JP3941988B2 - アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルケニル基を有するイソブチレン系ブロック共重合体及び反応性ケイ素基を有するイソブチレン系ブロック共重合体に関する。更に本発明は、アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体及び反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イソブチレン系ブロック共重合体は、非架橋でありながら架橋ゴムと同等の強度、弾性を有し、耐衝撃性及び柔軟性に優れ、更に熱可塑性樹脂と同等の成形性を示すことから、エラストマー材料や、熱可塑性樹脂の耐衝撃性向上材料としての利用が検討されている。
【0003】
例えば、特公平7−100763号公報では、イソブチレン系ブロック共重合体と熱可塑性樹脂の組成物が開示されている。しかしながら、このような組成物においては、熱可塑性樹脂によっては、樹脂とイソブチレン系ブロック共重合体の相溶性が充分ではなく、充分な耐衝撃性、機械的強度等の物性を発現しない等の問題があった。
【0004】
このような問題点を回避する方法として、イソブチレン系ブロック共重合体に官能基を導入することが知られている。例えば、特開平6−271751号公報では、末端に水酸基を有するイソブチレン系ブロック共重合体とポリエステル系重合体との組成物が開示されている。更に、この公報では、末端に水酸基を有するイソブチレン系ブロック共重合体の中間体として、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン及び四塩化チタンを開始剤とする系で合成した末端に塩素原子を有するブロック共重合体を、脱塩酸することで得られるアルケニル基を末端に有するイソブチレン系ブロック共重合体を開示している。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、厳しい反応条件を必要とすることや、反応率の向上が困難なため、アルケニル基の導入率が充分でないという問題があった。更に、導入できるアルケニル基がイソプロペニル型に限定されるため、反応性に乏しく、また、他の官能基への変換が困難であるという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、合成方法が容易であり、アルケニル基の導入率が高く、かつ、導入されたアルケニル基の反応性の高いイソブチレン系ブロック共重合体及び反応性ケイ素基を有するイソブチレン系ブロック共重合体並びにそれらの簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるイソブチレン系ブロック共重合体であって、一般式(1)で表されるアルケニル基を有するアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体である。
【0008】
【化6】
【0009】
式中、複数のR1 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基を表す。
【0010】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される重合開始剤の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)と、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)とを反応させるにあたって、アルケニル基含有ケイ素化合物を添加するアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法でもある。
【0011】
【化7】
【0012】
式中、複数のR2 は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表す。R3 は、1価若しくは多価の芳香族炭化水素基又は1価若しくは多価の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシル基又はアシルオキシル基を表す。nは、1〜6の整数を表す。nが2以上の場合、複数のXは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
また、本発明は、上記製造方法により製造されてなるアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体でもある。
【0014】
更に、本発明は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるイソブチレン系ブロック共重合体であって、一般式(4)で表される反応性ケイ素基を有する反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体でもある。
【0015】
【化8】
【0016】
式中、複数のR6 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基を表す。R7 は、炭素数1〜5の1価の有機基を表す。R7 が2個存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。
【0017】
更にまた、本発明は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体のアルケニル基に、一般式(5)で表される化合物をヒドロシリル化反応させることによりなる反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法でもある。
【0018】
【化9】
【0019】
式中、R7 は、炭素数1〜5の1価の有機基を表す。R7 が2個存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。
以下に、本発明を詳述する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるイソブチレン系ブロック共重合体であって、一般式(1)で表されるアルケニル基を有するアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体である。
【0021】
【化10】
【0022】
上記一般式(1)で表されるアルケニル基は、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックにあってもよく、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックにあってもよいが、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックにあるのが好ましい。
【0023】
上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックは、単量体成分としてイソブチレン以外の単量体を含んでいても、又は、含んでいなくてもよい。上記イソブチレン以外の単量体としてはカチオン重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
脂肪族オレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
芳香族ビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、インデン誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ジエン系単量体としては特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ビニルエーテル系単量体としては特に限定されず、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
シラン化合物としては特に限定されず、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックは、単量体成分としてイソブチレンを60重量%以上含有する重合体ブロックであり、80重量%以上含有するのが好ましい。
【0030】
上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックは、単量体成分としてイソブチレン以外の単量体を含有し、イソブチレンを30重量%以下含有する重合体ブロックであり、10重量%以下含有するのが好ましい。より好ましくは3重量%以下である。上記イソブチレン以外の単量体としては、カチオン重合可能な単量体であれば特に限定されず、上述したものが挙げられる。
【0031】
上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックは、上述したイソブチレン以外の単量体の中でも芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分からなるものが好ましい。この場合、上記単量体成分における芳香族ビニル系単量体の含有量は60重量%以上であり、好ましくは80重量%以上である。上記芳香族ビニル系単量体として好ましいものは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン又はインデンである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記イソブチレン系ブロック共重合体の構造としては特に限定されず、例えば、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックの構造を有するジブロック共重合体、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックの構造を有するトリブロック共重合体、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックの構造を有するトリブロック共重合体、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックの構造を有するものをアームとし、該アーム3本以上が多官能性化合物からなるコアに結合した星状ブロック体等が挙げられる。これらの中でも、物性のバランスから、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックの構造を有するトリブロック共重合体が好ましい。より好ましくは芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分からなる重合体ブロックの構造を有するトリブロック共重合体である。
【0033】
上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックと、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックとの割合としては、特に限定されず、目的とする共重合体に求められる特性に応じて適宜設定される。上記イソブチレン系ブロック重合体中において、イソブチレンが95〜20重量%、及び、上記芳香族ビニル系単量体が5〜80重量%になるような割合で、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックと、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックとの割合を設定することが好ましい。より好ましくは、イソブチレンが85〜60重量%、及び、上記芳香族ビニル系単量体が15〜40重量%である。上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)としてイソブチレンのみとし、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)として上記芳香族ビニル系単量体のみとする場合は、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロックを95〜20重量%、及び、相補的に、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックを5〜80重量%の範囲に設定すればよい。上記芳香族ビニル系単量体が80重量%を超えると、イソブチレン系ブロック重合体が硬くなりすぎ、上記芳香族ビニル系単量体が5重量%よりも少なくなると、イソブチレン系ブロック重合体が軟らかくなりすぎてエラストマー材料としての性能が充分に発揮できない。
【0034】
本発明のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックが上記一般式(1)で表されるアルケニル基を有する。
【0035】
【化11】
【0036】
上記一般式(1)で表されるアルケニル基における複数のR1 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基である。該ハロゲン原子としては特に限定されず、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。該置換又は非置換の1価の有機基としては特に限定されず、例えば、1価の炭化水素基、アルコキシル基、フェノキシ基、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。
【0037】
上記炭化水素基としては、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基;6〜20個、好ましくは6〜14個、より好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基等が挙げられる。本発明の利点を損なわない限り、炭化水素基の水素原子の少なくとも一部は、任意の置換基で置換され得る。
【0038】
上記アルケニル基は、アリル基が好ましい。また、上記アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、上記アルケニル基を共重合体中の分子鎖の任意の位置に有することができるが、反応性の観点から、アルケニル基を分子鎖の末端に有することが好ましい。
【0039】
本発明2は、下記一般式(2)で表される重合開始剤の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)と、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)とを反応させるにあたって、アルケニル基含有ケイ素化合物を添加するアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法である。
【0040】
【化12】
【0041】
上記一般式(2)で表される重合開始剤は、カチオン重合の開始点となると考えられる。上記複数のR2 は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表す。該炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。上記複数のR3 は、1価若しくは多価の芳香族炭化水素基又は1価若しくは多価の脂肪族炭化水素基を表す。上記Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシル基又はアシルオキシル基を表す。該ハロゲン原子としては特に限定されず、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。該炭素数1〜6のアルコキシル基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。該炭素数1〜6のアシルオキシル基としては特に限定されず、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。上記nは、1〜6の整数を表す。nが2以上の場合、複数のXは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
上記重合開始剤の具体例としては、1−クロロ−1−メチルエチルベンゼン〔C6 H5 C(CH3 )2 Cl〕、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,4−Cl(CH3 )2 CC6 H4 C(CH3 )2 Cl〕、1,3−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3−Cl(CH3 )2 CC6 H4 C(CH3 )2 Cl〕、1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3,5−(ClC(CH3 )2 )3 C6 H3 〕、1,3−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン〔1,3−(C(CH3 )2 Cl)2 −5−(C(CH3 )3 )C6 H3 〕を挙げることができる。ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン又はジクミルクロライドとも呼ばれる。これらの中では、反応性と入手性の点で、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンが特に好ましい。
【0043】
上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)は、イソブチレン以外の単量体を含んでいてもよく、又は、含んでいなくてもよい。上記イソブチレン以外の単量体としてはカチオン重合可能な単量体であれば特に限定されず、上述したものが挙げられる。
【0044】
上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)は、イソブチレンを60重量%以上含有する単量体成分であり、80重量%以上含有するのが好ましい。
【0045】
上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)は、イソブチレンを30重量%以下含有する単量体成分であり、10重量%以下含有するのが好ましい。より好ましくは3重量%以下である。上記イソブチレン以外の単量体としては、カチオン重合可能な単量体であれば特に限定されず、上述したものが挙げられる。
【0046】
上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)は、上述したイソブチレン以外の単量体の中でも芳香族ビニル系単量体を主成分とするものが好ましい。この場合、上記単量体成分における芳香族ビニル系単量体の含有量は60重量%以上であり、好ましくは80重量%以上である。上記芳香族ビニル系単量体として好ましいものは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン又はインデンである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記アルケニル基含有ケイ素化合物は、単数又は複数のアルケニル基を有し、カチオン重合の活性点と反応するケイ素化合物であり、重合体にアルケニル基を導入するために使用されるものである。
【0048】
上記アルケニル基含有ケイ素化合物は、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0049】
【化13】
【0050】
上記一般式(3)で表されるアルケニル基含有ケイ素化合物における複数のR4 及びR5 は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基を表す。該ハロゲン原子としては特に限定されず、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。該置換又は非置換の1価の有機基としては特に限定されず、例えば、1価の炭化水素基、アルコキシル基、フェノキシ基、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。
【0051】
該炭化水素基としては、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキル基、アルケニル基;6〜20個、好ましくは6〜14個、より好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基が挙げられる。本発明の利点を損なわない限り、該炭化水素基の水素原子の少なくとも一部は、任意の置換基で置換され得る。
【0052】
上記R4 及びR5 として好ましいものとして、具体的には、水素原子、塩素原子、メチル基、アリル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を挙げることができる。これらの置換基を有するケイ素化合物は入手が容易であり、又、反応性に優れるため、アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体を簡便に製造することができる。
【0053】
上記アルケニル基含有ケイ素化合物の具体例としては、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリプロピルシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリブチルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、アリル(クロロプロピル)ジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジプロピルシラン、ジアリルジブチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、トリアリルメチルシラン、テトラアリルシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのケイ素化合物の中では、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメチルシラン、トリアリルメチルシラン、テトラアリルシランが好ましい。より好ましくは、アリルトリメチルシランである。
【0054】
本発明2では、導入されるアルケニル基はケイ素化合物の構造に由来するため、適宜目的に応じたケイ素化合物を使用することによって、任意のアルケニル基を導入することができる。例えば、導入されたアルケニル基に高い反応性が求められる場合には、反応性の高いアリル基等を有するケイ素化合物が好適に使用される。
【0055】
上記アルケニル基含有ケイ素化合物は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を重合する工程、及び、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を重合する工程の任意の段階で添加して反応させることができる。すなわち、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を重合する工程で、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を添加する前に添加してもよいし、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)と同時に添加してもよいし、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)の添加が終了又は重合が実質的に終了してから添加して反応させてもよい。また、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を重合する工程で、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を添加する前に添加してもよいし、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)と同時に添加してもよいし、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)の添加が終了又は重合が実質的に終了してから添加して反応させてもよい。これらの中では、得られるブロック共重合体の物性面、重合上の操作面から、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)、及び、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)の重合が、実質的に終了した段階で反応させるのが好ましい。
【0056】
上記重合では、必要に応じてルイス酸触媒を共存させることもできる。該ルイス酸触媒として用いられるルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであればよく、TiCl4 、TiBr4 、BCl3 、BF3 、BF3 ・OEt2 、SnCl4 、SbCl5 、SbF5 、WCl6 、TaCl5 、VCl5 、FeCl3 、ZnBr2 、AlCl3 、AlBr3 等の金属ハロゲン化物;Et2 AlCl、EtAlCl2 等の有機金属ハロゲン化物が好ましい。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4 、BCl3 、SnCl4 が好ましい。
【0057】
上記ルイス酸は、通常、上記重合開始剤に対して0.1〜100倍モルの範囲で用いられ、0.3〜50倍モルの範囲で用いられるのが好ましい。
【0058】
上記重合では、更に必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。該電子供与体成分としては、そのドナー数が15〜60のものであれば従来公知のものを広く利用できる。好ましい電子供与体成分としては、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物類を挙げることができる。
【0059】
上記電子供与体成分としては、種々の化合物の電子供与体(エレクトロンドナー)としての強さを表すパラメーターとして定義されるドナー数が15〜60であるものとして、通常、具体的には、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2−t−ブチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、リン酸トリメチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、チタン(III)メトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド等のチタンアルコキシド;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウムアルコキシド等が使用できるが、好ましいものとして、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド等が挙げられる。上記種々の物質のドナー数については、「ドナーとアクセプター」、グードマン著、大瀧、岡田訳、学会出版センター(1983)に示されている。これらの中でも、添加効果が顕著である2−メチルピリジン、反応系が均一となるチタン(IV)イソプロポキシドが特に好ましい。
【0060】
上記電子供与体成分は、通常、上記重合開始剤に対して0.01〜10倍モル用いられ、0.2〜4倍モルの範囲で用いられるのが好ましい。
【0061】
上記重合は、必要に応じて溶媒中で行うことができる。該溶媒としては、カチオン重合を本質的に阻害しない溶媒であれば、従来公知のもの全てを使用することができ、具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。これらの溶剤は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、単独又は2種以上を併用して使用される。
【0062】
上記溶剤の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、通常、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0063】
上記重合を行うにあたっては、上述した各成分を冷却下、例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合することが好ましい。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は、−80℃〜−30℃である。
【0064】
上記アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体を製造する場合、ルイス酸、重合開始剤、電子供与体成分、単量体成分等の添加方法及び添加順序等は特に限定されるものではないが、好ましい方法としては、例えば、(A)重合開始剤及びルイス酸からなる開始剤系と電子供与体成分との存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を重合する工程、(B)次いで反応系にイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を添加して重合する工程、(C)実質的に重合が終了した段階で、アルケニル基含有ケイ素化合物を添加して、アルケニル基を導入する工程からなる製造方法が挙げられる。該製造方法は、工程(A)で、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)の重合が実質的に終了してから、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を添加するのが一般的であるが、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)としてイソブチレンよりもカチオン重合活性の低い単量体を使用する場合には、工程(A)で、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)の重合が実質的に終了する前に、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を添加しても、ブロック共重合体の合成が可能である。また、イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)として、イソブチレンとほぼ同等のカチオン重合活性を有し、かつ、共重合可能な単量体を使用する場合には、工程(A)で、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)の重合が実質的に終了する前にイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を添加すれば、分子鎖の一部にランダム性のある重合体ブロックを有するブロック共重合体等を製造することが可能である。
【0065】
上述した各成分の使用量は目的とする共重合体に求められる特性に応じて適宜設定することが可能である。イソブチレンが95〜20重量%、及び、上記芳香族ビニル系単量体が5〜80重量%になるような割合で、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)と、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)との割合を設定することが好ましい。より好ましくは、イソブチレンが85〜60重量%、及び、上記芳香族ビニル系単量体が15〜40重量%である。上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)としてイソブチレンのみとし、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)として上記芳香族ビニル系単量体のみとする場合は、上記イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を95〜20重量%、及び、相補的に、上記イソブチレンを主成分としない単量体成分(b)を5〜80重量%に設定すればよい。イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)と一般式(2)で表わされる重合開始剤のモル当量関係によって、得られる共重合体の分子量が決定できる。通常、得られるブロック共重合体の数平均分子量が20000〜500000程度になるように設定される。
【0066】
本発明3は、本発明2の製造方法により製造されてなるアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体である。
【0067】
上記アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックを有しているものであれば特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等の上述した構造のいずれも選択可能である。
【0068】
本発明のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、従来のイソブチレン系ブロック共重合体と同様の各種用途に使用され得る。例えば、エラストマー材料、樹脂、アスファルト等の改質剤、樹脂コンパウンドの成分として用いることができる。
【0069】
本発明のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体に、種々の架橋剤を加えることで、溶融粘度を任意に制御することができる。従って、本発明のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体を他の樹脂等とブレンドする場合には、両者の溶融粘度を合わせ、相溶性を向上させることができる。
【0070】
また、本発明のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体を、適当な試薬と反応させることにより、アルケニル基を任意の官能基に変換することが可能である。変換できる官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。このような官能基を適宜選択することによって、イソブチレン系ブロック共重合体と他の樹脂との相溶性、反応性、極性等を制御することができる。
【0071】
本発明4は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるイソブチレン系ブロック共重合体であって、一般式(4)で表される反応性ケイ素基を有する反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体である。
【0072】
【化14】
【0073】
式中、複数のR6 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基を表す。R7 は、炭素数1〜5の1価の有機基を表す。R7 が2個存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。該ハロゲン原子、該置換若しくは非置換の1価の有機基及びアルコキシル基としては特に限定されず、例えば、上述したものと同様なものが挙げられる。該炭素数1〜5の1価の有機基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等の炭化水素基を挙げることができる。
【0074】
上記反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、上記一般式(4)で表される反応性ケイ素基の反応性が高いことから、例えば、エラストマー材料、樹脂、アスファルト等の改質剤、樹脂コンパウンドの成分等として、各種用途に有用に使用することができる。
【0075】
本発明5は、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体のアルケニル基に、一般式(5)で表される化合物をヒドロシリル化反応させることによりなる反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法である。
【0076】
【化15】
【0077】
式中、R7 は、炭素数1〜5の1価の有機基を表す。R7 が2個存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。該炭素数1〜5の1価の有機基、該ハロゲン原子及び該アルコキシル基としては特に限定されず、例えば、上述したものと同様なものが挙げられる。
【0078】
アルケニル基の反応性が高いことから、上記アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、本発明1のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体であるのが好ましい。
【0079】
また、上記アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、本発明2の製造方法で製造したものであるのが好ましい。
【0080】
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記ヒドロシリル化反応の際には、通常、ヒドロシリル化触媒として遷移金属触媒が用いられる。上記遷移金属触媒としては特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体;RhCl(PPh3 )3 、RhCl3 、RuCl3 、IrCl3 、FeCl3 、AlCl3 、PdCl2 ・H2 O、NiCl2 、TiCl4 等の白金化合物以外の化合物等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
ヒドロシリル化反応を効率よく行う観点から、上記ヒドロシリル化反応は、白金錯体を触媒として、反応温度40℃以上で行うのが好ましい。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
実施例1
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)120mL、塩化メチレン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)80mL、及び、p−ジクミルクロライド0.0876g(0.38mmol)を加えた。重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、2−メチルピリジン0.036g(0.39mmol)を加えた。次にイソブチレンモノマー33.9mL(419.9mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。更に四塩化チタン1.50mL(13.7mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー12.15g(116.7mmol)、n−ヘキサン12mL、及び、塩化メチレン8mLの混合溶液を重合容器内に添加した。この混合溶液を添加してから10分後に、アリルトリメチルシラン0.134g(1.17mmol)を加えた。そのままの温度で60分間攪拌した後、約10mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。更に、トルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。
【0085】
得られたブロック共重合体のGPC分析(測定装置:Waters社製510型GPCシステム、移動相:クロロホルム、ポリマー濃度:2mg/ml、カラム温度:35℃、標準試料:ポリスチレン)から、スチレン添加前のイソブチレン重合体の数平均分子量Mnは70000、分子量分布Mw/Mnは1.16であり、スチレン重合後のブロック共重合体の数平均分子量Mnは101000、分子量分布Mw/Mnは1.23であった。
得られたブロック共重合体の 1H−NMRスペクトル(測定装置:Varian社製Gemini−300、測定溶媒:クロロホルム)の、イソブチレン基の積分比とアリル基の積分比とから、重合体の一分子あたり平均で1.9個のアリル基が導入されていることが示唆された。
【0086】
実施例2
p−ジクミルクロライドの使用量を0.35g(1.52mmol)とし、2−メチルピリジンの使用量を0.072g(0.78mmol)とした以外は、実施例1と同様にして実施した。
得られたブロック共重合体のGPC分析から、スチレン添加前のイソブチレン重合体の数平均分子量Mnは18000、分子量分布Mw/Mnは1.22であり、スチレン重合後のブロック共重合体の数平均分子量Mnは26000、分子量分布Mw/Mnは1.38であった。
得られたブロック共重合体の 1H−NMRスペクトルの、イソブチレン基の積分比とアリル基の積分比とから、重合体の一分子あたり平均で1.7個のアリル基が導入されていることが示唆された。
【0087】
実施例3
冷却管を敷設した200mLの四つ口フラスコに、実施例2で得られたブロック共重合体10.0g、トルエン50mL、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体1.8×10-3mmol(キシレン溶液)、及び、ジメトキシメチルシラン0.85g(0.8mmol)を仕込み、80℃で10時間攪拌してブロック共重合体のヒドロシリル化反応を行った。その後、反応溶液を200mLのメタノール中に加え、反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体を得た。得られた重合体の 1H−NMRスペクトルの、イソブチレン基の積分比とケイ素上のメチル基の積分比とから、重合体の一分子あたり平均で1.3個のジメトキシメチルシリル基が導入されていることがわかった。
【0088】
比較例1
実施例1で得られたブロック共重合体の代わりに、塩素末端のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体を熱処理して得られた、末端にイソプロペニル基を有するブロック共重合体を用い、実施例3と同様にして反応を行ない、重合体を得た。
得られた重合体の 1H−NMRスペクトルには、ジメトキシメチルシリル基のピークは確認できなかった。
【0089】
実施例より、本発明の製造方法によるブロック共重合体のアルケニル基の導入率は高く、又、本発明によるブロック共重合体におけるアルケニル基の反応性は高く、ジメトキシメチルシリル基への変換が容易であることがわかった。
【0090】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成からなるので、アルケニル基の導入率が高く、かつ、導入されたアルケニル基の反応性の高いアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体を、簡便な操作で合成することができる。また、本発明は、反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体を、簡便な操作で合成することもできる。
Claims (15)
- アルケニル基は、アリル基である請求項1記載のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体。
- ブロック共重合体は、芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分からなる重合体ブロックの構造を有するトリブロック共重合体である請求項1又は2記載のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体。
- 一般式(2)で表される重合開始剤の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)を重合する工程、反応系に芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)を添加して重合する工程、及び、アルケニル基含有ケイ素化合物を添加して、アルケニル基を導入する工程からなる
ことを特徴とするアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法。
- イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)と、芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)との反応が実質的に終了した段階で、アルケニル基含有ケイ素化合物を添加する請求項4記載の製造方法。
- アルケニル基含有ケイ素化合物は、アリルトリメチルシランである請求項6記載の製造方法。
- 重合開始剤は、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンである請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン誘導体及びインデン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項4〜9のいずれかに記載の製造方法により製造されてなる
ことを特徴とするアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体。 - イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及び芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成されるイソブチレン系ブロック共重合体であって、
芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)からなる重合体ブロックが、一般式(4)で表される反応性ケイ素基を有する
ことを特徴とする反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体。
- イソブチレンを主成分とする単量体成分(a)からなる重合体ブロック及び芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)からなる重合体ブロックから形成され、芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分(b)からなる重合体ブロックがアルケニル基を有するイソブチレン系ブロック共重合体のアルケニル基に、一般式(5)で表される化合物をヒドロシリル化反応させることを特徴とする反応性ケイ素基含有イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法。
- アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、請求項1記載のアルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体である請求項12記載の製造方法。
- アルケニル基含有イソブチレン系ブロック共重合体は、請求項4〜9のいずれかに記載の製造方法で製造したものである請求項12又は13記載の製造方法。
- ヒドロシリル化反応は、白金錯体を触媒として、反応温度40℃以上で行う請求項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
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