JP3925702B2 - セラミックヒーター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体製造装置用途に好適なセラミックヒーターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置においては、熱CVD、プラズマCVDなどによってシランガスなどの原料ガスから半導体薄膜を製造するに当たって、ウエハーを加熱するためのセラミックヒーターが採用されている。こうしたセラミックヒーターは、加熱面およびその上に設置される半導体ウエハーの温度を高度に均一化することが必要不可欠である。
【0003】
こうしたセラミックヒーターにおいて、ヒーターの加熱面の温度を均一化するための手法が種々知られている。例えば、いわゆる2ゾーンヒーターはこうした手法の一つである。2ゾーンヒーターは、セラミック基体中に、高融点金属からなる内周側抵抗発熱体と外周側抵抗発熱体とを埋設し、各抵抗発熱体にそれぞれ別個の電流導入結合部材を形成し、各抵抗発熱体にそれぞれ独立して電圧を印加することにより、内周側抵抗発熱体及び外周側抵抗発熱体からの発熱を独立して制御するものである。
【0004】
特開2001−102157号公報においては、セラミック基体内に、2層の加熱素子を埋設する。そして、各層の加熱素子の内周側の発熱量と外周側の発熱量とを制御することによって、内周ゾーンと外周ゾーンとの2ゾーン制御を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
実際のセラミックヒーターの設置状況によっては、ヒーター内に埋設された抵抗発熱体からの発熱密度を調整することが設計上望まれることがある。例えばセラミック基体内にコイルスプリング状の抵抗発熱体(巻回体)を埋設した場合には、巻回体の巻き数や巻き径を多くしたり、線径を小さくすることによって、ウエハー設置面の単位面積当たりの発熱量を増大させることができる。また、巻回体の巻き数や巻き径を少なくしたり、線径を大きくすることによって、ウエハー設置面の単位面積当たりの発熱量を低下させることができる。
【0006】
通常、セラミック基体内に埋設する抵抗発熱体の材質は、セラミックスの焼成温度において溶融せず、変形しにくい高融点金属である必要があり、制限される。例えばモリブデン線やタングステン線の巻回体を使用するとき、一本の巻回体の中で巻き径や線径を変化させることは製造上困難である。このため、巻き径、巻き数や線径の異なる複数種類の巻回体を結合し、電気的に接続した後、セラミック基体の内部に埋設する必要がある。
【0007】
本発明者は、巻き径、巻き数や線径の異なる複数種類の巻回体または素線体を円柱状の結合部材に巻き付けて結合し、電気的に接続した。そして、この巻回体および円柱状結合部材を、セラミックス粉末からなる成形体の内部に埋設し、成形体を高温、高圧下で焼結させてみた。すると、設計によっては、複数種類の巻回体の接続部分の近傍にホットスポットが発生することがあった。このようなホットスポットが発生すると、所望の均熱性が得られず、製造歩留りが低下することがわかった。また円柱状結合部材を起点とするクラックにより破損する事があった。
【0008】
本発明の課題は、セラミックスからなり、被加熱物の設置面を有する基体、基体に所定平面に沿って埋設されている抵抗発熱体、および抵抗発熱体の端部に電気的に接続されている結合部材を備えているセラミックヒーターにおいて、抵抗発熱体の端部の周辺におけるホットスポットと円柱状結合部材を起点とするクラックによる破損を防止できるような構造を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セラミックスからなり、被加熱物の設置面を有する基体、この基体に所定平面に沿って埋設されている抵抗発熱体、および少なくとも一つの抵抗発熱体の端部に電気的に接続されている結合部材を備えているセラミックヒーターであって、結合部材の外形が略球状をなしており、抵抗発熱体の端部をかしめによって固定する固定部を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明者は、前述のような抵抗発熱体の端部の周辺におけるホットスポットの原因を探求した結果、以下の発見に至った。
【0011】
例えば、通常の結合部材に巻回体を巻き付けた場合には、巻回体の線径が小さかったり、巻回体の端部に遊びがあれば、結合部材と巻回体との接続部分における応力集中は発生しにくいものと考えられる。しかし、例えば巻回体の線径が大きくなると(太くなると)、線が変形しにくく、線を結合部材の外周に沿って巻き付けることが難しい。特にモリブデン、タングステンなどの高融点金属の線は一般に硬いので、適切な変形が困難である。このため、線を結合部材に巻き付けた後に、線に歪みや不均一が発生しやすく、あるいは、線の遊びがなくなりやすい。この後にセラミック成形体を高温、高圧下で焼成すると、粉末の流動に伴って線や結合部材に過大な応力が集中し、局部的に接合不良が発生し、発熱量が設計値に比べて過大になり、ホットスポットが発生するものと考えられる。また、例えば結合部材に素線を巻き付けた場合にも、素線の線径や材質によっては、上記のような問題が発生する。
【0012】
本発明者は、このような知見に立脚し、セラミック基体の内部において、抵抗発熱体に接続される結合部材の外形を球状とすると共に、抵抗発熱体の端部をかしめによって固定する固定部を設けた。
【0013】
このようなセラミック基体内部の抵抗発熱体の接続構造は、以下のような作用効果を発揮する。即ち、結合部材の外形が、鋭角的な特異点や角がない形態なので、セラミック基体の焼成時に結合部材およびその周辺に過大な応力が加わりにくく、結合部材を起点とするクラックが発生しにくく、こうしたクラックを原因とするホットスポットが発生しにくい。また、抵抗発熱体の端部をかしめによって保持することで、線を結合部材に固定した後に、線に歪みや不均一が発生しにくく、あるいは、線に適度の遊びをもたせやすい。この後にセラミック成形体を高温、高圧下で焼成したときには、粉末の流動に伴って線や結合部材に応力が加わっても、線の不均一部分、曲折部分、あるいは遊びのない場所に過大な応力が集中するという事態は避けることができる。この結果、局部的な接合不良が少なくなり、ホットスポットの発生割合とヒーター破損が低減できたものと思われる。
【0014】
なお、本発明における結合部材は、以下のものを含む。
(1)2つ以上の抵抗発熱体に対して結合されており、かつ電力供給部材に結合されているもの。この場合には、結合部材は、複数の抵抗発熱体のジョイントとして機能する。
(2)1つあるいは複数の抵抗発熱体に結合されており、かつ電力供給部材に結合されているもの。この場合には、結合部材は電力供給用端子として作用する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る球状の結合部材6を示す平面図であり、図1(b)は、結合部材6の正面図であり、図1(c)は、結合部材6の溝6aに抵抗発熱体の端部を固定した後の状態を示す平面図である。また、図2(a)は、本発明外の参考例に係る略円柱状の結合部材5を示す断面図であり、図2(b)は、結合部材5を示す平面図である。
【0017】
図1に示すように、本例の結合部材6は略球状をなしており、結合部材6には一本の細長い溝6aが形成されている。溝6aの両側に一対のかしめ片6bが設けられている。この溝6a内に抵抗発熱体3Bの端部3aを挿通し、かしめ片6bを加圧してかしめることによって、端部3aを固定する。本例では、細長い溝6aが抵抗発熱体の固定部として機能する。
【0018】
図2に示す結合部材5は略円柱状をなしている。結合部材5には一本の細長い溝5dが形成されており、溝5dの両側に一対のかしめ片5cが設けられている。この溝5d内に抵抗発熱体4の端部4aを挿通し、かしめ片5cを矢印Aのように加圧してかしめることによって、端部4aを固定する。本例では、細長い溝5dが抵抗発熱体の固定部として機能する。更に、結合部材5の下部には円筒部分5eが形成されている。円筒部分5eの外側にはネジ5aが形成されており、円筒部分5eの内側には空隙5bが形成されている。ネジ5aに対して、抵抗発熱体3A、3Bの端部3aを巻き付け、固定する。結合部材5、6および抵抗発熱体3A、3B、4のセラミック基体内での埋設パターンは、後で例示する。
【0019】
本発明において、被加熱物の種類は限定されない。また、本発明のヒーターの用途は特に限定されないが、半導体製造装置用途であることが好ましい。この半導体製造装置とは、半導体の金属汚染が懸念されるような、幅広い半導体製造プロセスにおいて使用される装置のことを意味している。これには、成膜装置の他、エッチング装置、クリーニング装置、検査装置が含まれる。
【0020】
基体を構成するセラミックスは特に限定されない。しかし、基体の材質は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素及びサイアロンなどの窒化物セラミックス、アルミナー炭化ケイ素複合材料などの公知のセラミックス材料であってよい。ハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに対して高い耐腐食性を付与するためには、窒化アルミニウムやアルミナが特に好ましい。
【0021】
基体の形状は特に限定されないが、円板形状が好ましい。加熱面の形状は、ポケット形状、エンボス形状、溝形状とする場合もある。
【0022】
好適な実施形態においては、抵抗発熱体が所定平面に沿って埋設されている。ここで、抵抗発熱体の中心面が幾何学的に厳密に所定平面と一致することは要求しておらず、抵抗発熱体の中心面が所定平面からはずれていても差し支えなく、所定平面が抵抗発熱体を通過していれば足りる。製造上の誤差により、抵抗発熱体の中心面が、意図した所定平面に対してずれることも許容されている。
【0023】
特に好適な実施形態においては、抵抗発熱体が、基体の設置面と略平行となるように配設されている。これにより、設置面の均熱性を確保しやすくなる。なお、ここでいう略平行とは、完全に平行な場合に加えて、−0.5〜0.5度の範囲内にあるものを含む。また、製造上の誤差は許容される。
【0024】
本発明においては、結合部材の外形を略球状とする。この形態であれば、鋭角的あるいは鋭利な部分がなく、結合部材の外形における応力集中が少ない。その上、硬度の高い高融点金属によって結合部材を形成するとき、これらの外形は製造しやすく、かつ加工精度も高くできるので、加工形状のバラツキに伴う結合部材表面における応力集中も防止できる。
【0025】
略球状とは、真円の回転体(真球)形状、および真球とほぼ同じとみなすことができる形状である。
【0026】
しかし、幾何学的に厳密に真球である必要はなく、製造上の誤差があってよい。
【0027】
また、局部的な凹部、突起の存在も、結合部材の表面に応力集中をもたらすような寸法でない限りは、許容されるものとする。
【0028】
略球状の結合部材には、いずれも、いわゆるR面やC面のような面取り部分を設けることができる。
【0029】
かしめとは、一対のかしめ片を押圧し、変形させることによって、一対のかしめ片の間にはさまれた抵抗発熱体端部を機械的に保持する方法である。
【0030】
かしめ片の幾何学的形態や寸法は特に限定されない。また、固定部の形態は、好ましくは、図1、図2に示すような真っ直ぐな溝である。しかし、固定部は、二次元的に曲折した溝であってよく、三次元的に曲折した溝であってもよい。
【0031】
結合部材の外形が略球状または略回転楕円体形状である場合には、結合部材を基体内部に埋設したときに、基体の厚さ方向の寸法を低減することができる。この実施形態は、平板状の基体を使用するときに、基体の厚さを低減する上で特に好適である。
【0032】
また、結合部材の外形が略円柱状をなしている場合には、線体の端部、特に巻回体の端部を結合部材に対して巻き付けるときに特に好適である。この場合には、この線体とは別体の抵抗発熱体を結合部材に対してかしめによって固定する。
【0033】
抵抗発熱体の材質は、タンタル、タングステン、モリブデン、白金、レニウム、ハフニウム及びこれらの合金であることが好ましい。特に、セラミックス基体を窒化アルミニウムから構成した場合においては、モリブデン及びモリブデン合金であることが好ましい。また、上記高融点金属以外に、カーボン、TiN、TiCなどの導電性材料を使用することもできる。
【0034】
結合部材の材質は、上記したような抵抗発熱体用の材質が好ましい。特に好ましくは、抵抗発熱体の材質と結合部材の材質とが同種の材質であり、これによって焼成時の結合部材と抵抗発熱体との接続部分への応力集中を一層低減できる。
【0035】
ここで、抵抗発熱体の材質と結合部材の材質とが同種であるとは、主成分が一致していればよく、添加成分や微量成分までが一致していることは不要である。好ましくは、抵抗発熱体の材質の成分と結合部材の材質の成分とが、重量比で50%以上一致しており、特に好ましくは70%以上一致している。更に好ましくは、結合部材の材質と抵抗発熱体の材質とが、共にタングステン、モリブデン、タングステン合金またはモリブデン合金である。
【0036】
抵抗発熱体の形状は、コイル形状あるいは巻回体形状、リボン形状、メッシュ形状、板状、素線であってよい。ただし、セラミック基体の厚さ方向の温度降下を抑制し、設置面における温度分布を制御しやすくするという観点からは、巻回体であることが好ましい。
【0037】
巻回体の線径は、必要な供給熱量、巻き径、基体の熱伝導率や形態によって決定されるが、一般的には、0.1〜1.5mmが好ましい。素線の線径は、結合部材への結合のしやすさという点からは0.3mm以上が好ましい。また、素線から、ある程度の熱量を供給し、コールドスポットを低減するという観点からは、1.0mm以下が好ましい。
【0038】
好適な実施形態においては、基体内に複数の抵抗発熱体が埋設されており、複数の抵抗発熱体が結合部材によって接続されている。このように、基体内部で複数の抵抗発熱体を接続する際の接続構造として、本発明は特に好適である。
【0039】
好適な実施形態においては、これらの複数の抵抗発熱体が、互いに異なる形態を有する。ここで、異なる形態とは、形状が異なる場合と、形状は相似形であるが、寸法が異なる場合とを含む。
【0040】
好適な実施形態においては、複数の抵抗発熱体がそれぞれ導電線体からなり、複数の抵抗発熱体の線径が互いに異なっている。この場合には、線径の相対的に大きい抵抗発熱体を結合部材にかしめによって接続することが好ましい。
【0041】
好適な実施形態においては、複数の抵抗発熱体がそれぞれ巻回体からなり、複数の抵抗発熱体の巻き径が互いに異なっている。この実施形態については、図面を参照しつつ後述する。
【0042】
好適な実施形態においては、結合部材の室温における電気抵抗値が、結合部材に接続されている抵抗発熱体の室温における電気抵抗値の1/10以下である。これによって、結合部材における過剰な発熱を防止し、これによる設置面の温度分布への影響を低減できる。
【0043】
好適な実施形態においては、基体が、厚さ3mm以上、25mm以下の平板である。これが3mm以下であると、抵抗発熱体と設置面との間隔が小さく、設置面の温度分布を均一化することが難しい。また、25mmを超えると、セラミックヒーターの熱容量が増大し、温度制御時の応答時間が長くなる。
【0044】
結合部材の固定部の形態は、かしめが可能な限りは特に限定されない。しかし、好適な実施形態においては、固定部が、抵抗発熱体の端部を挿通可能な溝であり、特に好ましくは細長い溝である。
【0045】
以下、本発明のセラミックヒーターの全体構成の実例を図示する。図3は、本発明の一実施形態に係るセラミックヒーター1において、基体2に埋設された抵抗発熱体16のパターンを示す図であり、図4は、図3の要部拡大図であり、図6、図7は、それぞれ、セラミックヒーター1と支持部材13とを有する加熱装置17を示す。セラミックヒーター1においては、抵抗発熱体はセラミック基体2内に埋設しており、基体表面には露出していないが、図3においては、抵抗発熱体の平面的パターンを示すために断面ハッチングは省略してある。
【0046】
図6、図7を参照しつつ、最初に本加熱装置の全体を説明する。基体2は略円板状である。基体2の内部には、巻回体3A、4、3Bと、機能部材9とが埋設されている。図6に示すように、抵抗発熱体3Bは、結合部材6および11を介して電力供給部材12に接続されている。結合部材6は、電力供給用の端子として働く。そして、図7に示すように、機能部材19は、結合部材7を介して電力供給部材12Aに接続されている。機能部材19は例えば静電チャック電極である。
【0047】
基体2の背面2bには、中空の支持部材13の端面が接合されている。この接合方法は特に限定されず、例えばろう材によって接合でき、あるいは特開平8−73280号公報に記載のようにして固相接合できる。また、ヒーターと支持部材とは、Oリングやメタルパッキングなどのシール部材を用いてシール接合することができる。支持部材13は筒状を呈している。支持部材13の内側空間14は、チャンバー内の雰囲気とは隔離されている。内側空間14には、電力供給手段12、12Aが収容されている。
【0048】
第一の巻回体3Aは、略渦巻き状の平面的パターンに沿って埋設されており、第一の巻回体3Aの両端部が、それぞれ、結合部材5を介して第二の巻回体4に接続されている。各巻回体4の他端はそれぞれ第一の巻回体3Bに接続されており、各巻回体3Bの各端部が結合部材6に接続されている。
【0049】
図4に示すように、第一の巻回体3A、3Bの巻き径LA、LBを、第二の巻回体4の巻き径LCよりも大きくする。これによる作用効果は以下のとおりである。
【0050】
例えば、図8、図9のセラミックヒーター31においては、セラミック基体2内にコイルスプリング状の巻回体3Cが埋設されており、巻回体3Cの両端がそれぞれ結合部材6に結線されている。コイルスプリング状の抵抗発熱体を埋設すると、抵抗発熱体の実質的な直径(つまりコイルスプリングの巻き径)が比較的に大きいことから、基体2の厚さ方向の温度変化(温度降下)を少なくできる。これは、基体2の加熱面の温度の均一性を向上させる上で好適である。
【0051】
しかし、このようにコイルスプリング状の抵抗発熱体を埋設し、加熱面の温度の均一化を図ろうとしたとき、基体内に埋設された機能部材や孔が邪魔になるだけでなく、機能部材や孔の近傍にも抵抗発熱体を埋設することができず、コールドスポット発生の原因になる。なぜなら、孔と抵抗発熱体との間には、孔加工の寸法精度および抵抗発熱体の埋設時の寸法精度を考慮し、ある程度の安全間隔を設けることが必須である。更に、機能部材と抵抗発熱体との間では、短絡を防止するため、絶縁性を確保する必要がある。この絶縁性は、機能部材と抵抗発熱体との間隔および形状、およびセラミックスの体積抵抗率によって決定される。従って、機能部材と抵抗発熱体との間には,ある程度の安全間隔を設けることが必要である。しかし、機能部材と抵抗発熱体との間に安全間隔を設けると、設計によってはコールドスポットが発生しやすくなる。
【0052】
図8の例では、一対の機能部材7、例えば静電チャック電極用の結合部材7が近くに配置されている。また、本例では、一対のヒーター用結合部材6が近くに配置されている。これは、後述するようにヒーター背面の中央部に管状の支持部材を接合し、支持部材の内側に電力供給部材を挿入するためである。この場合には、結合部材6、7が基体2の中央部分に集まるという設計を余儀なくされている。ところが、一対の結合部材7および一対の結合部材6が近傍に位置すると、一対の結合部材7の近傍に抵抗発熱体を埋設することがきわめて困難になる。なぜなら、一対の結合部材7間は狭いので、抵抗発熱体を通す余地が少なく、また結合部材6と7との間にも抵抗発熱体を通す余地が少ないからである。この結果、一対の結合部材7の間とその近傍領域28にコールドスポットが発生するおそれがある。
【0053】
これに対して、本例においては、図4に示すように、巻き径の相対的に小さい巻回体4を、構造欠陥部、例えば結合部材7の近傍に配設することができる。この際、巻回体4の巻き径LCが小さいことから、巻回体4を曲折させ、安全間隔F、Gを確保しつつ、結合部材7および結合部材6の双方に最も接近するようなパターンに埋設することが容易である。巻回体4の巻き径が大きい場合には、結合部材6と7との双方に接近するように配置するように巻回体を折り曲げることは困難である。この結果、コールドスポット28を消去し、あるいは少なくとも低減、抑制することが可能である。
【0054】
また、図5の実施形態においては、第二の巻回体の代りに、導電性材料の線からなる素線9A、9Bを使用している。この場合も、素線9A、9Bと結合部材6、7との間隔F、Gを、安全間隔を確保した上で最小限とする。
【0055】
第一の巻回体の巻き径が大きくなると、セラミック基体を厚くする必要があり、セラミックヒーターの熱容量が増大する。セラミックヒーターの熱容量を低減するという観点からは、第一の巻回体の巻き径を5mm以下とすることが好ましい。
【0056】
第二の巻回体の巻き径LCは、上記の観点からは、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることが更に好ましい。
【0057】
第二の巻回体の巻き径LCの下限は特にないが、製造しやすさという観点からは、2mm以上であることが好ましい。
【0058】
好適な実施形態においては、図3〜図5に示すように、基体に構造欠陥部7が設けられている。ここで、構造欠陥部とは、基体を構成するセラミックスとは異なる異物、あるいは空間ないし空隙が設けられている部分のことをいう。この異物としては、基体を構成するセラミックスとは異種のセラミックス、金属(合金を含む)、金属とセラミックスとの複合材料を例示できる。更に具体的には、結合部材、導電接続部、高周波電極用電極や、静電チャック用電極、熱電対を例示できる。また、空間ないし空隙としては、リフトピン挿入用の孔、バックサイドガス供給孔を例示できる。
【0059】
第二の巻回体あるいは素線と構造欠陥部との間隔F、Gは、コールドスポットを低減するという観点からは、40mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが更に好ましい。しかし、第二の巻回体あるいは素線と構造欠陥部とが接近しすぎると、絶縁性が低下したり、あるいは設計上の裕度を確保できなくなるおそれがある。従って、この観点からは、第二の巻回体あるいは素線と構造欠陥部との間隔F、Gを、2mm以上とすることが好ましい。
【0060】
第一の巻回体と、第二の巻回体または素線とは、本発明に従って結合部材を介して接続する。好ましくは、第二の巻回体または素線を本発明に従ってかしめによって結合部材に固定する。この際には、第一の巻回体と結合部材との接合方法は限定されず、ネジ部への巻き付け、かしめ、嵌合、ロウ付け、溶接、共晶を例示できる。
【0061】
各抵抗発熱体は、各結合部材間で一筆書きのパターンを構成している必要はなく、結合部材間で、電気的分岐部、電気的結合部を有していてよい。
【0062】
図10は、結合部材6と電力供給手段12との接合構造を示す断面図である。本例では、基体2内に棒状の結合部材11Aが挿入され、固定されている。そして、結合部材11Aと結合部材6の接続法は特に限定されない。
【0063】
図11は、本発明の他の実施形態における抵抗発熱体の埋設パターン例を示す。本例は、いわゆる2ゾーンヒーターのパターンを示す。内側の抵抗発熱体3Dの両端は、基体2の中央部で各結合部材6に接続されている。抵抗発熱体3Dは、好ましくは前述のような巻回体や網状物からなる。外側の抵抗発熱体3Cの両端部は、それぞれ結合部材5に接続されている。好ましくは、抵抗発熱体3Cが巻回体または網状物からなり、抵抗発熱体3Cの端部が結合部材5の外周に巻き付けられている。また、各結合部材5には、それぞれ素線9Cがかしめによって接続されており、素線9Cの他方の端部が各結合部材6に接続されている。結合部材5は、抵抗発熱体を接続するジョイントとして働く。結合部材6は、例えば図10に示すような接合構造を介して外部の電力供給手段に接続されている。
【0064】
【実施例】
参考例)
図10、図11に示すセラミックヒーター20を製造した。基体2は、窒化アルミニウム焼結体とし、基体の直径φは350mmとし、厚さは20mmとした。基体2の内部には、巻回体3C、3D、および素線9Cを埋設した。巻回体3C、3Dの巻き径LA、LBは3.0mmとし、線径は0.5mmとした。素線9Cの線径は1.0mmとした。抵抗発熱体3C、3D、9Cと設置面との間隔を9mmとした。
【0065】
結合部材5は、図2に示すようなモリブデン製の円柱状結合部材(かしめ部材)とした。巻回体3Cの端部を結合部材5の外周面に巻き付けた。また、素線9Cの端部を結合部材5にかしめによって固定した。結合部材6は、図1に示すような球状の結合部材とした。巻回体3Dまたは素線9Cの端部を結合部材6にかしめによって固定した。
【0066】
図6、図7に示す支持部材13を基体2の背面に接合した。支持部材13は、窒化アルミニウム焼結体によって形成した。支持部材13の外径を80mmとし、内径を50mmとし、長さを250mmとした。支持部材13を基体2の中央部の背面に固相接合した。ニッケルロッドからなる電力供給手段12Aを支持部材13の内側空間14に挿入し、結合部材11Aを介して各結合部材6と電気的に接続した。
【0067】
このセラミックヒーターを昇温し、設置面2aの平均温度が約700℃となるようにした。そして、設置面2aの温度分布をサーモビュアーによって観測した。この結果、設置面の最高温度と最低温度との差を測定したところ、 4.0℃であった。
【0068】
(実施例)
参考例と同様にして2ソーンヒーターを製造した。ただし、素線9C、結合部材5は使用せず、巻回体3C、3Dの各端部を結合部材6へと接続した。巻回体3C、3Dの巻き径LA、LBは3.0mmとし、線径は0.3mmとした。巻回体3C、3Dの埋設パターンは、通常の2ゾーンヒーターと同様である。また,基体2の直径を330mmとし、厚さを5mmとした。抵抗発熱体3C、3Dと設置面との間隔を2.5mmとした。結合部材6は、図1に示すような球状の結合部材とした。巻回体3C、3Dの端部を結合部材6にかしめによって固定した。
【0069】
このセラミックヒーターを昇温し、設置面2aの平均温度が約200℃となるようにした。そして、設置面2aの温度分布をサーモビュアーによって観測した。この結果、設置面の最高温度と最低温度との差を測定したところ、0.5℃であった。
【0070】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ヒーター加熱面の温度の均一性向上に好適であり、かつヒーター加熱面におけるコールドスポットを効果的に防止できるような構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、結合部材6の平面図であり、(b)は、結合部材6の正面図であり、(c)は、結合部材6をかしめた後の状態を示す平面図である。
【図2】(a)は、素線4および巻回体3A(3B)が接続されている結合部材5を示す断面図であり、(b)は、結合部材5の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るセラミックヒーター1に埋設されている抵抗発熱体16の平面的パターンを示す図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】他の実施形態における抵抗発熱体の平面的パターンの図である。
【図6】図3のヒーター1および支持部材13を備える加熱装置17の断面図であり、図3におけるVI−VI線断面に相当する。
【図7】図3のヒーター1および支持部材13を備える加熱装置17の断面図であり、図3におけるVII−VII線断面に相当する。
【図8】参考例のセラミックヒーター31に埋設されている抵抗発熱体の平面的パターンを示す図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】結合部材6、結合部材11Aおよび電力供給手段12の接合構造を示す。
【図11】他の実施形態に係る抵抗発熱体の埋設パターンを示す。
【符号の説明】
1、11、20 セラミックヒーター 2 基体
3A、3B、4 巻回体 3a 抵抗発熱体の端部 5 略円柱状結合部材 5a 巻回体を巻き付けるための巻き付け部(ネジ部)
5c、6b 一対のかしめ片 5d、6a 溝(固定部) 6略球状結合部材(構造欠陥部) 9 素線 16 抵抗発熱体
17 加熱装置 A かしめの際の加圧方向 E 第一の巻回体と構造欠陥部との間隔 F、G、H 第二の巻回体または素線と構造欠陥部との間隔 LA、LB 第一の巻回体の巻き径 LC 第二の巻回体の巻き径 L 設置面2aと略平行な平面

Claims (11)

  1. セラミックスからなり、被加熱物の設置面を有する基体、この基体に埋設されている抵抗発熱体、および前記抵抗発熱体の端部に電気的に接続されている結合部材を備えているセラミックヒーターであって、
    少なくとも一つの前記結合部材の外形が略球状をなしており、前記結合部材が、前記抵抗発熱体の前記端部をかしめによって固定する固定部を備えていることを特徴とする、セラミックヒーター。
  2. 前記基体内に複数の前記抵抗発熱体が埋設されており、複数の前記抵抗発熱体が前記結合部材によって接続されていることを特徴とする、請求項1記載のセラミックヒーター。
  3. 前記複数の前記抵抗発熱体が、互いに異なる形態を有することを特徴とする、請求項2記載のセラミックヒーター。
  4. 前記複数の前記抵抗発熱体がそれぞれ導電線体からなり、前記複数の抵抗発熱体の線径が互いに異なっていることを特徴とする、請求項3記載のセラミックヒーター。
  5. 前記複数の前記抵抗発熱体がそれぞれ巻回体からなり、前記複数の抵抗発熱体の巻き径が互いに異なっていることを特徴とする、請求項3記載のセラミックヒーター。
  6. 前記結合部材に接続されている前記抵抗発熱体と、前記結合部材とが、同種の材料からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
  7. 前記結合部材の室温における電気抵抗値が、前記結合部材に接続されている前記抵抗発熱体の室温における電気抵抗値の1/10以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
  8. 前記基体が、厚さ3mm以上、25mm以下の平板であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
  9. 前記抵抗発熱体が前記設置面と略平行な平面に沿って埋設されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
  10. 前記固定部が、前記抵抗発熱体の前記端部を挿通可能な溝もしくは穴であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
  11. 前記抵抗発熱体が、網、素線または巻回体であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載のセラミックヒーター。
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