JP3928353B2 - 二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法およびそれを使用した紙 - Google Patents

二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法およびそれを使用した紙 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法に関し、詳しくは炭酸化反応を利用して製造するものであって、特に、不透明度に優れる二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法および、該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料もしくは塗工用顔料として用いた不透明度に優れた紙および塗工紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護施策や省資源(節約)あるいは経済上の理由から、同一重量であって、使用面積としてより多く利用できる所謂軽量紙の開発が望まれている。特に、多量に使用されるカタログ、チラシ、ダイレクトメールあるいは新聞用紙などの分野でその傾向が顕著である。
【0003】
しかしながら、軽量化に付随して多くの問題が発生している。なかでも、軽量紙が抱える品質上の大きな問題点の一つに不透明度の低下がある。 軽量紙の不透明度を上げるには、主原料である繊維パルプとして、不透明度を高める効果のあるGP(機械パルプ)やDIP(古紙脱墨パルプ)を使用する方法や、内添填料として不透明度に優れる填料を使用するなどの方法が考えられる。
【0004】
機械パルプやDIPを用いる方法は、上質紙には適用することができないことから適用範囲が限定される。また、中質紙や再生紙においても不透明度を満足できるまで高率配合すると白色度の低下や夾雑物の増加、あるいは、印刷品質が低下するなどの課題がある。
【0005】
内添填料は、一般に、紙やシート等において不透明度、白色度、平滑性および地合の改良等を目的として、パルプ繊維を主体とする紙料中に添加して抄紙が行われ、紙に仕上げられる。その場合の填料としては、例えばタルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が使用されている。その他、特殊な用途に、使用量は少ないが二酸化チタン、焼成クレー、尿素樹脂系合成填料、あるいは石膏等が使用されている。また、ホワイトカーボン(非晶質合成シリカ)が新聞用紙の填料として広く使用されている。これらの填料は用途や目的に応じて単独あるいは混合して使用されている。 不透明度を改良するには、填料を多く添加する方法が考えられるが、特に軽量紙の場合では、紙の強度を低下させるといった難点があり、その結果、抄造時の操業性が低下したり、また、印刷時には、ブランケットへ紙粉や填料成分が堆積したり、断紙などの印刷走行性が低下するといった問題点が発生することがあるため、あまり多く添加することができない。
【0006】
紙の不透明度は、原料の有する光の吸収率や散乱率、屈折率に左右され、これらの中でも特に空気と填料、パルプ繊維相互間の光の屈折率に大きく影響を受けるものである。
先に例示した填料の中でも二酸化チタンは光に対する屈折率が最も高い。さらに、一般に、二酸化チタンの粒子径は、一次粒子径が0.1〜0.4μmであるが、填料の粒子径が可視光線の波長の1/2前後、即ち約0.3μmのときに光の散乱が最大となり、不透明度が最も高くなる。このように二酸化チタンは、屈折率や粒子径が紙の不透明度向上に適していることから、不透明度改良効果がひじょうに優れた材料である。
【0007】
しかしながら、二酸化チタンは、一般に多く使用されている他の填料、例えば軽質炭酸カルシウムやタルク、あるいはカオリンなどと比較して非常に高価である。また、平均粒子径が他の填料より小さく、抄紙用填料として使用した場合は、紙への歩留(ワイヤーパートでの歩留)が他の填料に比べて著しく低いため、原料調成系内の白水中に填料が増加することによる操業の不安定化や白水回収系の負荷が増加するといった問題が付随し、一般的には殆ど使用されていないのが実状である。
【0008】
近年、紙の保存性および耐久性への要求が高まるにつれ、中性〜弱アルカリのpH域で抄紙する方法、所謂中性抄紙が注目されている。中性抄紙では、比較的安価で、白色度が高く、かつプラスチックワイヤーに対する耐摩耗性に優れる軽質炭酸カルシウムが好ましく使用されている。しかし、軽質炭酸カルシウムは、二酸化チタンなどに比べて不透明度改良効果が少なく、満足なレベルとするためには、高率添加しなければならず、品質面では表面強度や紙力の低下、また、操業面では、紙切れの増加や白水回収系の負荷が増加するなどの問題が懸念される。
【0009】
上記のように、高価な二酸化チタンを単独で填料用顔料として使用するには、操業上、さらには経済的な負担が大き過ぎて実用的といえない。一方、二酸化チタンは、最も光散乱率の高い(不透明性に優れる)高白色度を有する材料であり、二酸化チタンを効率良く、かつ有効に利用することができれば、その適用範囲も極めて増大すると考えられる。そこで、二酸化チタンを他の填料と併用して、二酸化チタンの問題点を解決する方法が提案されている。
【0010】
例えば、特開平2−51419号公報では、二酸化チタン、あるいは酸化亜鉛等を核として表面より炭酸カルシウムが成長した高隠蔽性炭酸カルシウムが提案されている。具体的には、二酸化チタン、あるいは酸化亜鉛等に可溶性炭酸カルシウム塩である塩化カルシウムまたは硫酸カルシウムを加え、アンモニアおよび炭酸ガスを導入して製造する方法である。
しかしながら、この提案の方法によると、高隠蔽性炭酸カルシウムは屈折率の高い二酸化チタンが核となり炭酸カルシウムによって被覆されるために、二酸化チタンが本来有する高隠蔽性効果(高不透明性)が十分に得られないといった難点がある。
【0011】
また、特開平6−93204号公報には、炭酸カルシウム粒子表面に結合剤としてポリアクリル酸のアルカリ金属塩を処理した後、予めアクリル酸モノマーを吸着せしめた酸化チタンで粉末同士の混合攪拌を行い、二酸化チタンと炭酸カルシウム複合体を製造する方法が提案されている。この提案の方法では特定の合成接着剤を必要とするために、作業が複雑化し、かつ原価が高くなるといった難点が付随する。 さらに、特開平9−217292公報には、紡錘状軽質炭酸カルシウムと柱状軽質炭酸カルシウム混合物に二酸化チタンを混ぜて填料として用いる方法、特表2000−506205公報には、30〜100nmの軽質炭酸カルシウムを二酸化チタンに混ぜて、二酸化チタンの表面にファンデルワールス力で付着させたものを填料として用いる方法が提案されている。
【0012】
これらの方法では、二酸化チタンと軽質炭酸カルシウムとの結合が弱く、シェアがかかると二酸化チタンと軽質炭酸カルシウムが分離するため、二酸化チタンの持つ欠点を十分に解決することができない。上記のように、用紙の軽量化を行う場合には、品質や操業性を落として生産しているのが現状である。
【0013】
また、塗工紙においては、上記の対策のほかに、塗工液からの工夫も行われている。例えば塗工用顔料として不透明度に優れている軽質炭酸カルシウムや二酸化チタン、焼成クレー、プラスチックピグメントなどを用いる方法がある。これらの方法で不透明度を改良することができるが、塗工紙の白紙光沢や印刷光沢などの品質によって配合量に制約を受けたり、塗工液の流動性や高濃度にし難く、さらに表面強度が低下するなどの欠点があり、不透明度を満足できるところまで添加量を増やすことができない問題点がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、二酸化チタンの品質特徴を維持したまま、操業面での問題点を解決できる填料および塗工用顔料について鋭意検討した。その結果、炭酸化反応を利用して得た二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体が、二酸化チタンの操業面での問題点が解決でき、かつ不透明度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭酸化反応を利用して炭酸カルシウム粒子の表層に二酸化チタン粒子を有することを特徴とする二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法および該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料および塗工用顔料として使用したことを特徴とする高不透明度用紙に関するものである。
請求項1に係る二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法は水酸化カルシウム水性懸濁液に、二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応により炭酸カルシウムを生成させ炭酸カルシウム水性懸濁液とし、炭酸化率が80%を越え95%以下となった後に二酸化チタン水性懸濁液を加えて炭酸化反応を続行させる炭酸カルシウム粒子の表層に二酸化チタン粒子を有する二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法である。
請求項2に係る二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法は水酸化カルシウム水性懸濁液、炭酸カルシウム水性懸濁液および二酸化チタン水性懸濁液の炭酸カルシウム水性懸濁液/水酸化カルシウム水性懸濁液の混合比率が炭酸化率として80%を越え95%以下に相当する比率となるような状態にある混合懸濁液中に二酸化炭素含有ガスを吹き込む炭酸カルシウム粒子の表層に二酸化チタン粒子を有する二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法である。
請求項3に係る高不透明度用紙は請求項1または2に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法によって得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として使用することにより得られる。
請求項4に係る高不透明度用紙は請求項3の高不透明度用紙を原紙としてその両面に有機顔料と接着剤を主成分とする表面処理剤を塗工、乾燥してなることを特徴とする高不透明度用紙である。
請求項5に係る二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体スラリーの製造方法は、請求項1または2項に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法において、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を更にフィルタープレスにより脱水濃縮してケーキを得、少なくとも分散剤を添加し撹拌機により分散してスラリーとした後、湿式解砕処理することを特徴とする。
請求項6に係る塗工紙は請求項1または2項に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法によって得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を塗工顔料として使用することにより得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、不透明度を高める方法として、二酸化チタンの特徴を生かした填料および塗工用顔料の開発について検討を重ねた。その結果、炭酸化反応によって得られた炭酸カルシウムの表層に二酸化チタン粒子を有することを特徴とする二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体が不透明度に優れることを見出した。かつ該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料あるいは/または塗工用顔料として用いることにより、不透明度に優れた原紙、印刷用紙、上質紙、塗工紙等を安定して生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体は、炭酸カルシウム粒子の表層に炭酸化反応を利用して二酸化チタン粒子を固着させることが特徴である。すなわち、該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体は、アクリル系やスチレン系、スチレン−ブタジエン系等の合成樹脂やゴム、澱粉等の天然樹脂等の接着剤を用いずに、水酸化カルシウムを炭酸化する過程で二酸化チタンを添加して複合体化させたものである。
【0018】
その製造方法は、特に限定されるものでないが、水酸化カルシウム水性懸濁液に、二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを生成させる工程において、炭酸化反応の途中で二酸化チタン水性懸濁液を加えて炭酸化反応を続行させて、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得る方法(以下、A法と称す)、または炭酸カルシウム水性懸濁液に、水酸化カルシウム水性懸濁液および、二酸化チタン水性懸濁液を添加した後、該混合懸濁液に二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応を行って得る方法(以下、B法と称す)などが例示される。
【0019】
二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体における二酸化チタンの比率は、複合体全固形分に対し好ましくは1〜40重量%に調節される、因みに複合体全固形分に対する二酸化チタンの比率が1重量%未満の場合には、本発明の所望する不透明度改良効果が得られ難く、また、本発明者らの実験によると40重量%を超えた場合には、これ以上に二酸化チタンを添加しても不透明度の改良効果が飽和に達しており、経済的にも好ましくない。さらに二酸化チタンが該複合体から分離し易くなり、抄紙工程において歩留が低下するなどの操業上の問題が懸念される。 実験の結果から内添填料や塗工用顔料として不透明度の効果とコスト面を考慮すると、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体に占める二酸化チタンの比率は、2〜15重量%に調節されることがより好ましい。
【0020】
以下に、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法の詳細について述べる。
先ず、A法による製造方法では、固形分濃度5〜20重量%、温度10〜70℃の水酸化カルシウム水性懸濁液を攪拌しながら、二酸化炭素含有ガスを吹き込んで軽質炭酸カルシウムを生成させ、炭酸化反応の途中で二酸化チタン水性懸濁液を添加し、反応系の水性懸濁液のpH値が7.5(以下)となるまで二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応を完結させて、炭酸カルシウムの表層に二酸化チタンを定着させた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得るものである。
【0021】
なお、二酸化チタン水性懸濁液を添加する時期は、80%を越え95%以下のときがよい。因みに炭酸化率が80%以下で二酸化チタン水性懸濁液を添加すると、生成する炭酸カルシウムによる二酸化チタン粒子を被覆する割合が大きくなり、その結果、二酸化チタン粒子が該複合体粒子の表層に存在する割合が低下し、二酸化チタンのもつ本来の優れた光学適性が発揮されずに不透明度改良効果が得られ難くなる。他方、炭酸化反応が殆ど完結している状態(未反応の水酸化カルシウムが殆どない状態)、即ち炭酸化率が95%を越える状態で二酸化チタン水性懸濁液を添加すると、二酸化チタンの該複合体への定着率が低下し、本発明の所望する操業安定化などの特性が得られ難く、いずれにしても不透明度に優れる複合体を得ることができないといった難点がある。なお、ここでいう炭酸化率とは以下の式で表される。
炭酸化率(%)=(a/b)×100
a: 炭酸化された水酸化カルシウムの重量
b: 炭酸化反応前の水酸化カルシウムの重量
【0022】
他方、B法による製造方法では、炭酸カルシウム粒子を母体として水酸化カルシウムと二酸化チタンを添加し、混合した懸濁液に二酸化炭素含有ガスを吹き込み、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得るものである。炭酸カルシウム水性懸濁液/水酸化カルシウム水性懸濁液の混合比率が炭酸化率として80%を越え95%以下に相当する比率となるような状態になるように酸化カルシウム水性懸濁液を添加し、さらに該複合体の固形分重量あたり二酸化チタンの固形分が1〜40%となるように二酸化チタン水性懸濁液を添加することが望ましい。すなわち、具体的に例示すると、濃度5〜20重量%の炭酸カルシウム水性懸濁液(固形分100重量部)に濃度5〜20重量%の水酸化カルシウム水性懸濁液を固形分で4〜18重量部および濃度30〜65重量%の二酸化チタン水性懸濁液を固形分で65重量部の比率で添加・混合することが好ましい。
【0023】
因みに水酸化カルシウムの添加量が固形分で4重量部未満となると二酸化チタンの定着率が低下し、本発明の所望とする特性が得られ難くなる。 他方、水酸化カルシウム添加量が固形分で75重量部を超えると二酸化チタン粒子が該複合体粒子の表層に存在する割合が低下し、二酸化チタンのもつ優れた光学適性が発揮されずに不透明度改良効果が得られ難くなるおそれがある。 また、二酸化チタンの添加量が固形分で1重量部未満になると、本発明の所望する不透明度改良効果が得られ難く、130重量部を超えた場合には二酸化チタンの不透明度改良効果が飽和に達しており、経済的にも好ましくない。 さらに、二酸化チタンが該複合体から分離し易くなり、操業上の問題点の発生も懸念される。
【0024】
B法では、炭酸カルシウム懸濁液に添加される水酸化カルシウム懸濁液と二酸化チタン懸濁液の固形分比率も二酸化チタンの定着率を高める上で重要な因子である。この固形分比率は、該複合体の品質(高不透明性効果)や二酸化チタンの添加量、二酸化チタンの平均粒子径(一次粒子径)等も考慮して決められるものであるが、より好ましくは0.5/1〜5/1の範囲で調節して添加される。すなわちこの範囲に制御すると二酸化チタンの固形分比率が大きい場合でも、二酸化チタンの定着が十分に行われる。また、他方二酸化チタンの固形分比率が小さい場合でも、炭酸カルシウムによる二酸化チタンの被覆があまり大きくならず良好な不透明度改良効果が得られる。
【0025】
かくして得られた炭酸カルシウム/水酸化カルシウム/二酸化チタンを混合した水性懸濁液に必要により水あるいは温水を加えて温度10〜70℃、濃度が5〜20重量%となるように調節し、該懸濁液を攪拌しながら、二酸化炭素含有ガスを導入し、炭酸化反応の完結を示すpH値、すなわちpH値が7.5以下となる迄二酸化炭素含有ガスの吹き込みを行い、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得る。
【0026】
なお、B法において、使用される炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムのいずれも使用できるが、軽質炭酸カルシウムの使用が好ましい。また、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンの粒子径は特に限定されるものではないが、填料や顔料としての使用を考慮すると、その品質特性上、炭酸カルシウムは平均粒子径が2〜30μm、かつ一次粒子径0.3〜15μm、より好ましくは平均粒子径が3〜10μm、かつ一次粒子径1〜5μmの炭酸カルシウムを使用するのが望ましい。
【0027】
また、本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造に用いられる二酸化チタンとしては、一次粒子径が0.1〜0.4μm、好ましくは0.2〜0.3μmの二酸化チタンが使用されるものである。因みに、二酸化チタンの粒子経が0.1μm未満、あるいは0.4μmを越えると、光学特性等が劣るため好ましくない。また、本発明で用いる二酸化チタンの結晶形態は、もちろんルチル型あるいはアナターゼ型、ブルカイト型のいずれを用いてもよく、特にルチル型、アナターゼ型が好ましく用いられる。
【0028】
ここで、二酸化チタン水性懸濁液の添加時期に関してA法とB法を比較してみると、A法の場合は二酸化チタン水性懸濁液の添加時期が炭酸化率によって制約されるが、炭酸化率を連続的に判定することが難しく、二酸化チタン水性懸濁液の添加時期を一定にし難い欠点がある。これに対して、B法では、すでに多量の(軽質)炭酸カルシウムが存在する状態で、水酸化カルシウムと二酸化チタン水性懸濁液を添加して反応を開始する方法をとるものであって、炭酸化率に関係なく反応を行うことができる。このことから、A法に比較してB法は、本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得るときの操作が極めて容易であり、所望の二酸化チタン−炭酸化カルシウム複合体が安定して得られ易いといった利点がある。
【0029】
一方、炭酸化反応に際し、導入する二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは、二酸化炭素(ガス)の混合容量が10〜35容量%である二酸化炭素含有ガスを使用し、かつ二酸化炭素(ガス)として、水酸化カルシウム1kg当り、0.5〜5リットル/分の割合となるように水性懸濁液中に吹き込んで炭酸化反応を促進すると、反応時間、および得られる二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の品質等の面で、極めて効率良く、かつ安定した炭酸化反応および複合化が促進される。因みに、二酸化炭素導入量が0.5リットル/分未満では生産性が低く、他方5リットル/分を超えるような量も採用することはできるものの、そのように多量の二酸化炭素(ガス)を導入することは動力負荷が極めて大きくなり、それに見合う効果が期待できない。
【0030】
ところで、本発明に係る二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体における二酸化チタン粒子が炭酸カルシウム表層に定着していることについて付言する。
即ち、本発明者らはこの定着という表現について以下の如く考察して定義したものである。
即ち、本発明の方法で得られた複合体の乾燥品を走査型電子顕微鏡で確認した結果、二酸化チタン粒子が単独で存在せずに、複合体として炭酸カルシウムの粒子と一体となった状態で観察されること、およびマイクロトラックHRA粒度分析計(日機装社)を用いて二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の粒度分布を測定した結果により判断したものである。この粒度分布について以下に詳述する。
二酸化チタン粒子の粒度分布のピーク(山)と炭酸カルシウムの粒度分布のピーク(山)はその平均粒子径(二次粒子径)の違いから、その粒度分布において、ピーク(山)はそれぞれ異なる粒子径位置に存在する。
そこで、単に、二酸化チタン水性懸濁液と炭酸カルシウム水性懸濁液を混合したものの粒度分布を観察した結果、両者、つまり2つのピーク(山)が観察された。一方、本発明の方法で得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の粒度分布を観察すると、A法で得られる複合体では、通常の軽質炭酸カルシウムのみの場合とほぼ同等の粒度分布(ピーク1ケ)が得られ、またB法の場合にも、予め反応槽内に添加している母体となる炭酸カルシウムに見られる粒度分布よりやや大きくなった粒度分布(ピーク1ケ)が観察された。
【0031】
また、本発明の方法で得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の水性懸濁液(濃度15重量%,容量500ml)をミキサー(商品名:T.K.ホモディスパー……クローバ羽根/特殊機化工業(株))で5000rpm、10分間攪拌した後に、該複合体の粒度分布を測定した結果、上記強攪拌前と同等のピーク山が1ケの粒度分布が観察された。
上記観察(実験)結果より、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体において二酸化チタンは単に炭酸カルシウムの表面に存在するものではなく、少なくともその結合状態は定かではないが、炭酸カルシウムと二酸化チタンはかなり強力に接合し、粒子径の大きい炭酸カルシウムの表層に二酸化チタン粒子が取りついた形態となっていることは明らかである。本発明ではこのような状態を定着という言葉で表現をした。
また、本発明の方法で得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として紙に仕上げることで、不透明度の向上(改善)効果が認められることからも明らかである。因みに、二酸化チタンが炭酸カルシウムに定着せずに、単に混在した状態であると、抄紙時に強い脱水作用により、微粒子である二酸化チタンは抄紙ワイヤーより容易に離脱して紙中に留まることは殆どなく、不透明度の向上効果は認められないものと推定される。
【0032】
本発明で得られる二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体はそのままスラリーとして、あるいは、脱水して、乾燥製品として紙用填料や塗工用顔料として利用する他に、各種塗料やインク、プラスチック、ゴム等の製造における充填剤として使用することも可能である。
【0033】
なお、本発明の方法で得られる二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは平均粒子径(二次粒子径)が2〜40μm、一次粒子径が0.3〜15μmとなるように反応条件(水酸化カルシウム濃度、反応温度、二酸化炭素導入量など)が調節される。
【0034】
かくして得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料としてセルロース繊維物質(木材パルプ繊維)を主成分とする水性懸濁液(紙料)に添加し、該水性紙料を中性抄紙法により抄紙して、本発明の高不透明度用紙が製造されるが、その場合の該複合体のセルロース繊維物質に対する添加率は特に限定されるものではないが、一般に紙灰分として2〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲で使用される。
【0035】
本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として使用した紙が不透明度に優れ、かつ抄紙機の操業性が良い理由は必ずしも明らかではないが次のように推察している。本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体は、前述したように炭酸カルシウムの表面層に二酸化チタンを炭酸化反応で定着させているが、この方法によると二酸化チタンの有する光学特性を損なうことがなく、不透明度を向上させることができるものと考えている。また、炭酸カルシウムと複合体を形成することで、粒子径が大きくなり、かつ単に炭酸カルシウムと二酸化チタンを混合したものと異なり、攪拌や送液中に加わるシェアによって炭酸カルシウムと二酸化チタンに分離することがなく、歩留などの抄紙機操業性が改善されるものと推定される。本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合軽炭を填料として用いた紙は、炭酸カルシウムを填料とした場合よりも抄紙機での歩留も良く、かつ白水回収系などの操業性が改善できることもわかった。
【0036】
上記セルロース繊維物質としては公知のものが使用される。具体的には、木材チップを原料とするクラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプ等の化学パルプ、セミケミカルパルプ、ケミメカニカルパルプ等の半化学パルプ、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、あるいは楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられ、これらの少なくとも1種、あるいは2種以上が適宜混合されて使用される。以上の化学パルプを製造する際の漂白方法についても特に限定するものではないが、漂白工程で塩素ガスような分子状塩素を使用しないで漂白したECFパルプ、さらには二酸化塩素のような塩素系化合物をも使用しないで漂白したTCFパルプの使用が、環境保全の観点から好ましい。機械パルプや古紙脱墨パルプを本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体と組み合わせて用いた場合には、より優れた不透明度が得られることが期待できる。
【0037】
本発明において、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を内添した紙の抄造に際しては、勿論、該複合体以外の炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、ホワイトカーボン、無定形シリカ、二酸化チタン等の填料の添加も可能であり、また、通常の中性抄紙で使用される抄紙用薬品、例えば、強化ロジンサイズ剤やエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、サイズ定着剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、耐水化剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料等を必要に応じて添加することもできる。
【0038】
二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として添加した紙の製造に際して使用される抄紙機は特に限定されるものではなく、公知の抄紙機、例えば長網式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機、あるいはツインワイヤー型抄紙機等によって抄造される。そして原紙の坪量としては、特に限定されるものでないが、30〜250g/m2、好ましくは35〜100g/m2の範囲が望ましい。さらに、この紙の表面には、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール類やポリアクリルアミド類、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス類を、少なくとも1種を必要に応じて塗布することもできる。
【0039】
また、上記の方法で得られた紙の表面に、不透明度や網点再現性などの印刷品質の更なる改良を目的として有機顔料や無機顔料と接着剤を主成分とする表面処理剤を必要に応じて塗布することも可能である。ここで用いられる有機顔料は、一般にスチレン・アクリル系共重合体、ポリスチレン系重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリル系重合体などの粒子として提供されるものである。また、無機顔料としては、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、焼成クレーなどの公知の材料が例示される。接着剤としては、例えば、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール類やポリアクリルアミド類などの水溶性バインダー、また、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックスなどの重合体ラテックスバインダーが挙げられ、これらのバインダーを単独もしくは併用することが可能である。本発明においては、これらの中でも特に水溶性バインダーが、操業性などの点から好ましく用いられる。これらの中でも有機顔料は、不透明度や印刷品質を改良する効果が高く、好ましい。本発明で使用する有機顔料の構造は、特に限定されるものでなく中空、非中空のいずれのタイプでも良い。因みに、不透明度を向上させるには、有機顔料は中空構造で、粒径が大きいものが良いが、中空有機顔料はその殻の部分の厚みが薄いため、乾燥工程やカレンダー処理により粒子がつぶれやすいという欠点があり、粒子がつぶれた状態では、不透明度向上の効果が得られ難くなる。
有機顔料は、以上の高分子の水分散体として提供されており、不透明度や白色度を向上させる効果や、塗工紙の軽量化に効果がある。このため、従来からアート紙、コート紙や微塗工紙等の一般印刷用塗工紙の分野で一部使用されている。しかしながら、印刷強度が劣り、且つ、コストが高くなるため、通常使用されているカオリンや炭酸カルシウムなどの顔料に少量混ぜて使用するのが一般的である。
本発明においては、有機顔料を顔料として単独で使用し、さらに接着剤に澱粉類やポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類等の水溶性バインダーを用いた場合は不透明度や網点再現性などの改良効果と原紙の風合いを保つことが両立させやすくなるのでより好ましい。
【0040】
また、表面塗工剤としては、上記の接着剤や顔料の他に抄紙分野で通常使用される表面サイズ剤や、消泡剤、防腐剤、増粘剤、導電剤として炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸三ナトリウム、塩化ナトリウム等の塩類等が適宜併用される。
【0041】
上記のような接着剤および/または有機顔料などを含有する表面処理剤が必要に応じて塗工・乾燥されるが、その場合の塗工装置としては特に限定されるものではないが、例えばブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、2本ロールサイズプレス等が従来公知のサイズプレス装置が適宜使用される。なかでも、2ロールサイズプレスやゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレスが好ましく使用される。
【0042】
かくして得られた高不透明度用紙は、それ自体で印刷用紙として供されるものであるが、さらに、電子写真用紙や複写機用紙などのPPC用紙として用いることも可能であり、また、アート紙やコート紙、軽量コート紙、微塗工紙、キャストコート紙などの印刷塗工紙用の原紙や、新聞用紙、感熱記録紙やインクジェット用紙、ノーカーボン用紙などの情報用紙の原紙として、これら用紙の不透明度を改良する目的で用いることが可能である。
【0043】
本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体は、填料用としてだけでなく、塗工用顔料として使用することも可能である。 炭酸化反応後に得られた該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体をそのまま塗工用として使用することも可能であるが、低濃度で、かつ粒径も大きいことから、濃縮・粉砕処理を行ったものを使用することが望ましい。
すなわち、炭酸化反応後に得られた該複合軽炭スラリーをフィルタープレスで脱水濃縮して、固形分濃度が60重量%以上のケーキを調製する。次いで、該ケーキに少なくとも分散剤を添加して攪拌機で分散し、固形分濃度が58重量%以上の該該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体スラリーを調製した後、さらにサンドミル等の微細ボールをメディアとする湿式粉砕機で平均粒子径が2μm以下となるように解砕して、塗工用顔料として供するものである。
【0044】
因みに、解砕した後の平均粒子径が2μmを越えると、塗工紙の光沢や平滑性などの品質が低下するおそれがあり好ましくない。また、平均粒子径の下限については、特に限定するものではないが、例えば平均粒子径が0.5μm未満といったように小さくなると、多量の接着剤を必要とし、塗工適性への影響や、さらには不透明度や透気度、あるいは吸油度等の品質面が低下する虞れがある。このことから、平均粒子径は、一般に0.5〜2μmの範囲で適宜調節されるものである。
【0045】
塗工用顔料として使用する場合は、できるだけ高濃度のスラリーを調製することが、塗工液の濃度を高める上で重要である。そのためには、フィルタープレスでの脱水濃縮により得られる軽質炭酸カルシウムのケーキ濃度をできるだけ高くすることが望ましい。フィルタープレスによる脱水濃縮後のケーキ濃度が60重量%未満になると、得られる二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体のスラリー濃度が比較的低く、結果として塗工液の濃度が低くなり、塗工紙品質や塗工適性の低下が懸念されることから、該二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の高率配合化が難しくなる。なお、フィルタープレス後の濃度は特に上限を設けるものではないが、本発明者らの実験に基づくとケーキ濃度の上限は概略76重量%程度と推察され、これ以上の濃度になると安定したスラリーを得ることが難しくなると思われる。
【0046】
解砕処理に用いられる装置としては、一般に顔料の湿式粉砕で使用される装置のいずれを用いても良く、サンドミルやボールミル、振動ミル、ジェットミル等が例示される。解砕のメディアとなるボールとしては、特に限定されるものでないが、ガラス、セラミック、アルミナ、ジルコニア等の硬質材料で製造された球状のボールが使用され、その直径が好ましくは0.5〜3.0mm、より好ましくは0.8〜1.5mmのものが使用される。
【0047】
かくして得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体スラリーが、塗工用顔料として用いられるが、その使用方法は特に限定されるものでなく、単層塗工紙の塗工液は勿論のこと、二層以上の塗工層を設けた所謂ダブル塗工紙の下塗り塗工液、上塗り塗工液のいずれにも使用可能である。その配合量は、特に限定されるものでなく、塗工紙製品の品質に応じて適宜配合されるべきものであるが、不透明度改良効果を得る目的を考慮すると顔料成分100重量部あたり5〜100重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲で使用される。
【0048】
本発明で使用する顔料としては、本発明の二酸化チタン複合軽炭の他に、例えばカオリン、水酸化カルシウム、サチンホワイト、硫酸バリウム、重質炭酸カルシウム、従来公知の軽質炭酸カルシウム、タルク、焼成クレー、二酸化チタン等の従来より塗工紙の製造分野で使用されている顔料の一種以上が適宜使用される。
【0049】
さらに、上記塗工液の顔料と一緒に併用される接着剤としては特に限定されるものではなく、例えばカゼインや大豆蛋白等の蛋白質類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体や共重合体をカルボキシル基等の官能基含有単量体により、官能基変性したアルカリ溶解性あるいはアルカリ非溶解性の重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂系の接着剤、陽性化澱粉、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等、一般の塗工紙用として知られる従来公知公用の接着剤が、単独あるいは併用で用いられる。なお、接着剤の配合量は、特に限定されるものでなく、塗工紙の品質に応じて調節されるものであるが、塗工液中の全顔料100重量部に対し、固形分対比で3〜50重量部、通常は5〜35重量部で調節される。
【0050】
また、塗工液中には、助剤として各種耐水化剤や印刷適性向上剤、消泡剤、着色剤、滑剤や離型剤、流動変性剤、防腐剤等が必要に応じて添加することも可能である。
【0051】
上記材料をもって構成される塗工液は、一般に固形分濃度を50〜70重量%程度に調製した後、原紙上へ、通常の塗工紙製造分野で使用される公知公用の塗工装置、例えばブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、ブラシコータ、チャンプレックスコータ、バーコータ、グラビヤコータ等を用いて塗工される。
【0052】
このときの原紙としては、特に限定されるものではないが、例えば通常の上質紙、中質紙、あるいは予め微塗工した軽量コート紙等、または合成繊維を併用したような合成紙やフィルム等が適宜使用される。勿論、本発明の二酸化チタン複合軽炭を填料として使用した原紙を用いることも可能である。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。特に断わらない限り、例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0054】
〔填料の製造〕
填料1(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)A法
濃度11%の水酸化カルシウム水性懸濁液(固形分500g)を撹拌しながら、20容量%の二酸化炭素含有ガスを水酸化カルシウム1kg当り二酸化炭素ガスとして2.5リットル/分の割合で吹き込み、炭酸化を行った。 炭酸化率(炭酸化反応率)が85%になったところで、濃度45%の二酸化チタン水性懸濁液(二酸化チタン=固形分350g〔商品名:FR−44/ルチル型、平均粒子径0.9μm/一次粒子径0.25μm 古河機械金属社製〕に水と分散剤を加えて懸濁液とした)を加え、pHが7.5となるまで炭酸化反応を続行し、A法による二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、34.1%であった。
【0057】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)A法
填料1の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、炭酸化率が85%となったところで、二酸化チタン水性懸濁液を固形分で15g添加した以外は、填料1と同様にして二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、2.2%であった。
【0059】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体) B法
濃度15%の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液(平均粒子径(二次粒子径)6.9μm)500g(固形分)を撹拌しながら、濃度11%の水酸化カルシウム水性懸濁液を固形分で50gおよび濃度45%の二酸化チタン水性懸濁液(前述)50g(固形分)を添加した。次いで填料1と同様の条件で二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応を行い、懸濁液のpHが7.5となる点をもって反応を完了し、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として88.1%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、8.1%であった。
【0060】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)B法
填料の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、水酸化カルシウム水性懸濁液を25g(固形分)、二酸化チタン水性懸濁液を25g(固形分)添加した以外は、填料と同様の方法で二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として93.7%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタン固形分比率は、4.5%であった。
【0061】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)B法
填料の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、水酸化カルシウム水性懸濁液を35g(固形分)とした以外は、填料と同様の方法で二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として88.1%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、8.4%であった。
【0062】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)B法
填料の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、二酸化チタンを商品名FA−55W/アナターゼ型、平均粒子径 0.6μm/一次粒子径 0.12μm 古河機械金属社製へ変更した以外は、填料と同様の方法で二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として88.1%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、8.1%であった。
【0063】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)B法
填料の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、水酸化カルシウム水性懸濁液を40g(固形分)、二酸化チタン水性懸濁液を100g(固形分)とした以外は、填料と同様の方法で二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として90.2%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、15.3%であった。
【0064】
填料(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)B法
填料の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、軽質炭酸カルシウムの平均粒子径(二次粒子径)を2μmへ変更した以外は、填料3と同様の方法で二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。懸濁液添加時の軽質炭酸カルシウム水性懸濁液の量は炭酸化率として88.1%に相当する量であった。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、8.1%であった。
【0065】
填料(軽質炭酸カルシウム)
濃度11%の水酸化カルシウム水性懸濁液を撹拌しながら、20容量%の二酸化炭素含有ガスを水酸化カルシウム1kg当り二酸化炭素ガスとして2.5リットル/分の割合で吹き込み、水性懸濁液のpHが7.5となる時点で炭酸化反応を終了し、軽質炭酸カルシウムを得た。
【0066】
填料10(二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体)A法
填料1の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造において、炭酸化率が30%となったところで、二酸化チタン水性懸濁液を添加した以外は、填料1と同様にして二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を得た。この複合体中の二酸化チタンの固形分比率は、8.2%であった。
【0067】
実施例1〜
〔填料を内添した紙の調製〕予めフリーネス400mlC.S.F.(カナダ標準フリーネス)に叩解したLBKP(漂白広葉樹クラフトパルプ)の1%スラリー5リットルを撹拌しながら、上記の填料1〜で得た二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の水性懸濁液を填料として紙灰分が10%となるように、それぞれ添加して固形分濃度が0.5%の紙料を調製した。別途、上記0.5%の紙料調製にあたり、下記に示す薬品をそれぞれ添加して最終の紙料とした。なお、各薬品の添加率は全て対パルプ(絶乾)に対するものである。即ち、
カチオン化澱粉(商品名: エースK−100 … 王子コーンスターチ社) :0.5%
中性サイズ剤(商品名:SPK−902 … アルキルケテンダイマー/荒川化学工業社):0.1%
硫酸バンド:1.5%
歩留向上剤(商品名:KW−504 … アニオン性ポリアクリルアマイド系樹脂/荒川化学工業社:0.03%
上記のようにして調製した紙料を実験用角型手抄シートマシン(熊谷理機社)を使用して、風乾坪量60g/m2、紙灰分10%のシートを調製した。次いで、このシートを調湿(風乾:20℃、65%RH環境下で24時間)した後、実験用キャレンダー(由利ロール社)を使用して線圧10kg/cmの条件で2回通紙処理を行い、手抄き試験紙を得た。 次いで、表面処理剤として酸化変性デンプン(商品名:エースA/王子コーンスターチ社製)を上記試験紙の両面に片面あたり0.75g/m2となるように塗工、乾燥して試験紙を得た。このようにして得られた試験紙の品質測定を行い、得られた結果を表1にまとめた。
【0068】
比較例1
実施例1の手抄き試験紙の作製において、填料1の代りに填料の軽質炭酸カルシウムを用いた以外は、同様の方法で試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0069】
比較例2
実施例1の手抄き試験紙の作製において、填料1の代りに、填料の軽質炭酸カルシウム92重量部と二酸化チタン〔商品名:FR−44/ルチル型 前述〕8重量部からなる混合物を用いた以外は、同様の方法で試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0070】
比較例3
実施例1の手抄き試験紙の作製において、填料1の代りに、填料の軽質炭酸カルシウム66重量部と二酸化チタン〔商品名:FR−44/ルチル型 前述〕34重量部からなる混合物を用いた以外は、同様の方法で試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0071】
比較例4
実施例1の手抄き試験紙の作製において、填料1の代りに、填料として填料の軽質炭酸カルシウム92重量部と二酸化チタン〔商品名:FA−55W/アナターゼ型 前述〕8重量部からなる混合物を用いた以外は、同様の方法で試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0072】
比較例
実施例1の手抄き試験紙の作製において、填料1の代りに填料10の軽質炭酸カルシウムを用いた以外は、同様の方法で試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0073】
実施例
実施例の手抄き試験紙の作製において、表面処理剤を酸化変性澱粉(前述)165部と平均粒子径0.6μmの有機顔料(商品名グロスデール201−S:三井化学社)100部からなる混合物に変更し、かつ塗工量を片面あたり1.2g/m2へ変更した以外は、それぞれと同様にして実施例の試験紙を得た。この試験紙の品質結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
Figure 0003928353
【0075】
各測定値は、下記の方法により行った。
● 平均粒子径…試料の水性懸濁液を、マイクロトラックHRA粒度分析計(日機装社)を使用してメディアン径を測定した。
〔試験紙の品質測定〕
● 灰分歩留り…手抄で得られた成紙中の灰分(JIS P8204に準拠して測定)を、手抄に供した紙料中の灰分で除して算出した。
● 白色度…手抄で得られた成紙をJIS P8123に準拠して測定した。
● 不透明度…手抄で得られた成紙をJIS P8138に準拠して測定した。
● 表面強度…インキタックを13に調節したシートオフセット用インキ0. 4mlを用いてRI印刷機で(明製作所製)印刷を行い、印刷面を観察して下記の基準で表面強度を判定した。
○ :ピックがまったく見られない。
× :ピックが著しく見られる。
【0076】
塗工紙の作製
(塗工用顔料スラリーの調製)填料で得た二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体をフィルタープレス機で脱水操作を行い、固形分濃度70%以上の軽質炭酸カルシウムケーキを得た。次いで、解砕機で数mm程度に解砕し、コーレスミキサーを用いて軽質炭酸カルシウムに対して1.0%の分散剤(アロンA−9/東亜合成社)と水を加えて、固形分濃度71.0%のスラリーを調製した。上記で得られた高濃度軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1mmのジルコニアビーズを用いてボールミルで湿式解砕処理を行い、平均粒子径1.3μmに調節した塗工用複合体顔料スラリー1を得た。填料3で得た二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体および填料で得た軽質炭酸カルシウムのスラリーについても同様の処理を行い、それぞれ塗工用複合体顔料スラリーおよび軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0077】
実施例21
(塗工組成物の調製および塗工紙の作製)
塗工用複合体顔料スラリー1を固形分で50部およびカオリン(商品名:UW−90/EC社)50部、酸化変性澱粉(エースA/王子コーンスターチ社)6部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(SN−307/日本エイアンドエル社)9部(それぞれ、固形分として)を混合し、コーレスミキサーを用いて分散し、さらに水を加えて固形分濃度が60.0%の塗工組成物を調製した。 次いで、上記の塗工組成物を比較例1で得た米坪60g/m2の原紙に、片面当たり乾燥重量で15g/m2になるように塗工熱風乾燥試験機MLC−100型(オースギ社)で両面に塗工・乾燥を行い、スーパーキャレンダーに2回通して塗工紙を得た。かくして得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0078】
実施例22
実施例21の塗工紙の作製において、塗工用複合体顔料スラリー1の代りに塗工用複合体顔料スラリー2を用いた以外は実施例21と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0081】
実施例23
実施例22の塗工紙の作製において、原紙に実施例で得た二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として10%含有した原紙を用いた以外は、実施例22と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0082】
比較例21
実施例21の塗工紙の作製において、塗工用複合体顔料スラリー1の代りに軽質炭酸カルシウムスラリーを用いた以外は実施例21と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0083】
比較例22
実施例21の塗工紙の作製において、顔料として塗工用複合体顔料スラリー1を固形分で50部の代りに、軽質炭酸カルシウムスラリー46部と二酸化チタンスラリー 4部(それぞれ固形分)を用いた以外は実施例21と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0084】
比較例23
実施例21の塗工紙の作製において、顔料として塗工用複合体顔料スラリー1を固形分で50部の代りに、軽質炭酸カルシウムスラリー33部と二酸化チタンスラリー 17部(それぞれ固形分)を用いた以外は実施例21と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0085】
比較例24
比較例22の塗工紙の作製において、原紙に比較例2で得た軽質炭酸カルシウムと二酸化チタンの混合物を填料として含有した原紙を用いた以外は、実施例22と同様の方法で塗工紙を得た。得られた塗工紙の品質測定結果を表2に示した。
【0086】
【表2】
Figure 0003928353
【0087】
【発明の効果】
表1、2より明らかなように、本発明の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料または塗工用顔料として使用して紙に仕上げると、灰分歩留、白色度、不透明度、表面強度等にバランス良く優れたものであることが分かった。これは十分に微細な二酸化チタン粒子がその本来の機能を発揮できる形態で複合体になっていることを示している。結局、不透明度に優れる微細顔料である二酸化チタン粒子を紙用填料として有効利用できるように加工した二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体が得られ、微細な二酸化チタンを炭酸カルシウムに定着せしめることで抄紙時のワイヤーパートでの填料歩留りに優れ、かつ調成工程での白水回収系の負荷を増加させることのないという効果を奏する。

Claims (6)

  1. 水酸化カルシウム水性懸濁液に、二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応により炭酸カルシウムを生成させ炭酸カルシウム水性懸濁液とし、炭酸化率が80%を越え95%以下となった後に二酸化チタン水性懸濁液を加えて炭酸化反応を続行させる炭酸カルシウム粒子の表層に二酸化チタン粒子を有する二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法。
  2. 水酸化カルシウム水性懸濁液、炭酸カルシウム水性懸濁液および二酸化チタン水性懸濁液の炭酸カルシウム水性懸濁液/水酸化カルシウム水性懸濁液の混合比率が炭酸化率として80%を越え95%以下に相当する比率となるような状態にある混合懸濁液中に二酸化炭素含有ガスを吹き込む炭酸カルシウム粒子の表層に二酸化チタン粒子を有する二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法。
  3. 請求項1または2項に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法により得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を填料として使用することを特徴とする高不透明度用紙。
  4. 原紙の両面に有機顔料と接着剤を主成分とする表面処理剤を塗工、乾燥してなることを特徴とする請求項3記載の高不透明度用紙。
  5. 請求項1または2項に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法において、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を更にフィルタープレスにより脱水濃縮してケーキを得、少なくとも分散剤を添加し撹拌機により分散してスラリーとした後、湿式解砕処理することを特徴とする二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体スラリーの製造方法。
  6. 請求項1または2項に記載の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体の製造方法により得られた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合体を塗工顔料として使用した塗工紙。
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