JP3929061B2 - 熱安定性Taqポリメラーゼフラグメント - Google Patents

熱安定性Taqポリメラーゼフラグメント Download PDF

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    • C12N9/1252DNA-directed DNA polymerase (2.7.7.7), i.e. DNA replicase

Description

本発明は、分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドに関する。本発明は、それにより熱安定性が増強される熱安定性DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。本発明はまた、上記ポリペプチドを生成する方法も提供する。
E.coliのような中温性微生物由来のDNAポリメラーゼは、当該分野で周知である。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照。さらに、当該分野で知られているのは、thermus aquaticus種のような好熱性細菌由来のDNAポリメラーゼである。最初に存在する量に比べて既存の核酸配列を多量に増幅するための熱安定性酵素の使用は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の方法が記述されている、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記述されている。Roche Diagnostics GmbH(Mannheim, Germany)のような市販業者は、PCR試薬を市販しており、PCRプロトコールを公表している。プライマー、テンプレート、ヌクレオシド三リン酸、適切な緩衝液および反応条件、およびポリメラーゼが、PCR工程で使用され、それには、標的DNAの変性、プライマーのハイブリダイゼーション、およびポリメラーゼによる相補鎖の合成が含まれる。各プライマーの伸長産物は、望まれる核酸配列の生成のためのテンプレートになる。これらの特許では、使用されるポリメラーゼが熱安定性酵素である場合、ポリメラーゼ活性は熱によって破壊されないので、ポリメラーゼを各変性段階の後に添加する必要がないことが開示されている。しかし、サイクリックPCR工程の場合と、加熱の繰り返しは、その熱安定性によって左右されるが、ポリメラーゼの酵素活性に影響を及ぼす。所定の回数のPCRサイクルの後、高い熱安定性を示すポリメラーゼは、低い熱安定性を示すポリメラーゼよりも高い酵素活性を保持する。したがって、熱安定性は、ポリメラーゼについて望まれる特性である。
特許文献4および特許文献5には、Thermus aquaticus由来の約94kDaの分子量を有する熱安定性DNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ、TaqWTとも称される)の単離および組換え発現、ならびにPCRでのそのポリメラーゼの使用法が記載されている。
T.aquaticus DNAポリメラーゼは、例えば、その高速の合成(1秒間に約75個のヌクレオチドを重合させる能力がある)により、PCRおよび他の組換えDNA技術で使用するのに特に好ましい。それにもかかわらず、別の熱安定性ポリメラーゼが依然として必要である。特に熱安定性が増強されたDNAポリメラーゼは、延長された初めの加熱インキュベーションがPCRを進行させる場合に有利である。そのような場合の一例は、その酵素活性を可逆的に遮断するために化学的に修飾されたDNAポリメラーゼの、DNAポリメラーゼ活性の活性化である。
特にTaq DNAポリメラーゼの熱安定性は、他のポリメラーゼのものを下回っている。95℃での精製Taq WTの半減期は、安定化した調製物中では約40分であり、そしてLightCycler PCRに使用される典型的な反応混合液中では約20分である一方で、Pwo DNAポリメラーゼ(Pyrococcus woesei由来;Roche、カタログ番号1664947)のような他のDNAポリメラーゼは、長い半減期を有する。Pwo DNAポリメラーゼは、100℃で5分未満の半減期を示すTaq DNAポリメラーゼと比較して、この温度で2時間より長い半減期を示し、高い熱安定性を示す。
特許文献6には、Thermus aquaticusから精製された熱安定性DNAポリメラーゼが記載されている。このポリメラーゼは、完全なポリメラーゼ(94kDaの分子量)の80または85kDaの分解産物であり、そして実質的に、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有さないとされている。このポリメラーゼの配列データは提供されていない。
非特許文献3において、E.coli中でのThermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼ遺伝子の単離、特徴付けおよび発現が記載されている。生来の酵素のN末端を欠くTaq DNAポリメラーゼフラグメントをコードするDNA配列を包含する発現ベクターのクローニングも、開示されている。
非特許文献4において、約60〜62kDaの分子量を示すThermus aquaticus由来の熱安定性DNAポリメラーゼ酵素の精製が報告されている。このポリメラーゼの配列データは提供されていない。
非特許文献5において、Thermus aquaticus由来の熱安定性DNAポリメラーゼ酵素の精製が報告されている。この酵素の分子量は、ショ糖勾配遠心分離によって測定される場合68kDaであり、そしてゲル濾過によって測定されると63kDaであると報告されている。このポリメラーゼの配列データは提供されていない。
特許文献7では、N末端の235個のアミノ残基が除外されたTaq DNAポリメラーゼの酵素的に活性な短縮型フラグメントが教示されている。精製された酵素は十分に活性であるが、プロセシング能力が低下しており、そして5’−エキソヌクレアーゼ活性を欠いていると記載されている。生来のTaq DNAポリメラーゼと比較すると、PCR増幅反応を達成するためには、欠失フラグメントについてはより多くの単位のDNAポリメラーゼが必要である。付加N末端メチオニンを有する短縮型が、E.coliで発現させられた。
特許文献8には、271個および272個のアミノ酸のN末端欠失を有する酵素的に活性な短縮型のTaq DNAポリメラーゼが開示されており、両方ともがそれのdNMP結合部位中の生来のTaq DNAポリメラーゼ残基667に対応する位置にチロシン残基を有している。各リーディングフレームに融合した付加メチオニンーコーディング開始コドンを有する両方の短縮型が、E.coliで発現させられた。
特許文献5では、およそ61kDaの分子量を示す短縮型のTaq DNAポリメラーゼ(実施例IX)が教示されている。この形態(Stoffelフラグメントとしても知られる)は、当初は、精製の間のタンパク質分解人工物として認識されていた。N末端配列決定により、短縮型が、Glu289とSer290の間のタンパク質分解切断の結果生じることが明らかにされた。生来のTaq DNAポリメラーゼのN末端から289個のアミノ酸を欠失させることにより、十分に活性なDNAポリメラーゼを生じた。この文献では、さらに、Stoffelフラグメントである短縮型をコードするDNA、および付加メチオニンーコーディングする開始コドンを含むベクターの構築が記載されている。約61kDaの分子量を有している生来のTaq DNAポリメラーゼの短縮型が、このベクターを使用してE.coliで発現させられた。本文章中では、特許文献5によって典拠を示されるとおり生来のTaq DNAポリメラーゼのStoffelフラグメント(AmpliTaq DNAポリメラーゼとしてApplied Biosystemsから市販で入手可能である)はさらに、TaqΔ289とも称される。
特許文献9では、酵素的に活性であるが、N末端の279個のアミノ酸残基が排除されている短縮型Thermus aquaticus DNAポリメラーゼが教示されている。このフラグメントはE.coli中で発現させられ、メチオニン(開始コドン)およびグリシン残基をコードする2つの付加コドン(開始コドン)を有しており、生来のTaq DNAポリメラーゼ残基280に対応するアミノ酸をコードするリーディングフレームに融合されている。本文章中では、特許文献9によって典拠を示されるとおり生来のTaq DNAポリメラーゼのフラグメント(AB Peptides,Incから市販で入手可能なKlentaq1として、また、Clontech, Inc.から市販で入手可能なAdvanTaq DNAポリメラーゼとしても知られている)はさらに、TaqΔ279とも称される。短縮型の酵素活性は、99℃の温度への繰り返しの暴露に耐えることが示されている。
米国特許第4,683,195号明細書 米国特許第4,683,202号明細書 米国特許第4,965,188号明細書 米国特許第4,889,818号明細書 米国特許第5,079,352号明細書 国際公開第91/02090号パンフレット 米国特許第5,616,494号明細書 米国特許第5,885,813号明細書 米国特許第5,436,149号明細書 Bessmanら、J.Biol.Chem.223(1957)171−177 Buttin,G.およびKornberg,A.、J.Biol.Chem.241(1966)5419−5427 Lawyer,F.C.ら、J.Biol.Chem.264(1989)6427−6437 Kaledinら、Chemical Abstract 93、第40169p(1989) Chienら、Chemical Abstract 85、第155559t(1976)
当業界の現状を考えると、上記のPCR工程を改善するために、そしてDNA配列決定のような他の組換え技術で熱安定性DNAポリメラーゼ、およびDNAポリメラーゼ活性によるDNAプライマーのテンプレート依存性伸長の他の工程を使用して得られる結果を改善するために使用することができる、精製された熱安定性DNAポリメラーゼが望まれている。
すなわち、本発明の要旨は、以下:
〔1〕アミノ酸配列が配列番号:2のアミノ酸配列であることを特徴とするDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、
〔2〕アミノ酸配列がさらにN-末端メチオニン残基を有することを特徴とする前記〔1〕記載のポリペプチド、
〔3〕前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
〔4〕配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列であることを特徴とする前記〔3〕記載のポリヌクレオチド、
〔5〕前記〔3〕または〔4〕記載のポリヌクレオチドを含有する組換えDNAベクター、
〔6〕ポリペプチドが、
(i)末端ヒスチジンタグ、
(ii)該ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を提供するアミノ酸配列、および
(iii)前記〔1〕記載のポリペプチド
からなる融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする前記〔5〕記載の組換えDNAベクター、
〔7〕ポリヌクレオチドが配列番号:5のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする前記〔6〕記載の組換えDNAベクター、
〔8〕(a)前記〔5〕記載の組換えDNAベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程、
(b)該宿主細胞を培養し、該宿主細胞においてDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを発現させる工程、
(c)工程(b)で発現させたDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程
を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するための方法、
〔9〕(a)前記〔6〕または〔7〕記載の組換えDNAベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程、
(b)該宿主細胞を培養し、
(i)末端ヒスチジンタグ、
(ii)該ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を提供するアミノ酸配列、および
(iii)前記〔1〕記載のポリペプチド
からなる融合ポリペプチドを該宿主細胞において発現させる工程、
(c)工程(b)で発現させた融合ポリペプチドを精製する工程、
(d)第X因子タンパク質分解活性を有するプロテアーゼの存在下で該融合ポリペプチドをインキュベートして融合タンパク質を切断し、それにより第X因子プロテアーゼ切断部位およびヒスチジンタグからDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを分離する工程、ならびに
(e)工程(d)のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程
を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するための方法、
〔10〕工程(c)において、融合ポリペプチドが、ヒスチジンタグを結合し得る粒状アフィニティーマトリクスを使用して精製されることを特徴とする前記〔9〕記載の方法、
〔11〕工程(d)において、融合ポリペプチドのヒスチジンタグが粒状アフィニティーマトリクスに結合されることを特徴とする前記〔9〕または〔10〕記載の方法、
〔12〕粒状アフィニティーマトリクスが金属キレート樹脂でコーティングされたクロマトグラフィー材料であり、金属イオンが該コーティングされたクロマトグラフィー材料に固定されることを特徴とする前記〔10〕または〔11〕記載の方法、
〔13〕クロマトグラフィー材料がニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)でコーティングされることを特徴とする前記〔12〕記載の方法、
〔14〕前記〔5〕〜〔7〕いずれか記載の組換えDNAベクターで形質転換された組換え宿主細胞、
〔15〕1つ以上の非イオン性ポリマー界面活性剤を含有する緩衝液中に前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチドを含有する安定化された調製物、
〔16〕ポリペプチドに共有結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に該ポリペプチドが共有結合されていることを特徴とする前記〔15〕記載の安定化された調製物、
〔17〕化合物が
(a)無水シトラコン酸、
(b)無水cis-アコニット酸、
(c)無水2,3-ジメチルマレイン酸、
(d)無水エキソ-cis-3,6-エンドオキソ-Δ4-テトラヒドロフタル酸、および
(e)無水3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸
からなる群より選択されることを特徴とする前記〔16〕記載の安定化された調製物、
〔18〕ポリペプチドを結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体によりペプチドが結合されていることを特徴とする前記〔15〕記載の安定化された調製物、
〔19〕プライマー伸長生成物を生成するための、前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド、ポリペプチドに共有結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に共有結合されている前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド、ポリペプチドを結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体により結合されている前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド、あるいは前記〔15〕〜〔18〕いずれか記載の安定化された調製物の使用、
〔20〕核酸鋳型を配列決定するための前記〔19〕記載の使用、
〔21〕標的核酸を増幅するための前記〔19〕記載の使用、
〔22〕前記〔15〕〜〔18〕いずれか記載の安定化された調製物を含有する、プライマー伸長生成物を生成するためのキット、
〔23〕(a)標的核酸に実質的に相補的なプライマーおよび
(i)前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド、
(ii)ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に共有結合されている前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド、および
(iii)ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体により結合されている前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチド
からなる群より選択されるポリペプチドを含有する増幅反応混合物と試料を接触させる工程、
(b)熱処理によりブロックされたDNAポリメラーゼ活性を任意に開放する工程、
(c)工程(a)で得られた混合物中で該プライマーを該標的核酸にアニーリングする工程、
(d)工程(b)の後、該混合物をインキュベートすることにより標的核酸を増幅して、プライマー伸長生成物の形成を可能にする工程
を含む、試料中で標的核酸を増幅するための方法、ならびに
〔24〕少なくとも1つの連鎖終結試薬および1つ以上のヌクレオチド三リン酸の存在下で前記〔1〕または〔2〕記載のポリペプチドを用いて配列決定すべき核酸鋳型から連鎖終結断片を生成し、該断片のサイズから該核酸の配列を決定する工程を含む、核酸を配列決定する方法
に関する。
本発明によれば、上記のPCR工程を改善するために、そしてDNA配列決定のような他の組換え技術で熱安定性DNAポリメラーゼ、およびDNAポリメラーゼ活性によるDNAプライマーのテンプレート依存性伸長の他の工程を使用して得られる結果を改善するために使用することができる、精製された熱安定性DNAポリメラーゼが提供され得る。
本発明者らは驚くべきことに、288個のN末端アミノ酸を欠く生来のThermus aquaticus DNAポリメラーゼ(TaqWT)のフラグメント(TaqΔ288)が、TaqWT、TaqΔ279、およびTaqΔ289を上回る熱安定性を保有することを見出した。したがって、本発明は、TaqΔ288、上記のフラグメントまたはその誘導体をコードする組換え発現ベクター、並びにTaqΔ288についての精製プロトコールを提供することによって上記の要求を満たすことを助ける。本発明はまた、TaqΔ288を含むキット、並びにTaqΔ288とTaqΔ288を含むキットの使用も包含する。さらに、本発明は、核酸テンプレートの配列決定の方法および標的核酸を増幅する方法をも包含する。
本発明の理解を容易にするために、多くの用語が以下に定義される。
アミノ酸表記には、三文字略号、並びにアミノ酸の一文字アルファベット、すなわち、Asp D アスパラギン酸、Ile I イソロイシン、Thr T トレオニン、Leu L ロイシン、Ser S セリン、Tyr Y チロシン、Glu E グルタミン酸、Phe F フェニルアラニン、Pro P プロリン、His H ヒスチジン、Gly G グリシン、Lys K リジン、Ala A アラニン、Arg R アルギニン、Cys C システイン、Trp W トリプトファン、Val V バリン、Gln Q グルタミン、Met M メチオニン、Asn N アスパラギンが使用される。アミノ酸配列中の特定の位置にあるアミノ酸は、三文字略号と数字で示される。例としては、配列番号:2の生来のTaq DNAポリメラーゼのアミノ酸配列に関して、「Glu7」は、アミノ酸7位にあるグルタミン酸残基を示す。
用語「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」は、相互に交換して使用することができ、そしてそのような定義のすべては、後代を含む。したがって、語「形質転換体」または「形質転換細胞」は、移行物の数に関係なく一次形質転換細胞およびその細胞に由来する培養物を包含する。全ての後代は、意図的なまたは偶然の突然変異により、DNA内容物において厳密に同一でなくてもよい。もともと形質転換された細胞でスクリーニングされるものと同じ機能性を有する突然変異後代は、形質転換体の定義に含まれる。
用語「制御配列」は、特定の宿主細胞で作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適切な制御配列は、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、リボソーム結合部位、およびおそらくは他の配列を包含する。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
用語「発現系」は、作動可能な連結内に所望のコード配列および制御配列を含むDNA配列を意味し、その結果、これらの配列で形質転換された宿主は、コードされるタンパク質を産生することができる。形質転換を達成するために、発現系は、ベクターに含まれうる。しかし、関連するDNAもまた、宿主染色体に組み込まれうる。
用語「遺伝子」は、回収可能な生物活性ポリペプチドまたは前駆体の産生のために必要な制御配列およびコード配列を包含するDNA配列を意味する。ポリペプチドは、全長コード配列によって、または酵素活性が保持される限りはコード配列の任意の部分によりコードされ得る。
用語「作動可能な連結内に置かれる」および「作動可能に連結された」は、制御配列が、コード配列によりコードされるタンパク質の発現を駆動するために機能するようなコード配列の位置づけを意味する。したがって、制御配列に「作動可能に連結された」コード配列は、コード配列が制御配列の管理下で発現されうる配置を意味する。
用語「非イオン性重合界面活性剤」は、イオン性電荷を有さず、そして、本発明の目的のために約3.5から約9.5まで、好ましくは4から8.5までのpH範囲でTaqΔ288を安定化させる能力によって特徴づけられる界面活性剤を意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、2以上の、好ましくは3より多くの、通常は、10より多くのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される分子として定義される。正確なサイズは、多くの因子に依存し、これは次に、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用にもまた依存する。オリゴヌクレオチドは、合成的にまたはクローニングによって得ることができる。
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー」は、プライマー伸長が開始される条件下に置かれた場合に、合成の開始点として作用する能力があるオリゴヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製された制限酵素消化物のように自然界に存在するか、または合成によって生成され得る。核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成は、適切な温度で、適切な緩衝液中における4種の異なるヌクレオシド三リン酸および熱安定性ポリメラーゼ酵素の存在下で開始される。「緩衝液」は、コファクター(二価金属イオンのような)および塩(適切なイオン強度を供する)を含み、所望のpHに調整される。
プライマーは、増幅における最大の効率のためには一本鎖であるが、代替的に二本鎖でもありうる。二本鎖であれば、プライマーは、伸長産物を調製するために使用される前に、その鎖を解離させるように最初に処理される。プライマーは、通常は、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、ポリメラーゼ酵素の存在下で伸長産物の合成を促進するのに十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、プライマーの起源および望まれる結果のような多くの因子に依存し、そして反応温度は、テンプレートへのプライマーの適正なアニーリングを確実にするために、プライマー長およびヌクレオチド配列によって調整されなければならない。標的配列の複雑さに依存して、一般的には、オリゴヌクレオチドプライマーは15〜35のヌクレオチドを含む。短いプライマー分子は、一般的に、テンプレートと十分に安定な複合体を形成するためにより低い温度を要求する。
プライマーは、テンプレートの特異的配列の鎖に対して「実質的に」相補的であるように選択される。プライマーは、プライマー伸張が生じるためにテンプレート鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントを、プライマー配列の残りがその鎖に対して実質的に相補的であるプライマーの5’末端に結合させることができる。非相補的塩基またはより長い配列を、プライマー配列がテンプレートの配列とハイブリダイズし、それによりプライマーの伸長産物の合成のためのテンプレートプライマー複合体を形成するために十分な相補性を示すことを条件に、プライマーに内に散在させることができる。
用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は、特異的ヌクレオチド配列で、またはその付近で二本鎖DNAを切断する細菌酵素を意味する。
用語、DNAポリメラーゼ活性を有する「熱安定性」ポリペプチドは、熱に安定であり、熱耐性であり、そしてテンプレート核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物を形成するために適切な様式でヌクレオチドの組合せを触媒(促進)する酵素を意味する。一般に、プライマー伸長産物の合成は、プライマーの3’末端で開始し、そしてテンプレート鎖に沿って、合成が終結するまで5’方向で進行する。熱安定性DNAポリメラーゼの一例は、Taq DNAポリメラーゼ(Taq WT)またはTaqΔ279、TaqΔ289、および本発明の酵素、すなわちTaqΔ288のようなその欠失フラグメントである。
DNAポリメラーゼ活性についてのアッセイには、その末端配列がG+Cに富んでおり、そして互いにハイブリダイズすることができるDNAオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドは、末端配列がハイブリダイズするとループを形成する。ハイブリダイゼーションにより、5’一本鎖突出で終わる二本鎖DNAの短い鎖を生じる。同時に、対となる鎖上には、末端3’−OH官能基が提供され、それにより、DNAポリメラーゼの基質を提示する。反応混合液中でのdNTPおよび二価イオンの存在下、およびDNAポリメラーゼ活性をサポートする条件下で、DNAポリメラーゼは、5’突出を有する鎖であるテンプレート鎖に相補的なヌクレオチドを用いて、末端3’−OH官能基を有する鎖の伸長を触媒する。反応は、5’突出が、全て平滑末端に変換されるまで進行する。
アッセイは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の原理に基づいており、DNAポリメラーゼ活性によって誘発される。一般に、相互作用してFRETを生じることができる第一および第二の標識発蛍光団が好ましい。アッセイの設定に関しては、5’一本鎖突出を最初に供するヌクレオチドに近い位置で二本鎖部分内に、第一の発蛍光団に結合されるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが配置されている、上記のような特別なオリゴヌクレオチドが使用される。好ましくは、第一の発蛍光団は、フルオレセインである。5’一本鎖突出内の発蛍光団で標識された第一の位置から約10ヌクレオチドの位置には、アデニンがある。dTTPの代わりに、反応混合液は、標識dUTP、または標識dUTPと未標識dUTPの混合物を含む;dUTPは、上記アデニンと対合して対鎖に取り込ませることができる。好ましくは、dUTPに結合した標識は、、第二の発蛍光団としてのLightCycler-Red 640である。いったん標識dUTPが、DNAポリメラーゼ酵素活性によって取り込まれると、FRETをサポートする第一および第二の標識が近い位置に存在することになる。取り込まれた標識dUTPを有するオリゴヌクレオチド分子は、フルオレセインに特異的であるが、LightCycler-Red 640には特異的でない規定励起波長の光を用いてFRETを定量し、そしてLightCycler-Red 640の放射波長で放射された光を測定することによって測定することができる。当業者は、FRETを定量するためのこの原理、方法および装置について十分に理解している。
FRETアッセイを使用して、本発明者らは、Taq WT、TaqΔ289、TaqΔ279、およびTaqΔ288を比較し、それにより、各ポリメラーゼを、E.coliで組換えにより発現させた。それぞれの発現培養液の溶解物において、各DNAポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ活性の熱安定性について試験された。活性は、97℃で35分間の加熱インキュベーションの前後に溶解物サンプルにおいて測定された。驚くべきことに、熱処理により、Taq WT、TaqΔ289およびTaqΔ279のDNAポリメラーゼ活性は、50%未満に減少し、TaqΔ279は、約30%と約50%未満の間で活性を保持し、TaqΔ289は、約15%と約30%の間で活性を保持し、そしてTaq WTは、0%と約5%の間で活性を保持することが見出された。対照的に、末端にメチオニンを伴って発現させられたTaqΔ288は、約50%から約80%の間の活性を保持していた。
同じFRET活性アッセイを使用して、Taq WTおよびTaqΔ288が、PCR反応混合物中の精製酵素と比較された。98℃で30分間の加熱インキュベーション後、Taq WTは、約10%と約15%の間の活性を保持していた。対照的に、TaqΔ288は、約30%と約35%の間の活性を保持していた。
同じFRET活性アッセイを使用して、Taq WT、TaqΔ279およびTaqΔ288が、50%グリセロールを含む保存緩衝液である安定化調製物中の精製酵素と比較された。Taq WT、TaqΔ279およびTaqΔ288が、同じ保存緩衝液で維持された。98℃で30分間の加熱インキュベーション後、Taq WTは、約40%と約50%の間の活性を保持していた。TaqΔ279は、約80%と約100%の間の活性を保持していた。TaqΔ288は、約90%と約100%の間の活性を保持していた。
N末端メチオニンを有しているTaqΔ288と有していないTaqΔ288の熱安定性は、区別がつかなかった。
本発明の第一の態様は、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドであり、これは、ポリペプチドのアミノ酸配列が、Taq DNAポリメラーゼのN末端の288個のアミノ酸を欠いているThermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼのアミノ酸配列である点で特徴づけられる。本明細書中では、上記ポリペプチドは、TaqΔ288としても称される。好ましくは、そのポリペプチドのアミノ酸は、配列番号:2のアミノ酸配列である。
本発明のポリペプチドは、1つ以上の方法を使用して生成することができる。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドを組換えによって発現する形質転換された宿主細胞から得ることができる。しかし、ポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームのコドンによって決定される。機能的なオープンリーディングフレームは、N末端メチオニン残基をコードする開始コドンを必要とする。したがって、本発明の別の態様では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、さらに、N末端メチオニン残基を有する。好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸配列である。本明細書中では、配列番号:2と配列番号:4の両方のポリペプチドを、TaqΔ288という。
好ましくは、ポリペプチドの熱安定性は、配列番号:7の元のアミノ酸配列(TaqWT)を有するTaq DNAポリメラーゼである生来の酵素と比較して、増強される。熱安定性は、欠失フラグメントTaqΔ289およびTaqΔ279と比較して高いことが好ましい。本発明者らは、組換えによってE.coli TaqΔ288(N末端メチオニンを有する)、TaqΔ289、TaqΔ279およびTaq WTにおいて同じ条件下で発現させると、TaqΔ288は、他のものと比較して最も高い熱安定性を示すことを見出した。
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。当業者らは、本発明のDNAポリメラーゼ活性および増大された熱安定性を有するポリペプチドは、組換えDNA技術によって最も容易に構築できることを認識している。本発明の好ましい態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列である。
さらに、当業者は、ポリペプチドの最初の10から20のアミノ末端アミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列中に導入することができ、そしてポリペプチドの配列には影響を及ぼさないサイレンスコドン変化(すなわち、コード化されるアミノ酸が変化しない)を認識している。このような変化は、最適化されたヌクレオチド配列を得ることができ、そしてE.coli細胞のような形質転換された宿主細胞中、または細胞を含まない発現系において、本発明のポリペプチドの生成の増大を生じることができる。本発明のポリペプチドをコードする他の最適化されたヌクレオチド配列は、全コード配列中にサイレントコドン変化を導入することによって得ることができる。これは、ポリペプチドが例えば、Bacillus種のような原核生物の宿主細胞中で、または酵母細胞、好ましくはメチロトローフ酵母細胞のような真核生物の宿主細胞中で発現される場合に、特に有用でありうる。
発現ベクターを構築するために、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、または活性を破壊しない付加配列にもしくは活性なタンパク質を生じるように制御された条件(ペプチダーゼを用いた処理のような)下で切断可能な付加配列に対するポリペプチドの融合体をコードするDNAが得られる。次いで、コード配列は、発現ベクター中で適切な制御配列と作動可能な連結で配置される。したがって本発明の別の態様は、本発明のDNA配列を含む組換えDNAベクターである。
ベクターは適切な宿主細胞を形質転換するために使用され、形質転換された宿主細胞は、DNAポリメラーゼ活性を有する組換えポリペプチドの発現に適切な条件下で培養される。ベクターは、宿主細胞中で自律的に複製するように、または宿主細胞の染色体DNAに組込まれるように設計されうる。
前述の工程の各々は、多様な方法で行うことができる。例えば、所望のコード配列は、ゲノムフラグメントから得ることができ、そして適切な宿主中で直接使用されうる。多様な宿主で作動可能な発現ベクターの構築は、一般に以下に示されるように、適切なレプリコンおよび制御配列を使用して行われる。所望のコード配列および制御配列を含む適切なベクターの構築には、当該分野で十分に理解されている標準的なライゲーションおよび制限技術が使用される。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成されたオリゴヌクレオチドは切断、修飾され、そして所望の形態で再度連結される。通常のものが利用できない場合は、適切な制限部位が、以下に例示されるように、発現ベクターの構築を容易にするためにコード配列の末端に付加されうる。
配列修飾が必要なベクターまたはコード配列の部分については、多様な部位特異的プライマー指向性突然変異誘発方法が利用可能である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、部位特異的突然変異誘発を行うために使用することができる。当該分野で現在標準的である別の技術では、所望の突然変異をコードする合成オリゴヌクレオチドが、突然変異誘発プライマーの伸長産物の構築のためのテンプレートとして作用するpBS13+のような一本鎖ベクターの相補的核酸配列の合成を指向するプライマーとして使用される。突然変異誘発されたDNAは、宿主細菌に形質転換され、そして形質転換された細菌の培養物が平板培養され、同定される。修飾されたベクターの同定には、選択された形質転換体のDNAをニトロセルロースフィルターまたは他のメンブレンに転写させること、および修飾された配列に対する正確な組合せでのハイブリダイゼーションを可能にするが、元の鎖とのハイブリダイゼーションは妨げる温度での、キナーゼで合成されたプライマーでハイブリダイズされる「拾い上げ」が含まれる。その後、プローブとハイブリダイズするDNAを含む形質転換体が培養され、そしてこれは修飾されたDNAの蓄えとされる。
当業者は、いわゆる「ヒスチジンタグ」を含む融合ポリペプチドの組換え手段による構築を可能にする発現ベクターも認識している。(ポリ)ヒスチジンタグは、好ましくは6個の連続しているヒスチジンを含むアミノ酸配列である。ヒスチジンタグは通常、所望のポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合される。このような融合ポリペプチドの精製は、固定金属親和性クロマトグラフィーにより促進される。このクロマトグラフィーでは、ポリヒスチジンタグをつけられた融合ポリペプチドは、金属キレート化樹脂上に固定された金属イオンによって吸着される。これについての一例は、Qiagen製のQIAexpress精製システムである。同社によって、ポリヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドを生成するために使用することができる発現ベクター(pQE)が提供されている。
しかし、ヒスチジンタグがDNA活性を有している精製されたポリペプチドの一部であることは、必ずしも望まれない。この目的のために、プロテアーゼ切断部位を提供する別の配列を、ヒスチジンタグと所望のポリペプチドの間に挿入することができる。よく知られている一例は、第X因子プロテアーゼの切断部位を提供する配列である。したがって、本発明の別の態様は、本発明のDNA配列を含む組換え体DNAベクターである。好ましくは、DNA配列は、(i)末端ヒスチジンタグ、(ii)ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を供するアミノ酸配列、および(iii)本発明のポリペプチドから構成される融合ポリペプチドをコードする。融合ポリペプチドでの第X因子プロテアーゼ切断部位は、第X因子プロテアーゼ活性を有するタンパク質によって認識され、切断されると理解されている。さらに好ましくは、DNA配列は、配列番号:5のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドをコードする。
本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、または融合ポリペプチドのようなその誘導体を生成することが望まれる場合には、ポリペプチドの組換え形態の生成には、一般的に、組換えDNAベクターである発現ベクターの構築、ベクターでの宿主細胞の形質転換、および発現が起こるような条件下での形質転換された宿主細胞の培養が含まれる。したがって、本発明の別の態様は、本発明の組換えDNAベクターで形質転換された組換え宿主細胞である。
制御配列、組換えDNAベクター、および形質転換方法は、遺伝子を発現させるために使用される宿主細胞の型に依存する。一般的には、原核生物、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞が、宿主として使用される。原核生物の宿主は、一般的に最も効率的であり、組換えタンパク質の生成に便利であり、したがって、本発明のポリペプチドまたは融合ポリペプチドの発現に好ましい。
組換えタンパク質を発現させるために最も頻繁に使用される原核生物は、E.coliである。当業者は、本発明を実施するために使用することができる多数のE.coli株および発現系について認識している。しかし、bacilli(例えば、Bacillus subtilis)、種々の種のPseudomonas、および他の細菌株のようなE.coli以外の微生物株もまた、本発明の熱安定性DNAポリメラーゼの組換え発現に使用できる。このような原核生物の系では、宿主または宿主と適合性である種に由来する複製部位および制御配列を含むプラスミドベクターが、一般的に使用される。
細菌に加えて、酵母のような真核性微生物もまた、組換え宿主細胞として使用することができる。したがって、本発明のポリペプチドまたは融合ポリペプチドはまた、真核性微生物宿主生物として特にメチロトローフ酵母を使用して生成することもできる。メチロトローフ酵母は、メタノール利用に必要な生化学的経路を有し、そして細胞形態および増殖特性に基づいて、4つの属に分類される:Hansenula、Pichia、Candida、およびTorulopsis。最も高度に研究されたメチロトローフ宿主系は、Pichia pastoris(Komagataella pastoris)およびHansenula polymorpha(Pichia angusta)を利用する。酵母内での異種タンパク質の発現は、米国特許第5,618,676号、米国特許第5,854,018号、米国特許第5,856,123号および米国特許第5,919,651号に記載されている。
ターミネーター配列もまた、コード配列の3’末端に配置させて、発現を増強させるために使用することができる。このようなターミネーターは、酵母由来の遺伝子でのコード配列に続く3’非翻訳領域で見られる。酵母適合性プロモーター、複製起点、および他の制御配列を含むあらゆるベクターが、本発明の熱安定性DNAポリメラーゼの酵母発現ベクターを構築する上での使用に適している。
さらに、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、または本発明のポリペプチドを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドを、多細胞生物由来の真核性宿主細胞培養物中で発現させることもできる。
使用される宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適切な標準的な技術を使用して行われる。Cohen,S.N.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69(1972)2110−2114に記載されているように、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理が、原核生物、または実質的な細胞壁バリアを含む他の細胞に使用される。Agrobacterium tumefaciens感染(Shaw,C.H.ら、Gene 23(1983)315−330)が、特定の植物細胞に使用される。哺乳動物細胞については、Grahamおよびvan der Eb、Virology 52(1978)546のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。酵母への形質転換は、van Solingen,P.およびPlaat,J.B.、J.Bact. 130(1977)946−947およびHsiao,C.L.、およびCarbon,J.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76(1979)3829−3833の方法にしたがって行われる。
本発明の別の態様は、(a)本発明の組換えDNAベクターで、宿主細胞を形質転換する工程;(b)宿主細胞を培養し、そして上記宿主細胞中でDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを発現させる工程;(c)工程(b)で発現させたDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成する方法である。組換えによって発現されたポリペプチドの精製は、組換えによって発現されたTaqWT(米国特許第5,079,352号)またはTaqΔ288が得られるものを除くその欠失フラグメント(米国特許第5,616,494号;米国特許第5,436,149号)を用いる場合と同様に行われる。さらに好ましいのは、(a)本発明の組換えDNAベクターで宿主細胞を形質転換する工程;(b)宿主細胞を培養し、そして上記宿主細胞中で(i)末端ヒスチジンタグ、(ii)ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を供するアミノ酸配列、および(iii)本発明のポリペプチドから構成される融合ポリペプチドを発現させる工程;(c)工程(b)で発現させた融合ポリペプチドを精製する工程;(d)第X因子タンパク質分解活性を有するプロテアーゼの存在下で上記融合ポリペプチドをインキュベートする手段により、融合ポリペプチドを切断し、それにより第X因子プロテアーゼ切断部位およびヒスチジンタグから、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを分離する工程;(e)工程(d)のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成する方法である。工程(c)では、融合ポリペプチドは、ヒスチジンタグを結合することができる粒子状親和性マトリックスを使用して精製されることが、さらにいっそう好ましい。工程(d)では、融合ポリペプチドのヒスチジンタグが、粒子状親和性マトリックスに結合されることが、なおいっそう好ましい。粒子状親和性マトリックスは、金属キレート樹脂でコーティングされたクロマトグラフィー材料であること、そして金属イオンは、コーティングされたクロマトグラフィー材料の上に固定されることが、なおいっそう好ましい。クロマトグラフィー材料は、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)でコーティングされることが、なおいっそう好ましい。これに関して、当業者は、欧州特許第1069131号を承知している。したがって、形質転換されたE.coli細胞の培養物中で組換えによって発現された本発明によるヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドを単離する好ましい方法は、細胞の溶解物を作製することである。溶解物を作製する1つの方法は、溶解物緩衝液中に細胞を懸濁させ、そして超音波で細胞を処理することによる。溶解物中に存在するDNAはDNaseで、好ましくは、DNase Iで消化される。続いて、E.coliタンパク質は、熱変性(30分、72℃が好ましい)により分解され、そして遠心分離による溶解液から分離されうる。遠心分離に続いて、透明な上清が、Ni-NTA Superflow column(Qiagenカタログ番号第30410、30430、または30450)を使用してクロマトグラフィーにかけられ、それによりヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドは、カラムの固定化金属親和性マトリックスに結合させられる。洗浄緩衝液での2回の洗浄に続いて、洗浄緩衝液および溶出緩衝液の勾配が使用され、それによって溶出緩衝液で、徐々に、段階的に洗浄緩衝液が交換される。それにより、ヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドがカラムから溶出されうる。さらに、溶出された融合ポリペプチドは、第X因子プロテアーゼの特異的タンパク質分解活性をサポートする条件下で、第X因子プロテアーゼの存在下でインキュベートされる。熱変性(30分、72℃が好ましい)に続いて、切断されたヒスチジンタグおよび未切断融合ポリペプチドは、Ni-NTA Superflow columnを使用する別のクロマトグラフィーによって、生成物、すなわちTaqΔ288から分離される。生成物を含むフロースルーが回収される。さらなる加工工程としては、好ましくは、TaqΔ288の安定化をサポートする緩衝液に対する、濃縮および透析を含み得、これにより本発明のポリペプチドの安定化された調製物が得られる。
あるいは、カラムの固定化金属親和性マトリックスに結合させる場合は、融合ポリペプチドは、第X因子プロテアーゼで切断されうる。この場合には、融合ポリペプチドが結合させられるカラム材料は、第X因子プロテアーゼの特異的タンパク質分解活性をサポートする条件下で、第X因子プロテアーゼの存在下でインキュベートされる。溶出緩衝液ではない緩衝液、すなわち、Ni-NTAでコーティングされたクロマトグラフィー材料に対するヒスチジンタグの結合をサポートする緩衝液での続く洗浄により、フロースルー中のTaqΔ288ポリペプチドを、第X因子プロテアーゼと一緒にさせる。続いて、第X因子プロテアーゼが不活化させられ、そしてTaqΔ288ポリペプチドが精製される。
長期安定性のために、本発明の熱安定性DNAポリメラーゼ酵素は、1つ以上の非イオン性重合性界面活性剤を含む緩衝液中で貯蔵されうる。このような界面活性剤は、一般的には、およそ100〜250,000ダルトン、好ましくは約4,000〜200,000ダルトンの範囲内の分子量を有し、そして約3.5〜約9.5、好ましくは約4〜8.5のpHで酵素を安定化させる。このような界面活性剤の例としては、MC Publishing Co. (175 Rock Road,Glen Rock,NJ(USA)) のMcCutcheon Divisionによって出版されている、McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、北米版(1983)の295−298ページに特定されているものが挙げられる。
好ましくは、界面活性剤は、エトキシ化脂肪酸アルコールエーテルおよびラウリルエーテル、エトキシ化アルキルフェノール、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、修飾オキシエチル化および/またはオキシプロピル化直鎖アルコール、ポリエチレングリコールモノオレート化合物、ポリソルベート化合物、およびフェノール性脂肪酸アルコールエーテルを含む群から選択される。さらに特に好ましくは、Tween 20 (ICI Americas Inc. (Wilmington,DE) 製のポリオキシエチル化(20)ソルビタンモノラウレート)、およびIconol NP−40 (BASF Wyandotte Corp. (Parsippany,NJ) 製のエトキシ化アルキルフェノール(ノニル)) である。
本発明の別の態様は、1つ以上の非イオン性重合性界面活性剤を含む緩衝液中に本発明のポリペプチドを含む安定化された調製物である。好ましくは、安定化された調製物の緩衝液は、グリセロール、KCl、Tris/HCl(トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンヒドロクロリド)、EDTA(エチレンジアミン−四酢酸二ナトリウム塩)、Tween 20、およびジチオ−スレイトール(DTT)から構成される群より選択される成分を含む。さらに好ましくは、63%(重量/体積)グリセロール、100mM KCl、20mM Tris-HCl(pH8.5)、0.1mM EDTA、0.5%(重量/体積)Tween 20、1mM DTTから構成される安定化された調製物である。
PCR増幅の各サイクルでは、二本鎖標識配列が変性させられ、プライマーが変性させられた標的のそれぞれの鎖にアニーリングされ、そしてプライマーが、DNAポリメラーゼの作用により伸長される。増幅の特異性は、プライマーハイブリダイゼーションの特異性に依存する。標的核酸配列のそれぞれの鎖の3’末端に存在する配列に相補的であるか、または実質的に相補的であるプライマーが選択される。典型的なPCRに使用される高温下では、プライマーは、意図される標的配列にのみハイブリダイズする。しかし、増幅反応混合物は、一般に、プライマーハイブリダイゼーション特異性を確実にするために必要とされる温度よりかなり低い室温で組み立てられる。このようなストリンジェンシーの低い条件下では、プライマーは、他の部分的にしか相補的ではない核酸配列に(またはさらには他のプライマーにさえも)非特異的に結合して、標的配列と一緒に増幅されうる所望されない伸張産物の合成を開始し得る。非特異的プライマー伸長産物の増幅は、所望の標的配列の増幅と競合し得、所望される配列の増幅効率を大幅に低下させ得る。非特異的増幅によって引き起される問題については、さらに、Chou,Q.ら、Nucleic Acids Res. 20(1992)1717−1723で検討されている。
反応の開始前に非標的配列に結合したプライマーからの伸長産物の形成を減少させることによって、非特異的増幅を減少させることができる。「ホット−スタート」プロトコールと称される1つの方法では、温度を、必要なハイブリダイゼーション特異性を提供するのに十分に上昇させるまで、1つ以上の重要な試薬を、反応混合液に加えないでおく。この方法では、反応混合液は、反応条件が、特異的なプライマーハイブリダイゼーションが確実ではない時間の間は、プライマーの伸長をサポートできない。
「ホットスタート」プロトコルによくある特性としては、DNAポリメラーゼ活性が、DNAポリメラーゼの可逆性不活化、つまり、可逆的に遮断されたDNAポリメラーゼにより、PCR反応混合物に加えないで留められる。1つの方法では、高温で一定の期間のDNAポリメラーゼのインキュベーションの後のみに活性になる化学的に修飾されたDNAポリメラーゼが使用され、これにより、PCR反応混合物のセットアップの間の望ましくないDNA合成産物の生成が阻止される。米国特許第6,183,998号には、ホルムアルデヒドのようなアルデヒドを使用する熱安定性DNAの可逆性不活化が記載されている。酵素の本質的に完全な不活化が室温で達成され、50℃より高い温度で酵素活性を回復する。欧州特許第0771870号および米国特許第6,479,264号には、ジカルボン酸無水物を使用する熱安定性DNAポリメラーゼの可逆性不活化が記載されている。米国特許第5,773,258号および米国特許第5,677,152号には、熱安定性酵素の酵素活性の可逆性不活化が記載されている。共有修飾のための好ましい試薬としては、マレイン酸無水物;無水シトラコン酸、無水シス-アコニット酸、および無水2,3−ジメチルマレイン酸のような置換マレイン酸無水物;exo-cis−3,6−エンドキソ−デルタ 4−テトラヒドロフタル酸無水物;および3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物が挙げられる。したがって、無水シトラコン酸および無水シス−アコニット酸は、PCR増幅で使用するための可逆的に遮断されたDNAポリメラーゼの調製に好ましい。可逆的に不活化された酵素は、酵素を不活化するタンパク質の化学的修飾の結果である。不活化された酵素の活性は、増幅反応の前または一部で、高温での反応混合物のインキュベーションにより回復させられる。したがって、本発明の別の好ましい態様では、本発明のポリペプチドは、上記ポリペプチドに共有結合させた場合にポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる化合物に、共有結合させられる。化合物は、(a)無水シトラコン酸、(b)無水シス−アコニット酸、(c)2,3−ジメチルマレイン酸無水物、(d)exo−cis−3,6−エンドキソ−デルタ 4−テトラヒドロフタル酸無水物、および(e)3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物からなる群より選択されることがさらに好ましい。
本発明の別の好ましい態様は、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、それにより、ポリペプチドが、上記ポリペプチドに共有結合させた場合にポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる化合物に共有結合させられる、安定化された調製物である。化合物は、(a)無水シトラコン酸、(b)無水シス−アコニット酸、(c)2,3−ジメチルマレイン酸無水物、(d)exo−cis−3,6−エンドキソ−デルタ 4−テトラヒドロフタル酸無水物、および(e)3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物からなる群より選択されることがさらに好ましい。
本発明のさらに別の好ましい態様は、ポリペプチドに共有結合した場合にポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる抗体によって結合される本発明のポリペプチドを含む安定化された調製物である。DNAポリメラーゼ活性は、DNAポリメラーゼの非共有的な修飾によってもまた可逆的に遮断されうる。米国特許第5,338,671号には、DNAポリメラーゼ活性を阻害するためのDNAポリメラーゼ酵素に特異的な抗体の使用が開示されている。DNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ特異的抗体のプレ混合は、抗体−ポリメラーゼ複合体の形成を生じる。これらの条件下では、オリゴヌクレオチド伸長活性は実質的には検出されない。高温では、抗体が複合体から解離し、これによりDNAポリメラーゼを放出し、次いでPCRの間のDNA合成において機能する。好ましくは、抗体は、Taq DNAポリメラーゼに対するモノクローナル抗体である。Taq DNAポリメラーゼに対するモノクローナル抗体は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,338,671号に記載されている。好ましくは、Taq DNAポリメラーゼに対するモノクローナル抗体は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されたハイブリドーマから得ることができるTP4-9.2およびTP1-12.2であり、それぞれATCCアクセッション番号HB11807およびHB11127と命名されている。好ましい抗体は、ポリメラーゼについて少なくとも約1×107M-1の結合定数を有する。本発明によると、DNAポリメラーゼに特異的として定義される抗体は、約20〜40℃の温度で、DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害することができる抗体である。本発明の安定化された調製物の抗体は、PCR熱サイクルの間に使用される高温によって不活化されるか、または熱サイクルを開始する前に高温で、PCR反応混合物を予めインキュベートすることによって不活化されるかのいずれかである。ポリメラーゼの酵素活性を阻害する抗体の能力は、例えば、Sharkey,D.J.ら、Bio Technology 12(1994年)506−509頁に記載されているような、当業者に公知のアッセイによって測定することができる。例えば、DNAポリメラーゼの酵素活性についての標準的なアッセイは、3H-dNTPを、DNAに作製された一本鎖ギャップに取り込むポリメラーゼの能力に基づきうる。ポリメラーゼ活性を阻害する抗体の能力は、抗体をポリメラーゼとともに予めインキュベートし、その後、標準的なポリメラーゼアッセイを行うことによって測定される。このようなアッセイにおいてポリメラーゼ活性を顕著に低下させることができる抗体が、本発明に有用である。同様のアッセイを、所望の抗体が加熱により不活化されることを決定するために使用することができる。簡潔には、ポリメラーゼを阻害する抗体の能力についてのアッセイは、所望の温度にまで上昇させ、続いて冷却し、そしてポリメラーゼ活性を分析することによって改良される。適切な抗体は、85〜95℃の温度によって不活化され、それにより活性ポリメラーゼを放出する。
本発明の別の態様は、プライマー伸長産物を生成するための、ポリペプチドに共有結合させた場合にポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる化合物に共有結合させた本発明のポリペプチド、ポリペプチドに結合した場合にポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる抗体によって結合される本発明のポリペプチド、または本発明による安定化された調製物の使用法である。例えば、PCRまたはサンガー法を用いて配列決定を行う場合には、プライマー伸長産物が生成される。したがって、好ましいのは、核酸鋳型を配列決定するための本発明の使用である。さらに好ましいのは、標的核酸を増幅するための発明の使用である。プライマー伸長についての別の例は、ニックトランスレーションである。当業者は、用語「プライマー伸長産物を生成する」を示す多数の他の例を理解している。本発明は、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドまたはそれを含む調製物を使用してプライマー伸長産物を生成することを包含する。
本発明の別の態様は、本発明のいずれかによる安定化された調製物を包含するプライマー伸長産物を生成するためのキットである。好ましいのは、核酸鋳型を配列決定するためのキットである。さらに好ましいのは、標的核酸を増幅するためのキットである。非常に好ましいのは、LightCyclerを使用して標的核酸を増幅するためのキットである。その一例は、LightCycler DNA Master SYBR Green Iキット(Roch Diagnostics GmbH, Mannheim;カタログ番号2015099号)である。したがって、このようなキットは、3つのバイアルを含むことができ、そしてこれらの内の1つ(1)は、10×濃縮反応ミックスを含み、これは、DNAポリメラーゼ活性が可逆的に遮断されているTaqΔ288またはTaqΔ288の安定化された調製物、および必要に応じてさらに、dTTPの代わりにdUTPを有するdNTPミックス、SYBR green I色素、および10mM MgCl2を含有している。キットの別のバイアル(2)は、例えば、25mMの濃度のMgCl2のストック溶液を含む。キットの別のバイアル(3)は、最終的な反応容量を調節するための滅菌されたPCRグレードの精製水を含む。
本発明の別の態様は、(a)上記標的核酸に相補的なプライマー、および(i)本発明のポリペプチド、(ii)上記ポリペプチドに共有結合させたときにポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる化合物に供給結合させた本発明のポリペプチド、および(iii)上記ポリペプチドに結合したときにポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的に遮断することができる抗体によって結合される本発明のポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドを含む増幅反応混合物と上記サンプルを接触させる工程、(b)必要に応じて、熱処理によって遮断されているDNAポリメラーゼ活性を解放する工程、(c)工程(a)の反応混合液中で、上記標的核酸に対して上記プライマーをアニーリングさせる工程、(d)工程(b)の後、プライマー伸長産物の形成を可能にするために混合物をインキュベートすることによって標的核酸を増幅させる工程を包含する、サンプル中の標的核酸を増幅する方法である。
議論を簡潔にするために、以下に説明されるプロトコールは、増幅対象の特異的配列が、二本鎖核酸に含まれると仮定する。しかしながら、好ましい態様では最終的産物も二本鎖DNAであるが、この方法は、mRNAのような一本鎖核酸の増幅にも同等に有用である。一本鎖核酸の増幅では、第一段階として、相補鎖の合成(2つの増幅プライマーの内の1つをこの目的のために使用することができる)が含まれ、そしてそれに続く段階が、以下に記載される二本鎖増幅方法で同様に進められる。
したがって、例示の増幅方法には、(a)4つの異なるヌクレオシド三リン酸および2つのオリゴヌクレオチドプライマーと各核酸鎖を接触させる工程であって、各プライマーが、その相補鎖から分離される場合に1つのプライマーから合成された伸長産物が他方のプライマーの伸長産物の合成のための鋳型となることができるように、種々の特異的配列鎖に実質的に相補的であるように選択され、この接触は、相補的核酸鎖への各プライマーのハイブリダイゼーションを可能にする温度で行われる、工程;(b)工程(a)と同時またはその後、特異的核酸配列の各鎖に相補的なプライマー伸長産物を形成させるためのヌクレオシド三リン酸の結合を可能にする本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドと各核酸鎖を接触させる工程;(c)DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの活性を促進するために、および増幅される各異なる配列について、各核酸鎖鋳型に相補的である各プライマーの伸長産物を合成するために、有効な時間および有効な温度で(しかし、相補鎖鋳型から各伸長産物を分離するほどには高くない)、工程(b)から得られた混合物を維持する工程;(d)それらが一本鎖分子を生成するように合成された鋳型からプライマー伸長産物を分離するのに有効な時間および有効な温度で(しかし酵素を不可逆的に変性するほどには高くない)、工程(c)から得られた混合物を加熱する工程;(e)工程(d)で生成された一本鎖分子の各々に対するプライマーのハイブリダイゼーションを促進するのに有効な時間および有効な温度まで工程(d)から得られた混合物を冷却する工程;ならびに(f)DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの活性を促進するため、および増幅される各異なる配列について、工程(d)で生成された各核酸鋳型に相補的である各プライマーの伸長産物を合成するために有効な時間、有効な温度で(しかし相補鎖鋳型から各伸長産物を分離するほどには高くない)工程(e)から得られた混合物を維持する工程を含む。工程(e)および(f)での有効な時間および温度は一致する場合もあり、その結果、工程(e)および(f)を同時に行うこともできる。工程(d)〜(f)は、所望される増幅レベルが得られるまで反復される。
増幅方法は、大量の公知の配列の特異的核酸配列を生成するためだけではなく、完全に特定されていないが存在することが知られている核酸配列を生成するためにも有用である。十分詳細に配列の両末端に十分大量の塩基のみを知る必要があり、その結果、配列(例えば、一方のプライマーから合成された伸長産物)に沿って関連する位置で、所望の配列の異なる鎖にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーが製造され得、鋳型(相補鎖)から分離されると、所定の長さの核酸配列への他のプライマーの伸長のための鋳型として作用し得る。配列の両末端での塩基についての知識が多ければ多いほど、標的核酸配列についてのプライマーの特異性およびその方法の効率およびその反応の特異性を大きくすることができる。
いかなる場合にも、配列が純粋であるかまたは別個の分子である必要はないが、増幅対象の配列の最初のコピーは入手可能でなければならない。一般に、(a)必要な配列の末端がそれらにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを合成することができると十分に詳細に知られていること、および(b)連鎖反応を開始するための少量の配列が入手可能であることを考えれば、増幅方法には、含まれる反応段階の数に比例して指数的な量で少なくとも1つの特異的核酸配列を生成する連鎖反応が含まれる。連鎖反応の産物は、使用される特異的プライマーの5'末端に対応する末端を有する別個の核酸二本鎖である。
精製または非精製形態であるあらゆる核酸配列を、もしそれが、増幅することが望まれる特異的核酸配列を含むか、または含むと予想される限りは、出発核酸として利用することができる。増幅される核酸は、細菌、酵母、ウイルス、オルガネラ、ならびに植物および動物のような高等生物を含むあらゆる源から、例えば、pBR322のようなプラスミドから、クローン化DNAまたはRNAから、またはあらゆる源に由来する天然のDNAまたはRNAから得ることができる。DNAまたはRNAは、多様な技術によって、血液、絨毛性絨毛のような組織材料、または羊水細胞から抽出されうる。例えば、Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY、1982、280−281頁を参照。したがって、この方法は、例えば、DNAまたはメッセンジャーRNAを含むRNAを使用することができ、これらのDNAまたはRNAは、一本鎖または二本鎖でありうる。さらに、各々の1つの鎖を含むDNA−RNAハイブリッドを、利用することもできる。核酸が先の増幅反応(同じかまたは異なるプライマーを使用する)から生成されうる場合に、これらの核酸の任意の混合物も、使用することができる。増幅される特異的核酸配列は、大きな分子の画分だけであり得るか、または最初は別個の分子として存在し、その結果特異的配列が核酸全体を構成することも可能である。
増幅される配列は、必ずしも最初に純粋な形態で存在する必要はない;配列は、複雑な混合物の微量の画分(例えば、ヒトの全DNA中に含まれるβ−グロビン遺伝子の一部(Saiki,R.K.ら、Science 230(1985年)1350−1354頁で例示されているように)または特定の生物学的サンプルの非常に微量の画分のみの構成要素となる特定の微生物に起因する核酸配列の一部)であり得る。細胞溶解および細胞内の成分の分散が起こるまで(一般的には1〜15分間)の低張性緩衝液中での懸濁および約90℃〜100℃での熱処理の後、細胞は、増幅方法にそのまま使用することができる。加熱工程の後、増幅試薬を、溶解させた細胞に直接添加することができる。出発核酸配列は、1つより多くの所望の特異的核酸配列を含みうる。増幅方法は、多量の1つの特異的核酸配列を生成するためだけではなく、同じかまたは異なる核酸分子上に位置する1つより多くの異なる特異的核酸配列を同時に増幅するためにも有用である。
プライマーは、PCR方法で重要な役割を果たす。増幅方法を記述するときに使用される場合、用語「プライマー」は、特に、増幅される断片の末端配列に関する情報についていくらかあいまいさがある場合、またはWO91/05753に記載されている縮重プライマー方法を使用する場合に、1つより多くのプライマーを意味しうる。例えば、核酸配列がタンパク質配列情報から推測される場合には、遺伝子コードの縮重に基づいた全ての可能性のあるコドン変動を提示する配列を含むプライマーの集合を、それぞれの鎖について使用することができる。この集合に由来する1つのプライマーが増幅される所望の配列の一部と十分に相同であれば、増幅に有用となる。
さらに、適切な数の異なるオリゴヌクレオチドプライマーが利用される限りは、1つより多くの特異的核酸配列が第一の核酸または核酸の混合物から増幅されうる。例えば、2つの異なる特異的核酸配列が産生される場合は、4つのプライマーが利用される。それらのプライマーの内の2つは、特異的核酸配列の一方に特異的であり、そして他の2つのプライマーは、第二の特異的核酸配列に特異的である。この方法では、2つの異なる特異的配列のそれぞれを、本発明の方法によって指数的に産生することができる。
少なくとも一回の増幅サイクルの後に、増幅される配列の内部配列(すなわち、末端にない配列)に相補的である一対のプライマーを添加することによって、所定の配列内の配列を、所定の数の増幅サイクルの後に、反応中にさらに大きな特異性が得られるように増幅させることができる。このようなプライマーは、あらゆる段階で添加でき、そして短い増幅断片を提供する。あるいは、より長い断片を、非相補的末端を有するが、増幅において先に使用したプライマーとある程度重複しているプライマーを使用することによって作製することができる。
プライマーはまた、増幅方法がインビトロでの突然変異誘発のために使用される場合にも、重要な役割を果たす。使用されるプライマーが、最初の鋳型に完全には相補的でない増幅反応の産物は、鋳型よりむしろプライマーの配列を含むので、それにより、インビトロ突然変異が導入される。次のサイクルでは、もはや誤った対合のプライミングは必要ないので、この突然変異は、効率を低下させることなく増幅される。上記のように改変DNA配列を作る方法は、さらなる配列変化を誘導する様々のプライマーを使用して、改変DNAに対して繰返すことができる。この方法で、一連の変異した配列を段階的に作製するにつれて、シリーズへの各新規な付加は、些細な点で最後のものとは異なるが、最初のDNA供給源の配列とは徐々に大きく異なるようになる。
十分な量のプライマーが増幅される鎖に相補的である配列を含むという条件では、プライマーは、その配列の一部として非相補的配列を含むことができるので、多くの他の利点が得られうる。例えば、鋳型配列に相補的でないヌクレオチド配列(例えば、プロモーター、リンカー、コーディング配列などのような)を、プライマーの一方または両方の5'末端に連結させて、それによって増幅過程の産物に付加することができる。伸長プライマーを添加した後、十分なサイクルを行って、非相補的ヌクレオチド挿入物を含む所望される量の新たな鋳型を得る。これにより、簡単な技術を使用して比較的短い期間(例えば、2時間またはそれ未満)で、多量の結合断片の生成が可能となる。
例えば、上記のホスホトリエステルおよびホスホジエステル法、またはそれらの自動化態様のようなあらゆる適切な方法を使用して、オリゴヌクレオチドプライマーを作製することができる。1つのこのような自動化態様では、ジエチルホスホルアミダイトを出発材料として使用し、そしてBeaucageら、Tetrahedron Letters 22(1981年)1859−1862年に記載されているように合成することができる。修飾固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。生物学的供給源(制限エンドヌクレアーゼ消化物のような)から単離されたプライマーを使用することもできる。
しかし、どのようなプライマーが使用されるかにはかかわらず、特異的核酸配列が、鋳型としてその配列を含む核酸を使用することによって生成されるので、反応混合物は、PCRを生じさせるための鋳型を含まなければならない。第一の段階には、4つの異なるヌクレオシド三リン酸および増幅されるかまたは検出される各々の特異的核酸配列についての2つのオリゴヌクレオチドプライマーと、各核酸鎖を接触させる工程が含まれる。増幅されるか、または検出される核酸が、DNAである場合は、ヌクレオシド三リン酸は、通常は、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPであるが、種々のヌクレオチド誘導体をこの方法で使用することもできる。例えば、未知の配列のサンプル中の公知の配列の検出のためにPCRを使用する場合は、WO91/05210で教示されるように、サンプル間の混入を減少させるために、しばしば、dTTPがdUTPによって置き換えられる。
ヌクレオシド三リン酸の濃度は、広く変化させることができる。特に、濃度は、増幅用の緩衝液中で50〜500μMの各dNTPであり、そしてMgCl2は、ポリメラーゼを活性化し、そして反応の特異性を増大させるために1〜3mMまでの量で緩衝液中に存在する。しかし、1〜20pMまでのdNTP濃度は、DNA配列決定または高い特異的活性を有する放射性標識プローブの作製のようないくつかの用途に好ましい。
標的核酸の核酸鎖は、プライマーの伸長産物であるさらなる核酸鎖の合成のために鋳型となる。この合成は、任意の適切な方法を使用して行われるが、一般的には、好ましくは7から9まで、最も好ましくは約8のpHで、緩衝化水溶液で起こる。合成を容易にするために、過剰モルの2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、鋳型鎖を含む緩衝液に添加する。実際問題として、添加されるプライマーの量は、一般的には、増幅される配列が、複雑な長鎖の核酸鎖の混合物に含まれる場合には、相補的鎖(鋳型)の量を越えるモル過剰にある。多量のモル過剰は、その方法の効率を改善するために好ましい。したがって、クローン化されたDNA鋳型については、少なくとも1000:1またはそれより高いプライマー:鋳型比が一般に使用され、そして複合体ゲノムサンプルからの増幅のためには、約100:1またはそれより高いプライマー:鋳型比が一般的に使用される。
その後、鋳型、プライマー、およびヌクレオシド三リン酸の混合物は、増幅または検出される核酸が、二本または一本鎖であるかどうかによって処理される。核酸が一本鎖である場合は、最初の伸長サイクルの前に変性段階が使用される必要はなく、そして反応混合物は、それの相補的標的(鋳型)配列へのプライマーのハイブリダイゼーションを促進する温度に保たれる。このような温度は、有効な時間、一般的には、数秒から5分、好ましくは30秒から1分の間、約35℃から65℃またはそれより上、好ましくは約37℃から60℃である。35℃から70℃までのハイブリダイゼーション温度を使用することができる。長さ15ヌクレオチドまたはそれより長いプライマーは、プライマーハイブリダイゼーションの特異性を増大させるために使用される。短いプライマーには、低いハイブリダイゼーション温度が必要である。
最初の一本鎖核酸に対する相補性は、適切な緩衝液、dNTP、および1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーの存在下に、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを添加することによって合成することができる。適切な一本鎖プライマーが添加される場合は、プライマー伸長産物は、一本鎖核酸に相補的であり、そして等しいかまたは等しくない長さ(プライマーが鋳型のどこにハイブリダイズしたかによって)の鎖の二本鎖の核酸鎖とハイブリダイズし、その後、上記のように一本鎖に分離されて、2つの一本鎖の、分離された、相補鎖を生じる。その後、第二のプライマーが添加され、続くプライマー伸長のサイクルが、鋳型として元の一本鎖核酸および第一のプライマーの伸長産物の両方を使用して起こる。あるいは、2つ以上の適切なプライマー(その内の1つは、鋳型として他のプライマーの伸長産物を使用して合成を刺激する)が一本鎖核酸に添加され、そして反応が起こりうる。
二本鎖標的の増幅、または一本鎖標的の第二サイクルの増幅の場合のように核酸が2つの鎖を含む場合、プライマーがハイブリダイズさせられる前に、核酸の鎖を分離させなければならない。この鎖の分離は、物理的、化学的、または酵素的手段を含む任意の適切な変性方法によって行うことができる。核酸の鎖を分離する1つの好ましい物理的方法には、完全な(>99%)変性が生じるまで、核酸を加熱する工程が含まれる。典型的な熱変性は、一般に、核酸の組成およびサイズにより、約数秒から数分までの範囲の時間、約80℃から105℃までの範囲の温度で行われる。好ましくは、有効な変性温度は、90℃〜100℃で数秒から1分間である。鎖の分離は、ヘリカーゼまたは酵素RecAとして知られている酵素のクラスに由来する酵素によっても誘導することができる。このような酵素は、ヘリカーゼ活性を示し、ATPの存在下でDNAを変性させることが公知である。核酸の鎖をヘリカーゼで分離するために適切な反応条件は、Kuhn Hoffmann-Berling, CSH-Quantitative Biology 43(1978年)63頁に記載されており、そしてRecAを使用するための技術は、Radding, C.M., Ann.Rev.Genetics 16(1982年)405−437頁で検討されている。変性によって、同じ長さまたは同じではない長さの2つの分離された相補的な鎖が生じる。
二本鎖核酸が熱によって変性させられる場合は、反応混合物を、各プライマーの相補的標的(鋳型)配列へのハイブリダイゼーションを促進する温度まで冷却する。この温度は、通常は、試薬により異なるが、約35℃〜65℃またはそれより上、好ましくは37℃から60℃である。ハイブリダイゼーション温度は、有効な時間、一般的には、数秒から数分間、好ましくは10秒から1分間維持される。実際には、温度は、単に、約95℃から37℃程度の低温にまで下げられ、そしてハイブリダイゼーションは、この範囲内の温度で起こる。
核酸が一本鎖または二本鎖であるかにはかかわらず、変性工程の前またはその間に、あるいはハイブリダイゼーションを促進するような範囲まで温度が下げられているかまたはその範囲にある場合には、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを添加することができる。本発明のポリメラーゼの熱安定性は、あらゆる時点で反応混合物にそのようなポリメラーゼを添加することを可能にするが、混合物が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション温度より低い温度に冷却されていない時点では、反応混合物にポリメラーゼを添加することによって、非特異的増幅を実質的に阻害できる。次いでハイブリダイゼーションの後、反応混合物を、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの活性が促進または最適化される温度、すなわち、ハイブリダイズしたプライマーおよび鋳型からのプライマー伸長産物の合成を容易にする上でDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの活性を増大させるために十分な温度にまで加熱されるか、またはその温度で維持される。温度は、実際には、各核酸鋳型に相補的である各プライマーの伸長産物を合成するために十分でなければならないが、それの相補的鋳型から得られる各伸長産物を変性させるほど高くなってはならない(すなわち、温度は、一般的には、約80℃から90℃未満である)。
使用される核酸に依存して、この合成反応に有効な典型的な温度は、一般的には、約40℃から80℃、好ましくは50℃から75℃の範囲である。温度は、さらに好ましくは、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドについては約65℃から75℃の範囲である。この合成に必要な時間は、主に温度、核酸の長さ、酵素、そして核酸混合物の複雑さによって、約10秒から数分またはそれ以上の範囲でありうる。伸長時間は、通常は、約30秒から数分である。核酸が長ければ長いほど、一般的には、相補鎖の合成により長い時間が必要である。
新たに合成された鎖および相補的核酸鎖は、増幅方法の次の工程で使用される二本鎖分子を形成する。次の工程では、二本鎖分子の鎖は、分子の変性に有効な温度および時間で熱変性により分離させられるが、これは、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドが完全に不可逆に変性または不活化されるほどの温度および長い時間ではない。鋳型のこの変性の後、上記のように、先の工程によって生成された相補的一本鎖分子(鋳型)へのプライマーのハイブリダイゼーションを促進するレベルまで、温度が下げられる。
このハイブリダイゼーション工程の後、またはハイブリダイゼーション工程と同時に、温度は、鋳型として新しく合成された鎖と最初の鎖の両方を使用するプライマー伸長産物の合成を可能にするDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの活性を促進するのに有効な温度に調節される。上記のように、温度は、再びその鋳型から伸長産物を分離(変性)させるほど高くはなってはならない。ハイブリダイゼーションは、この工程の間に起こり得、その結果、先の変性後の冷却の工程は不要である。同時の工程を使用するこのような場合には、好ましい温度範囲は、50℃から70℃である。
鎖分離、ハイブリダイゼーション、および伸長産物合成の1サイクルに含まれる加熱および冷却工程は、所望される量の特異的核酸配列を生成するために必要な回数で繰返すことができる。唯一の制限は、存在するプライマー、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、およびヌクレオシド三リン酸の量である。通常は、15回から30回のサイクルが行われる。増幅DNAの診断検出のためには、サイクルの数は、サンプルの性質、サンプル中での最初の標的濃度、および増幅後に使用される検出方法の感受性に依存する。検出の所定の感受性については、増幅されるサンプルが純粋であり、そして最初の標的濃度が高い場合には、少ない回数のサイクルが必要とされる。サンプルが、核酸の複雑な混合物であり、そして当初の標的濃度が低い場合には、検出に十分にシグナルを増幅させるためには、さらに多くのサイクルが必要である。一般の増幅および検出については、この方法は約15回繰返される。増幅が、標識された配列特異的プローブを用いて、検出される配列を生成するために使用される場合、およびヒトゲノムDNAが増幅の標的である場合は、明瞭に検出することができる信号が生成されるため、すなわちバックグランドノイズが検出を妨害しないように十分に配列を増幅するために、この方法が15から30回繰り返される。
重要な試薬で使い尽くされたものはなく、そしてDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドが変性していないかまたは不可逆的に不活化されていないならば、さらにヌクレオチド、プライマー、またはDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドで、最初の添加後に添加する必要はない。この場合、反応を継続させるためにはさらにポリメラーゼまたは他の試薬を添加する必要がある。適切な回数のサイクルが行われて所望される量の特異的核酸配列が得られた後に、反応は、通常の様式で、例えば、EDTA、フェノール、SDS、またはCHCl3を添加することによってDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを不活化することによって、あるいは反応の成分を分離することによって停止させられうる。
増幅方法は継続して行うことができる。自動化方法の1つの態様では、反応混合物は、温度が一定の時間の間一定のレベルで制御されるようにプログラムされて温度循環させられうる。この目的のための1つのこのような装置は、Perkin-Elmer Cetus Instrumentsによって開発および市販されている増幅反応を取扱う自動化装置である。この装置を用いてPCRを行うための詳細な説明書は、装置の購入時に入手することができる。このような装置のために別の例は、Roch Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手可能なLightCyclerである。
本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドは、PCRによる核酸配列の増幅が有用である多様化方法に非常に有用である。増幅方法は、米国特許第4,800,159号に記載されているように、挿入のための特定の核酸配列を、適切な発現ベクターにクローニングするために利用することもできる。ベクターは、組換えDNA技術の標準的な方法によって、適切な宿主細胞を形質転換して配列の遺伝子産物を生成するために使用することができる。このようなクローニングには、平滑末端ライゲーションを使用するベクターへの直接ライゲーション、またはプライマー内に含まれる部位で切断する制限酵素の使用が含まれうる。本発明の熱安定性DNAポリメラーゼに適切な他の方法としては、米国特許第4,683,195号および米国特許第4,683,202号および欧州特許第0229701号;欧州特許第0237362号;および欧州特許第0258017号に記載されている方法が挙げられる。さらに、本発明の酵素は、非対称PCR(Gyllensten,U.B.およびErlich,H.A.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(1988年)7652−7656頁を参照);逆PCR(Ochman,H.ら、Genetics 120(1988年)621−623頁);およびDNA用配列決定(Innis,M.A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(1988年)9436−9440頁、およびMcConlogue,L.ら、Nucleic Acids Res. 16(1988年)9869頁)、cDNA末端のランダム増幅(RACE)、一連のDNA断片を増幅するために使用されるランダムプライミングPCR、およびLoh,E.によって、METHODS: A Companion to Methods in Enzymology (1991年) 2、11−19頁に記載されているようなアンカーPCRおよびライゲーション媒介性アンカーPCRのような片側特異性を有するPCR方法に有用である。
特に、本発明のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドは、LightCyclerを使用して標的核酸を増幅するために有用である。LightCycler装置、並びにPCRを行うためのプロトコールは、Roch Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手可能な仕様説明書「LightCycler Operator's Manual Version 3.5」(2000年10月)に記載されている。したがって、4.3.1章で示される推奨を、TaqΔ288に同様に適用する。
本発明の別の態様は、少なくとも1つの鎖終結因子、および1つ以上のヌクレオチド三リン酸の存在下で、本発明のポリペプチドを用いて配列決定される核酸鋳型から鎖終結断片を生じる工程、および上記断片のサイズから上記核酸の配列を決定する工程を包含する、核酸を配列決定する方法である。
サンガーのジデオキシヌクレオチド方法によるDNA配列決定(Sanger,F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74(1977年)5463−5467頁)は、近年、かなり改良されており、新規ベクター(Yanisch-Perron,C.ら、Gene 33(1985年)103−119頁)、塩基アナログ(Mills,D.R.およびKramer,F.R.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76(1979年)2232−2235頁、およびBarrら、BioTechniques 4(1986年)428−432頁)、酵素(Tabor,S.およびRichardson,C.C.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(1987年)4767−4771頁、およびInnis,M.A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(1988年)9436−9440頁)、およびDNA配列分析の一部自動化のための装置(Smith,L.M.ら、Nature 321巻(1986年)674−679頁;Prober,J.M.ら、Science 238巻(1987年)336−341頁;およびAnsorge,W.ら、Nuc. Acids Res. 15(1987年)4593−4602頁)の開発が挙げられる。基本的なジデオキシ配列決定手順には、(i)オリゴヌクレオチドプライマーを、適切な一本鎖または変性させた二本鎖DNA鋳型にアニーリングさせる工程;(ii)それぞれが1つのα−標識dNTPまたはddNTP(あるいは、標識プライマーを使用することができる)、未標識dNTPの混合物と一本鎖終結ジデオキシヌクレオチド−5'−三リン酸(ddNTP)を含む4つの別個の反応においてDNAポリメラーゼでプライマーを伸長させる工程;(iii)高分解ポリアクリルアミド尿素ゲル上で4組の反応産物を分離する工程;および(iv)DNA配列を推測するために、試験されうるゲルのオートラジオグラフィー画像を作成する工程が含まれる。あるいは、蛍光標識されたプライマーまたはヌクレオチドを、反応産物を同定するために使用することができる。公知のジデオキシ配列決定法は、E.coliDNAポリメラーゼIのクレノー断片、逆転写酵素、Taq DNAポリメラーゼ、または修飾T7 DNAポリメラーゼのようなDNAポリメラーゼを利用する。
基本的なジデオキシ配列決定の代替方法として、サイクルジデオキシ配列決定は、ジデオキシ鎖ターミネーターの存在下での標的配列の比例的な非対称増幅である。1回サイクルによって、全ての可能な長さの伸長産物のファミリーを生じる。DNA鋳型からの伸長反応産物の変性に続いて、プライマーアニーリングとプライマー伸長の複数回のサイクルが、ジデオキシターミネーターの存在下で行われる。その方法は、プライマーが1つだけ使用される点でPCRとは異なり、各サイクルでの配列決定反応産物の増大は比例的であり、そして増幅産物は長さが異質であり、そして次の反応のための鋳型とはならない。サイクルジデオキシ配列決定は、自動DNA配列決定装置を使用している実験室に、そして他の大量の配列決定を行っている実験室に利点を提供する技術である。技術の特異性および生じるシグナル量の増大により、クローニングを行うことなくゲノムDNAを直接配列決定することが可能である。サイクル配列決定プロトコールは、ゲノム鋳型、クローン化された鋳型、およびPCR増幅された鋳型を含む一本鎖および二本鎖の鋳型に適応する。
高い熱安定性を有するDNAポリメラーゼ、特にTaqΔ288は、サイクル配列決定でいくつかの利点を示す。これらは、ゲノム標的へのプライマーの特異的ハイブリダイゼーションに必要なストリンジェントなアニーリング温度に耐え、さらには各サイクルで起こる高温変性の複数のサイクルに耐える。高温、すなわち70〜75℃で伸長反応を行うことは、二次構造の不安定化により、二次構造を含むDNAでの配列決定結果に明らかな改善を生じる。しかし、このような温度は、全ての二次構造を排除しない。
以下の実施例、参考文献、配列表、表および図面は本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の概念から逸脱することなく、示された手順に変更がなされ得ることが理解される。
実施例1
欠失変異体TaqΔ288の構築および生成
配列番号:6のTaqWTをコードするDNA配列で出発して、配列MRGS−6×His−IEGRをコードするDNA配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー、および配列番号:5のアミノ酸配列をコードするDNAであるTaqWTのC末端をコードするDNA配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを、PCRを使用して作製する。構築物を、pQE80L発現ベクター中に挿入する。
実施例2
細菌溶解物中でのWT TaqポリメラーゼおよびTaqポリメラーゼのN末端欠失変異体の活性
発現ベクターpQE80L(Qiagenのカタログ番号32923)を使用して、TaqWT、TaqΔ279、TaqΔ288、およびTaqΔ289のリーディングフレームを、標準的な手順(Sambrook, Fritsch & Maniatis、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第3版、CSHL Press、2001年;Qiagen仕様説明書「QIAexpressionist(登録商標)」、第5版、2003年6月)に従ってE.coli XL-1 Blue株中にクローン化する。形質転換コロニーを使用して、dYT培地(H2O 1L当たり、16gのBacto Trypton、10gのBacto East Extract、5gのNaCl;25μMのアンピシリン)に播種し、そして一晩培養したものを、連続振とう(振とうインキュベーター、1分間に150回転)下で37℃で、マイクロウエルプレート(Falcon、番号353227号)で増殖させる。100μlの一晩培養物を、100μlの新しい培地と混合し、そして1時間インキュベートする。IPTGを添加して500μMの最終濃度とし、そして培養物をさらに4時間インキュベートする。続いて、培養物を10%B-PER(登録商標)溶液(例えば、B-PER Protein Extraction Reagents、Pierce)と混合し、そして60℃で20分間混合物をインキュベートすることによって、細菌を溶解させる。マイクロウエルプレートを、1分間に3,300回転(rpm)で遠心分離して、溶解物を澄明にする。各溶解物の内、最初の40μlのアリコートを、ピペットでEppendorf PCRプレート(各々0.2ml容量の96腔)に入れる。プレートを、Eppendorf「Mastercycler gradient」サーモサイクラーで97℃で35分間インキュベートする。各溶解物の内、第2の40μlのアリコートを、ポジティブコントロールとして室温で維持する。
続いて、30〜40μlの各溶解物(加熱した溶解物とコントロール)を、別のマイクロウエルプレート(Costar、番号3903号、96腔)に移し、そしてPCRマスターミックスと混合して100μlの最終容量とする。PCRマスターミックスは、10μlの10×Taq緩衝液、各々0.15mMのdATP、dCTPおよびdGTPを含み、さらに、LightCycler Red 640−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル−標識dUTPを含有している0.2mMのdNTP(等モル)、0.5mM MgCl2(10×Taq緩衝液に含まれるMgCl2に加えて)、および配列番号:8の50pMのフルオレセイン標識鋳型(すなわち、1.6μg/μlの鋳型を含む0.5μlの溶液)を含む。マイクロウエルプレートを、鋳型を伸長させるために、72℃で60分間インキュベートする。
続いて、プレートを、4℃で10分間冷却する。FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を、蛍光光度計(Tecan)を使用して定量的に測定する。励起波長は、485nmである。発光の測定を635nmの波長で行う。バックグランドシグナルを引いた後の放出値は、残りのDNAポリメラーゼ活性の関数である。各実験について、加熱したサンプルの測定値を、非加熱のコントロールサンプルの測定値で割り算し、結果に100を掛けることによって、相対活性値を計算する。表1に、4つの実験で測定した相対活性値をまとめる。
Figure 0003929061
実施例3
DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの発現および精製
2Lのフラスコ中に800mlアリコートに分割した全容量4LのdYT培地で、TaqΔ288、TaqΔ279(Kentaq)、Stoffel断片(TaqΔ290)、およびTaqWTをコードするリーディングフレームを挿入したpQE80L発現ベクター(Qiagenのカタログ番号32923)で形質転換したE.coli XL-1 Blue株を接種する。細胞を振とう培養で37℃で増殖させる(振とうインキュベーター、1分間に250回転)。約0.8(600nmで測定した)の光学濃度の時点で、IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を添加して、最終濃度を500μMとする。細胞を、光学濃度が2と3の間に達するまで、さらに増殖させる。その後、遠心分離によって細胞を沈殿させ、そしてペレットを、室温で、B50緩衝液(25mM TrisHCl、pH8.5、0.1mM EDTA、5%グリセロール、1mM DTT(ジチオスレイトール)、50mM NaCl)中に再懸濁させる。
精製プロトコール1
細胞を、1,000バールで2回、French Pressを使用して溶解させる。NaClを1.5Mまで添加して、DNA由来のポリメラーゼを溶解させる。続いて、混合物を、水浴上で75℃で15分間加熱した。続いて、混合物をさらに15分間、加熱せずに水浴中に放置する。沈殿を、遠心分離によって上清から分離する。上清を、B100緩衝液(25mM Tris-HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、5%グリセロール、1mM DTT、100mM NaCl)に対して透析する。続いて、クロマトグラフィー段階を行う。第一段階では、ヘパリンセファロースカラムならびにB100およびB600(25mM Tris-HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、5%グリセロール、1mM DTT、600mM NaCl)での勾配溶出の手段による、TaqΔ288ポリペプチドの溶出を使用する。B50に対するTaqΔ288含有画分の透析に続いて、酵素を、Qセファロースカラムならびに溶出には、B50およびB250(25mM Tris-HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、5%グリセロール、1mM DTT、250mM NaCl)の勾配を使用してさらに精製する。最後に、溶出されたTaqΔ288を含む画分を、保存緩衝液(50%[v/v]グリセロール、100mM KCl、20mM Tris-HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.25% Thesit)に対して透析する。
精製プロトコール2
精製にHis−タグを使用すると、精製が容易である。5gの沈降細胞を、25mlの溶解緩衝液(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、0.1mM PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)、1mM DTT、pH8.0)中に再懸濁させ、そして超音波を使用して溶解させる。DNase I(Roch Diagnostics GmbH, Mannheim)を20mg/mlの最終濃度となるように、そしてMgCl2を4mMの最終濃度となるように添加する。混合物を、25℃で30分間インキュベートする。72℃で30分間の加熱インキュベーションに続いて、沈殿物を、遠心分離(22,000×g)によって沈殿させる。澄明な上清を、10mlのNi-NTA Superflow column(Qiagen)に装填する。カラムを、2倍容量の緩衝液A(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)で洗浄する。緩衝液Aで出発して緩衝液B(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH8.0)で終わる直線的な勾配の100ml容量で、カラムを溶出する。Qセファロースを用いた陰イオン交換クロマトグラフィーによって、His-タグ付きTaqΔ288ポリペプチドをさらに精製する。最後に、精製したHisタグ付きTaqΔ288ポリペプチドを含む画分を、保存緩衝液に対して透析する。
Hisタグを除去するために、Ni−NTA精製His−タグ付きTaqΔ288ポリペプチドを、Xa反応緩衝液(20mM Tris-HCl、pH6.5、50mM NaCl、1mM CaCl2)に対して透析する。第Xa因子プロテアーゼ(TaqΔ288ポリペプチド1mgあたり1U)を、10×濃縮反応緩衝液の総反応容量の1/10と一緒に添加する。混合物を、4℃で3〜6日間、インキュベートする。続いて、1M TrisHCl、pH8.5(約1/100容量)を添加して、pHを、8.0に上昇させる。さらに、平衡化Ni-NTAスーパーフロー材料を添加し、そして混合物を、連続攪拌(回転)しながら室温で、30分間インキュベートする。上清を、未切断His−タグ付きTaqΔ288ポリペプチドを含むNi−NTAスーパーフロー材料から分離し、そして72℃で30分間熱不活化させる。次の工程は、Qセファロースを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、続いて保存緩衝液に対する透析である。
実施例4
TaqΔ288の活性
最初に65℃でM13mp9ssDNAにM13プライマーをハイブリダイズさせ、その後、放射標識されたα32dCTPを取込ませる標準的な手順を使用して、DNAポリメラーゼ活性を測定する。液体シンチレーションカウンティングによって、取込みを測定する。活性を、参照としたTaqWT調製物のマスターロットと比較した。表2に、結果をまとめる。
Figure 0003929061
TaqΔ288ポリペプチドでのHisタグの有無に関しては、DNAポリメラーゼ活性の差は検出されていない。
実施例5
TaqΔ288の分子特徴付け
Hisタグを有さないTaqΔ288ポリペプチドを調製している。N末端の配列決定によって、アミノ酸配列ESPKALEEAPWPPPEが明らかになっている。TaqΔ288ポリペプチドの分子量を、MALDI TOFにより62.5kDaと決定している。
実施例6
TaqΔ288のシトラコニル化
3mlの反応緩衝液(50mM HEPES、300mM KCl、1mM EDTA、pH8.5)中の3mgの精製したHisタグ付きTaqΔ288ポリペプチドを、室温で1時間、2μlの無水シトラコン酸と反応させる。続いて混合物を、保存緩衝液(63%[w/v]グリセロール、100mM KCl、20mM Tris-HCl、pH8.5、0.1mM EDTA、0.5% Tween 20、1mM DTT)に対して透析する。
実施例7
シトラコニル化Taq-Δ-288-Dの評価
「LightCycler h-G6PDHハウスキーピング遺伝子セット」または「LightCycler-Parvovirus B19定量化キット」由来の検出混合物および「LightCycler-FastStart DNAマスターハイブリダイゼーションプローブ」由来の反応混合物を用いて、LightCyclerTM装置を使用した形式で、種々のTaq誘導体の評価を実施した。全てのキットはRoche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手可能である。
非修飾Taq-Δ-288-Dは、熱安定性および感受性に関して予測した作用を示した。シトラコニル化Taq-Δ-288-Dは、LightCyclerTM装置を使用した形式で、予めの加熱再活性化なしでは活性を示さなかった。加熱再活性化の後、以下の結果を得ることができた:
−活性を得るためには2倍過剰で十分である;標準的な再活性化(10分;95℃)後、未処理コントロール、すなわち非シトラコニル化Taq-Δ-288-Dに匹敵する最大蛍光強度の約1/3に達する。
−再活性化後に得られた蛍光強度は、使用した酵素の量に比例する。
−再活性化時間の増加は、最大で得られる蛍光強度の増加を導く、すなわち、再活性化の程度は再活性化の時間範囲に条件付で依存する。
シトラコニル化Taq-Δ-288-Dの性能をまた、複数ポリメラーゼ連鎖反応アッセイで研究した。
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US 5,618,676
US 5,677,152
US 5,773,258
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TaqΔ288(1)、TaqΔ279(2)、TaqΔ289(3)およびTaqWT(4)の相対活性を決定する4つの実験の比較。同じ実験に対応するバーは、共通の表示パターンで示す。バーは、表1に示す数値を表す。

Claims (24)

  1. アミノ酸配列が配列番号:2のアミノ酸配列であることを特徴とするDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド。
  2. アミノ酸配列がさらにN-末端メチオニン残基を有することを特徴とする請求項1記載のポリペプチド。
  3. 請求項1または2記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  4. 配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列であることを特徴とする請求項3記載のポリヌクレオチド。
  5. 請求項3または4記載のポリヌクレオチドを含有する組換えDNAベクター。
  6. ポリペプチドが、
    (i)末端ヒスチジンタグ、
    (ii)該ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を提供するアミノ酸配列、および
    (iii)請求項1記載のポリペプチド
    からなる融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項5記載の組換えDNAベクター。
  7. ポリヌクレオチドが配列番号:5のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項6記載の組換えDNAベクター。
  8. (a)請求項5記載の組換えDNAベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程、
    (b)該宿主細胞を培養し、該宿主細胞においてDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを発現させる工程、
    (c)工程(b)で発現させたDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程
    を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するための方法。
  9. (a)請求項6または7記載の組換えDNAベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程、
    (b)該宿主細胞を培養し、
    (i)末端ヒスチジンタグ、
    (ii)該ヒスチジンタグに隣接する第X因子プロテアーゼ切断部位を提供するアミノ酸配列、および
    (iii)請求項1記載のポリペプチド
    からなる融合ポリペプチドを該宿主細胞において発現させる工程、
    (c)工程(b)で発現させた融合ポリペプチドを精製する工程、
    (d)第X因子タンパク質分解活性を有するプロテアーゼの存在下で該融合ポリペプチドをインキュベートして融合タンパク質を切断し、それにより第X因子プロテアーゼ切断部位およびヒスチジンタグからDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを分離する工程、ならびに
    (e)工程(d)のDNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを精製する工程
    を含む、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドを生成するための方法。
  10. 工程(c)において、融合ポリペプチドが、ヒスチジンタグを結合し得る粒状アフィニティーマトリクスを使用して精製されることを特徴とする請求項9記載の方法。
  11. 工程(d)において、融合ポリペプチドのヒスチジンタグが粒状アフィニティーマトリクスに結合されることを特徴とする請求項9または10記載の方法。
  12. 粒状アフィニティーマトリクスが金属キレート樹脂でコーティングされたクロマトグラフィー材料であり、金属イオンが該コーティングされたクロマトグラフィー材料に固定されることを特徴とする請求項10または11記載の方法。
  13. クロマトグラフィー材料がニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)でコーティングされることを特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 請求項5〜7いずれか記載の組換えDNAベクターで形質転換された組換え宿主細胞。
  15. 1つ以上の非イオン性ポリマー界面活性剤を含有する緩衝液中に請求項1または2記載のポリペプチドを含有する安定化された調製物。
  16. ポリペプチドに共有結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に該ポリペプチドが共有結合されていることを特徴とする請求項15記載の安定化された調製物。
  17. 化合物が
    (a)無水シトラコン酸、
    (b)無水cis-アコニット酸、
    (c)無水2,3-ジメチルマレイン酸、
    (d)無水エキソ-cis-3,6-エンドオキソ-Δ4-テトラヒドロフタル酸、および
    (e)無水3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸
    からなる群より選択されることを特徴とする請求項16記載の安定化された調製物。
  18. ポリペプチドを結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体によりペプチドが結合されていることを特徴とする請求項15記載の安定化された調製物。
  19. プライマー伸長生成物を生成するための、請求項1または2記載のポリペプチド、ポリペプチドに共有結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に共有結合されている請求項1または2記載のポリペプチド、ポリペプチドを結合する場合に該ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体により結合されている請求項1または2記載のポリペプチド、あるいは請求項15〜18いずれか記載の安定化された調製物の使用。
  20. 核酸鋳型を配列決定するための請求項19記載の使用。
  21. 標的核酸を増幅するための請求項19記載の使用。
  22. 請求項15〜18いずれか記載の安定化された調製物を含有する、プライマー伸長生成物を生成するためのキット。
  23. (a)標的核酸に実質的に相補的なプライマーおよび
    (i)請求項1または2記載のポリペプチド、
    (ii)ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る化合物に共有結合されている請求項1または2記載のポリペプチド、および
    (iii)ポリペプチドのDNAポリメラーゼ活性を可逆的にブロックし得る抗体により結合されている請求項1または2記載のポリペプチド
    からなる群より選択されるポリペプチドを含有する増幅反応混合物と試料を接触させる工程、
    (b)熱処理によりブロックされたDNAポリメラーゼ活性を任意に開放する工程、
    (c)工程(a)で得られた混合物中で該プライマーを該標的核酸にアニーリングする工程、
    (d)工程(b)の後、該混合物をインキュベートすることにより標的核酸を増幅して、プライマー伸長生成物の形成を可能にする工程
    を含む、試料中で標的核酸を増幅するための方法。
  24. 少なくとも1つの連鎖終結試薬および1つ以上のヌクレオチド三リン酸の存在下で請求項1または2記載のポリペプチドを用いて配列決定すべき核酸鋳型から連鎖終結断片を生成し、該断片のサイズから該核酸の配列を決定する工程を含む、核酸を配列決定する方法。
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