JP3932426B2 - 加熱装置および沸騰検知方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱調理器、ジャーポット、ガスレンジなどの加熱装置およびこれらの加熱装置に用いる沸騰検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような分野の技術としては、特公平6−75425号公報に記載されたものが知られている。
図12に示すように、特公平6−75425号公報に記載された従来の加熱装置100は、水等の被加熱物が満たされた鍋101を載置するトッププレート102と、トッププレート102の下方に配置され、鍋101内の被加熱物を加熱する誘導加熱コイル103と、トッププレート102の裏面に配置され、トッププレート102を介して鍋101内の被加熱物の温度を計測する感温素子104とを備えている。
【0003】
誘導加熱コイル103で被加熱物を加熱する場合、一定の勾配で被加熱物の温度が上昇し、被加熱物が沸騰すると温度は一定になる。そこで、従来の加熱装置100では、感温素子104で被加熱物の温度を計測し、被加熱物の温度上昇勾配が鈍化した場合に、被加熱物が沸騰したものと検出している。
また、被加熱物の量が多い場合には、温度上昇が緩やかであるため、温度上昇勾配の変化を検出するのが難しい。そこで、従来の加熱装置100では、被加熱物の量が多いときは、被加熱物の加熱時間が所定時間以上になった場合に、被加熱物が沸騰したものと検出している。
以上のように、従来の加熱装置100は、(a)被加熱物の量が少ない場合には、被加熱物の温度上昇勾配の変化で沸騰検知を行い、(b)被加熱物の量が多い場合には、被加熱物の加熱時間で沸騰検知を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(a)沸騰近くなると勾配が少しずつ緩やかになっていくため、沸騰近辺の検出感度が低かった。このため、被加熱物の温度上昇勾配の変化で沸騰検知を行う方法では、被加熱物の沸騰をタイミングよく検出することが難しく問題であった。
また、(b)被加熱物が沸騰するまでの時間は、被加熱物の量によって大きく異なってしまう。このため、被加熱物の加熱時間で沸騰検知を行う方法では、検出誤差が大きく問題であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決し、被加熱物の加熱状態を高い精度で推論できる加熱装置および被加熱物の沸騰を高い精度で検出できる沸騰検知方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る加熱装置は、被加熱物を加熱する加熱手段と、被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段と、被加熱物の熱容量データが記憶された熱容量データ記憶手段とを備え、前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とし、この基準値と前記熱容量データ記憶手段から読み出した熱容量データとに基づいて被加熱物の量を推論し、該被加熱物の量から沸騰予測時間を算出し、この沸騰予測時間に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る加熱装置は、被加熱物を加熱する加熱手段と、被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段とを備え、前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする。
【0010】
また、沸騰予測値は、基準値に所定の実数を乗じた値であることを特徴とする。
【0011】
さらに、基準値は、安定領域における加熱状態値の最大値であることを特徴とする。
【0012】
また、基準値は、安定領域における加熱状態値の最小値であることを特徴とする。
【0013】
さらに、基準値は、計時手段で計測した加熱時間が所定の時間になったときの加熱状態値であることを特徴とする。
【0014】
また、基準値は、温度測定手段で間接的に測定した温度が所定の温度になったときの加熱状態値であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る加熱装置は、被加熱物を加熱する加熱手段と、被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段とを備え、 前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値が負から正に転換した後の最小値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る加熱装置は、被加熱物を加熱する加熱手段と、被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段と、被加熱物の熱容量データが記憶された熱容量データ記憶手段とを備え、前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とし、この基準値と前記熱容量データ記憶手段から読み出した熱容量データとに基づいて被加熱物の量を推論すると共に、前記加熱手段が一旦停止された後に再加熱された場合には、前記加熱状態推論手段は、前記加熱手段の停止時間と被加熱物の量とから沸騰予測時間を算出し、この沸騰予測時間に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする。
【0017】
さらに、加熱状態推論手段は、加熱状態値が沸騰予測値に到達した時点が、計時手段で計測した加熱時間と加熱手段の火力とに基づいて算出した沸騰予測時間より短い場合に、基準値を再設定することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る沸騰検知方法は、 被加熱物の測定温度と被加熱物の加熱時間と被加熱物を加熱する火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出し、この加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る加熱装置および沸騰検知方法の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱装置の一例である加熱調理器の構成を示す正面図である。同図に示すように、1は加熱調理器本体、2は水や油等の被加熱物、3は被加熱物2を入れたステンレス鋼等の鍋、4は鍋3を載置するガラス等のトッププレート、5は被加熱物2を加熱する誘導加熱コイル(加熱手段)、6はトッププレート4の裏面に密着するように設置され、被加熱物2の温度をトッププレート4を介して(間接的に)測定するサーミスタ(温度測定手段)、7はサーミスタ6から出力される測定信号等を入力して、誘導加熱コイル5や基盤冷却用送風機(図示せず)などを制御する制御装置、8は筐体である。
【0021】
図2に示すように、制御装置7は、誘導加熱コイル5による被加熱物2の加熱時間を計測するタイマ(計時手段)9と、サーミスタ6で測定した温度とタイマ9で計測した加熱時間と誘導加熱コイル5の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段10と、演算手段10で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物2の加熱状態を推論する加熱状態推論手段11と、被加熱物2の熱容量データが記憶された熱容量データ記憶手段12と、後述する基準値Cbaseが記憶された基準値記憶手段13とを備えている。
【0022】
次に、実施の形態1に係る加熱調理器の動作を、図3および図4(a)(b)を用いて説明する。
まず、使用者が水や油等の被加熱物2が入った鍋3をトッププレート4上に載置する。次に、使用者が加熱調理器本体1に設置された電源スイッチ(図示せず)を押下し、加熱調理器本体1に設置された沸騰運転専用ボタン(図示せず)を押下することによって、誘導加熱コイル5が通電される。誘導加熱コイル5への通電によって、誘導加熱コイル5から高周波の磁力線が発生し、鍋3の特に底面が誘電加熱され、鍋3内の被加熱物2が加熱される(ステップ100)。
【0023】
タイマ9は、被加熱物2の加熱時間tの計測を開始し、サーミスタ6は、被加熱物2の温度の測定を開始する(ステップ101)。この開始時点が、図4(a)(b)の横軸に示す時間0点である。また、演算手段10は、タイマ9で計測された加熱時間tと、サーミスタ6で測定された温度Tと、誘導加熱コイル5の火力Qとを読み込む(ステップ102)。ステップ102の処理は、予め設定された所定の待機時間tminを経過するまで、繰り返し行われる(ステップ103)。
【0024】
なお、図4(a)に示すように、所定の待機時間tminは、加熱状態値C(後述の計算式(1)で算出される数値)との関係により設定された値であり、加熱状態値Cが、被加熱物2の量に相関のある値の設定できる領域に入ったときの時間である。サーミスタ6は、加熱面である鍋3の底面とトッププレート4を介して接しているため、鍋温度の上昇に対して応答遅れがある。このため、加熱開始直後のサーミスタ6で検出される温度はほぼ一定であり、加熱状態値Cは十分に大きい値を取る。加熱開始から一定時間鍋3の底面は急速に昇温するため、その熱が一定時間遅れてサーミスタ6に伝達することによって、検出温度は急速に高くなっていく。このため、無限に大きな値を取っていた加熱状態値Cは急速に小さくなっていく。
【0025】
その後、誘導加熱コイル5の火力Qと被加熱物2の量とに応じた一定の温度勾配で被加熱物2の温度が上昇するため、一定時間遅れてサーミスタ6で検出される温度も一定の温度勾配で上昇していく。その結果、加熱状態値Cは、誘導加熱コイル5の火力Qと被加熱物2の量とに応じた一定の値となる領域Aに入る。所定の待機時間tminは、加熱状態値Cが安定領域Aに入るまでに必要な時間であり、例えば30秒程度である。
【0026】
待機時間tminを経過した場合、演算手段10は、1サイクル前の平均火力Q_m_oおよび1サイクル前の平均温度Temp_m_oに、例えば0などの初期値を設定する(ステップ104)。また、演算手段10は、ステップ102で読み込んだ加熱時間t、温度T、火力Qに基づいて、所定の平均時間Stime内に計測された火力Qの平均火力Q_mおよび所定の平均時間Stime内に計測された温度Tの平均温度Temp_mを算出する(ステップ105)。
【0027】
さらに、演算手段10は、平均温度Temp_mと1サイクル前の平均温度Temp_m_oの温度差Tsaを算出すると共に、平均火力Q_mと1サイクル前の平均火力Q_m_oの平均火力Q_heiを算出する(ステップ106)。そして、演算手段10は、ステップ106で算出した平均火力Q_heiおよび温度差Tsaと、所定の平均時間Stimeを用いて、以下の計算式(1)に基づいて、加熱状態値Cを算出する(ステップ107)。
【0028】
C=Q/(ΔT/Δt) …(1)
【0029】
Q:時間Δtの平均火力[W]
ΔT:サーミスタ温度変化量[℃]
Δt:時間[s]
【0030】
なお、ジャーポットなどのように、火力Qが一定の場合にはQ=1として、サーミスタで測定した温度変化量ΔTと、タイマ9で測定した時間Δtとで、加熱状態値Cを算出してもよい。
【0031】
次に、加熱状態推論手段11は、演算手段10がステップ107で算出した加熱状態値Cを入力して、加熱状態値CがCmaxより大きい値であるか判定する(ステップ108)。なお、Cmaxには例えば0などの初期値が予め設定されているものとする。加熱状態値CがCmaxより大きい場合は、Cmaxを現サイクルで計算された加熱状態値Cに更新する(ステップ109)。そして、加熱状態推論手段11は、以下の条件Aを満たすか否かの判定を行い(ステップ110)、条件Aを満たす場合には、当該時点でのCmaxを基準値Cbaseと定め、基準値Cbaseを基準値記憶手段13に格納する。また、Bフラグに1を立てる(ステップ111)。
【0032】
ここで、条件Aは、予め設定された所定の時間tbaseを経過してもCmax値が更新されない場合、又は平均温度Temp_mが予め設定された温度Temp_limit(例えば70℃)以上であり、かつ基準値Cbaseが決まっていない(Bフラグ=0)場合である。
【0033】
ステップ106からステップ111までの動作は、図4(a)(b)に示す領域Aで発生する。領域Aでは、前述の通りサーミスタ6で検出される温度の勾配がほぼ一定になり、加熱状態値Cも殆ど変化しなくなる。従って、この領域では一度Cmaxが定められると、時間tbase経過後に基準値Cbaseが決定する。
【0034】
なお、領域Aの大きさは、誘導加熱コイル5の火力Qと被加熱物2の量のバランスでも異なる。例えば、誘導加熱コイル5の火力Qが2.5kWで、被加熱物2の量が0.5リットルである場合などのように、誘導加熱コイル5の火力Qが大きく且つ被加熱物2の量が少ない場合、サーミスタ6の応答遅れが原因で加熱状態値Cが一定になる領域Aがtbase以下の時間しか継続しない可能性がある。そこで、このような場合にも確実に基準値Cbaseを決定できるように、領域Aがtbase以下の場合でも、平均温度Temp_mがTemp_limit以上であれば、ステップ111の処理に移行できるように条件Aが定められている。
【0035】
ステップ110で条件Aが成立しなかった場合、及びステップ111の処理が終了した場合に、加熱状態推論手段11は、基準値記憶手段13から基準値Cbaseを読み出して、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍(例えばNb=3)した値以上か否かを判定する(ステップ112)。そして、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍した値未満の場合には、ステップ101に処理を戻す。また、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍した値以上の場合には、加熱状態推論手段11は、鍋3内の被加熱物2が沸騰したと推論し、誘導加熱コイル5への通電を止めて、加熱を停止させる(ステップ113)。
【0036】
ステップ113の動作は、図4(a)(b)に示す領域Bで発生する。領域Bでは、被加熱物2が沸騰状態(即ち相変化状態)にあるため、被加熱物2の温度および蒸発量が略一定になる。このため、鍋3の内側底面からの放熱量、および鍋3の内側底面温度が略一定となり、サーミスタ6で検出される温度もほぼ一定値となるよう温度勾配が小さくなっていく。その結果、加熱状態値Cが急激に増加して、時間t3で基準値CbaseをNb倍した値となり、加熱状態推論手段11は、被加熱物2が沸騰したものと判定する。
【0037】
以上のように、被加熱物2が沸騰状態になると、加熱状態値Cが急激に増加するので、加熱状態推論手段11は、基準値Cbaseに基づいて被加熱物2の沸騰タイミングを確実に検出することができる。特に、被加熱物2の量が多いために温度上昇の勾配が緩やかな場合であっても、被加熱物2の沸騰時には加熱状態値Cは急激に増加するので、この場合にも確実に沸騰検知を行うことができる。その結果、被加熱物2が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物2が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物2の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【0038】
なお、Cmaxを新たに算出された加熱状態値Cと比較し、Cmaxを新しく設定し直す場合には、ノイズによる変動を除去するために、任意の値delC以上大きくなった場合(例えばdelC=10)のみCmaxを更新してもよい。
また、Cmaxを基準値Cbaseと定めるのは、所定時間経過後としたが、必ずしも時間に限定するものではなく、サーミスタ6で検出される温度が所定温度に到達した場合、或いは所定温度差分だけサーミスタ6の検出温度が上昇した場合としてもよく、更にこれらの併用による条件を満たした場合に基準値Cbaseを設定してもよい。
【0039】
さらに、基準値を領域Aの最大値Cmaxとしたが、領域Aの最小値Cminを用いてもよい。
また、沸騰検知を基準値CbaseのNb倍と設定したが、基準値Cbaseから推論される被加熱物2の量に基づいて沸騰予想時間を算出し、沸騰予想時間だけ被加熱物2を加熱してもよい。
ここで、被加熱物2の量Wwは、熱容量データ記憶手段12に記憶された被加熱物2の熱容量データCwと、基準値Cbaseとを用いて、以下の計算式(2)に基づいて算出する。
【0040】
Ww=Cbase/Cw×M(Mは定数) …(2)
【0041】
このように、基準値Cbaseと熱容量データCwとから被加熱物2の量Wwを正確に推論できるので、被加熱物2の量Wwに基づいて、沸騰予想時間を正確に算出することができる。その結果、被加熱物2が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物2が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物2の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る加熱調理器を説明する。図5は、実施の形態2の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。また、図6(a)は、実施の形態2の加熱調理器における被加熱物2の加熱過程を示す図である。さらに、図6(b)は、実施の形態2の加熱調理器における各パラメータの温度変化を示す図である。なお、実施の形態2の構成は、図1に示す実施の形態1と同様であるので、構成を示す図およびその説明は省略する。
【0043】
実施の形態2に係る加熱調理器は、トッププレート4がまだ高温なうちに、別の鍋3に載せ代えた場合であっても、正確に加熱状態を推論することが可能な加熱調理器に関するものである。即ち、図6(b)に示すように、鍋3を沸騰させた直後のトッププレート4の温度(サーミスタ6の検出温度)はまだ高温であり、別の鍋3に載せ代えて、この鍋3を加熱する場合、鍋3内の被加熱物2の温度が上昇しても、トッププレート4の温度が被加熱物2の温度より高い間は、サーミスタ6で検出される温度は降下し続ける。このため、加熱状態値Cは負の値になり、その後にサーミスタ6で検出される温度が上昇を始めると、加熱状態値Cは正の値に転換する。
【0044】
そして、加熱状態値Cが正の値に切り替わった直後に、加熱状態値Cは非常に大きな値を取るため、被加熱物2がまだ沸騰していない状態でも、沸騰していると見なされてしまうおそれがあった。そこで、実施の形態2に係る加熱調理器では、加熱状態推論手段11の処理によって、上記課題の解消を図っている。
【0045】
以下、実施の形態2に係る加熱調理器の動作を、図5および図6(a)(b)を用いて説明する。なお、実施の形態2に係る加熱調理器の基本動作は、図3のフローチャートに示す実施の形態1の動作と同様であるため、同じ工程には同じ番号を付けて、その説明を省略する。
【0046】
まず、使用者が調理終了後、沸騰した被加熱物2の入った鍋3をトッププレート4からテーブル等に移動させる。そして、その直後に、使用者が別の被加熱物2(低温)の入った鍋3をトッププレート4に載置する。次に、使用者が加熱調理器本体1に設置された電源スイッチ(図示せず)を押下し、加熱調理器本体1に設置された沸騰運転専用ボタン(図示せず)を押下することによって、誘導加熱コイル5が通電される。誘導加熱コイル5への通電によって、誘導加熱コイル5から高周波の磁力線が発生し、鍋3の特に底面が誘電加熱され、鍋3内の被加熱物2が加熱される(ステップ100)。
【0047】
次に、ステップ101からステップ107までの処理を実行し、その後に、ステップ107で算出された加熱状態値Cが正か否か、或いはAフラグが0か否かを、加熱状態推論手段11が判定する(ステップ114)。そして、加熱状態値Cが正で且つAフラグが0の場合には、ステップ108からステップ113の処理に移行する。また、加熱状態値Cが負か又はAフラグが1の場合には、ステップ115の処理に移行する。ステップ115では、Aフラグに1を立てる。このため、以降の処理で加熱状態値Cが負から正に転換した場合でも、必ず、ステップ114の処理からステップ115の処理に移行することとなる(即ち、以降、ステップ108からステップ113の処理に移行することはない)。
【0048】
次に、加熱状態推論手段11は、加熱状態値CがCminより小さい値であるか否か判定する(ステップ116)。なお、Cminの初期値は予め設定されているものとする。加熱状態値CがCminより小さい場合、加熱状態推論手段11は、Cminを現サイクルで計算された加熱状態値Cに更新する(ステップ117)。さらに、予め設定した所定の時間tbaseだけ経過しても、Cmin値が更新されない場合(ステップ118)、加熱状態推論手段11は、基準値CbaseにCminを設定する(ステップ119)。その後、ステップ113に処理を移行する。また、ステップ118で、所定の時間tbaseだけ経過していないと判定された場合、ステップ102に処理を戻す。
【0049】
ステップ115からステップ119までの動作は、一般的には図6(a)(b)に示す領域A'で発生する。本実施の形態のように、トッププレート4およびサーミスタ6の周囲が十分加熱されている状態で、室温相当の被加熱物2の入った鍋3をトッププレート4に載置する場合、サーミスタ6は、加熱面である鍋3の底面とトッププレート4を介して接しているため、鍋温度の変化に対して応答遅れがあり、かつ鍋3の底面より高温の値を取る。このため、加熱開始から一定時間鍋3の底面は急速に昇温した後、徐々に緩やかに温度上昇していくが、サーミスタ6の検出温度は低下し続け、加熱状態値Cは負の値を取る。
【0050】
その後、鍋3の底面が、誘導加熱コイル5の火力と被加熱物2の量に応じた一定の温度勾配で温度上昇する途上で、サーミスタ6で検出された温度も一定の温度勾配で温度上昇する方向に転じる。この負の無限大値に向かって急速に大きくなった加熱状態値Cが正の値の無限大値に反転した瞬間が図6(a)に示すt1である。その後、加熱状態値Cは正の値の範囲内で急速に小さくなり、最小値Cminを取った後再び大きくなっていく。
【0051】
そして、ステップ112の判定で、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍(例えばNb=3)した値以上になった場合、加熱状態推論手段11は、鍋3内の被加熱物2が沸騰しているものと推論し、誘導加熱コイル5への通電を止め加熱を停止させる(ステップ113)。
【0052】
ステップ113の動作は、図6(a)(b)に示す領域Bで発生している。領域Bでは、被加熱物2が沸騰状態(即ち相変化状態)にあるため、被加熱物2の温度および蒸発量が略一定になる。このため、鍋3の内側底面からの放熱量、および鍋3の内側底面温度が略一定となり、サーミスタ6で検出される温度もほぼ一定値となるよう温度勾配が小さくなっていく。その結果、加熱状態値Cが急激に増加して、時間t3で基準値CbaseをNb倍した値となり、加熱状態推論手段11は、被加熱物2が沸騰したものと判定する。
【0053】
以上のように、トッププレート4が高温の状態で鍋3を加熱する場合であっても、基準値Cbaseを抽出することができるので、加熱状態推論手段11は、この基準値Cbaseに基づいて被加熱物2の沸騰タイミングを確実に検出することができる。その結果、被加熱物2が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物2が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物2の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【0054】
なお、Cminを新たに算出された加熱状態値Cと比較し、Cminを新しく設定し直す場合には、ノイズによる変動を除去するために、任意の値delC以上小さくなった場合(例えばdelC=10)のみCminを更新してもよい。
また、Cminを基準値Cbaseと定めるのは、所定時間経過後としたが、必ずしも時間に限定するものではなく、サーミスタ6で検出される温度が所定温度に到達した場合、或いは所定温度差分だけサーミスタ6の検出温度が上昇した場合としてもよく、更にこれらの併用による条件を満たした場合に基準値Cbaseを設定してもよい。
さらに、沸騰検知を基準値CbaseのNb倍と設定したが、基準値Cbaseから推論される被加熱物2の量に基づいて沸騰予想時間を算出し、沸騰予想時間だけ被加熱物2を加熱してもよい。
【0055】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る加熱調理器を説明する。図7は、実施の形態3の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。また、図8(a)は、実施の形態3の加熱調理器における被加熱物2の加熱過程を示す図である。さらに、図8(b)は、実施の形態3の加熱調理器における各パラメータの温度変化を示す図である。なお、実施の形態3の構成は、図1に示す実施の形態1と同様であるので、構成を示す図およびその説明は省略する。
【0056】
実施の形態3に係る加熱調理器は、被加熱物2を一度沸騰させて加熱を停止した後に再度沸騰させた場合であっても、正確に加熱状態を推論することが可能な加熱調理器に関するものである。即ち、図8(b)に示すように、被加熱物2を一度沸騰させて加熱を停止した後には、被加熱物2の温度もトッププレート4の温度(サーミスタ6の検出温度)も高温であるため、サーミスタ6で検出される温度は殆ど変化しない。その結果、サーミスタ6の温度勾配が殆ど一定値以下となるため、まだ沸騰していない状態でも沸騰していると見なされてしまうおそれがあった。そこで、実施の形態3に係る加熱調理器では、加熱状態推論手段11の処理によって、上記課題の解消を図っている。
【0057】
以下、実施の形態3に係る加熱調理器の動作を、図7および図8(a)(b)を用いて説明する。なお、実施の形態3に係る加熱調理器の基本動作は、図5のフローチャートに示す実施の形態2の動作と同様であるため、同じ工程には同じ番号を付けて、その説明を省略する。
【0058】
まず、使用者が水や油等の被加熱物2が入った鍋3をトッププレート4上に載置して、加熱調理器本体1に設置された沸騰運転専用ボタン(図示せず)を押下することによって、本実施の形態の動作が実行され、ステップ100からステップ113までの処理を行う。図8(a)に示すように、これらの処理によって時間t3で沸騰が検知され、被加熱物2の加熱が停止される。また、基準値Cbaseは基準値記憶手段13に記憶される。
【0059】
次に、例えば一旦沸騰検知し火力を停止した後の時間t4(例えば最初の加熱停止から1分経過後)に加熱を再開すると、ステップ102から処理が実行され、ステップ120では、基準値Cbase更新までの時間timer_minが経過したか否かの判定を加熱状態推論手段11が行う。そして、時間timer_minが経過した場合には、ステップ103の処理を飛ばして、ステップ104に進む。なお、本動作に入った後は、常にステップ103の処理を飛ばすため、Cフラグに1を立てておく(ステップ121)。次に、ステップ104からステップ107の処理を行った後に、以下の条件Bを満たすか否かの判定を加熱状態推論手段11が行う(ステップ122)。
【0060】
ここで、条件Bは、Cフラグに1が立っている場合、およびAbs(C)>Cboilの場合、およびTemp_m>Temp_boilの場合、又はDフラグに1が立っている場合である。
【0061】
ステップ122の判定処理で、Temp_mが所定の設定値Temp_boil(例えば90℃)以上であり、かつ加熱状態値Cの絶対値が所定の設定値Cboil(例えば基準値Cbase×Nb)以上である場合、加熱状態推論手段11は、Dフラグに1を立てる(ステップ123)と共に、基準値Cbaseを前回沸騰検知時に設定した基準値Cbase_oldとする(ステップ124)。次に、加熱状態推論手段11は、以下の計算式(3)に基づいて、基準値Cbaseと前回の沸騰検知時からの経過時間Δtcountとを用いて、被加熱物2の現在の温度Tnを算出する(ステップ125)。また、加熱状態推論手段11は、計算式(4)を用いて被加熱物2が沸騰までの時間Δtboilを算出する(ステップ126)。なお、式(3)のK値は予め実験などにより得られた放熱量(単位:W)である。
【0062】
Tn=100−K・Δtcount/Cbase …(3)
【0063】
Δtboil=Cbase(100−Tn)/Q …(4)
【0064】
次に、加熱状態推論手段11は、加熱開始からの積算時間Δtを計算し(ステップ127)、この積算時間Δtが時間Δtboil以上の場合には(ステップ128)、被加熱物2が沸騰したものとみなして、加熱状態推論手段11は、誘導加熱コイル5への通電を止めて加熱を停止させる(ステップ129)。
【0065】
以上のように、被加熱物2を一度沸騰させた後に加熱を停止させ、再度被加熱物2を沸騰させた場合であっても、加熱状態推論手段11は、被加熱物2が沸騰までの時間Δtboilに基づいて、被加熱物2の加熱状態を正確に推論できるので、被加熱物2の沸騰タイミングを確実に検出することが可能となる。その結果、被加熱物2が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物2が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物2の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【0066】
なお、基準値記憶手段13に記憶された基準値Cbaseの更新は、所定時間経過後としたが、必ずしも時間に限定するものではなく、サーミスタ6で検出される温度が所定温度に到達した場合、または所定温度差分だけサーミスタ6の検出温度が降下した場合としてもよく、さらにこれらの併用による条件を満たした場合に更新してもよい。
【0067】
また、放熱量Kは一定値としてもよいが、所定の演算式を用いた処理を制御装置7で行い、周囲温度に合わせて放熱量Kが可変になるようにしてもよい。また、所定の演算式の代わりに、周囲温度とKとの対応表を用いてもよい。この場合の周囲温度は、例えば最初の加熱時の計測開始直後の温度としてもよい。
【0068】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る加熱調理器を説明する。図9,10は、実施の形態4の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。また、図11(a)は、実施の形態4の加熱調理器における被加熱物2の加熱過程を示す図である。さらに、図11(b)は、実施の形態4の加熱調理器における各パラメータの温度変化を示す図である。なお、実施の形態4の構成は、図1に示す実施の形態1と同様であるので、構成を示す図およびその説明は省略する。
【0069】
実施の形態4に係る加熱調理器は、加熱途中で利用者が低温の被加熱物2を追加して被加熱物2の量を増やした場合であっても、正確に加熱状態を推論することが可能な加熱調理器に関するものである。即ち、図11(b)に示すように、加熱途中で利用者が低温の被加熱物を追加して被加熱物2の量を増やした場合、被加熱物2の温度上昇速度は低下し、トッププレート4の温度(サーミスタ6の検出温度)の上昇は抑止される。このため、トッププレート4の温度勾配が一定値以下になるため、まだ沸騰していない状態でも沸騰していると見なされてしまうおそれがあった。そこで、実施の形態4に係る加熱調理器では、加熱状態推論手段11の処理によって、上記課題の解消を図っている。
【0070】
以下、実施の形態4に係る加熱調理器の動作を、図9,10および図11(a)(b)を用いて説明する。なお、実施の形態4に係る加熱調理器の基本動作は、図3のフローチャートに示す実施の形態1の動作と同様であるため、同じ工程には同じ番号を付けて、その説明を省略する。
【0071】
まず、使用者が水や油等の被加熱物2が入った鍋3をトッププレート4上に載置して、加熱調理器本体1に設置された沸騰運転専用ボタン(図示せず)を押下することによって、本実施の形態の動作が実行され、ステップ100からステップ110までの処理を行う。ステップ110の処理終了後、ステップ133に進むが、Eフラグには1が立っていないため、ステップ111の処理に移行する。
【0072】
ステップ111で基準値Cbaseを定めた後、加熱状態推論手段11は、沸騰までの時間を推論・算出し、また、この時点からの時間Δtの積算を行う(ステップ130)。このときの基準値Cbaseは、図11(a)に示す基準値Cbase(1)である。次に、加熱状態推論手段11は、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍(例えばNb=3)した値以上か否かを判定し(ステップ112)、加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍した値以上の場合には、ΔtがΔtboil以上であるか否かを判定する(ステップ131)。
【0073】
ステップ131の判定でΔtがΔtboil以上の場合には、加熱状態推論手段11は、被加熱物2が沸騰したものと推論する。また、ステップ131の判定でΔtがΔtboil未満であった場合には、加熱状態推論手段11は、例えば市水温度相当の被加熱物2が鍋3に追加されたものと判断する。この判断によって、加熱状態推論手段11は、基準値Cbaseを再設定する動作に入ることを示すEフラグに1を立てると共に、基準値Cbaseが定まったことを示すBフラグを0にする(ステップ132)。そして、ステップ112で加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍した値未満と判定した場合、およびステップ132の処理が終了した場合に、ステップ102に処理を戻す。
【0074】
再び、ステップ102からステップ133までの処理を行い、ステップ133では、Eフラグに1が立っているのでステップ134に分岐する。そして、加熱状態推論手段11は、CmaxにCminを設定して(ステップ134)、加熱状態値CがCminより小さい値であるか否か判定する(ステップ135)。なお、Cminの初期値は予め設定されているものとする。加熱状態値CがCminより小さい場合には、加熱状態推論手段11は、Cminを現サイクルで計算された加熱状態値Cに更新する(ステップ136)。さらに、予め設定した所定の時間tbaseだけ経過しても、Cminが更新されない場合(ステップ137)、加熱状態推論手段11は、加熱状態推論手段11は、基準値CbaseにCminを設定する(ステップ138)。その後、ステップ130に処理を移行する。
【0075】
なお、ステップ138で設定された基準値Cbaseは、図11(a)の基準値Cbase(2)である。その後、加熱状態推論手段11は、沸騰までの時間を推論・算出し、また、この時点からの時間Δtの積算を行う(ステップ130)。そして、ステップ112で加熱状態値Cが基準値CbaseをNb倍(例えばNb=3)した値以上になったと判定し、且つ、ステップ131でΔtがΔtboil以上であると判定した場合には、加熱状態推論手段11は、被加熱物2が沸騰したものと推論する。
【0076】
以上のように、加熱途中で利用者が低温の被加熱物2を追加して被加熱物2の量を増やした場合であっても、加熱状態推論手段11が基準値Cbaseを再設定することにより、被加熱物2の加熱状態を正確に推論できるので、被加熱物2の沸騰タイミングを確実に検出することが可能となる。その結果、被加熱物2が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物2が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物2の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【0077】
なお、CmaxまたはCminと、新たに算出された加熱状態値Cとを比較して、CmaxまたはCminを新しく設定し直す場合、ノイズによる変動を除去するために、任意の値delC以上大きくなった場合のみCmaxを更新してもよく、任意の値delCより小さくなった場合のみCminを更新してもよい。
また、CmaxまたはCminを基準値Cbaseと定めるのは、所定時間経過後としたが、必ずしも時間に限定するものではなく、サーミスタ6で検出される温度が所定温度に到達した場合、或いは所定温度差分だけサーミスタ6の検出温度が上昇した場合としてもよく、更にこれらの併用による条件を満たした場合に基準値Cbaseを設定してもよい。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)各実施の形態では、判定開始タイミングを経過時間により設定していたが、これに限定されるものではなく、サーミスタ6で検出される温度が所定温度に到達した場合、または所定温度差分だけサーミスタ6の検出温度が変化した場合としてもよく、更にこれらの併用による条件を満たした場合としてもよい。
【0079】
(2)各実施の形態では、温度差Tsa(平均温度Temp_mと1サイクル前の平均温度Temp_m_oとの温度差)が0の場合、加熱状態値Cは無限としたが、これに限定されるものではなく所定の温度差Tsa以下で加熱状態値Cは制御装置7の取り得る最大値、例えば1000000としてもよい。
【0080】
(3)各実施の形態では、倍数Nbを3としたが、これに限定されるものではなく、また、基準値CbaseによりNbを定めるように、基準値CbaseからNbを算出する演算式を制御装置7が内蔵していてもよく、基準値CbaseとNbとの対応表を制御装置7が内蔵していてもよい。
【0081】
(4)各実施の形態では、温度差Tsaは平均時間Stime毎に算出したが、この方法に限定されるものではなく、Stimeより短い時間、例えば1secづつスライドさせて温度差Tsaを算出してもよい。
【0082】
(5)火力Qが一定値である場合、温度差Tsaを逆数にせず、温度差TsaにNb値の逆数をかけて加熱状態値Cを計算してもよい。
【0083】
(6)各実施の形態では、沸騰検知後、誘導加熱コイル5をすぐ停止するものとしたが、これに限定されるものではなく、所定の火力で所定の時間運転してから停止してもよい。このとき、所定の火力および時間は予め制御装置7に設定してあってもよく、また、基準値Cbaseにより推論した被加熱物の量に応じて設定してもよい。
【0084】
(7)基準値Cbaseが定まった後に加熱量を変えた場合には、制御装置7に入力される変更後の加熱量から再度基準値Cbaseを設定してもよい。
【0085】
(8)被加熱物2は水や油以外にも、他の液体や、これらの液体と固形物の混合物であってもよい。
【0086】
(9)各実施の形態では、加熱手段の一例として誘導加熱コイル5を用いて説明したが、加熱手段は誘導加熱コイル5に限定されず、ガスやヒータなどでもよい。
【0087】
(10)各実施の形態では、一対の誘導加熱コイル5の間にサーミスタ6を配置したが(図1参照)、これに限定されるものではなく、誘導加熱コイル5の上にあってもよい。
【0088】
(11)各実施の形態では、サーミスタ6は一つだけ設置されているが(図1参照)、これに限定されるものではなく、複数個設置されていてもよい。
【0089】
(12)沸騰検知した場合に、音や光を用いて、利用者に通知してもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明に係る加熱装置および沸騰検知方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
即ち、被加熱物が沸騰状態になると、加熱状態値が急激に増加するので、加熱状態推論手段は、加熱状態値に基づいて被加熱物の沸騰タイミングを確実に検出することができる。特に、被加熱物の量が多いために温度上昇の勾配が緩やかな場合であっても、被加熱物の沸騰時には加熱状態値は急激に増加するので、この場合にも確実に沸騰検知を行うことができる。その結果、被加熱物が十分に加熱されずに加熱処理を終了したり、被加熱物が加熱され過ぎたりすることがなくなり、被加熱物の加熱量や加熱時間を正確に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る加熱装置の一例である加熱調理器の構成を示す正面図である。
【図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、実施の形態1の加熱調理器における被加熱物の加熱過程を示す図である。(b)は、実施の形態1の加熱調理器における各パラメータ温度変化を示す図である。
【図5】実施の形態2の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、実施の形態2の加熱調理器における被加熱物の加熱過程を示す図である。(b)は、実施の形態2の加熱調理器における各パラメータ温度変化を示す図である。
【図7】実施の形態3の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図8】(a)は、実施の形態3の加熱調理器における被加熱物の加熱過程を示す図である。(b)は、実施の形態3の加熱調理器における各パラメータ温度変化を示す図である。
【図9】実施の形態4の加熱調理器の動作を示すフローチャート(前半)である。
【図10】実施の形態4の加熱調理器の動作を示すフローチャート(後半)である。
【図11】(a)は、実施の形態4の加熱調理器における被加熱物の加熱過程を示す図である。(b)は、実施の形態4の加熱調理器における各パラメータ温度変化を示す図である。
【図12】従来の加熱装置の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1…加熱調理器本体、2…被加熱物、3…鍋、4…トッププレート、5…誘導加熱コイル(加熱手段)、6…サーミスタ(温度測定手段)、7…制御装置、8…筐体、9…タイマ(計時手段)、10…演算手段、11…加熱状態推論手段、12…熱容量データ記憶手段、13…基準値記憶手段。
Claims (11)
- 被加熱物を加熱する加熱手段と、
被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、
前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、
前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段と、
被加熱物の熱容量データが記憶された熱容量データ記憶手段とを備え、
前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とし、この基準値と前記熱容量データ記憶手段から読み出した熱容量データとに基づいて被加熱物の量を推論し、該被加熱物の量から沸騰予測時間を算出し、この沸騰予測時間に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする加熱装置。 - 被加熱物を加熱する加熱手段と、
被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、
前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、
前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段とを備え、
前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする加熱装置。 - 前記沸騰予測値は、前記基準値に所定の実数を乗じた値であることを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
- 前記基準値は、前記安定領域における前記加熱状態値の最大値であることを特徴とする請求項2又は3項記載の加熱装置。
- 前記基準値は、前記安定領域における前記加熱状態値の最小値であることを特徴とする請求項2又は3記載の加熱装置。
- 前記基準値は、前記計時手段で計測した加熱時間が所定の時間になったときの前記加熱状態値であることを特徴とする請求項2又は3記載の加熱装置。
- 前記基準値は、前記温度測定手段で間接的に測定した温度が所定の温度になったときの前記加熱状態値であることを特徴とする請求項2又は3記載の加熱装置。
- 被加熱物を加熱する加熱手段と、
被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、
前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、
前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段とを備え、
前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値が負から正に転換した後の最小値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする加熱装置。 - 被加熱物を加熱する加熱手段と、
被加熱物の温度を間接的に測定する温度測定手段と、
前記加熱手段による被加熱物の加熱時間を計測する計時手段と、
前記温度測定手段で測定した温度と前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出した加熱状態値に基づいて、被加熱物の加熱状態を推論する加熱状態推論手段と、
被加熱物の熱容量データが記憶された熱容量データ記憶手段とを備え、
前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とし、この基準値と前記熱容量データ記憶手段から読み出した熱容量データとに基づいて被加熱物の量を推論すると共に、
前記加熱手段が一旦停止された後に再加熱された場合には、前記加熱状態推論手段は、前記加熱手段の停止時間と被加熱物の量とから沸騰予測時間を算出し、この沸騰予測時間に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする加熱装置。 - 前記加熱状態推論手段は、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点が、前記計時手段で計測した加熱時間と前記加熱手段の火力とに基づいて算出した沸騰予測時間より短い場合に、前記基準値を再設定することを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
- 被加熱物の測定温度と被加熱物の加熱時間と被加熱物を加熱する火力とに基づいて、単位時間の温度変化量を分母とし、単位時間の火力量を分子とする加熱状態値を算出し、この加熱状態値の時間変化が少ない安定領域における状態値を基準値とすると共に、この基準値に基づいて沸騰予測値を設定し、前記加熱状態値が前記沸騰予測値に到達した時点で被加熱物が沸騰したと判定することを特徴とする沸騰検知方法。
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