JP3922747B2 - 樹脂含有紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂含有紙に関する。さらに詳しくは、本発明は、厚い紙においても未含浸部を生ずることがなく、かつ紙の内部と外層部をそれぞれ独立して改質することができる樹脂含有紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙の物性を改質する目的で、紙に樹脂を含浸する方法が用いられる。改質目的により使用される樹脂が選択され、オン・マシン法あるいはオフ・マシン法により含浸が行われる。
紙に樹脂を含浸する際には、紙層中の空気と含浸する樹脂を効率的に置換させることが最大のポイントであり、ディッピング法、フロート法などの手法が用いられている。特に紙の厚さが厚い場合には、紙層中心部の空気が抜け難く、中心部が未含浸となりやすい。また、樹脂エマルションを使用した場合、中心部まで樹脂が含浸されても、乾燥中に樹脂のマイグレーショが生じ、紙層中心部の樹脂濃度が低下し、物性の改質が不十分となりやすい。
このような欠点を改良するために、紙料に樹脂を内添して抄紙すると、抄紙機のウェット部で汚れを生じるため、樹脂の添加量にも制約があり、十分に物性を改質することは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、厚さの厚い紙においても紙層中心部に樹脂の未含浸部を生ずることがなく、中間層の物性と外層部の物性を独立して改質することができる樹脂含有紙を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、中心部に樹脂を内添した中間層を形成し、両外層部にのみ樹脂を含浸することにより、厚い紙であっても中心部まで完全に樹脂が含有され、さらに中間層と外層部を独立して改質することが可能な樹脂含有紙が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)天然繊維からなる中間層及び天然繊維からなる両外層部の抄合わせにより抄紙された樹脂含有紙であって、該中間層は紙料調成時に水性エマルションとして樹脂を繊維100重量部に対して内添樹脂5〜50重量部を内添してなり、該外層部は抄合わせ後のサイズプレス工程又は紙を巻き取った後に、水性エマルション若しくは水溶液として樹脂を外層部に、樹脂含浸量が繊維100重量部に対し5〜100重量部の比率で含浸させてなり、かつ、中間層及び外層部に含浸させる樹脂が、SBR、NBR、MBR、塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂又はEVA樹脂であって、中間層に含浸させる樹脂と外層部に含浸させる樹脂が相違することを特徴とする樹脂含有紙、
(2)中間層が、2層以上の抄合わせによりなる第(1)項記載の樹脂含有紙、
(3)中間層の樹脂含有量と外層部の樹脂含浸量が異なるものである第(1)項又は第(2)項記載の樹脂含有紙、及び、
(4)中間層に内添する水性エマルションがアクリルエマルションである第(1)項、第(2)項又は第(3)項記載の樹脂含有紙、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂含有紙は、中間層及び両外層部の抄合わせにより抄紙され、中間層に樹脂を内添し、外層部に樹脂を含浸してなるものである。
本発明において、中間層に使用する繊維は木材パルプ、非木材パルプなどの天然繊維を使用することができる。これらの中で、木材パルプを特に好適に使用することができるが、目的とする紙質に応じて、使用する繊維及びそれらの配合を適宜選択することができる。
本発明において、中間層に内添する樹脂には、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)、塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル)樹脂などを使用することができる。これらの樹脂は、水性エマルションとして、紙料調成時に添加することができる。内添する樹脂は、水媒体中において、陽イオンに帯電している樹脂であれば、天然繊維に対しては自己定着する。また、陰イオンに帯電している樹脂は、定着剤を併用することにより天然繊維に定着することができる。更に、合成繊維等に対しても、定着助剤を併用することにより定着させることができる。中間層においては、繊維100重量部当たり内添樹脂5〜50重量部となるよう樹脂を内添することが好ましい。内添樹脂の量が繊維100重量部当たり5重量部未満であると、樹脂の内添効果が十分に発現しないおそれがある。内添樹脂の量が繊維100重量部当たり50重量部を超えると、十分に繊維に定着しなかったり、工程中のトラブルが生ずるおそれがある。本発明においては、中間層用の紙料に、さらに、紙力増強剤、定着助剤、サイズ剤などを添加することができる。
【0006】
本発明において、外層部に使用する繊維は木材パルプ、非木材パルプなどの天然繊維を使用することができる。これらの中で、木材パルプを特に好適に使用することができるが、目的とする紙質に応じて、使用する繊維及びそれらの配合を適宜選択することができる。外層部は、紙層を形成した後に樹脂含浸を行うことから、含浸時に紙力を保持する目的で、紙料調成時にメラミン系樹脂やエポキシ系樹脂などの湿潤紙力増強剤を内添することが好ましい。また、良好な樹脂の含浸性を得るために、外層部用の紙料にはサイズ剤を内添しないことが好ましい。
本発明の樹脂含有紙は、外層部に樹脂を含浸することによって得ることができる。外層部への樹脂の含浸は、抄紙工程中すなわちオン・マシン法により抄紙工程のサイズプレスなどで行うことができ、あるいは、いったん紙を巻き取ったのち、含浸機などを用いてオフ・ラインで行うことができる。外層部の含浸に用いる樹脂にはSBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)、塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル)樹脂などを目的に応じて、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの樹脂は、水性エマルション又は水溶液若しくは有機溶剤溶液として含浸することができるが、作業性、安全性等の点で、水性エマルション又は水溶液を使用することが好ましい。外層部においては、繊維100重量部当たり樹脂5〜100重量部となるよう樹脂を含浸することが好ましい。含浸樹脂の量が繊維100重量部当たり5重量部未満であると、樹脂の含浸効果が十分に発現しないおそれがある。含浸樹脂の量が繊維100重量部当たり100重量部を超えると、紙としての特性が損なわれるおそれがある。本発明においては、含浸用の樹脂液に、さらに、サイズ剤、ワックス、架橋剤、着色剤、消泡剤などを添加することができる。
【0007】
本発明の樹脂含有紙は、3層以上の抄合わせにより形成することができる。すなわち、円網多層抄紙機、円網・短網コンビネーション型抄紙機、円網・長網コンビネーション型抄紙機、長網多層抄紙機などを用いて、中間層と両外層部の抄合わせを行う。中間層は1層とすることができ、あるいは、2層、3層などとすることができる。その場合、樹脂含有紙は、両外層部を含めて、4層、5層抄きなどとなる。
本発明の樹脂含有紙の厚み構成は、中間層を極力厚くし、外層部を極力薄くすることが好ましい。中間層を厚くし、外層部を薄くすることにより、含浸時の樹脂の浸透性が良好となり、未含浸を防止することができる。
本発明の樹脂含有紙の製造においては、プレスパート及びドライヤーパートにおいて、外層部に樹脂を含浸する前は樹脂を内添した中間層が樹脂を含まない外層部で覆われているため、また、外層部に樹脂を含浸した後は含浸する樹脂の量やその濃度を抑えることができるため、樹脂によるウェットプレスでの毛布の汚れや、乾燥時のドライヤーの汚れが発生するおそれがない。
図1は、本発明の樹脂含有紙の製造設備の一態様の説明図である。本設備は、1台の長網1と4台の丸網2とを有する抄紙機である。長網1で1層目を形成し、丸網2にて2層目以後形成し、この抄紙機では5層まで形成できる。樹脂を内添した中間層は、樹脂を含まない外層部で覆われているために、プレスパートやドライヤーパートにおいて設備の汚れが発生するおそれがない。中間層及び両外層部が抄合わされた紙は、サイズプレスにおいて外層部に樹脂が含浸され、さらに表面が乾燥されたのち、ワインダーにより巻き取られる。
【0008】
図2は、サイズプレス近傍の拡大図である。サイズプレスの2本のロール3の間を、中間層4と両外層部5が抄合わされた紙が通過し、2本のロールの上に貯められた含浸樹脂液6が外層部に含浸する。2本のロールのうち、1本はストーンロールとし、他の1本はゴムロールとすることが好ましい。
以上、オンマシンでの製造で説明したが、両外層部は樹脂を含浸しない状態で抄紙し、両外層部は、コーターや含浸機により樹脂を含浸することもできる。中間層にサイズを効かすことで外層から含浸してきた樹脂液は反対面にぬけることはなく、通常のロールコーターやナイフコーター等で片面ずつ処理ができ、特に含浸機が無くとも樹脂含浸紙が製造できる。また、含浸機を使用した場合でも、含浸が難しい中間層にすでに樹脂が内添により存在するため、両外層部のみ樹脂を含浸すればよく、確実にしかも効率的に樹脂含浸紙を製造することができる。図3は、本発明の樹脂含有紙の一態様の断面図である。本態様の樹脂含有紙は、樹脂を内添した中間層4の両側に、樹脂を含浸した外層部5が抄合わされた構造となっている。図4は、本発明の樹脂含有紙の他の態様の断面図である。本態様の樹脂含有紙は、樹脂を内添した中間層4が3層の抄合わせにより形成され、その両側に樹脂を含浸した外層部5が抄合わされた構造となっている。
本発明の樹脂含有紙は、中間層に樹脂を内添するので、中心部に未含浸を生ずるおそれがない。また、中間層に内添する樹脂と、外層部に含浸する樹脂を異なるものとし、さらに樹脂含有量を異なるものとすることができるので、中間層と外層部をそれぞれ樹脂の特性及び含有量に応じて独立して改質することができる。例えば、中間層に内添する樹脂により、引張、層間、耐折、引裂、破裂などの諸強度を向上し、外層部に含浸する樹脂により、耐水性、耐熱性、耐薬品性、耐老化性などの表面特性を改良し、さらに、風合の改善、伸縮性の改善、透明感付与、ヒートシール性付与、発塵性の改善などの新機能を付与することができる。従来より行われてきた一般的な樹脂内添や含浸によっては、紙質の改良は紙層全体に施され、紙の内部と外部を独立して改質することは不可能であった。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
中間層として、木材パルプ(NBKP/LBKP=5/95)100重量部に対し、カチオン性アクリルエマルション[商品名:ボンコートSFC−65、大日本インキ化学工業(株)製]を固形分で10重量部、乾燥紙力増強剤[商品名:ポリストロン191、荒川化学工業(株)製]を固形分で0.7重量部内添した紙料を調成した。また、外層部として、木材パルプ(NBKP/LBKP=20/80)100重量部に対し、ポリアミドエポキシ樹脂[商品名:スミレーズレジン675、住友化学(株)製]を湿潤紙力増強剤として固形分で0.5重量部添加した紙料を調成した。
円網・長網コンビネーション型抄紙機を用い、中間層が150μmとなり、両外層部が各75μmとなるよう3層を抄合わせ、サイズプレスにおいて、両外層部にアクリル系エマルション[プライマルB−15、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製]を外層部の繊維100重量部に対し固形分で15重量部となるよう含浸して、厚さ300μmの樹脂含有紙を得た。
外層部への樹脂の含浸性は良好であった。また、この樹脂含有紙をBokenstain鑑別液(財団法人日本紡績検査協会)で染色し、目視により観察したところ、樹脂含有紙は全体に均一に樹脂を含有していた。
実施例2
中間層として、木材パルプ(NBKP/LBKP=30/70)100重量部に対し、カチオン性アクリルエマルション[商品名:ポリゾールAM−2388、昭和高分子(株)製]を固形分で15重量部、乾燥紙力増強剤[商品名:ポリストロン191、荒川化学工業(株)製]を固形分で0.7重量部内添した紙料を調成した。また、外層部として、木材パルプ(NBKP/LBKP=20/80)100重量部に対し、ポリアミドエポキシ樹脂[商品名:スミレーズレジン675、住友化学(株)製]を湿潤紙力増強剤として固形分で0.5重量部添加した紙料を調成した。
円網・円網多層抄紙機を用い、中間層が100μm、150μm及び100μmの3層となり、両外層部が各75μmとなるよう5層を抄合わせ、サイズプレスにおいてNBR系エマルション[商品名:ラックスターDN703、大日本インキ化学工業(株)製]を外層部の繊維100重量部に対し、固形分で30重量部となるよう含浸して、厚さ500μmの樹脂含有紙を得た。
外層部への樹脂の含浸性は良好であった。また、この樹脂含有紙をBokenstain鑑別液(財団法人日本紡績検査協会)で染色し、目視により観察したところ、樹脂含有紙は全体に均一に樹脂を含有していた。
比較例1
木材パルプ(NBKP/LBKP=20/80)100重量部に対し、ポリアミドエポキシ樹脂[商品名:スミレーズレジン675、住友化学(株)製]を固形分で0.5重量部内添した紙料を調成した。
円網・長網コンビネーション型抄紙機を用い、中間層が150μmとなり、両外層部が各75μmとなるよう3層を抄合わせ、サイズプレスにおいて、アクリル系エマルション[プライマルB−15、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製]を繊維100重量部に対し固形分で20重量部となるよう含浸して、厚さ300μmの樹脂含有紙を得た。
外層部への樹脂の含浸性は良好であったが、この樹脂含有紙をBokenstain鑑別液(財団法人日本紡績検査協会)で染色し、目視により観察したところ、中心部に未含浸部が存在していた。
【0010】
【発明の効果】
本発明の樹脂含有紙は、樹脂内添を行った中間層の両側に外層を形成し、外層部に樹脂含浸を行うので、特に厚さの厚い紙においても、未含浸部を生ずることがなく紙層全体に樹脂を含有させることができる。また、中間層と外層部の樹脂の種類及び含浸量を独立して調整することができるので、樹脂含有紙の中間層の物性と外層部の物性をそれぞ独立して改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の樹脂含有紙の製造設備の一態様の説明図である。
【図2】図2は、サイズプレス近傍の拡大図である。
【図3】図3は、本発明の樹脂含有紙の一態様の断面図である。
【図4】図4は、本発明の樹脂含有紙の他の態様の断面図である。
【符号の説明】
1 長網
2 丸網
3 ロール
4 中間層
5 外層部
6 含浸樹脂液
Claims (4)
- 天然繊維からなる中間層及び天然繊維からなる両外層部の抄合わせにより抄紙された樹脂含有紙であって、該中間層は紙料調成時に水性エマルションとして樹脂を繊維100重量部に対して内添樹脂5〜50重量部を内添してなり、該外層部は抄合わせ後のサイズプレス工程又は紙を巻き取った後に、水性エマルション若しくは水溶液として樹脂を外層部に、樹脂含浸量が繊維100重量部に対し5〜100重量部の比率で含浸させてなり、かつ、中間層及び外層部に含浸させる樹脂が、SBR、NBR、MBR、塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂又はEVA樹脂であって、中間層に含浸させる樹脂と外層部に含浸させる樹脂が相違することを特徴とする樹脂含有紙。
- 中間層が、2層以上の抄合わせによりなる請求項1記載の樹脂含有紙。
- 中間層の樹脂含有量と外層部の樹脂含浸量が異なるものである請求項1又は請求項2記載の樹脂含有紙。
- 中間層に内添する水性エマルションがアクリルエマルションである請求項1、請求項2又は請求項3記載の樹脂含有紙。
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