JP3944257B2 - 肝実質細胞増殖因子産生増加剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は肝実質細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)産生増加剤、さらに詳しくは、一般式(1)
【化2】
Figure 0003944257
[式中、Aは低級アルキレン基、Rはシクロアルキル基、カルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は1重結合または2重結合を示す]
で示されるカルボスチリル誘導体またはその塩、好ましくは、6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルまたはその塩を有効成分とする肝実質細胞増殖因子産生増加剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
肝細胞は、肝障害が起こると増殖できる最終分化細胞であり、既に、1950年代には、肝細胞の増殖を促進し、肝再生を駆動する液性因子の存在が示唆されていた。肝実質細胞増殖因子(HGF)は、1984年中村らによって70%部分肝切除ラット血清中に見出された因子である(Biochem. Biophys. Res. Commun. 122:1450−1459,1984参照)。ヒトのHGFについては、合田らにより、劇症肝炎患者の血清から分離精製されている(E.Gohda et al., Exp. Cell Res., 166,栄39−156,1986;H.Nakayama et al., Biomed. Res., 6,231−237,1985;特願昭61−166495号等参照)。
かかるHGFは、肝細胞の増殖を著明に促進する活性を有し、血中におけるその活性は、劇症肝炎の病態、特に昏睡度の変動に密接に関連して変動し、回復期には低下することが知られている。その後、HGFの研究において、HGFが前記の肝細胞の増殖作用以外に多様な生物活性を有することが知られている。多様な生物活性としては、1)腎尿細管細胞、ヒト表皮ケラチノサイト、ヒト表皮メラノサイト、マウスケラチノサイト(PAM212),血管内皮細胞およびミンク肺上皮細胞(MvlLu)等の細胞の増殖を促進;2)マウスメラノーマ(B6/F1)、ヒト偏平上皮癌(KB)、ヒト肝癌(HepG2)およびラット肝癌(FaO細胞)等の癌細胞の増殖を抑制;3)ヒト表皮ケラチノサイト、イヌ腎上皮細胞(MDCK)、ヒト肝癌(HepG2)、マウスケラチノサイト(PAM212)、ヒト肺上皮細胞(Lu99)およびヒト表皮癌(A431)等の種々の細胞の運動性を促進;4)イヌ腎上皮細胞(MDCK)において管腔形成等が知られている(中村、日本臨床、50巻8号、226−233、1992;中村、日本臨床、51巻2号、183−191、1993等参照)。
HGFは、一次構造が明らかにされており、遺伝子組換え技術等の技術で製造されているが、製造、精製工程は、極めて厖大かつ複雑であり、HGFの入手は容易でない。一方、生体内でのHGFの産生を促進できれば、HGFの前記生物活性に基づいて種々の疾病の治療に有効であるが、これまで、そのようなHGFの産生を増加させる薬剤は殆ど知られていない。しかして、HGFの産生を増加させる薬剤の開発が望まれている。
なお、本発明で用いる前記一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体またはその塩は、特公昭63−20235号に開示されており、その詳細な製造法のほか、これらの化合物が抗血栓剤、脳循環改善剤、消炎剤、抗潰瘍剤、降圧剤、抗喘息剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤などとして有用なことが記載されている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、HGFの産生を増加させる薬物を見い出すべく、種々研究を重ねるうちに、前記一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体、なかんずく、6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルまたはその塩がHGFの産生を増加する作用を有し、HGF産生増加剤として有用であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明のカルボスチリル誘導体(1)を有効成分とするHGF産生増加剤は、HGFを増加させることにより、HGF生物活性が関連する種々の疾患、例えば、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変および劇症肝炎等の各種肝疾患の治療薬、肝切除等の肝手術後の肝再生促進薬、腎不全等の腎疾患治療薬、抗癌剤、創傷治療薬およびDCA(derectional coronary atherectomy)等施行後の血管内皮細胞増殖促進剤などとして有用である。
【0004】
【発明の実施の形態】
前記一般式(1)における低級アルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、2−メチル−トリメチレンなどの炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、とくにテトラメチレンが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられ、とくにシクロヘキシルが好ましい。
【0005】
本発明のHGF産生増加剤は、前記一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体またはその塩を一般的な医薬製剤の形態に調製される。そのような製剤は通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤あるいは賦形剤を用いて調製される。この医薬製剤としては各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、各種経口用液剤(溶液剤、乳剤、懸濁剤)等の経口剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等の非経口剤などが挙げられる。
【0006】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸などの賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラミック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤、白糖、ステアリン、カオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホン酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などが例示できる。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーティング剤あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0007】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などが例示できる。坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを挙げることができる。
【0008】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを挙げることができる。
【0009】
注射剤としては、液剤、乳剤および懸濁剤の形で用いられ、それらは殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましい。これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形するのに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用でき、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類などを挙げることができる。なお、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを該治療剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤などを、更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品を該治療剤中に含有せしめてもよい。
【0010】
本発明のHGF産生増加剤中に含有されるべきカルボスチリル誘導体(I)またはその塩の量はとくに限定されず広範囲に選択されるが、通常全組成物中1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0011】
本発明のHGF産生増加剤の投与方法にはとくに制限はなく、各種製剤形態、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤の場合には経口投与される。また注射剤の場合には単独であるいはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、さらには必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。
【0012】
本発明のHGF産生増加剤の投与量は用法、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択されるが、通常カルボスチリル誘導体(I)またはその塩の量が1日当り体重1kg当り0.6〜50mgとするのがよい。また、投与単位形態中に有効成分を10〜1000mg含有せしめるのがよい。とくに、有効成分のカルボスチリル誘導体(I)が6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルまたはその塩であるときは、大人(50kg)で100〜400mg/日の用量で1〜数回に分けて投与するのがよく、また投与単位形態中に有効成分を50〜100mg含有せしめるのがよい。
【0013】
【実施例】
つぎに製剤例および薬理実験例を挙げて本発明のHGF産生増加剤をさらに具体的に説明する。
【0014】
製剤例1
6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−
テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−
ジヒドロカルボスチリル 150g
アビセル(商品名,旭化成(株)製) 40g
コーンスターチ 30g
ステアリン酸マグネシウム 2g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10g
ポリエチレングリコール−6000 3g
ヒマシ油 40g
メタノール 40g
本発明の活性化合物、アビセル、コーンスターチおよびステアリン酸マグネシウムを混合研磨後、糖衣R10mmのキネで打錠する。得られた錠剤をヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール−6000、ヒマシ油およびメタノールからなるフイルムコーティング剤で被覆を行いフイルムコーティング錠を製造する。
【0015】
製剤例2
6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−
テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−
ジヒドロカルボスチリル 150g
クエン酸 1.0g
ラクトース 33.5g
リン酸二カルシウム 70.0g
プルロニックF−68 30.0g
ラウリル硫酸ナトリウム 15.0g
ポリビニルピロリドン 15.0g
ポリエチレングリコール
(カルボワックス1500) 4.5g
ポリエチレングリコール
(カルボワックス6000) 45.0g
コーンスターチ 30.0g
乾燥ラウリル硫酸ナトリウム 3.0g
乾燥ステアリン酸マグネシウム 3.0g
エタノール 適 量
本発明の活性化合物、クエン酸、ラクトース、リン酸二カルシウム、プルロニックF−68およびラウリル硫酸ナトリウムを混合する。
上記混合物をNo.60スクリーンでふるい、ポリビニルピロリドン、カルボワックス1500および6000を含むアルコール性溶液で湿式粒状化する。必要に応じてアルコールを添加して粉末をペースト状塊にする。コーンスターチを添加し、均一な粒子が形成されるまで混合を続ける。No.10スクリーンを通過させ、トレイに入れ100℃のオープンで12〜14時間乾燥する。乾燥粒子をNo.16スクリーンでふるい、乾燥ラウリル硫酸ナトリウムおよび乾燥ステアリン酸マグネシウムを加え混合し、打錠機で所望の形状に圧縮する。
上記の芯部をワニスで処理し、タルクを散布し湿気の吸収を防止する。芯部の周囲に下塗り層を被覆する。内服用のために十分な回数のワニス被覆を行う。錠剤を完全に丸くかつ滑らかにするためにさらに下塗層および平滑被覆が適用される。所望の色合が得られるまで着色被覆を行う。乾燥後、被覆錠剤を磨いて均一な光沢の錠剤にする。
【0016】
製剤例3
6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−
テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−
ジヒドロカルボスチリル 5g
ポリエチレングリコール
(分子量:4000) 0.3g
塩化ナトリウム 0.9g
ポリオキシエチレンソルビタン
モノオレエート 0.4g
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.1g
メチル−パラベン 0.18g
プロピル−パラベン 0.02g
注射用蒸留水 10.0ml
上記パラベン類、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを撹拌しながら80℃で上記の約半量の蒸留水に溶解する。得られた溶液を40℃まで冷却し、本発明の活性化合物、つぎにポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートをその溶液中に溶解した。次にその溶液に注射用蒸留水を加えて最終の容量に調製し、適当なフィルターペーパーを用いて滅菌濾過することにより滅菌して、注射剤を調製する。
【0017】
薬理試験
シロスタゾール[6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルの一般名]のHGF産生増加作用:
方法:
市販のヒトの大動脈内皮細胞(EC)およびヒトの大動脈平滑筋細胞(VSMC)(倉敷紡績(株)社製)を用い、これにシロスタゾール(10-6モル/mlまたは10-7モル/ml)を添加し、無血清培地(detimed serum free medium:DSF)で48時間培養したのち、培養上清中のHGFの産生量(HGF濃度:ng/ml)を、HGF測定用キット(特殊免疫研究所製)を用いて酵素抗体法(ELISA法)〔Engvall, E.Meth., Enzymol., 70 419−439(1980)〕によって測定した。
結果:
その結果を表1(EC使用)および表2(VSMC使用)に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0003944257
【0019】
【表2】
Figure 0003944257

Claims (2)

  1. 6−〔4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ〕−3,4−ジヒドロカルボスチリルまたはその塩を有効成分とする肝実質細胞増殖因子産生増加剤(ただし、腎疾患治療剤を除く)。
  2. 有効成分が6−〔4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ〕−3,4−ジヒドロカルボスチリルまたはその塩を有効成分とする肝実質細胞増殖因子産生増加による急性肝炎、慢性疾患、肝硬変および劇症肝炎から選ばれる肝疾患の治療薬、肝手術後の肝再生促進薬、抗癌剤または創傷治療薬。
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