JP3934690B2 - 光学異方体フィルムとその製造方法および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は液晶表示素子などに用いられる位相差フィルムの部材として有用な、液晶組成物を含む光学異方体フィルム、その製造方法、該光学異方体フィルムを用いた位相差フィルム、およびそれらを用いた液晶表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶デイスプレイは、低電圧駆動、軽量などの優れた特徴を有しており、パーソナルコンピューターやワードプロセッサーなどに広く用いられている。液晶ディスプレイのほとんどは、ネマチック液晶を用いており、複屈折モードと旋光モードの2つの方式に大別される。複屈折モードを用いる液晶ディスプレイのほとんどは、ねじれ角が90°以上の超ねじれネマチック液晶を用いた方式(以下STN方式と略することがある。)であり、低コストで大画面表示が可能である。しかしながら、STN方式は複屈折効果により表示を行なうため、黄色や青の着色が起こり、白黒表示ができないという欠点がある。
【0003】
該STN方式において白黒表示を実現するために、超ねじれネマチック(以下STNと略することがある。)液晶セルの上にセルギャップが同じで、ねじれ向きが逆の補償用液晶セルを重ねて色補償を行なう2層セル方式(特公昭63―53528号公報)が一部実用化されている。しかしながら、2層セル方式では液晶セルの法線方向からずれた斜め方向の色補償ができない。
また、STN方式以外の複屈折モードの表示方式として、負の誘電率異方性を有する液晶分子を基板に対して垂直方向に配向させたセルを用いる方式がある。この方式も電圧印加時に液晶分子が傾くことによるリターデーションの変化により表示を行う方式であるが、リターデーションの角度依存性が大きく、見る方向によって表示画面の色が変化するという問題点がある。
【0004】
旋光モードの液晶ディスプレイの例としては90°ねじれた分子配向を有する方式(以下TN方式と略することがある。)があり、代表的なものとして薄膜トランジスタやダイオードで各画素を駆動するパネルが実用化されている。しかし、TN方式においても、複屈折モードの場合と同じく見る方向によってコントラストや色が変化するという問題点がある。
【0005】
以上の問題点は、液晶分子がその長軸方向と短軸方向で異なる屈折率を有する(屈折率異方性)ことに起因するものであり、液晶分子の屈折率異方性による液晶ディスプレイのコントラストや表示色の角度依存性を小さくするために、TNセルの上に負の屈折率異方性を有するコレステリック液晶セルを重ねる方法(特開平4―346312号公報)やコレステリック相を示す高分子液晶を配向させた後、ガラス転移温度以下に急冷し配向を固定したフィルムを用いる方法(特開平6―166534号公報)が検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、補償用のコレステリック液晶セルを用いる方法では、パネル全体が重く、厚くなると同時に製造コストも高くなり、好ましくない。また、コレステリック相を有する高分子化合物を用いる方法では、ガラス転移点以下に急冷することでコレステリック相構造の固定を行うことから、ガラス転移温度が室温より十分に高いものを使用する必要があるため、配向処理にかなりの高温を要し、製造上好ましくないという問題点がある。さらに、高分子化合物を用いた場合、屈折率異方性の温度依存性が、液晶セルに比べて小さいために、パネルを使用する温度が変化すると、補償用フィルムの屈折率異方性と、液晶セルの屈折率異方性のずれが生じ、視野角の改善効果が小さくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、液晶セルの屈折率異方性に起因するコントラストや表示色の角度依存性を広い温度範囲で補償するために有効な、負の屈折率異方性を有する光学異方体フィルムおよびそれらの工業的な製造方法、並びに該光学異方体フィルムもしくは該光学異方体フィルムを含む位相差板およびこれらを用いたコントラストや表示色の角度依存性が少ない液晶表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、ある特定の構造を有する重合性の液晶オリゴマーを含む、コレステリック相を示す液晶組成物を配向させた後、重合によりねじれネマチック構造を固定して得られるフィルムが、広い温度範囲で液晶セルのコントラストや表示色の角度依存性の低減に有効であることを見いだした。
本発明の製造方法により、水平配向処理をおこなった基材上でねじれネマチック配向を有する、液晶オリゴマー重合体を含む光学異方体フィルムを得ることができ、広い温度範囲でコントラストや表示色の角度依存性の少ない液晶表示素子が得られることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次に記す発明からなる。
〔1〕ねじれネマチック配向した液晶組成物を含む光学異方体フィルムであり、ねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向とほぼ平行であり、フィルムの厚みをd(μm)、ねじれネマチック相の螺旋ピッチをP(μm)とするとき、d≧3×Pであり、かつP≦0.3μmまたはP≧0.8μmであり、該液晶組成物はコレステリック相を示し、かつ下記反復単位(I)および(II)を主たる構成単位とする直鎖または環状の液晶オリゴマー(A)から選ばれる液晶オリゴマーを1種類以上含有し、該液晶オリゴマー(A)の1分子中の反復単位(I)および(II)の数をそれぞれnおよびn’とするとき、nおよびn’は1から20までの整数であり、かつ4≦n+n’≦21であり、n:n’の比は20:1〜1:20であり、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基が重合していることを特徴とする光学異方体フィルム。
【化12】
【化13】
【0010】
〔式中、Aは下式(III)または(IV)で表される基であり、式(III)において−Si−O−は式(I)または(II)の主鎖であり、式(IV)において−C−CH2 −は式(I)または(II)の主鎖であり、COO基は側鎖のR1 またはR2 ではない側鎖に位置する。式(I)においてAが式(III)のとき、および式(II)においてAが式(III)のとき、R1 およびR2 はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である。式(I)においてAが式(IV)のとき、および式(II)においてAが式(IV)のとき、R1 、R2 は独立に水素または炭素数1〜6のアルキル基である。
【0011】
【化14】
【化15】
【0012】
kとk’は独立に2から10までの整数を表し、mとm’とは独立に0または1であり、Ar1 、Ar2 およびAr3 は独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2、5−ジイル基であり、L’は−CH2 −O−、−O−CH2 −、−COO−、−OCO−、−CH2 −CH2 −、−CH=N−、−N=CH−または
【化16】
で示される2価の基であり、p’は独立に0または1であり、Rは光学活性基を示し、R’は水素または炭素数1から5までのアルキル基である。〕
【0013】
〔2〕ねじれネマチック配向した液晶組成物を含む光学異方体フィルムであり、ねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向とほぼ平行であり、フィルムの厚みをd(μm)、ねじれネマチック相の螺旋ピッチをP(μm)とするとき、d≧3×Pであり、かつP≦0.3μmまたはP≧0.8μmであり、該液晶組成物はコレステリック相を示し、かつ〔1〕記載の液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーおよび重合性基を有する低分子化合物を1種類以上含有し、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または重合性基を有する低分子化合物が重合していることを特徴とする光学異方体フィルム。
【0014】
〔3〕ねじれネマチック配向した液晶組成物を含む光学異方体フィルムであり、ねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向とほぼ平行であり、フィルムの厚みをd(μm)、ねじれネマチック相の螺旋ピッチをP(μm)とするとき、d≧3×Pであり、かつP≦0.3μmまたはP≧0.8μmであり、該液晶組成物はコレステリック相を示し、かつ〔1〕記載の液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーおよび(A)以外の液晶オリゴマー(B)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーを含有し、該液晶オリゴマー(B)は下記反復単位(V)および(VI)を主たる構成単位とする直鎖または環状の液晶オリゴマーから選ばれ、該液晶オリゴマー(B)の1分子中の反復単位(V)および(VI)の数をそれぞれn’’およびn’’’とするとき、n’’およびn’’’は独立に0から20までの整数であり、かつ4≦n’’+n’’’≦21であり、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または液晶オリゴマー(B)の反復単位(VI)の末端基が重合していることを特徴とする光学異方体フィルム。
【0015】
【化17】
【化18】
【0016】
(式中A、R1 、R2 、k’、m’、p’、L’、Ar2 、Ar3 およびR’は前記と同じ意味を示す。k''は2から10までの整数を表し、m''は0または1であり、Ar4 およびAr5 は1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2、5−ジイル基であり、L''は−CH2 −O−、−O−CH2 −、−COO−、−OCO−、−CH2 −CH2 −、−CH=N−、−N=CH−または
【化19】
で示される2価の基であり、p''は独立に0または1であり、R''はハロゲン、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基を有するベンゾイルオキシ基を示す。)
【0017】
〔4〕ねじれネマチック配向した液晶組成物を含む光学異方体フィルムであり、ねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向とほぼ平行であり、フィルムの厚みをd(μm)、ねじれネマチック相の螺旋ピッチをP(μm)とするとき、d≧3×Pであり、かつP≦0.3μmまたはP≧0.8μmであり、該液晶組成物はコレステリック相を示し、かつ〔1〕記載の液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーおよび〔3〕記載の液晶オリゴマー(B)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーおよび重合性基を有する低分子化合物を1種類以上含有し、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または液晶オリゴマー(B)の反復単位(VI)の末端基および/または重合性基を有する低分子化合物が重合していることを特徴とする光学異方体フィルム。
【0018】
〔5〕〔1〕、〔2〕、〔3〕または〔4〕記載の光学異方体フィルムにおいて、Rが下式(VII)または(VIII)で表される液晶オリゴマーを含むことを特徴とする光学異方体フィルム。
【化20】
【化21】
(ここでR3 は−Hまたは下式(IX)を示し、
【化22】
R4 は−Hまたはメチル基を示し、R5 は−HまたはR6 を示し、R6 は直鎖または分岐を有する炭素数1〜20のアルキル基または直鎖または分岐を有する炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基を示し、分岐している場合は不斉炭素を有していてもよい。)
【0019】
〔6〕前記の〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕記載の液晶組成物をフィルムに成膜後、熱処理を行ないねじれネマチック配向の螺旋軸をフィルム法線方向にほぼ平行とした後、重合性基を重合することを特徴とする光学異方体フィルムの製造方法。
〔7〕前記の〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕記載の光学異方体フィルムと、表面に配向膜を有する透明または半透明である基材とが積層されてなる光学異方体フィルムと基材との積層体。
【0020】
〔8〕基材がガラス板または高分子フィルムであることを特徴とする〔7〕記載の光学異方体フィルムと基材との積層体。
〔9〕光学異方体フィルムと基材との積層体のみかけの屈折率が下記式(1)
【数2】
nX ≧nY >nZ (1)
(ここでnX 、nY はそれぞれ積層体の面内の屈折率の最大値、最小値を表し、nZ は積層体の厚み方向の屈折率を表す。)
を満たすことを特徴とする〔7〕記載の光学異方体フィルムと基材との積層体。
【0021】
〔10〕電極を有する基板に挟持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時にほぼ水平にかつ螺旋軸を基板に垂直方向にねじれ配向した液晶層からなる液晶セルと、その外側に配置される偏光フィルムとの間に、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕記載の光学異方体フィルム、または〔7〕もしくは〔8〕記載の光学異方体フィルムと基材との積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
〔11〕電極を有する基板に挾持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ水平に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕記載の光学異方体フィルム、または〔7〕もしくは〔8〕記載の積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
【0022】
〔12〕電極を有する基板に挾持された、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ垂直に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕または〔5〕記載の光学異方体フィルム、または〔7〕もしくは〔8〕記載の積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
【0023】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる液晶オリゴマー(A)は反復単位(I)および(II)からなる側鎖型液晶オリゴマーである。側鎖型液晶オリゴマーの、骨格鎖はポリ−1−アルキルアクリル酸エステル、ポリシロキサンなどが例示され、直鎖あるいは環状のものが利用できるが、液晶オリゴマーの化学的安定性の観点から、環状の構造が好ましい。ポリ−1−アルキルアクリル酸エステルではポリメタクリル酸エステルまたはポリアクリル酸エステルが好ましく、より好ましくはポリメタクリル酸エステルである。
これらの中で、ポリシロキサン系の側鎖型液晶オリゴマーが好ましい。液晶性を与える基(以下、メソゲン基ということがある。)は屈曲鎖(以下、スペーサーということがある。)を介して、主鎖と結合したものが一般的に使用できる。
【0024】
側鎖型液晶オリゴマー(A)は、液晶状態を示す上限の温度について特に制限はないが、基材との積層時の乾燥や配向処理のために、液晶相から等方相への転移温度(以下、液晶相/等方相の転移温度と記すことがある。)が好ましくは200℃以下になるように、さらに好ましくは170℃以下となるように、特に好ましくは150℃以下となるようにスペーサーの長さやメソゲン基の種類、重合度を選択することが好ましい。これら液晶オリゴマーの結晶相またはガラス相と液晶相との転移温度については特に制限はなく、室温以下の転移温度でも使用できる。
【0025】
本発明で用いる側鎖型液晶オリゴマーは、屈折率の異方性を持たせるために配向させることが必要であるが、その操作の容易さを決める要因として液晶オリゴマー(A)反復単位の数が重要である。反復単位の数が大きいと粘度が高く、また液晶転移温度が高いために、配向に高温や長時間が必要になり、また反復単位の数が小さいと配向が室温状態で緩和するので好ましくない。反復単位の数nとn’はそれぞれ独立に1から20までの整数であり、nとn’の合計が4から21となるように選ばれる。液晶オリゴマーの配向性と重合後の配向の固定の観点から、nとn’の比は20:1から1:20の範囲であり、より好ましくは5:1から1:10である。nとn’の比の制御は後述のようにこれら液晶オリゴマーを合成するときに行なうことができる。
【0026】
側鎖型液晶オリゴマーは主鎖とメソゲン基を結ぶスペーサーによっても、液晶転移温度、配向性が影響される。短いスペーサーではメソゲン基の配向性が良好でなく、また長いスペーサーではメソゲン基の配向後の緩和が起こりやすいことから、スペーサーとして、炭素数2から10までのアルキレン基またはアルキレンオキシ基が好ましい。特に高配向性の観点から炭素数2から6までのアルキレン基またはアルキレンオキシ基が好ましい。また、合成の容易さから、アルキレンオキシ基がより好ましい。具体的には好ましい基として−(CH2 )2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )4 −、−(CH2 )5 −、−(CH2 )6 −、−(CH2 )3 −O−、−(CH2 )4 −O−、−(CH2 )5 −O−、−(CH2 )6 −O−が例示される。
【0027】
本発明の光学異方体フィルムでは、屈折率の異方性が大きいことが工業上有利である。このためには、メソゲン基は屈折率異方性の大きな基が好ましい。このようなメソゲン基を与える構造としては、反復単位(I)または(II)式中のAr1 、Ar2 、Ar3 が、それぞれ独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基またはピリミジン−2,5−ジイル基のものが挙げられる。より好ましくは、Ar1 、Ar2 およびAr3 がそれぞれ独立に1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基であり、さらに好ましくは1,4−フェニレン基である。
【0028】
反復単位(I)におけるR基は液晶オリゴマーのコレステリック相の発現に寄与することから、光学活性基であることが必須であり、コレステリック相の安定化の観点から、下記構造を有する基が好ましい。
【化23】
または
【化24】
【0029】
(ここでR3 は−Hまたは下式を示し、
【化25】
R4 は−Hまたはメチル基を示し、R5 は−HまたはR6 を示し、R6 は直鎖または分岐を有する炭素数1〜20のアルキル基または直鎖または分岐を有する炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基を示し、分岐している場合は不斉炭素を有していてもよい。)
【0030】
反復単位(I)を持つ直鎖状もしくは環状の液晶オリゴマーに用いられるメソゲン基を表1および表2に例示する。
ここで、例えば、表1におけるスペーサーの欄の番号1は反復単位(I)において、―Ar1 ―Rが
【化26】
であり、R3 基が
【化27】
であり、スペーサーの―(CH2 )k ―(O)m −が―(CH2 )3 ―である反復単位(k=3、m=0の場合)を表す。以下の番号も同様の意味であり、表2以下においても同様の意味である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
このうち、より好ましい構造としては番号1〜6および番号31〜36の反復単位が挙げられる。
【0034】
反復単位(II)におけるAr2 とAr3 を結合する2価の基L’としては、−CH2 −O−、−O−CH2 −、−COO−、−OCO−、−CH2 −CH2 −、−CH=N−、−N=CH−もしくは
【化28】
である基、またはAr2 とAr3 が直接結合した基が挙げられる。さらに結合基L' は−CH2 −CH2 −、−COO−、−OCO−基が好ましく、さらに好ましくは−COO−基である。
【0035】
反復単位(II)における末端基は、液晶オリゴマーの配向を重合により固定する基である。重合基としては−OCO−C(R’)=CH2 (R’は水素あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す)であり、アクリレート基、メタアクリレート基が例示される。これらの基の重合方法には特に制限はないが、ラジカル開始剤による光重合や熱重合が例示され、操作の簡便さや配向の固定の効率の観点から、光重合が好ましい。光重合の開始剤としては公知のものが利用できる。
【0036】
反復単位(II)を持つ直鎖状もしくは環状の液晶オリゴマーに用いられる重合性のメソゲン基を表3および表4に例示する。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
これらの重合性のメソゲン基の中で、メタクリレート基を有する番号67〜72、79〜84、91〜96、139〜144、151〜156の基が好ましく、より好ましくは番号79〜84の基である。これらのメソゲン基は直鎖、または環状ポリシロキサン系主鎖に結合したものが、良好な特性を示すことから好ましく、より好ましくは環状ポリシロキサンに結合したものである。
【0040】
本発明の光学異方体フィルムにおいては、可視光の選択反射によるフィルムの着色を避けるために、用いる液晶組成物のコレステリック相螺旋ピッチ長を0.3μm以下または0.8μm以上に調整する必要がある。液晶組成物のコレステリック相螺旋ピッチ長は、液晶オリゴマー(A)のメソゲンの構造によっても、反複単位(I)および(II)の比率を変化することによっても制御できる。
【0041】
液晶オリゴマー(A)の合成方法としては特公昭63―41400号公報や特公昭63―47759号公報や特開平2―149544号公報に記載の方法が採用できる。例えばポリシロキサン鎖に該側鎖のメソゲン基を付加させる方法やメソゲン基を屈曲性のスペーサー基を介して有するアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを重合する方法が例示される。
【0042】
ポリシロキサン鎖にメソゲン基を付加する場合には、反復単位(I)または(II)の側鎖のメソゲン基と同じ構造を有し、スペーサーであるアルキレンオキシ基を生成する末端に不飽和2重結合を有するω−アルケニルオキシ基を有する反応原料をポリシロキサンと白金触媒下に反応させることで得られる。この反応時に、非重合性のメソゲン基と重合性のメソゲン基に対応する反応原料仕込み比率で2種類のメソゲン基の結合比率を制御することができる。同様に、主鎖がアクリル酸エステル系またはα−アルキルーアクリル酸エステル系では相当するメソゲン基を有する2種類のモノマーを共重合する際にモノマーの仕込み比率を制御することで重合性メソゲン基と非重合性のメソゲン基の比率を制御できる。
このようにして得られた液晶オリゴマーは、コレステリック相を示すものが好ましく用いられる。
【0043】
液晶組成物の螺旋ピッチ長を制御する別の方法としては、液晶オリゴマー(A)に他の液晶オリゴマーや低分子化合物を混合する方法が挙げられる。オリゴマー(A)に他の液晶オリゴマーを混合する場合、混合する液晶オリゴマーとしては、液晶オリゴマー(A)から選ばれる液晶オリゴマーの他に、反復単位(V)および(VI)を主成分とする液晶オリゴマー(B)が挙げられる。
【0044】
本発明で用いる側鎖型液晶オリゴマーは、屈折率の異方性を持たせるために配向させることが必要であるが、その操作の容易さを決める要因として液晶オリゴマー(B)の反復単位の数が重要である。反復単位の数が大きいと粘度が高く、また液晶転移温度が高いために、配向に高温や長時間が必要になり、また反復単位の数が小さいと配向が室温状態で緩和するので好ましくない。反復単位の数n''とn''' はそれぞれ独立に0から20までの整数であり、n''とn''' の合計が4から21となるように選ばれる。n''とn''' の比は任意に選ぶことができ、n''とn''' の比の制御はこれら液晶オリゴマーを合成するときに行なうことができる。
【0045】
側鎖型液晶オリゴマーは主鎖とメソゲン基を結ぶスペーサーによっても、液晶転移温度、配向性が影響される。短いスペーサーではメソゲン基の配向性が良好でなく、また長いスペーサーではメソゲン基の配向後の緩和が起こりやすいことから、スペーサーとして、炭素数2から10までのアルキレン基またはアルキレンオキシ基が好ましい。特に高配向性の観点から炭素数2から6までのアルキレン基またはアルキレンオキシ基が好ましい。また、合成の容易さから、アルキレンオキシ基がより好ましい。具体的には好ましい基として−(CH2 )2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )4 −、−(CH2 )5 −、−(CH2 )6 −、−(CH2 )3 −O−、−(CH2 )4 −O−、−(CH2 )5 −O−、−(CH2 )6 −O−が例示される。
【0046】
得られる光学異方体フィルムの屈折率異方性を大きくするために、液晶オリゴマー(B)においても、メソゲン基は屈折率異方性の大きな基が好ましい。このようなメソゲン基を与える構造としては、反復単位(V)および(VI)式中のAr2、Ar3、Ar4およびAr5が、それぞれ独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基またはピリミジン−2,5−ジイル基のものが挙げられる。より好ましくは、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5がそれぞれ独立に1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基であり、さらに好ましくは1,4−フェニレン基である。
反復単位(V)および(VI)式中のAr2およびAr3、Ar4およびAr5を結合する2価の基L’、L’’としては、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、−OCO−、−CH2−CH2−、−CH=N−、−N=CH−もしくは
【化29】
である基、またはAr2とAr3またはAr4とAr5が直接結合した基が挙げられる。さらに結合基L’およびL’’は、それぞれ独立に−CH2−CH2−、−COO−または−OCO−基が好ましく、さらに好ましくは−COO−基である。
【0047】
反復単位(V)におけるR''基は、メソゲン基の誘電率異方性や配向性に影響するため、屈折率異方性の高い液晶オリゴマーフィルムを得る観点から、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基を有するベンゾイルオキシ基が選ばれる。好ましくは、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基であり、より好ましくはシアノ基である。
【0048】
反復単位(V)に示される繰り返し単位を有する直鎖状もしくは環状の液晶オリゴマーに用いられるメソゲン基を表5、表6、表7および表8に例示する。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
これらのメソゲン基のなかで、シアノ基を有する番号159〜162、187〜192、217〜222、337〜342および367〜372の基が好ましく、より好ましくは番号187〜192である。これらのメソゲン基はポリシロキサン系主鎖に結合したものが高い配向性を示すことから好ましく、より好ましくは環状シロキサンに結合したものである。
【0054】
反復単位(VI)における末端基は、液晶オリゴマーの配向を重合により固定する基である。重合基としては−OCO−C(R’)=CH2 (R’は水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す)であり、アクリレート基、メタクリレート基が例示される。これらの基の重合方法には特に制限はないが、ラジカル開始剤による光重合や熱重合が例示され、操作の簡便さや配向の固定の効率の観点から、光重合が好ましい。光重合の開始剤としては公知のものが利用できる。
【0055】
反復単位(VI)を持つ直鎖状もしくは環状の液晶オリゴマーに用いられる重合性のメソゲン基としては表3および表4と同じものが例示される。
表3および表4記載の重合性のメソゲン基の中で、メタクリレート基を有する番号67〜72、79〜84、91〜96、139〜144、151〜156の基が好ましく、より好ましくは番号79〜84の基である。これらのメソゲン基は直鎖、または環状ポリシロキサン系主鎖に結合したものが、良好な特性を示すことから好ましく、より好ましくは環状ポリシロキサンに結合したものである。
【0056】
液晶オリゴマー(B)の合成方法としては液晶オリゴマー(A)と同様の方法が採用できる。
このようにして得られる液晶オリゴマー(B)はネマチック相を示すのものが好ましい。また、液晶オリゴマー(A)、または液晶オリゴマー(A)と(B)の混合物に低分子化合物を混合してコレステリック相螺旋ピッチ長を制御する場合、光学異方体フィルムの製造において液晶組成物を配向後重合させるため、重合後の相溶性が重要である。このため、用いる低分子化合物は重合性基を有しているものが好ましい。
【0057】
また、液晶オリゴマーに添加する重合性の低分子化合物の構造としては、均一に混合するために、液晶相を示すものが好ましい。
重合性低分子化合物としては、以下のような化合物が例示されるが、これらは本発明に用いることができる低分子化合物を限定するものではない。
【化30】
(上記具体例において、aは1〜10の整数を表し、bは0〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基またはアルコキシ基を示す。Rが分岐している場合は光学活性であってもよい。)
また、低分子化合物の添加量は液晶組成物の0〜50wt%が好ましく、より好ましくは0〜40%である。低分子化合物の添加量が50%を超えると、成膜性や配向の安定性が損なわれる可能性がある。
【0058】
本発明の光学異方体フィルムの製造法は液晶組成物を成膜した後、熱処理を行い、ねじれネマチック配向の螺旋軸をフィルム法線方向にほぼ平行とした後、重合性基を重合する方法である。液晶組成物を成膜する方法としては特に制限はないが、平滑な基材上に成膜することが一般的である。基材上に成膜した光学異方体フィルムは基材からはがして使用することもできるし、基材とともに使用することもできるが成膜に用いた基材とともに使用するのが一般的である。用いる基材としては透明または半透明の基材が好ましく、具体的にはガラスなどの無機質基板や、高分子フィルムなどが挙げられる。
無機質基板としては透明もしくは半透明のガラス板、または液晶セルに使用されるガラス板の外側や、Si、Al、Mg、Zrなどの酸化物やフッ化物などの無機化合物やセラミックスが例示される。
【0059】
高分子フィルムとしてはポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、2酢酸セルロース、3酢酸セルロース、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが例示され、より好ましくはポリカーボネート、ポリスルホン、3酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンが例示される。
【0060】
用いる高分子フィルムの厚みは特に制限はないが、0.8μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは40μm以上200μm以下である。
これらの高分子フィルムの製造方法としては、溶剤キャスト法、押出成形法、プレス成形法などの成形方法を用いればよい。
また、基材が高分子フィルムの場合は、後述するように液晶オリゴマーの熱処理を行うに際し、用いる基材のガラス転移温度、または添加材が添加されている基材では基材の流動温度以上では基材の変形が生じるなどの製法上の問題を避けるために、熱処理温度に応じた基材を選択することが好ましい。
【0061】
本発明の光学異方体フィルムにおいては、液晶組成物をねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向と平行になるように配向させるが、このようなねじれネマチック配向を実現するには、基板表面に水平配向処理を行うのが一般的である。
水平配向処理法としてはラビング法や斜方蒸着法など公知の方法を用いることができるが、工業化の点からラビング法がより好ましい。
ラビング法を用いる場合、液晶オリゴマーを成膜する前の基材を直接ラビングするか、基材上に配向膜を形成した後ラビング処理を行なうが、配向の安定性の点から配向膜を形成後ラビング処理を行う方法が好ましい。
【0062】
配向膜としては液晶分子を水平配向させるものであれば公知のものが使用可能である。例えばポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどが例示される。
配向膜の塗布法としてはロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、プリント法、ディッピング法などが例示される。
配向膜の膜厚については、一般的に0.01μm以上であれば配向性能を発揮するが、配向膜が厚すぎると作業性が悪くなることから、0.01〜5.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0μmである。
【0063】
次いで、塗布した配向膜の種類に応じて、乾燥、硬化などの後処理を行ったのち、配向膜のラビングを行う。ラビング方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ラビングローラーを用いる場合は、ラビングローラーの材質や、ラビングローラーの配向膜への押し込み量、基材に対するローラーの移動速度、ラビング回数などに特に制限はなく、配向膜の種類や、液晶オリゴマーの種類などに応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0064】
斜方蒸着法としては、無機物の斜方蒸着膜を使う方法が例示され、無機物としては蒸着時に柱状成長するものが好ましく、SiO、SiO2、SiOx(ここで1<x<2)、MgO、MgOy(ここで0<y<1)、MgF2、Pt、ZnO、MoO3、WO3、Ta2O5、SnO2、CeO2、LiNbO3、LiTaO3、ZrO2、Bi2O3、TiZrO4、HfO2などが例示され、この中でもSiO、SiO2、SiOx(ここで1<x<2)、MgO、MgOy(ここで0<y<1)、MgF2、Pt、ZnOが好ましく用いられ、更に好ましくはSiO、SiO2、SiOx(ここで1<x<2)が用いられる。
斜方蒸着法については、抵抗加熱による蒸着や、電子線加熱による蒸着方法やスパッタリング法が例示される。高融点の無機物を蒸着するため電子線加熱による蒸着法やスパッタリング法が好ましい。蒸着の際の真空度は特に制限はないが、蒸着膜の均一性の観点から圧力の上限が決まり、生産性の観点から圧力の下限が決まる。具体的には1×10−3〜1×10−7Torrが例示され、好ましくは5×10−4〜5×10−6Torrである。
無機物の蒸着速度については、蒸着速度が小さいと生産性が悪くなり、蒸着速度が大きいと蒸着膜の均一性が悪くなることから、蒸着速度は0.01〜10nm/秒が好ましく、更に好ましくは0.1〜5nm/秒である。
蒸着した無機物の膜厚については、膜厚が薄いと配向が悪くなり、膜厚が厚いと生産性が悪くなることから、0.01μm〜1000μmが例示され、好ましくは0.05〜100μm、更に好ましくは0.1〜5μmである。
【0065】
次いで水平配向処理を施した基材上に液晶組成物を成膜する。該液晶組成物の成膜方法としては、液晶組成物を溶液状態で塗布する方法、等方相状態で塗布する方法が例示され、溶液状態から塗布する方法が好ましい。塗布方法としては通常のロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、プリント法、デッピング法などが例示される。
【0066】
得られるフィルムの厚みとしては0. 1〜20μmが好ましく、さらに好ましくは0. 5〜10μmであり、特に好ましくは1〜7μmである。0. 1μmより薄いと光学的な特性の発現が小さくなり、20μmを超えると経済的に好ましくない。
また、フィルムの厚みは、用いる液晶組成物の螺旋ピッチ長も考慮して設定する必要がある。すなわち、得られるフィルムの厚みは用いる液晶組成物のコレステリック相螺旋ピッチ長の好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上の厚みが望ましい。フィルムの厚みが小さいと、コレステリック相の旋光性により偏光板を直交させた状態でも光の漏れが生じ、液晶セルに搭載した場合、コントラストの低下につながり好ましくない。
【0067】
次いで、液晶組成物の熱処理を行う。熱処理温度をTt (℃)、液晶組成物の結晶相またはガラス相から液晶相への転移温度をTg (℃)、基材や配向膜の変形が生じる温度をTk (℃)と書くことにすると、熱処理温度は(Tg +30)≦Tt ≦(Tk −30)が好ましく、(Tg +40)≦Tt ≦(Tk −40)の範囲で熱処理することがより好ましく、製造の容易さを考えると60〜200℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理時間はあまり短いとねじれネマチック配向が実現せず、あまり長いと工業的に好ましくないので、0.2分以上20時間以下が好ましく、1分以上1時間以下がさらに好ましい。
以上の熱処理により、液晶組成物は、フィルム法線方向に平行な螺旋軸を有するねじれネマチック配向をするようになる。熱処理における加熱速度、冷却速度については特に制限はない。
【0068】
次いで、ねじれネマチック配向を固定化するために、液晶組成物を重合する。重合方法としては配向を保持したままで重合することが必要であるから、光重合、γ線などの放射線重合や熱重合が例示される。光重合や熱重合では公知の重合開始剤を用いることができる。これらの重合方法の中で工程の簡単さから、光重合と熱重合が好ましく、さらに、配向の保持の良好さから光重合がより好ましい。
光重合を行う場合の照射光強度は、フィルムの厚みや用いる液晶オリゴマーの種類に応じて最適値を選択すればよいが、好ましくは0.01〜5.0J/cm2 の範囲であり、より好ましくは0.1〜3.0J/cm2 である。照射光量が0.01J/cm2 より少ない場合は重合基の反応が不十分となる可能性があり、5.0J/cm2 より多いと製造コスト上問題である。
【0069】
本発明の液晶表示装置は、電極を有する基板に挟持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時にほぼ水平にかつ螺旋軸を基板に垂直方向にねじれ配向した液晶層からなる液晶セルと、その外側に配置される偏光フィルムとの間に、本発明の光学異方体フィルム、または光学異方体フィルムと基材との積層体から選ばれた少なくとも一つを含むものである。本発明の液晶表示装置における電圧無印加時にほぼ水平にかつ螺旋軸を基板に垂直方向にねじれ配向した液晶層からなる液晶セルの具体例としては、ねじれ角が約90度のTN型液晶セルやねじれ角が180度から300度のSTN型液晶セルが挙げられる。本発明の液晶表示装置においては偏光板および本発明の光学異方体フィルムの配置方法は特に限定されず、要求特性に応じて適当な配置を選ぶことができる。また、該液晶表示装置において、光学異方体フィルムは偏光板と液晶セルの間であれば、液晶セルの片側のみに配置されていてもよいし、両側に配置されていてもよい。
【0070】
また、本発明の液晶表示装置は、電極を有する基板に挾持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ水平に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、本発明の光学異方体フィルム、または光学異方体フィルムと基材との積層体から選ばれた少なくとも一つを含むものである。本発明の液晶表示装置における正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ水平に配向した液晶層からなる液晶セルの具体例としては前記のTN型液晶セルまたはSTN型液晶セルにおいて、ねじれ角をほぼ0度としたものが挙げられる。液晶セルにおけるねじれ角は、液晶材料に添加するねじれ剤の量や、上下基板の配向処理によって調節することができる。本発明の液晶表示装置においては偏光板および本発明の光学異方体フィルムの配置方法は特に限定されず、要求特性に応じて適当な配置を選ぶことができる。また、該液晶表示装置において、光学異方体フィルムは偏光板と液晶セルの間であれば、液晶セルの片側のみに配置されていてもよいし、両側に配置されていてもよい。
【0071】
また、本発明の液晶表示装置は、電極を有する基板に挾持された、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ垂直に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、本発明の光学異方体フィルム、または光学異方体フィルムと基材との積層体から選ばれた少なくとも一つを含むものである。本発明の液晶表示装置における電極を有する基板に挾持された、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ垂直に配向した液晶層からなる液晶セルは、例えば垂直配向処理を施した基板に液晶材料を挟持して作製することができる。本発明の液晶表示装置においては偏光板および本発明の光学異方体フィルムの配置方法は特に限定されず、要求特性に応じて適当な配置を選ぶことができる。また該液晶表示装置において、光学異方体フィルムは偏光板と液晶セルの間であれば、液晶セルの片側のみに配置されていてもよいし、両側に配置されていてもよい。
【0072】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
液晶オリゴマーの相転移温度は走査型示差熱量計(DSC)および偏光顕微鏡によるテクスチャー観察により決定した。
また、得られた光学異方体フィルムが負の屈折率異方性を有することは、光学異方体フィルム法線に垂直な面内のリターデーションが0であること、および水平面からフィルムを傾けるとレターデーションが増加することにより確認した。
なお、レターデーションの測定は偏光顕微鏡で546nmの光でセナルモン法を用いて行った。
【0073】
実施例1
洗浄したガラス基板にポリイミド配向膜をスピンコート法により成膜し、200℃で3時間熱処理した。得られた配向膜の膜厚は約0.02μmであった。次いで配向膜をラビングマシーンを用いてラビングした。
特公昭63−41400号公報記載の方法と同様にして、下記のビニルモノマー(1)と(2)を7:3の混合比でペンタメチルシクロペンタシロキサンと反応させ環状ペンタシロキサン液晶オリゴマーを得た。
【化31】
【0074】
この液晶オリゴマーのガラス転移温度は14℃、等方相への転移温度は114℃であり、14℃〜114℃でコレステリック相を示した。また、この液晶オリゴマーとネマチック液晶との組成物の選択反射波長の測定値より外挿した結果、液晶オリゴマー単独の選択反射波長は280nmであった。この波長よりこの液晶オリゴマーのコレステリック相螺旋ピッチは0.2μmと計算される。
得られた液晶オリゴマーをトルエンに40%になるよう溶解し、さらに光重合開始剤としてイルガキュア―907(チバガイギー社製)を液晶オリゴマーに対して2.0wt%になるように混合した。この溶液をポリイミド配向膜付きガラス基板にスピンコートした。得られた液晶オリゴマーフィルムは白濁しており、偏光顕微鏡で観察したところ、全く配向していなかった。
次いで、この液晶オリゴマーフィルムを80℃で5分加熱した後、高圧水銀ランプを用いて積算光量が0.2J/cm2 になるように紫外線を照射した。
得られた液晶オリゴマー重合物フィルムの膜厚は6μmでコレステリック相螺旋ピッチの30倍であり、可視光の選択反射による着色は認められなかった。この液晶オリゴマー重合物フィルムはクロスニコル下で消光し、光学異方体フィルムであり、レターデーションはほぼ0であった。また50°傾けたときのレターデーションは46nmであった。
【0075】
実施例2
洗浄したガラス基板にポリビニルアルコール配向膜をスピンコート法により成膜し、100℃で1時間熱処理した。得られた配向膜の膜厚は約0. 05μmであった。次いで配向膜をラビングマシーンを用いてラビングした。
特公昭63−41400号公報記載の方法と同様にして、下記のビニルモノマー(3)をペンタメチルシクロペンタシロキサンと反応させて環状ペンタシロキサン液晶オリゴマーを得た。
【化32】
【0076】
この液晶オリゴマーのガラス転移温度は20℃、等方相への転移温度は97℃であり、20℃〜97℃でネマチック相を示した。
得られた液晶オリゴマーと実施例1で用いた液晶オリゴマーを5:95(重量比)で混合し、トルエンに固形分が30wt%になるよう溶解し、さらに光重合開始剤としてイルガキュア―907(チバガイギー社製)を液晶オリゴマーに対して2.0wt%になるように混合した。この溶液をポリビニルアルコール配向膜付きガラス基板にスピンコートした。
得られた液晶オリゴマーフィルムは偏光顕微鏡で観察した結果、コレステリック相を示していることが確認された。また、この液晶オリゴマーは白濁しており、偏光顕微鏡で観察したところ、全く配向していなかった。
次いで、この液晶オリゴマーフィルムを等方相となる温度から徐冷し、配向させた後、高圧水銀ランプを用いて積算光量が0.2J/cm2 になるように紫外線を照射した。
得られた液晶オリゴマー重合物フィルムの膜厚は3μmで可視光の選択反射による着色は認められなかった。この液晶オリゴマー重合物フィルムはクロスニコル下で消光し、光学異方体フィルムであり、レターデーションはほぼ0であった。また50°傾けたときのレターデーションは21nmであった。
【0077】
実施例3
洗浄したガラス基板にポリビニルアルコール配向膜をスピンコート法により成膜し、100℃で1時間熱処理した。得られた配向膜の膜厚は約0. 05μmであった。次いで配向膜をラビングマシーンを用いてラビングした。
特公昭63−41400号公報記載の方法と同様にして、実施例1で用いたビニルモノマー(2)および実施例2で用いたビニルモノマー(3)を1:1の比でペンタメチルシクロペンタシロキサンと反応させ環状ペンタシロキサン液晶オリゴマーを得た。
この液晶オリゴマーのガラス転移温度は19℃、等方相への転移温度は118℃であり、19℃〜118℃でスメクチック相を示した。
得られた液晶オリゴマーと実施例1で用いた液晶オリゴマーを10:90(重量比)で混合し、トルエンに固形分が30wt%になるよう溶解し、さらに光重合開始剤としてイルガキュア―907(チバガイギー社製)を液晶オリゴマーに対して2.0wt%になるように混合した。この溶液をポリビニルアルコール配向膜付きガラス基板にスピンコートした。
【0078】
得られた液晶オリゴマーフィルムは偏光顕微鏡で観察した結果、コレステリック相を示していることが確認された。またこの液晶オリゴマーは白濁しており、偏光顕微鏡で観察したところ、全く配向していなかった。
次いで、この液晶オリゴマーフィルムを等方相となる温度から徐冷し、配向させた後、高圧水銀ランプを用いて積算光量が0.2J/cm2 になるように紫外線を照射した。
得られた液晶オリゴマー重合物フィルムの膜厚は4μmで可視光の選択反射による着色は認められなかった。この液晶オリゴマー重合物フィルムはクロスニコル下で消光し、光学異方体フィルムであり、レターデーションはほぼ0であった。また50°傾けたときのレターデーションは15nmであった。
実施例1〜3で得られた光学異方体フィルムをTN液晶セルと偏光板の間に挿入すると、コントラストの視野角依存性の少ないTN液晶パネルが得られる。
【0079】
【発明の効果】
本発明の、負の屈折率異方性を有する光学異方体フィルムを用いることで広視野角の位相差板が得られる。
また、これらをTNやSTN型液晶表示装置に適用することにより、液晶表示装置の表示特性、特に視野角特性を著しく向上させることができる。
さらに、本発明の光学異方体フィルムは、屈折率異方性の温度依存性が液晶パネルに近いことから、広い温度範囲において液晶セルの視野角特性を改善することができる。
Claims (11)
- ねじれネマチック配向した液晶組成物を含む光学異方体フィルムであって、
ねじれネマチック配向の螺旋軸がフィルム法線方向とほぼ平行であり、
フィルムの厚みをd(μm)、ねじれネマチック相の螺旋ピッチをP(μm)とするとき、d≧3×Pであり、かつP≦0.3μmまたはP≧0.8μmであり、
該液晶組成物はコレステリック相を示し、かつ下記反復単位(I)および(II)を主たる構成単位とする直鎖または環状の液晶オリゴマー(A)から選ばれる液晶オリゴマーを1種類以上含有し、
該液晶オリゴマー(A)の1分子中の反復単位(I)および(II)の数をそれぞれnおよびn’とするとき、nおよびn’は1から20までの整数であり、かつ4≦n+n’≦21であり、n:n’の比は20:1〜1:20であり、
液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基が重合していることを特徴とする光学異方体フィルム。
R1およびR2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基であり;
kおよびk’はそれぞれ独立に2から10までの整数を表し;
mおよびm’はそれぞれ独立に0または1であり;
Ar1、Ar2およびAr3はそれぞれ独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基またはピリミジン−2,5−ジイル基であり;
L’は−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、−OCO−、−CH2−CH2−、−CH=N−、−N=CH−または
p’は0または1であり;
Rは下式(VII)または(VIII)
R’は水素または炭素数1から5までのアルキル基である。〕 - 該液晶組成物は、液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーに加えて、重合性基を有する低分子化合物を1種類以上含有し、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または重合性基を有する低分子化合物が重合していることを特徴とする請求項1記載の光学異方体フィルム。
- 該液晶組成物は、液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーに加えて、(A)以外の液晶オリゴマー(B)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーを含有し、該液晶オリゴマー(B)は下記反復単位(V)および(VI)を主たる構成単位とする直鎖または環状の液晶オリゴマーから選ばれ、該液晶オリゴマー(B)の1分子中の反復単位(V)および(VI)の数をそれぞれn’’およびn’’’とするとき、n’’およびn’’’は独立に0から20までの整数であり、かつ4≦n’’+n’’’≦21であり、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または液晶オリゴマー(B)の反復単位(VI)の末端基が重合していることを特徴とする請求項1記載の光学異方体フィルム。
k’’は2から10までの整数を表し;
m’’は0または1であり;
Ar4およびAr5はそれぞれ独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基またはピリミジン−2,5−ジイル基であり;
L’’は−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、−OCO−、−CH2−CH2−、−CH=N−、−N=CH−または
p’’は0または1であり;
R’’はハロゲン、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基を有するベンゾイルオキシ基を示す。) - 該液晶組成物は、液晶オリゴマー(A)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーおよび液晶オリゴマー(B)から選ばれる1種類以上の液晶オリゴマーに加えて、重合性基を有する低分子化合物を1種類以上含有し、液晶オリゴマー(A)の反復単位(II)の末端基および/または液晶オリゴマー(B)の反復単位(VI)の末端基および/または重合性基を有する低分子化合物が重合していることを特徴とする請求項3記載の光学異方体フィルム。
- 請求項1、2、3または4記載の液晶組成物をフィルムに成膜後、熱処理を行ないねじれネマチック配向の螺旋軸をフィルム法線方向にほぼ平行とした後、重合性基を重合することを特徴とする光学異方体フィルムの製造方法。
- 請求項1、2、3または4記載の光学異方体フィルムと、表面に配向膜を有する透明または半透明である基材とが積層されてなる光学異方体フィルムと基材との積層体。
- 基材がガラス板または高分子フィルムであることを特徴とする請求項6記載の光学異方体フィルムと基材との積層体。
- 光学異方体フィルムと基材との積層体のみかけの屈折率が下記式(1)
【数1】
nX≧nY>nZ (1)
(ここでn X 、n Y はそれぞれ積層体の面内の屈折率の最大値、最小値を表し、n Z は積層体の厚み方向の屈折率を表す。)
を満たすことを特徴とする請求項6記載の光学異方体フィルムと基材との積層体。 - 電極を有する基板に挟持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時にほぼ水平にかつ螺旋軸を基板に垂直方向にねじれ配向した液晶層からなる液晶セルと、その外側に配置される偏光フィルムとの間に、請求項1、2、3もしくは4記載の光学異方体フィルム、または請求項6もしくは7記載の光学異方体フィルムと基材との積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
- 電極を有する基板に挾持された、正の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ水平に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、請求項1、2、3もしくは4記載の光学異方体フィルム、または請求項6もしくは7記載の積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
- 電極を有する基板に挾持された、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に基板に対してほぼ垂直に配向した液晶層からなる液晶セルとその外側に配置される偏光フィルムとの間に、請求項1、2、3もしくは4記載の光学異方体フィルム、または請求項6もしくは7記載の積層体から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする液晶表示装置。
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