JP3935790B2 - 半導体式ガス検知素子とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とすると共に被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子、及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示したように、半導体式ガス検知素子10’は、貴金属線材11を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部12を有し、検知対象ガス(以下被検知ガスとする)と接触自在に設けられている。被検知ガスが前記半導体式ガス検知素子10’に接触して、前記ガス感応部12において前記金属酸化物半導体により酸化され、その酸化反応に伴う電子の授受に伴い前記半導体式ガス検知素子10’の抵抗値が定量的に変化する。そして、この抵抗値の変化は前記貴金属線材11により検出される。そのため、前記半導体式ガス検知素子10’を備えたガス検知装置は、前記抵抗値の変化に基づく出力値から被検知ガスの濃度を求めることが出来る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記貴金属線材は、前記半導体式ガス検知素子の抵抗値の定量的な変化を検出する役割だけでなく、前記金属酸化物半導体を200〜500℃程度の高温に保つヒーターの役割も果たしている。従って、前記半導体式ガス検知素子は、電力消費ができるだけ少ないものであれば、省エネルギーの観点から好ましい。
【0004】
そのため、従来、半導体式ガス検知素子自体を小型化することで小電力化を達成する試みが為されてきた。
【0005】
前記半導体式ガス検知素子を小型化するためには、前記ガス感応部を小さくすることが考えられる。そのため、例えば、貴金属線材をコイル状に形成してある場合は、貴金属線材の線径を細くする等してコイル部分を小さく形成することが可能である。このように小さく形成したコイル状の貴金属線材に金属酸化物半導体を塗布して覆った後に焼結すると、ガス感応部を小さく形成することができる。
【0006】
このようにして小型化が達成された半導体式ガス検知素子は、ガス感応部の容量が減少しているために、小型化しない半導体式ガス検知素子と比べて熱する必要のある金属酸化物半導体の量が少なくなっている。そのため、ガス感応部の熱容量が小さくなって熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。
【0007】
しかし、このように半導体式ガス検知素子を小型化することにより、前記ガス感応部の表面積が小さくなって被検知ガスとの接触面積が小さくなるため、感度が低下するという問題点があった。
また、貴金属線材の線径を細くしてコイル部分を小さく形成する場合は、貴金属線材は、製造工程において線径が細くなった状態で扱われるため切れ易いという問題点があった。
さらに、小型化しない通常の半導体式ガス検知素子は直径が0.4〜0.7mm程度であるが小型化した半導体式ガス検知素子は直径が0.15mm程度となる。しかし、このような半導体式ガス検知素子は非常に小さいため、ガス感応部の金属酸化物の量(貴金属線材に金属酸化物半導体を塗布する量)を微調整するのは困難となり、小型化した半導体式ガス検知素子は製造し難いという問題点があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、小型化することなく小電力化が達成可能な半導体式ガス検知素子、及び、その製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
〔構成1〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、
屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とすると共に被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子であって、隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定した点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0010】
〔作用効果1〕
本構成により、隣同士の貴金属線材間、及び、貴金属線材とガス感応部表面間には余分な金属酸化物が残存するのを抑制できる。前記貴金属線材はヒーターの役割も果たしているのであるから、前記貴金属線材に通電すると、隣同士の貴金属線材間に存在する前記金属酸化物、及び、貴金属線材とガス感応部表面間に存在する前記金属酸化物は迅速に昇温可能となる。
つまり、本発明のように構成することにより熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。そのため、半導体式ガス検知素子を小型化することなく、小電力化を実現することが可能となる。
【0011】
〔構成2〕
本発明の第二特徴構成は、前記ガス感応部の断面視での表面形状が、前記貴金属線材の断面視での形状に沿うようにした点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0012】
〔作用効果2〕
本構成により、ガス感応部の表面は、滑らかな凹凸形状となる。そのため、凹部においては、表面が平坦状のガス感応部と比べて薄肉となるため、この部分における金属酸化物の量を節約することができ、より一層熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答がさらに速くなるため、更なる小電力化を実現することが可能となる。
【0013】
〔構成3〕
本発明の第三特徴構成は、前記ガス感応部が中空形状を呈する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0014】
〔作用効果3〕
本構成では、作製された半導体式ガス検知素子の前記ガス感応部を断面視(図4参照)したとき、隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部表面までの距離を、短くするように構成し易くなる。特に、前記貴金属線材から前記ガス感応部表面までの距離が短くなることにより、熱する必要のある金属酸化物半導体の量が少なくなる。
また、本構成の半導体式ガス検知素子は、小型化する必要がないのに加えて、中空形状を呈するため、被検知ガスが前記ガス感応部の外壁表面に接触するとともに内壁表面でも接触可能(図1参照)となる。このため、被検知ガスとの接触面積が増大し、高感度化する。
さらに、前記貴金属線材の線径を細くする必要がなくなり、半導体式ガス検知素子の製造工程において前記貴金属線材が切れ易くなる不具合が発生することは殆ど無くなる。
【0015】
〔構成4〕
本発明の第四特徴構成は、前記ガス感応部が平面形状を呈する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0016】
〔作用効果4〕
本構成では、作製された半導体式ガス検知素子の前記ガス感応部を断面視(図4参照)したとき、隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部表面までの距離を、短くするように構成し易くなる。特に、前記貴金属線材から前記ガス感応部表面までの距離が短くなることにより、熱する必要のある金属酸化物半導体の量が少なくなる。
また、本構成の半導体式ガス検知素子は、小型化する必要がないのに加えて、平面形状を呈するため、前記ガス感応部の上面に接触するとともに下面でも接触可能(図3参照)となる。このため、被検知ガスとの接触面積が増大し、高感度化する。
さらに、前記貴金属線材の線径を細くする必要がなくなり、半導体式ガス検知素子の製造工程において前記貴金属線材が切れ易くなる不具合が発生することは殆ど無くなる。
【0017】
〔構成5〕
本発明の第五特徴構成は、屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とすると共に被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子の製造方法であって、隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定し、金属酸化物粉体が分散してある分散媒に、前記貴金属線材を第1電極、及び、白金を第2電極としてそれぞれ浸漬し、前記第1〜2電極間に所定の電圧を印加する電気泳動により、前記貴金属線材表面に前記金属酸化物粉体を電着させて金属酸化物層を形成する工程を経て前記ガス感応部を形成する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0018】
〔作用効果5〕
本構成により、隣同士の貴金属線材間、及び、貴金属線材とガス感応部表面間には余分な金属酸化物が残存するのを抑制でき、熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。そのため、半導体式ガス検知素子を小型化することなく、小電力化を実現することが可能となる半導体式ガス検知素子の製造方法となる。
さらに、金属酸化物粉体を分散媒に分散させることにより、前記金属酸化物粉体を帯電させることができる。そして、貴金属線材を第1電極、及び、白金を第2電極としてそれぞれ分散媒に浸漬し、前記第1〜2電極間に所定の電圧を印加することにより、帯電した金属酸化物粉体は、前記第1電極表面に引き寄せられて堆積する。そのため、第1電極である貴金属線材表面に前記金属酸化物粉体を電着させて金属酸化物層を形成することができる。
このような工程を経て製造された半導体式ガス検知素子は、ほぼ均一な厚さの金属酸化物層を設けており、このガス感応部の厚さは、印加する電圧及び時間に応じて設計可能であるため、容易にガス感応部の金属酸化物の量を微調整することができるため、製造が容易である。
【0019】
〔構成6〕
本発明の第六特徴構成は、屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子の製造方法であって、隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定し、コイル状に形成すると共に可燃性の芯材を挿入した貴金属線材を前記金属酸化物半導体で覆い、この状態で焼結させる工程を経て前記ガス感応部を形成する点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0020】
〔作用効果6〕
本構成により、隣同士の貴金属線材間、及び、貴金属線材とガス感応部表面間には余分な金属酸化物が残存するのを抑制でき、熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。そのため、半導体式ガス検知素子を小型化することなく、小電力化を実現することが可能となる半導体式ガス検知素子の製造方法となる。
さらに、コイル状に形成すると共に可燃性の芯材を挿入した貴金属線材を前記金属酸化物半導体で覆い、この状態で焼結させることにより、前記芯材は焼結処理の際に燃焼除去される。
このようにして製造された半導体式ガス検知素子は、前記芯材が燃焼除去された部位が中空形状になったガス感応部を有することになる。
従って、上述した製造方法は、通常のセンサ素子の製造方法に芯材を挿入する工程を追加するだけで微小なセンサ素子を中空形状に容易に成形加工できる。そのため、簡便な中空形状を呈する半導体式ガス検知素子の製造方法を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は同一又は相当の部分を示している。
【0022】
本発明の半導体式ガス検知素子10は、図1〜3に示すように、白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の貴金属線材11に、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化スズ等の金属酸化物を主成分とする金属酸化物半導体を塗布して覆い、乾燥後焼結成型してあるガス感応部12を備えている。前記半導体式ガス検知素子10は、被検知ガスと接触自在に設けられている。
【0023】
本発明の半導体式ガス検知素子10は、図1〜2に示したように、前記貴金属線材11がコイル状に形成してあると共に前記ガス感応部12が中空形状を呈するように形成されている。図1は、前記ガス感応部12の上下において連通した中空形状を呈するもの、図2は、前記ガス感応部12の上下において連通しない中空形状を呈するものを例示してある。
【0024】
図1の半導体式ガス検知素子10においては、被検知ガスは、前記ガス感応部12の外壁表面15に接触すると共に内壁表面16でも接触可能となる。
図2の半導体式ガス検知素子10における上部13及び下部14は、空気や被検知ガス等の気体は通過可能な微細な孔が形成されているため、被検知ガスは、前記ガス感応部12の外壁表面15に接触すると共に内壁表面16に到達して接触可能となる。
【0025】
さらに、本発明の半導体式ガス検知素子10は、図3に示したように、前記貴金属線材11が屈設してあると共に前記ガス感応部12が平面形状を呈するように形成することが可能である。この時、被検知ガスは、前記ガス感応部12の上面17に接触すると共に下面18と接触可能となる。
【0026】
このように半導体式ガス検知素子10を形成するのであるが、前記貴金属線材11をコイル状(図1〜2)、或いは、屈設(図3)して形成し、この貴金属線材11に金属酸化物を塗布してガス感応部12を作製する時のガス感応部形成条件を例示する。
【0027】
前記半導体式ガス検知素子10(大きさ約0.50mm)において、前記貴金属線材11は直径D(例えば約20μmの白金線コイルを使用)であるとする。そして、前記貴金属線材11がコイル状に形成してあると共に前記ガス感応部12が中空形状を呈する、或いは、前記貴金属線材11が屈設してあると共に前記ガス感応部12が平面形状を呈するように形成してあるため、前記ガス感応部12を断面視した図(図4)において、隣接する貴金属線材11間の距離L、及び、前記貴金属線材11から前記ガス感応部12表面までの距離Mは短くなる。
【0028】
この時、例えば、前記距離L及び前記距離Mは、前記直径Dと同等以下に設定することが好ましい。この場合、前記貴金属線材11に通電すると、前記貴金属線材11はヒーターの役割も果たしているのであるから前記貴金属線材11の周囲に存在する前記金属酸化物は熱せられる。
【0029】
しかし、前記距離L(前記貴金属線材11間の距離)を前記直径Dと同等以下に設定してあるから、隣接する貴金属線材11間に存在する前記金属酸化物は200〜500℃程度の温度まで迅速に昇温可能となる。これは、前記距離Lを前記直径Dと同等以下に設定してあるために、余分な金属酸化物が存在せず、これにより、熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。
【0030】
また、前記距離M(前記貴金属線材11から前記ガス感応部12表面までの距離)についても、前記直径Dと同等以下に設定してあるから、前記貴金属線材11から前記ガス感応部12表面までの間に存在する前記金属酸化物は200〜500℃程度の温度まで迅速に昇温可能となる。これは、上述した前記距離Lの場合と同様に、前記距離Mを前記直径Dと同等以下に設定してあるために、余分な金属酸化物が存在せず、これにより、熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、この場合も熱応答が速くなるため、小電力化を実現することが可能となる。
【0031】
つまり、半導体式ガス検知素子10は、前記貴金属線材11がコイル状に形成してあると共に前記ガス感応部12が中空形状を呈するように形成する(図1〜2)、或いは、前記貴金属線材11が屈設してあると共に前記ガス感応部12が平面形状を呈するように形成する(図3)と、半導体式ガス検知素子を小型化することなく、小電力化を実現することが可能となる。
【0032】
また、本発明の半導体式ガス検知素子10は、中空形状を呈する場合は、被検知ガスが前記ガス感応部12の外壁表面15に接触するとともに内壁表面16でも接触可能となり、平面形状を呈する場合は、前記ガス感応部12の上面17に接触するとともに下面18でも接触可能となるため、被検知ガスとの接触面積が増大し、高感度化する。
【0033】
さらに、前記貴金属線材11の線径を細くする必要がなくなり、半導体式ガス検知素子10の製造工程において前記貴金属線材11が切れ易くなる不具合が発生することは殆ど無くなる。
【0034】
本発明に係る半導体式水素ガス検知素子は、例えば、以下の方法により製造することが可能である。
【0035】
(電気泳動法)
この電気泳動法による本発明の半導体式ガス検知素子10の製造方法を以下に記載する(図6参照)。
【0036】
電気泳動に用いる溶媒は、例えば、エタノール等の有機溶媒を用いることが可能である。本実施例では、30%エタノール水溶液を使用した場合を例示する。このエタノール水溶液を分散媒20としてテフロン製の容器21に満たし、金属酸化物である酸化スズの粉体をスターラー等を用いて均一に分散させる。この時、エタノール水溶液に分散した金属酸化物粉体は、プラスに帯電する。
尚、前記金属酸化物粉体は、酸化スズに限らず、酸化インジウム、酸化タングステン等においても適用可能である。
【0037】
前記容器21の分散媒20に、貴金属線材11として白金コイルを第1電極として浸漬し、さらに、前記容器21の底面に、白金メッシュ22を第2電極として浸漬した後、前記第1電極が陰極、前記第2電極が陽極となるように電圧供給装置23と銅線で接続する。
尚、前記貴金属線材11は白金コイルに限らず、パラジウム、白金−パラジウム合金等においても適用可能であり、形状においてもコイル状に限らず、屈設して形成してあるものにおいても適用可能である。
【0038】
この状態で、前記第1〜2電極に所定電圧を所定時間(例えばD.C.5V、5分)を印加することにより電気泳動を行うと、プラスに帯電した金属酸化物粉体は、前記第1電極表面に引き寄せられて堆積する。電圧は、形成する半導体式ガス検知素子10の大きさに合わせて、適宜設定することが可能である。また、電圧を印加する時間についても、前記所定電圧に応じて適宜設定することができる。
【0039】
このように電気泳動を行うことにより、前記貴金属線材11表面に前記金属酸化物粉体を電着させて金属酸化物層を形成することができる。所望の厚さの金属酸化物層が形成した時点でこの第1電極を溶媒から引き上げ、乾燥後、所定温度で所定時間(例えば600℃、1時間)焼結する。このようにして金属酸化物層を貴金線11に固定してガス感応部を形成する工程を経て、半導体式ガス検知素子10を製造することができる。
【0040】
このようにして製造された半導体式ガス検知素子10は、ほぼ均一な厚さの金属酸化物層を設けている。
また、このガス感応部12の厚さは、印加する電圧及び時間に応じて設計可能であるため、容易にガス感応部の金属酸化物の量を微調整することができる。
【0041】
(芯材を挿入する方法)
前記貴金属線材11がコイル状である場合は、この貴金属線材11に予め芯材30を挿入した上でガス感応部12を形成することが可能である(図7参照)。
【0042】
前記芯材30は、例えば、セルロースの粉末を水で練ってペースト状に仕上げたものを使用することが可能である。このペーストは、乾燥すると可燃性となり、後述する焼結処理中に燃焼して除去可能となる。つまり、前記芯材30は、可燃性であり、燃焼後に除去可能となるものであれば適用可能である。
【0043】
このようなペースト状の芯材30をコイル状に形成した貴金属線材11に挿入して前記芯材30を乾燥させる。このように前記芯材30が挿入されている貴金属線材11を、金属酸化物半導体である酸化スズを塗布することにより覆い、乾燥後、600℃まで2時間かけてゆっくり温度を上昇させることにより焼結処理を始める。この時、金属酸化物半導体内部の芯材30は燃焼除去される。その後、さらに600℃で1時間焼成することで、前記金属酸化物半導体を前記貴金属線材11に焼結させることによりガス感応部12を形成する。
尚、前記金属酸化物は、酸化スズに限らず、酸化インジウム、酸化タングステン等においても適用可能である。
【0044】
この時、前記芯材30は燃焼除去されているため、前記ガス感応部12は中空形状となる。
【0045】
【実施例】
上述した本発明の半導体式ガス検知素子10の性能と、従来の半導体式ガス検知素子10’の性能と比較した。
【0046】
本発明の半導体式ガス検知素子10は、貴金属線材11にコイル状に形成してある白金を用い、ガス感応部12の主成分に酸化スズを用いたものであって、
前記ガス感応部12の上下において連通した中空形状を呈する半導体式ガス検知素子10−1(図1)、及び、
前記ガス感応部12の上下において連通しない中空形状を呈する半導体式ガス検知素子10−2(図2)の2種類を使用し、
従来の半導体式ガス検知素子10’は、前記ガス感応部12が中空形状を呈しないこと以外は本発明の半導体式ガス検知素子10と同様な構成のものを使用した。
【0047】
(熱応答速度)
本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2と、従来の半導体式ガス検知素子10’の両端に電圧(1.2V)を印加し、素子温度が一定になるまでの時間を測定した。測定は、赤外温度計にてガス感応部12の表面温度を計測することにより行った。結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
これより、本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2の素子温度が一定になるまでの時間は、従来の半導体式ガス検知素子10’の素子温度が一定になるまでの時間の13〜21%程度であった。従って、本発明の半導体式ガス検知素子10は、熱応答に優れた半導体式ガス検知素子であることが判明した。
【0050】
(ガス応答速度)
本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2と、従来の半導体式ガス検知素子10’とをメタン1000ppmに暴露した後、素子抵抗値が一定になるまでの時間を測定した。結果を表2に示した。
【0051】
【表2】
【0052】
これより、本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2の素子抵抗値が一定になるまでの時間は、従来の半導体式ガス検知素子10’の素子抵抗値が一定になるまでの時間の14〜22%程度であった。従って、本発明の半導体式ガス検知素子10は、ガス応答速度が優れた半導体式ガス検知素子であることが判明した。
【0053】
(消費電力)
本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2と、従来の半導体式ガス検知素子10’とにおいて、連続通電状態での消費電力を測定した。結果を表3に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
これより、本発明の半導体式ガス検知素子10の消費電力は、従来の半導体式ガス検知素子10’ の消費電力の47〜57%程度であった。
【0056】
さらに、本発明の半導体式ガス検知素子10と、従来の半導体式ガス検知素子10’とにおいて、間歇通電した場合の平均消費電力を測定した。この時、本発明の半導体式ガス検知素子10−1の1分間の通電周期は、0.35秒電源ON、59.65秒電源OFF とし、半導体式ガス検知素子10−2の1分間の通電周期は、0.56秒電源ON、59.44秒電源OFF とし、従来の半導体式ガス検知素子10’の1分間の通電周期は、2.5秒電源ON、57.5秒電源OFF とした。結果を表4に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
これより、本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2の平均消費電力は、従来の半導体式ガス検知素子10’の平均消費電力の7〜13%程度であった。
【0059】
従って、本発明の半導体式ガス検知素子10−1〜2は、平均消費電力の少ない半導体式ガス検知素子であることが判明した。
【0060】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
前記ガス感応部12を断面視したものを図4に示したが、この時のように表面が平坦な形状に限らず、図5に示したように、前記貴金属線材11の形状に沿うような形状とすることが可能である。
この時、前記ガス感応部12の表面は、滑らかな凹凸形状となる。そのため、凹部においては、表面が平坦状のガス感応部(図4)と比べて薄肉となるため、この部分における金属酸化物の量を節約することができ、より一層熱容量の小さいガス感応部が形成可能となる。従って、熱応答がさらに速くなるため、更なる小電力化を実現することが可能となる。
【0061】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏するものであれば、各部構成を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体式ガス検知素子(貴金属線材をコイル状に形成し、ガス感応部の上下において連通した中空形状を呈するもの)の概略図
【図2】本発明の半導体式ガス検知素子(貴金属線材をコイル状に形成し、ガス感応部の上下において連通しない中空形状を呈するもの)の概略図
【図3】本発明の半導体式ガス検知素子(貴金属線材を屈設して形成し、ガス感応部が平面形状を呈するもの)
【図4】本発明の半導体式ガス検知素子の要部断面図
【図5】本発明の半導体式ガス検知素子の別実施例の要部断面図
【図6】本発明の半導体式ガス検知素子を電気泳動により製造方法する場合の概要を示した図
【図7】本発明の半導体式ガス検知素子を芯材を挿入する方法により製造方法する場合の概要を示した図
【図8】従来の半導体式ガス検知素子の概略図
【符号の説明】
10 半導体式ガス検知素子
11 貴金属線材
12 ガス感応部
Claims (6)
- 屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とすると共に被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子であって、
隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定してある半導体式ガス検知素子。 - 前記ガス感応部の断面視での表面形状が、前記貴金属線材の断面視での形状に沿うようにしてある請求項1に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記貴金属線材がコイル状に形成してあると共に前記ガス感応部が中空形状を呈する請求項1又は2に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記ガス感応部が平面形状を呈する請求項1又は2に記載の半導体式ガス検知素子。
- 屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とすると共に被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子の製造方法であって、
隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定し、
金属酸化物粉体が分散してある分散媒に、前記貴金属線材を第1電極、及び、白金を第2電極としてそれぞれ浸漬し、前記第1〜2電極間に所定の電圧を印加する電気泳動により、前記貴金属線材表面に前記金属酸化物粉体を電着させて金属酸化物層を形成する工程を経て前記ガス感応部を形成する半導体式ガス検知素子の製造方法。 - 屈設した貴金属線材を覆って焼結させた金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を備えた半導体式ガス検知素子の製造方法であって、
隣同士の前記貴金属線材の距離、及び、前記貴金属線材から前記ガス感応部の表面までの距離を、前記貴金属線材の直径と同等以下に設定し、
コイル状に形成すると共に可燃性の芯材を挿入した貴金属線材を前記金属酸化物半導体で覆い、この状態で焼結させる工程を経て前記ガス感応部を形成する半導体式ガス検知素子の製造方法。
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