JP3934292B2 - 脱離層を有する物品、該物品から該表面層を脱離、除去する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、その表面に形成された耐水性及び意匠性に優れた文字や模様等の印刷層を水系溶液で容易に脱離可能なプラスチック容器やプラスチック包装容器等の物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックは、容器、包装袋等と極めて多岐にわたる用途で使用されており、それらの多くはその表面が印刷されたり、印刷加工されている。プラスチックは自然界で分解しにくいこと、省資源、経済性等より一部は分別され回収されており、再生加工されて二次製品として利用されている。しかし、再生に際して印刷等が施されたプラスチック製品が混入すると再生製品全体が着色されたり、あるいは部分的に着色されることから、再生製品の着色は商品価値を著しく低下させ、再使用できない場合が多く、また、物性的に致命的な欠点を起こす場合がある。このような印刷等が施されたプラスチック製品は、回収(再使用のための)されず廃棄されているのが現状である。昨今、ダイオキシン等の環境汚染が社会問題となり、特に焼却が問題となっており、リサイクルできる方法が強く求められている。
【0003】
印刷等が施されているプラスチックフィルム、プラスッチック容器等は再生利用されることは少なく、ほとんど廃棄されている現状に鑑み、印刷されたプラスチックをリサイクルする観点から、プラスチック製品から印刷層を除去する方法が従来から検討されている。例えば、特公昭52−26549号公報には、印刷被膜成分を、それを溶解若しくは膨潤させる溶媒で脱離(剥離)させて脱色させる方法が記載されている。この溶媒を用いる方法は、廃液中に存在する有機溶媒の分離回収、引火性等を考えると防爆装置の設置、安全管理上等問題点が多い。
【0004】
又、希アルカリ水溶液で処理する方法も提案されているが、この方法は単純で経済的であるが、印刷インキは一般的にウレタン樹脂、アクリル樹脂、繊維系樹脂、ロジン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の疎水性のポリマーを用いることが多く、アルカリ処理をしても簡単には印刷インキを脱離させることはできない。
【0005】
更に、特公昭58−152913号公報、特願平10−135582号、あるいは特願平10−257711号においては、印刷インキ中にアルカリ可溶性のポリマーあるいは水膨潤性ポリマーを添加し、印刷層をアルカリ性にして脱落させる内添方法が検討されている。この内添方法は、インキ物性と脱離性を兼ね備えた組み合わせからなる優れた方法であるが、適用範囲が狭いのが問題である。例えば、使用するインキ中のポリマーとの相溶性を考慮してアルカリ可溶性のポリマーを添加しないと、印刷層の艶、透明性を低下させ、印刷インキの凝集、増粘現象を起こしてインキとしての適性を欠くことになる。又、インキの中の樹脂が、エラスティック特性を持たない場合には、アルカリ可溶性ポリマーあるいは水膨潤性ポリマーの添加によって印刷層を脱離させようとしても自発的に脱落せず、更には、その脱落物が微小の分散体となり、脱落体を回収するには細かく前処理をするか、あるいは高価な濾過装置を設置しなければならない場合が多い。このような難点を回避し、プラスチックフィルムやプラスチック容器に印刷された印刷層(インキ被膜)を希アルカリ水溶液で処理し、無色の状態でプラスチック容器等を回収、再生することが当面の大きな課題である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、文字や模様等の印刷層の諸物性を落とすことなく、従来の印刷インキによるプラスチックフィルムやプラスチック容器、紙容器及びガラス容器等の物品への印刷が可能で、且つ、リサイクル時に、水系溶液による処理で印刷層(インキ被膜)を容易に脱離(剥離)、除去することができる物品及び該物品からの印刷層の脱離、除去方法を提供することである。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、基材(物品)と印刷層との中間に、両者に対して良好なる接着性を有し、且つ熱希アルカリ水処理で基材より脱離可能な脱離層を設けることにより、特殊なインキを使用する必要がなく、通常のインキを使用して艶、透明性、接着性、耐水性、印刷適性等の基礎物性を有する印刷層の形成が可能な物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、その上に印刷層が形成されている脱離層を表面に有する物品において、上記脱離層は、少なくとも、中和処理によって水膨潤性となる材料である、分子中にモノマー単位としてアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びフタル酸から選択される少なくとも一種の重合性不飽和カルボン酸単位を20〜70重量%含有する架橋共重合体で形成されていることを特徴とする脱離層を有する物品及び脱離層上に印刷層が形成された上記の脱離層を有する物品を、アルカリ性水溶液で処理することを特徴とする物品から印刷層および脱離層を脱離、除去する方法である。
【0009】
プラスチック製等の物品の表面に脱離層を設けることによって、通常のインキによって、通常のインキ特性を有する印刷層が形成され、且つ、リサイクル時には、印刷層が形成された脱離層は熱希アルカリ水溶液によって物品より剥がれ、上層の印刷層(インキ被膜)は小片化せずに脱離層と一緒に剥離するので後処理も極めて容易になる。更に詳しくは、水系での中和処理によって処理液は脱離層に達し、脱離層は中和されることによって親水化、又は、膨潤によって物品との接着性が無くなり、脱離層は印刷層ごと自発的にフィルム状或いは塊状状態で物品から脱落することにより、脱離物の分離等の後処理も容易になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明の特徴は、物品の表面に形成され、その上に直接又は他の層を設けて印刷加工を行う脱離層が、少なくとも中和処理によって水膨潤性となる共重合体成分(以下では脱離成分と称することがある。)で形成されていることである。
【0011】
本発明における脱離層は、プラスチック製品等に限らず、紙製品、ガラス製品、木製品や金属製品等にも適用可能である。以下では、プラスチック製品を例に説明する。本発明で使用する脱離成分は、分子中にカルボキシル基を含有する架橋共重合体である。カルボキシル基を含む共重合体としては、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びフタル酸から選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和カルボン酸単位を含む架橋共重合体である。フタル酸はフタル酸(メタクロイルオキシエチル)として使用することが好ましい。上記架橋共重合体分子中の上記不飽和カルボン酸単位の含有量は20〜70重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。架橋共重合体はランダム、ブロック又はグラフトコポリマーのいずれでも、あるいはこれらの混合物であってもよい。上記不飽和カルボン酸単位の含有量が20重量%未満では中和処理による脱離層の脱離が遅いか、脱離しない場合がある。一方、70重量%を超えると脱離層と基材フィルムとの接着性や脱離層の耐水性等に問題を生じ好ましくない。
【0012】
脱離成分は架橋共重合体である。架橋共重合体においては、架橋の形態は、化学的架橋でも物理的架橋であってもよい。化学的架橋は、例えば、前記不飽和カルボン酸単量体、その他の単量体と架橋形成性の二官能以上のビニル系の単量体とを共重合させることにより、あるいは上記の架橋形成性官能基単量体に代えて架橋剤と反応して架橋を形成するカルボキシル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基等の官能基を有する単量体を共重合させ、得られる共重合体をそれぞれの官能基に適した架橋剤と反応させること等により形成させることができる。物理的架橋は、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体におけるような重合体鎖(例えば、ポリスチレン鎖)の物理的集合や結晶構造の集合等により形成させることができる。
【0013】
化学的架橋を形成する二官能以上のビニル系の単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールのジ(メタ)アクリルエステル、(ポリ)プロピレングリコールのジ(メタ)アクリルエステル、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの(ポリ)(メタ)アクリルエステル等が挙げられる。又、架橋剤と反応して架橋を形成する反応性官能基を有する単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等の水酸基含有単量体;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体等が挙げられる。これらの化学的架橋を形成する単量体単位の含有量は、共重合体中15重量%以下が好ましい。
【0014】
物理的架橋方法としては、例えば、カルボキシル基を有する共重合体に、末端ビニル基を有する分子量4,000〜100,000程度の疎水性のマクロマー、例えば、スチレンポリマー、(メタ)アクリル酸エステルポリマー(エステル残基の炭素数1〜17)等をグラフト共重合させる方法が挙げられる。
【0015】
これらの架橋共重合体を含む架橋型の脱離層は、中和処理によって容器等から凝集した状態で印刷層と共に脱離するので回収し易く、また、処理水への可溶分が小さく環境への負荷が小さく、好ましいものである。
【0016】
本発明で使用するカルボキシル基を含有する共重合体は、前記の不飽和カルボン酸単量体、これと共重合可能な他の単量体及び上記の架橋形成性単量体又は反応性官能基含有単量体を、乳化重合法、ソープフリー重合法、分散重合法等の従来公知の方法で共重合させることによって製造することができる。共重合可能な他の単量体としては、アルカリによる中和で鹸化しない、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、比較的鹸化速度が遅い単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)クリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル等、あるいはイタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の炭素数4以上のアルキルエステル類等が挙げられる。
【0017】
脱離層を形成する際に使用する架橋剤は、被架橋性共重合体の各官能基(反応基)に応じ、各官能基と組み合わせて従来から使用されている架橋剤がいずれも使用でき、特に限定されない。水酸基と反応する化合物としては、例えば、トリレンイソシアネート( TDI) 、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とそれらのビュウレット体やトリメチロールプロパン等とのアダクト体、イソシアヌレート3量体等のイソシアネート類;イソシアネートをアルコール(エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)、フェノール誘導体(フェノール、ニトロフェノール等)、ラクタム(カプロラクタム等)、活性メチレン系化合物(マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等)でブロックしたブロックイソシアネート;上記イソシアネート類より合成されるカルボジイミド系架橋剤及びその誘導体等が挙げられる。
【0018】
エポキシ基と反応する化合物としては、例えば、ポリメチレンジアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、1,3−アミノシクロヘキサン、ジアミノフェニルスルホン、4, 4′−ビストルイジン、m−フェニレンジアミン、N−メチルピペラジン、モルホリン、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサン等のアミン類;無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水マレイン酸、エチレングリコールビストリメリテート、m−カルボキシフェニル−3,4−アンハイドラド、m−カルボキシフェニル−3,4−アンハイドライドジメチルシラン等の酸無水物類;トリグリシジルイソシアヌレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等のエポキシ化合物類;ポリエーテルポリオール、ポリブタジエングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等のアルコール類;ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の重合性不飽和化合物類;シランカップリング剤類;テトライソプロピルチタネート、アセチルアセトチタネートあるいはアルミニウムアルコレート、アルミニウムキレート類;ジメチロール尿素、メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン等のアミノ樹脂の誘導体等が挙げられる。
【0019】
本発明において、プラスチックフィルム等の基材上に脱離層を形成する場合には、脱離成分(脱離層形成共重合体)は、水分散型、溶剤分散型、溶剤溶液型、粉末状等の任意の形態で使用することができる。又、脱離成分は他の疎水性の重合体、例えば、蛋白質、カゼイン、デンプン、アセチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、硝化綿、天然ゴム、クロロプレン、イソプレン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の合成ゴム、アクリル系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの塩素化物、ポリイソブチレン、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、塩化ゴム、環化ゴム等と共に使用することができる。上記共重合体はランダム、ブロック或いはグラフトのいずれの結合様式の共重合体であってもよい。好ましくはエラスティック特性を有する重合体を主体的に用いることが好ましい。更に、可塑剤として、例えば、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルアジペート等を使用することができる。
【0020】
脱離成分と疎水性重合体を併用する場合には、両者の合計中の疎水性重合体の使用割合は70重量%以下が好ましい。70重量%を越えると脱離層の脱離が困難となる。好ましくは0〜60重量%である。上記成分の他にワックス、界面活性剤、シリカ等のブロッキング防止剤等を必要応じて使用することができる。更に、インキ組成物中にも上記脱離成分を少量添加してもよい。
【0021】
基材上に脱離層を形成するには、上記の各成分を用いて調製した溶剤溶液等を基材に塗布し、乾燥する。塗布量は、通常0.01〜20μm(乾燥厚さ)程度であるが、0.01μm未満では均一に塗布することが困難であり、20μmを越えると不経済的であり実用的でない。塗布は通常の塗布方法、例えば、グラビア、凸版(フレキソ)、ロールコータ、リバースロールコータ(転写方式)、スプレー方式等が用いられる。脱離層の形成とそれへの印刷は連続式(インライン)あるいは、脱離層の形成と印刷とを別々に行ってもよい。
【0022】
本発明においては、脱離層を形成する基材は、包装用プラスチックフィルム、プラスチック容器そのものでも、これらに適当な手段で積層する同質又は異質のフィルムのいずれであってもよい。基材がプラスチック以外の場合も上記と同様である。印刷が施された脱離層を、印刷で形成されたインキ被膜と共に基材から脱離するためには、物品から剥離した脱離層を有する基材だけ、あるいは該基材の付いた物品ごと中和処理液に投入し、ゆっくり攪拌しながら70〜80℃に加熱し、脱離成分を中和して親水性とし、もしくは膨潤させる。その際、該基材及び該基材の付いた物品はそのままでも、シュレッダー等の適当な手段で細片化して投入することもできるが、投入の態様は特に限定されない。
【0023】
中和処理は、アルカリの何れによって行なってもよいが、中和によって生じるカルボキシル基をアルカリ金属の塩、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩とすることが好ましく、従って中和剤としてはカセイソーダや炭酸ソーダ等のアルカリ水溶液を用い、該水溶液中で中和処理を行なってインキ被膜を脱離させることが好ましい。中和に際しては中和液を脱離層に浸透させる目的でアルカリ水溶液中にメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びその誘導体のセロソルブ類等を添加してもよい。
【0024】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0025】
合成例
表1に示す組成の材料(脱離成分)Aの合成法を以下に示す。尚、表1に記載の他の材料も同様にして調製した。
反応容器に70部のスチレン、30部のアクリル酸、150部の酢酸エチル、150部のイソプロピルアルコール、及び1.2部のアゾビスイソブチロニトリルを加えて混合し、窒素ガス雰囲気下、70℃で8時間重合した。得られた共重合体溶液の固形分は25重量%であった。
【0026】
【0027】
(注)AA:アクリル酸
MAA:メタアクリル酸
MAH:無水マレイン酸
MA: メチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
isoBMA:イソブチルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
DMMA:N,N′−ジメチルアクリルアミド
DVB:ジビニルベンゼン
St:スチレン
VAc:酢酸ビニル
MS:分子量6000の末端にアクリロイル基を有するポリスチレン
iPA:イソプロピルアルコール
EtAC:酢酸エチル
MEK:メチルエチルケトン
Tol:トルエン
【0028】
実施例1〜11、比較例1〜12
表2〜5に記載の各基材フィルム(厚さ25μm)の処理面に表1に記載の各材料の溶液を乾燥厚さが約2μmとなるように塗布し、80℃で乾燥させて脱離層を形成した。その上に乾燥厚さが約5μmとなるように下記のインキを塗布した。脱離層のない場合には基材フィルム上に上記同様にインキを塗布した。
以下に示す試験方法で脱離層の脱離性及び耐水性を試験した。尚、脱離層と基材フィルムとの接着性は、脱離性を試験する前に、予めセロハンテープ剥離試験で剥離しないか、あるいは通常使用されているインキと同程度であることを確認した。結果を表2に示す。
【0029】
〔基材フィルム〕(25μm厚さ)
PET:ポリエチレンテレフタレート
S−PET:シュリンクPET
S−PSt:シュリンクポリスチレン
OPP:2軸延伸ポリプロピレン
HDPE:高密度ポリエチレン
【0030】
〔インキ−I 〕
シアニンブルー10部、ポリアミド(分子量が3000〜10000程度のダイマー酸とヘキサメチレンジアミンとの縮合物)15部、硝化綿3部、添加剤10部及び溶剤(トルエン/イソプロピルアルコール/酢酸エチル=3/1/1(重量比))62部からなるインキ。
〔インキ−II〕
不溶性アゾ系顔料(C.I.ピグメントレッド5)10部、ブチルメタアクリレートを主体とする共重合体12部、繊維素系樹脂3部、ポリエチレン系ワックス2部、イソプロピルアルコール27部、酢酸プロピル27部、酢酸エチル6.5部からなるグラビア印刷用インキ。
【0031】
脱離試験方法
印刷した基材フィルム(脱離層有り、無し)を85℃の1.5%NaOH水溶液に浸漬し、簡単攪拌をしながら印刷層を有する脱離層の脱離状態を観察する。該脱離層が自発的にほぼ完全に20分以内に基材フィルムから脱落する場合にはその時間(分)を表示した。又、脱落時間が20分を越える場合には、下記の指標で表示する。
△+:一部印刷層が基材に残るか、全面に残るが、流水によって完全脱離する
場合
△−:全面に残り、流水によって脱離せず、印刷層を擦ると脱落する場合
× :完全に脱離層が残り擦っても脱離しない場合
【0032】
耐水性試験
印刷層を有する脱離層を設けた基材フィルムを、アルカリ処理液に変えて85℃の脱イオン水に30分浸漬した後の脱落の有無を観察する。結果を下記の指標で表示する。
○:自発的にも、流水でも脱離しない場合
×:自発的あるいは流水で脱離する場合
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
(注)比較例10〜12は、インキ−Iの樹脂分に材料Aを30%添加した。
透明性、艶共にインキ−Iと比べて著しく低下した。
【0037】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、プラスチック容器等の物品の印刷層(文字、模様等の印刷被膜層)の脱離が、物品の希アルカリによる中和処理によって容易に行われる物品が提供される。印刷層の離脱は脱離層とともに行われ、脱離物の除去は容易である。これは、中和処理で脱離層が基材との接着性を失うと、脱離層はフィルム状あるいは塊状になって脱離するが、その際、疎水性の印刷層は小片化せずに脱離層に固着したままであるからである。従って、脱離物の分離回収が容易となる。
Claims (3)
- その上に印刷層が形成されている脱離層を表面に有する物品において、上記脱離層は、少なくとも、中和処理によって水膨潤性となる材料である、分子中にモノマー単位としてアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びフタル酸から選択される少なくとも一種の重合性不飽和カルボン酸単位を20〜70重量%含有する架橋共重合体で形成されていることを特徴とする脱離層を有する物品。
- 脱離層上に印刷層が形成された請求項1に記載の脱離層を有する物品を、アルカリ性水溶液で処理することを特徴とする物品から印刷層および脱離層を脱離、除去する方法。
- アルカリ性水溶液がアルカリ金属水酸化物の熱水溶液である請求項2に記載の方法。
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