JP3946587B2 - 樹脂粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一粒子中に樹脂種の異なる二つの部分を有する粒子として、乳化重合法により得られるいわゆるコアシェル型の粒子はよく知られている。
また、懸濁重合により製造されるアクリル樹脂粒子は、例えば化粧品のすべり性付与剤、電子写真用トナー、担体、塗料、インキ、樹脂改質剤等幅広い分野で使用される。これらに用いられるアクリル樹脂粒子は真球状の単一組成からなるものである。
【0003】
特開平10−7704号公報、特開平10−60011号公報、特開平11−140139号公報では、架橋性単量体を含む重合性ビニル単量体に特定のポリオレフィン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂あるいはスチレン系エラストマー等の樹脂を溶解して懸濁重合することにより、多孔質状あるいは表面に皺状の凹凸を有する樹脂粒子が得られている。これらの技術は、ポリオレフィン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂あるいはスチレン系エラストマー等の線状高分子が、重合性ビニル単量体から生成する架橋共重合体に対して相溶性が低いため、重合性ビニル単量体の重合の進行に伴って析出することを利用している。
【0004】
一方、樹脂種の異なる2つの部分が局所的に存在する樹脂粒子は、例えば、これらの粒子内の界面による光の散乱及び反射効果を有する従来の単一粒子にはない性質の粒子が得られる。また、親水性と疎水性のような異なる表面特性を有する粒子が得られる。これらの性質を利用して、診断薬用粒子、医療用基材、生体適合性材料、歯科用材料、化粧用基材、防汚染塗料、防曇材、帯電防止剤、導電性接着剤、導電性封止材、磁性粒子、記録媒体、クロマトグラフィー用充填材等への応用が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法においては一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子を得ることは容易でなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂を、リン酸エステル類を0.01〜3重量%と架橋性ビニル単量体を2〜30重量%含む(メタ)アクリル系単量体に溶解し、得られた溶液を、水性媒体の存在下で、懸濁重合させることで、一粒子中でポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂からなる部分が、(メタ)アクリル系単量体由来の架橋樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法で得られる樹脂粒子は、一粒子中にポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂(以下、可溶性樹脂と称する)からなる部分と、(メタ)アクリル系単量体由来の架橋樹脂からなる部分が偏在していさえすればその形状は特に限定されない。例えば、球状、断面楕円形状のような略球状、棒状、鱗片状等の種々の形状を取りえる。また、粒子の最大長と最小長の比が1:1〜1:3であることが好ましい。特に、球状、断面楕円形状のような略球状が好ましい。樹脂粒子の大きさは、それを使用する用途により異なるが、体積平均粒径1〜500μm程度であることが好ましい。ここで、体積平均粒径は、コールターカウンター法により測定した値であり、球相当直径を示した値である。
【0008】
本発明では、個々の樹脂粒子中に可溶性樹脂からなる相(B)が、(メタ)アクリル系単量体由来の架橋樹脂からなる重合体相(A)に偏在している。ここで偏在とは、1つのA相とn個のB相がn個の界面を介して存在している場合、n個のA相とn−1個のB相がn−1個の界面を介して交互に存在している場合及びそれらの組合せを意味し、より具体的には、AとB相の2層からなる場合、1つの板状のB相を介して2層のA相からなる場合、1つのA部分中に複数のB相が粒状に分散する場合等が挙げられる(AとBは逆であってもよい)。特に、典型的な樹脂粒子として、図1(a)や(b)に示すようにAとB相が偏在した樹脂粒子が挙げられる。上記界面は、光学顕微鏡等による透過光の観察により明確に観察できる。
【0009】
図1(a)は、樹脂粒子中に(メタ)アクリル系単量体由来の架橋樹脂からなるB部分が凸レンズ状に存在する場合であり、図1(b)は、樹脂粒子中にB部分が板状のドメイン構造で存在する場合である。このような構造をもつ本発明の樹脂粒子は、光拡散性や光線透過性等の光学的性質においては、外観である球状粒子の性質と樹脂粒子中のB相の形状に由来する凸レンズ又は板状粒子の性質を合わせもっている。
なお、本発明で言うところのレンズ状とは1つの曲面及び1つの平面から構成されるもの及び2つの曲面から構成される凸レンズ様の形態を有することを指す。また、板状とは2つの平面から構成されるものを指す。この板状には、両端が中心部に比べて厚い又は薄い形状、平面状に凹凸を有する形状等が含まれる。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0010】
本発明において、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂(可溶性樹脂)には、アクリル系単量体由来の重合体相(A)と、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂からなる相(B)が相分離構造をとる樹脂を使用することが必要である。重合体相(A)と相(B)との相分離しやすさ(相分離性)は、ポリマーブレンド −相溶性と界面−(株式会社シーエムシー 発行 1981年12月8日 第1刷発行)、また各相を構成する重合体の溶解度パラメータ(SP値)等から推察することもできる。このSP値は高分子データハンドブック−基礎編−(株式会社培風館 発行 昭和61年1月30日初版発行)等に記載されている。
【0011】
従って、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂は、アクリル系単量体に溶解するが、その重合体相(A)とは相溶性が低い樹脂を用いるのがよい。
まず、ポリエステル系樹脂としては、脂肪族多価アルコールと多塩基酸を反応させて得られるポリエステル系樹脂、芳香族多価アルコールと多塩基酸を反応させて得られるポリエステル系樹脂等の樹脂を使用することができる。具体的なポリエステル系樹脂として、東洋紡社製バイロンシリーズを好適に用いることができる。
【0012】
また、ポリスチレン系樹脂としてはスチレンを主成分(少なくとも50重量%以上)とする単量体を重合又は共重合させることにより得られるものを使用できる。スチレン以外の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。これら樹脂は架橋していないものである。また、重合方法は、特に限定されず、懸濁重合法、塊状重合等が挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂は、20℃以上のガラス転移温度を有し、常温で固体であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満の場合、最終的に得られる樹脂粒子の形状安定性、流動性等が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0013】
本発明で用いうる(メタ)アクリル系単量体は、上記可溶性樹脂を溶解しうる単量体である。なお、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。
例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フエニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フエニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2ヒドロキシブチル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、
アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0014】
これらの重合性単官能単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体を好ましく用いることができる。また、必要に応じて(メタ)アクリル系単量体と共重合する他の単量体を用いてもよい。
また、他の単量体として、マレイン酸、フマール酸等の親水性官能基を有するビニル系単量体、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類等をその他の単量体として併用してもよい。
【0015】
本発明の方法で用いられる架橋性ビニル単量体としては、1分子中に2つ以上のビニル基を有する多官能ビニル単量体、アリル基を有する重合性ビニル単量体、加水分解性アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体が挙げられる。この内、アリル基を有する重合性ビニル単量体、加水分解性アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体が好ましい。
【0016】
メタクリル酸アリル等のアリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、加水分解性アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体としては、例えば、(メタクリロキシ)ジメチルエトキシシラン、γ-メタクリロキシトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等のメタクリロイル基を有するものを用いるのがよい。これらメタクリロイル基を有する重合性ビニル単量体は(メタ)アクリル酸エステル類との反応性が高く、本発明の樹脂粒子が得られやすいため好適に用いることができる。架橋性ビニル単量体の添加により、例えば、アルコール等の溶剤に対する耐溶剤性を向上することが可能である。
なお、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコール、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の1分子中に2つ以上のビニル基を有する単量体は、表面に凹凸のある粒子又は多孔質状の粒子が得られやすいため好ましくない。
【0017】
また、メタクリル酸メチルを主成分とした単量体を用い、(B)相としてポリエステル系樹脂を用いた場合には、ポリエステル系樹脂に由来する水酸基又はカルボキシル基が局在化した粒子が得られる。また、メタクリル酸メチルを主成分とした単量体を用い、可溶性樹脂としてポリスチレン樹脂を用いた場合には、重合体相(A)と(B)相との屈折率差の大きさから、大きな光の散乱、反射特性を付与することができる。
上記アクリル系重合体相を構成する単量体は、アクリル系単量体53〜98重量%、架橋性単量体2〜30重量%、その他単量体0〜45重量%からなる。
【0018】
架橋性ビニル単量体の使用割合が、30重量%を超える場合には、相分離が過度に進行し、全体として球状の粒子が得られず、粒子表面に凹凸又は窪みが生じるようになり、また場合によっては多孔質状の粒子が得られるので好ましくない。2重量%未満の使用量では得られる樹脂粒子の溶剤に対する耐溶剤性が充分でなく好ましくない。好ましい架橋性ビニル単量体の使用割合は5〜20重量%である。
【0019】
可溶性樹脂の使用割合は、架橋性ビニル単量体、アクリル系単量体及び可溶性樹脂の合計量に対して5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは7〜25重量%である。50重量%を超える量においては、粘度の上昇により可溶性樹脂をアクリル系単量体に溶解して用いることが実質的に困難となるため好ましくない。5重量%より少ない量においては、目的とするドメイン構造が得られないため好ましくない。
【0020】
樹脂粒子中の可溶性樹脂(B)相のドメイン構造は、重合体相(A)を構成する単量体の種類、(B)相として用いる可溶性樹脂の種類及び使用量により調製が可能である。例えば、可溶性樹脂(B)相としてポリエステル系樹脂を15〜20重量%程度用いることにより容易に図1(b)の構造に分類される樹脂粒子を得ることができ、ポリエステル系樹脂を5〜10重量%用いることにより、図1(a)の構造に分類される樹脂粒子を得ることができる。
可溶性樹脂(B)相としてポリスチレン系樹脂を用いる場合には、ポリスチレン系樹脂を5〜10重量%程度用い、アクリル系重合体相(A)を構成する単量体に、親水性官能基を有するビニル系単量体を1〜30重量%添加し、水系懸濁重合することにより、容易に図1(a)の構造に分類される構造を有する樹脂粒子を得ることができる。また、親水性官能基を有するビニル系単量体を添加しない場合には、図1(b)の構造に分類される樹脂粒子を得ることができる。
【0021】
本発明では、油相にリン酸エステル類を添加し溶解することで、分散液滴内で生成する架橋アクリル樹脂と可溶性樹脂との相分離を促進し、本発明の形状の樹脂粒子を再現性よく製造できる。
このようなリン酸エステル類の例として、特には限定されないが、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(2)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(4)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(6)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエーテル(4)ノニルフェニルエーテルリン酸等が挙げられる。この内、効果が特に顕著なものとしてラウリルリン酸が挙げられる。
【0022】
リン酸エステルの添加量は単官能及び多官能重合性ビニルモノマーの合計量に対し0.01〜3重量%である。添加量が3重量%を超えると、相分離はするが相分離後のポリマーの形状が(B)相が凸レンズ状又は板状のドメイン構造で存在し難いため好ましくない。また、添加量が0.01重量%を下回ると、相分離の促進効果が充分ではなく、従って再現性よく本発明の樹脂粒子を得られ難いため好ましくない。
【0023】
本発明では、懸濁重合時に、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、通常懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が利用できる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。この中でも、2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が目的とする樹脂粒子が得られやすいという点から好ましい。
これらの重合開始剤の使用割合は、重合体相(A)を構成する単量体((メタ)アクリル系単量体、架橋性ビニル単量体及びその他の単量体)の合計量に対して、0.01〜10重量%、特に、0.1〜5.0重量%が更に好ましい。
【0024】
本発明の方法では、水系懸濁重合の際に、懸濁粒子の安定化を図るために、重合体相(A)及び(B)相の合計量100重量部に対して、通常100〜1000重量部程度(より好ましくは、110〜500重量部)の水を分散媒体として用いるとともに、水相に分散安定剤を添加することが好ましい。
分散安定剤としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。これらの中でも、目的とする樹脂粒子及び樹脂粒子凝集体を安定して得ることができるという点において、第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、あるいはコロイダルシリカが特に好ましい。
また、本発明の方法では、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
【0026】
これら分散安定剤や界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒子径及び樹脂粒子凝集体の大きさならびに重合時の分散安定性等を考慮して、それらの選択や組み合わせ、使用量等を適宜調整して使用される。一例を挙げれば、分散安定剤の単量体に対する添加量は 0.5〜15重量%で程度であり、界面活性剤の添加量は水に対し0.001〜0.1 重量%程度である。
また、水相中での単量体の重合を抑制し、液滴内部での相分離を促進し、本発明の樹脂粒子を得るために水系分散媒体中に0.01〜1重量%程度の水溶性重合禁止剤を用いてもよい。水溶性重合禁止剤としては特に限定されないが、例えば亜硝酸塩類、ハイドロキノン等を挙げることができる。
【0027】
以上のように調整された分散媒体に、可溶性樹脂(B)相を溶解した重合体相(A)を構成する単量体を分散させるには、プロペラ翼等の撹拌力によってモノマー滴に分散する方法やローターとステーターから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサー、超音波分散機等を用いることで行うことができる。
樹脂粒子の平均最大粒径は、単量体混合物と水との混合条件や、分散安定剤等の添加量及び攪拌条件、分散条件等により調整可能である。この平均最大粒径は用途に応じて適宜調整される。
なお、樹脂粒子の径を揃えるには、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機を用いる方法等を用いればよい。
【0028】
本発明の方法では、上記のようにして、(B)相を溶解した重合体相(A)を構成する単量体が球状の液滴として分散された分散媒体を、必要に応じて加熱することにより重合を行なうことができる。重合温度は、通常30〜100℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃である。重合温度を保持しながら重合させる時間としては一般的に0.1〜10時間程度である。
重合中は、単量体滴の浮上や重合後の樹脂粒子の沈降が防止される程度の緩い撹拌を行うのが好ましい。
【0029】
重合終了後、所望により、分散安定剤を塩酸等により溶解し、樹脂粒子を吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作により分散媒から樹脂粒子の含水ケーキを分離することができる。含水ケーキを水洗し、乾燥することで目的とする樹脂粒子を得ることができる。
本発明の方法で得られる樹脂粒子は、樹脂種の異なる2つの部分が局所的に存在する樹脂粒子であり、例えば、これらの粒子内の界面による光の散乱及び反射効果を有する従来の単一粒子にはない性質の粒子である。また、親水性と疎水性のような異なる表面特性を有する粒子である。これらの性質を利用して、診断薬用粒子、医療用基材、生体適合性材料、歯科用材料、化粧用基材、防汚染塗料、防曇材、帯電防止剤、導電性接着剤、導電性封止材、磁性粒子、記録媒体、クロマトグラフィー用充填材等へ好適に使用することができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は重量基準である。また、平均粒子径はベックマンコールター社製:コールターマルチサイザーIIにより測定し、粒子の形状及び構造は光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により観察した。
実施例1
水200gに対し、分散安定剤として複分解法により得られたピロリン酸マグネシウム5gを含ませた分散媒を500mlのセパラブルフラスコに加え、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.01g、亜硝酸ナトリウム0.02gを分散媒中の水に溶解させた。
【0031】
これとは別に、メチルメタクリレート72g、メタクリル酸アリル8g、可溶性樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡社製 商品名 バイロン200)20g、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5g、ラウリルリン酸0.1gを均一に混合溶解した。得られた組成物を上記分散媒に加え混合した。
混合物をホモミキサー(IKA社製 ULTRA TURRAX T−25)にて8000rpmで微分散した。次いで、フラスコに撹拌翼、温度計及び還流冷却器を取り付け、窒素パージ後、60℃の水浴中に設置した、撹拌速度200rpmで10時間加熱を継続し、重合反応を行った。
【0032】
重合反応が終了したことを確認した後、反応液を冷却し、スラリーのpHが2程度になるまで塩酸を添加して分散安定剤を分解した。濾紙を用いたブフナー漏斗で樹脂粒子を吸引濾過し、1.2リットルのイオン交換水で洗浄することで、分散安定剤の分解物を除去し、60℃のオーブン中で1夜乾燥し目的の樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が12μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子内部にポリエステルが板状に存在した略球状微粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図2に示す。
【0033】
実施例2
メチルメタクリレートを81g、メタクリル酸アリルを9g、可溶性樹脂としてポリエステル樹脂(商品名 バイロン200 東洋紡社製)を10g使用すること以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が12μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、レンズ状のドメイン構造を有する球状粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図3に示す。
【0034】
実施例3
亜硝酸ナトリウムを使用せず、可溶性樹脂としてポリエステル樹脂の代わりに懸濁重合法で製造したポリスチレン樹脂(重量平均分子量 約30万)10gを使用すること以外は実施例2と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察し、電子顕微鏡写真にて形状の観察を行った。
得られた粒子は、平均粒子径が10μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、板状のドメインが存在した球状粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図4に示す。
【0035】
実施例4
メチルメタクリレートを61g、メタクリル酸アリルを10g使用し、更にメタクリル酸2−ヒドロキシブチルを20g使用すること以外は実施例3と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が10μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、レンズ状のドメインが存在した球状の微粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図5に示す。
【0036】
実施例5
メチルメタクリレートを81g使用し、メタクリル酸アリルの代わりにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを9g使用すること以外は実施例3と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が10μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、レンズ状及び板状のドメインが存在した球状の微粒子の混合体であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図6に示す。
【0037】
比較例1
ラウリル硫酸ナトリウムを0.04g、メチルメタクリレートを90g使用し、メタクリル酸アリルを使用しないこと以外は実施例3と同様にして樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子は非架橋であった。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が9.5μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、レンズ状のドメインが存在した球状の微粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図7に示す。
【0038】
比較例2
メタクリル酸アリルに換えγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用い、ラウリルリン酸の使用量を5gにしたこと以外は実施例1と同様の条件で樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子は、平均粒子径が10μmであり、光学顕微鏡の観察により、界面が観察されるものの、アクリル系重合体相が略球状に存在し、ポリエステル相がその表面を被覆し、粒子表面に一部アクリル系重合体相が露出した略コアシェル状の粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図8に示す。
【0039】
比較例3
メタクリル酸アリルの使用量を50gとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子は平均粒子径が10μmであり、光学顕微鏡の観察により、表面に多数の凹凸を有する粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図9に示す。
【0040】
(耐溶剤性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3の樹脂粒子をそれぞれ1g、エタノール10gを容量20mlのガラス瓶に計り取り、充分に振り混ぜる。ガラス瓶を50℃の恒温槽に浸漬し、24時間静置後に、再び充分に振り混ぜる。このとき、樹脂粒子の分散状態を顕微鏡で観察し、凝集が見られないものを○、凝集あるいは一部溶解が認められるものを×とした。表1に結果を示す。
【0041】
【表1】
表1から、比較例1の非架橋の樹脂粒子は、耐溶剤性が劣り、エタノール中で凝集したが、実施例1〜5及び比較例2と3の架橋した樹脂粒子は充分な耐溶剤性を有していた。
【0042】
(樹脂粒子の光学特性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた樹脂粒子及び市販の球状ポリメタクリル酸メチル粒子(積水化成品工業社製 商品名MB−8 粒子径8.0μm)の反射光特性を次のようにして測定した。白黒隠蔽性試験紙(東洋精機製)に両面テープを空気がかまないように貼り付ける。その片面の粘着面側に化粧用パフにて粉体を均一に伸ばし塗布する。余分な樹脂粒子は筆を使用して充分はき落とす。これを試料として三次元光度計(村上色彩研究所製、ゴニオフォトメーターGP−200)にて、入射角−45°の際の反射角0〜90°における反射光度分布を測定する。
【0043】
反射光の拡散性の大小の指標としては、反射角0°における光度(ただし正反射方向におけるピーク光度を100とした)の値を測定し、この値が100に近いほど、すなわち反射光の光度が正反射方向においても拡散反射方向においても変化がないものほど、反射光の拡散性が大きいと定義した。なお、樹脂粒子の反射光特性評価の模式図を図9に示す。表2に結果を示す。
【0044】
【表2】
上記表2から、実施例1〜5及び比較例1のレンズ状及び/又は板状のドメインが存在する樹脂粒子のほうが、存在しないものより反射光特性が優れていることがわかった。
更に、表1と2から、耐溶剤性と反射光特性が優れているのは実施例1〜5の樹脂粒子のみであった。
【0045】
【発明の効果】
アクリル系単量体に可溶性樹脂を溶解し、それにリン酸エステル類を含みかつアクリル系単量体中の架橋性ビニル単量体を加え、アクリル系単量体を懸濁重合させることにより、一粒子中に性質の異なる二つの部分が偏在した樹脂粒子を得ることができる。得られた樹脂粒子は、樹脂の改質剤あるいは光拡散剤等とこれまでの球状粒子にはない特性を有し、塗料、粘着剤、構造材、機能性材料、充填剤等の改質剤等として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法で得られる樹脂粒子の概略説明図である。
【図2】実施例1の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図3】実施例2の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図4】実施例3の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図5】実施例4の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図6】実施例5の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図7】比較例1の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図8】比較例2の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図9】比較例3の樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図10】樹脂粒子の反射光特性評価の模式図である。
Claims (3)
- ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂を、リン酸エステル類を0.01〜3重量%と架橋性ビニル単量体を2〜30重量%含む(メタ)アクリル系単量体に溶解し、得られた溶液を、水性媒体の存在下で、懸濁重合させることで、一粒子中でポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂からなる部分が、(メタ)アクリル系単量体由来の架橋樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
- 架橋性ビニル単量体が、アリル基及び加水分解性アルコキシシリル基を有するビニル単量体である請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
- ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂が、該樹脂と(メタ)アクリル系単量体と架橋性ビニル単量体との合計量に対し5〜50重量%の割合で使用される請求項1又は2に記載の樹脂粒子の製造方法。
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