内のインクを後述の圧電体素子の変形によって、紙
などの被印刷物に吐出するためのノズル孔である。
貼り合わせ可能に構成されている。振動板30には本発
明の圧電体素子40が設けられている。圧電体素子40
は、ペロブスカイト構造を持つ強誘電体の結晶であり、
振動板30上に所定の形状で形成されて構成されてい
る。
けられたキャビティ(圧力室)21の各々に対応する位
置にそのノズル穴11が配置されるよう、圧力室基板2
0に貼り合わせられている。ノズル板10を貼り合わせ
た圧力室基板20は、さらに筐体に填められて、インク
ジェット式記録ヘッドを構成している。
1および下部電極32を積層して構成され、圧電体素子
40は圧電体層41および上部電極42を積層して構成
されている。下部電極32、圧電体層41および上部電
極42によって圧電体素子が構成されアクチュエータと
して機能させることができる。
シリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素によ
り構成され、圧電体μ層の体積変化により変形し、キャ
ビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可能に
構成されている。
るための上部電極42と対になる電極であり、導電性を
有する材料、例えば、白金(Pt)層をそれぞれ交互に
配置した層から構成されている。
ている。この強誘電体の組成としては、ジルコニウム酸
チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、
((Pb,La)ZrO3:PLZT)またはマグネシ
ウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、
Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)のうちい
ずれかであることが好ましい。例えば、マグネシウムニ
オブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛であれば、0.1Pb
(Mg1/3Nb2/3)O3−0.9PbZr0.56T
i0.44O3という組成が好適である。なお、圧電体層
はあまりに厚くすると、層全体の厚みが厚くなり、高い
駆動電圧が必要となり、あまりに薄くすると、膜厚を均
一にできずエッチング後に分離された各圧電体素子の特
性がばらついたり、製造工数が多くなり、妥当なコスト
で製造できなくなったりする。したがって、圧電体層4
1の厚みは、0.1〜2.0μm程度が好ましい。
するための一方の電極となり、導電性を有する材料、例
えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。 (製造方法)次に、上記条件を満たす圧電体素子および
インクジェット式記録ヘッドの製造方法について図2乃
至図3を参照して説明する。圧電体薄膜を製造する方法
として、既に存在する公知の方法を広く適用できるが、
下記に示すいわゆるゾルーゲル法が好適である。本実施
形態では酢酸系溶媒からPZTを強誘電体とした圧電体
素子を製造する。
程:まずチタニウムテトライソプロポキシド及びペンタ
エトキシニオブをブトキシエタノールに溶解させ、これ
にジエタノールアミンを加え更に室温下で攪拌する。次
いで、酢酸鉛3水和物とジルコニウムアセチルアセトナ
ート及び酢酸マグネシウム4水和物とを加え、これを摂
氏80度に加温し攪拌する。30分程度攪拌した後に室
温まで自然冷却し、これにポリエチレングリコールを加
え室温下で5分程度攪拌する以上の工程によってアルコ
ール系溶媒が完成する。
コール系溶媒の製造と並行して、圧力室基板の基礎とな
るシリコン基板20に絶縁膜31を形成する。シリコン
基板20は、例えば200μm程度、絶縁膜31は、1
μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には、公知の
熱酸化法等を用いる。
で、絶縁膜31の上に下部電極32を形成する。下部電
極32は、例えば、白金層を400nmの膜厚に形成し
た。これら層の製造は、公知の直流スパッタ法等を用い
る。
で、上記アルコール系溶媒を用いて上部電極32上に圧
電体層41を形成する。圧電体層はゾルゲル法によって
製造される。本発明の工程は、既述のように複数の熱処
理工程を重ねることによる。RTA(Rapid thermal ann
ealing)−拡散炉(ファーネスアニール)−RTAのように、熱処
理の方法および温度を変えて行う。熱処理のための温度
は、段階が進んでも前段階までの熱処理温度を越えない
ようにする。
処理について説明する。前記アルコール系溶媒を一定の
厚みに塗布する。例えば、公知のスピンコート法を用い
る場合には、毎分500回転で30秒、毎分1500回
転で30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布す
る。塗布後、一定温度(例えば摂氏180度)で一定時
間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒で
あるブトキシエタノールが蒸発する。
の高温(例えば摂氏400度)で一定時間(30分間)
脱脂する。脱脂により金属に配位している有機の配位子
が熱分解され、金属が酸化されて金属酸化物となる。こ
の塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数、例えば5回繰
り返して5層のセラミックス層を積層する。これらの乾
燥や脱脂により、溶液中の金属アルコキシドが加水分解
や重縮合され金属−酸素−金属のネットワークが形成さ
れる。
は、さらに圧電体層の結晶化を促進し圧電体としての特
性を向上させるために、所定の雰囲気下で熱処理する。
例えば、酸素雰囲気下において、RATで、650度で
5分間、さらに900度で1分間加熱する。この熱処理
によりアモルファス状態の溶媒からペロブスカイト結晶
構造が形成される。この結晶化の際に、上記したような
条件に合致する結晶構造になる。上記処理により圧電体
層41が所定の厚み、例えば0.5μm程度で形成され
る。
粒径を有する、柱状の圧電体結晶が構成される。なお、
基板としては、圧電体結晶を作る際の種となるTiが形
成されていない(Pt/Ti/SiO2=(200/20/1000
nm))が使用される。ここで、種結晶が存在しないこと
も、本発明の圧電体膜の層構成を得る上で有効であると
いう可能性についての知見を、発明者は認識している。
−乾燥(180度10分)−脱脂(400度30分))
からなる工程を5回−RTA(摂氏650度5分−摂氏
900度1分)となる。この結果、3000nm乃至4
000nmの粒径を持つ圧電体の柱状結晶が得られる。
る。この段階の熱処理は、前記スピンコートののち直ち
に拡散炉(焼結摂氏800度10分、酸素雰囲気)にて
熱処理を行い、以上を繰り返し10回行い、0.5μm
程度の厚みの圧電体膜を形成する。ここで、明らかなよ
うにこの時の熱処理温度は、第1段階目の熱処理温度を
越えない値としている。この結果、結晶粒径が50nm
−80nmの圧電体薄膜が形成される。
の第1段階目の熱処理と異なるのはRTAによる加熱温
度第1段階目の摂氏900度を摂氏800度に変えた点
である。この第3段階目の熱処理温度は、第1段階目及
び第2段階目の熱処理の最高温度を越えない値となって
いる。熱処理の最高温度で結晶粒径が決まるとともに、
熱処理の最高温度を越えると結晶粒の再結晶化が起こ
る。この第3段階目の熱処理によって、100nm−5
00nmの粒径を持つ圧電体結晶層が得られる。熱処理
工程の最高温度が異なる点を除けば、他の工程の一切は
図3における1の層と同じである。
を実行することによって得られた、圧電体薄膜結晶の構
造を示す。第2段階目及び第3段階目の熱処理は、それ
ぞれ前段階の熱処理温度を越えないように管理されるこ
とにより、図3に示す構造が得られる。すなわち、各段
階の熱処理に応じて、圧電体薄膜が1乃至3の複数の層
から構成され、各層の結晶粒の結晶粒界は、圧電体薄膜
の厚さ方向に連続していない、圧電体薄膜の厚さ方向の
途中で途切れている等の特徴を有している。換言すれ
ば、圧電体薄膜の厚さ方向の途中に結晶粒界の不連続領
域が1以上存在する。各層の結晶粒の粒径が互いに異な
るか、あるいは各層の結晶粒が、結晶粒界が連続しない
ようにシフトされて配置されているかのような結晶構造
によって既述のように結晶粒界が連続しない構造が得ら
れる。
上に粒径が大きい層3を形成する場合は、全層におい
て、膜厚方向に対する結晶配向を同一にすることが好ま
しい。結晶配向を単一にすることで、結晶の連続性が保
たれ、圧電性能を維持できるからである。結晶配向が幾
つかの配向の混合である場合(例えば111と100或
いは111と001)は、粒径を徐々に小さくするよう
に構成すれば良い。この時配向が混合であっても、結晶
の膜厚方向での連続性を保ちつつ、粒界の不連続領域を
形成することができる。
明する。圧電体層41の上に、さらに電子ビーム蒸着
法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極42を形成
する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚
みは100nm程度にする。
グ工程を行う。この工程は、各層を形成後、振動板膜上
の積層構造である圧電体膜及び上部電極を、各キャビテ
ィ21に合わせた形状になるようマスクし、その周囲を
エッチングする。不要な部分の圧電体層41および上部
電極42を取り除く。エッチングのために、まずスピン
ナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジ
スト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状
に形成してから露光し現像して、成形されたレジストが
上部電極42上に形成される。これに通常用いるイオン
ミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、
不要な層構造部分を除去する。
電体素子40が形成された圧力室基板20の他方の面を
エッチングしてキャビティ21を形成する。例えば、異
方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチング等
の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、キャビ
ティ21空間のエッチングを行う。エッチングされずに
残された部分が側壁22になる。
行う。エッチング後のシリコン基板20にノズル板10
を、樹脂等を用いて貼り合わせる。このとき、各ノズル
穴11がキャビティ21各々の空間に配置されるよう位
置合せする。ノズル板10の貼り合わせられた圧力室基
板20を筐体に取り付け、インクジェット式記録ヘッド
1が完成する。なお、ノズル板10を貼り合わせる代わ
りに、ノズル板と圧力室基板を一体的にエッチングして
形成してもよい。ノズル穴はエッチングで設ける。以上
の工程により、圧電体薄膜素子が形成される。
処理で形成したが、これに限られることはない。また、
圧電体薄膜以外の、たとえば、メモリー用強誘電薄膜等
の機能性膜についても本発明を適用することが可能とな
る。
を形成するために、結晶粒径を変更するための方法につ
いて種々検討したところ次のような知見を得た。表1及
び表2に示すグラフはこの知見の根拠となった実験結果
を示すためのものである。
Zr/Ti比を変えると粒径も大きく変化する(No.
9)。なお、この比を変更すると結晶系も同時に変化す
る。この比が60/40を越えると菱面体晶系、この比
が45/55未満では正方晶系となる。
も粒径は変化するが、結晶化装置がRTAであると〜7
00nmと大きく(No.2)、拡散炉であると標準(10
0〜200nm)である(No.10)。RTAと拡散炉の相違
は、主として昇温レートの違いにあることは既述のとお
りである。RTAはおよそ毎秒摂氏250度であるのに
対して拡散炉はせいぜい毎分摂氏200度である。
いない基板上にホットプレートで脱脂した前駆体膜をR
TAで結晶化させた時に得られたもので、2200nm
である(No.8)。最も小さな結晶は、脱脂工程を省略
し、拡散炉内において、脱脂と結晶化とを同時に行った
時に得られた80nmである。
よそ100〜300nmの範囲で安定している。すなわ
ち、粒径制御は結構難しい。逆に既述の条件を適宜組み
合わせることによって、結晶粒径を調整することが可能
となる。
は30〜60nmの範囲であって、PZT粒径は100
〜300nmとこれを大きく上回る。白金とPZTとの
間に相関関係、すなわち白金の粒径が大きくなるとPZ
Tの粒径が大きくなる、が認められるが決定的なもので
はない。
なわち、脱脂後の前駆体膜中に存在する有機物、または
結晶化する際の膜中に存在する有機物は、結晶化を規制
し結晶化速度の低下を招くおそれがある。この為、結晶
は自由成長ではなく、基盤(白金)に束縛された111
配向になり易い。結晶核の形成が多くなるため、小粒径
に成りやすい。
PbOの001配向はPZTの100配向の基となる。
また、PbOの結晶成長開始温度はPZTより低く、自
由成長し易いため過剰鉛を含む膜の粒径は大きくなり易
い。但し、有機物を多く含む前駆体膜は既述の理由から
大きな粒には成長しない。
これが種結晶として機能することは本出願人の出願に係
わる特願平9−72209により知られたところであ
る。隣り合う核(種)から成長して互いに接する境界が
結晶粒界となる。層毎に種結晶が形成される密度を変え
ることにより結晶粒径を各層毎に変えることができ、こ
れにより、結晶粒界が連続しないようにすることができ
る。 本発明によれば、結晶粒径を制御する既述の要素
を適宜組み合わせることによりそれが可能となる。
圧電体薄膜結晶の結晶粒界を連続しないような構成を実
現したことにより、圧電体素子の耐電圧特性を向上する
ことが可能となる。
図。
Claims (20)
- 【請求項1】 圧電体薄膜素子において、圧電体薄膜を
構成する結晶間の結晶粒界が、当該薄膜の膜厚方向で不
連続になるように形成されてなることを特徴とする圧電
体薄膜素子。 - 【請求項2】 少なくとも1カ所の不連続域が存在する
ことを特徴とする請求項1記載の圧電体薄膜素子。 - 【請求項3】 前記結晶粒界が前記圧電体薄膜の厚さ方
向の一端から他端にかけて連続的に形成されることな
く、途中で途切れているように形成されてなる請求項1
記載の圧電体薄膜素子。 - 【請求項4】 圧電体薄膜素子において、圧電体薄膜を
構成する結晶が、当該圧電体薄膜の膜厚方向に柱状に構
成されてなり、かつ、この結晶の結晶粒界が、当該薄膜
の膜厚方向に不連続になるように構成されてなることを
特徴とする圧電体薄膜素子。 - 【請求項5】 一対の電極間に圧電体薄膜を配置してな
る圧電体薄膜素子において、前記圧電体薄膜は柱状結晶
から構成され、この柱状結晶の長さ方向に対して少なく
とも1カ所の粒界不連続域が存在することを特徴とする
圧電体薄膜素子。 - 【請求項6】 一対の電極間に圧電体薄膜を配置してな
る構造において、前記圧電体薄膜がその厚さ方向に複数
層の結晶構造を備えており、隣接する層にある結晶の粒
径が互いに異なるように形成されている構造。 - 【請求項7】 一つの電極間に圧電体薄膜を配置してな
る構造において、前記圧電体薄膜がその厚さ方向に複数
の層からなる結晶を含み、各層の結晶構造にある結晶粒
界が隣接する層の結晶粒界に一致しないように、隣接す
る結晶粒が互いにシフトしている、前記圧電体薄膜中に
存在する構造。 - 【請求項8】 請求項6又は7記載の構造を圧電体薄膜
に備えた圧電体薄膜を有する素子。 - 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれか1項記載の圧
電体薄膜素子を機械的駆動源として備えるアクチュエー
タ。 - 【請求項10】 請求項9記載のアクチュエータをイン
ク吐出用駆動源として備えるインクジェット式記録ヘッ
ド。 - 【請求項11】 圧電体薄膜素子の製造方法において、
圧電体薄膜形成工程を、熱処理のための態様が異なる複
数の熱処理工程から構成させてなる圧電体薄膜素子の製
造方法。 - 【請求項12】 前記圧電体薄膜形成工程の第2の段階
以降の各段階において、前段階の熱処理温度を越えない
ようにした請求項11記載の方法。 - 【請求項13】 前記圧電体薄膜形成工程が熱処理とし
てRTAを利用する段階と、熱処理としてファーネスア
ニールを利用する段階との組合せからなる請求項12記
載の製造方法。 - 【請求項14】 圧電体薄膜またはこの薄膜を備えた圧
電体薄膜素子を製造する方法において、この圧電体薄膜
を複数の熱処理の工程から製造するとともに、各熱処理
工程を、その熱処理以前の工程において形成された結晶
粒が再結晶化しない条件で実行させるようにした方法。 - 【請求項15】 複数の熱処理過程を備えることによっ
て形成される機能性膜の構造において、当該構造を複数
の層からなる結晶粒の組合せから構成し、隣接する各層
結晶粒の粒界が、結晶粒の方向に連続しないように形成
されてなる機能性膜のための結晶構造。 - 【請求項16】 隣接する層の結晶粒同士の間に、粒界
が不連続となる領域が形成されてなる請求項15記載の
結晶構造。 - 【請求項17】 請求項15又は16記載の結晶構造を
備えた機能性膜。 - 【請求項18】 圧電体からなる薄膜層を備えた機能性
素子において、前記圧電体薄膜が複数の層からなる結晶
構造を有してなり、含有(Zr/Ti)比が異なる層同
士の結晶粒径が互いに異なってなる前記素子。 - 【請求項19】 圧電体からなる薄膜層を備えた機能性
素子において、前記圧電体薄膜が複数の層からなる結晶
構造を有してなり、化学量論比を上回る鉛を有する層の
結晶粒径がそれを越えない層の結晶粒径に比較して大き
いものである前記素子。 - 【請求項20】 圧電体からなる薄膜層を備えた機能性
素子において、前記圧電体薄膜が複数の層からなる結晶
構造を有してなり、含有有機物量が異なる層同士の結晶
粒径が互いに異なってなる前記素子。
Priority Applications (1)
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