JP5249820B2 - 表裏面色の異なる多層抄き紙 - Google Patents

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本発明は多層抄き紙に関し、更に詳細には、表裏面のどちらか片面に印刷や染料・顔料による濃色の染色が行なわれた表裏面色の異なる多層抄き紙であり、染色した染料・顔料が、反対面へ染み出しや色抜けすることなく、美粧性に優れる多層抄き紙に関する。
手提げ袋、角底袋等のショッピング用途としての包装資材、あるいは封筒等にはクラフト紙が使用されている。近年、このようなクラフト紙等の包装紙は、中身の保護だけでなく、ファッション性、機能性を持ち合わせていることが望まれている。さらに、袋の内側が消費者に良好な印象を与えるような包装紙外観の綺麗なものが求められている。このため、クラフト紙に美麗な印刷を施したり、あるいはクラフト紙の抄造時に予め、染料・顔料を添加又は塗工し、表裏面の色を変える、綺麗な色調、風合いにする等により、その目的を達成しようとしている。
しかしながら、クラフト紙の美粧性を高めるために、包装紙の外観になる面(印刷面)にベタ印刷部や濃色印刷部の多い印刷を施すと、このベタ印刷部や濃色印刷部が多ければ多い程、印刷が包装紙の印刷面の反対面から透けて見える、印刷インクが反対面に抜けるという現象が起こるため、包装紙としての価値が低下してしまう。
上述したような現象を防止するために、不透明度を高め、印刷の裏抜けを改善することが望ましい。一般に用紙の不透明度を高めるためには、紙中に填料を内添あるいは塗工することが行われるが、この場合、クラフト紙の強度が大幅に低下してしまう問題がある。クラフト紙は上述したように手提げ袋、角底袋、あるいは封筒等に用いられるため、破袋しない強度を有するのは勿論のこと、罫線割れや角割れ等を防止するための所定の強度を有することが必須である。このため、クラフト紙の紙中に填料を内添あるいは塗工することができず、一方の面が濃色であった(明度が低い)場合、反対面の明度を十分に上げる(淡色〜白色)ことができなかった。
また、手提げ袋や角底袋、封筒などの機能性を高めるため、耐水性、遮水性、保冷性、保温性等の機能が要求されてきている。
従来、手提げ袋などでは、耐水性、遮水性を必要とする場合、ラミネートフィルムを介在させた、ラミネート紙やポリサンドラミネート紙等が用いられている。
しかしながら、このようなラミネート紙は古紙へのリサイクルを試みた際、ラミネートフィルムの除去が困難であるため、古紙としてのリサイクルが困難であるという問題があった。
特許文献1では、少なくとも3層からなる多層抄き板紙の中間層に熱発泡性粒子を含有させることで、遮水性と保温性を有しながら、段ボールケースの原紙と使用可能な板紙が記載されている。しかしながら、表面と裏面の色を変更した場合の裏抜けの問題を回避することについては開示されていない。また、ファンシー調の風合いを持ち得ているものではない。
また、例えば特許文献2〜4等に示されるように、熱伝導率に係る空気層である発泡層を得るためには、嵩高剤を含有させる方法、嵩高な特性を持つ機械パルプや針葉樹パルプを含有させる方法、原料フリーネスを高くする方法、抄紙工程におけるプレス線圧やカレンダー線圧を低くする方法などがあるが、いずれの手段もパルプ繊維同士の絡み合いを弱くする、又は少なくするものであり、その結果、層間強度の低下を招き、製袋用多層抄きクラフト紙としての層間強度を確保できないという問題を生じる。また、特許文献1と同様に、ファンシー調の風合いを持ち得ているものではない。
特開2003−49400号公報 特開平11−200282号公報 特開2004−300587号公報 特開2000−262602号公報
本発明は上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、表裏面のどちらか片面に印刷や染料・顔料による濃色の染色が行なわれた表裏面色の異なる多層抄き紙であり、染色した染料・顔料が、反対面へ染み出しや色抜けすることなく、美粧性に優れる多層抄き紙を提供することである。特に多層抄きクラフト紙に好適に使用できる。
本発明は、表層と、裏層と、前記表層と前記裏層の間に配置された1層又は複数層の中間層とを有する多層抄き紙であって、前記表層と前記裏層は少なくとも一方が着色され、前記中間層のうち少なくとも1層が、パルプ及び発泡粒子を含有してなる発泡層であり、前記表層と前記裏層は色相が異なっており、前記表層と前記裏層の明度の差ΔLが30〜60であることを特徴とする多層抄き紙に関する。
好ましくは、前記発泡層のJISZ8722に準拠して測定した明度(L値)が55〜80であり、a値が−3〜6であり、b値が1〜25である。
好ましくは、前記発泡層において、前記パルプの固形分に対する前記発泡粒子の含有割合は固形分換算で1〜10質量%であり、前記発泡層はさらに熱溶融性繊維を含有しており、前記パルプの固形分に対する前記熱溶融性繊維の含有割合は固形分換算で1〜10質量%であり、前記多層抄き紙は、J.TAPPI No.18−2で規定する層間強度が75mJ以上であり、遮水率が81%以上である。
好ましくは、前記熱溶融性繊維がポリエチレンテレフタレートからなる。
本発明に係る多層抄き紙によれば、表層と裏層の明度の差が大きいにも関わらず、中層による遮蔽効果が高く、優れた美粧性を有する。すなわち、表層及び/又は裏層の表面に濃色の印刷や、染料・顔料による濃色の着色が施されているにもかかわらず、表層の色が裏層の表面に抜けることがなく、あるいは裏層の色が表層の表面に抜けることがなく、また、反対面の色の影響を受けない美粧性に優れた多層抄き紙を提供でき、特に多層抄きクラフト紙として好適に使用できる。
本発明に係る発泡板紙の層構成を示す概略断面図である。 本発明の変更例に係る発泡板紙の層構成を示す概略断面図である。 本発明の他の変更例に係る発泡板紙の層構成を示す概略断面図である。
本発明に係る多層抄き紙の実施形態について、以下、多層抄きクラフト紙として詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲においてその構成を種々に変更し得ることはいうまでもない。
本発明に係る実施形態の一つである多層抄きクラフト紙(以下、「本多層抄きクラフト紙」という。)10は、図1に示すように、着色表層11と、3層の中層12、13、14と、着色裏層15からなる5層の紙層で構成されている。また、本多層抄きクラフト紙10では、中層12、13がパルプと発泡粒子から構成された発泡層であり、当該発泡層は、発泡粒子懸濁液に予め1種以上のカチオン性高分子化合物を添加して発泡粒子を凝集させて発泡粒子凝集体を形成させ、当該凝集体を含む発泡粒子懸濁液を原料パルプに添加して得たパルプスラリーから抄紙される。
このように発泡粒子の凝集体を形成させた発泡粒子懸濁液を添加して中層12、13を発泡層とすることにより、遮水性、保冷性、保温性に優れると共に、遮蔽性にも優れた多層抄きクラフト紙を得ることができる。この中層の遮蔽性により、着色裏層が濃色であっても、着色した染料・顔料が表層へ染出すことなく、また、色抜けすることがなく、表層の美粧性を向上させることができる。
発泡層は、抄紙工程のワイヤーパート、プレスパートでパルプ繊維同士の絡み合いを確保した上で、乾燥工程で発泡粒子凝集体を発泡させることにより、優れた遮蔽隠蔽性を達成できるのであり、本多層抄きクラフト紙10の使用方法、要求品質において特に有用である。
カチオン性高分子化合物で予め発泡粒子を凝集させた後、原料パルプに添加することにより、発泡粒子の紙中での歩留まりが向上し、白水中に残存する発泡粒子を低減し、効率的に紙中に留まらせることで遮蔽隠蔽性を向上させることができる。
以下に、本多層抄きクラフト紙10に添加される発泡粒子の凝集体について説明する。
本多層抄きクラフト紙10の原料パルプに添加される発泡粒子の凝集体は、上述したように、発泡粒子懸濁液に予め1種以上のカチオン性物質を添加して発泡粒子を凝集させることにより形成される。
本発明における遮蔽隠蔽性のある発泡層を形成するためには、発泡粒子と、少なくとも1種のカチオン性高分子化合物と、水とにより構成される、発泡粒子凝集体を含む発泡粒子懸濁液の粘度が100〜300cpsであることが好ましく、より好ましくは130〜220cpsである。この粘度が100cps未満であると粘性が低く、発泡粒子の歩留りが悪化する傾向になり、目的とする隠蔽性のある発泡層を形成することが難しくなる。また、この粘度が300cpsを超えると、凝集性が強くなりすぎ、凝集体の形状が大きくなり、さらにパルプスラリーへの懸濁液添加の際に、微細繊維の凝集力も強くなり、ワイヤーパートでの脱水が悪化し、生産効率を低下させる傾向にあり、経済的でない。また、微細繊維の凝集力が強いために、抄紙時に地合いが悪化しやすく、地合いの悪化による色抜けが発生しやすくなる。
本多層抄きクラフト紙10は、この発泡粒子懸濁液をパルプスラリーに添加することにより、遮蔽隠蔽性の高い発泡層を得ることができ、本発明の目的を達成することができる。
また、前記発泡粒子懸濁液中の発泡粒子の濃度は5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜25質量%である。この濃度が5質量%未満であるとスラリーの粘性が低く、発泡粒子の凝集体ができないため、歩留が低下する。一方、この濃度が30質量%を超えると、粘性が高くなりすぎ、分散状態が悪く、粒状で配合されるため、本多層抄きクラフト紙10を製造した際に本発明の目的とする隠蔽性を達成しにくい問題がある。
また、発泡粒子(発泡粒子凝集体)は、中層12、13の各層のパルプ固形分に対して、固形分換算で1〜10質量%含有することが好ましく、より好ましくは2.1〜7質量%である。1層当りの発泡粒子の含有量が1質量%未満であると、発泡粒子の凝集体が発泡した状態であっても、発泡粒子間の距離が遠くなってしまうため、遮蔽隠蔽性に優れた発泡層(空気層)を得ることができず、裏面が濃色になった場合に十分な遮蔽隠蔽性を達成しにくい問題がある。また、遮水性、保冷性、保温性を付与することが難しくなる。一方、1層当りの発泡粒子の含有量が10質量%を超えても、本多層抄きクラフト紙10の遮水性、保冷性、保温性の向上は期待できず、製造コストが高くなるだけである。また、後述する熱溶融性繊維を配合しても、所定の層間強度を得ることが難しくなるため、本多層抄きクラフト紙10の層間強度が低下してしまい、本多層抄きクラフト紙10を製袋用途に加工する際の貼合・折加工時において、角割れ・折り不良等が発生しやすくなる傾向となる。
本多層抄きクラフト紙では、発泡粒子として、熱可塑性合成樹脂から構成された外殻内に低沸点溶剤が封入されてなる発泡粒子を使用することができる。
外殻を構成する熱可塑性合成樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体等を挙げることができる。
また、外殻内に封入される低沸点溶剤としては、例えば、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等を挙げることができる。
このような発泡粒子としては、例えば、松本油脂製薬株式会社製造の「マツモトマイクロスフェアF−20シリーズ」、「同F−30シリーズ」、「同F−36シリーズ」、「同F−46シリーズ」、「同F−48シリーズ」や、日本フィライト株式会社販売の「エクスパンセルWU」、「同DU」などを使用することができるが、本多層抄きクラフト紙10に使用する発泡粒子はこれらに限定されるものではない。
しかしながら、本多層抄きクラフト紙10においては、一般的に紙乾燥工程の温度が130℃程度であることが望ましいから、膨張開始温度が90〜140℃である低温膨張タイプの発泡粒子が好ましい。
発泡粒子は、外殻を構成する熱可塑性合成樹脂の軟化点以上に加熱され、同時に封入されている低沸点溶剤が気化し蒸気圧が上昇し、外殻が膨張して粒子が膨張する。膨張後は、内圧と殻の張力・外圧が釣り合って膨張状態が保持される。
発泡粒子は、一般的にはこの状態まで膨張させ、軽量化剤、嵩高化剤、クッション剤、断熱剤などとして利用されている。この膨張状態の発泡粒子にさらに熱を加えて、過剰に熱を加えた場合には、膨張して薄くなった殻からガスが透過拡散し、内圧よりも殻の張力・外圧が大きくなってしまい、発泡した粒子が収縮してしまう。
発泡粒子の平均粒子径は5〜30μmであることが好ましい。5μm未満であると、十分な発泡層が得られない。また、30μmを超えると発泡粒子の粒径が大きくなり過ぎ、均一な発泡層が得られない。発泡粒子の平均粒子径は、光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。このような測定装置としては、コールター社製レーザー回折・光散乱粒度測定装置LS230,LS200,LS100、また島津製作所製レーザー回折式粒度分布装置SALD2000,SALD3000、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布装置LA910,LA700,LA600などが挙げられる。
本多層抄きクラフト紙10に使用される発泡粒子は、乾燥工程でドライヤーにより発泡させるが、上記理由により、上述したように膨張開始温度が90〜140℃の低温膨張タイプの発泡粒子を用いることが好ましい。特にF−48シリーズが好ましい。すなわち、膨張開始温度が90℃未満の発泡粒子であると、乾燥工程のドライヤーにより発泡させた場合、上述したように一旦膨張した粒子が再び収縮してしまい、中層を熱伝導率に係る空気層とすることが難しくなる。
また、本多層抄きクラフト紙10に用いられるカチオン性高分子化合物としては、カチオン性を示す電解質のものであれば、特に限定されるものではなく、例えばポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン系、ポリジアリルメチルアミンエピクロルヒドリン系、グリオキザール系、カチオン性ポリアクリルアミド系、ポリエチレンイミン系、及びポリアミン系の水溶性樹脂等、種々のものを用いることができる。これらの中でも特にカチオン性ポリアクリルアミド系、ポリアミンポリアミドエポクロルヒドリン系が好ましく、より好ましくはカチオン性ポリアクリルアミド系が良い。
また、本多層抄きクラフト紙10に使用できるカチオン性高分子化合物は、分子量が100万〜1200万のものが好ましく、より好ましくは300万〜1000万のものである。
また、本発明における遮蔽隠蔽性を形成させるためには、発泡粒子を効果的に凝集させるために、パルプ固形分に対して、カチオン性高分子化合物を固形分換算で0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%、となるように、予めカチオン性高分子化合物と発泡粒子を混合して形成した発泡粒子凝集体を含有する発泡粒子懸濁液にして添加することが好ましい。カチオン性高分子化合物の含有量が0.1質量%未満であると発泡粒子の歩留りが悪くなり、発泡層を本願の所望とする遮蔽隠蔽性のある発泡層とすることができず、一方、カチオン性高分子化合物の含有量が2質量%を超えると、凝集効果が高くなりすぎ、フロックの分散が悪くなり、裏面を遮蔽する均一な地合いを形成し辛くなる。なお、カチオン性高分子化合物としては、紙力剤であるハリマ化成株式会社製RB−33を用いることができる。
また、本多層抄きクラフト紙10には、カチオン性高分子化合物として、凝集剤を用いることもでき、この凝集剤としては伯東株式会社製のハクトロンKC100を用いることができる。
カチオン性高分子化合物として、具体的には、ハクトロンKC100とRB−33を用いることができる。
また、本発明における遮蔽隠蔽性を形成させるためには、上述した発泡粒子懸濁液に硫酸バンドを添加し、発泡粒子懸濁液の粘度を100〜300cpsに調整することが好ましく、130〜220cpsに調整することがより好ましい。
硫酸バンドの添加量は、発泡粒子懸濁液に対し、0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。粘度が100cps未満であると粘性が低く、発泡粒子の歩留りが悪化する傾向になり、目的とする隠蔽性のある発泡層を形成することが難しくなる。また、この粘度が300cpsを超えると、凝集性が強くなりすぎるため、懸濁液をパルプスラリーへ添加した際に、微細繊維をも凝集させ、地合いが悪化しやすく、地合いの悪化による色抜けが発生しやすくなる。
1〜10質量%の発泡粒子を効果的に凝集させるために、パルプ固形分に対して、カチオン性高分子化合物を固形分換算で0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%、となるように、予めカチオン性高分子化合物と発泡粒子を混合して形成した発泡粒子凝集体を原料パルプに含有させる。
また、本多層抄きクラフト紙10には、少なくとも1層の中層(本実施形態においては中層12、13)の原料パルプに熱溶融性繊維を混抄させて含有させてもよい。
本多層抄きクラフト紙10は多層抄きのクラフト紙であるので、中層12、13のみに熱溶融性繊維を含有させて、抄紙工程で中層12、13の熱溶融性繊維を溶融させながら製造することができる。
なお、熱溶融性繊維は中層12、13だけではなく表層11にも混抄することが考えられるが、熱溶融性繊維を表層11に混抄すると、ドライヤーパート等において、熱溶融性繊維がドライヤーロールや、用具等に付着するおそれがあるため、中層12、13のみに混抄するのが好ましい。また、裏層15に熱溶融性繊維を混抄した場合も、紙表面の溶融した熱溶融性繊維がドライヤーロール等に付着してしまうため好ましくない。
熱溶融性繊維は、中層12、13の各層のパルプ固形分に対して好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%、最も好ましくは4〜7質量%含有される。熱溶融性繊維の含有量を1質量%以上とすることにより、層間強度向上の効果が得られる。また10質量%以下とすることにより、必要以上に紙の硬さを上げることなく耐罫線割れ適性を保つことができる。
熱溶融性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系繊維、ポリエチレン(PE)系繊維、EVA系繊維、ビニロン系繊維、PVA系繊維、アラミド系繊維、炭素繊維、レーヨン系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ガラス系繊維など種々のものが知られている。
しかしながら、本多層抄きクラフト紙10においては、発泡粒子との接着性、パルプ繊維との接着性、原料パルプ中に混合して抄紙できること、抄紙機の乾燥工程で適切に溶融し発泡粒子、パルプ繊維と接着すること及び遮蔽隠蔽性などの点から、PET、ビニロン、PE、EVA、PVAなどを主原料とする熱溶融性繊維を用いることが好ましく、これらの中でも特にPET繊維、PVA繊維を主原料とする熱溶融性繊維が、発泡粒子の発泡を阻害することなく、均一な遮蔽隠蔽性のある発泡粒子の発泡層を形成するのでより好ましい。
熱溶融性繊維の溶融温度としては、繊維表面の溶融温度が90〜130℃であるものが好ましい。具体的には、ソフィットN720/クラレ製、TJ04CN/帝人製、ビニロンバインダーSML/ユニチカ製、EA−CHOP/チッソ製、エステル4080/ユニチカ製、NBF/ダイワボウ製などが好適に使用できる。
このように、本多層抄きクラフト紙10は、少なくとも1層の中層の原料パルプ中に、一般紙では使用しない発泡粒子を凝集体として含有させことによって、はじめて、遮蔽隠蔽性のある発泡層を得ることができ、裏面層が濃色であっても表層の明度の高い本多層抄きクラフト紙を得ることができる。また、遮水性、保温性、保冷性に優れるという品質を満足させることができるのである。
本多層抄きクラフト紙10に使用される原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、等木材繊維を含む主原料として、化学的に処理されたパルプ、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等非木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを柔らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ及びクラフトパルプ、セミケミカルパルプ、酵素漂白パルプを含むオフィス上物古紙を脱墨、漂白したパルプ、牛乳パック古紙上質断裁落ち古紙、コート断裁落ち古紙、上白、特白、中白等未印刷、地券、新段、新聞、クラフト封筒、模造、雑誌の古紙から得られる回収パルプ等があげられる。
本多層抄きクラフト紙10の表層11に使用される原料パルプとしては、上述した公知の種々のものを用いることができるが、印刷適性を損なわず、また、製袋加工適性としての耐罫線割れ適性及び折り曲げ適性を維持するという目的を損なわない範囲で、古紙パルプを可能な限り多く配合することができる。
なお、本多層抄きクラフト紙10の中層12、13に使用される原料パルプとしては、上述した公知の種々のものを用いることができ、本多層抄きクラフト紙10の中層12、13に、古紙パルプ100%から成る原料パルプが使用されても発泡粒子の膨張と隠蔽性に影響を与えることなく層間強度を維持できる。
しかしながら、古紙パルプが100%配合されたものであると、微細繊維の多さから濾水性が悪くなり、生産スピードが落ちること、また、本発明の目的である製袋用クラフト紙としての強度を維持するため、中層12、13の原料パルプには、NBKPを50%配合することが好ましい。
また、中層14及び裏層15に使用される原料パルプとしても上述した公知の種々のものを用いることができるが、耐水性能を損なわず、本多層抄きクラフト紙10の強度を維持するという目的を損なわない範囲で、古紙パルプを可能な限り多く配合することが、エネルギー原単位や環境に与える負荷の軽減の点で、またコスト的にも有利であるので好ましい。
本多層抄きクラフト紙10では、離解後フリーネスが250〜480ccであることが好ましく、280〜320ccであることがより好ましい。離解後フリーネスが250cc未満であると、引裂強度が低くなりクラフト紙の強度が得られにくくなる。また、離解後フリーネスが480ccを超えると、抄紙性が悪く操業性の低下が問題となる場合がある。
また、本多層抄きクラフト紙10を層毎に剥離して得た表層、裏層、中間層について、中間層の離解後フリーネスが、表層の離解後フリーネス及び裏層の離解後フリーネスよりも30cc以上、好ましくは40cc以上大きいことが好ましい。表裏層に比べて中間層は発泡粒子の影響により繊維間結合力が低く、強度低下を防ぐために中間層のフリーネスを表層や裏層に比較し高くすることが好ましい。
本多層抄きクラフト紙10の中層14、裏層15は本多層抄きクラフト紙10を製袋用用途として封筒に加工する際の良好な耐罫線割れ、表面強度を確保する等の役割を行う層である。中層14、裏層15は同じ原料から構成される。
さらに、本多層抄きクラフト紙10は、水分が多く出る冷凍食品等の包装やショッピング用途で使われる手提げ袋の雨天時における耐水性を保持することが好ましい。
このような耐水性を付与するために中層14、裏層15の各層の原料パルプに対して、サイズ剤を固形分換算で好ましくは0.3〜1.5質量%、より好ましくは0.6〜1.5質量%添加して、JIS−P8140に基づいて測定した吸水度を30〜80g/mに調整することが好ましく、より好ましくは30〜50g/mである。この吸水度が30g/m未満であると、製袋時の貼合時の接着性が悪くなり、特殊な接着剤が必要となると共に、本多層抄きクラフト紙10を古紙としてリサイクルする際にも溶解性が悪くなる傾向がある。さらに、操業性が悪くなると共に、製造コストが高くなる。一方、吸水度が80g/mを超えると、製袋加工時の接着剤が中層14、裏層15の紙層内に浸透してしまい、接着剤の塗布量が増えコストアップとなるだけでなく、紙に水分が浸透しやすく破れやすくなる。
また、本多層抄きクラフト紙10の各層の原料パルプには、耐油剤、定着剤、サイズ剤、澱粉、填料、消泡剤、紙力増強剤、防滑剤、pH調整剤等を含有してもよい。
なお、遮水性の観点から、本多層抄きクラフト紙10の紙表面のpHを約4〜5付近とすることが好ましい。紙のpHが中性域になるとサイズ剤の効きが悪くなり、表面からの水の浸透が早くなり遮水性が悪くなる。
上述した原料パルプを用い、公知の抄紙工程、例えばワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、サイズプレス、カレンダーパートなどを経て、本多層抄きクラフト紙10が製造される。
本発明における表層及び/または裏層への着色は、表層や裏層の原料パルプに公知のアニオン性直接染料、カチオン性染料、塩基性染料などの染料、あるいは顔料などを用いて着色することができる。あるいは、印刷インクにより着色することもできる。
アニオン性直接染料は、元来セルロース繊維染色の目的に作られたもので、中性塩を含む染浴から直接にセルロース繊維に染着する。化学構造からみると、アゾ、スチルベン、チアゾール、ジオキサジン、フタロシアニン等に分けられる。アニオン性直接染料としては、アゾ基(−N=N−)を発色団として持つアゾ染料からなるものが一般的であるが、任意のアニオン性直接染料を用いることができる。カチオン性直接染料とは、発色団の末端がカチオン基になったもので、例えば、分子中にスルホン基、フェノール性水酸基、カルボキシル基などをもち、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩の形となった分子構造の染料である。顔料としては、水や油に不要なものの総称で無機顔料、有機顔料、レーキ顔料があり、これらのものを用いることができる。
本多層抄きクラフト紙10は、上述したような表層11、中層12、13、14、及び裏層15の原料パルプが抄紙機によって順に積層されて製造される。すなわち、本多層抄きクラフト紙10は、図1に示すように、抄紙機で、表層11の表面上に中層12が積層され、中層12の表面上に中層13が積層され、中層13の表面上に中層14が積層され、中層14の表面上に裏層15が積層されて形成される。なお、抄紙機の型式によっては、この逆の順に積層される場合もある。抄紙機も特に限定されるものではないので、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等の公知の種々の抄紙機を使用することができる。
本多層抄きクラフト紙10の坪量は、使用目的等によっても変化するが、120〜300g/mであることが好ましく、より好ましくは130〜200g/mである。この坪量が120g/m未満であると、色透けの懸念がある。一方、この坪量を300g/mより大きくしても、紙袋用途としては過剰品質となると共に、製造コストが高くなるだけである。
また、遮蔽隠蔽性の高い発泡層である中層12、13の合計坪量は25〜80g/mであることが好ましく、より好ましくは30〜70g/mである。遮蔽隠蔽性の高い発泡層である中層12、13の合計坪量が25g/m未満であると所定量の発泡粒子を配合しても、発泡層の厚さが薄いため、本多層抄きクラフト紙10に望ましい遮水性を付与することができない場合がある。また、遮蔽隠蔽性の点で劣る傾向にあり、裏面が濃色であっても表層の明度の高い本多層抄きクラフト紙を得ることが難しくなる。一方、中層12、13の合計坪量が80g/mを超えると、遮水性を付与するという点では優れるものの、クッション性が高くなり、製袋加工時の折り目が入りにくくなる問題がある。なお、発泡層である中層12、13以外の層の坪量を大きくすることも可能であるが、製造コストが高くなる等の問題が発生するので実用的でない。
また、表層11の合計坪量、又は、発泡層以外の中層14と裏層15の合計坪量は、本多層抄きクラフト紙10の層構成や他の各層の坪量によっても変化するが、25〜45g/mとすることが好ましい。25g/m未満では、均一な地合の紙が得にくく、美粧性に劣るものとなる。一方、45g/mを超えても見栄えは変わらず、着色するための染料が多く必要になりコストの向上となる。
また、本多層抄きクラフト紙10の表層11と裏層15の明度の差ΔLは、30〜60であり、好ましくは40〜60である。表裏の明度差が、30未満であると中層が高い隠蔽性を示す必要はなくなる。逆に60を超えると表層又は裏層が中層の色調の影響を大きく受け美粧性が低下する。
本多層抄きクラフト紙10の中層の色調(Lab値)は、L値が55〜80、a値が−3〜6、b値が1〜25が好ましい。以上の範囲では中層による遮蔽隠蔽効果が高くなり、美粧性に優れた多層抄きクラフト紙が得られる。L値が55未満であると表裏の明度差ΔLを30以上にすることが困難となる。L値が80を超えるとコストが高くなる。また、過剰品質となり必要ない。
また、本多層抄きクラフト紙10の発泡後の密度は0.5〜0.75g/cmとすることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.7g/cmである。密度が0.5g/cm未満であると、本多層抄きクラフト紙10は遮水性には優れるものの、熱溶融性繊維を含有させたとしても、層間強度が弱く、所望の効果を奏することができない。一方、密度が0.75g/cmを超えると、遮蔽隠蔽性の点で問題が発生する。また、遮水性の効果が低く、本発明の課題を解決することが難しくなる。
また、本多層抄きクラフト紙10の表層11には印刷が施されることが多いので、表面強度を向上させたり、滑り性を調整したりするために、必要に応じて、本多層抄きクラフト紙10の表層11の表面に水溶性物質を主成分とした塗工液を塗工することが好ましい。
このような水溶性物質としては、例えばポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉、加工澱粉、ポリスチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル系等のラテックス、ワックスエマルジョン等、この分野で通常用いられる公知の種々のものを単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。なお、水溶性物質の片面当たり塗工量を0.5〜3.5g/m、より好ましくは0.7〜2g/mとすることで良好な印刷適性を得ることができる。
また、塗工装置を用いて本多層抄きクラフト紙10の表面上に顔料とバインダを主成分とする塗工液を塗工すればより一層綺麗な印刷が可能となる。
さらに、本多層抄きクラフト紙10の表面に平滑化処理を施しても良い。この平滑化処理は、例えば加圧可能なロール間で本多層抄きクラフト紙10を加圧処理することにより実施することが好ましい。
平滑化処理を施す際に、本多層抄きクラフト紙10の表層11の表面に接するロールは平滑な表面を有し、加熱可能な金属製ロールであることが好ましい。なお、本多層抄きクラフト紙10における平滑化処理は、上記の平滑化処理の他、本多層抄きクラフト紙10を抄紙する過程で、例えば一対の金属ロールを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(マシンカレンダーによるカレンダー処理)、金属製ロールと樹脂製ロールとを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(ソフトカレンダーによるカレンダー処理)、ヤンキードライヤーによる乾燥処理等により実施することもできる。
上述したように構成された本多層抄きクラフト紙10は、J.TAPPI No.18−2に基づく層間強度が75mJ以上であることが好ましい。層間強度が75mJ未満であると、このような本多層抄きクラフト紙が製袋用として加工された際、所定の強度を維持することができず、角底袋やショッピング用バック・封筒としての役割を果たすことが難しくなる。
また、本多層抄きクラフト紙10は、後述する遮水性試験方法により測定された遮水率が81%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。この遮水率が81%未満であると、表層11が24時間以上水分と接した場合、表層11に吸収された水分が中層12、13を透過し、さらに中層14、裏層15も透過し、袋の内面にまで浸透してしまう。この結果、袋の外観が低下し、ショッピング用途として必要な美粧性等の価値が低下してしまう。また、表層11がさらに長時間水分と接した場合、袋の強度が低下してしまい、ショッピング用途等の手提げ袋としての役割を果たせなくなってしまう。
本多層抄きクラフト紙10は、表面強度が10〜16Aであることが好ましい。表面強度が10A未満であると、印刷適性が劣る。16Aを超えると、過剰品質となり経済性の面でよくない。
以上、本多層抄きクラフト紙10について、図1に示すとおり紙層が表層11、中層12、13、14、裏層15の5層の紙層から成る場合について説明したが、本発明に係る多層抄きクラフト紙はこのような紙層構成に限らず、例えば図2に示すような4層の紙層から成る多層抄きクラフト紙20、図3に示すような3層の紙層から成る多層抄きクラフト紙30であっても良い。
すなわち、図2に示す多層抄きクラフト紙20は、表層11、遮水性が付与された遮蔽隠蔽性のある発泡層である2層の中層12、13、及び1層の裏層15の4層の紙層から構成されている。このように中層を発泡層のみから構成しても、本発明の所望とする効果が付与された多層抄きクラフト紙を得ることができる。また、図3に示す多層抄きクラフト紙30は、表層11、遮水性が付与された遮蔽隠蔽性のある発泡層である1層の中層12、及び1層の裏層15の3層の紙層から構成されている。このような構成としても、本発明の所望とする効果が付与された多層抄きクラフト紙を得ることができる。なお、本発明に係る多層抄きクラフト紙は、この他、中層の層数を増やして6層、7層・・・の紙層としても良く、この場合は、中層の少なくとも1層が、遮水性が付与された遮蔽隠蔽性のある発泡層であれば、本発明の所望とする効果を得ることができる。
また、本多層抄きクラフト紙10が製袋加工される場合について説明したが、本多層抄きクラフト紙10は、表層11が内面となり、裏層15が外面となるようにして製袋加工をすることができる。これにより、紙製容器等に加工適性を有しながら、本発明の所望とする裏層(外面)が濃色であっても表層(内面)の明度の高い本多層抄きクラフト紙を得ることができる。
本発明に係る本多層抄きクラフト紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る22種類の多層抄きクラフト紙(これを「実施例1」ないし「実施例2」とする)と、これらの実施例1ないし実施例22と比較検討するために、1種類の多層抄きクラフト紙(これを「比較例1」とする)を表1に示すような構成で作製した。
[実施例1]
<1>表層11及び裏層15
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量%とを配合した後に、フリーネスを300ccに調整した表層用の原料パルプに、硫酸バンドを0.5質量%、サイズ剤(商品名:R−22、近代化学株式会社製)を固形分換算で1質量%、乾燥紙力増強剤(商品名:ハーマイドRB−33、ハリマ化成株式会社製)を固形分換算で0.5質量%添加して表層及び裏層用の原料スラリーを調製した。
<2>中層12、13[発泡層]
NBKP50質量%と、LBKP40質量%と、機械パルプ10質量%とを配合して成るクラフト古紙パルプ100質量%を溶解し、フリーネスを350ccに調整した中層12及び13用の原料パルプに、硫酸バンドを0.2質量%、サイズ剤(商品名:R−22、近代化学株式会社製)を固形分換算で0.5質量%、乾燥紙力増強剤(商品名:ハーマイドRB−33、ハリマ化成株式会社製)を固形分換算で0.7質量%、熱溶融性繊維(クラレ社製ソフィットN720)を4質量%添加し、中層12、13の原料スラリーを調製した。
別途、発泡粒子(商品名:マツモトマイクロフェアー F−48、松本油脂製薬株式会社製)のスラリー液に、カチオン性高分子化合物(商品名:ハーマイドRB−33、ハリマ化成株式会社製)を予め混合して、発泡粒子を凝集させ粘度190cpsの発泡粒子懸濁液を作製した。上記で調製した中層12、13用の原料スラリーに、発泡粒子がパルプの固形分に対して5.0質量%、カチオン性高分子化合物がパルプの固形分に対して0.4質量%となるように前記発泡粒子懸濁液を添加し、中層用のスラリーを調製した。
上記発泡粒子懸濁液は、水100質量部に対して、ハーマイドRB−33を2.4質量部、マツモトマイクロフェアーF−48を30質量部、硫酸バンド0.2質量部の割合で混合して得た。
これら表層11、中層12及び13、及び裏層15の原料スラリーに染料を添加し、表1記載の色調になるように調整し、円網4層抄紙機にて表層11、中層12及び13、及び裏層15を、表層の坪量が37g/m、中層12及び13の合計坪量が46g/m、裏層の坪量が37g/m、となるように抄き合わせ、抄紙機ドライヤーで乾燥させることで発泡粒子を発泡させ、クラフト紙全体の坪量が120g/mである4層抄きの多層抄きクラフト紙(実施例1)を得た。なお、ドライヤー表面の温度は約110℃であった。
[実施例2〜5]中層12及び13に添加される発泡粒子の含有量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例6〜9]カチオン性高分子化合物の含有量、及び懸濁液の粘度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例10〜13]硫酸バンドの含有量を表1に示すように変更し、懸濁液の粘度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例14]カチオン性高分子化合物として凝集剤(ハクトロンKC100、伯東株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例15及び16]表層11と裏層15の着色の度合いを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例17〜24]中層の着色の度合いを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例25〜28]熱溶融性繊維の含有量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例29]懸濁液に硫酸バンドを使用せず、懸濁液の粘度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
[実施例30]中間層用の原料パルプに発泡粒子(商品名:マツモトマイクロフェアー F−46、松本油脂製薬株式会社製)を、その含有量がパルプの固形分に対して5質量%となるように添加し、さらにこの発泡粒子の定着剤として、セラフィックスST(明成化学工業社製)を有姿100%として1質量%、ファイレックスM(明成化学工業社製)を有姿100%として2質量%添加した。さらに、熱溶融性繊維(クラレ社製 ソフィットN720)を4質量%添加した。この実施例においては、発泡粒子懸濁液を使用せず、中層原料パルプに上記の通り発泡粒子を添加した。以上のほかは、実施例1と同様にして多層抄きクラフト紙を得た。
[比較例1]発泡粒子、熱溶融性繊維を添加せず、中層を発泡層としなかったこと以外は、実施例1と同様にして得たクラフト紙である。
各実施例及び比較例において、発泡粒子懸濁液の粘度(cps)は、JIS−Z8803に記載の「液体の粘度−測定方法」に準拠して測定した。具体的には、本発泡粒子懸濁液を50ml容器に採取し、回転数60rpmの条件で1分間回転させ、B型粘度計(ブルックフィールド株式会社、型式:LVDV−E、単一円筒形回転粘度計)を用い、23℃において測定した。
表1中に記載のフリーネス及び坪量は、下記の手順に従い各試料の層剥離を行った後、下記の方法で測定した。
層剥離は以下の手順で行った。まず、各試料から得た各サンプルを室温の水に約1時間浸漬する。水に浸漬した各サンプルを、角を起点として10mmΦ程度の丸棒に巻き付けた後、丸棒を転がして各サンプルをしごく。この操作を各サンプルの四隅の全ての角を起点に繰り返し、各方向からサンプルにしごきの力を加える。これにより、各サンプルの層間の一部が剥離してくるので、これを利用して、表層11、中層12、13、及び裏層15に分離して層剥離を行う。層剥離を行った後、各サンプルの各層を熱風乾燥機などで十分に乾燥し、試験に使用した。
坪量は、JIS−P8142に記載の「紙及び板紙―坪量測定方法」に準拠して測定し、中層の坪量は中層12及び13の合計坪量の値である。
フリーネスは、JIS−P8220に準拠して離解した離解パルプについて、JIS−P8121(1995)に記載の「紙及び板紙−パルプのろ水度試験方法−カナダ標準ろ水度試験方法」に準拠して測定した値である。
これら全実施例及び比較例で製造した多層抄きクラフト紙の品質評価を以下の方法により行った。結果を表1に示す。
「裏明度濃色」及び「表明度淡色」とは、JIS−Z8722に準拠して表層と裏層それぞれにつき測定した明度(L値)であり、「表裏の明度差ΔL」とは、表層の明度と裏層の明度の差である。
「中層の色調L値、a値、b値」とは、中層について、JIS−Z8722に準拠して測定した明度(L値)、赤味(a値)、黄味(b値)である。なお、中層の試料は上述の層剥離手順に従って作成し、試験に供した。
「遮水率(%)」とは、下記の遮水性評価試験に基づいて測定した値である。すなわち、遮水性評価試験とは、まず、製袋用多層抄きクラフト紙である各試料の表層が容器内面となるように、4つの側面同士、及び側面と底面とに継目がないように折りたたみ、縦、横、高さが各15cmの容器を作製し、次に、この容器内に200ccの蒸留水を入れて、ポリエチレン製のシートで容器に蓋をし、20時間後に容器内の蒸留水をメスシリンダーに移し、蒸留水の残存量を測定して評価し、この蒸留水残存量から、製袋用多層抄きクラフト紙の遮水率(%)=〔蒸留水残存量/200cc〕を計測した。なお、この蒸留水は23℃±1℃に調整され、また、遮水性評価試験は、JIS−Z8703に記載の「試験場所の標準状態」に基づき、温度23℃±1℃、湿度50%±2%の条件下で行った。
「層間強度(mJ)」とは、J.TAPPI No.18−2に規定するインターナルボンドテスタ法により測定した値である。
「表面強度」とは、J.TAPPI No.1紙及び板紙−ワックスによる表面強さ試験方法に準拠して表層表面を測定し、紙表面の剥がれが発生しない最も高いワックス番号(A)を測定した値である。
「引裂強度」とは、JIS−P8116(2000)紙−引裂強さ試験方法に準拠して測定した値である。
「折り加工適性」は、以下の評価基準により評価した。用紙の幅方向3箇所から、幅方向20cm、流れ方向に25cmの大きさに裁断して短冊状の試験片3枚を得た。得られた試験片を105度の熱風乾燥機に20秒間入れて加熱処理した後、素早く幅方向の20cm辺同士を重ね合わせて、持具(25Aのパイプを15cmにカットしたもの)を用紙の幅方向にスライドさせて折り曲げ評価した。
◎:3mm未満の割れが1〜2個ある
○:3mm以上5mm未満の割れが1〜2個ある
△:3mm以上5mm未満の割れが3〜4個ある
×:5mm以上の割れが多数ある
「外観裏層の染み出し」は、10人の評価者を集め、表面から見た色が裏層の影響を受けて濁って見えるのか、見えないのかを官能試験で評価した。
◎:全く裏層の影響を受けていないと10人が判断した。
○:裏層の影響を受けていないと8人が判断した。
△:裏層の影響を受けていると5人が判断した。
×:裏層の影響を明らかに受けていると8人が判断した。
「発泡粒子残存量」とは、下記の白水中の発泡粒子残存量試験に基づいて目視にて判定した評価である。白水中の発泡粒子残存量試験とは、抄紙機にて抄造時の網下白水を採取したものをガラス製メスシリンダーに300cc入れ、ブフナーで東洋濾紙株式会社製No.2のろ紙上に残存粒子だけを取り除き、100〜130℃の乾燥機でろ紙を1分間加熱し、発泡粒子残存量を評価する試験である。なお、評価基準は下記の3段階とした。
(評価基準)
◎:ろ紙上に熱発泡性粒子が微量残存している。
○:ろ紙上に熱発泡性粒子が少量残存している。
×:ろ紙上に熱発泡性粒子が多量に残存している。
Figure 0005249820
10、20、30 多層抄きクラフト紙
11 表層
12、13、14 中層
15 裏層

Claims (5)

  1. 表層と、裏層と、前記表層と前記裏層の間に配置された1層又は複数層の中間層とを有する坪量120〜300g/m 多層抄き紙であって、
    前記表層と前記裏層は少なくとも一方が着色され、
    前記中間層のうち少なくとも1層が、パルプ及び発泡粒子を含有してなる発泡層であり、
    前記中間層の坪量が25〜80g/m であり、
    前記発泡層において、パルプ固形分に対して、固形物換算で、カチオン性高分子化合物にて凝集された発泡粒子凝集体を1〜10質量%含有し、
    前記表層と前記裏層は色相が異なっており、前記表層と前記裏層の明度の差ΔLが30〜60であることを特徴とする多層抄き紙。
  2. 前記発泡層を形成するための、発泡粒子と、カチオン性高分子化合物と、水とにより構成される発泡粒子懸濁液の粘度が100〜300cpsである
    ことを特徴とする請求項1記載の多層抄き紙。
  3. 前記発泡層のJISZ8722に準拠して測定した明度(L値)が55〜80であり、a値が−3〜6であり、b値が1〜25である
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の多層抄き紙。
  4. 記発泡層はさらに熱溶融性繊維を含有しており、
    前記パルプの固形分に対する前記熱溶融性繊維の含有割合は固形分換算で1〜10質量%であり、
    前記多層抄き紙は、J.TAPPI No.18−2で規定する層間強度が75mJ以上であり、遮水率が81%以上である
    ことを特徴とする請求項1乃至3記載の多層抄き紙。
  5. 前記熱溶融性繊維がポリエチレンテレフタレートからなる、
    ことを特徴とする請求項1乃至記載の多層抄き紙。
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