JP3924400B2 - 光学素子の固定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ内に設置されるビームスプリッタなどの光学素子の固定装置に係り、特に光学素子を光ピックアップ内の固定部に高精度に固定することができるようにした光学素子の固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来の光ピックアップの内部構造の概要を示す構成図、図5は従来の光学素子の固定状態を示すベース(キャリッジ)内の断面図である。
【0003】
同図において、符号1はレーザビーム(レーザ光)が照射可能なレーザダイオード、2は光学素子、3は反射鏡、4は対物レンズ、5は光検出器を示している。これら各部材は、図示しない光ピックアップのベース上に図4に示す位置関係で組み込まれている。レーザダイオード1から照射されるレーザ光は、光学素子2の側面(入射面)2aに対し所定の入射角で入射される。光学素子2としては、例えば入射された光を反射光と透過光の2つに分割することができるハーフミラーや偏光ビームスプリッタなどが用いられる。レーザ光は、その一部が光学素子の側面2aで反射され、反射鏡3の方向に向きが変えられる。反射鏡3の上方には、対物レンズ4が設けられている。この対物レンズ4にレーザ光を導くため、反射鏡3は所定の角度に傾けられて光ピックアップ内に設置されている。対物レンズ4の上方には、CDやDVDなどのディスク(図示せず)が装填されている。対物レンズ4は、図示しないフォーカスサーボ機能などにより、反射鏡3で反射されたレーザ光をディスクの信号記録面に対し集束して照射できるようになっている。
【0004】
ディスクの信号記録面から反射された戻り光は、上記と逆の経路をたどり光学素子2に導かれる。光学素子2では、戻り光の一部が光学素子2を透過し、その後方に設けられた光検出器5に導かれる。光検出器5は、例えばピンフォトダイオードなどであり、戻り光は、この光検出器5で検出され、各種の信号処理が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記光ピックアップでは、光学素子2の側面2aが、レーザダイオード1からの光の入射面で且つ対物レンズ4へ光束を与える反射面となっている。したがって、光学素子2の側面2aの傾きは、ディスクからの信号の読取り動作などに影響を与える。
【0006】
よって、光学素子2が光ピックアップのベース内の所定の位置に高精度で位置決めされていないと、すなわちレーザダイオード1が位置するa1の方向や、反射鏡3に向かうb1の方向に対して、側面2aの向きが高精度に決められていないと、対物レンズ4の光軸O1に対してレーザ光の光束の中心がずれて収差が増大し、ディスクの信号記録面に形成されるレーザ光のスポット形状に歪みなどが生じる。
また、光学素子2に位置ずれや傾きが発生した場合、光検出器5に入射する光軸O2にずれが生じるため、対物レンズ4のフォーカスサーボ動作にオフセットが発生するなどの問題が生じる。
【0007】
そこで、従来は図5に示すようにベース6の一部に凹部状の固定部7を設け、この固定部7内に光学素子2を固定するようにしていた。すなわち、前記固定部7の底面7aをベース6の下面6aに対し平行となるように形成し、且つ固定部7の取付け面(基準面)7bを前記固定部7の底面7a(又はベース6の下面6a)に対し90度の角度となるように高精度で形成し、この取付け面7bに対し光学素子2の一部の面を密着固定するというものであった。
【0008】
ところが、前記ベース6はアルミニウムやマグネシウム等の金属をダイキャスト型成形することにより形成されるが、型抜き工程の際にベース6の下面6aに対し型を垂直(取付け面7bに対し平行)方向に抜かなければならないという制約がある。このとき取付け面7bが型の抜き方向と平行であると、前記取付け面7bと型とが型離れのときに擦れ、前記取付け面7bが傷ついたり、または歪むなどの問題が生じる。
【0009】
そのため、従来は、あらかじめ取付け面7bにわずかな厚み(加工しろ)を形成し、型抜き後に前記加工しろを機械的な切削加工により取付け面7bを高精度に仕上げる必要が生じていた。よって、ベース6の製造工程が複雑となり、且つ製造コストが高騰するという問題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、前記のような型離れでの擦れを防止でき、成型完了時点で光学素子の位置め面を高精度に形成できるようにした光学素子の固定装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属材料により型成形されたベース上に、ベース表面に対してほぼ垂直な向きの機械加工されていない取付け面が形成され、光を反射しまたは光が入射あるいは出射する基準光学面を有する光学素子が、前記基準光学面と前記取付け面とが密着することにより位置決めされている光学素子の固定装置において、
前記取付け面は、前記ベース表面に対し角度が、90度+微小角度(θ1)である傾斜面とされていることを特徴とするものである。
上記において、前記微小角度(θ1)が、θ1≦3度であるものが好ましい。
【0012】
本発明では、ベースに設けられた固定部内の取付け面を傾斜状に形成することにより、金型内からベースを取り出す型抜き作業の際に、ベース内の取付け面と金型の傾斜成形面との型離れを良くすることができ、成型完了状態で、取付け面を高い精度で平滑な面に形成することが可能となる。よって、この成型したままの取付け面を光学素子を固定するための基準面とすることができ、型抜き後の取付け面に対する機械的な切削加工をなすくことが可能となる。
【0013】
また前記ベースには、前記取付け面と直角な底部取付け面が形成され、前記光学素子には前記基準光学面と直角な底面が形成され、前記光学素子は、前記基準光学面が前記取付け面に密着し前記底面が前記底部取付け面に突き当てられて位置決めされているものが好ましい。
【0014】
このように、取付け面と底部取付け面との間の関係を直角(90度)に維持しておくことにより、取付け面に対し光学素子を高精度に固定することができる。すなわち、光学素子の基準光学面と底面との間の角度は高精度に直角に形成することが可能であるため、取付け面が傾斜して形成されている場合であっても、固定部の底面と取付け面との間の角度を90度に設定しておけば、光学素子を固定部内に高精度に固定することができる。
【0015】
さらに、前記光学素子は、ベース表面に沿う幅方向の一方の端部で前記基準光学面が前記取付け面に密着して片持ち状態で支持されており、光軸が、前記密着されていない領域で基準光学面に交叉するものが好ましい。
【0016】
本構成では、光学素子を固定する際に、光学素子の一端のみを片持ち状態で保持されることにより、他端側を自由端とすることができる。よって、光学素子の両端を固定した場合に生じる弊害、例えば光学素子の両端を固定する各々の取付け面の間に寸法誤差が生じており、これにより光学素子の基準光学面の両端を両取付け面に強制的に固定したときに光学素子に変形が生じるといった弊害の発生を防止できる。よって、光学素子の基準光学面(入射面)に対し交叉(入射、反射又は透過)する光軸の向きを高精度に設定することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
図1は光ピックアップのベース(キャリッジ)の一部を示し、Aは主として固定部を示す平面図、BはAのB−B線断面図、図2は図1Aの2−2線断面図であるとともに固定部と金型との関係を示す図、図3はベース内の光学素子と反射鏡との関係を示す側面図である。
【0019】
CDプレーヤ、DVDプレーヤまたはMDプレーヤなどの各種のディスク装置には、ディスクの記録又は再生を行う光ピックアップが搭載されており、前記光ピックアップはターンテーブル上のディスクに対しその半径方向に移動自在に設けられている。
【0020】
前記光ピックアップはキャリッジと称されるベース16を支持母材とし、このベース16上に発光素子(レーザダイオード)11、光学素子12、反射鏡13、対物レンズ14および光検出器15などが搭載されている。
【0021】
図1AおよびBに示すように、前記ベース16内には断面凹状の領域からなる固定部17が設けられており、この固定部17内にハーフミラーや偏光ビームスプリッタなどの光学素子12が設けられる。固定部17内の底面(底部取付け面)17cには、円筒状の台座18,19が突設されており、台座18,19の中心には貫通孔18a,19aがそれぞれ形成されている。台座18の図示Rの方向には、取付け面17a,17bが設けられている。この取付け面17a,17bは、ともに前記底面17cに対してほぼ垂直に形成され、より詳しくは垂直面にさらに微小角度θ1が加算された傾斜面となっている。図1Bに示すように、前記底面(底部取付け面)17cからの角度は、90度+微小角度θ1であり、θ1はθ1≦3度の範囲に設定されているものが好ましい。
【0022】
また前記台座18および19の表面は、R側よりもS側のほうがわずかに高い傾斜状に形成されており、図1Bに示すように水平軸(ここではR−S軸)に対する傾き角度θ2は前記微小角度θ1と同じ角度に設定されている(θ1=θ2)。従って、取付け面17a,17bと台座18および19の表面(底部取付け面)との間(微小直角θ1と傾き角度θ2との間)の角度は、90度に設定されている。
【0023】
また、レーザダイオードなどの発光素子11、反射鏡13、対物レンズ14および光検出器15などは、ベース16内の前記光学素子12を中心とする所定の場所に設けられている。すなわち、図1Aにおいて発光素子11は光学素子12に対しY1方向の符号a2の位置に設けられ、反射鏡13は図示X2方向のb2の位置に設けられている。また光検出器15は図示X1方向の符号c2の位置に設けられている。
【0024】
前記光ピックアップのベース(キャリッジ)16は、アルミニウム合金などをダイキャスト成形することにより形成される。すなわち、溶湯状のアルミニウムを図示しない金型内に流し込み、冷却後に型抜きしてベースを形成するというものである。
【0025】
図2に示すものでは、ベース16の下面16aが垂直軸(Z軸)に垂直に設定され、金型30の型抜き方向Fは垂直(Z1)方向と同方向となっている。よって、前記取付け面17a,17bと対向する金型30内の対向面(傾斜成形面)31を、垂直軸(Z軸)に対して微小角度θ1を加えた角度に形成しておくことにより、ベース16の取付け面17a,17bを前記90度+微小角度θ1に形成することができる。
【0026】
また上記のように金型30の対向面31と、ベース16の固定部17の取付け面17a,17bとが90度+微小角度θ1を有して対向するものとなる。よって、金型30を垂直(Z1)方向に型抜きすることにより、固定部17の取付け面17a,17bと金型30の対向面31との型離れがよくなり、型離れのときに前記取付け面17a,17bに擦れ傷や歪みが発生することがない。成型状態で、取付け面17a,17bを平滑に形成することができるため、この取付け面17a,17bに切削加工を施すことなく、光学素子12を固定部17内に位置決めするための基準面とすることが可能である。
【0027】
このように、取付け面17a,17bを光学素子12を取付けるための基準面とすることが可能になると、型抜き後の取付け面17a,17bに光学素子12を直接固定することができるようになる。よって、従来のように型抜き工程の後に取付け面17a,17bの精度を高めるための機械的な切削加工を行う必要がなくなる。これにより、製造工程を簡素化することが可能となるとともに、製造コストを低減することができる。
【0028】
図1Aに示すように、前記固定部17の台座18,19には、図示P−Q方向を長手方向とする長方体形状の光学素子12が設置される。光学素子12そのものは高精度に形成することが可能であり、光学素子12の底面と入射面(基準光額面)12aとの間の角度を、台座18,19の表面(底部取付け面)と取付け面17a,17bとの間の角度(上記の例では、90度)に設定しておくことにより、固定部17内に光学素子12を高精度に設置することができる。
【0029】
前記固定部17内への光学素子12の固定は、例えばベース16の外部から前記貫通孔18a,19a内に接着剤を注入することにより、光学素子12の底面を台座18,19の表面(底部取付け面)に接着固定することができる。あるいは固定部17内の他方の壁17dと光学素子12の出射面12bとの間に、例えば板ばねなどの弾性部材25を挟入し、光学素子12の入射面12a(基準光額面)の一部をR方向の取付け面17a,17bに押し付けることにより位置決めしてもよい(図1B参照)。また接着剤と弾性部材25とを組み合わせて光学素子12を固定部17内に固定してもよい。
【0030】
ベース16では、光学素子12の一方の端部(図示P方向の端部)のみが取付け面17aと17bの2箇所を基準面として片持ち状態で支持固定され、他方の端部(Q方向の端部)は接着剤のみで台座19に固定される。すなわち、光学素子12の他方の端部(Q側の端部)を自由端に設定し、まず一方の端部(P側の端部)のみを取付け面17a,17bに押し付けて固定する。そしてその後に他方の端部(Q側の端部)の底面と台座19とを接着剤で固定する構成である。これにより、光学素子12のP側およびQ側の両端が強制的に取付け面に固定されることがないため、光学素子12に無理な力が加わることを防止できる。よって、光学素子12の入射面12aおよび出射面12bに湾曲やねじれ等の変形が生じることを防止することができる。よって、光学素子12に交叉(入射しまたは反射し若しくは透過)するレーザー光の光軸を所定の方向に高精度に向けることが可能となる。
【0031】
図1Aに示すものでは、前記発光素子11から発せられたレーザー光が図示Y2方向に出射され、光学素子12の入射面(基準光学面)12aに対し斜め45度の角度で入射される。レーザー光は、入射面12aによりb2の位置に設けられている反射鏡13の方向に反射させられる。そして、反射鏡13において、レーザー光の進行方向が垂直(Z1)方向に向けられ、反射鏡13の上部位置に設けられた対物レンズ14さらにはディスクDの信号記録面に導かれる。
【0032】
また信号記録面からの戻り光は、入射時と逆の経路を経て光学素子12に導かれる。戻り光の一部は光学素子12を透過し、光学素子12の反斜面12bの後方(X1側)のc2の位置に設けられたピンフォトダイオードなどの光検出器15に導かれる。光検出器15では、戻り光による光信号を電気信号に変換し、図示しない信号処理手段において各種の信号処理が行われる。
【0033】
図3に示すように、前記光学素子12は垂直軸(Z軸)に対し90度+微小角度θ1だけ傾いて取付け面17a,17bに固定されているため、光学素子12で反射後のレーザー光の進行方向は、水平軸(X軸)に対し平行とはならず、わずかに下方にαだけ傾いたものとなる。
【0034】
そこで、反射鏡13で反射後のレーザ光が対物レンズ14の中心方向に向くように、予め反射鏡13を取付けるベース16側の支持台20の傾き角度を水平軸またはベースの下面16a若しくは表面など水平軸に平行な面に対しβだけ傾かせた状態で設置しておくことにより、このずれを補正することが可能である。また光学素子12を透過した戻り光の光軸は、水平軸Xに対し角度αを持つこととなるが、予め戻り光の光軸上に光検出器15が来るような位置に設定することができ、この場合戻り光を確実に検知することが可能である。なお、支持台20は、予め金型の角度を所定の角度に設定しておくことにより、前記取付け面17a,17bとともに一体で形成することが可能である。
【0035】
あるいは、光学素子12で反射されたレーザ光が水平軸Xと平行となるように、予め発光素子11からの出射角度(光学素子12への入射角)を調整したものであってもよい。この場合には、反射鏡13の傾き角度βを水平軸に対し45度に設定しておくことにより、反射鏡13で反射させられたレーザ光を対物レンズ14の中心方向(Y軸方向)に向かせることが可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、光学素子をベース(キャリッジ)内の取付け面と成型用の型との型離れを良くし、前記取付け面を成型状態で高精度に平滑面にできる。
【0037】
またベースを型抜きした際の取付け面を平滑に形成することができるため、機械的な切削加工を不要とすることができ、製造コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ピックアップのベース(キャリッジ)の一部を示し、Aは主として固定部を示す平面図、BはAのB−B線断面図、
【図2】図1Aの2−2線断面図であるとともに固定部と金型との関係を示す図、
【図3】光学素子と反射鏡との関係を示す側面図、
【図4】従来の光ピックアップの内部構造の概要を示す構成図、
【図5】従来の光学素子の固定状態を示すベース(キャリッジ)内の断面図、
【符号の説明】
11 発光素子(レーザーダイオード)
12 光学素子
12a 入射面(基準光学面)
13 反射鏡
14 対物レンズ
15 光検出器
16 ベース(キャリッジ)
17 固定部
17a,17b 取付け面
18,19 台座
30 金型
31 対向面(傾斜成形面)
θ1 微小角度
α 水平軸に対する反射光の傾き角度
β 水平軸に対する支持台(反射鏡)の傾き角度
Claims (4)
- 金属材料により型成形されたベース上に、ベース表面に対してほぼ垂直な向きの機械加工されていない取付け面が形成され、光を反射しまたは光が入射あるいは出射する基準光学面を有する光学素子が、前記基準光学面と前記取付け面とが密着することにより位置決めされている光学素子の固定装置において、
前記取付け面は、前記ベース表面に対し角度が、90度+微小角度(θ1)である傾斜面とされていることを特徴とする光学素子の固定装置。 - 前記微小角度(θ1)が、θ1≦3度である請求項1記載の光学素子の固定装置。
- 前記ベースには、前記取付け面と直角な底部取付け面が形成され、前記光学素子には前記基準光学面と直角な底面が形成され、前記光学素子は、前記基準光学面が前記取付け面に密着し前記底面が前記底部取付け面に突き当てられて位置決めされている請求項1または2記載の光学素子の固定装置。
- 前記光学素子は、ベース表面に沿う幅方向の一方の端部で前記基準光学面が前記取付け面に密着して片持ち状態で支持されており、光軸が、前記密着されていない領域で基準光学面に交叉する請求項1ないし3のいずれかに記載の光学素子の固定装置。
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