JP3921071B2 - 竿体及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣竿を構成する竿体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
釣竿を構成する竿体は、軽量でかつ耐衝撃性,屈曲性等の機械的強度に優れるという特性が求められる。そこで、従来の釣竿の竿体は、例えば、炭素繊維,ガラス繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂を加工したもの(一般に「プリプレグ」と呼ばれる)を芯材に巻回して焼成して製造される。
【0003】
このプリプレグは一種類のものに限定されるものではなく、芯材の周方向に強化繊維が引き揃えられたプリプレグや、芯材の軸方向に強化繊維が引き揃えられたプリプレグ等があり、さらに、強化繊維自体の種類や弾性率を変えた様々なプリプレグもある。そして、これらを適宜選択し若しくは積層して竿体が製造されることになる。このように複数種のプリプレグを巻回し若しくは使い分けることによって、竿体の周方向及び軸方向の強度・剛性を良好なものとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
竿体の中でも、釣竿の最も穂先側に位置し、特に小径且つ肉薄の竿体である穂先竿は、肉厚かつ大径に加工される竿元側の竿体と異なり、複数種のプリプレグを何層にも積層して加工することは難しい。そこで、クロス方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグ(強化繊維を竿体の軸方向から±5〜90度の範囲で偏角する方向に配向させ、所定の角度範囲において重なり合いながら引き揃えたもの)を単一で用いて、これを芯材に巻回して小径かつ肉薄の穂先竿を製造することが多い。そして、ここでは、穂先竿全体の強度を維持するために、強化繊維は比較的強固なものが用いられている。
【0005】
しかし、このようなクロス方向のプリプレグのみで構成した穂先竿においては、以下のような問題点が指摘されてきた。
【0006】
即ち、竿体は焼成後に適当な軸方向長さとするために両端を切断加工するが、この際、クロス方向の強固な強化繊維のみからなる端部においては、切り落とした端部、特に、小径の穂先側端部の内周・外周面において繊維の剥離や割れが生じる場合がある。
【0007】
また、穂先竿の先端側には別途トップガイドや釣糸係止具等を接着固定することが多い。そこで、穂先竿の穂先側端部の内周面若しくは外周面を接着面とするためにブラッシングによる表面の「荒らし加工」等を行う必要がある。しかし、強固な強化繊維を用いているプリプレグでは、このような「荒らし加工」を施し難い。
【0008】
本発明の課題は、加工時の割れや剥離などを防止しえる簡易な竿体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1の竿体は、強化繊維に合成樹脂を含浸してなるプリプレグ素材からなるメインパターン及び補助パターンを積層して形成する竿体であって、クロス方向に炭素繊維が配向されたメインパターンを積層して形成される本体部と、本体部の穂先側端部において本体部の内周面に補助パターンを積層してなる内周層と、本体部の穂先側端部において本体部の外周面に補助パターンを積層してなる外周層と、内周層と外周層との間の前記本体部において、少なくとも1層以上介在する補助パターンからなる中間層とを備え、内周層,外周層及び中間層を構成する補助パターンは、ガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された一枚のプリプレグ素材からなる。
【0010】
この竿体では、竿体の穂先側端部の内周面及び外周面に補助パターンが積層されて内周層と外周層とが形成されており、補助パターンとして、周方向及び/又は軸方向にガラス繊維を配向させエポキシ樹脂等を含浸させたプリプレグ素材を用いることにより、内周面や外周面の割れや剥離などを抑えられる。また、内周面や外周面に対して部分的に行う「荒らし加工」も容易になる。
【0011】
さらに、この竿体では内周面及び外周面の間に補助パターンの中間層が介在しており、穂先側端部の切断加工も容易になり、また、穂先側端部の竿調子を良好なものとできる。なお、この内周層・中間層・外周層はそれぞれ一枚の補助パターンから構成されるので、製造時に一回の工程で容易に積層可能であり効率的である。
【0012】
発明2の方法は、強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を芯材に巻回して竿体を製造する方法であって、以下の工程を含むものである。まず、穂先側から順次竿元側ほど巻回幅が大きくなりクロス方向に炭素繊維が配向されたプリプレグ素材からなるメインパターンを準備し、メインパターンの穂先側部分の巻回幅より1周回分以上大きな巻回幅を有しガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された補助パターンを準備し、メインパターンの上に補助パターンを下端を揃えて積層し、下端側から芯材に補助パターン及びメインパターンを巻回して竿素材を得て、これを竿素材を焼成する。
【0013】
この方法は、プリプレグ素材を芯材に巻回する際に、予め、メインパターンの穂先側部分に補助パターンを積層しておき、両者を一体的に芯材に巻回するものである。ここでは、補助パターンは、穂先側部分において下端をメインパターンに揃えた状態でメインパターンより1周回分以上の巻回幅を有している。この方法ではメインパターンの上に補助パターンが積層されており、芯材に下端側からこれらのパターンが巻回されると、芯材に対する最内層として補助パターンが巻回されることになる。また、補助パターンの余剰部分が最外層にも巻回されることになる。さらに、中間層として補助パターンがメインパターンの間に介在することにもなる。このように、一回の作業で極めて簡易に穂先側に部分的に且つ最外層・最内層に補助パターンを積層させ得るのである。また、ガラス繊維は強度的には炭素繊維に劣るものの加工し易い素材であり、補助パターンとしてガラス繊維を所定の方向に配向したプリプレグ素材を用いることで、竿体の穂先側端部の加工が容易になる。
【0014】
発明3の方法は、強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を芯材に巻回して竿体を製造する方法であって、以下の工程を含むものである。即ち、穂先側から順次竿元側ほど巻回幅が大きくなりクロス方向に炭素繊維が配向されたプリプレグ素材からなるメインパターンを準備し、メインパターンの穂先側部分の巻回幅より1周回分以上大きな巻回幅を有しガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された補助パターンを準備し、補助パターンの上にメインパターンを下端を揃えて積層し、補助パターンの上端側から芯材に補助パターン及びメインパターンを巻回して竿素材を得、その上で、この竿素材を焼成する。
【0015】
この方法は、プリプレグ素材を芯材に巻回する際に、予め、メインパターンの穂先側部分に補助パターンを積層しておき、両者を一体的に芯材に巻回するものである。ここでは、補助パターンは、穂先側部分において下端をメインパターンに揃えた状態でメインパターンより1周回分以上の巻回幅を有しており、芯材に上端側から巻回されると、芯材に対する最内層として補助パターンが巻回されることになる。また、補助パターンの上にメインパターンが積層されており、最外層としても補助パターンが巻回されることになる。さらに、中間層として補助パターンがメインパターンの間に介在することにもなる。このように、一回の作業で極めて簡易に穂先側に部分的に且つ最外層・最内層に補助パターンを積層させ得るのである。また、ガラス繊維は強度的には炭素繊維に劣るものの加工し易い素材であり、補助パターンとしてガラス繊維を所定の方向に配向したプリプレグ素材を用いることで、竿体の穂先側端部の加工が容易になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態を採用した釣竿は、図1に示すように、複数の竿体を順次振出形式に連結して構成されるものである。即ち、最も竿元側に位置し大径である元竿1と、その穂先側に順次連結される元上竿2,穂持ち竿3,穂先竿4十を備えている。これらの竿体は、それぞれ炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維に合成樹脂を含浸させてなる先細り筒状体である。各竿体の穂先側端部及び竿元側端部はそれぞれ相互に嵌着可能であり、順次竿体を引き出した際に嵌着させ固定可能である。この元竿1の竿元側端部には釣り人が把持するためのグリップを設けてもよく、さらに、元竿1の竿元側端部には底栓5が脱着自在に装着されている。
【0018】
釣竿の最も穂先側に位置する小径の穂先竿4も、上述のように、炭素繊維などを含むプリプレグからなる先細り筒状体である。図2に示すように、この穂先竿4の穂先側端部には、釣糸係止具10が連結され固定されている。釣糸係止具10は、穂先竿4の穂先側先端に差し込まれて固定される本体部11を有し、本体部11内の穂先側に配置されている円筒部分及びその穂先側に突出して設けられ釣糸Lが係止される柱状部分からなる回転体12、及び回転体12の柱状部分の穂先側先端に取り外し可能に設けられた円盤状の抜止部13を有している。この釣糸係止具10は回転体12の柱状部に釣糸Lが係止され、釣糸Lの回転と共に回転体12が回転して釣糸Lの糸絡みなどを防止している。
【0019】
図3に拡大し模式的に示すように、この穂先竿4の穂先側端部には、異なる2種類のプリプレグ層が交互に積層されている。即ち、穂先竿4全体を形成するメインプリプレグ層20と、補助プリプレグ層21とである。補助プリプレグ層21は、少なくとも、穂先竿4の穂先側の最外層及び最内層を形成し、その最外層と最内層との間にも中間層として介在する。そして、穂先竿4の穂先側内周面はブラッシング処理などがなされており、この荒らした面に上述の釣糸係止具10の本体部11が挿入され接着されている。
【0020】
このメインプリプレグ層20は、後述のように炭素繊維を穂先竿4の軸方向から±30〜90度の範囲で偏角する方向に配向させ、所定の角度範囲において重なり合いながら引き揃えられており、その上でエポキシ樹脂等を含浸させた素材から構成されている。一方、補助プリプレグ層21は、周方向及び軸方向にガラス繊維を配向させエポキシ樹脂等を含浸させた素材から構成されている。補助プリプレグ層21の存在する軸方向長さとしては、穂先側端部より20〜40mm程度とするのが良好である。
【0021】
この穂先竿4は、具体的には以下のようにして製造されている。
【0022】
図4に模式的に示すように、所定のテーパが形成された先細り筒状のマンドレル(芯材)50を用意し、その周面には必要に応じて離型剤などを塗布しておく。そして、その外周にポリプロピレン等からなる剥離用テープ(図示せず)を螺旋状に巻回する。この剥離用テープは製造する穂先竿4の大きさに左右されるものであるが、一般に、幅5〜15mm、厚さ20〜30μm程度のものを用いるのが好ましい。
【0023】
次に、このように必要に応じて剥離用テープを巻回したマンドレルの外周に、補助パターン51の上にメインパターン52を重ねて、マンドレル50に巻回する。詳細に述べれば、補助パターン51はメインパターン52の穂先側部分(およそ軸方向長さとして穂先側端部より20〜40mm程度の範囲)に於いて積層され、且つ、補助パターン51はメインパターン52より当該部分においてはマンドレル50の1周回分以上長い巻回幅を有している(図4参照)。そして、補助パターン51をメインパターン52の穂先側端部において両者の下端側を揃えた上で、上端側に突出した補助パターン51より順次マンドレル50に巻回する。
【0024】
この補助パターン51はガラス繊維を周方向及び軸方向に配向してエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ素材からなり、上述の補助プリプレグ層21を構成するものである。下端側ほど軸方向長さの長い略台形形状をなしている。一方、メインパターン52は、マンドレル50の軸方向長さ全体にわたるシート状のプリプレグ素材であり、炭素繊維をクロス方向に配向してエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ素材からなる。そして、このメインパターン52が上述のメインプリプレグ層20を構成することになる。
【0025】
その後、必要に応じてこれらの外周に圧をかけながら成型テープを巻回し、これを炉内において焼成して両プリプレグ素材を硬化一体化させる。続いて、マンドレル50を引き抜き、両端を切りそろえて適当な長さに調整し、外周面の成型テープや内周面に存在する剥離テープを剥離し、周面を研磨して平滑化し、必要な表面塗装を施す。特に、穂先側端部内周面については、ブラッシング処理などを施して内周面を荒らしておく。そして、穂先側端部に釣糸係止具10を挿入して接着し、穂先竿4を製造する。
【0026】
このような方法によって、簡易に一回の作業で穂先竿4の穂先側に部分的に且つ最外層・最内層に補助パターン層21を積層させ得る。そして、穂先竿4の端部切断時の割れの発生や表面の荒らし加工なども簡易に為し得る。
【0027】
[第2実施形態]
以下、第1実施形態にかかる穂先竿4の別の製造方法を説明する。
【0028】
図5に模式的に示すように、所定のテーパが形成された先細り筒状のマンドレル(芯材)50を用意し、その周面には必要に応じて離型剤などを塗布しておく。そして、その外周にポリプロピレン等からなる剥離用テープ(図示せず)を螺旋状に巻回する。
【0029】
次に、このように必要に応じて剥離用テープを巻回したマンドレルの外周に、メインパターン52の上に補助パターン51を重ねて、マンドレル50に巻回する。補助パターン51とメインパターン52との大きさなどについては上記第1実施形態と同様である。そして、補助パターン51をメインパターン52の穂先側端部において両者の下端側を揃えた上で、この下端側から補助パターン51がマンドレル50に直接当たるようにして順次マンドレル50に巻回する。
【0030】
その後、必要に応じてこれらの外周に圧をかけながら成型テープを巻回し、これを炉内において焼成して両プリプレグ素材を硬化一体化させる。続いて、マンドレル50を引き抜き、両端を切りそろえて適当な長さに調整し、外周面の成型テープや内周面に存在する剥離テープを剥離し、周面を研磨して平滑化し、必要な表面塗装を施す。特に、穂先側端部内周面については、ブラッシング処理などを施して内周面を荒らしておく。そして、穂先側端部に釣糸係止具10を挿入して接着し、穂先竿4を製造する。
【0031】
このような方法によって、簡易に一回の作業で穂先竿4の穂先側に部分的に且つ最外層・最内層に補助パターン層21を積層させ得ることになる。
【0032】
【発明の効果】
本発明にかかる方法によれば、加工時の割れや剥離などを簡易な製法によって防止しえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を採用した釣竿の全体図。
【図2】 図1の穂先竿4の拡大断面図。
【図3】 図2の穂先竿4の穂先側端部を模式的に示した断面図。
【図4】 図2の穂先竿4の製法を示した図。
【図5】 本発明の第2実施形態を採用した穂先竿4の製法を示した図。
【符号の説明】
4 穂先竿
20 メインプリプレグ層
21 補助プリプレグ層
51 補助パターン
52 メインパターン

Claims (3)

  1. 強化繊維に合成樹脂を含浸してなるプリプレグ素材からなるメインパターン及び補助パターンを積層して形成する竿体であって、
    クロス方向に炭素繊維が配向されたメインパターンを積層して形成される本体部と、
    前記本体部の穂先側端部において前記本体部の内周面に補助パターンを積層してなる内周層と、
    前記本体部の穂先側端部において前記本体部の外周面に補助パターンを積層してなる外周層と、
    前記内周層と外周層との間の前記本体部において、少なくとも1層以上介在する補助パターンからなる中間層とを備え、
    前記内周層,外周層及び中間層を構成する補助パターンは、ガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された一枚のプリプレグ素材からなる竿体。
  2. 強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を芯材に巻回して竿体を製造する方法であって、
    穂先側から順次竿元側ほど巻回幅が大きくなりクロス方向に炭素繊維が配向されたプリプレグ素材からなるメインパターンを準備し、
    前記メインパターンの穂先側部分の巻回幅より1周回分以上大きな巻回幅を有しガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された補助パターンを準備し、
    前記メインパターンの上に前記補助パターンを下端を揃えて積層し、前記下端側から前記芯材に前記補助パターン及び前記メインパターンを巻回して竿素材を得、前記竿素材を焼成する、竿体の製造方法。
  3. 強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を芯材に巻回して竿体を製造する方法であって、
    穂先側から順次竿元側ほど巻回幅が大きくなりクロス方向に炭素繊維が配向されたプリプレグ素材からなるメインパターンを準備し、
    前記メインパターンの穂先側部分の巻回幅より1周回分以上大きな巻回幅を有しガラス繊維が周方向及び/又は軸方向に配向された補助パターンを準備し、
    前記補助パターンの上に前記メインパターンを下端を揃えて積層し、前記補助パターンの上端側から前記芯材に前記補助パターン及び前記メインパターンを巻回して竿素材を得、前記竿素材を焼成する、竿体の製造方法。
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